特許第5930482号(P5930482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオプティック インコーポレイテッドの特許一覧

特許5930482使い捨て生体分析カートリッジ、及び生体分析を、同カートリッジを用いて行なう装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930482
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】使い捨て生体分析カートリッジ、及び生体分析を、同カートリッジを用いて行なう装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   G01N27/26 331K
   G01N27/26 315K
【請求項の数】21
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-525997(P2013-525997)
(86)(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公表番号】特表2013-536439(P2013-536439A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011048162
(87)【国際公開番号】WO2012027175
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年8月18日
(31)【優先権主張番号】61/376,551
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/437,576
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/016,944
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/437,549
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513045334
【氏名又は名称】バイオプティック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOPTIC, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ショウクアン
(72)【発明者】
【氏名】アミルカニアン,ヴァロウジュ ディー
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−256820(JP,A)
【文献】 特開平04−318445(JP,A)
【文献】 特表2004−532384(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/075563(WO,A1)
【文献】 特開2009−058355(JP,A)
【文献】 特表2004−521334(JP,A)
【文献】 特表2010−522881(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/023071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子分離用カートリッジであって:
開口を検出窓として画成して外部検出光学系を収容する本体と、
前記本体内に支持され、前記本体の第1端部を超えて延出する第1端部を有する少なくとも1つのキャピラリーカラムであって、前記検出窓から1つのカラム部分が前記キャピラリーカラムに沿って露出し、前記カラム部分に、前記外部光学系が前記検出窓を通して位置合わせされる、前記少なくとも1つのキャピラリーカラムと、
前記本体の第2端部に取り付けられて、前記キャピラリーカラムの第2端部と流体連通する容器と、
を備え
前記容器は、前記キャピラリーカラムの前記第2端部を支持する貫通孔を有するニップルを備え、該ニップルは該容器の基台にねじ込まれており、
前記キャピラリーカラムは前記本体内に支持される2つのフェルールにより同軸に支持され、前記2つのフェルールの各々は前記本体により片持ち梁状に支持され、かつ前記検出窓に面する位置に延出する端部を有し、前記キャピラリーカラムに沿った検出ゾーンは前記2つのフェルールの前記延出端部の間で露出する、カートリッジ。
【請求項2】
前記本体は、細長の、かつ略縦長の円筒形である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記キャピラリーカラムは、前記円筒形本体の中心軸に沿って支持されるよう構成されている、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記本体は、前記本体の前記第1端部が延出する延出元の本体部分を有し、前記本体部分は、或る幅を有し、そして前記本体の前記第1端部は、前記本体部分の前記幅よりも狭い、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記本体の前記第1端部は、前記本体部分から先細りして狭小部となるよう構成されている、請求項4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記本体の前記第1端部は略円錐形である、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記本体は、略半殻状の第1及び第2半殻体を備え、前記第1及び第2半殻体を組み付けて前記本体を形成する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記本体は、光学部品を全く含まない、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
更に、前記本体の前記第1端部から延出する第1電極を備え、前記キャピラリーカラムは、前記第1電極内に同軸に支持され、そして前記第1電極は外部に、前記本体内の第1電極開口から露出する第1コンタクト面を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
更に、前記容器の収容物に導通可能に接続される第2電極を備え、前記電極は、前記本体の外部に、前記本体内の第2電極開口から露出する第2コンタクト面を有する、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記容器は、加圧空気を導入するポートを含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項12】
表面形状部を前記本体の外面に設けることにより、前記外部光学系に対する前記カートリッジの位置決め、及び位置合わせを容易にするよう構成されている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項13】
シャーシと、
(i)開口を検出窓として画成して外部検出光学系を収容する本体と、
(ii)前記本体内に支持され、前記本体の第1端部を超えて延出する第1端部を有する少なくとも1つのキャピラリーカラムであって、前記検出窓から1つのカラム部分が前記キャピラリーカラムに沿って露出し、前記カラム部分に、前記外部光学系が前記検出窓を通して位置合わせされる、前記少なくとも1つのキャピラリーカラムと、
(iii)前記本体の第2端部に取り付けられて、前記キャピラリーカラムの第2端部と流体連通する容器とを備えたカートリッジと、
サンプル及び緩衝液を収容する少なくとも1つのトレイを、前記キャピラリーカラムの前記延出端部に対向するように支持するテーブルと、
検出光学系を支持する少なくとも1つのフォークアセンブリであって、該フォークアセンブリが可動であることにより、前記カートリッジ本体内に画成される検出窓に面する位置に延出移動する、前記少なくとも1つのフォークアセンブリと、
生体分子分離を前記キャピラリーカラム内で行なう分離機構と、
前記フォークアセンブリ及び前記分離機構の移動を制御して分離を行なうコントローラと、
を備え、
前記カートリッジ本体が、前記シャーシによって、前記キャピラリーカラムの前記第1端部が前記カートリッジ本体から延出する状態で支持されるよう構成されている、生体分子分離システム。
【請求項14】
第1フォークアセンブリ及び第2フォークアセンブリを備え、前記検出光学系は、前記第1フォークアセンブリによって支持されて、入力放射光を前記検出ゾーンに誘導する第1光学系と、そして前記第2フォークアセンブリによって支持されて、放射光を前記検出ゾーンから集光する第2光学系と、を備える、請求項13に記載の生体分子分離システム。
【請求項15】
前記第1及び第2フォークアセンブリは、前記カートリッジの側方両側に配置され、
前記第1及び第2フォークアセンブリは、前記第1及び第2フォークアセンブリが、前記カートリッジ内に画成される前記検出窓に面する位置に延出移動しない第1位置と、前記第1及び第2フォークアセンブリが、前記カートリッジ内に画成される前記検出窓に面する位置に延出移動する第2位置との間で移動するよう構成されている、請求項14に記載の生体分子分離システム。
【請求項16】
前記キャピラリーカラムは、前記本体内に支持される2つのフェルールにより同軸に支持されるよう構成されており
前記フェルール群の各フェルールは、前記本体により片持ち梁状に支持され、かつ前記検出窓に面する位置に延出する端部を有し、
記キャピラリーカラムに沿った前記検出ゾーンは、前記フェルール群の前記延出端部の間で露出するよう構成されており
記第1及び第2フォークアセンブリはそれぞれ、前記検出窓に面する位置の前記フェルール群を前記第2位置で押圧する突出部表面を有する、請求項15に記載の生体分子分離システム。
【請求項17】
前記第1及び第2フォークアセンブリは同一軸に沿って移動し、そして前記第1及び第2フォークアセンブリの前記突出部表面は、前記フェルール群を前記第2位置で挟み付けるよう構成されている、請求項16に記載の生体分子分離システム。
【請求項18】
前記第1及び第2フォークアセンブリの前記突出部表面は、溝型面または凹面として形成されることにより、前記突出部表面を前記フェルール群の外面に対向位置合わせし易くなるよう構成されている、請求項17に記載の生体分子分離システム。
【請求項19】
前記シャーシは前記カートリッジを、前記カートリッジ本体の長手軸が、前記トレイの水平面に垂直になっている状態で支持するよう構成されている、請求項13に記載の生体分子分離システム。
【請求項20】
更に、DC電源を備え、そして前記生体分子分離システムは、AC電源を必要とすることなく動作するように構成される、請求項13に記載の生体分子分離システム。
【請求項21】
いかなる光学素子も、前記キャピラリーカラムに沿った検出ゾーンを前記外部検出光学系に連結する前記本体内に支持されないように構成される、請求項1に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、(a)2010年8月24日に出願された米国仮特許出願第61/376,551号;(b)2011年1月28日に出願された米国仮特許出願第61/437,549号;及び(c)2011年1月28日に出願された米国仮特許出願第61/437,576号の優先権を主張するものである。本出願はまた、2011年1月28日に出願された米国特許出願第13/016,944号の優先権を主張する一部継続出願である。本明細書において参照されるこれらの出願、及び他の出願は、本明細書において全て開示されるものとして、本明細書において参照されることにより、全てが本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生体分子分離の検出及び分析を、分離流路を利用して行なう生体分析装置に関するものであり、特にキャピラリー電気泳動装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在、研究所において適用される殆どの生体分子分離技術は、スラブゲル電気泳動技術を利用し、これらのスラブゲル電気泳動技術は、これらのスラブゲル電気泳動技術が20年以上前に開発されて以来、生体分子(すなわち、DNA、タンパク質、及び炭水化物)分離のための生体分析に日常的に使用されてきた。しかしながら、生体分析のスラブゲル電気泳動法は、極めて多大な労力を要し、そして分離能、スループット、及びサンプル当たりコストの点で、劇的な改良が加えられる必要がある。
【0004】
キャピラリー電気泳動法(CE)は、ゲル電気泳動法に対するマイクロ流体アプローチ(ゲル電気泳動法を簡易化するためのマイクロ流路デバイス)であり、このゲル電気泳動法の最大の利点は、当該ゲル電気泳動法の応用範囲が非常に広いことである。CE(キャピラリー電気泳動)技術は、バイオテクノロジー産業によって、特に核酸を利用する試験法において広く、高信頼度、高分離能の、かつ高感度の検出技術として受け入れられ、そしてCEは、タンパク質分析、炭水化物分析に適用され、そしてオリゴヌクレオチド分析、DNA塩基配列決定法、及びdsDNAフラグメント分析のようなDNA関連分析に適用されてきた。CE(キャピラリー電気泳動法)は、当該CEが、面倒な方法であり、失敗率が高いと考えられてきたので、日常的な分析では一般的に敬遠されてきた。しかしながら、これは、装置製造業者が装置設計に劇的な改良を加え、そしてCE(キャピラリー電気泳動法)に関する全体的な知識が高まってきているので、もはや本当ではなくなっている。失敗率を低くし、そして正確で高精度の、そして信頼性のあるCEデータを生成するためには3つの重要な要素:オペレータの養成、システム安定性、及びメンテナンス頻度の低い装置の操作容易性を整えておく必要がある。
【0005】
キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)は、レーザ誘起蛍光(LIF)のような高感度検出法と組み合わせた場合の新規の分析法としてごく最近開発されており、従来の免疫測定法よりも優れた幾つかの利点をもたらす。CEIA(キャピラリー電気泳動免疫測定法)では、高速分離を、高い質量感度で実行することができ、多数の検体を同時に測定することができ、そしてCEIAは自動化に適合する。CE(キャピラリー電気泳動法)及び蛍光標識ペプチドを利用して、動物の血液中の異常プリオンタンパク質を検出することができる。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識したタンパク質Aを蛍光プローブ法として用いる、プリオンタンパク質に関するこのようなCE(キャピラリー電気泳動法)による1つの非競合的免疫測定法は、スクレイピーに感染した羊の血液サンプルを試験する際に適用することに成功している。
【0006】
更に、免疫測定法は、バイオテクノロジーに広く使用されることにより、宿主細胞汚染物を検出し、そして定量化する。自由溶液(free−solution)中で蛍光型検出を行なうキャピラリー電気泳動法(CE)は、固相免疫測定法に代わる極めて有効な手法となっている。蛍光型検出を行なうキャピラリー電気泳動法(CE)によって、抗原の固定化が不要となり、そして多くの固相に関連する問題を回避することができる。この方法では、安定な蛍光色素で標識した精製抗原(すなわち、FITC)、または色素で標識したアフィニティープローブ(直接分析)の何れかを利用する。
【0007】
間違いなく、レーザ誘起蛍光法(LIF)を用いるCE(キャピラリー電気泳動法)は、高速高感度かつ高分離能のdsDNA分析及び免疫測定法分析のための最も強力な分析手段の1つである。しかしながら、CE(キャピラリー電気泳動法)を利用するLIF(レーザ誘起蛍光)システムの現在の販売価格は、光検出機構が複雑なので、従来のスラブゲル電気泳動生体分析システムよりもずっと高価である。CE(キャピラリー電気泳動法)を利用する高価なシステムは従って、資金の潤沢な数少ない研究所以外の全ての機関にとって手の届かないシステムであり、そして免疫測定法またはDNAフラグメント分析用途/事業を拡大する際に高コストが普及への大きな障害となっているように思われる。
【0008】
現在、米国特許出願第 として公開されている米国特許出願第13/016,944号明細書には、分離支持体(例えば、電気泳動用緩衝液を含む液体ゲルまたはふるいゲル)で充填された分離流路(例えば、カラムで画成される)を利用する生体分子分離(例えば、キャピラリー電気泳動法)に関して簡易化された低コストで高効率高感度の不動で安定なマイクロ光検出構成が開示されている。更に具体的には、開示の発明は、入力放射光を分離流路に沿った検出ゾーンに照射し、そして当該検出ゾーンからの出力放射光を検出して、サンプル検体から放出される放射光(例えば、放射光誘導蛍光発光)を検出する光学系を含む検出構成の改良に関するものである。開示の発明の1つの態様では、入力放射光(例えば、レーザまたはLED光源からの)の方向、検出ゾーンにおける分離流路の軸、及び出力放射光の集光方向は全て、略同一平面にある。1つの実施形態では、光ファイバの形態の光導波路を用いて、入力放射光を検出ゾーンに供給する、そして/または出力放射光を検出ゾーンから集光する。1つの実施形態では、本発明の検出構成は、分離流路に沿った検出ゾーンの両側に配置される光ファイバ群を有する。これらの光ファイバは、互いから180度未満(例えば、40〜160度、例えば120度のような角度)だけ離れて配置して、検出感度を高くする。開示の発明の別の態様では、本発明の検出構成は、先球光ファイバを取り入れて、入力放射光を供給し、そして出力放射光を集光する。開示の発明の更に別の態様では、本発明の検出光学系構成は、改良型生体分子分離装置において、具体的にはキャピラリー電気泳動装置において実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第13/016,944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
開示される上記検出技術に鑑みると、簡単で安価に(すなわち、1回のサンプル電気泳動につき低コストで)動作して、高効率、高感度、及び高スループットの高速分析を可能とするキャピラリー電気泳動システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、簡易化された低コスト、高効率、高感度、高スループットの生体分子分離システム(例えば、キャピラリー電気泳動システム)を提供する。生体分子分離システムは、検出構成を備える装置を含み、この検出構成は光学系を含み、当該光学系は、入力放射光を、分離流路に沿った検出ゾーンに照射し、そして出力放射光を当該検出ゾーンから検出して、サンプル検体から放出される放射光(例えば、放射光誘導蛍光発光)を、当該光学系を分離カラムに微細に位置合わせする必要を伴うことなく検出する。当該装置は、生体分子分離を、生体分子分離用カートリッジの分離流路内で自動的に行なうように構成される。
【0012】
本発明の1つの態様では、本発明は、信頼性のある、小型の、簡易化された、脱着可能な、携行式の、入れ替え可能な、再使用可能な、低コストの、リサイクル可能な、そして/または使い捨ての生体分子分離用カートリッジを利用するように構成されるカートリッジ式生体分子分離システムに関するものであり、この生体分子分離用カートリッジは、組み付けが容易であり、かつ可動部品を用いることなく使用することができ、そして試薬(分離用緩衝液)を内蔵する容器を有する。当該生体分子分離用カートリッジは、当該カートリッジ内に画成される少なくとも1つの分離流路を含む。1つの実施形態では、当該生体分子分離用カートリッジは概略、ペンの形状をしている。1つの実施形態では、当該カートリッジの全体サイズは、当該分離流路が30cm以下、好ましくは15〜20cmの範囲であることにより特徴付けられる。当該生体分子分離システムは、検出構成を備える装置を含み、この検出構成は光学系を含み、該光学系は、入力放射光を、当該分離流路に沿った検出ゾーンに照射し、そして出力放射光を当該検出ゾーンから検出して、サンプル検体から放出される放射光(例えば、放射光誘導蛍光発光)を、光学系を当該キャピラリーカラムに微細に位置合わせする必要を伴うことなく検出する。当該装置は、生体分子分離を、当該生体分子分離用カートリッジの当該分離流路内で自動的に行なうように構成される。
【0013】
本発明の別の態様では、媒体の化学的性質、及びキャピラリーの特徴(例えば、キャピラリーのサイズ、被膜、及び長さ)は、各カートリッジに対応して定義される。異なるカートリッジを容易に入れ替えて、生体分子分離システム内で使用することにより、特定のサンプル成分分離に適合させることができる。容器は、空圧ポンプに接続されるように構成され、この空圧ポンプでゲル容器を加圧して、キャピラリーを分離支持体としての緩衝液でパージし、そしてキャピラリーに緩衝液を充填する。カートリッジは、検出光学系を当該カートリッジに内蔵させる必要がなく、そして分離流路は、検出ゾーンに対して微細に位置合わせする必要がない。1つの実施形態では、当該カートリッジは、内蔵検出光学系を含まない。
【0014】
1つの実施形態では、当該生体分子分離用カートリッジに、単一の分離流路を設ける。1つの実施形態では、当該カートリッジにより、かつ当該カートリッジ内に支持されるキャピラリーカラムが当該分離流路を画成する。本発明の1つの実施形態では、当該生体分子分離システムは、キャピラリー電気泳動分離及び分析を行ない、そして当該生体分子分離システム内の当該装置は、当該キャピラリーカートリッジを利用して、キャピラリー電気泳動分離、検出、及び分析を自動的に行なうように構成される。別の実施形態では、単一流路カートリッジの構造は、拡張することにより、多流路(例えば、4,8,または12流路)カートリッジ(例えば、多数キャピラリーカラムを有する)を構成して、高スループット用途に用いることができる。
【0015】
本発明の本質及び利点だけでなく、好適な使用形態を更に完全に理解するためには、添付の図面と併せて一読される以下の詳細な説明を参照する必要がある。以下の図面では、同様の参照番号は、同様の、または類似の構成要素群を、これらの図面全体を通じて指している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1つの実施形態による装置及びカートリッジを搭載したキャピラリー電気泳動システムの模式図である。
図2】検出領域を示し、励起光ファイバ、蛍光受光ファイバ、及びキャピラリーカラムの構成を模式的に示している。
図3A】本発明の1つの実施形態によるキャピラリーカートリッジの斜視図である。
図3B】本発明の1つの実施形態によるキャピラリーカートリッジの斜視図である。
図3C】カートリッジの異なる側面及び表面の平面図である。
図3D】カートリッジの異なる側面及び表面の平面図である。
図3E】カートリッジの異なる側面及び表面の平面図である。
図3F】カートリッジの異なる側面及び表面の平面図である。
図3G】カートリッジの異なる側面及び表面の平面図である。
図3H図3Aの切断線3H−3Hに沿って切断したときの断面図であり、2つの半殻体を取り付けて合体させる様子を示している。
図4図3のキャピラリーカートリッジの検出領域を見たときの軸方向平面断面図である。
図5A】本発明の1つの実施形態による図3のカートリッジの半殻体の内部構造を示している。
図5B】本発明の1つの実施形態による図3のカートリッジの半殻体の内部構造を示している。
図6A】本発明の1つの実施形態による図3のカートリッジの容器の構造を示している。
図6B】本発明の1つの実施形態による図3のカートリッジの容器の構造を示している。
図6C】容器の蓋の上方の装置圧力ポート領域を示す断面図である。
図7】本発明の1つの実施形態によるCE装置の外部構造図である。
図8】本発明の1つの実施形態による図7のCE装置の内部構造図である。
図9】本発明の1つの実施形態による図7及び8のCE装置の構成部品群を示す模式図である。
図10】本発明の1つの実施形態によるフォークアセンブリを示している。
図11】本発明の1つの実施形態によるフォークアセンブリを示している。
図12】本発明の1つの実施形態によるフォークアセンブリを示している。
図13A】電気泳動のデータを表わす電気泳動図を示している。
図13B】同じデータの対応する「ゲルイメージ」を表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を種々の実施形態について、これらの図を参照しながら以下に説明する。本発明は、本発明の目的を達成する最良の形態に関連して記載されるが、この技術分野の当業者であれば、種々変更をこれらの示唆に鑑みて、本発明の思想または範囲から逸脱しない限り加えることができることが理解できるであろう。
【0018】
本発明は、簡易化された低コスト、高効率、高感度、高スループットの生体分子分離システム(例えば、キャピラリー電気泳動システム)を提供する。生体分子分離システムは、検出構成を備える装置を含み、この検出構成は、入力放射光を、分離流路に沿った検出ゾーンに照射し、そして出力放射光を分離流路に沿った検出ゾーンから検出して、サンプル検体から放出される放射光(例えば、放射光誘導蛍光発光)を、光学系を分離カラムに微細に位置合わせする必要を伴うことなく検出する光学系を含む。当該装置は、生体分子分離を、生体分子分離用カートリッジの分離流路内で自動的に行なうように構成される。
【0019】
本発明の原理を非限定的に説明するために、本発明は、キャピラリー分離カラムを用いるキャピラリー電気泳動法に関する種々の実施形態を参照することにより記載される。更に、本発明は、これに限定されないが、放射光誘導蛍光検出(例えば、レーザまたはLED光源を用いる)に関連して記載される。蛍光法は、検体の分子が特定の波長の照射によって励起され、そして異なる波長の放射光を放出する分光光度分析法である。発光スペクトルは、定性分析及び定量分析の両方に関する情報となる。一般的に、吸光度検出よりも優れている蛍光検出の利点は、検出能(検出感度)が極めて高いことである。フルオロフォアが効率良く発光する場合、小容積の単分子が検出されることが分かっている。これは一つには、放出される放射光が入力放射光の波長とは異なる波長で検出される結果、蛍光信号が非常に暗い背景でも測定されるからである(例えば、放出される蛍光の波長は、励起放射光よりも長い波長である)。
【0020】
システム概要
図1を参照するに、本発明の画期的な検出構成を取り入れたキャピラリー電気泳動(CE)システム100が模式的に示される。図示の実施形態では、CEシステム100は普通、キャピラリー分離カラム10(例えば、200〜250μmのO.D.(吸光度))を備え、このキャピラリー分離カラム10が内部分離流路12(例えば、10〜150μmのI.D.(内径))を画成する。キャピラリーカラム10は、溶融シリカ、ガラス、ポリイミド、または他のセラミック材料/ガラス状材料により形成することができる。分離カラム10の内壁(すなわち、分離流路12を画成する壁)を材料で被覆することができ、この材料に、静電気を帯電させて、サンプル成分の電気泳動及び/又は動電的移動を容易にすることができる。分離流路12には、分離支持体を充填することができ、この分離支持体は、単なる電気泳動用緩衝液とすることができる、またはこの技術分野で公知のふるいゲルマトリックス(線形または非線形ポリマー組成物の)とすることができる。ゲル緩衝液は、分離カラム(例えば、キャピラリーカラム10により画成される)を通って、分離用緩衝液としての当該緩衝液の特性に判別可能なほどに影響することなく圧送することができる「入れ替え可能な」タイプである。
【0021】
キャピラリーカラム10の一方の端部は、電気泳動用緩衝液の容器14に接続される。キャピラリーカラム10の他方の端部は別の容器16に接続され、この容器16は、サンプル(分離流路12に注入されることになる)及び電気泳動用緩衝液(サンプル注入後に、分離が行なわれる)を交互に収容する。電源18は、高電圧を容器14及び16に、電極20及び22を介して供給する。
【0022】
電気泳動及び放射光誘導蛍光のみを考察した場合の電気泳動及び放射光誘導蛍光のメカニズムは、本発明の範囲から外れる。完全性を期する場合、CEシステム100の動作については簡単に説明するだけで十分である。動作状態では、既知のフルオロフォアで標識して用意された生体サンプルを、検出ゾーンから離れたキャピラリーカラムの遠端に、本発明の一部を構成しない多数の方法のうちの何れかの方法(例えば、サンプル容器からの動電的注入、またはシリンジポンプを用いた物理的圧力注入)により導入する。DC電位(例えば、1〜30KV)が電源18から電極20及び22に印加されると、サンプルは、電位が印加された状態で、分離流路12に沿って方向24に移動し(例えば、負に帯電したサンプルは、図1に示すように、正電位の電極22に向かって移動する)、そしてサンプル成分のバンドに分離される。分離の度合い、及び分離流路12に沿って移動する距離は、これらのサンプル成分の移動度、これらのサンプル成分の質量及びサイズまたは長さ、及び分離支持体のような多数の要素によって異なってくる。サンプル群を分離するための分離流路12内の駆動力は、電気泳動力、圧力、または電気浸透(EOF)圧とすることができる。
【0023】
サンプルが検出ゾーン32に達すると、励起放射光を方向35に、励起光ファイバ(excitation fiber)34を介して検出ゾーン32に誘導する。これらのサンプル成分は、それぞれのサンプル成分の濃度に比例する(蛍光標識材料の量に比例する)強度で蛍光発光する。検出器42は、方向37に蛍光受光ファイバ(emission fiber)36を介して放出され、かつ入力放射光の波長とは異なる波長を持つ蛍光の強度を検出する。検出された蛍光放射光は、公知の方法で分析することができる。自動化システムの場合、プロセッサを有するコントローラ26(例えば、ノートブックコンピュータまたはデスクトップコンピュータの形態の)は、CEシステム100内の種々の構成要素の動作を制御して、キャピラリー電気泳動分離を行ない、そしてデータ収集を行なう。このような制御は、本明細書において開示される機能及び特徴の開示内容が与えられた場合には、この技術分野の当業者の知識をもってすれば、十分行なうことができる。
【0024】
検出構成
図1に示す特定の実施形態では、検出光学系構成(検出窓/ゾーン32の周りに位置するエリア30内に模式的に示される)は、図2に示す実施形態に対応する。基本的に、光ファイバは、放射光をキャピラリーカラムに供給し、そして別の光ファイバが、放射光を検出ゾーンから集光する。詳細には、入力放射光(例えば、レーザまたはLED光源からの)の方向、検出ゾーンにおける分離流路の軸、及び出力放射光の集光方向37は全てが、略同一平面にある。図示の実施形態では、本発明の検出構成は、検出ゾーンの分離流路の両側に配置される光ファイバを有する。1つの実施形態では、入力放射光は、検出ゾーンに供給され、そして/または出力放射光は、検出ゾーンから、光ファイバの形態の、特に先球加工光ファイバ(すなわち、単体構造内でファイバ端に一体的に形成される微小球を先端とする光ファイバ)の形態の光導波路を用いて集光される。
【0025】
更に、図2を参照するに、先球加工ファイバ(励起光ファイバ34)は、放射光源(例えば、図1に模式的に示すLED光源またはレーザ光源41)から延在して、励起放射光を方向35に沿って検出ゾーン32に誘導する。励起光ファイバ34の先球は、検出ゾーン32の近傍の分離カラム10の外面に、または外面の近くに配置される。図示の実施形態では、励起光ファイバ34の先球は、分離カラム10の外面から距離を隔てて配置される(すなわち、非接触モード)。図示の実施形態では、別の先球加工ファイバ(蛍光受光ファイバ36)は、検出器(例えば、図1に模式的に示す蛍光検出器42)にまで延在して、蛍光放射光を方向37に沿って検出ゾーン32から集光する。蛍光受光ファイバ36の先球は、検出ゾーン32の近傍の分離カラム10の外面に配置される、または外面の近くに配置される。図示の実施形態では、蛍光受光ファイバ36の先球は、分離カラム10の外面から距離を隔てて配置される(非接触モード)。先球を有する励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36は共に、非接触モード(キャピラリーカラムの外面から離間する)では、分離カラム10の両側に配置されて、背景蛍光を減少させ、そしてキャピラリーカラムまたは微小球のいずれに対しても物理的ダメージが決して生じないようにする。
【0026】
図2に示す実施形態では、図2に示すような検出ゾーン32にある構成要素群は、略同一平面に在る。詳細には、励起光ファイバ34の長手軸、蛍光受光ファイバ36の長手軸、及びキャピラリー流路12の長手軸は、ほぼ同一平面内で、少なくとも検出ゾーン32の領域において配向している(すなわち、略同一平面上に在る)。すなわち、励起光ファイバ34、蛍光受光ファイバ36、及びキャピラリーカラム10の長さ部分は全体として、湾曲する可能性があるが、しかしながら少なくとも検出ゾーン領域の近傍では、励起光ファイバ34の軸、蛍光受光ファイバ36の軸、及びキャピラリー流路12の軸は、ほぼ同一平面内で配向しているので、励起光ファイバ34から検出ゾーン32に向かう入力放射光の方向35、検出ゾーン32における分離流路12の軸、及び検出ゾーン32から離れて蛍光受光ファイバ36に沿って出力される放射光の集光方向37は全て、略同一平面に在る。
【0027】
更に、検出ゾーン32では、励起光ファイバ34の軸と蛍光受光ファイバ36の軸とは一直線とはならず、角度をなす。励起光ファイバ34の軸、及び蛍光受光ファイバ36の軸のうちの少なくとも一方の軸は、検出ゾーン32における分離流路12の軸と直交していない。図2に示す図示の実施形態では、励起光ファイバ34の軸、及び蛍光受光ファイバ36の軸は共に、分離流路の軸と直交しておらず、そして検出ゾーン32における分離流路12の軸とそれぞれ角度39及び40をなしている。角度39及び角度40は、略同一とするか、または異ならせることができ、そして分離流路12の軸の基準方向、またはキャピラリーカラム10の基準カラム部分(図2に示すような、ファイバ34と36との間のキャピラリーカラム10のカラム部分)を基準として測定される90度未満、または90度超とすることができる。例えば、同じ基準カラム部分を基準として測定される場合、角度39は90度未満とし、そして角度40は90度超とすることができる。図2に示す実施形態では、角度39及び角度40は同一であり、そして略同一平面内に在る。
【0028】
図2に示す実施形態では、両方の励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36はそれぞれ、200マイクロメートル径のコアを光導波路として、外部クラッド層の内部に有し、そして350マイクロメートル径の球形先端(すなわち、ファイバコア径と球径との比が1:1.75)を有し、この球形先端は、融合されたコア及びクラッド材料を含む。球形先端は、略球形の断面形状を有する。これらの先球ファイバは、融着接続機を用いることにより形成することができる、または多数の市販品供給業者から入手することができる。キャピラリーカラム10は、200〜370マイクロメートル(例えば、360マイクロメートル)の外径、及び20〜150マイクロメートル(例えば、75マイクロメートル)の内径を有する。励起光ファイバ34の先球の先端は、キャピラリーカラムの外面から約50〜500マイクロメートルだけ離間し、そして蛍光受光ファイバ36の先球の先端は、キャピラリーカラムの外面から約10〜500マイクロメートル(例えば、50〜200マイクロメートル)だけ離間している。別の構成として、蛍光受光ファイバ36は、500マイクロメートル径の球形先端が当該ファイバの遠位端に位置する構成の300マイクロメートル径のコアを有することができる(すなわち、ファイバコア径と球径との比が1:2.5)。角度39及び40はそれぞれ、0度超〜90度未満、好ましくは20〜70度、そして更に好ましくは、30〜45度の範囲とすることができる。図2の図示の実施形態では、角度39及び40は共に、約70度である。
【0029】
1つの実施形態では、光検出システムは、超高輝度藤紫色LED(例えば、Cree XLamp(クリーキセノンランプ))を備えるように、蛍光標識(FITC)抗体フラグメントを検出するための励起/放射光源として構成される。モジュール設計および光ファイバの連結により、励起放射光をレーザモジュール(LIF(レーザ誘起蛍光)用途の)または他の種類の安価な光源に交換する融通性が付与される。
【0030】
平端ファイバ(微小球レンズなしで端面がむき出しのファイバ)と比較して、これらの先球加工ファイバ(図2)は、励起光ファイバ34の入力放射光の高い集光性(集光度/高出力密度)を実現し、そして蛍光受光ファイバ36の高集光効率(高開口数NA)を、広範囲角度の蛍光コレクタとして実現して、蛍光信号集光能力を高め、そして検出感度を向上させることが判明している。大径コア(100〜1000マイクロメートル)及び高NAマルチモードファイバを用いると、LEDまたはレーザからの高出力光を励起光ファイバ34に結合させることができる。微小球レンズを励起光ファイバ34の遠位出力端に一体に設けることにより、高い結合効率を分離流路12(20〜200マイクロメートルのマイクロ流体流路)の内部で実現して蛍光検出感度を高めることができる。
【0031】
より小さい径の励起光ファイバ34が200マイクロメートルのコア径を有し、かつキャピラリー分離流路12を指向する330〜350マイクロメートル径の球を有することにより、より高い出力密度の状態で焦点がより小さく絞られるので、蛍光励起信号を最適化することができる。300マイクロメートルのコア径を有し、かつ500マイクロメートル径の球形レンズを有する蛍光受光ファイバ36を用いて蛍光発光を集光する場合、発光集光効率が高くなる。励起光ファイバ及び蛍光検出光軸が90度の面外角度をなす早期の特許(例えば、米国特許第6,184,990号;第6,828,567号;及び第6,870,165号)に開示される検出構成と比較すると、画期的な本手法では、励起光ファイバ、蛍光受光ファイバ、及び分離流路を略同一平面内に配置する。この構成によって、マイクロ光学系を流体流路(ガラスキャピラリー)に機械的に位置合わせする操作を簡易化することができる。
【0032】
図示の実施形態は、放射光誘導蛍光の種類を検出することに関するものであるが、本発明は、吸光度検出のような他の種類の検出方式にも適用され、この場合、1つの光ファイバが放射光をキャピラリーカラムに供給し、そして別の光ファイバが検出ゾーンからの放射光を集光する。
【0033】
CEカートリッジ
本発明の1つの態様では、システム100は、CE(キャピラリー電気泳動)装置(例えば、図7〜9に示す)を備えるカートリッジ式生体分子分離システムであり、このCE装置は、高信頼度、小型、簡易化、脱着可能、携行式、入れ替え可能、再使用可能、低コスト、リサイクル可能、及び/又は使い捨て式生体分子分離カートリッジを利用するように構成され、当該カートリッジは、組み立てが容易であり、かつ可動部品無しで使用することができ、そして試薬(分離用緩衝液)を内蔵する容器を有する。生体分子分離カートリッジは、ペンの形状にほぼ沿った形状に変化する全体サイズを有するように構成することができる。生体分子分離カートリッジは、当該カートリッジ内に画成される少なくとも1つの分離流路を含む。生体分子分離システム100には、光学系を含む上記検出構成が確立され、この光学系は、入力放射光を分離流路に沿った検出ゾーンに照射し、そして出力放射光を検出ゾーンから検出して、サンプル検体から放出される放射光(例えば、放射光誘導蛍光発光)を、光学系をキャピラリーカラムに微細に位置合わせする必要を伴なうことなく検出する。システム100は、生体分子分離を生体分子分離カートリッジの分離流路内で自動的に行なうように構成される。
【0034】
図3A〜3Hは、本発明の1つの実施形態による単一流路カートリッジ(single−channel cartridge)60を示している。キャピラリーカラム10は、カートリッジ60により、かつカートリッジ60内で支持される。図示の実施形態では、カートリッジ60は、細長く、ほぼ縦長の円筒形本体80を有する。カートリッジ60の図示の本体80は、略円形の円筒状であるが、当該本体80は、方形、矩形、六角形、楕円形、または他の規則的な、及び不規則な断面形状のような他の筒型断面形状を有することができる。図示のように、本体80は、略均一な幅、または略一定の幅を有する本体部分を有し、この場合、本体の下側端部は本体部分の均一幅よりも狭くなっている。本体80の下側端部は先細りして狭小部となって、例えば略円錐形部分97で終端する。キャピラリーカラム10は、カートリッジ本体80により、またはカートリッジ本体80内に保持されて、カートリッジ本体80の長手中心軸と略一致する。1つの実施形態では、カートリッジの全体サイズは、分離流路が30cmを超えない、好ましくは15〜20cmの範囲であることにより特徴付けられる。
【0035】
更に、図6A及び6Bを参照するに、出口側緩衝液容器62が本体80の上端部分に取り付けられる。緩衝液容器62は、容器62の上部開口を密閉する蓋85(例えば、ネジ式蓋または栓)を含むことにより、分離支持体(例えば、ゲル緩衝液)を当該容器内に保持する(図6Aは、蓋85を取り外した状態の容器62を示している)。容器62の底面は、溝93を画成する縁部88と、そしてキャピラリーカラム10を収容する貫通孔91を有する中心突出部90と、を有する。容器62は、外部加圧ガス(例えば、窒素)供給部(例えば、以下に説明するCE装置の一部であるガスタンクまたはポンプ)に接続されるポート64(例えば、小さいドリル開口孔)を有する。(カートリッジ60を暫くの間、使用しない場合、ポート64は、短い帯状テープを貼り付けることにより密栓することができる)。加圧ガスによって、必要な空圧を供給して、キャピラリーカラム10のキャピラリー分離流路12をパージし、そして当該キャピラリー分離流路12に、容器62に収容される分離支持体(緩衝液)を充填することができる。分離用緩衝液の粘度によって異なるが、最大60PSIの圧力を加えて、キャピラリーカラム10への充填を上部緩衝液容器62から行なうことができる。容器62に、緩衝液と電気的にコンタクトする電極66(アノード)を設ける。電極66は、外部に開口63を通して露出するコンタクト面を有する。
【0036】
更に、内部構造を示す図5A及び5Bを参照するに、本体80は、2つの半殻体82及び83を含み、これらの半殻体はそれぞれ、半円錐形部分97にまで延在する略半円筒体である。半殻体82及び83は、外部光学系から検出ゾーン68への接近を可能にする貫通開口または窓86を画成する(以下に説明するCE装置に関連して詳細に説明される)。半殻体82及び83の内部は、略中空である。半殻体82及び83の上端部分にはそれぞれ、フランジ92が設けられ、このフランジ92は、容器62の溝93と、これらの部分が組み付けられると雄雌嵌合して、容器62をカートリッジ60の本体80に強固に取り付ける。溝及び凹部を、半殻体82及び83の内部に沿った適切な位置に設けて、キャピラリーカラム10を挿通させる。半殻体82の外部表面に、位置合わせ溝50、及び位置指標凹部51を設けて案内を可能とすることにより、カートリッジ60をCE装置に挿入するときのCE装置に対するカートリッジ60内の検出窓86の明確かつ正確な位置決め、及び位置合わせを容易にしている。同様に、半殻体83の外部に、位置指標凹部52を設けて、検出窓86の位置合わせ、及び位置決めをCE装置内で行なう。更に、位置合わせ/位置指標凹部53を設けて、CE装置内に配設置される外部電源に対する電極67の位置合わせ、及び位置決めを容易にする。
【0037】
更に、取り付けて合体させた2つの半殻体を断面から見たときの図3Hを参照するに、検出ゾーン68の上流及び下流の円筒スリーブ群またはフェルール群87が、キャピラリーカラム10をカートリッジ60の本体80内で支持している(図4も参照)。キャピラリーカラム10をフェルール87に挿通させ、そしてキャピラリーカラム10の一方の端部は、容器62の内部に延出して、容器62に収容される緩衝液と流体連通し、そして他方の端部は、カートリッジ本体80の下側端部を超えて延出している。図示の実施形態では、キャピラリーカラム10の上側端部を容器62内に強固に固定するために、貫通孔を有するネジ付きニップル96を容器62の基台にねじ込み、そしてネジ付きニップル96でO−リングシール96’を押圧圧縮する(図6Cも参照)。キャピラリーカラム10の上側端部をニップル96に挿通させる。ネジ付きニップル96は、キャピラリーカラムを取り外す、または異なる長さのキャピラリーカラムを収容する際のフレキシビリティを与える。別の構成として、ニップルを使用するのではなく、キャピラリーカラム10の端部を容器62に、糊またはエポキシで強固に固着することができる。これらのフェルール87は、これらの凹部94から窓86に面する位置に延出し、かつキャピラリーカラム10の検出ゾーン68を露出させる。2つの半殻体82及び83は、例えばネジ89、またはエポキシ、或いはクリップで組み付けて合体させることにより本体80を形成する。キャピラリーカラム10は、カートリッジ本体80内で支持されるこれらのフェルール87によって同軸に支持され、これらのフェルール87の各フェルールは、カートリッジ本体によって片持ち梁状に支持され、かつ検出窓86に面する位置に延出する端部を有し、そしてキャピラリーカラムに沿った検出ゾーンは、これらのフェルールの延出端部の間で露出する。
【0038】
カートリッジ60の下側端部には、別の電極67(カソード)が設けられる。電極67は、カートリッジ本体60の半殻体82及び83の円錐形部分97の開口65を通して外部に露出するコンタクト面を有することにより、本明細書で以下に説明するカートリッジ60を収容するように設計される実施形態(図7〜9参照)のようなCE装置の内部に設置されると、CE装置内の外部高電圧電源に接続されて電気泳動を行なう。下側電極67は、金属/導電スリーブの形態に構成され、当該スリーブは、カートリッジ60の下側端部から延出し、かつキャピラリーカラム10の外部露出端部の側面を完全に取り囲み(例えば、同軸金属チューブの形態で)、または部分的に取り囲み(例えば、金属網、金網、または金属網目の形態で、或いはC字形断面を有する開放円筒状管の形態で)、この場合、キャピラリーカラム10の先端は露出して、外部緩衝液容器と流体連通する。キャピラリーカラム10の先端は、電極67の端部を超えて延出して、サンプルに一層良好に接近することができる。
【0039】
図3に示す種々の部品を組み付けるために、容器62の下端縁部88を、半殻体83の端部に収容し、この場合、フランジ92は容器62の溝93に挿入される。キャピラリーカラム10は、これらのフェルール87に挿通させ、そして一方の端部を下側電極67にねじ込む。キャピラリーカラム10の他方の端部は、容器62の下端開口91に、ニップル96を挿通して挿入する。ニップル96を容器62の基台に締め付けて、O−リング96’を圧縮することにより、キャピラリーカラム10の本体に押し付けて密閉する。これらのフェルール87の遠端を半殻体83の凹部94に挿入する。下側電極67は、半殻体83の円錐形部分97の内部に設けた溝95に配置され、この場合、当該電極の端部は、円錐形部分97を超えて延出する。糊液を滴下して、電極67を溝95に強固に固定することができる。他方の半殻体82を半殻体83の上に載置し、そしてリベットまたは図示のネジ89のような適切な締結手段により半殻体83に取り付ける。容器62に所望の分離支持体(緩衝液)を充填し、そして蓋をする。完全に組み付けたカートリッジ60を試験し、そしてカートリッジ60にラベルを貼り付けることができる。
【0040】
RFIDラベル150のような電子ラベルは、カートリッジ60に(例えば、容器62の外側円筒面に)埋め込むことにより、または取り付けることにより、カートリッジの特定の構成(例えば、緩衝媒体、キャピラリーのサイズ、被膜、及び長さ)の識別手段となる。RFIDラベルは更に、電気泳動の回数に関する事前設定限界値、及び使用期限付きカートリッジタイプを含むことができる。カートリッジ60を組み付けた後、RFIDラベルに初期構成パラメータ群を付加する。RFIDは、再書き込み可能であり、かつ情報で更新することができるので、カートリッジの使用状況(例えば、電気泳動の回数、及び電気泳動時の条件及び/又は電気泳動パラメータ(例えば、印加電圧、電気泳動期間、サンプル)、カートリッジを再調整した回数など)を追跡して、カートリッジの履歴を容易に把握することができる(例えば、以下に説明するCE装置によって、または別体のリーダによって)。各カートリッジの有効使用期限の終了は、RFIDラベルから判断することもできる。別の構成として、バーコードラベルのような静止ラベルを取り付けてもよい。
【0041】
以下に更に詳細に説明するように、CE装置内で行なわれる電気泳動動作では、下側電極67の端部をキャピラリーカラム10の開口端部と一緒に、外部緩衝液容器に浸漬する。電気泳動を行なうために、高電圧を緩衝液容器62内の電極66、及び外部容器に浸漬した電極67に供給して、高電圧が緩衝液に亘り加わる構成の高電圧回路を形成することにより、電気泳動経路をキャピラリーカラム10内に確立することができる。電極67によって更に、保護を行なって、キャピラリーカラム10の外部露出端部の破断を防止することができる。
【0042】
当該カートリッジは、検出光学系を当該カートリッジに内蔵させる必要がなく、そして分離流路は、検出ゾーンに対する微細な位置合わせを必要としない。詳細には、図示の実施形態では、カートリッジは内蔵検出光学系を含まない。更に、カートリッジ60の軸方向平面に沿って切断したときの図4の模式断面図を参照すると、検出ゾーン68の領域を取り囲むキャビティ69(検出窓86により画成される)を有するカートリッジ60の内部が図示されている(検出ゾーン68は、図1に示す検出ゾーン32に対応する)。検出ゾーン68の上流及び下流のスリーブ群またはフェルール群87は、キャピラリーカラム10をカートリッジ60の本体内で支持する。CE装置内で支持される外部励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36は検出ゾーン68に、分離流路/カラム10に合わせて画成される検出窓86を通して位置合わせされる。以下に詳細に説明する図示の実施形態では、励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36は、CE装置内のフォークアセンブリにより支持される(例えば、図10参照)。ファイバ34及び36の軸、及びキャピラリーカラム10の軸は、同一平面に在る。ファイバ34及び36の先球は、キャピラリーカラム10に近接しているが、接触はしない。別の表現をすると、当該光ファイバは、分離流路の外面から離間し、かつ一体的に形成される先球の終端構造を有し、この先球構造は、分離流路の外面とは接触しない。
【0043】
本発明の別の態様では、緩衝媒体の化学的安定性、及びこれらのキャピラリーの特徴(例えば、キャピラリーのサイズ、被膜、及び長さ)は、各カートリッジに対応して定義される。異なるカートリッジを容易に入れ替えて、以下に説明するCE装置内で使用することにより、特定のサンプルに基づく分離に適合させることができる。これらのカートリッジは、取り替える、調整する(例えば、新鮮な緩衝液、シール材、新品のキャピラリーカラム、及び/又は電極などで)、リサイクルする、または廃棄することができる。
【0044】
本発明によるカートリッジは、比較的低いコストで製造することができる。カートリッジの本体は、射出成形プラスチック(例えば、PVC、ポリウレタン、ポリカーボネート、アセタールなど)により作製することができる。これらの電極は、ステンレス鋼により形成することができる。これらのフェルールは、射出成形プラスチック材料により成形するか、またはアルミニウム加工部品またはガラス加工部品で構成することができる。
【0045】
図示の実施形態では、カートリッジ60の合計サイズは、25cm未満の長さ(例えば、約18〜20cm)であり、そして5cm未満の直径(例えば、2〜3cm)である。カートリッジ60に収容することができるキャピラリーカラム10の長さは、20cm未満である(例えば、約15〜17cm)。容器62の容量は、50cc未満である(例えば、約15〜30cc)。
【0046】
CE装置
図7は、本発明の1つの実施形態によるCE装置200を外部から見た図を示している。図8は、本発明の1つの実施形態による、前面ハウジング及び側面ハウジング203を取り外した状態のCE装置200を内部から見た図を示している。図9は、CE装置200の構成部品群を示す模式図であり、これらの構成部品のうちの幾つかが装置ハウジングの内部に設けられ、そして幾つかがハウジングの外部に設けられる。CE装置200は、サンプル輸送機構202に動作可能に接続されるシステムボード201と、カートリッジインターフェース機構204と、光電子増倍管(PMT)のような光信号検出器206と、電源208(当該電源は、高電圧電源223を含み、そして更に、システム電源222を含むことができ;当該電源222は、CE装置200の外部に設けることができる)と、検出光学系210と、そして加圧ガス供給源212(当該加圧ガス供給源は、CE装置200の外部に設けることができ、かつ装置ハウジングのポートに接続することができる)と、を備える。
【0047】
コントローラ26を設けてユーザインターフェースを行ない、そして実験/試験設定及びパラメータ群をプログラムする。当該コントローラは、必要なアプリケーションソフトウェアルーチン群を含み、これらのアプリケーションソフトウェアルーチンは更に、データ圧縮アプリケーション(data reduction application)を含むことができる。コントローラ26は、装置200の一体化部分とすることができる(例えば、アプリケーションルーチンがASIC(特殊用途向け集積回路)内で符号化処理された状態のシステムボード201の一部として)、または当該コントローラは、CE装置200に接続される/インターフェース接続される別体ユニットとすることができる。図示の実施形態では、当該コントローラは、CE装置200のハウジングの外部に、CE装置200にシステムボード201を介してUSBインターフェース経由で接続されるデスクトップコンピュータまたはノートブックコンピュータの形態として設けられる。外部コントローラ26は、大容量記憶装置、ディスプレイ、キーボードなどを含むことができる、またはこれらのユーザインターフェース構成要素群のうちの幾つかは、CE装置200に一体的に形成されるように構成することができる(例えば、前面ハウジングに取り付けられるディスプレイ及びキーボード)。別の構成として、本発明の範囲及び思想から逸脱しない限り、システムボード201は、外部コントローラ26の一部として内蔵させることができる。
【0048】
システムボード201は、必要な電子機器を含むことにより、CE装置の種々の構成要素を駆動することができ、例えば輸送機構202を移動させる、電源208を出力させる、PMT(光電子増倍管)206を駆動する、加圧ガス212のバルブを開く、カートリッジインターフェース204を移動させる、RFID送信機/リーダなどを駆動することができる。システムボード201は、これらの図に模式的に表示されていることに留意されたい。当該システムボード201は、特定の構成要素群を制御する他の電子機器ボードを含むことができる(例えば、サンプル輸送機構202内のモータ群を制御する電子機器ボード)、またはこれらの他のボードは、システムボード201とは別体として、当該システムボード201と通信させることにより、所望の機能を実行することができる。厳密な電子機器ボード構成は、本発明では重要ではなく、そしてこれらのボードを構成して、本明細書に開示される所望の機能及び特徴を実現する手法は、この技術分野の当業者の知識をもってすれば容易に実施可能である。
【0049】
サンプル輸送機構202は、サンプル/緩衝液トレイ220を支持し、かつ3自由度で移動するテーブル221を含み、当該サンプル/緩衝液トレイ220は、複数のウェル(例えば、標準の96ウェル滴定プレート、及び緩衝液、クリーニング溶液、及び廃液を回収する大容量ウェル)を有する。複数のウェルは、クリーニング溶液及びサンプルを収容するウェルと、そして更に、廃液を回収するためのウェルと、を含むことができる。これらの図では、X、Y、及びZは直交軸であることに留意されたい。Yは垂直軸であり;Xは装置を横切る水平方向(装置の背面に平行な)を向いており;そして、Zは、装置の内部に入り込み、そして装置から出て行く水平方向を向いている。テーブル221は、輸送機構202によって制御されて、上下に移動し、そして平面内を直線的に移動し、そして当該平面内で回転する。すなわち、テーブル221は、単一の水平方向(Z方向)に移動し、そして垂直方向(Y方向)に移動し、更に垂直軸(Y軸)の回りを回転する。回転及び並進運動を組み合わせることにより、複数のウェルのうちの任意のウェルをトレイ220に載置して、外部露出キャピラリーカラム60の先端がこれらのウェルに接近することができるようにする。装置ハウジングの前面パネル203は、ユーザによる接近を可能にしてトレイ220を搬入し、そして取り出すための扉260を備える開口を含む。
【0050】
加圧ガス供給源212(例えば、加圧N)は、CE装置のハウジングの内部に設置されるガスカートリッジとすることができる、または加圧ガスをCE装置に、装置ハウジングに位置するガス接続ポートを介して供給する外部供給源とすることができる(この場合、加圧ガス供給源は、外部ガス供給源に通じるガス接続ポートとすることができる)。加圧ガスは、カートリッジ60内の容器62に、適切なガス管、及びバルブ(当該バルブは、システムボード201に作動可能に接続される)を介して供給される。
【0051】
電源208は、システムボード201に接続されるシステムDC電源222(例えば、外部AC電源からの24VDC)と、そして必要な高電圧を電極コンタクト/プローブ224及び225に供給して、カートリッジ60内の電極66及び67との電気コンタクトを行なって、電気泳動をカートリッジ60内で行なう可変高電圧電源223と、を含む。別の構成として、外部AC電源から給電される内部24VDC電源を用いるのではなく、CE装置200は、外部24VDC電源を用いることができ、これにより、当該装置を、内部AC−DC変換を行なうことなく、より簡単に、かつより安全に使用することができる。これによって更に、バッテリ動作が可能となって、屋外で携行し、そして操作することができる。コンタクトプローブ224及び225は空圧で作動させる(例えば、ガス供給源212からの加圧ガスを制御することにより作動させる、または電気機械的に作動させる)ことにより、電極66及び67の露出表面に押圧接触させることができる、またはコンタクトプローブ224及び225を単純にばね付勢して、これらのプローブを電極66及び67の露出表面に押し付け付勢することができる。
【0052】
励起光ファイバ34は、システムボード201の一部とすることができるLED226の形態の光源と光結合させる。蛍光受光ファイバ36はPMT206と、適切な光ファイバ226を介して光結合させる。PMT206の電気出力は、システムボード201に接続される。
【0053】
カートリッジインターフェース機構204は、当該装置のシャーシに支持され、そしてカートリッジ60を収容し、そして当該カートリッジの位置を検出光学系210に対して明確かつ正確に段階的に変化させるように構成される。扉261(図7)を装置ハウジングの上部パネルに設ける。カートリッジインターフェース機構204は、円筒形開口を有する格納ブロック228を支持する基台227を含み、この円筒形開口は、カートリッジ60を図示のように収容するようにサイズ形成され、かつ構成される。この図示の実施形態では、カートリッジ60は、格納ブロック228により垂直方向に支持され、当該カートリッジ60の長手軸は、トレイ220の水平面に対して略垂直になっている。カートリッジを、当該カートリッジの長手軸が試薬/サンプル容器に対して水平になるように支持する構成は、本発明の範囲に含まれる。格納ブロック228は指標キー群(図示せず)を含み、これらの指標キーは、カートリッジ60の半殻体82に設けられる位置合わせ溝50、及び指標凹部群51(例えば、図3A参照)、及びカートリッジ60の半殻体83に設けられる指標凹部52及び53(例えば、図3B参照)に丁度収まる。位置合わせ溝50及び指標凹部群51はガイド部となって、カートリッジ60がCE装置に正しく挿入される場合に、以下に説明するフォークアセンブリ230に対するカートリッジ60の検出窓86の明確かつ正確な位置決め、及び位置合わせが容易になる。これらの指標キーのうちの1つ以上の指標キーには、安全インターロック機能を設けることができ、この安全インターロック機能が作動して、カートリッジ60が不意に、格納ブロック228から電気泳動動作中に外れるのを防止する。当該安全インターロック機能は更に、トレイ220の前面扉260と、そしてカートリッジ60(図7)を挿入するための上部扉261と、を含むことができるので、ユーザが誤って、これらの扉を電気泳動動作中に開けるのを防止する。当該安全インターロック(図示せず)は、電気泳動の終了手順(例えば、高電圧電源の遮断、及び以下に説明するフォークアセンブリ230の上方移動)が実行されるときにのみ解除されることになる。格納ブロック228は更に、RFIDリーダ/送信機266を含む(例えば、格納ブロック228の外部に)ことにより、キャピラリーカラム10に貼り付けたRFIDラベル150と通信する。
【0054】
図示の実施形態では、加圧ガスは、当該装置の外部から当該装置内のバルブ(図示せず)に供給される。図6Cを参照するに、加圧空気供給チューブ300はバルブから延出して、上部扉261の下側の、かつカートリッジ容器62の蓋85の上方の位置の空気流出口302に接続される。空気流出口302は、扉261が正しく閉じる(例えば、安全インターロックが作動している状態)と、カートリッジ容器62の蓋85の上部を押圧するO−リング304を含む。これにより、境界を密閉することができるので、加圧ガスを容器蓋85のポート64に供給することができる。
【0055】
基台227は更に、軌道229を支持して、フォークアセンブリ230を移動させる。図10〜12を更に参照するに、フォークアセンブリ230は、スライド群231に取り付けられ、これらのスライド231を作動させて、軌道229に沿って、互いに向かう方向に、そして互いから離れる方向に(すなわち、これらの図面のX方向に)摺動させることができる。別の表現をすると、図示の実施形態では、これらのフォークアセンブリは、同じ軸に沿って摺動するように支持される。励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36はそれぞれ、フォークアセンブリ230上に支持される。これらのフォークアセンブリ230は、励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36の先球を、キャピラリーカラム10の検出ゾーン68の近傍に位置決めして、分離サンプル検体を検出するように構成される。これらのフォークアセンブリ230の移動は、空圧作用または電磁作用により実現することができる。図示の実施形態では、これらのフォークアセンブリ230は、空圧ピストン群233によって移動させ、これらの空圧ピストン233は、システムボード201により制御される適切なバルブ(群)(図示せず)によって制御される加圧ガス212の供給を利用することができる。
【0056】
カートリッジ60をこれらのフォークアセンブリ230に対して、これらのフォークアセンブリ230が、カートリッジ60の側方両側に配置されるように位置決めし、これらのフォークアセンブリは、第1及び第2フォークアセンブリが、カートリッジに画成される検出窓に面する位置にまで延出移動することがない第1位置と、第1及び第2フォークアセンブリが、カートリッジに画成される検出窓に面する位置にまで延出移動する第2位置との間で移動する。これらのフォークアセンブリ230は基本的に、これらのフォークアセンブリが離れてカートリッジ60をこれらのフォークアセンブリ230の間に挿入することができる第1位置と、これらのフォークアセンブリが、カートリッジ60の検出窓86に面する位置の(検出窓86に面する位置でインターロックされる)フェルール群87を押圧する第2位置との間で移動する。
【0057】
これらのフォークアセンブリ230の突出部分には相互嵌合面を設け、この相互嵌合面によって、突出部表面をフェルール87に対向位置合わせし易くなり、例えば溝型面または凹面236を位置合わせし易くなって、当該突出部表面をこれらのフェルール87の円筒形本体にぴったり合わせることができる。図12は、フォークアセンブリ230(励起光ファイバ34を有する方のフォークアセンブリ)を、これらのフェルール87に押圧する様子を示す簡易図である(カートリッジ60の残りの部分はこの図には示されていない)。第2位置では、凹面236は、図11に示すように、延出移動してカートリッジ60の検出窓86の内側にまで入り込んでいる(図4も参照)。この位置では、一方のフォークアセンブリに支持される光ファイバは、放射光をキャピラリーカラムに供給し、そして別のフォークアセンブリに支持される別の光ファイバは、放射光を検出ゾーンから集光する。特定の図示の実施形態では、放射光誘導蛍光検出方法を実施するが、この放射光誘導蛍光検出方法に代えて、他の種類の光検出方法を本発明の範囲及び思想から逸脱しない限り実施することができる。両方のフォークアセンブリ230を制御して、一緒に移動させることにより、これらのフェルール87を略同時に押圧することができる、または別々に移動させることにより、これらのフェルール87を順番に押圧することができる。図示の実施形態では、これらのフェルール87は、これらのフォークアセンブリ230の突出部表面に対向する停止部材となって、これらの光ファイバに一体的に形成される終端先球がキャピラリーカラムの外面に触れることがなく、かつキャピラリーカートリッジの外面から所定の距離を隔てて離間するようにし、この構成は、これらのフォークアセンブリが上に説明した第1位置と第2位置との間で作動するときに繰り返し維持することができる。
【0058】
図示の実施形態は、これらの光ファイバがV字状に配向している様子を示しているが、これらの光ファイバは、直線状になる、または直線的になる(例えば、吸光度検出方法)ように構成することができる、または一方の、または両方の光ファイバが、キャピラリーカラムの軸と直交する軸を持つように構成することができる。更に、一方のフォークアセンブリのみを、放射光供給ファイバ及び放射光集光ファイバの両方が、同じフォークアセンブリに取り付けられる構成で用いることができる。
【0059】
システムボード201は、サンプル及び緩衝液トレイ220を、格納ブロック228内に保持されるカートリッジ60に対して位置決めする機能を含む、CE装置200の種々の機能を制御し、そしてカートリッジインターフェース機構204の上記機能群、及び電気泳動の終了、及び安全ロックの解除を検出して、カートリッジ60を格納ブロック228から取り出す機能のような他の機能を制御する。
【0060】
1つの実施形態では、可変高電圧電源(例えば、カリフォルニア州サッタークリークに在るエムコ(EMCO)社製:0V〜20V)を用いて、電界(例えば、4〜13KV)をキャピラリーに供給することにより、生体分子の電気的試料注入及び分離を行なう。マルチモード光ファイバ(100μm〜500μm)は、励起光(LED:200〜700nmからの)を供給し、そして発光信号(蛍光)を集光し、そして当該発光信号をPMT(光電子増倍管)に転送してデータ分析を行なう。PMTモジュールは、内蔵型発光フィルタ(例えば、ロングパスフィルタ=520〜650nm、または530nmまたは620nmの帯域通過フィルタ)を有することにより、検出感度を向上させることができる。詳細には、図示の例では、広帯域光エネルギー(FWHM=50nm)及び100度の視野角を有する励起LED(460〜490nmまたは500〜550nm)を大径コア励起光ファイバ(100〜1000マイクロメートル)の平端面(研磨端面または劈開端面)に接続する。ラインフィルタ(FWHM=2〜50nm、帯域通過ラインフィルタ)を、先端部に350マイクロメートル径の先球加工を行った励起ファイバの200マイクロメートル径コアに光を結合させる手前のLEDの前面に配置して、バックグランドノイズを低減する。当該ファイバの先球レンズを、融着接続(高電圧印加による熱溶融)によって、高精度に制御された球径を持つように形成して、明確に定義される出射NA(開口数)及びスポットサイズを設定することにより、励起放射エネルギーをキャピラリーカラムの内径(分離流路)に結合させる。次に、分離検体から生成される蛍光発光信号をキャピラリー流路の検出ゾーンで、同様の先球加工ファイバ(500マイクロメートル径の球が付いた、より大きいコア径のファイバ)を用いて集光し、そして例えばFITC色素用途向けの内蔵発光フィルタ(帯域通過フィルタ=520nm)を有する外部検出モジュール(図9に示され、このモジュールは、PMTまたはSiPMTまたはCCDとすることができる)に中継する。
【0061】
電気泳動システム動作:
所望の電気泳動を行なうために、ユーザは適切なパラメータ群を、コントローラ26を用いて事前設定する。適切な分離支持体(緩衝液)と、そして所望のサイズ及び被膜を有するキャピラリーカラム10と、を有するカートリッジ60を格納ブロック228に挿入する。システムボード201に取り付けられるコントローラ26は、CE装置200に対する制御を行なうことにより、以下のタスクを行なう。
【0062】
カートリッジは、正しく挿入されると、格納ブロック228内で、検出窓がこれらのフォークアセンブリ230に対して適切に位置決めされるように「ロック」される。上部扉261を閉じて、空気流出口のO−リングをカートリッジ容器62の蓋85の上面に押圧して、当該空気流出口をカートリッジ容器62のポート64に接近させると、加圧ガスが供給源212から流れ始める状態になる。電気コンタクトプローブ224及び225を電極66及び67に押し当てる。これらのフォークアセンブリ230を移動させて、検出窓86に面する位置のこれらのフェルール87に押圧嵌合させる。
【0063】
X方向、Y方向、及びZ方向を組み合わせることにより、サンプル輸送機構は、サンプル/緩衝液トレイ220の適切なウェルを、キャピラリーカラム10の外部露出先端に対して位置決めする。必要に応じて、キャピラリーカラム10に含まれる分離用緩衝液をまず、加圧ガスをカートリッジ容器62に流すことによりパージする(トレイ220を移動させて特定のウェルを位置決めすることにより、廃液をキャピラリーカラムから回収することができる)、そして/または容器からの新鮮な分離用緩衝液で分離流路を充填する。
【0064】
トレイ220のウェルに収容される試験サンプルを位置決めして、キャピラリーカラム10の外部露出先端、及び電極67の先端を当該サンプルに浸す。当該サンプルを分離キャピラリーカラム10に、電気的試料注入により(適切な高電圧を所定の期間、例えば60秒未満、例えば5〜10秒間印加することにより)、すなわちこの技術分野の当業者に公知の手順により注入する。
【0065】
次に、トレイ220の緩衝液容器を位置決めして、キャピラリーカラム10の先端、及び電極67の先端を当該容器に浸す。電気泳動は、適切なレベルの高電圧を、所定の期間に亘って特定のサンプル、及び分離用緩衝媒体に印加することにより行なわれる。電気泳動中、放射光誘導蛍光に対応するデータが、PMT206を介して収集される。当該データは電子ファイルに保存される。電気泳動が終了すると、当該トレイ220を降下させる。
【0066】
電気泳動が更に行なわれることがない場合、カートリッジ60は、事前設定解除手順を実施することにより取り出すことができ、この事前設定解除手順では、加圧ガスの供給を停止し、これらのフォークアセンブリ230をカートリッジ60から離れるように移動させ(上に説明したように)、コンタクトプローブ224及び225(これらのプローブが作動可能である場合に)による電極66及び67との当接を解除し、そしてカートリッジ60のロックを解除する。カートリッジ60をこのようにして取り出すことができ、そして次の電気泳動に用いる別のカートリッジに所望の時点で取り替える。
【0067】
電気泳動が更に、同じサンプルに対して、または更に別のサンプルに対して行なうことが要求される場合、容器を加圧することにより、前の電気泳動の古い緩衝液(例えば、ゲル緩衝液)をキャピラリーカラム60から廃液ウェルに向かってパージして、キャピラリーに充填された緩衝液を新鮮な緩衝液に入れ替える。トレイ220は、別のサンプルをキャピラリーカラム60に充填し、そして電気泳動を前に説明したように行なう前に、キャピラリーカラム60の先端がクリーニング溶液(ウェル内の)でクリーニングされるように位置決めされる。
【0068】
キャピラリーカラム60の出口の緩衝液容器62に流入したサンプル検体は、容器の容積と比較すると、このように少ない量であり、かつ低い体積濃度であり、そしてこれらの検体は、ゲル容器内で混合されると予測されるので、これまでの電気泳動による無視できる微量の検体しか容器内に残らず、そして無視できる微量の検体が、キャピラリーカラム60に充填されたゲルに次の電気泳動のために入れ替わるゲル内に均一に分散することに注目されたい。この無視できる微量に起因するノイズは必ず、極めて小さいバックグランドノイズとなり、このバックグランドノイズは、検出信号からデータ分析に際して容易に除去することができる。
【0069】
電気泳動が更に行なわれることがない場合、カートリッジ60は、事前設定解除手順を実施することによって取り出すことができ、この事前設定解除手順では、加圧ガスの供給を停止し、これらのフォークアセンブリ230をカートリッジ60から離れるように移動させ(上に説明したように)、コンタクトプローブ224及び225(これらのプローブが作動可能である場合に)による電極66及び67との当接を解除し、そしてカートリッジ60のロックを解除する。カートリッジ60をこのようにして取り出すことができ、そして次の電気泳動に用いる別のカートリッジに所望の時点で取り替える。
【0070】
上述の処理手順は、コントローラ26の自動化機能群のうちの1つの機能としてプログラムすることができる。
【0071】
収集データは、適切なアプリケーションソフトウェアルーチンを使用することにより分析される。図13A及び13Bは、1分(60秒)未満経過したときの高速DNAフラグメント分離の一例の結果を示すことにより、FX174を試料とする50マイクロメートルキャピラリーカラムを上記CE装置において用いたときの高速分離及び高検出感度を示している。試験条件は以下の通りである:(a)ゲル緩衝液を10〜30秒間パージする;(b)サンプルを4KVで10秒間注入する;及び(c)13KVで分離を60秒間行なう。ゲル化学反応が、臭化エチジウム色素との間で行なわれた。φX174/HaeIIIサンプル濃度は、サンプルウェル内では、10マイクロリットルの容積について5ng/マイクロリットルである。塩基対(base pair:bp)濃度は、72〜1553bpであり、この場合、500bp以下では10bpの分離能である(271〜281bp)。検出感度は、0.5ng/マイクロリットルであり、この場合、検出可能な最小ピークのS/N比は10:1である。図13Aのグラフは、検出信号を示しており、図13Bの画像は、電気泳動の対象になるサンプル検体の分離帯域を示し、ゲルイメージ(gel view)を擬似的に表わしている。
【0072】
本発明によれば、先球加工ファイバは、CEシステムの検出器を大量生産するための非常に堅牢な設計を可能にし、そしてバックグランドノイズの大幅な低減を可能にし、これによって、S/N比が向上して、生体分子の分析(例えば、タンパク質分析、DNA分析、炭水化物分析、または免疫測定法による分析)における検出感度を高めることができる。
【0073】
励起光ファイバ34及び蛍光受光ファイバ36を外部から、キャピラリーカラム10の検出ゾーン/検出窓に極めて近接する領域の内側に移動させる(例えば、自動的/機械的作動により、手動ラッチ、空圧ラッチ、圧電作用、または以下に説明するソレノイド作動により)場合、キャピラリーカートリッジ60には、検出光学系を全く設けなくても済む。外部検出光学系は、当該外部検出光学系を生体分子分離装置の内部に取り付ける場合、キャピラリーカートリッジ60に接続される。この手法によって、キャピラリーカートリッジの機械的設計が簡易化されるとともに、先球加工ファイバの動きが容易に自動化されることにより、当該ファイバをキャピラリーカートリッジ60に嵌め込むことができる。これにより、組み付けが容易になり、そして使い捨てカートリッジのコストを低減することができる。
【0074】
円錐状端面、円形端面、または平端面のようなファイバの先端に一体的に形成されるマイクロ光結合部の他の実施形態を更に用いて、分離流路との光結合を行なうことにより、バックグランド光(ノイズ)を低減し、そして感度を高めることができる。
【0075】
マイクロ光検出が簡易化されると更に、高スループット型(すなわち、多流路型、例えば12流路型)のゲルカートリッジを設計する際のフレキシビリティが、光学系(励起光学系または蛍光受光光学系)をカートリッジアセンブリの内部に使用することなく得られ、これにより、実際の使い捨て式カートリッジ製品の新規設計のコストを下げることができる。
【0076】
従って、本発明による新規のカートリッジ搭載CEシステム100によって、設計の簡易性が得られ、操作が容易になり、そして消耗品のコストを下げることができる。当該カートリッジ搭載CEシステム100は、装置の据え付けに要する基本経費、及び試験試薬及び緩衝液収容キャピラリーカートリッジのような消耗品に関する定常的な必要経費の両方に由来する経常収益の流れを維持し、そして安定させることを必要とする臨床検査薬開発研究所/臨床検査薬産業に対して特に、良好な解決策を提供する(従来のレイザー/レイザーブレードビジネスモデル:classical razor/razor blade bisiness model:消耗品の販売によって利益を上げるビジネスモデル=カミソリ本体を格安で販売したあと、替え刃の売り上げで利益を上げること)。
【0077】
この設計の簡易性によって、光ファイバを機械アクチュエータに組み込んで、多流路/多数キャピラリー電気泳動システムに用いることができ、これにより、ファイバまたは他のマイクロ光学系を、多流路キャピラリーカートリッジを設計する際に予め組み込んだ構造を含める必要性を無くすことができる。光検出設計のフレキシビリティによって、12キャピラリーのカートリッジを設計する際の簡易性が、米国特許第6,828,567号明細書に開示されるキャピラリーカートリッジ及び検出システムと比較して、ずっと低いコストで得られる。この新規の設計手法では、光ファイバをキャピラリーカートリッジの内部から無くすことにより、アセンブリの全体コストを、10〜20倍とすることができる倍率に相当する分だけ安くすることができる。
【0078】
更に、本発明による励起光ファイバ及び蛍光受光ファイバ検出構成は、生体分析(例えば、CE)装置全体の構造のフレキシビリティを高めることができるが、その理由は、放射光源及び検出モジュールを装置アセンブリ全体の一部とすることができるからである、または装置の外部のアドオンモジュールとして使用することができるからである。この種類のフレキシビリティによってエンドユーザは、励起光源(LED、レーザ光源または他の広帯域光源)、及び/又は発光検出器(PMT、Siフォトダイオード、またはCCD検出器)を入れ替えるという選択肢を得る。
【0079】
***
本発明について具体的に示し、そして好適な実施形態を参照しながら説明してきたが、この技術分野の当業者であれば、構成及び詳細について種々の変更を、本発明の思想、範囲、及び示唆から逸脱しない範囲において加えることができることを理解できるであろう。
【0080】
例えば、励起放射光源は、例えばLED、レーザダイオード(半導体固体レーザ)、パルスレーザ(例えば、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、ファイバレーザ)、または他の放射光源とすることができる。本発明の別の比較的安価な光源は、可視領域、UV領域、及び/又は赤外領域のレーザダイオードとすることができる。例えば、400〜900nmの波長域、更に詳細には400〜600nmの波長域のレーザダイオードを、例えば用いることができる。
【0081】
この技術分野の当業者であれば、本発明の本質を取り入れた装置は、免疫測定法及びDNA分析以外の生体分子分離分析に用いることもできることを理解できるであろう。例えば、分離用ゲルまたは分離用緩衝液を変更することにより、システムを変更してタンパク質、炭化水素、及び脂質のような生体分子を分析することもできる。
【0082】
一例として、かつ非限定的に、本発明の検出構成は、キャピラリー電気泳動及び放射光誘導蛍光検出に関連して記載されている。本発明は、電気泳動以外の生体分子分離現象に基づいて分離される検体の検出、及び蛍光発光以外の放射発光の検出に適用することもできることを理解されたい。
【0083】
励起光ファイバ及び蛍光受光ファイバを、検出ゾーンの分離流路の軸と略同一平面に位置決めするのではなく、励起光ファイバまたは蛍光受光ファイバは、本発明の範囲及び思想から逸脱しない限り、同一平面外に存在するようにしてもよい。
【0084】
更に、記載の実施形態における分離流路は、円筒形カラムまたはチューブにより画成されているが、本発明のコンセプトは、開放流路により画成される分離流路、例えば基板をエッチングして彫り込むことにより画成されるマイクロ流路にも同様に適用することができることを理解されたい。
【0085】
従って、開示の発明は、単なる例示として考えられるべきであり、そして添付の請求項に明記される範囲にのみ制限されるべきである。
【符号の説明】
【0086】
10 キャピラリー分離カラム
12 分離流路、キャピラリー流路
14 容器
16 別の容器
18,208 電源
20,22 電極
24,35 方向
26 コントローラ
32 検出窓/ゾーン
34 励起光ファイバ
36 蛍光受光ファイバ
37 集光方向
39,40 角度
41 レーザ光源
42 検出器
50 位置合わせ溝
51,52,53 位置指標凹部
60 単一流路カートリッジ
62 出口側緩衝液容器、カートリッジ容器
63,65 開口
64 ポート
66 電極(アノード)
67 電極(カソード)、下側電極
68 検出ゾーン
69 キャビティ
80 円筒形本体、カートリッジ本体
82,83 半殻体
85 蓋、容器蓋
86 検出窓
87 フェルール
88 下側縁部
89 ネジ
90 中心突出部
91 貫通孔、下端開口
92 フランジ
93,95 溝
94 凹部
96 ネジ付きニップル
96’ O−リングシール
97 略円錐形部分、半円錐形部分
100 キャピラリー電気泳動(CE)システム
150 RFIDラベル
200 CE装置
201 システムボード
202 サンプル輸送機構
203 ハウジング、前面パネル
204 カートリッジインターフェース機構
206 光信号検出器、PMT(光電子増倍管)
210 検出光学系
212 加圧ガス供給源
220 サンプル/緩衝液トレイ
221 テーブル
222 システム電源、システムDC電源
223 高電圧電源、可変高電圧電源、
224,225 電極コンタクト/プローブ
226 LED、光ファイバ
227 基台
228 格納ブロック
229 軌道
230 フォークアセンブリ
231 スライド
233 空圧ピストン
236 凹面
260 前面扉
261 上部扉
266 RFIDリーダ/送信機
300 加圧空気供給チューブ
302 空気流出口
304 O−リング
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B