特許第5930425号(P5930425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930425医療デバイスのためのエネルギー取入れ機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930425
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】医療デバイスのためのエネルギー取入れ機構
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/378 20060101AFI20160526BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20160526BHJP
   H02N 2/18 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A61N1/378
   A61N1/36
   H02N2/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-197996(P2014-197996)
(22)【出願日】2014年9月29日
(62)【分割の表示】特願2011-529162(P2011-529162)の分割
【原出願日】2009年9月22日
(65)【公開番号】特開2015-6461(P2015-6461A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/099,203
(32)【優先日】2008年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511025503
【氏名又は名称】インキューブ ラブス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INCUBE LABS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ミール イムラン
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/109272(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0293904(US,A1)
【文献】 特表2009−529975(JP,A)
【文献】 特表2008−516739(JP,A)
【文献】 特表2007−503280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0073267(US,A1)
【文献】 米国特許第03456134(US,A)
【文献】 国際公開第2008/085886(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/378
A61N 1/36
A61N 1/365
A61N 1/39
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓ペースメーカーのためのエネルギー取入れ機構において、前記機構が、
人体の内部に配置することができるとともに、前記人体の生物動力学的事象に応答して変形することにより電力信号を発生するための、変形可能なエネルギー変換器であって、変形する際に前記生物動力学的事象の正常な生理学的範囲内の共振周波数を与えるように、エネルギー変換器の長さに亘って変化する剛性あるいは可撓性を有するものである、エネルギー変換器、及び
前記エネルギー変換器から前記心臓ペースメーカーへの前記電力信号の伝送を可能にするような構造につくられた信号路コンポーネント、
を備え、
前記エネルギー変換器の一部が、前記生物動力学的事象により引き起こされる、該エネルギー変換器の機械的変形を前記電力信号に直接変換する材料により少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする機構。
【請求項2】
前記信号路コンポーネントが、患者の心臓に歩調調整信号を供給するケーブルを含むことを特徴とする請求項1に記載の機構。
【請求項3】
前記エネルギー変換器が前記ケーブル内に配置されることを特徴とする請求項2に記載の機構。
【請求項4】
前記エネルギー変換器が、前記電力信号を発生するために、前記生物動力学的事象に応答して変形するように配置されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の機構。
【請求項5】
前記エネルギー変換器が圧電材料を有することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の機構。
【請求項6】
前記生物動力学的事象が、心拍動、呼吸または脈拍動であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の機構。
【請求項7】
前記エネルギー変換器が、心臓の特性を検知するためのセンサとして機能することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の機構。
【請求項8】
前記特性が、心拍数、心調律、不整脈、心臓壁運動または心臓壁運動異常の内の1つであることを特徴とする請求項7に記載の機構。
【請求項9】
前記エネルギー取入れ機構によって発生される電気エネルギーを受け取るために前記信号路コンポーネントに接続された繰り返し充電可能な電源をさらに備えることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の機構。
【請求項10】
前記エネルギー変換器がAC信号を発生することを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の機構。
【請求項11】
前記エネルギー変換器が拍動している心臓の運動から前記ペースメーカーに自律的に供給するに十分な電力を発生することを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の機構。
【請求項12】
前記剛性あるいは可撓性は、前記エネルギー変換器の長さ方向の第1部分が前記エネルギー変換器の長さ方向の第2部分よりも剛性が大きく、前記第1部分は、前記第2部分よりも、より大きな変形を生み出すよう予め決定されていることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の機構。
【請求項13】
前記エネルギー変換器は、複数のタイプの変形の組合わせから電力信号を発生するよう構成されていることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2008年9月23日に出願された、名称を「医療デバイスのためのエネルギー取入れ機構(ENERGY HARVESTING MECHANISM FOR MEDICAL DEVICES)」とする、米国仮特許出願第61/099203号の優先権の恩典を主張する。上記の優先特許出願の明細書はその全体が参照として本明細書に含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態はエネルギー取入れ機構に関する。さらに詳しくは、本発明の実施形態は、ペースメーカー、除細動器及びその他のデバイスのような埋込医療デバイスに電力を供給するためのエネルギー取入れ機構の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓ペースメーカー及び埋込型除細動器のような埋込型医療電子デバイスの多くは電池電源を利用する。そのようなデバイスの多くの動作寿命は電池の寿命で制限される。小型電池技術には多大の進歩があったが、現行デバイスのほとんどは10年より長くは継続使用されず、限度時点でペースメーカーは取り出されなければならない。また、多くの電池にはいくらかの量の自己放電もおこり、したがって、ペースメーカーまたはその他のデバイスが電流を引き出していなくとも、時間の経過にともなって電池不作動がおこり得る。電池不作動は突然に、あるいは電池電圧の低下によっておこり得る。原因が何であれ、電池不作動は、手術を含む即時の介入が必要な、致命的事故になり得る。したがって、心臓ペースメーカー及びその他の埋込医療デバイスのための改善された電力源が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は心臓ペースメーカー及びその他の埋込医療デバイスのための改善された電力源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、生物動力学的事象からエネルギーを取り入れて様々な埋込医療デバイスに電力を供給するための、装置、システム及び方法を提供する。一実施形態は、エネルギー変換器及び信号路コンポーネントを有する、心臓ペースメーカーのためのエネルギー取入れ機構を提供する。エネルギー変換器は人体内部に配置することができ、心拍動、呼吸または動脈拍動のような、人体の生物動力学的事象に応答して電力信号を発生するように構成される。変換器は、生物動力学的事象の周波数に整合する、ピーク発電電圧またはその他の発電特性(例えば実効発電電圧または電圧)を有することもできる。心拍動発電用途に対し、発電特性は一般的な生理学的脈拍数範囲、例えば毎分40〜180に整合させることができる。特定の患者についての脈拍数範囲に整合させることもできる。以下で説明されるように、変換器は3軸のいずれかまたは全てにおける変形に対して発電するように構成することもできる。
【0006】
一般に、変換器の変形によって発生する電流はACであるが、整流してDCを発生することができる。変換器はペースメーカー(またはその他のデバイス)全体に電力を供給するか、あるいは、ペースメーカー電池からの電流を補って、電池寿命をのばすことを可能にし、また電池不作動時のバックアップも提供するに十分な電力を発生する大きさにつくるか、そうではなくてもそのように構成することができる。電力管理回路を用いて、電力源として電池電力を用いるかまたは変換器を用いるかを切り換えることができ、また細流充電またはその他の充電方式によって電池を充電することもできる。特定の実施形態において、変換器は20〜40マイクロアンペア(μA)の電流を発生するように構成することができる。
【0007】
多くの実施形態において、エネルギー変換器は変換器の機械的変形に応答して電気を発生する圧電材料を有する。変換器は、心拍動またはその他の生物動力学的事象からの運動に応答して変形し、よって心拍動毎に変換器が電力を発生してペースメーカーに供給するように配置されることが望ましい。変換器の厚さ及び材料特性は、生理学的脈拍数範囲内の変換器変形周波数に対して、ピーク発電電圧、電流等を可能にする剛性/可撓性を有するように構成することができる。変換器の厚さ及び材料特性は、変換器がそのような脈拍数範囲内の共振周波数を有するように構成することもできる。
【0008】
多くの実施形態において、圧電材料は、コア導体を囲んで配置された圧電ファイバ束を含む。圧電ファイバは、ファイバ束が与えられた方向に変形されたときに少なくとも1本のファイバがペースメーカーまたはその他の選ばれたデバイスに十分なエネルギーを発生するに十分に変形するであろうような、十分な数と配置を有する。すなわち、ファイバ束は、唯一のまたは限定された数の方向ではなく、いずれの方向での変形からも電圧を発生することができる。
【0009】
信号路コンポーネントは、エネルギー変換器から心臓ペースメーカーに電力信号を電送することができる構造につくられる。多くの実施形態において、信号路コンポーネントは心臓に歩調調整信号を送るケーブルまたはリードを含む。一般に、エネルギー変換器は、拍動している心臓によるケーブルの運動がエネルギー変換のための運動エネルギーを供給するように、ケーブルに配置されるであろう。変換器をケーブルに、またはペースメーカーエレクトロニクスが収められている容器に取り付けるような、別の構成も考えられる。
【0010】
ケーブルまたはリードは、ペースメーカー信号を心臓に送るための少なくとも第1のワイア及び電力信号をペースメーカーに送るための少なくとも第2のワイアを有することができる。一般に、エネルギー変換器はケーブル内に適合する形につくられる。変換器はケーブルに対して同軸とすることができ、ケーブルのフォームファクターを変えない、フォームファクターまたは形状を有することができる。このようにすれば、変換器をケーブルに組み込むための余分な容積が必要にならない。
【0011】
好ましい実施形態において、変換器は無変形状態においてロッドまたは円柱の形状を有することができる。そのような実施形態においては、ロッドの曲りまたは撓みがエネルギーを発生させる変形を与える。ロッドの剛性は、心拍動またはその他の生物動力学的事象から、選ばれた大きさの曲げを生じさせ、与えられた変形周波数に対して特定の最高電圧を発生するように設定することができる。ロッドまたはその他の形状の変換器は、曲げ、捻り、伸長、圧縮及びこれらの組合せのような複数のタイプの変形から電圧を発生するように構成することもできる。
【0012】
ロッドは、最大の電圧を発生するように、テーパを付けるか、関節を設けるか、波形を付けるか、そうではなくともロッド上の1つまたは複数の特定の場所で曲がるように構成することもできる。特定の実施形態において、ロッドは、心臓内のリードの位置、リード内の変換器の位置、心拍数またはその他の要因に依存して、電流の発生を最適化するように設定された剛性プロファイルを有することができる。変形量が大きくなるような場所に対しては剛性が高くなるプロファイルを選ぶことができ、逆も同じである。ロッドの全てまたは一部はあらかじめ整形して、ロッドが心臓の運動またはその他の生物動力学的事象によって曲り、次いでバネ作用でもとの形状に戻るように、湾曲形状またはバネ記憶をもつその他の形状をもたせることもできる。湾曲の形状は、心収縮期に、心拡張期に、またはいずれにおいても、電気エネルギーが発生され得るように、心室の収縮状態または拡張状態の形状に整合させることができる。
【0013】
ケーブルまたはリードのエネルギー変換器を収めている部分は、心臓の運動によって撓められるか、そうではなくとも動かされるように、心臓上に、心臓内に、または心臓の近くに配置されることが望ましい。エネルギー変換器は、リードの変形から選択可能な量の電流を発生するように、リード内の選ばれた場所に配置することもできる。例えば、変換器は、ケーブルリードの心尖上またはその近くに配置される部分内に配置することができる。リードは、エネルギー発生のための複数の場所を有するように、リード内の選ばれた場所に配置された複数のエネルギー変換器領域を有することもできる。リードは、エネルギー変換器が配置されている特定の場所で曲がるか、そうではなくとも変形するように、テーパを付けるかまたは関節を設けることもできる。いくつかの実施形態において、エネルギー変換器は心臓の運動中に変形されるように(ヘリカルアンカーまたはその他のアンカーを用いて)心臓壁に埋め込むことさえもできる。
【0014】
本発明の別の態様において、繰返し充電可能な電源をワイア、ケーブルまたはその他の信号路コンポーネントに接続して、エネルギー変換器によって発生される電気エネルギーを受け取るように構成することができる。様々な実施形態において、電源には蓄電池、蓄電コンデンサまたはその他の蓄電手段を含むことができる。上記及び関連実施形態において、電源は、患者の心臓が停止するか、あるいは不整脈、その他の拍動異常(例えば細動)または歩調調整またはその他の機能のための十分な電力発生を妨げるその他の状態を発症するような、選ばれた期間に電力を供給するように構成することができる。繰返し充電可能な電源は、除細動のような二次機能を実施するために用いることもできる。歩調調整に十分な電流及び電圧をまだ維持している間に電源を充電するための電源管理回路及び方式を用いることができる。一実施形態において、細流充電方式を用いることができる。歩調調整を必要としない心周期部分の間は電力を別用途に分流させるようなデューティサイクル手法を用いることもできる。別の実施形態において、EKG(心電図)モニタリング回路を用いて、歩調調整が必要ではない時点、したがって電力を繰返し充電可能な電源に振り向けるための信号を電力管理回路に送る時点を判定することができる。これらの手法の組合せも用いることができる。
【0015】
本発明のまた別の態様において、エネルギー変換器の実施形態は、心拍数、調律(例えば、正常洞調律、不整脈、pvc(心室期外収縮)、等)、壁運動異常、筋障害、心室肥大及び関連する状態を含む心臓な様々な機械的及び電気的特性を検知するためのセンサとして用いることもできる。そのような状態の内の1つないしさらに多くは、エネルギー変換器によって発生される電圧、電流または電力の波形の内の1つないしさらに多くを解析する、アルゴリズムを用いて検出することができる。詳しくは、アルゴリズムは波形の振幅または周波数の変化あるいはいずれの変化も検出するように構成することができる。振幅(電圧または電流)あるいは周波数が閾値より低下すると、コントローラ、電力管理回路または遠隔測定回路に信号を送って、患者または医療専門家に警報を発することができる。変化は微分機能または積分機能を用いて検出することもできる。例えば、振幅の変化率を求めるために微分機能を用いることができる。例えば時間の経過にともなってなされた総仕事の変化を求めるために、1つないしさらに多くの曲線に積分機能を用いることができる。エネルギー変換器は、呼吸数、血圧、心臓弁機能及びその他の関連機能のような、その他の生物動力学的データを検知するように構成及び配置することもできる。
【0016】
エネルギー変換器の実施形態は、エネルギー取入れと検知を同時に実施するように構成することができる。1つないしさらに多くの場所において検知して、心臓壁運動、調律またはその他の心臓の機能または特性のマップを作成するために、1本ないしさらに多くのペースメーカーリード内に複数の変換器を配置することができる。呼吸、蠕動波またはその他の消化運動、動脈拍動及び同様の運動のような、その他の生物動力学的事象の運動のマップを作成するために同様の手法を用いることができる。本発明の上記及びその他の実施形態及び態様のさらなる詳細は添付図面を参照して以下でさらに十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a図1aはペースメーカーまたはその他の心臓デバイスのためのエネルギー取入れシステムの一実施形態を示す横面図である。
図1b図1bは心臓デバイスエネルギー取入れシステムのための電気接続及び信号方向を示す横面図である。
図1c図1cはエネルギー変換器のロッド形状実施形態に対する剛性プロファイルを示すグラフである。
図1d図1dは心室内に配置された湾曲型エネルギー変換器の一実施形態を示す横面図である。
図2図2は圧電ファイバ束でつくられたエネルギー変換器の位置実施形態を示す斜視図である。
図3a図3aは、エネルギー変換器/エネルギー取入れデバイスを収めている心臓ペースメーカーリードの変形からエネルギーが発生される、心臓ペースメーカーのためのエネルギー取入システムの一実施形態を示す横面図である。
図3b図3bは、心室内のエネルギー取入れペースメーカーリードの配置を示す、図3aの実施形態の拡大図である。
図3c図3cは、心室の収縮によって生じるペースメーカーリード及びエネルギー変換器の変形を示す、図3aの実施形態の拡大図である。
図3d図3dは、心室壁に隣接して配置されたパッチまたは層あるいは心室壁から離して心臓ペースメーカーリード上に配置された羽根を有する、エネルギー取入デバイスの一実施形態を示す横面図である。
図4図4は心臓ペースメーカーで使用するためにエネルギー取入れデバイスからの電力信号を変換するための回路アーキテクチャの一実施形態を示す略図である。
図5図5は、回路アーキテクチャが蓄電池を含む、心臓ペースメーカーに電力を供給するためのエネルギー取入れ回路アーキテクチャの一実施形態を示す略図である。
図6図6は心臓除細動器で使用するためにエネルギー取入れデバイスからの電力信号を変換するための回路アーキテクチャの一実施形態を示す略図である。
図7図7は心臓の状態を検出するためのセンサとしてのエネルギー取入れデバイスの使用を示す横面図である。
図8図8はEKG及び、心臓内でペースメーカーリードに接続されたエネルギー取入れデバイスによって発生される、対応する電気波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、埋込型心臓ペースメーカーデバイスのような様々な埋込医療電子デバイスに電力を供給するために、圧電材料のような、エネルギー取入れ材料を用いるための装置、システム及び方法を提供する。ここで図1a〜1bを参照すれば、埋込心臓ペースメーカーまたはその他の医療電子デバイス20に電力を供給するためのエネルギー取入れシステム10の一実施形態は、ワイアのような信号路コンポーネント60を介して電力信号50を送るエネルギー変換器40を有する、ケーブル30を備える。様々な実施形態において、デバイス20には、埋込型の、心臓除細動器、心臓遠隔測定デバイス、心臓補助デバイス、及び/または埋込型ポンプ(例えばインスリンポンプ)を含めることができる。議論を容易にするために、システム10の様々な実施形態の以下の説明ではデバイス20を埋込心臓ペースメーカー20として参照することとする。そのような実施形態ではケーブル30も心臓リード30として参照されることになる。しかし、システム10が、1つないしさらに多くの他のデバイス20及びケーブル30とともに使用されるように、容易に適合され得ることは当然である。
【0019】
リード30は、リード30内の1本ないしさらに多くの専用ペースメーカーワイア34を介して歩調調整信号33を与えるための電極32を含む遠端31を有する。リードは、ペースメーカーまたはその他のデバイス20に電力信号50を送るための信号路コンポーネント60としてはたらく、1本ないしさらに多くのワイアも有する。特定の実施形態において、リードは、例えばデバイス20の異なるコンポーネントまたは別のデバイス(図示せず)に電力を供給するための1つは高電圧であり1つは低電圧である、第1及び第2の電力信号51及び52を送るための第1及び第2のワイア61及び62を有することができる。ワイア60は、例えば変換器内の1つないしさらに多くのスイッチ(図示せず)を作動させて変換器の電力発生特性を動的に設定し直すために、信号50を変換器40に送るためにも用いることができる。ワイア60の一部は以下で説明するファイバ束42のコア導体を含むことができる。
【0020】
エネルギー変換器40は機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、様々な運動する体組織または構造の近傍に配置されると、心拍動のような生物動力学的事象によって生じるそのような組織/構造の運動からエネルギーを取り入れるために用いることができる(すなわち、エネルギー変換器40は本明細書においてエネルギー取入れデバイス40としても説明される)。一般に、変換器40は機械エネルギーを電気エネルギーに変換するトランスコンダクタンス材料を有する。多くの実施形態において、エネルギー変換器40は変換器の機械的変形に応答して電気エネルギーを発生する圧電材料を有する。変換器40は心拍動からの運動に応答して変形し、よって拍動毎に変換器が変形し、電力を発生してペースメーカー20に電力を供給するように、リード30内に配置されることが望ましい。すなわち、上記及び関連実施形態において、変換器40は変形状態及び無変形状態を有する。
【0021】
変換器40は、ペースメーカー20が必要とする電力の全てを満たすか、あるいはペースメーカー電池またはその他の電源からの電流を補って、電池寿命を延ばし、またペースメーカー電池不作動のバックアップも提供するに十分な電力を発生する大きさにつくるか、そうではなくともそのように構成することができる。電池の充電レベル及び/またはペースメーカーまたはその他のデバイス20の要求電力に依存して電池電力の使用と変換器の使用の間で切り換えるために、(以下で説明される)電力管理回路を用いることができる。様々な実施形態において、変換器は10〜100μAの間、特に20〜40μAの範囲の電流を発生するように構成することができ、これより大きいかまたは小さい範囲も考えられる。
【0022】
変換器40の厚さ及び材料特性は、(変換器の変形レートにも相当する)例えば40〜180の正常な生理学的脈拍数範囲に整合するピーク発電電圧またはその他の発電特性を可能にする剛性/可撓性を有するように構成することができる。そのように整合され得るその他の発電特性には、実効発電電圧、ピーク発電電流または実効発電電流がある。このようにすれば、歩調調整及びその他の様々な心臓用途に用いるために変換器の発電特性を最適化することができる。その他の非心臓用途においては、呼吸数のような別の生物動力学的事象の周波数に発電特性を整合させることができる。
【0023】
変換器40がリード30上またはリード30内に配置される実施形態に対して、変換器40は様々な形状及びリードに対する空間配置をとることができる。例えば、変換器は、リード30の軸線30aに対して同軸である、円柱または矩形の形状をとることができる。その他の形状及び配置も考えられる。例えば、変換器はリード30を覆ってまたはリード30内に配置されるチューブまたは層を有することができる。変換器は、リード30の形状30sを認められるほどは変化させないフォームファクターまたは形状40sを有することもできる。このようにすれば、変換器をリードに組み込むための余分の容積が必要にならない。好ましい実施形態において、変換器40は無変形状態でロッド形状40rをとることができる。そのような実施形態においては、ロッドの曲りまたは撓みが電気エネルギーを発生させる変形を与える。ロッドの剛性は、選択可能な大きさの曲りを生じさせ、心拍動またはその他の生物動力学的事象による与えられた周波数の変形に対して特定の最高電圧を発生するように設定することができる。ロッド40rまたはその他の形状につくられた変換器40は、曲り、捻り、伸長、圧縮及びこれらの組合せのような複数のタイプの変形から電気エネルギーを発生するように構成することもできる。
【0024】
ロッド40rは、最大の電圧を発生するように、テーパを付けるか、関節を設けるか、波形を付けるか、そうではなくとも1つまたは複数の特定の場所で曲がるように構成することもできる。図1cに示されるように、ロッド40rまたはその他の変換器40の様々な実施形態は、心臓内のリードの位置、リード内の変換器の位置、心拍数またはその他の要因に依存して電圧の発生を最適化するように構成された剛性プロファイル40sを有することができる。図1cに示される実施形態において、剛性プロファイルは変換器ロッドの中央部分近くで変形を生じるように設定される。変換器の全長に沿って曲り変形を生じさせる、最大剛性がロッドの中央にあって両端に向かって剛性が低下する剛性プロファイルのような、別のプロファイルも考えられる。別の実施形態において、変換器は、長さに沿う正弦波様剛性プロファイルを有して、曲り運動及び変形の定在波を生じさせるように構成することができる。変形量が大きくなるような場所には剛性が大きくなるプロファイルを用いることができ、逆も同じである。剛性プロファイルは、患者あるいは患者が属する患者集団についての生理学的心拍数範囲内にある共振周波数を生じるように選ぶことができる。
【0025】
様々な実施形態において、ロッド40rの全てまたは一部は、ロッドが心臓の運動またはその他の生物動力学的事象によって曲り、次いでバネ作用でもとの形状に戻るように、あらかじめ整形して湾曲形状またはバネ記憶をもつその他の形状40sをもたせることができる。図1dに示されるように、湾曲の形状は、心収縮期に、心拡張期に、またはいずれにおいても、電気エネルギーが発生され得るように、収縮状態または拡張状態の心室壁VWの形状Vsに対応することができる。特定の実施形態において、超音波またはその他の医用撮像方法を用いて、患者の心室壁の形状及び曲率の大きさを決定することができ、次いでその画像を用いて、技術上既知の医用品作成手法により変換器40の形状40sを誂製することができる。使用において、そのような実施形態では、変換器の変形量を高めしたがって発電電圧及び発電電力を高めることが可能になる。体の異なる場所に変換器を配置するために別の形状を選ぶことができる。
【0026】
多くの実施形態において、変換器40はコア導体44を囲んで配置された圧電ファイバ43の束42を有する。圧電ファイバには、束42が与えられた方向に変形させられると少なくとも1本のファイバ43がペースメーカー20に十分なエネルギーを発生するに十分に変形されるであろうような、十分な数及び配置があたえられる。様々な実施形態において、4本から20本の、特定の実施形態では6本、8本、10本、12本、14本及び16本の、ファイバを、コア44を囲んで対称に配置することができる。好ましい実施形態において、束42はコア44を囲んで対称に配置された6本のファイバ43を有する。また、ファイバ43の直径はコア44の直径以下であることが好ましい。使用において、束42の実施形態によって、いずれの方向の変形からも変換器による電圧及び電力の発生が可能になる。エネルギー変換器としての圧電ファイバ束の使用のさらなる説明は、名称を「エネルギー取入れ機構(ENERGY HARVESTING MECHANISM)」とする米国仮特許出願第61/095619号及び名称を「エネルギー取入れ機構(ENERGY HARVESTING MECHANISM)」とする米国特許出願第12/556524号の明細書に見られる。上記の特許出願明細書は全ての目的のためにそれぞれの全体が本明細書に参照として含まれる。技術上既知の様々なエレクトレット材料及びペルティエ材料を含む、その他の材料をファイバ43に用いることができる。
【0027】
次に図3a〜3bを参照すれば、一般的にリード30が、遠端31が心室壁VWの心内膜表面ESと接触するように、心室V内に配置される。これにより電極32が表面ESと導電状態になって心室に信号33を伝えることが可能になる(リード30は心房内に配置して心房壁と接触させることもできる)。多くの場合、リードの遠端は、リードの(図3bに示されるような)心室壁または心臓壁の別の部分への定置を可能にするヘリカルチップのような、定置具(図示せず)を有することができる。リード30のエネルギー変換器40を収める部分35は、心臓の運動によって撓められるか、そうではなくとも変形されるように、心室Vまたは心臓Hの別の領域の場所内に配置されることが望ましい。例えば図3bに示される実施形態においては、心尖Axの近傍に配置されるリード部分35内に変換器を配置することができる。これにより、図3cに示されるように、心室が収縮する毎に変換器が曲げられるか、そうではなくとも変形させられることが可能になる。リード30は、電気エネルギー発生のための複数の場所を有するように、リード内の選ばれた場所に配置された複数のエネルギー変換器40を有することもできる。エネルギー変換器40は、心臓の運動によって直接に変形させられるように、(例えばヘリカルアンカーまたはその他のアンカーを用いて)心室壁自体に埋め込むことさえできる。そのような実施形態において、変換器40は心臓の収縮運動を機械的に妨げないように可撓性材料でつくられることが望ましい。変換器40は、左心室のような心臓室の収縮を妨げるいかなる力も最小限に抑えながら心臓の拍動過程中の変換器の最大量の変形を可能にする、剛性プロファイルを有するように構成することができる。これは、収縮している心臓室によって発現される力よりも変換器の曲げ剛性が小さくなるように構成することによって達成することができる。特定の実施形態において、曲げ剛性は、特定の心臓室(例えば左心室)の収縮力の1/1.5〜1/20の範囲、特に1/2,1/4,1/6,1/8,1/10,1/14,1/16及び1/18とすることができる。別の比を考えることもできる。
【0028】
次に図3dを参照すれば、別の実施形態において、変換器40はリード30の遠端31に取り付けられ、心室壁VWにも載る、薄いパッチまたは層47を有することができる。層47は、非常に薄い可撓性材料でつくられ、心室が収縮及び弛緩する毎に変形することが望ましい。層47は様々な形状を有することができるが、円形または長円形であることが望ましい。別の実施形態において、変換器40はリード30に取り付けられた羽根またはブレード48を有することができる。羽根48は、心室(または心房)内の血流によって変形するが血球の崩壊は最小限に抑えるように構成された、形状及び寸法を有する。様々な実施形態において、羽根40は円形または長円形をとることができる。羽根は、様々な薬物溶出コーティングを含む、技術上既知の1つないしさらに多くの非トロンボゲン形成コーティング(例えば、シリコーン等)で被覆することもできる。
【0029】
次に図4〜6を参照すれば、埋込心臓ペースメーカーまたは心臓除細動器のような心臓デバイスに本明細書に説明されるエネルギー取入れデバイスの実施形態からのエネルギーを利用して電力を供給するため、様々な回路アーキテクチャを用いることができる。エネルギー取入れデバイスすなわち変換器40を用いて心臓ペースメーカー20に電力を供給するための回路アーキテクチャ70の一実施形態が図4に示される。上記及び関連実施形態において、アーキテクチャ70は、変換器40,AC電圧を整流してDC電圧にするための整流回路80,第1のコンデンサ90,第2の大容量コンデンサ100,DC-DCコンバータ110及び歩調調整デバイス20を有することができる。多くの実施形態において、変換器40の変形によって発生する電圧はACであり、整流回路80を用いて整流してDC電圧を発生することができる。好ましい実施形態において、回路80には1つないしさらに多くのショットキーダイオード82を用いるブリッジ回路81を含めることができる。また、電圧をペースメーカー用に昇圧または降圧するためにDC-DCコンバータ110を用いることができる。コンバータ110は、リニアコンバータ、スイッチングモードコンバーリまたは磁気コンバータとすることができる。コンデンサ100はペースメーカーに短時間電力を供給するに十分な容量を有することができる。図示される実施形態において、ペースメーカー20の所要電力は50〜100μWである。変換器40はこの所要電力の全てまたは一部を満たすように構成することができる。アーキテクチャ70のコンポーネントの全てまたは一部は特定用途集積回路すなわちASICに収めることができる。
【0030】
図5に示される別の実施形態においては、蓄電池121または同様のデバイスのような繰り返し充電可能な電源120を充電回路130とともにアーキテクチャ70に含めることができる。適する蓄電池には、ニッケル-カドミウム電池、リチウム電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池及び同様の化学電池がある。電源120は、患者の心臓が停止するかあるいは不整脈または変換器40による歩調調整またはその他の機能のための十分な電力発生を妨げるその他の状態を発症するような、選ばれた期間に電力を供給するように構成することができる。充電回路130は、1つないしさらに多くの電力管理方式またはアルゴリズム136を(ハードウエアまたはソフトウエアによって)用いる電力管理回路135を有するか、そうではなくともそのような回路に接続することができる。電力管理回路135(図7を見よ)及び方式136は、歩調調整に十分な電流及び電圧を維持したまま、電源120を繰り返し充電するために用いることができる。一実施形態において、細流充電方式を用いることができる。歩調調整が必要ではない心周期部分の間電力を別用途に分流させるためにデューティサイクル手法を用いることもできる。別の実施形態において、歩調調整が必要ではなく、したがって電力を繰り返し充電可能な電源に振り向けるように電力管理回路に信号を送る時点を決定するために、EKG(心電図)モニタリング回路を用いることができる。これらの手法の組合せを用いることもできる。
【0031】
図6に示されるエネルギー取入れ回路アーキテクチャ70の別の実施形態において、アーキテクチャ70は埋込型心臓除細動器(ICD)デバイス220の所要電力を満たすように構成することができる。上記及び関連実施形態において、アーキテクチャ70は高電圧アーキテクチャ270及び低電圧アーキテクチャ370を含むことができる。高電圧アーキテクチャ270は除細動器220の高電圧回路221に電力を供給するために用いられ、電力は続いて除細動器コンデンサ222を充電するために用いられる。アーキテクチャ270は充電回路230及び蓄電池220を有することができる。低電圧アーキテクチャ370は除細動器220の低電圧回路371に電力を供給するために用いられ、ブリッジ回路380,DC-DCコンバータ390,大容量コンデンサ400及びコンデンサ410を有することができる。
【0032】
次に図7〜8を参照すれば、様々な実施形態において、エネルギー変換器40は心臓あるいはその他の器官または組織の特性を検知するためのセンサ340として用いることもできる。センサ340は、センサの変形を生じさせる心臓の運動によってつくられる電圧波形またはその他の電気波形350を発生する。波形350は心拍数及び壁運動を含む心臓の運動の様々な特性によって影響を受ける。これらの特性は、波形の周波数、振幅及び形状の1つないしさらに多くに影響を与える。したがって、ペースメーカーまたはその他の心臓デバイス20への電力供給における使用に加えて、心臓の様々な特性の解析及び測定のために波形350を用いることができる。そのような特性には、心拍数、調律(例えば、正常洞調律(NSM)、不整脈、pvc(心室期外収縮)、等)及び壁運動異常、筋障害、心室肥大及び関連する状態を含めることができる。図8に示される実施形態において、波形350は、患者のEKG355と相関させてEKGの変化を分析して心臓が正常洞調律状態356にあるかまたは細動状態357に入っているかを確認するために用いることができる。後者の場合には、曲線350の変曲点350iで示すことができるような電圧波形350の振幅の突然の減少によって、細動またはその他の運動異常を検出することができる。
【0033】
様々な実施形態において、センサ340にはリード30に沿う様々な場所341に配置された複数のセンサ340を含めることができる。センサ340の配置は、心臓壁運動のマップ343を作成するようなパターン342にすることができる。マップ343は、心室または心房の全区画に沿う心臓壁における収縮及び弛緩の波の伝搬を含む、心臓壁運動を解析するために用いることができる。マップ343は、心室のマッピングされた領域に対する壁運動スコア指数を生成するために用いることもできる。一実施形態において。複数の場所341のセンサ340には、心臓の頂部、中間部及び尖部に配置されるようにリード30内に配置された、少なくとも3つのセンサを含めることができる。これにより、心室壁収縮波の、尖部から心室の頂部/上部を通って移動している間の検出が可能になる。局所無道症のような様々な壁運動異常を推定するために、パターンにしたがって配置されたセンサ340のそれぞれにおいて生成される波形350間の時間及び/または位相の遅れを用いることもできる。
【0034】
センサ340は、コントローラ370及びディスプレイ380を備える、モニタリングデバイス360に接続することができる。センサ340は波形信号351をモニタリングデバイス360及びコントローラ370に送る。コントローラ370は信号351を解析するためにコントローラに接続されたメモリリソース376に常駐する1つないしさらに多くのアルゴリズム375を有することができる。適するメモリリソースには、RAM,ROM,DRAM及び技術上既知のその他の電子メモリリソースがある。アルゴリズム375はセンサ340によって発生される電圧波形、電流波形または電力波形の1つないしさらに多くを解析することができる。アルゴリズム375の特定の実施形態は波形350の振幅または周波数の変化あるいは両者の変化を検出するように構成することができる。これらの変化の検出及び解析は患者の診断及び電力管理のいずれの目的にも用いることができる。例えば、波形の振幅(例えば電圧)または周波数が閾値より低下すると、デバイス20に接続されているかまたはデバイス20内に搭載されているコントローラまたは遠隔測定回路に信号を送って、患者または医療専門家に警報を発することができる。電力管理回路135に信号を送って、電池120またはその他の電源からの電池電力に切り換えることもできる。波形350の変化は微分機能または積分機能を用いて検出することもできる。例えば、振幅の変化率を求めるために微分機能を用いることができる。例えば時間の経過にしたがってなされる総仕事の変化を求めるために、1つないしさらに多くの曲線に積分機能を用いることができる。技術上既知のその他の数値的方法及びパターン認識アルゴリズム(例えば、フーリエ解析、ファジー論理アルゴリズム等)を用いることもできる。
【0035】
様々な実施形態において、センサ340及び/またはデバイス20は、ブルートゥースまたはその他のRF通信プロトコルを用いてデバイス360に無線送信するためのRF通信チップまたは同様のデバイスを有することができる。技術上既知のその他の医用遠隔測定手段も考えられる。上記及び関連実施形態において、モニタリングデバイス360は患者が着用するかまたは患者の近くに配置することができる。デバイス360は、患者が着用するかまたはそれぞれの個人の近くに配置される、セル式携帯電話、電子手帳(PDA)及び同様のデバイスのような様々な携帯型通信デバイスに組み込むこともできる。上記及び関連実施形態において、患者の危機を報じるに十分な状態(例えば不整脈)が検出されると、デバイス360に信号が送られ、デバイス360はアラームを鳴らし、同時に無線電話またはその他のネットワーク(例えばインターネット)を通じて患者、医師、看護師またはその他の医療提供者に警報を発するための信号も送る。
【0036】
結論
上述した本発明の様々な実施形態の記述は例証及び説明の目的のために提示されている。開示された精確な形態に本発明を限定することは目的とされていない。多くの改変、変形及び改善が当業者には明らかであろう。例えば、エネルギー取入れ機構の様々な実施形態は、腹腔、胸腔及び四肢を含むがこれらには限定されない体の様々な場所への配置のための大きさにつくることができ、そうではなくともそのように適合させ、蠕動波、呼吸/横隔膜運動または任意の数の筋肉収縮または四肢の運動のような、それぞれの場所における特定の生物力学的事象を利用するように適合させることができる。様々な実施形態は、動脈拍動を利用してエネルギー変換器の変形を生じさせるために、心臓または動脈形系内に配置されるように構成することもできる。また、エネルギー取入れ機構の実施形態は様々な小児及び新生児への適用のための大きさにつくるか、そうではなくともそのように適合させることができる。
【0037】
一実施形態からの要素、特徴及び作用は、別の実施形態からの1つないしさらに多くの要素、特徴または作用と組み合わせるか、またはそれらで置き換えて、本発明の範囲内の数多くの別の実施形態を容易に形成することができる。さらに、他の要素と組み合わされるとして示されるかまたは説明される要素は、様々な実施形態において、独立要素として存在することができる。したがって、本発明の範囲は、説明した実施形態の詳細には限定されず、添付される特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0038】
10 エネルギー取入れシステム
20 医療電子デバイス(埋込心臓ペースメーカー)
30 ケーブル(心臓リード)
31 リード遠端
32 電極
33 歩調調整信号
34 ペースメーカーワイア
40 エネルギー変換器
42 圧電ファイバ束
50 電力信号
60 信号路コンポーネント
70 回路アーキテクチャ
Ax 心尖
ES 心内膜表面
H 心臓
V 心室
VW 心室壁
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8