特許第5930493号(P5930493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930493触媒コンバータに供給される還元剤に活性化材料が添加される排気ガス後処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930493
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】触媒コンバータに供給される還元剤に活性化材料が添加される排気ガス後処理システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20160526BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20160526BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   F01N3/08 HZAB
   F01N3/36 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 400
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-501032(P2014-501032)
(86)(22)【出願日】2011年3月21日
(65)【公表番号】特表2014-513229(P2014-513229A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】SE2011000052
(87)【国際公開番号】WO2012128673
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】502196511
【氏名又は名称】ボルボ テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】エルクフェルト,サーラ
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−007607(JP,A)
【文献】 特開平08−084912(JP,A)
【文献】 特開2001−020723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/94
F01N 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼エンジン(18)の下流の排ガス路(16)に配置された、少なくとも1つの触媒材料(14)を有する触媒コンバータ装置(12)を備え、少なくとも一つの還元剤(22)を収容する第1タンク(44a)、活性化材料を収容する第2タンク(44)、及び、排ガス(24)中のNOx含有量を低減するための少なくとも1つの前記還元剤(22)を供給するための1以上のドージングインタフェース(20,20a,20b)をさらに備え、NOxを低減するための前記還元剤(22)は少なくとも一つの炭化水素を含む排気ガス後処理システム(10)であって、
前記1以上のドージングインタフェース(20,20a,20b)が、少なくとも1つの前記活性化材料(26)を排ガス(24)に供給するために配置されており、
前記活性化材料(26)が、少なくとも1つのエーテルタイプの含酸素炭化水素を含み、前記含酸素炭化水素が、トリグリム、ジグリム、モノグリム、ジエチルエーテル(DEE)、ジプロピルエーテルから成る群から選択されるエーテルからなり、少なくとも所与の温度範囲において、前記活性化材料(26)が、前記触媒材料(14)の触媒活性を、前記活性化材料(26)が存在しない場合の前記触媒材料(14)の触媒活性と比較して増大させる、排気ガス後処理システム。
【請求項2】
前記活性化材料(26)がインジェクタ(30)を介して注入される請求項1に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項3】
前記燃焼エンジン(18)がディーゼルエンジン(32)である請求項1又は2に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項4】
NOx還元のための前記還元剤(22)が、少なくとも1つの炭化水素、詳細は、燃料、特にはディーゼル燃料(34)を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の排気ガス後処理システム。
【請求項5】
前記活性化材料(26)が、前記触媒材料(14)の触媒活性を、ほぼ200℃〜500℃の温度範囲における少なくとも前記排ガス(24)の温度にて増大させる請求項1乃至4のいずれかに記載の排気ガス後処理システム。
【請求項6】
前記触媒コンバータ装置(12)が、少なくとも貴金属、好ましくは銀(36)を触媒材料(14)として含む請求項1乃至5のいずれかに記載の排気ガス後処理システム。
【請求項7】
フィードバック制御(38)が、前記排ガス(24)中のNOxの量に関連して、及び/又は、前記排ガス(24)及び/若しくは触媒(42)の温度に関連して、前記排ガス(24)に供給される還元剤(22)の量及び/又は活性化材料(26)の量の調節のために設けられている請求項1乃至6のいずれかに記載の排気ガス後処理システム。
【請求項8】
少なくとも1つのドージングインタフェース(20a)が、前記燃焼エンジン(18)内部に又は前記燃焼エンジン(18)に、前記燃焼エンジン(18)の1以上のシリンダ内への還元剤(22)のポストインジェクションのために配置され、且つ/又は、少なくとも1つのドージングインタフェース(20,20b)が、前記燃焼エンジン(18)の下流にて、前記排ガス路(16)上に又は前記排ガス路(16)に配置されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の排気ガス後処理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の排気ガス後処理システム(10)において排ガス(24)を処理するための方法であって、
前記還元剤(22)が、少なくとも1個の炭化水素からなり、該還元剤は前記燃焼エンジン(18)の前記排ガス(24)中のNOx含有量を低減するために提供され、
少なくとも1つの前記活性化材料(26)が、少なくとも1つのエーテルタイプの含酸素炭化水素を含み、前記含酸素炭化水素が、トリグリム、ジグリム、モノグリム、ジエチルエーテル(DEE)、ジプロピルエーテルから成る群から選択されるエーテルからなり、該活性化材料(26)が前記排ガス(24)中に、前記触媒コンバータ装置(12)の前記触媒材料(14)の触媒活性を、少なくとも所与の温度範囲において、前記活性化材料(26)が存在しない場合の前記触媒材料(14)の触媒活性と比較して増大させるために加えられ、前記還元剤は前記活性化材料に対して独立した構成要素からなる、前記方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれかに記載の排気ガス後処理システム(10)を有する車両(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス後処理システム、及び、排気ガス後処理システムにて排気ガスを処理する方法、並びに、排気ガス後処理システムを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車市場における今日の規制条件により、現在の車両の燃費を改善し且つ排出物を低減する要求が益々高まっている。これらの規制条件と、車両の高性能及び迅速な応答性(レスポンス)に対する消費者の要求とを両立させる必要がある。
【0003】
ディーゼルエンジンは、最大で約52%の効率を有し、従って、化石エネルギーの最良の変換手段である。NOxの排出濃度(すなわち、窒素酸化物NO及びNOの排出量)は、酸素原子の局所濃度及びエンジンの燃焼プロセスの局所温度に依存する。しかし、上記のような高いエンジン効率は、NOxレベルが必然的に高くなる高温燃焼温度でのみ可能である。
【0004】
また、内部手段(例えば、特定の空気/燃料比)によるNOx生成の抑制は、微粒子の増大を生じさせやすい(これはNOx−微粒子トレードオフとして知られている)。さらに、ディーゼルエンジンからの排気ガス中の酸素過剰が、前世紀の80年代後半からガソリンエンジン車で使用されているようなNOx還元のための化学量論的三元触媒技術の使用を妨げる。
【0005】
炭素微粒子及びNOxは、共に、ディーゼルエンジンの排ガス中の典型的な排出物である。これらの排出物を低減する要求が高まり、排出物低減のための様々な方法が当分野で生み出されている。特許文献1に、煤煙を収集する微粒子フィルタと窒素酸化物還元触媒とを排気管内で組み合わせた排気ガス後処理システムが開示されている。煤煙を除去するために、酸化触媒中でのNO(一酸化窒素)の酸化によりNO(二酸化窒素)が発生される。微粒子フィルタに収集された煤煙は、NOにより酸化される。排ガス中の残量NO及びNOは、選択的触媒還元(SCR)触媒にて、32%の尿素水溶液をSCR触媒中に注入することにより窒素ガスに還元される。しかし、この尿素水溶液が大量に必要であり、車両燃料に加え、車両内に積み込まれなくてはならない。さらに、尿素は低温で(例えば−10℃)で結晶化する場合があり、これにより、インジェクタ又は類似の装置の閉塞の危険性が高まる。
【0006】
アンモニア又は尿素によるSCRの代わりのシステムとして、燃料からの炭化水素によるSCRがある。車両燃料を還元剤として用いる場合、アンモニア又は尿素によるSCRの場合のような還元剤のための追加の大型タンクを使用せずに済む。しかし、NOx変換率は、アンモニア又は尿素によるSCRよりも概して低く、特に、低温状態において低い。また、大量の炭化水素が必要とされる。特許文献2に、水素の添加が、炭化水素によるNOx変換率を低温状態で高めることが示されている。水素は、車両に積み込まれても、或いは、燃料から抽出されてもよい。しかし、車両内に積み込む場合、水素用の大型のタンクと、おそらく、追加の安全手段とが必要であろう。また、燃料から抽出する場合には、車両内のシステムの再構成が必要であろう。
【0007】
従って、より少量の材料の配備により動作し、且つ、故障しにくい(failure−sensitive)排気ガス後処理システムを用いることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1054722号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0289291号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改良された排気ガス後処理システムを提供することにある。本発明の別の目的は、改良された排気ガス後処理システムにて排気ガスを処理するための適切な改良された方法を提供することにある。また別の目的は、改良された排気ガス後処理システムを有する車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項に記載されている特徴により達成される。その他の請求項、図面、及び説明が、本発明の有利な実施形態を開示する。
【0011】
本発明の第1の態様において、燃焼エンジンの下流の排ガス路に配置された、少なくとも1つの触媒材料を有する触媒コンバータ装置を備え、且つ、排ガス中のNOx含有量を低減するための少なくとも1つの還元剤を供給するための1以上のドージングインタフェースをさらに備えた、排気ガス後処理システムが提供される。前記1以上のドージングインタフェースは、少なくとも1つの活性化材料を前記排ガスに供給するために配置されている。前記活性化材料は、少なくとも所与の温度範囲において、触媒材料の触媒活性を、活性化材料が存在しない場合の前記触媒材料の触媒活性と比較して増大させる。
【0012】
本発明による利点は、触媒材料を用いての変換率が、活性化材料が存在しない場合の触媒反応と比較して、特に低温状態で増大され、従って、前記触媒材料の活性温度範囲が、活性化材料が存在しない場合よりも排ガス温度に近いことである。本発明による別の利点は、多種多様な触媒材料を用いることができ、これにより、有利にコスト削減することができることである。本発明のさらに別の利点は、アンモニア又は尿素を用いるプロセスに代わる選択的触媒還元プロセスを維持できることである。これにより、車両内に積み込まなければならない還元剤の量を減らすことができ、また、尿素及び/又はアンモニアに代わる物質による、故障しにくいプロセスを用いることができる。さらに、不利なプロセス条件の場合にも、アンモニアの不都合な排出が回避される。
【0013】
触媒コンバータ装置は、1又は複数の触媒装置(例えば、NOx還元触媒)、煤煙除去部品(例えば、触媒又は微粒子フィルタ)、又は、当業者が実現可能な任意の部品及び/若しくは触媒を有することができる。さらに、前記触媒装置は、任意の順番で配置され得る。1つの好都合な配置において、前記NOx還元触媒は煤煙触媒の下流に配置される。さらに、1以上のドージングインタフェースが、前記燃焼エンジンの下流に、前記触媒コンバータ装置の上流に、特には、NOx還元触媒の上流に配置され得る。さらに、前記1以上のドージングインタフェースは、インジェクタ、ノズル、気化器、噴霧器、及び/又は、当業者が実現可能なその他の任意のインタフェースを含み得る。前記還元剤及び前記活性化材料は、同一のドージングインタフェース又は異なるインタフェースを介して、且つ/又は、混合物として同時に、若しくは、時間的に互いにずらされて付与され得る。特には、前記還元剤及び前記活性化材料は、同一のドージングインタフェースを介して混合物として前記排ガス中に添加され得る。活性化材料の、還元剤に対する比率は、ほぼ0重量%(wt%)〜ほぼ50重量%の範囲であり得、極端な場合、上限はほぼ60重量%(wt%)又はほぼ70重量%になり得る。或いは、前記還元剤を前記燃焼エンジンの1以上のシリンダ内に、例えばポストインジェクションにより付与することも可能である。好都合には、前記排ガスに前記活性化材料を投入するための前記ドージングインタフェースは、前記燃焼エンジンの下流の、前記排ガス路上、又は前記排ガス路に配置される。
【0014】
前記還元剤は、前記活性化材料に対して独立の構成要素である。前記活性化材料は前記触媒材料に作用し、前記活性化材料が存在しない場合の温度と比較して低い温度で前記触媒材料の効率を増大させる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記活性化材料は、少なくとも1つの含酸素炭化水素を含むことができる。好ましくは、前記活性化材料は、1つの含酸素炭化水素から成る。1つの付与プロセスにて加えられる前記活性化材料の量は、前記触媒の温度に依存し得る。同様のことが、前記還元剤の量に関してもあてはまる。一般に、触媒の高温時には、活性化材料はNOx変換にわずかな影響しかもたらさないが、これは回避できる。同様に、触媒の低温時に、前記還元剤及び/又は前記活性化材料が十分に作用しない場合、前記還元剤及び/又は前記活性化材料は全く注入されないであろう。これらの2つの温度境界間の所定の温度範囲において、還元剤と活性化材料との混合物が最良に作用する。従って、触媒の高温時には、添加する活性化材料の量を、実質的にゼロに減らすことが可能であり、前記温度範囲内の触媒の低温時には、活性化材料の量を実質的に50重量%に、又は、何らかの極端な場合には、実質的に60重量%〜70重量%にまで増やすことが可能である。こうして、前記混合物は、前記触媒の温度に従って好都合に調節される。好都合には、前記活性化材料と前記還元剤とから成る前記混合物の、1回の付与プロセスにて添加される量は、NOxの量に依存し得る。前記混合物の、前記NOxの量に対する比率は、重量ベースでほぼ0.1:1〜ほぼ10:1であり、好ましくは、重量ベースでほぼ0.5:1〜ほぼ5:1であり、特に有利には、重量ベースでほぼ1:1〜ほぼ3:1である。含酸素炭化水素は、当業者に実現可能な任意の凝集状態を有することができ、好ましくは、付与状態において流体である。従って、ドージングインタフェースのための冷却装置を設けてもよい。本発明により、触媒活性及び触媒材料の効率の増大を容易に達成することができる。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記活性化材料は、エーテルタイプの少なくとも1つの含酸素炭化水素を含み得る。前記含酸素炭化水素は、好ましくは、トリグリム、ジグリム、モノグリム、ジエチルエーテル(DEE)、ジプロピルエーテルから成る群から選択されるエーテルである。これらの物質により、公知の特性を有する材料を使用することができる。
【0017】
本発明のさらに例示的な実施形態において、前記活性化材料は、少なくともトリグリムを含み得る。1回の付与プロセスにて加えられるトリグリムの量は、先に述べたように、前記触媒における排ガスの温度に依存する。従って、取扱い状態及び排ガスへの付与において有利には液体である物質が提供されることができる。さらに、トリグリムは、車両内での保存状態(典型的には、−50℃〜+50℃)においても液体である。従って、前記活性化材料の偶発的な凍結又は結晶化を、車両の動作プロセスのために確実に防止することが可能であろう。その結果、付与装置、例えばドージングインタフェースの閉塞を回避することが可能であろう。さらに、前記活性化材料の凍結などを回避するためのコスト高な加熱装置を省くことも可能である。さらに、トリグリムが液体の状態であるため、還元剤(これもまた液体)との混合物も、生成及び取扱いが容易で且つ効率的である。トリグリムを活性化材料として用いることにより、SCRプロセスにおいて還元剤及び活性化材料の形態で排ガスに付与されるために必要な物質の量は、尿素水溶液によるSCRと比較して、より少量になり、約50重量%〜80重量%までの低減に対応する。
【0018】
本発明によるさらに別の例示的な実施形態において、前記活性化材料は、インジェクタを介して注入されることができる。これにより、構成的に容易な付与を行うことができる。
【0019】
別の例示的な実施形態によれば、前記燃焼エンジンはディーゼルエンジンであり得、前記活性化材料及び前記排ガスの作用状態の温度は互いに容易に組み合せられ且つ調節されることができる。従って、本発明の実施形態は、石油又はガソリンエンジンと比較して、より低いディーゼルエンジンの燃焼温度を容易に補償することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態において、NOx還元のための還元剤は、少なくとも1つの炭化水素を含み得る。好ましくは、前記還元剤は炭化水素である。これにより、多種多様な物質の適用が可能である。
【0021】
さらに、前記還元剤が燃料(特にはディーゼル燃料)であり得ることが提案される。前記プロセスは、前記燃料中の炭化水素を用いた選択的触媒還元(SCR)として理解されよう。さらに、本発明によれば、(i)トリグリム又は別の類似の化合物と(ii)車両燃料の炭化水素との混合物を、前記触媒コンバータ装置の前の前記排ガス路内の前記排ガスに加えることが、前記排ガス中のNOx含有量のさらなる低減を、特に低温状態において補助する。さらに、前記燃料を還元剤として使用することにより、前記活性化材料のために車両への追加搭載が必要なのは小型の容器のみとなる。
【0022】
有利には、前記活性化材料は、排ガスが、少なくともほぼ200℃〜500℃の温度範囲の温度であるとき、前記触媒材料の前記触媒活性を増大させ得る。この温度は、前記活性化材料が存在しない場合と比較して、ほぼ100℃〜ほぼ200℃低くてよい。この結果、多種多様な触媒材料を用いることが可能である。
【0023】
さらに別の例示的な実施形態において、前記触媒コンバータ装置は、少なくとも貴金属を触媒材料として含むことができ、これに関し、公知の確立されている概念を用いることができる。触媒材料として、あらゆる種類の貴金属、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金が適切である。好ましくは、ロジウム、パラジウム、プラチナ、金及び銀が利用されよう。
【0024】
好ましい実施形態において、前記触媒材料は銀であり得る。銀は、銀/アルミナ触媒として付与され得る。従って、低コストの金属を用いることが可能であり、これにより、安価な排気ガス後処理システムの提供が可能であり、そして、これにより、より安価な車両を提供することが可能である。
【0025】
別の例示的な実施形態によれば、前記排気ガス後処理システムは、フィードバック制御を含み得る。このフィードバック制御は、排ガス中のNOxの量に対して前記排ガスに供給される活性化材料の量を調節する。さらに、前記フィードバック制御は、前記排ガス中のNOxの量に対して前記排ガスに供給される還元剤の量を調節し得る。また、前記フィードバック制御は、活性化材料及び/又は前記還元剤の量の調節における前記排ガス及び/又は前記触媒の温度も含み得る。
【0026】
さらに、前記排気ガス後処理システムが、前記排ガスに供給される還元剤の量及び活性化材料の量を前記排ガス及び/又は前記触媒の温度に対して、及び、前記排ガス中のNOxの量に対して調節するためのフィードバック制御を含み得ることが提案される。詳細には、活性化材料の、前記還元剤に対する量は、好ましくは、前記排ガス及び/又は前記触媒の温度に応じて調節される。好ましくは、前記フィードバック制御は、NOx量及び温度を検知するためのセンサ装置を含むことができる。本発明の実施形態により、高効率の排気ガス後処理システムを提供することができる。
【0027】
本発明のさらなる態様において、排気ガス後処理システムにおいて排ガスを処理するための方法が提供される。この方法において、還元剤が、燃焼エンジンの排ガス中のNOx含有量を低減するために提供され、少なくとも1つの活性化材料が前記排ガス中に、前記活性化材料が存在しない場合の触媒活性と比較して少なくとも所与の温度範囲において触媒コンバータ装置の触媒材料の触媒活性を増大させるために加えられる。
【0028】
従って、触媒材料を用いた変換率が、特には低温状態にて有利に増大され、従って、前記触媒材料の活性温度の範囲が、排ガス温度に、より良好に対応する。さらに、多種多様な触媒材料を有効に用いることが可能であり、これが、有利にコスト削減をもたらす。本発明の別の利点は、アンモニア又は尿素を用いたSCRプロセスの代わりの選択的触媒還元プロセスを用いることができることである。これにより、前記車両に積み込まなければならない還元剤の量を減らすことができ、また、アンモニア又は尿素の代わりの物質を用いることにより、プロセスが故障しにくくなる。
【0029】
本発明の第3の態様において、車両、特にはトラックに、少なくとも1つの排気ガス後処理システムが設けられる。従って、本発明の排気ガス後処理システムは、非常に高度な技術が要求される分野で展開されることができる。
【0030】
本発明は、上記の及びその他の目的及び利点と共に、実施形態に関する以下の詳細な説明から最良に理解されよう。しかし、本発明は、概略的に示される実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】燃焼エンジン、及び、本発明による排気ガス後処理システムの例示的な実施形態を有する車両である。
図2図1に示した燃焼エンジン及び排気ガス後処理システムの詳細図である。
図3】3つの異なる実験セットアップの結果を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面中、同等又は類似の要素は等しい参照番号により示す。図面は概略的な表示に過ぎず、本発明の特定のパラメータを表すためのものではない。また、図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すためのものであり、従って、本発明の範囲を限定するものと見なされてはならない。
【0033】
図1は、燃焼エンジン18、及び、燃焼エンジン18の下流の排気ガス後処理システム10を有する車両40を概略的に示す。排気ガス後処理システムの例示的な実施形態が図2に詳細に示されている。
【0034】
排気ガス後処理システム10は、排ガス路16又は排ガス管(それぞれ、ディーゼルエンジン32として具体化されている燃焼エンジン18の下流にある)に配置された触媒コンバータ装置12を含む。触媒コンバータ装置12は、煤煙含有量を低減するための部品(例えば、煤煙低減のための触媒、又は、微粒子フィルタ(図示せず))、及び、NOx(窒素酸化物)還元のための、触媒材料14を含む触媒42を備えている。触媒材料14は、銀/アルミナ(Ag/Al)触媒中の貴金属銀36として実現されている。
【0035】
排気ガス後処理システム10は、さらに、インジェクタ30の形態のドージングインタフェース20を含む。ドージングインタフェース20は、燃焼エンジン18の下流であって、触媒コンバータ装置12の上流に配置されている。さらに、ドージングインタフェース20又はインジェクタ30は、それぞれ、NOx還元のための還元剤22を、燃焼エンジン18から排ガス路16に沿って触媒コンバータ装置12へ流れている排ガス24に供給又は注入する。NOx還元のための還元剤22は、例として、燃料の構成要素である炭化水素である。従って、NOx還元のための還元剤22は車両内にある燃料であり、ディーゼルエンジン32の場合、これに対応して、ディーゼル燃料34である。
【0036】
ディーゼル燃料34は、インジェクタ30に接続されたタンク44に、活性化材料26との混合物として供給される。従って、ドージングインタフェース20は、活性化材料26を排ガス24に供給するためにも配置される。活性化材料26は、例として、含酸素炭化水素を含み、これは、この例において、トリグリム28である。さらに、活性化材料26は、少なくとも所与の温度範囲において、触媒材料14の触媒活性を、活性化材料26が存在しない場合の触媒活性と比較して増大するために配置される。
【0037】
或いは、還元剤22及び活性化材料26は、様々なドージングインタフェース20,20a,20bを用いて排ガス24に供給されることも可能である。従って、このような別の実施形態において、タンク44は、活性化材料26又はトリグリム28のみをそれぞれ収容し、活性化材料26は、ドージングインタフェース20又はインジェクタ30を介して注入される。還元剤22と活性化材料26とを混合するプロセスは、排ガス24の存在下で生じる。しかし、還元剤22はタンク44aに保管されており、これは、車両40(図1)を動作させるためのディーゼル燃料34のための通常のタンクである。
【0038】
第1の別の実施形態において、還元剤22又はディーゼル燃料34は、それぞれ、ドージングインタフェース20aを介して注入される。ドージングインタフェース20aは、還元剤22のポストインジェクションのために、燃焼エンジン18の少なくとも1つのシリンダ内に配置されている。
【0039】
第2の別の実施形態において、還元剤22又はディーゼル燃料34は、それぞれ、排ガス路16の排ガス24中に、ドージングインタフェース20bを介して注入される。ドージングインタフェース20bは、燃焼エンジン18の下流であって、触媒コンバータ装置12の上流に配置されている。
【0040】
第3の別の実施形態において、還元剤22又はディーゼル燃料34は、それぞれ、排ガス24内に、ドージングインタフェース20a及び20bを介して注入される。
【0041】
さらに、排気ガス後処理システム10は、センサ及び処理ユニット(詳細に示さず)を有するフィードバック制御38を含み、制御38は、触媒材料14の十分な活性化のために排ガス24に供給されるべき還元剤22及び活性化材料26の量を調節する。活性化材料26の量と還元剤22の量との比率を所望の値に調節するために、排ガス24又は触媒42の温度が第1のセンサ(図示せず)により測定される。この温度測定結果に応じて、処理ユニット38が、還元剤22と活性化材料26との必要な比率を決定する。還元剤22と活性化材料26とによる混合物がタンク44内で混合及び保存される。従って、この実施形態においては、活性化材料26の保存のための追加のタンク(図示せず)が必要である。別の実施形態においては、還元剤22のための保存タンクとしてのタンク44aを用いて、還元剤22と活性化材料26との混合のプロセスが、排ガス24が(燃焼エンジン18のシリンダ及び/又は排ガス路16の内部に)存在しているときに直接生じる。
【0042】
還元剤22と活性化材料26との混合物から成る所望の又は要求される量は、排ガス24中のNOxの量に依存し、この量は、第2のセンサ(図示せず)により検出される。従って、処理ユニット38が、還元剤22と活性化材料26との混合物の必要量、及び、前記混合物の組成を、測定されたNOx量に基づいて計算する。インジェクタ30を介して排ガス24に注入される、還元剤22と活性化材料26との混合物は、NOx量に対して、重量ベースで、約1:1〜3:1の範囲の比率を有する。
【0043】
また、混合物中の活性化材料26は、排ガス24の温度がほぼ200℃〜500℃の温度範囲にあるとき(図3も参照)、触媒コンバータ装置12の触媒材料14の触媒活性又は能力を高める。従って、触媒材料14は、ほぼ250℃よりも低い温度でも動作可能である。従って、排ガス24中に供給される還元剤22、又は、ディーゼル燃料34中の炭化水素が、それぞれ、排ガス24中のNOxの量を低減するための選択的触媒還元(SCR)を行うことができる。従って、少量のトリグリム28の添加により、変換率は、銀/アルミナベースの触媒42よりも、特に、排ガス24及び/又は触媒42の低温時に増大し、そのため、触媒42の活性温度範囲は、排ガス温度により良好に対応することになる。
【0044】
図3は、3つの異なる添加物の添加による排気ガス後処理システムの3つの異なる実験セットアップの結果をグラフで示す。これらの添加物は、炭化水素(グラフC1)、エーテル(グラフC2)、及び、炭化水素とエーテルとの混合物(例えば、20重量%;グラフC3)である。y軸はNOx変換率を示し、x軸に温度が℃で示されている。グラフC1(測定点がダイヤモンド形)は、還元剤22のみを添加したセットアップを示す。グラフC2(測定点が三角形)は、活性化材料26のみを添加したセットアップの結果を示す。グラフC3(測定点が正方形)は、還元剤22と活性化材料26との混合物を添加したセットアップの結果を示す。
【0045】
図3の、炭化水素を用いたセットアップに関するグラフ(ダイヤモンド形;グラフC1)に見られるように、約350℃〜400℃よりも低温の状態では、NOx変換率は、ほぼゼロである。エーテルのみを加えた場合(三角形;グラフC2)、NOx変換率は、約200℃〜550℃の温度範囲全体にわたって比較的低い。炭化水素とエーテルとの混合物(本発明による還元剤22と活性化材料26との混合物の代表)を添加した場合(正方形;グラフC3)のみ、効率的なNOx変換のための温度閾値が、より低い温度値(約250℃)に向かってシフトされることができ、効率的なNOx変換を、約250℃〜550℃の広い温度範囲にわたって可能にする。従って、活性化材料26は、少なくとも所与の温度範囲において、触媒材料14の触媒活性を、活性化材料26が存在しない場合の触媒活性と比較して増大させる(グラフC1及びグラフC3にてダイヤモンド形及び正方形の進行により明確に示されているように)。
【0046】
本発明は、故障しにくいシステムをもたらす改良された排気ガス後処理システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 排気ガス後処理システム
12 触媒コンバータ装置
14 触媒材料
16 排ガス路
18 燃焼エンジン
20,20a,20b ドージングインタフェース
22 還元剤
24 排ガス
26 活性化材料
28 トリグリム
30 インジェクタ
32 ディーゼルエンジン
34 ディーゼル燃料
36 貴金属銀
38 フィードバック制御
40 車両
42 触媒
44,44a タンク
図1
図2
図3