(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記実測値が、前記二点で検知された前記音響外乱の時間遅延を求めること、及び、前記音響外乱のソースから前記二点までの距離の差を前記時間遅延で割って前記実測値を計算することによって求められ、前記時間遅延が、飛行時間法、又は、時間領域或いは周波数領域における相互相関法を用いて求められる、請求項1の方法。
既知の肉厚プロファイルを有し前記流体を運ぶ基準パイプに沿って音響外乱の実測伝播速度を測定することと、前記流体の体積弾性率を含む前記理論モデルに用いられる少なくとも一つの定数を計算することを更に含む請求項1から3のいずれかの方法。
前記平均伝播速度の実測値が、前記長手方向に離隔された二点の各々に配置されたセンサによって検知された前記音響外乱の時間から計算される、請求項1から3のいずれかの方法。
前記減衰能が、前記パイプの基本リング周波数に対応する周波数スペクトルのピーク幅、又は前記パイプに対する機械的な衝撃により誘起される減衰リング振動の対数減衰率から導出される、請求項10の方法。
前記パイプが配水パイプであり、前記センサが、前記パイプに接続された消火栓、前記パイプに取付けられた制御バルブ、及び、マンホール又は土壌中に掘られた小さなキーホールを介してアクセスされるパイプ壁からなる群から選択された支持素子に取付けられる、請求項12の装置。
前記理論モデルが、無限流体の外乱の伝播速度又は前記流体の体積弾性率、前記流体の密度、前記パイプの内径及び肉厚、並びに、前記パイプを形成する材料のヤング率を含む、請求項13又は14の装置。
既知の肉厚を有する基準パイプに対する測定から前記理論モデルで用いられる定数を計算するように前記コンピュータに命令するための命令を更に含む請求項17の記録媒体。
無限流体の外乱の伝播速度及び前記パイプを形成する材料の体積弾性率を含む計算に用いられる既知のパイプパラメータに関する入力定数を受けるために前記コンピュータに入力スクリーンを表示させる命令を更に含む請求項19に記載の記録媒体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の理解を助けるために、基礎をなす理論について考察する。
【0017】
無限流体内における音波の伝播速度は次式により定義される:
【数1】
ここでΚは流体の体積弾性率、ρはその密度、そしてγは流体の比熱比(つまり定圧プロセスでの流体の熱容量対定積プロセスでの熱容量の比)である。
【0018】
この式の導出は、引用により本願に組込まれる非特許文献1に見出すことができる。
【0019】
配水パイプにおける標準温度及び標準圧力下の場合、ほぼ非圧縮性の液体については、γは略1に等しい。その場合、式(1)は:
【数2】
となる。
【0020】
加圧流体が流れるパイプの壁の弾性は流体中の音波の伝播速度を減少させる。速度の減少量はパイプの断面のサイズ及び形状並びにパイプの材料の弾性率に依存する。流体中の音波速度の一般的な式は次式で定義される:
【数3】
ここでAは流体が占めている断面積、pはパイプ内の圧力であり、v
oは式(1)により定義されている。ほぼ非圧縮性の流体については、γは略1に等しい。この式は、引用により本願に組込まれる非特許文献2に説明されている。
【0021】
そのような流体では式(1)は;
【数4】
となり、ここでv
oは式(2)により定義されている。
【0022】
速度の正確な予測には、流体の温度、空気含有量及び圧力に対するΚとρの変動を考慮する必要がある。肉厚が厚いパイプやガスで充満したパイプに対しては∂A/∂pは無視してよく、従って、v≒v
oとなる。一方、とても柔軟なパイプでは音波速度は:
【数5】
と近似される。
【0023】
パイプの断面のひずみ∂A/Aは全円周ひずみ∂ε
θの変化よって起き、∂ε
θの変化は圧力変化∂pによって起きる。全円周ひずみは:
【数6】
であり、ここでσ
cとσ
aはそれぞれパイプ壁の円周方向および軸方向の応力であり、Eとμはパイプ材料の弾性率とポアソン比である。
【0024】
円形のパイプに関しては、角度∂θで定められる断面の小角度部分を考慮して、面積の部分的変化は:
【数7】
となり、ここでRはパイプの内半径で、∂u
Rは半径Rでの動径方向変位の変化である。式(7)を(A∂p)で割り、θで積分すると:
【数8】
となり、ここで半径Rでの動径方向変位の変化∂u
Rは:
【数9】
となる。
【0025】
肉厚の薄いパイプ、つまり直径と肉厚の比が大きい場合、パイプ壁中の応力は肉厚全体にわたってほぼ一定である。パイプ壁の断面の半分にかかる力の平衡状態を考えると、円周方向応力は:
【数10】
となり、ここでtは次式で定義されるパイプ肉厚である:
【数11】
【0026】
軸方向に自由に動くパイプ、例えば全長にわたって伸縮継手を有する場合、或いは高い弾性率を有するパイプ材料、例えばスチールやコンクリート等に対しては、軸方向応力の変化∂σ
lは無視でき、ゼロとみなすことができる。他の固定条件については、軸方向応力の変化は顕著であり考慮に入れなければならない。例えば、全長にわたって軸方向の動きが制約されているパイプの場合、ε
l=0であり、従って、
【数12】
となる。
【0027】
式(6)に(10)及び(12)を代入し、式(9)に(6)を代入し、最後に式(8)に(9)を代入すると、(肉厚プロファイルがパイプの中心線に対して対称であると仮定して):
【数13】
が導かれ、ここでDはパイプの直径、cはパイプの固定方法を考慮した係数であり:
【数14】
によって、定められる。
【0028】
腐食性の土壌に埋設されているパイプは全周にわたって均一に肉厚が減らないことがある。大抵の場合、これは、通気性の違いの結果としてパイプの外面上に腐食電池が生成されるからである。これは、パイプの断面が部分的に二つの異なった土壌、例えば、埋め戻しに使った土壌のような多孔性でよく通気されている土壌と、自然の粘土土壌のような不透水性であまり通気されていない土壌に接触している場合に起きる。また、通気性の違いは、パイプ底部の堆積物の蓄積によりパイプの内面でも発生し得る。この現象を考慮に入れると、パイプの肉厚は、次のように角座標によって直線的に変化すると仮定される:
【数15】
ここで、fは不均一な肉厚を有するパイプ断面の割合、t
minはθ=0での最小肉厚、t
maxはθ=πでの最大肉厚である。その場合、平均肉厚t
meanは:
【数16】
である。
【0029】
上記の例では論証の簡素さと容易さのために線形の円周方向肉厚プロファイルを選択した。しかし、より正確な結果が必要であれば、より典型的なプロファイルを用いても良い。式(13)に(15)を代入して積分すると:
【数17】
が導かれ、式(4)に(16)を代入すると、パイプの伝播速度に対して次式が導かれる:
【数18】
ここで、cは式(14)で定義される。
【0030】
式(18)の妥当性は均一な肉厚プロファイル、すなわちt
min=t
max=t、を有する特別なパイプの場合を考慮してチェックする事が出来る。
【数19】
であるから、式(18)は:
【数20】
となる。
式(20)で与えられる音波の速度は、標準的な教科書において均一な断面を有する円柱状の肉厚の薄いパイプに流体が充満している場合に導出されるものと同じである。
【0031】
特許文献2のケースのように、パイプ肉厚が薄いと仮定した結果生ずる誤差は、パイプの漏れ位置を特定するためのものとしては小さい。しかしながら、肉厚測定には、その誤差が十分小さいとは言えない。例えば、肉厚10mm、直径152mm、v=1218m/sの鋳鉄パイプの場合、パイプの肉厚が薄いと仮定すると、均一肉厚は9mmと逆算される。これは損失誤差10%に値する。より正確に計算するには、パイプ肉厚にわたる応力の変動を完全に考慮する必要がある。
【0032】
肉厚にわたる応力の変動を考慮に入れた場合、その全長にわたって伸縮継手を有する無制約のパイプに対する内径での動径方向変位は、
【数21】
と与えられ、その全長にわたって軸方向の動きが制約されている場合は、
【数22】
(非特許文献3)によって与えられる。
【0033】
式(21)及び(22)に(15)を代入し、式(8)に(21)及び(22)を代入し、式(4)に(8)を代入して、積分すると、その全長にわたり伸縮継手を有するパイプに対して次の速度式が導かれ:
【数23】
また、その全長にわたり軸方向の動きが制約されているパイプに対して次式が導かれる:
【数24】
ここで
【数25】
である。
【0034】
均一肉厚で厚い肉厚のパイプの場合、式(23)は、その全長にわたり伸縮継手を有するパイプに対しては:
【数26】
となり、軸方向の動きが制約されているパイプに対しては:
【数27】
となり、これらは標準的な教科書にある均一な断面を有する円柱状の肉厚の厚いパイプに流体が充満している場合に導出される式と合致している。
【0035】
不均一な円周方向肉厚プロファイルを有する、肉厚が薄い・厚いパイプに対する上記公式化は、非対称の動径方向変位の結果として生じることが予測されるパイプ壁の剪断応力を考慮していない。肉厚が薄いパイプに対する式では、円周方向応力の計算を簡素化するためにパイプ断面は円形のままであること、すなわち式(10)を仮定している。同様に、肉厚が厚いパイプに関する式を簡素化するためには、均一な肉厚プロファイルを有するパイプに対する動径方向変位を用いている。パイプ壁の剪断応力を考慮した厳密な公式化は可能である。しかしながら、そのような公式化は複雑過ぎて、精度の僅かな向上すら保証されるものではない。
【0036】
肉厚が薄い・厚い両方のパイプに対する上記公式化は、パイプ壁の慣性や周囲の土壌を考慮していない。パイプは伝播する動的圧力波に対して静的に応答すると仮定されている。パイプのリング周波数より遥かに低い周波数では、パイプの応答は壁の剛性に支配されるので、この仮定により生じる誤差は小さい。例えば、パイプ壁の慣性のみを考慮すると、均一な断面と全長に亘り伸縮継手を有するパイプの速度式は:
【数28】
となり、ここで、ωは伝播圧力波の周波数(ラジアン/秒単位)であり、ρ
pipeはパイプ壁材料の密度である。この式の導出は、引用により本願に組込まれる非特許文献4で説明されている。
【0037】
直径152mm、肉厚12mmの鋳鉄パイプの場合、音響ノイズ信号の最大周波数は通常800Hzである。パイプ壁の慣性を無視する事による速度の最大誤差は0.07%でごく僅かなものである(16℃において、E=128GPa、ρ
pipe=7100kg/m
3、Κ=2.157GPa)。これは他の金属材質のパイプにも当てはまる。
【0038】
肉厚損失による公称内径の変化は考慮していない。精度の少しばかりの向上は追加の労力に値するものではないが、そのような変化は簡単に組込む事が出来る。
【0039】
速度式、すなわち式(3)の一般的な形式を導出するにあたっては、微小なパイプ部分の質量保存の法則に基づいて、小さな項が無視される。このことは音響速度に対し無視してよい影響しか与えないと仮定される。仮に影響が小さく無いとしても、後述するパイプ中を流れる流体の体積弾性率の決定は、全肉厚測定方法を較正するようなものである。体積弾性率の逆算は、速度式を導出する際の近似(例えば、小さな項や慣性の影響を無視する。)の修正を暗に含んでいる。
【0040】
肉厚が線形に変化するパイプについて、パイプの最小肉厚t
minは式(18)又は(23)を用いて逆算する事が出来る。最大肉厚t
maxは、パイプの元々の肉厚と等しいと仮定され、これは通常わかっているか、又は一本のパイプのサンプルで計測する事が出来る。これは、パイプ断面の或る部分が、通常、その元々の肉厚を維持するという観測に基づき妥当と言える。この部分は、パイプ表面の通気性の違いによって生成される腐食電池のカソードに相当する。均一肉厚を有するパイプの最小肉厚は、式(20)又は(26)を用いて逆算される平均肉厚から、式(16)を用いても計算することができる。これによれば、線形に変化し、厚い肉厚のパイプに対する式(23)を用いて得られる結果よりも低い精度の結果が導かれるであろう。同じ固定条件では、式(18)、(20)又は(26)を用いるとt
minは低く見積もられる。パイプが均一肉厚プロファイルを有すると仮定出来るのであれば(或る特定領域に対する経験からわかるように)、平均肉厚を式(26)で逆算出来る。
【0041】
パイプ内の音響波の速度vは、周囲を取巻くことができる、又は既知の場所の音源により故意に発生させた音響ノイズ信号を相関させる事によって測定出来る。パイプの内径D、流体の体積弾性率Κ、その密度ρ、パイプ材料の弾性率E、及びポアソン比μは、通常良く知られているか容易に見つける事が出来る。
【0042】
本発明に係る方法を実施するためには、無限流体の音速v
o、又はその流体の体積弾性率及びその密度を知る必要がある。配水パイプの場合を考えると、拘束の無い純水中における音速は:
【数29】
によって与えられ、ここで、Tは水の摂氏温度(℃)である。この式は、引用により本願に組込まれる非特許文献5に基づいている。
【0043】
表1には、0℃から40℃の間の温度に対する、音速、密度、及び対応する体積弾性率が挙げられている。密度の値は、引用により本願に組込まれる非特許文献6に基づいている。体積弾性率の値は式(2)を用いて得られたものである。
【0045】
湖水の圧縮性に関する入手可能な情報は限られているが、純水とそれほど変わらないとされている(例えば、非特許文献7を参照。)。しかしながら、式(28)で与えられる音速は、MHz周波数での純水に対して得られた実験結果に基づいている。故に、配水パイプ中の音響信号において支配的である1000Hz以下の周波数での純水又は普通の水には、このことは当てはまらないであろう。非特許文献8には、水の場合の減衰を示すシステムが、分散、すなわち周波数に対する位相速度への依存を示すはずである事が示されている。また、非特許文献8には、低周波での音速が通常は高周波の時よりも遅い事が示されている。結果として、配水パイプ中の水の体積弾性率は表1に示されているよりも低くなり得る。
【0046】
一部の教科書やハンドブックにおいてウォーターハンマー分析用に使われている体積弾性率は表1に挙げられるものと同じであるが、一方で、他の教科書やハンドブックでは僅かに低い。体積弾性率の小さな相違がウォーターハンマー計算に与える影響は小さい。しかしながら、表1に挙げられている体積弾性率を本件の非破壊試験方法に用いた場合、予測される肉厚損失は大きく見積もられた。1247m/sの音速を有する肉厚12mm、口径152mmの鋳鉄パイプに対して、水の体積弾性率に対する予測肉厚の依存性が
図3に示されている。例えば、ある教科書の20℃で使用される2.2GPaに等しい体積弾性率を用いると、予測肉厚は8.3mmとなるが、他の教科書の20℃で使用される2.03GPaに等しい体積弾性率を用いると、予測肉厚は10.4mmとなる。
【0047】
肉厚計算に用いられる体積弾性率の適切な値に関する不確実性を、慎重な測定による本発明の実施形態によって、最少化することができる。まず、音速は、既知の肉厚、直径、及びヤング率を有する“基準”パイプに対して測定される。好ましくは、最近設置された既知のクラスのパイプが用いられるべきであり、そのヤング率は、掘返され又は放置されたサンプルに関して動的に測定されるべきである。その後、体積弾性率は、既知又は既に測定されたパイプのパラメータとともに、適切且つ理論的な音速の式、又は水が充満したパイプの数値モデルから逆算される。基準パイプと他のパイプの音速の測定は、パイプ内の流体の温度が同じになるように、互いに数日以内に行う必要がある。
【0048】
また、代替的に、基準パイプに対して年間の異なる時期における流体の体積弾性率と温度の一組の測定結果から立証された関係から体積弾性率を決定することもできる。本願で説明されるような体積弾性率の決定法は、全肉厚測定方法を較正するようなものである。体積弾性率の逆算は、速度式を導出する際の近似(例えば、小さな項や慣性の影響を無視する。)の修正を暗に含んでいる。
【0049】
下記は流体の体積弾性率とその温度との関係を求める例である。最近設置された口径152mmのクラス52セメントライニングダクタイル鉄配水パイプ音速を、20.8℃、11.7℃及び5.3℃の温度で測定した。
【0050】
円形断面のセメントライニングパイプに対して、音波速度は、非特許文献9に記載されている次式で求められる:
【数30】
ここで、vはパイプ中の音波速度、Κ
w及びρ
wはそれぞれ水の体積弾性率と密度であり、E
p、D及びe
pはそれぞれ、パイプのヤング率、内径、及び肉厚であり、E
l及びe
lはそれぞれセメント内張りのヤング率と肉厚であり;そしてμはダクタイル鉄とセメントライニングに対して同じであると仮定したポアソン比である。
【0051】
口径152mmのクラス52のダクタイル鉄パイプの金属部分とセメントライニングの厚さはそれぞれ7.9mm及び2mmである。セメントライニングの無い“同等”のダクタイル鉄パイプの肉厚は、式(28)からわかる通り、8.2mmである。同等のパイプはセメントライニングパイプと同じ音波速度を有する。ダクタイル鉄のヤング率は、
図4に見られるインパクトエコーテストを用いたロッドサンプルの共振周波数からわかるように、169GPaである;ポアソン比は0.3に等しいとされ;セメントライニングのヤング率は24GPaに等しいとされた。インパクトエコーテスト及び弾性率計算は、ASTM Standard E 1876−1: Standard test method for dynamic Young’s modulus, shear modulus, and Poisson’s ratio by impulse excitation of vibration,2001に従って行われた。
【0052】
水の体積弾性率は、予測パイプ肉厚が8.2±0.1mmに等しくなるまでその値を調節する事によって逆算された。弾性率は20.8℃で1.95GPa、11.7℃で1.875GPa、及び5.3℃で1.81GPaであることがわかった。逆算された弾性率に直線が付されたものが、式(28)で与えられるMHz周波数での純水の音速に基づいた弾性率とともに
図5に示されている。配水パイプ中の水に対して想定される
図5に示された5℃から25℃の範囲の温度では、高いMHz周波数での純水の弾性率は温度とともにほぼ線形に変化する。これは配水パイプ中の水の体積弾性率を予測する際の付された直線の妥当性を裏付けている。
【0053】
本発明の実施例に係る典型的な設定を
図1a及び
図1bに示す。埋設水パイプ10は消火栓12a、12b、12cを有する。センサ1及び2は消火栓のうち二つに取り付けられており、三つ目の消火栓はセンサ付き消火栓の外側のソースとなっている。
図1aにおいて、センサは消火栓12aと12bに取り付けられており、消火栓12cはソースとして作用する。この場合、伝播速度は消火栓12aと12bとの間の伝播時間を測定することによって求められる。伝播速度は、式v=D/ΔTで与えられ、ここでΔTはセンサ1と2で検知された信号間の時間遅延であり、消火栓12aと12bを主パイプ10に接続するパイプの長さは等しいと仮定している。
【0054】
図1bにおいて、消火栓12bはソースとして作用し、外乱はソースの両側にある消火栓12a、12cのセンサ1、2によって検知される。この場合、伝播速度は、式v=(L
2−L
1)/ΔTで与えられ、消火栓12aと12cを主パイプ10に接続するパイプの長さは等しいと仮定している。
【0055】
信号はセンサ1、2に取り付けられたトランスミッタ14から、CD ROM18のような記憶媒体からハードドライブに転送されたプログラムを実行するPC16に接続されたレシーバ15にリモートで送信される。コンピュータ16はウィンドウズ(登録商標)ベースであり(もちろん他の適切なオペレーティングシステムを使うこともできる。)、結果を
図2a及び
図2bに示すウィンドウに表示する。
図2aは測定結果を示す。
図2bはユーザーが、パイプの材料や温度等のような当該パラメータを入力するためのスクリーンである。信号はアナログ又はデジタル形式のどちらで送っても良い。代替的な設定として、センサ1、2からの信号をケーブルでPCに送信しても良い。また、音響信号間の時間遅延を計算して、パイプの肉厚を求めるために、PCのかわりに専用のハードウェアを用いても良い。
【0056】
センサが、テストされるパイプに接続されている消火栓に取り付けられている時は、接続パイプは地表でたどり、その長さを正確に計り、音響ソースからセンサまでの距離に組込まなければならない。仮に接続パイプをたどる事が不可能で、その長さがレイアウトの“最も妥当と思われる推測(best guess)”に基づいている場合には、その長さは精度の点でチェックされるべきである。そのための一つの方法は、異なる場所で最低2つのソースによって生成される音響ノイズの伝播速度を測定する事である。例えば、ブラケットの両側の2つのブラケット外(out‐of‐bracket)ソースを使うことができる。仮に音響源からのセンサの距離が、消火栓と主パイプとの間の接続パイプの長さの誤差により不正確であれば、2つのソースから誘起される音響ノイズの別々に測定された伝播速度は異なる。
【0057】
異なる場所での音響ソースによって誘起される音響信号の時間遅延、パイプ内の音響伝播速度及び接続パイプの長さの間の関係に基づいて、連立一次方程式を作る事が出来る。測定された音響ノイズ間の時間遅延は、飛行時間法、又は相互関係関数(従来法、又は増強法のいずれか)を用いて求められる。そして、音速は、連立一次方程式を解いて得られる。異なる場所における音響ソースの数は未知数に等しい。通常は2つか3つの音響ソースで十分である。
【0058】
例えば、未知の長さL
1及びL
2の垂直な接続パイプを有するメインパイプに接続された消火栓に取り付けられたセンサ1及び2の場合を考えてみる。消火栓に向かう接続パイプが主パイプから分岐する二点間の距離はDであり、正確に測定する事が出来る。センサ1及び2それぞれの側でブラケット外ソースによって誘起される音響信号間の時間遅延Δt
1及びΔt
2は、次式により音速v、L
1及びL
2に関係していて:
【数31】
これを解いて伝播速度を次のように求めることができる:
【数32】
【0059】
ここに説明された方法によって求められたパイプの肉厚は、音響信号が測定された二点間のパイプ部分の平均値である。これはこの方法の態様を制限するものでは無い。一般的に、土壌及び埋設条件は広範囲にわたって顕著に変化するものではないので、パイプはかなりの長さ、例えば100メートル等、にわたって略均一な肉厚プロファイルを有する。たとえ縦方向(長手方向)肉厚プロファイルが変化する状況であっても、復旧及び交換の長期計画の必要性の目的にとっては、パイプの残り寿命を評価する上で、平均肉厚プロファイルは、離散的な肉厚の値よりも妥当で有用である。
【0060】
世界の先進工業国のほとんど全ての水道施設は、老朽化した地下埋設配水パイプの取り替えに必要な資金の確保という大きな問題に直面している。パイプの金属損失を測定するため、つまりパイプの残りの肉厚を求めるための本発明の実施形態に係る本非破壊技術は、これらの水道施設に対して、パイプの残り寿命を計算することを可能にするデータを得るための信頼性があり正確な方法を提供する。これは専門的な裏付けのあるエンジニアリングデータに基づく資金計画を作成する事を可能にし、ひいては決定プロセスを強化する。
【0061】
本発明は建築業界(例えば、厳しい腐食にさらされる事がよく知られているスプリンクラーシステム)だけでは無く、オイル及びガス産業にも適用可能である。