(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930481
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】コネクタ組立体およびオス型コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/26 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
A61M39/26
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-522933(P2013-522933)
(86)(22)【出願日】2012年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2012066514
(87)【国際公開番号】WO2013002320
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-146338(P2011-146338)
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】千田 高寛
(72)【発明者】
【氏名】小山 美雪
(72)【発明者】
【氏名】吉野 敬亮
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/133754(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/069052(WO,A1)
【文献】
特表2010−538694(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/029056(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/014525(WO,A1)
【文献】
特開2012−254142(JP,A)
【文献】
特開2011−025066(JP,A)
【文献】
特表2010−518330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続するオス型コネクタとメス型コネクタとを備えるコネクタ組立体であって、
前記オス型コネクタは、
筒状の外壁部、前記外壁部の基端に形成された底部、および、前記底部から前記外壁部の内部に突出した筒状の内壁部を有し、前記外壁部の内周面の先端側には前記メス型コネクタと係合するオス側接続部が形成された外筒部と、
前記外壁部の先端側に弁体表面が露出するように配置され、スリットが形成されたオス側弁体部と、
前記外筒部に対して相対移動可能に設けられ、前記オス側弁体部を保持する筒状体からなり、その内部に前記内壁部が挿通された弁体保持部と、
前記外筒部に対して相対移動可能に設けられ、前記内壁部の内部に配置された筒状体からなり、その外周面が前記内壁部の内周面と当接すると共に、その内部に液体の流路が形成された内筒部と、を備えており、
前記メス型コネクタは、
内部に液体の流路が形成された筒状体からなり、その外周面の基端側に前記オス型コネクタの前記オス側接続部と係合するメス側接続部が形成されたコネクタ本体部と、
前記コネクタ本体部の基端側に弁体表面が露出するように配置され、スリットが形成されたメス側弁体部と、を備えており、
前記メス型コネクタと前記オス型コネクタを接続する際には、前記メス側弁体部に前記オス側弁体部を当接し、その状態から、前記外筒部を前記オス側接続部が前記メス側接続部に係合される位置まで、前記コネクタ本体部の外周面に沿って先端側に移動することによって、前記オス側接続部と前記メス側接続部との係合により前記メス型コネクタに前記オス型コネクタが固定され、同時に、前記内壁部が前記オス側弁体部および前記メス側弁体部の前記スリットを開口させる構成となっており、
前記メス型コネクタから前記オス型コネクタを取り外す際には、前記外筒部を前記コネクタ本体部の外周面に沿って基端側に移動することによって、前記オス側接続部と前記メス側接続部との係合が解除され、前記メス型コネクタから前記オス型コネクタが取り外される構成となっていることを特徴とするコネクタ組立体。
【請求項2】
前記内壁部は、その先端側に先細りする傾斜面を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載のコネクタ組立体。
【請求項3】
前記内壁部は、前記傾斜面に開口し、前記内筒部に形成された前記流路と連通する開口部を有することを特徴とする請求の範囲第2項に記載のコネクタ組立体。
【請求項4】
前記メス側弁体部は、前記弁体表面を形成する板状の弁本体部と、前記弁本体部の周縁から延出して前記コネクタ本体部と嵌合するリブと、を備えることを特徴とする請求の範囲第1項ないし請求の範囲第3項のいずれか一項に記載のコネクタ組立体。
【請求項5】
前記メス側弁体部は、前記弁体表面を形成する頭部と、前記頭部に連続して筒状に形成され、長さ方向に弾性変形する蛇腹状の胴部と、を備え、
前記内壁部の押圧によって、前記胴部が長さ方向に収縮し、前記頭部に形成されたスリットが開口する構成となっていることを特徴とする請求の範囲第1項ないし請求の範囲第3項のいずれか一項に記載のコネクタ組立体。
【請求項6】
内部に液体の流路が形成された筒状体からなり、外周面の基端側にメス側接続部が形成されたコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の基端側に弁体表面が露出するように配置され、スリットが形成されたメス側弁体部とを備えるメス型コネクタと接続するオス型コネクタであって、
筒状の外壁部、前記外壁部の基端に形成された底部、および、前記底部から前記外壁部の内部に突出した筒状の内壁部を有し、前記外壁部の内周面の先端側には前記メス型コネクタの前記メス側接続部に係合するオス側接続部が形成された外筒部と、
前記外壁部の先端側に弁体表面が露出するように配置され、スリットが形成されたオス側弁体部と、
前記外筒部に対して相対移動可能に設けられ、前記オス側弁体部を保持する筒状体からなり、その内部に前記内壁部が挿通された弁体保持部と、
前記外筒部に対して相対移動可能に設けられ、前記内壁部の内部に配置された筒状体からなり、その外周面が前記内壁部の内周面と当接すると共に、その内部に液体の流路が形成された内筒部と、を備え、
前記メス型コネクタに接続する際には、前記メス側弁体部に前記オス側弁体部を当接し、その状態から、前記外筒部を前記オス側接続部が前記メス側接続部に係合される位置まで、前記コネクタ本体部の外周面に沿って先端側に移動することによって、前記オス側接続部と前記メス側接続部との係合により前記メス型コネクタに固定され、同時に、前記内壁部が前記オス側弁体部および前記メス側弁体部の前記スリットを開口させる構成となり、
前記メス型コネクタから取り外す際には、前記外筒部を前記コネクタ本体部の外周面に沿って基端側に移動することによって、前記オス側接続部と前記メス側接続部との係合が解除され、前記メス型コネクタから取り外される構成となっていることを特徴とするオス型コネクタ。
【請求項7】
前記内壁部は、その先端側に先細りする傾斜面を有することを特徴とする請求の範囲第6項に記載のオス型コネクタ。
【請求項8】
前記内壁部は、前記傾斜面に開口し、前記内筒部に形成された前記流路と連通する開口部を有することを特徴とする請求の範囲第7項に記載のオス型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具に用いられ、液体の流路を接続するためのコネクタ組立体およびオス型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の流路の接続を必要とする医療用具においては、液体を持続的、一時的に流す際、液体の流路の接続、取り外しを必要に応じて行う。このとき、流路の途中に流路の接続、取り外しを行うコネクタ組立体を配置することが知られている。
【0003】
例えば、尿管理の際に使用される医療用具においては、尿道カテーテルのカテーテル本体の端部に備えられたカテーテル側コネクタと、採尿バッグに接続された採尿チューブの端部に備えられたバッグ側コネクタとを嵌合等によって接続してコネクタ組立体を形成する。そして、コネクタ組立体を介して尿道カテーテルの流路と採尿チューブの流路とが接続される。
【0004】
従来、このようなコネクタ組立体としては、特許文献1、2に記載された形態のものが使用されている。具体的には、特許文献1には、コネクタ組立体のカテーテル側コネクタとしての雌コネクタと、コネクタ組立体のバッグ側コネクタとしての雄コネクタが記載され、雄コネクタには、スリットを有する弾性ブーツ(弁体部)が備えられていることが記載されている。そして、特許文献1のコネクタ組立体では、雄コネクタに雌コネクタが嵌合されると、雄コネクタの弾性ブーツが長さ方向に収縮し、その収縮に伴ってスリットが開口することによって、雌コネクタの流路と雄コネクタの流路とが接続される。
【0005】
特許文献2には、コネクタ組立体のカテーテル側コネクタとしての第1のコネクタ、コネクタ組立体のバッグ側コネクタとしての第2のコネクタが記載され、第1のコネクタが第1のハウジングとその端部を覆う第1のバルブ(第1弁体部)とを備え、第2のコネクタが第2のハウジングとその端部を覆う第2のバルブ(第2弁体部)とを備えることが記載されている。そして、特許文献2のコネクタ組立体では、第1のハウジングと第2のハウジングが嵌合することによって、第1のバルブと第2のバルブとが当接すると共に、第1のコネクタと第2のコネクタとが接続、固定される。また、コネクタを固定後、第2のハウジングの中に第2のバルブと近接するように配置されたステムを、第2のバルブおよび第1のバルブの両スリットを押し開くように、第1のバルブ側に可動することによって、第1のコネクタの流路と第2のコネクタの流路とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−25066号公報
【特許文献2】特開2010−518330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された雌コネクタが弁体部を備えていないコネクタ組立体では、その流路が開放状態になっている。そのため、雌コネクタと雄コネクタとを接続、取り外しする際、バッグ側の雄コネクタの弾性ブーツ(弁体部)が尿漏れ等で汚染された場合には、弾性ブーツによってカテーテル側の雌コネクタの流路が汚染され、流路内で菌が繁殖する。その結果、患者が繁殖した菌に感染するおそれがある。
【0008】
特許文献2に記載されたコネクタ組立体では、第1のコネクタと第2のコネクタとが取り外しできないように接続、固定される。その結果、患者に留置された尿道カテーテルには採尿バッグが常時接続された状態となるため、患者の移動、入浴またはリハビリ等の行動が阻害されるという問題がある。また、採尿バッグが常時接続された状態であると、採尿バッグから尿の逆流(尿漏れ)等が発生した場合には、カテーテル側の第1のコネクタの流路が汚染され、流路内で菌が繁殖し、患者が繁殖した菌に感染するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に記載されたコネクタ組立体では、コネクタを固定し、その後に流路の接続(連通)を行うという2段階の作業が必要となる。そして、特許文献2に記載されたコネクタでは、コネクタの固定を第1のハウジングと第2のハウジングとの嵌合で行い、コネクタの流路の連通をステムで行うため、コネクタの固定と、流路の連通とを同じ部品で行うことができない。その結果、作業が煩雑になると共に、コネクタの固定が不十分となり、カテーテル側の第1のコネクタの流路が汚染され、流路内で菌が繁殖し、患者が繁殖した菌に感染するおそれがある。また、ステムの可動による第1のバルブおよび第2のバルブの押し開きが不十分で、流路の接続が確実でなくなるという問題もある。さらに、特許文献2に記載されたコネクタ組立体では、ステムの可動により、コネクタに接続された、例えば、尿道カテーテルが長手方向に引っ張られるという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は、流路の接続を容易に、かつ、確実に行えると共に、患者が菌に感染することがない、しかも、患者の行動を阻害しないコネクタ組立体およびオス型コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係るコネクタ組立体は、互いに接続するオス型コネクタとメス型コネクタとを備えるコネクタ組立体であって、前記オス型コネクタは、筒状の外壁部、前記外壁部の基端に形成された底部、および、前記底部から前記外壁部の内部に突出した筒状の内壁部を有し、前記外壁部の内周面の先端側には前記メス型コネクタと係合するオス側接続部が形成された外筒部と、前記外壁部の先端側に弁体表面が露出するように配置され、スリットが形成されたオス側弁体部と、
前記外筒部に対して相対移動可能に設けられ、前記オス側弁体部を保持する筒状体からなり、その内部に前記内壁部が挿通された弁体保持部と、
前記外筒部に対して相対移動可能に設けられ、前記内壁部の内部に配置された筒状体からなり、その外周面が前記内壁部の内周面と当接すると共に、その内部に液体の流路が形成された内筒部と、を備えており、前記メス型コネクタは、内部に液体の流路が形成された筒状体からなり、その外周面の基端側に前記オス型コネクタの前記オス側接続部と係合するメス側接続部が形成されたコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の基端側に弁体表面が露出するように配置され、スリットが形成されたメス側弁体部と、を備えており、前記メス型コネクタと前記オス型コネクタを接続する際には、前記メス側弁体部に前記オス側弁体部を当接し、その状態から、前記外筒部を
前記オス側接続部が前記メス側接続部に係合される位置まで、前記コネクタ本体部の外周面に沿って先端側に移動することによって、
前記オス側接続部と前記メス側接続部との係合により前記メス型コネクタに前記オス型コネクタが固定され、同時に、前記内壁部が前記オス側弁体部および前記メス側弁体部の前記スリットを開口させる構成となっており、前記メス型コネクタから前記オス型コネクタを取り外す際には、前記外筒部を前記コネクタ本体部の外周面に沿って基端側に移動することによって、
前記オス側接続部と前記メス側接続部との係合が解除され、前記メス型コネクタから前記オス型コネクタが取り外される構成となっていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコネクタ組立体は、前記外筒部の前記内壁部が、その先端側に先細りする傾斜面を有してもよい。また、前記内壁部が、前記傾斜面に開口し、前記内筒部に形成された前記流路と連通する開口部を有してもよい。
【0013】
本発明に係るコネクタ組立体は、前記メス側弁体部が、前記弁体表面を形成する板状の弁本体部と、前記弁本体部の周縁から延出して前記コネクタ本体部と嵌合するリブと、を備えてもよい。また、前記メス側弁体部が、前記弁体表面を形成する頭部と、前記頭部に連続して筒状に形成され、長さ方向に弾性変形する蛇腹状の胴部と、を備え、前記内壁部の押圧によって、前記胴部が長さ方向に収縮し、前記頭部に形成されたスリットが開口する構成としてもよい。
【0014】
前記構成によれば、コネクタ同士の接続および固定と、流路の接続が、外筒部の移動という一動作および同じ部品で行うことができる。つまり、メス型コネクタにオス型コネクタを接続する際には、メス側弁体部にオス側弁体部を当接し、その状態から、外筒部を
オス側接続部がメス側接続部に係合される位置まで、コネクタ本体部の外周面に沿って先端側に移動することによって、
オス側接続部とメス側接続部との係合によりメス型コネクタにオス型コネクタが固定され、同時に、外筒部の内壁部がオス側弁体部およびメス側弁体部のスリットを開口させる。したがって、コネクタ同士の接続作業が容易になり、コネクタ同士の固定不良、弁体部の開口不良の発生を防止できる。これにより、コネクタ内部の流路の汚染、その汚染による菌の繁殖が防止されると共に、流路の接続も確実なものとなる。
【0015】
また、両コネクタが弁体部を備えることによって、流路の閉鎖状態を維持することができ、流路の汚染、その汚染による菌の繁殖を防止できる。そして、弁体表面が露出した弁体部を備えることによって、弁体表面を消毒することが可能なため、弁体部同士の当接の際の流路の汚染、その汚染による菌の繁殖をさらに防止できる。
【0016】
さらに、メス型コネクタからオス型コネクタを取り外すことが可能なため、オス型コネクタに接続される採尿バッグ等を、メス型コネクタに接続される尿道カテーテル等から分離して病室等に置くことが可能となる。これにより、患者の移動、入浴またはリハビリ等の行動が自由となる。そして、患者の移動等による採尿バッグ等からの逆流(尿漏れ)等も防止できるため、流路の汚染、その汚染による菌の繁殖をさらに防止できる。
【0017】
本発明に係るオス型コネクタの構成は、前記したコネクタ組立体のオス型コネクタの構成と同一である。そして、オス型コネクタの作用も、前記したコネクタ組立体の作用と同一である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、流路の接続を容易に、かつ、確実に行えると共に、患者が菌に感染することがない、しかも、患者の行動を阻害しないコネクタ組立体およびオス型コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】コネクタ組立体の実施形態の構成を示す斜視図である。
【
図3】コネクタの接続の際の動作の一段階を示す横断面図である。
【
図4】コネクタの接続の際の動作の一段階を示す横断面図である。
【
図5】コネクタの接続の際の動作の一段階を示す横断面図である。
【
図6】オス型コネクタの別の実施形態の構成を示す斜視図である。
【
図7】コネクタ組立体の別の実施形態の構成を示し、(a)は接続前の横断面図、(b)は接続後の一部を省略した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るコネクタ組立体の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、コネクタ組立体1は、互いに接続するオス型コネクタ2Aとメス型コネクタ24Aとを備える。なお、本発明において、基端側とは採尿バッグの採尿チューブ等と接続されるバッグ側を意味し、先端側とは患者に留置される尿道カテーテル等と接続されるカテーテル側を意味する。また、以下ではオス型コネクタ2Aとメス型コネクタ24Aの両者を意味する場合には、単にコネクタと称す。
【0021】
オス型コネクタ2Aは、外筒部3と、オス側弁体部11と、弁体保持部15と、内筒部19と、を備えている。また、オス型コネクタ2Aは、連結部35を備えている。しかし、連結部35は必須の構成ではない。
【0022】
外筒部3、弁体保持部15および内筒部19を構成する材料は、ある程度の柔軟性、耐久性等を有するもので、例えば、ポリカーボネイト、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂であればよいが、それらに限定されない。
【0023】
オス側弁体部11を構成する材料は、コネクタの接続または取り外しの際に液体の漏れが発生しない閉塞性に優れた弾性材料であって、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等の各種ゴム材料、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等の各種エラストマーであればよいが、それらに限定されない。
【0024】
外筒部3は、筒状の外壁部4、外壁部4の基端側に連続して、すなわち、基端に形成された底部5、および、底部5から外壁部4の内部に突出した筒状の内壁部7を有する。そして、外壁部4には、その内周面の先端側にオス側接続部10が形成され、底部5には、弁体保持部15の連結棒18が挿通される開口部6が弧状に形成されている。また、コネクタの接続の際に、内壁部7は、外筒部3の移動に伴って、メス型コネクタ24Aのコネクタ本体部25の内部に突出して、オス側弁体部11およびメス側弁体部28を開放状態にするものである。したがって、内壁部7は、その先端部がオス側弁体部11の基端側の表面に近接する位置、すなわち、外壁部4の先端側の開口面に近接する位置まで突出していることが好ましい。なお、外壁部4、底部5および内壁部7の縦断面形状は、円形状が好ましいが、これに限定されない。
【0025】
オス側接続部10は、メス型コネクタ24Aのコネクタ本体部25に形成されたメス側接続部27と係合するもので、例えば、凹状の溝部または凸状のタブである。そして、凹状の溝部である場合には、コネクタの接続または取り外しの際の外筒部3(外壁部4)の回転移動をガイドするために、外壁部4の内周面の先端側から基端側に向って溝幅を広くすることが好ましいが、一定の溝幅でもよい。
【0026】
オス側弁体部11は、外壁部4の先端側に、内壁部7によって開閉されるスリット12が形成された弁体表面13aが露出するように配置されたものである。そして、このような配置は、外壁部4の内部に配置された弁体保持部15の先端側にオス側弁体部11を保持することによって達成される。なお、弁体表面13aが先端側に露出することによって、コネクタの接続または取り外しの際に、弁体表面13aを消毒することが可能となり、内筒部19に形成された液体の流路22が汚染されることを防止できる。
【0027】
また、オス側弁体部11は、その大きさをメス型コネクタ24Aのメス側弁体部28と異なるものに設定することによって、流路22の汚染をさらに防止することができる。そして、スリット12の形成方向は、メス側弁体部28に形成されたスリット29と異なる方向であることが好ましい。このような方向に形成することによって、内壁部7によるスリット29の開口部からの液漏れをさらに防止できる。しかしながら、スリット12の形成方向は、スリット29と同一方向であってもよい。
【0028】
また、オス側弁体部11は、スリット12が形成された弁体表面13aとなる板状の弁本体部13と、弁本体部13の周縁部から延出するリブ14と、を備える。そして、リブ14によって、弁体保持部15に嵌合により保持される。なお、オス側弁体部11は、弁体保持部15に保持され、かつ、内壁部7によって開閉可能であれば、前記構成に限定されない。
【0029】
弁体保持部15は、オス側弁体部11を保持する筒状体からなり、その内部に外筒部3の内壁部7が挿通される。そして、弁体保持部15は、オス側弁体部11を先端側に保持することによって、内壁部7を液密に保持している。なお、弁体保持部15の基端側にOリング等のシール材23を配置することによって、内壁部7がさらに液密に保持される。
【0030】
また、弁体保持部15は、筒状体からなる保持本体部16と、保持本体部16の基端に形成された底部17と、底部17から基端側に延出する連結棒18と、を備える。そして、連結棒18は、内壁部7の内部に配置される内筒部19の基端側に接続された連結部35に接続される。なお、弁体保持部15は、オス側弁体部11を保持し、内壁部7が挿通される構成であれば、前記構成に限定されない。また、保持本体部16の縦断面形状は、円形状が好ましいが、これに限定されない。
【0031】
内筒部19は、内壁部7の内部に配置された筒状体からなり、その外周面が内壁部7の内周面と当接すると共に、その内部に液体の流路22が形成される。そして、流路22は、流路径が6mm以上の直管流路であって、その内部に突起等が形成されず、流路径が均一であることが好ましい。これによって、流路22での液体中の老廃物等の詰まり、液体の滞留および乱流の発生を防止することができ、流路22での菌の繁殖を防止できる。
【0032】
また、内筒部19は、筒状体からなる筒本体部20と、筒本体部20の先端側の外周面に形成された溝部21と、溝部21に配置されたOリング等のシール材23と、を備える。シール材23を備えることによって、筒本体部20が内壁部7の内部に液密に保持される。なお、内筒部19は、内壁部7の内部に配置され、流路22が形成される構成であれば、前記構成に限定されない。そして、筒本体部20の縦断面形状は、円形状が好ましいが、これに限定されない。
【0033】
連結部35は、内筒部19の基端側に配置され、弁体保持部15と内筒部19とを連結するもので、その構成は特に限定されない。そして、連結部35を介して弁体保持部15と内筒部19が連結されることにより、コネクタの接続または取り外しの際の外筒部3の移動がスムーズとなる。
【0034】
メス型コネクタ24Aは、コネクタ本体部25と、メス側弁体部28と、を備える。
なお、コネクタ本体部25を構成する材料は、オス型コネクタ2Aの外筒部3等で記載した材料で構成されていればよく、特に限定されない。また、メス側弁体部28を構成する材料も、オス型コネクタ2Aのオス側弁体部11で記載した材料で構成されていればよく、特に限定されない。
【0035】
コネクタ本体部25は、内部に液体の流路26が形成される筒状体からなり、その外周面の基端側にオス型コネクタ2Aのオス側接続部10と係合するメス側接続部27が形成されている。そして、メス側接続部27は、例えば、凸状のタブまたは凹状のねじ溝である。また、コネクタ本体部25の縦断面形状は、円形状が好ましいが、これに限定されない。
【0036】
メス側弁体部28は、コネクタ本体部25の基端側にスリット29が形成された弁体表面30aが露出するように配置されたものである。そして、弁体表面30aが基端側に露出することによって、コネクタの接続または取り外しの際に、弁体表面30aを消毒することが可能となり、コネクタ本体部25に形成された液体の流路26が汚染されることを防止できる。また、スリット29の形成方向は、オス型コネクタ2Aの内壁部7によるスリット29の開口部からの液漏れをさらに防止することから、オス側弁体部11に形成されたスリット12と異なる方向であることが好ましいが、同一方向であってもよい。
【0037】
また、メス側弁体部28は、スリット29が形成された弁体表面30aとなる板状の弁本体部30と、弁本体部30の周縁部から延出するリブ31と、を備える。そして、リブ31によって、コネクタ本体部25に嵌合により保持される。なお、メス側弁体部28は、コネクタ本体部25に保持され、かつ、オス型コネクタ2Aの内壁部7によって開閉可能であれば、前記構成に限定されない。
【0038】
次に、コネクタ組立体1におけるコネクタの接続または取り外しの際の動作について、
図3〜
図5を用いて説明する。
【0039】
メス型コネクタ24Aにオス型コネクタ2Aを接続する動作は、以下の手順で行われる。
(1)
図3に示すように、メス型コネクタ24Aにオス型コネクタ2Aを近付け、コネクタ本体部25に形成されたメス側接続部27と、外筒部3(外壁部4)に形成されたオス側接続部10とが合う位置で、メス側弁体部28にオス側弁体部11を当接する。このとき、当接する前に、メス側弁体部28の弁体表面30a、および、オス側弁体部11の弁体表面13aをアルコール拭き等で消毒することによって、流路26、22の汚染を防止できる。
【0040】
(2)(1)の状態から、
図4に示すように、外壁部4をコネクタ本体部25の外周面に沿って先端側に回転移動させる。これによって、メス側接続部27がオス側接続部10内を移動すると共に、内壁部7がコネクタ本体部25の内部に突出して、オス側弁体部11のスリット12が開口し、メス側弁体部28のスリット29も開口し、流路26と流路22とが部分的に連通する。このとき、オス側弁体部11の外径よりも、メス側弁体部28の外径を大きく設定すると、両弁体部の当接面からの液漏れをさらに防止でき、コネクタからの液漏れを防止できて好ましい。
【0041】
(3)(2)の状態から、
図5に示すように、メス側接続部27がオス側接続部10に係合する位置まで、外壁部4を先端側にさらに回転移動させて、外壁部4をコネクタ本体部25に係合させて、オス型コネクタ2Aをメス型コネクタ24Aに接続、固定する。その結果、流路26と流路22とが完全に連通して接続される。このとき、内壁部7の外周面と、コネクタ本体部25の内周面との間にオス側弁体部11とメス側弁体部28の両者が重なった状態で配置され、内壁部7とコネクタ本体部25とが液密に閉塞されることとなるため、コネクタからの液漏れを防止できる。
【0042】
メス型コネクタ24Aからオス型コネクタ2Aを取り外す動作は、前記手順を(3)、(2)、(1)の順に移動方向を逆にして行う、すなわち、外筒部3(外壁部4)をコネクタ本体部25の外周面に沿って基端側に回転移動することによって、メス側接続部27とオス側接続部10との係合を解除し、外壁部4とコネクタ本体部25との係合を解除する。その結果、メス型コネクタ24Aからオス型コネクタ2Aが取り外される。そして、弁体部(メス側弁体部28、オス側弁体部11)の再閉塞性によって、流路26、22が閉塞される。
【0043】
なお、前記(2)、(3)において、外筒部3(外壁部4)を回転によって移動したが、移動は回転移動に限定されず、メス側接続部27およびオス側接続部10の形態によっては平行移動であってもよい。
【0044】
次に、コネクタ組立体の別の実施形態について説明する。
コネクタ組立体において、コネクタ組立体を構成するオス型コネクタとして、
図6に示すようなオス型コネクタ2Bを用いてもよい。
【0045】
オス型コネクタ2Bは、外筒部3と、オス側弁体部11と、弁体保持部15と、内筒部19とを備える点では前記オス型コネクタ2A(
図1参照)と同一であるが、外筒部3の内壁部7が、その先端側に先細りする傾斜面9を有する点で異なる。内壁部7が先端側に傾斜面9を有することによって、コネクタの接続の際に、弁体部(オス側弁体部11、メス側弁体部28)を開口しやすくなる。傾斜面9の傾斜角度については、特に限定されない。
【0046】
また、内壁部7は、傾斜面9に開口し、内筒部19に形成された流路22と連通する開口部8を有してもよい。開口部8の数および開口面積については、特に限定されない。
【0047】
コネクタ組立体において、コネクタ組立体を構成するメス型コネクタとして、
図7(a)、(b)に示すようなメス型コネクタ24Bを用いてもよい。
メス型コネクタ24Bは、コネクタ本体部25と、メス側弁体部28とを備える点で前記メス型コネクタ24A(
図1参照)と同一であるが、メス側弁体部28が、頭部33と胴部34とを備える点で異なる。
【0048】
メス側弁体部28は、スリット32が形成された弁体表面33aを形成する頭部33と、頭部33に連続して筒状に形成され、長さ方向に弾性変形する蛇腹状の胴部34と、を備える。そして、メス型コネクタ24Bは、オス型コネクタ2Aの内壁部7のコネクタ本体部25の内部への突出による押圧によって、メス側弁体部28の胴部34が長さ方向に収縮し、頭部33に形成されたスリット32が開口する。これによって、メス型コネクタ24Bの流路26と、オス型コネクタ2Aの流路22が接続される。
【0049】
本発明に係るコネクタ組立体は、図示しないが、オス型コネクタ2Bと、メス型コネクタ24Bと、を備えてもよい。
【0050】
なお、本発明に係るオス型コネクタについては、前記したコネクタ組立体を構成するオス型コネクタと同一であるので、説明を省略する。
また、前記では、基端側をバッグ側、先端側をカテーテル側としたが、基端側がカテーテル側、先端側がバッグ側であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 コネクタ組立体
2A、2B オス型コネクタ
3 外筒部
11 オス側弁体部
15 弁体保持部
19 内筒部
24A、24B メス型コネクタ
25 コネクタ本体部
28 メス側弁体部