特許第5930459号(P5930459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930459内容物噴射機構ユニット,内容物噴射機構およびエアゾール式製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930459
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】内容物噴射機構ユニット,内容物噴射機構およびエアゾール式製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/30 20060101AFI20160526BHJP
   B65D 83/14 20060101ALI20160526BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20160526BHJP
   B05B 1/08 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B65D83/30
   B65D83/14 200
   B05B9/04
   B05B1/08
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-36684(P2012-36684)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-144573(P2013-144573A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-275094(P2011-275094)
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】大島 保夫
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−263178(JP,A)
【文献】 特開平08−081991(JP,A)
【文献】 米国特許第04813602(US,A)
【文献】 実開平03−070760(JP,U)
【文献】 特開2010−207730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/14−83/74
B05B 1/08
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器本体の内容物を噴射するための弁作用を呈し、かつ、内容物通過用の通路域を備えたステムに取り付けられる内容物噴射機構ユニットにおいて、
前記通路域を通過した内容物の流入部と、
前記流入部から続く周方向の内面部分を持つ内容物通過用の閉空間域と、
前記流入部から前記周方向に離間した位置の前記内面部分に形成されている内容物の流出部と、
前記閉空間域に配設されて、かつ、前記流入部から流入する内容物の押圧作用により駆動される飛び飛びの凸状部および隣同士の当該凸状部間の凹状部を、外周面周方向に有する回転体と、を備え、
前記凸状部の先端部分と前記内面部分との間には内容物が通過する隙間が設定され、
前記回転体は、
前記凸状部および前記凹状部が設定されていない内側回転部分の空間域であって、回転方向に連続する内面および、当該内面に形成された衝突用凸状部を有する振動噴射用空間域と、
当該振動噴射用空間域に配されて、当該回転体の回転にともない、当該衝突用凸状部に当たることにより上方へ移動した後に落下して当該内面に当たる回転物と、を備えている、
ことを特徴とする内容物噴射機構ユニット。
【請求項2】
前記内容物通過用の閉空間域は、
平行円板部分と、当該平行円板部分同士の間に存在して前記流入部および前記流出部を備えた円筒部分と、により画定される内部空間域であり、
前記回転体は、
円板状の回転体である、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物噴射機構ユニット。
【請求項3】
前記振動噴射用空間域は、
前記衝突用凸状部が形成された外側内周面およびこれと対向する内側内周面からなる環状空間域であり、
前記回転物は、
前記上方へ移動して前記内側内周面に当たってから落下する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内容物噴射機構ユニット。
【請求項4】
前記流入部と前記流出部との間の前記周方向の内面部分における短い方の距離D1および、隣同士の前記先端部分それぞれの間の前記周方向の内面部分における短い方の距離D2は、
「距離D1>距離D2」に設定され、
前記隙間は、
任意の前記凹状部が前記流出部に対向した状態での当該凹状部の貯留内容物の多量噴射に続く、少量噴射時の内容物通過域として作用する小隙間である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物噴射機構ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の内容物噴射機構ユニットと、
前記エアゾール容器本体に取り付けられて、前記回転体の側面範囲の壁作用を呈する音拡大用カバーと、を備えている、
ことを特徴とする内容物噴射機構。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の内容物噴射機構ユニットまたは請求項5記載の内容物噴射機構を備え、かつ、前記エアゾール容器本体に内容物およびその噴射用液化ガスを収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品のステムに取り付けられる内容物噴射機構ユニット(以下必要に応じて単に「噴射ユニット」という)に関する。
【0002】
特にステムの弁作用部が継続的に開いた状態の噴射モードにおいて、内容物噴射ユニットの内容物流出部(噴射口)にいわば小振動を与える形の振動噴射状態を設定し、さらには内容物の「多量噴射」と「少量噴射」とを交互に繰り返す形の強弱パルス噴射状態を設定しえる、内容物噴射機構ユニットに関する。
【0003】
また、噴射ユニットに流入した内容物と後述のユニット内部の歯車状回転体との相互作用に基づいて生じる音を積極的に外部へ伝えようにした内容物噴射機構に関する。
【背景技術】
【0004】
従来、エアゾール式製品の噴射モードにおいて内容物噴射量を、ステムに取り付けた操作部材の内部に配設された内容物噴射量切替え機構の作用で周期的に切り換えることが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0005】
この従来の内容物噴射量切替え機構は、噴射口と連通する操作部材内部の内容物通過用空間域に、ピストン弁部材が、噴射口側を閉状態に設定する方向に弾性的に付勢された形の構成からなっている。
【0006】
ここで、内容物噴射量切替えの構成要素としては、ピストン弁部材の外に、
・弾性部材としてのコイルスプリング
・ピストン弁部材に取り付けられてステムから操作部材内部への流入径路を開閉する流入開閉弁
・コイルスプリングの一端側を受けてかつピストン弁部材の移動をガイドする支持部材
などがある。
【0007】
操作部材が例えば押圧されてステムの弁作用部が開状態(噴射モード)に移行すると、ステムを介して操作部材内部に流入する内容物の圧力によりピストン弁部材が噴射口側の閉位置から開位置へと弾性力に抗しながら移動する。
【0008】
このピストン弁部材の開位置への移動により、ステムから操作部材内部の内容物通過用空間域に流入済みの内容物が噴射口から外部空間域に噴射される。すなわち「内容物噴射あり」となる。
【0009】
また、このピストン弁部材の開位置への移動にともない、当該ピストン弁部材に取り付けられた流入開閉弁の閉作用で、ステムから操作部材内部の内容物通過用空間域への流入径路が閉じられて、ステムからの内容物流入はいったん終了する。
【0010】
この内容物流入の終了にともない、ピストン弁部材が弾性力の作用によりその初期位置である閉位置へ復帰して、内容物噴射状態は「(ステム弁作用部は依然開いたままでの)内容物噴射なし」に移行する。
【0011】
このピストン弁部材の閉位置復帰により、ステムから操作部材内部の内容物通過用空間域への流入径路が再度開き、内容物噴射状態は、操作部材内部へ内容物が流入してピストン弁部材がその開位置へ移動した状態、すなわち上述の「内容物噴射あり」の状態へと移行する。
【0012】
すなわち、操作部材が継続的に押圧された噴射モードにおいて、外部空間域への「内容物噴射あり」と「内容物噴射なし」とを交互に繰り返す形のパルス噴射動作を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実公平8−9033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように従来のエアゾール式製品の「パルス噴射動作」では、「内容物噴射あり」と「内容物噴射なし」とを交互に繰り返している。すなわち内容物の間歇噴射を実行しているにすぎない。
【0015】
本発明の内容物噴射機構は、新たな振動噴射という着想に基づくものである。すなわち、歯車形状などからなる回転体の内側回転部分(歯車形状などが存在しない中側回転部分)に環状空間域や球状空間域を形成してその中に例えば球状のボールを配し、噴射モードの当該回転体の回転動作にともなって、ボールと環状空間域などの内面とのいわば断続的な衝突作用を生じさせることにより、利用者の頭皮などの噴射対象部位に当接している噴射ユニット流出部を振動させて使用感アップ化を図ることを目的とする。
【0016】
また、内容物噴射状態を切り換えるための操作部材内部の構成要素として上述のピストン弁部材,コイルスプリング,流入開閉弁および支持部材を用いており、その部品点数が多く、内容物噴射量切替え機構の組立て作業も煩雑になるなどの問題点があった。
【0017】
そこで本発明においては、ステムに取り付けられる(流入部,流出部,これらの間の内容物通過用空間域などからなる)噴射ユニットの内容物通過用空間域に、流入内容物の押圧作用により駆動される飛び飛びの凸状部および隣同士の当該凸状部間の凹状部(以下この凸状部および凹状部を必要に応じて「歯車形状など」という。)を外周面周方向に形成した回転体を設ける、といった新たな概念のパルス噴射機構を採用している。また、噴射用液化ガスの使用を前提とする。
【0018】
この歯車形状などの採用により、流出部と対向した状態の、隣同士の凸状部の間の溜まり部(凹状部)の貯留内容物が、並存する液化ガスの作用で当該流出部からいわば一気に順次噴射され、かつ、第1の溜まり部の噴射からその隣の第2の溜まり部の噴射へと移行する過渡状態においても凸状部先端部分と内容物通過用空間域の内面との間のクリアランス用小隙間を介して少量の内容物噴射がおこなわれる。
【0019】
すなわち、内容物の多量噴射と少量噴射とを交互に行なうことにより、エアゾール式製品の内容物パルス噴射に関する技術の豊富化を図り、ひいては利用者サイドの利便化を図ることを目的とする。
【0020】
また、噴射ユニット内部のパルス噴射用構成要素を、歯車形状などからなる回転体とすることにより、噴射ユニット全体の部品点数の減少化,生産コストの低減化や組立て作業の簡単化を図ることを目的とする。
【0021】
また、噴射ユニットに流入した内容物とユニット内部の歯車状回転体との後述の相互作用に基づいて生じる音を積極的に外部へ伝え、これにより殺虫剤などの噴射動作確認音や殺虫剤噴射中の警告音として作動させエアゾール式製品使用環境の利便化,安全化を図り、さらには頭皮噴射タイプにおける利用者へのいわば刺激音,効果音などとして作動させ使用感向上化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器本体(例えば後述のエアゾール容器本体1)の内容物を噴射するための弁作用を呈し、かつ、内容物通過用の通路域を備えたステム(例えば後述のステム3)に取り付けられる内容物噴射機構ユニット(例えば後述の噴射ユニット本体4,8,歯車5,5',9,回転体5'')において、
前記通路域を通過した内容物の流入部(例えば後述の流入部4a,8a)と、
前記流入部から続く周方向の内面部分を持つ内容物通過用の閉空間域(例えば後述の内容物通過用空間域4b,8b)と、
前記流入部から前記周方向に離間した位置の前記内面部分に形成されている内容物の流出部(例えば後述の流出部4c,8c)と、
前記閉空間域に配設されて、かつ、前記流入部から流入する内容物の押圧作用により駆動される飛び飛びの凸状部(例えば後述の山部5a,5a',9a,平板凸状部5a'')および隣同士の当該凸状部間の凹状部(例えば後述のミゾ部5b,5b',凹状部5b'',液溜まり空間域9b)を、外周面周方向に有する回転体(例えば後述の歯車5,5',9,回転体5'')と、を備え、
前記凸状部の先端部分と前記内面部分との間には内容物が通過する隙間が設定され、
前記回転体は、
前記凸状部および前記凹状部が設定されていない内側回転部分の空間域であって、回転方向に連続する内面および、当該内面に形成された衝突用凸状部(例えば後述のリブ状部5e',5e'')を有する振動噴射用空間域(例えば後述の環状空間域5d',5d'')と、
当該振動噴射用空間域に配されて、当該回転体の回転にともない、当該衝突用凸状部に当たることにより上方へ移動した後に落下して当該内面に当たる回転物(例えば後述のボール5f',5f'')と、を備えている、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記内容物通過用の閉空間域は、
平行円板部分(例えば後述の有底円筒部4dの底部分,円形側板部4e)と、当該平行円板部分同士の間に存在して前記流入部および前記流出部を備えた円筒部分(例えば後述の有底円筒部4dの円筒部分)と、により画定される内部空間域であり、
前記回転体は、
円板状の回転体である、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記振動噴射用空間域は、
前記衝突用凸状部が形成された外側内周面およびこれと対向する内側内周面(例えば後述の回転軸5c',5c''の外周面)からなる環状空間域であり、
前記回転物は、
前記上方へ移動して前記内側内周面に当たってから落下する、
構成態様のものを用いる。
(4)上記(1)〜(3)において、
前記流入部と前記流出部との間の前記周方向の内面部分における短い方の距離D1および、隣同士の前記先端部分それぞれの間の前記周方向の内面部分における短い方の距離D2は、
「距離D1>距離D2」に設定され、
前記隙間は、
任意の前記凹状部が前記流出部に対向した状態での当該凹状部の貯留内容物の多量噴射に続く、少量噴射時の内容物通過域として作用する小隙間である、
構成態様のものを用いる。
(5)上記(1)〜(4)の内容物噴射機構ユニットと、
前記エアゾール容器本体に取り付けられて、前記回転体の側面範囲の壁作用を呈する音拡大用カバーと、を備えた、
内容物噴射機構を用いる。
【0023】
本発明は、以上の特徴を持つ内容物噴射機構ユニット,内容物噴射機構および、この内容物噴射機構ユニット,内容物噴射機構を備えたエアゾール式製品を対象にしている。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上の構成をとることにより、
(11)エアゾール式製品の振動をともなう内容物パルス噴射に関する技術の豊富化を図り、ひいては利用者サイドの利便化を図る、
(12)内容物噴射機構ユニット全体の部品点数の減少化,生産コストの低減化や組立て作業の簡単化を図る、
(13)利用者の頭皮などの噴射対象部位に当接している噴射ユニット流出部を振動させて使用感アップ化を図る、
(14)エアゾール式製品使用環境の利便化,安全化を図り、また、頭皮噴射タイプにおける使用感向上化を図る、
ことなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ボール無し歯車を用いた内容物噴射機構の静止モードを示す本発明の参考形態説明図である。
図2図1の内容物噴射機構の噴射モード(振動噴射なし,多量噴射)を示す本発明の参考形態説明図である。
図3図1の内容物噴射機構の噴射モード(振動噴射なし,少量噴射)を示す本発明の参考形態説明図である。
図4】ボール有り歯車を用いた本発明内容物噴射機構の噴射モード(振動噴射・ボール下衝突時,多量噴射)を示す説明図である。
図5】ボール有り歯車を用いた本発明内容物噴射機構の噴射モード(振動噴射・ボール上衝突時,少量噴射)を示す説明図である。
図6図4の一部断面状態を示す説明図である。
図7】ボール有り回転体(非歯車形状)を用いた本発明内容物噴射機構の噴射モード(振動噴射・ボール下衝突時,多量少量の強弱パルス噴射なし)を示す説明図である。
図8】音拡大用カバーを備えた内容物噴射機構の噴射モード(振動噴射なし,多量少量の強弱パルス噴射あり)を示す本発明の参考形態説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1図8を用いて本発明を実施するための形態を説明する。なお、図1図3図8はそれぞれ本発明の参考形態を説明するための図である。
【0027】
図1図8を用いた以下の記載では単なる説明の便宜上、噴射対象物が、図1図7では液状育毛剤であり、図8では殺虫剤であることを前提としている。
【0028】
なお、これらの図においてアルファベット付き参照番号が示す構成要素(例えば流入部4a)は原則として、アルファベットなしの参照番号の構成要素(例えば噴射ユニット本体4)の一部であることを示す。
【0029】
図1図8において、
1は各種内容物および噴射剤(液化ガス)を収容したエアゾール容器本体,
1aは当該エアゾール容器本体の胴部分上端側に巻き締め加工などにより固定された肩カバー(図8),
1bは当該エアゾール容器本体と肩カバー1aとの固定部分下方に形成された周知の環凹状部(図8),
2はエアゾール容器本体1の開口部に取り付けられた周知のマウンティングキャップ,
3はマウンティングキャップ2に取り付けた周知のハウジング(図示省略)に設けられて、内容物噴射操作によりエアゾール容器本体1の内容物を外部空間域に噴射させるための吐出弁作用を呈し、かつ、内容物通過用の通路域を備えた周知のステム(バルブ),
をそれぞれ示している。
【0030】
図1図7において、
4はステム3の出力側に取り付けられた噴射ユニット本体,
4aはステム3の出力側から図示上下方向に続く当該噴射ユニット本体の流入部,
4bは流入部4aの出力側に続く当該噴射ユニット本体の内容物通過用空間域(内容物通過用の閉空間域),
4cは内容物通過用空間域4bから外部へと図示上下方向に通じる当該噴射ユニット本体の流出部(噴射口),
4dは当該噴射ユニット本体の一方の構成要素であって、シャーレ形状の有底円筒部(円筒部分+平行円板の一方),
4eは当該噴射ユニット本体の他方の構成要素であって、有底円筒部4dとともに内容物通過用空間域4bを画定する円形側板部(平行円板の他方),
4fは有底円筒部4d(の底部分)および円形側板部4eの各内面中心部分にそれぞれ形成されて後述の回転軸5c,5c'を受ける一対の凹状部,
4gは流入部4aよりも大径の部分であってステム3が取り付けられる内容物流入側の開口部,
をそれぞれ示している。
【0031】
また、
5は内容物通過用空間域4bに回転可能な形で設けられた、平板形状からなるボール無しの単一の歯車(円板状の回転体:図1図3),
5aは有底円筒部4dの内周面との間に所定長のクリアランス用小隙間を有している計12箇所の山部(凸状部),
5bは計12箇所のミゾ部(凹状部),
5cは当該歯車の左右側面(上面および下面)の中心部分から外側にそれぞれ形成されて、図6と同様に一対の凹状部4fに保持される凸状の回転軸,
5'は内容物通過用空間域4bに回転可能な形で設けられた、有底円筒形状からなるボール有りの単一の歯車(円板状の回転体:図4図6),
5a'は有底円筒部4dの内周面との間に所定長のクリアランス用小隙間を有している計12箇所の山部(凸状部),
5b'は計12箇所のミゾ部(凹状部),
5c'は当該歯車の底面中心からその両側にそれぞれ連続する態様で形成された直線単一形状の回転軸,
5d'は当該歯車の内側回転部分(山部5a,ミゾ部5bが形成されていない中側部分)に設定された凹溝形状の環状空間域(振動噴射用空間域),
5e'は環状空間域5d'の外側内周面に略等間隔でそれぞれ回転軸5c'と略同一方向に形成された計6個の、円柱の一部周面形状からなるリブ状部,
5f'は環状空間域5d'に回転自在な形で配された球状のボール(周方向回転物),
をそれぞれ示している。
【0032】
また、
5''は内容物通過用空間域4bに回転可能な形で設けられた、有底円筒形状からなるボール有りの単一の回転体(円板状の回転体:図7),
5a''は当該回転体の外周面の幅方向(図面と直交する方向)に回転後方へ傾斜する態様で形成されて、有底円筒部4dの内周面との隙間を有する計12箇所の平板凸状部,
5b''は隣同士の当該平板凸状部の間に設定された計12箇所のV字谷状の凹状部,
5c''は当該回転体の底面中心からその両側にそれぞれ連続する態様で形成されて、図6と同様に一対の凹状部4fに保持される直線単一形状の回転軸,
5d''は当該回転体の内側回転部分(平板凸状部5a'',凹状部5b''が形成されていない中側部分)に設定された凹溝形状の環状空間域(振動噴射用空間域),
5e''は環状空間域5d''の外側内周面に略等間隔でそれぞれ回転軸5c''と略同一方向に形成された計6個の、円柱の一部周面形状からなるリブ状部,
5f''は環状空間域5d''に回転自在な形で配された、ボール5f'と同一形状のボール(周方向回転物),
をそれぞれ示している。
【0033】
また、
6は隣同士の山部5a,5a'と、当該山部の間のミゾ部5b,5b'と、有底円筒部4dおよび円形側板部4eそれぞれの対向内面部分と、によって画定される計十二個の液溜まり空間域(図1図6),
6a〜6dは図示の歯車5,5'において、流入部4aから流出部4cまでの、内容物通過用空間域4bの短内周面側に位置する計四個の連続した液溜まり空間域,
7は内容物の噴射対象部位である頭皮,
Lは流出部4cからの多量噴射状態(図2図4),
Sは流出部4cからの少量噴射状態(図3図5),
D1は流入部4aと流出部4cとの間の周方向(円形側板部4eの周縁方向)短部分の距離,
D2は隣同士の山部5a,5a'の間の周方向(円形側板部4eの周縁方向)の距離,
をそれぞれ示している。
【0034】
図8において、
8はステム3の出力側に取り付けられた有底円筒状(流入部や流出部を捨象した当該円筒状部分自体の形状は図1図7のそれと同一態様)の噴射ユニット本体,
8aはステム3の出力側から図示上下方向に続く当該噴射ユニット本体の流入部,
8bは流入部8aの出力側に続く当該噴射ユニット本体の内容物通過用空間域(内容物通過用の閉空間域),
8cは内容物通過用空間域8bから外部へと図示左右方向に通じる当該噴射ユニット本体の流出部,
8dは流入部8aよりも大径の部分であってステム3が取り付けられる内容物流入側の開口部,
をそれぞれ示している。
【0035】
また、
9は内容物通過用空間域8bに回転可能な形で設けられた、平板形状からなるボール無しの単一の歯車,
9aは噴射ユニット本体8の円筒部内周面との間に所定長のクリアランス用小隙間を有している計8箇所の山部(凸状部),
9bは隣同士の山部9aの間に形成される計8箇所の液溜まり空間域(凹状部),
9cは当該歯車の左右側面(上面および下面)の中心部分から外側にそれぞれ形成されて、図1図7と同様に噴射ユニット本体8の内周面に設けられた一対の凹状部に保持される凸状の回転軸,
10は流出部8cの出口側に取り付けられたノズルチップ,
10aは当該ノズルチップに設けられた噴射口,
をそれぞれ示している。
【0036】
また、
11は内容物の噴射操作時にもエアゾール容器本体側(環凹状部1b)との係合状態に保持される筒状のカバー体(音拡大用カバー体)
11aは当該カバー体の下端側内周面部分に複数形成されて、エアゾール容器本体1の環凹状部1bと嵌合する凸状部,
11bは押圧回動式の操作部,
11cは操作部11bの押圧操作時に回動中心軸として作用する連結部,
11dは操作部11bの両側(図面の表裏各面側)にあたるカバー体部分であって、当該操作部および噴射ユニット本体8それぞれの両側面範囲の壁作用を呈する一対の起立張出部,
をそれぞれ示している。
【0037】
以上の各構成要素の中、ステム3,噴射ユニット本体4,歯車5,5',回転体5'',噴射ユニット本体8,歯車9,ノズルチップ10およびカバー体11は、ナイロン,ポリアセタール,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどからなる合成樹脂製や、金属製のものである。なお、ボール5f',5f''は金属製,合成樹脂製やガラス製のものである。
【0038】
エアゾール容器本体1およびマウンティングキャップ2は金属製のものである。
エアゾール容器本体1,マウンティングキャップ2およびステム3などは既製の各部品を用いることができる。
【0039】
噴射ユニット本体4は、歯車5,5'や回転体5''を装填した状態の有底円筒部4dに円形側板部4eを溶着などの手法で固定することにより得られる。他の任意の固定手段を用いてもよいことは勿論である。図8の、歯車9を装填した噴射ユニット本体8の作成手法も同様である。
【0040】
上記クリアランス用小隙間などの数値の単なる一例をあげれば、
・有底円筒部4d(内容物通過用空間域4b)の内径:20.0mm
・有底円筒部4dの内周面と山部5a,5a'の先端部分との間の、第1のクリアランス用小隙間:0.05mm(図1図6
・有底円筒部4dの内周面と平板凸状部5a''の先端部分との隙間:0.3mm(図7
・歯車5,5'および回転体5''それぞれの上面,下面(図1図5図7の紙面との平行面)と、有底円筒部4dおよび円形側板部4eそれぞれの内平面との間の、第2のクリアランス用小隙間:0.05mm
・回転軸5c'の直径(≒環状空間域5dの'内径):3.6mm
・環状空間域5dの'外径(リブなし部分):12.8mm
・リブ状部5e'の最大高さ(最大厚み):0.4mm
・ボール5f'の直径:4.0mm
・回転軸9cの直径:1〜5mm(図8
・噴射ユニット本体8の内周面と山部(凸状部)9aの先端部分との間の、第3のクリアランス用小隙間:0.05〜0.2mm(図8
・歯車9の上面,下面(図8の紙面との平行面)と、噴射ユニット本体8の内平面(図8の紙面との平行面)との間の、第4のクリアランス用小隙間:0.05〜0.2(図8
などである。
【0041】
ここで、噴射ユニット本体4,8の流入部4a,8aと流出部4c,8cとは、
・液溜まり空間域6および、山部5a,5a'の先端と有底円筒部4dの内周面との小隙間(図1図6
・平板凸状部5a''の先端と有底円筒部4dの内周面との隙間(図7
・液溜まり空間域9bおよび、噴射ユニット本体8の内周面と歯車9の山部9aの先端との隙間(図8
などによりそれぞれ連通している。
【0042】
また、上述の距離D1,D2は「D1>D2」に設定されている。そのため、図1図6図8における歯車回転中の少なくとも一つの液溜まり空間域6,9bの全体(当該空間域の両側の山部同士の間)が確実に、流入部4a,8aの出口部分と流出部4c,8cの入口部分との間の有底円筒部4d,噴射ユニット本体8それぞれの短内周面部分に対向した状態となる。
【0043】
噴射ユニット本体4,8およびその中の歯車5,5',9や回転体5''からなる全体構造は、内容物噴射機構ユニット(噴射ユニット)を構成している。
【0044】
なお、図1図3の噴射ユニットは内容物の強弱パルス噴射のみの対応ユニットであり、図4図6の噴射ユニットは内容物の強弱パルス噴射および振動噴射の対応ユニットであり、図7の噴射ユニットは内容物の振動噴射のみの対応ユニットであり、また、図8の噴射ユニットは内容物の強弱パルス噴射のみの対応ユニットである。
【0045】
これらの噴射ユニットそれぞれの開口部4g,8dを、そのサイズと合致する各種エアゾール製品のステム3に取り付けることにより上述したように、
(21)ボール有りの歯車5'や回転体5''を備えた噴射ユニットにおいては、噴射ユニット自体がいわば小振動する、すなわち利用者の頭皮7に振動感を与える振動噴射状態が設定され、
(22)歯車5,5',9を備えたいずれの噴射ユニットでは、内容物噴射量の「多い」、「少ない」を繰り返す形の強弱パルス噴射状態も設定されえる。
【0046】
以下、段落番号〔0067〕までの記載は図1図7の噴射ユニットを使用することを前提としている。
【0047】
上述したようにボール有りの歯車5'を備えた噴射ユニット(図4図6)の場合、強弱パルス噴射状態および振動噴射状態の双方が設定される。
【0048】
図4図7の振動噴射動作は概略、
(31)凹溝形状の環状空間域5d',5d''に球状のボール5f',5f''を配した歯車5'および回転体5''の回転にともない、当該ボールが当該歯車などのリブ状部5e',5e''にぶつかって上方に移動し、
(32)この移動後のボール5f''は回転軸5c',5c''にぶつかって落下し、
(33)その後も歯車5',回転体5''の回転により、(31)のボール上方移動と(32)のボール落下とが繰り返され、
(34)この繰り返しにともない、歯車5',回転体5''およびこれらを保持している噴射ユニット本体4が略上下方向に連動し、
(35)その結果、頭皮7に当接済みの流出部4cが小振動して利用者にいくらかの刺激感を与える、
ことである。
【0049】
図1図6の内容物噴射機構ユニットの強弱パルス噴射動作は概略、
(41)流入部4aから内容物通過用空間域4bへの内容物流入状態における歯車5,5'の回転にともない、内容物が充填済みの液溜まり空間域6a,6b,6cの中でいわば先頭の液溜まり空間域6aが流出部4cの入口部分との対向位置へ進んだとき、この液溜まり空間域6aの内容物が、液化ガスの作用により当該流出部から頭皮7へいわば一気に多量噴射され(図2図4参照)、
(42)この多量噴射時点のいわば直後の歯車回転位置においては、液溜まり空間域6aの回転方向後方の山部5a,5a'(の先端)と、有底円筒部4dの内周面との間のクリアランス域を経てその上流域(液溜まり空間域6bなど)から、内容物が頭皮7へ少量噴射され、かつ、液溜まり空間域6dに内容物が充填され(図3図5参照)、
(43)その後も歯車5,5'の回転により、上流側方向に連続する液溜まり空間域6b,6c,6d・・・の充填内容物それぞれごとに、(41)の多量噴射と(42)の少量噴射とが繰り返される、
ことである。
【0050】
なお、図示の歯車5,5'の一回転にともなう多量噴射と少量噴射との間の切り替わり回数は、液溜まり空間域6の総数(=山部5aの総数)に対応した12回となる。
【0051】
図1図7の各エアゾール式製品は、利用者が、図1の静止モードの当該製品を略上下反転させた状態で、噴射ユニット本体4の流出部4cの先端部分を頭皮に押し付けることにより、噴射ユニット本体4およびこれと一体のステム3が当該押付けに対応した任意の方向に傾斜するチルトタイプの製品である。
【0052】
このチルトタイプのステム動作自体は周知である。
すなわち、ステム3の傾斜にともない周知の弁作用部(図示省略)が開き、エアゾール容器本体1の内容物および液化ガスがステム3および流入部4aを通過して内容物通過用空間域4bへ流入する。
【0053】
そして、図1図6の噴射ユニット使用のエアゾール式製品の場合、この流入した内容物および液化ガスは、流入部4aの出口部分と対向している液溜まり空間域6(例えば液溜まり空間域6a)の対応山部5aの流入側の面部分を押圧しながら、当該液溜まり空間域に充填されていく。
【0054】
また、図7のエアゾール式製品の場合も、流入部4aから内容物通過用空間域4bへ流入した内容物および液化ガスは、図1図6のそれと同様に流入部4aの出口部分と対向している対応平板凸状部5a''の流入側の面部分を押圧する。
【0055】
これら内容物などの対応山部や対応平板凸状部への押圧作用により、歯車5,5'および回転体5''が図示時計方向に回転しはじめる。
【0056】
この歯車5,5'および回転体5''の回転動作は、ステム3が傾斜している間、すなわち利用者が噴射ユニット本体4の流出部4cの先端部分を頭皮に押し付けることを止めるまで継続する。
【0057】
また、図1図6における歯車5,5'の回転動作継続にともない、液溜まり空間域6aの上流側の液溜まり空間域6b,6cにも内容物および液化ガスが充填される。
【0058】
このとき当然のことながら、内容物および液化ガスは、有底円筒部4dの内周面と山部5a,5a'の先端との間のクリアランス域にも流れていく。
【0059】
そして図2図4で示すように、流出部4cの入口部分に液溜まり空間域6aが対向した回転位相段階において、その中の内容物が液化ガスの作用によりいわば一気に当該流出部から頭皮7へ噴射される。すなわち内容物が多量噴射される。
【0060】
この多量噴射直後の歯車5,5'の回転位相段階(図3図5参照)、すなわちまだ次の液溜まり空間域6bが流出部4cの入口部分に対向していない段階では、上述したように山部5a,5a'の先端と、有底円筒部4dの内周面との間(小隙間)のクリアランス域を経て液溜まり空間域6aの上流域である液溜まり空間域6bなどから内容物が頭皮7へ少量噴射され、かつ、液溜まり空間域6dに内容物が充填される。
【0061】
そして、歯車5,5'の回転が続く間、すなわち利用者が頭皮7へ流出部4cを押し当てる操作を止めるまで、液化ガスの作用に基づく上述の多量噴射と少量噴射とが交互に繰り返される。
【0062】
なお、図4および図5の内容物噴射機構ユニットの場合、各リブ状部5e'と各液溜まり空間域6とのいわば周方向位相関係が、ボール5f'がリブ状部5e'にぶつかったときに「多量噴射」、その直後のボール5f'が回転軸5c'にぶつかったときに「少量噴射」となるように記載している。
【0063】
この周方向位相関係は図示の状態に限定されるものではない。
すなわち、ボール5f'がリブ状部5e',回転軸5c'にぶつかるタイミングと、「多量噴射」,「少量噴射」の切り替わりのタイミングと、の間に特別の関連性を持たせる必要はない。
【0064】
そして、図4図7のボール有りの歯車5'や回転体5''を備えた内容物噴射機構ユニットでは、上記(31)〜(35)で述べたように頭皮7と当接している流出部4cの振動動作が生じる。
【0065】
図4図6の内容物噴射機構ユニットでは、この振動噴射と、多量噴射および少量噴射の繰り返し動作とが生じる。
【0066】
図示の内容物噴射機構ユニットの試作品にかかるエアゾール式製品の内容物噴射状態を検証・測定(撮影)したところ、1秒あたり8〜10回の「多量噴射」,「少量噴射」の噴射量変化が生じることを確認できた。
【0067】
また、ボール有りの歯車5'や回転体5''を備えた内容物噴射機構ユニットの流出部4cにおける振動感も確認できた。
【0068】
図8は、内容物の強弱パルス噴射のみの噴射ユニットを使用した、噴霧式のエアゾール製品であり、エアゾール容器本体に操作部を有する共鳴用のカバー体を設けたこと、プッシュ式動作のステムであること、噴射ユニットの出力部に噴霧用のノズルチップを設けたこと、などが図1図3とのエアゾール製品と異なっている。
【0069】
図8のエアゾール式製品は、利用者が、操作部11bを押し下げることにより、噴射ユニット本体8およびこれと一体のステム3が下動するプッシュタイプの製品である。
【0070】
このプッシュタイプのステム動作自体は周知である。すなわち、ステム3の下動にともない周知の弁作用部(図示省略)が開き、エアゾール容器本体1の内容物および液化ガスがステム3および流入部8aを通過して内容物通過用空間域8bへ流入する。
【0071】
そして、図1図3の内容物噴射機構ユニットの強弱パルス噴射動作と同様に、
歯車9が回転し、内容物は流出部8cを通過して噴射口10aから外部空間に多量噴射と少量噴射とが繰り返しながら放出される。
【0072】
このとき、噴射ユニット本体8の流入部8aから内容物通過用空間域8bへ流入する内容物および液化ガスの流れは歯車9の外周面や山部9aにいわば衝突し、また、回転状態の歯車9の山部(凸状部)9aによって断続的に流路を狭められて脈動を発生する。
【0073】
なお、歯車9は、噴射ユニット本体8に流入する液化ガスの圧力,当該歯車の形状や軸受構造などに応じて20回/秒以上の高速回転状態となりえる。
【0074】
このように図8のエアゾール製品の噴射モードにおいては、流入内容物と歯車9との間の相互作用や歯車自体の高速回転作用により歯車側からの音が生じる。
【0075】
この音は、カバー体11の内部空間で反射・共鳴することで拡大され、効率的に外部空間に伝播する。
【0076】
そのためエアゾール式製品の利用者やその周囲にいる人は、この伝播音によりエアゾール式製品が作動中で、例えば殺虫剤などの噴射されていることに気づく。
【0077】
なお、カバー体11は音の反射・共鳴機能だけではなく、一般的なエアゾール式製品用のカバー体と同じく、起立張出部11dによって操作部11bの誤操作を防ぎ、内部機構である噴射ユニット本体8を保護する機能も有している。
【0078】
また、図1図7の頭皮噴射対象のエアゾール式製品に図8と同様、噴射ユニット本体4の側壁を設けた場合にも、利用者に対する一種の刺激音,効果音を積極的に与えることができる。
【0079】
本発明が、図示の内容物噴射機構ユニットに限定されないことは勿論であって例えば、
(51)図面および上記数値例で示した構成要素それぞれの個数,長さ,重さなどを適宜変更する、例えば上記第1〜第4のクリアランス用小隙間を「0.03〜0.2mm」の値に変更する、
(52)環状空間域5d',5d''に代えて、その中の回転軸部分を省略した形の円筒状空間域を設定する、
(53)歯車5',回転体5''の環状空間域5d',5d''や(52)の円筒状空間域に側板部(蓋板)を取り付ける、
(54)円柱の一部周面形状からなるリブ状部5e'に代えて、球の一部周面形状からなる凸状部を用いる、
(55)球状のボール5f'に代えて、円柱状体,円筒状体,ラグビー形状ボールなどの部材を用いる、
(56)歯車5,5',9や回転体5''に代えて、凹状部と凸状部とを外周面周方向に形成したいわゆるディンプル形状の外周面からなる回転体を用いる、
(57)噴射モード設定操作の際に傾斜せずに略下方向へのみ移動するプッシュツダウンバルブステムを用いる、
(58)内容物噴射機構ユニットに各種タイプの噴射モード設定用操作部を取り付ける、
ようにしてもよい。
【0080】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、育毛剤,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0081】
エアゾール容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0082】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0083】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0084】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0085】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0086】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0087】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0088】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0089】
エアゾール式製品の内容物噴射用ガスとしては、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0090】
1:エアゾール容器本体
2:マウンティングキャップ
3:ステム(バルブ)
4:噴射ユニット本体
4a:流入部
4b:内容物通過用空間域
4c:流出部
4d:シャーレ形状の有底円筒部
4e:円形側板部
4f:一対の凹状部
4g:内容物流入側の開口部
5:平板形状からなるボール無しの歯車(回転体:図1図3
5a:山部,
5b:ミゾ部
5c:回転軸
5':有底円筒形状からなるボール有りの歯車(回転体:図4図6
5a':山部
5b':ミゾ部
5c':回転軸
5d':凹溝形状の環状空間域
5e':リブ状部
5f':球状のボール
5'':回転体(図7
5a'':平板凸状部
5b'':V字谷状の凹状部
5c'':回転軸
5d'':凹溝形状の環状空間域
5e'':リブ状部
5f'':ボール(周方向回転物)
6(6a〜6d):液溜まり空間域
7:頭皮
8:噴射ユニット本体
8a:流入部
8b:内容物通過用空間域
8c:流出部
8d:開口部
9:歯車
9a:山部
9b:液溜まり空間域
9c:回転軸
10:ノズルチップ
10a:噴射口
11:カバー体
11a:凸状部
11b:操作部
11c:連結部
11d:起立張出部
L:多量噴射状態(図2図4
S:少量噴射状態(図3図5
D1:流入部4aと流出部4cとの間の周方向短部分の距離
D2:隣同士の山部5a,5a'の間の周方向短部分の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8