【文献】
JOHNSON Keith A. et al.,,Cation exchange-HPLC and mass spectrometry reveal C-terminal amidation of IgG1 heavy chain,Analytical Biochemistry,2007年 1月,Vol.360,p.75-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号:1(IgG1定常領域)に記載のアミノ酸配列において、329番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と330番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含み、C末端アミノ酸がアミド化されていないヒト抗体定常領域であって、前記欠損は当該ヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG1定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域。
さらに、配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、317番目(EUナンバリング434番目)のAsnがAlaに置換されている、請求項1に記載のヒト抗体定常領域。
以下の(a)、(b)又は(c)に記載のヒト抗体定常領域をコードするDNAが導入された宿主細胞を培養する工程を含む、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体であって野生型定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減された抗体の製造方法:
(a)配列番号:1(IgG1定常領域)に記載のアミノ酸配列において、329番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と330番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含むアミノ酸配列を有するヒト抗体定常領域であって、前記欠損はヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG1定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域;
(b)配列番号:2(IgG2定常領域)に記載のアミノ酸配列において、325番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と326番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含むアミノ酸配列を有するヒト抗体定常領域であって、前記欠損はヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG2定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域;又は、
(c)配列番号:3(IgG4定常領域)に記載のアミノ酸配列において、326番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と327番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含むアミノ酸配列を有するヒト抗体定常領域であって、前記欠損はヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG4定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域。
可変領域と定常領域を含む、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、又はヒト抗体である抗体であって、前記定常領域として、以下の(A)、(B)又は(C)に記載の1種類のみのヒト抗体定常領域のみを有する抗体:
(A) 配列番号:1(IgG1定常領域)に記載のアミノ酸配列において、329番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と330番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含むヒト抗体定常領域であって、前記欠損は当該ヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG1定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域;
(B) 配列番号:2(IgG2定常領域)に記載のアミノ酸配列において、325番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と326番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含むヒト抗体定常領域であって、前記欠損は当該ヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG2定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域;又は、
(C) 配列番号:3(IgG4定常領域)に記載のアミノ酸配列において、326番目(EUナンバリング446番目)のGlyの欠損と327番目(EUナンバリング447番目)のLysの欠損を含むヒト抗体定常領域であって、前記欠損は当該ヒト抗体定常領域のCH3ドメインの熱安定性に影響せず、かつ、当該ヒト抗体定常領域を有する抗体は野生型IgG4定常領域を有する抗体と比較してC末端アミノ酸のアミド化に起因するヘテロジェニティーが低減されている、ヒト抗体定常領域。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔発明の実施の形態〕
本発明は、抗体の定常領域のアミノ酸配列を改変することで、物性(安定性および均一性)、免疫原性、安全性、且つ、薬物動態が改善された抗体定常領域、該定常領域を含む抗体、該抗体を含む医薬組成物、ならびに、それらの製造方法を提供する。
【0016】
本発明において抗体の定常領域とはIgG1、IgG2、IgG4タイプの定常領域のことを意味する。抗体定常領域は好ましくはヒト抗体定常領域である。ヒトIgG1定常領域、ヒトIgG2定常領域およびヒトIgG4定常領域のアミノ酸配列は公知である(ヒトIgG1定常領域:配列番号:1、ヒトIgG2定常領域:配列番号:2、ヒトIgG4定常領域:配列番号:3)。なお本発明のアミノ酸が置換された抗体定常領域は、本発明のアミノ酸置換を含むものである限り、他のアミノ酸置換や修飾を含んでもよい。従って、本発明においては、配列番号:2に記載のアミノ酸配列から既に1又は複数のアミノ酸が置換および/または修されたIgG2定常領域に対して本発明のアミノ酸置換を行う場合、又は本発明のアミノ酸置換を行った後に1または複数のアミノ酸を置換および/または修飾する場合も、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域に本発明のアミノ酸置換が行われたIgG2定常領域に該当する。配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域、配列番号:3に記載のIgG4定常領域についても同様である。なお、ヒトIgG4定常領域は、ヒンジ部分の安定性を改善するための改変(Mol Immunol. 1993 Jan;30(1):105-8.)を導入した配列である。またEUナンバリングの297番目の糖鎖は如何なる糖鎖構造であってもよく、また糖鎖が結合していなくてもよい(例えば大腸菌で生産することで可能)。
【0017】
<アミノ酸改変IgG2>
本発明は酸性での安定性が改善されたIgG2定常領域を提供する。
より具体的には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、276番目(EUナンバリングの397番目)のMetが他のアミノ酸に置換されたIgG2定常領域を提供する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Valへの置換であることが好ましい。配列番号:2に記載のアミノ酸配列において276番目(EUナンバリングの397番目)のMetを他のアミノ酸に置換することにより、抗体の酸性条件下での安定性を向上させることが可能である。
本発明により提供される酸性での安定性が改善されたIgG2定常領域は少なくとも上述のアミノ酸置換が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
【0018】
さらに本発明は、ヒンジ領域のヘテロジェニティーが改善されたIgG2定常領域を提供する。
より具体的には配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、14番目(EUナンバリング131番目)のCys、16番目(EUナンバリングの133番目)のArg、および/または、102番目(EUナンバリングの219番目)のCysが他のアミノ酸に置換されたIgG2定常領域を提供する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目(EUナンバリング131番目)のCysはSerに置換されることが好ましく、16番目(EUナンバリングの133番目)のArgはLysに置換されることが好ましく、102番目(EUナンバリングの219番目)のCysはSerに置換されることが好ましい(IgG2-SKSC)。
これらの置換を行うことにより、IgG2のヒンジ領域に由来するヘテロジェニティーを低減することが可能である。本発明のアミノ酸が置換されたIgG2定常領域には、上記3種類のアミノ酸置換のうち少なくとも1種類のアミノ酸が置換されたIgG2定常領域が含まれるが、14番目のCysと102番目のCysが他のアミノ酸に置換されていること、又は上記3種類全てのアミノ酸が置換されていることが好ましい。
【0019】
本発明により提供されるヘテロジェニティーが改善されたIgG2定常領域は少なくとも上述のアミノ酸置換が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、14番目のCysと16番目のArgに変異を導入した場合、天然には存在しないT-cellエピトープペプチドとなりうる9〜12アミノ酸の新しいペプチド配列が出現してしまい免疫原性リスクが生じる恐れがある。従って、上述のアミノ酸置換に伴い、さらに20番目(EUナンバリング137番目)のGluと21番目(EUナンバリング138番目)のSerを他のアミノ酸に置換することにより天然に存在しないT-cellエピトープペプチドの発現を回避することが可能である。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、20番目のGluはGlyに、21番目のSerはGlyに置換されることが好ましい。
【0020】
さらに本発明はFcγレセプターへの結合活性が低減したIgG2定常領域を提供する。
より具体的には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、209番目(EU330)のAlaがSerに、210番目(EU331)のProがSerに、および/または218番目(EU339)のThrがAlaに置換されたIgG2定常領域を提供する。209番目(EU330)のAla、210番目(EU331)のProの置換によりFcγレセプターへの結合を低下させることが可能であることはすでに報告されているが(Eur J Immunol. 1999 Aug;29(8):2613-24.)、この改変ではT-cellエピトープになりうる非ヒト由来のペプチドが出現するため、免疫原性リスクの点からは好ましくない。そこで、218番目(EU339)のThrのAlaへの置換を同時に行うことにより、T-cellエピトープになりうる9〜12アミノ酸としてはヒト由来のペプチドのみを用いたままIgG2のFcγレセプターへの結合を低下させることが可能である。
本発明のアミノ酸が置換されたIgG2定常領域は、上述の3箇所のアミノ酸置換のうち少なくとも1箇所のアミノ酸が置換されていればよいが、好ましくは上述の3箇所全てのアミノ酸が置換されていることが好ましい。従って、本発明のアミノ酸が置換されたIgG2定常領域の好ましい態様として、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、209番目(EU330)のAlaがSerに置換され、210番目(EU331)のProがSerに置換され、かつ218番目(EU339)のThrがAlaに置換されたIgG2定常領域を挙げることができる。
本発明により提供されるFcγレセプターへの結合活性が低減したIgG2定常領域は少なくとも上述のアミノ酸置換が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
【0021】
さらに本発明はC末端のヘテロジェニティーが改善されたIgG2定常領域を提供する。
より具体的には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、325番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリングの447番目)のLysが欠損したIgG2定常領域を提供する。これらのアミノ酸を両方欠損させることにより、初めて抗体のH鎖C末端に由来するヘテロジェニティーを低減することが可能である。
本発明により提供されるC末端のヘテロジェニティーが改善されたIgG2定常領域は少なくとも上述のアミノ酸の欠失が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
【0022】
さらに本発明は、薬物動態の向上したIgG2定常領域を提供する。
より具体的には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、147番目(EUナンバリングの268番目)のHis、234番目(EUナンバリングの355番目)のArg、298番目(EUナンバリングの419番目)のGlnが他のアミノ酸に置換されたIgG2定常領域を提供する。これらのアミノ酸置換により抗体の薬物動態を向上させることが可能である。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、147番目(EUナンバリング268番目)のHisはGlnに置換されることが好ましく、234番目(EUナンバリングの355番目)のArgはGlnに置換されることが好ましく、298番目(EUナンバリングの419番目)のGlnはGluに置換されることが好ましい。本発明のアミノ酸が置換されたIgG2定常領域には、上記3種類のアミノ酸置換のうち少なくとも1種類のアミノ酸が置換されたIgG2定常領域が含まれるが、上記3種類全てのアミノ酸が置換されていることが好ましい。
【0023】
さらに本発明では、酸性での安定性が改善され、ヒンジ領域のヘテロジェニティーが改善され、および/またはFcγレセプターへの結合活性が低減したIgG2の好ましい態様として以下のIgG2を挙げることができる。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる定常領域を有するIgG2において、209番目のAla、210番目のPro、218番目のThr、276番目のMet、14番目のCys、16番目のArg、102番目のCys、20番目Glu、21番目のSerが他のアミノ酸に置換された抗体。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、209番目(EUナンバリング330)のAlaをSer、210番目(EUナンバリング331)のProをSer、218番目(EUナンバリング339)のThrをAla、276番目(EUナンバリング397)のMetをVal、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
このようなIgG2定常領域の例として、配列番号:4(M14)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を挙げることができる。
【0024】
又、本発明のIgG2定常領域の他の好ましい態様として、上述のIgG2定常領域において、C末端のヘテロジェニティーを低減させるためにさらに325番目のGlyおよび326番目のLysが欠損したIgG2定常領域を挙げることができる。このような抗体の例として、配列番号:5(M14ΔGK)のアミノ酸配列からなる定常領域を有するIgG2を挙げることができる。
【0025】
さらに本発明はヒンジ領域のヘテロジェニティーが改善され、および/またはFcγレセプターへの結合活性が低減したIgG2の好ましい態様として以下のIgG2を挙げることができる。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる定常領域を有するIgG2において、209番目のAla、210番目のPro、218番目のThr、14番目のCys、16番目のArg、102番目のCys、20番目Glu、21番目のSerが他のアミノ酸に置換された抗体。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、209番目(EUナンバリング330)のAlaをSer、210番目(EUナンバリング331)のProをSer、218番目(EUナンバリング339)のThrをAla、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
このようなIgG2定常領域の例として、配列番号:54(M86)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を挙げることができる。
又、本発明のIgG2定常領域の他の好ましい態様として、上述のIgG2定常領域において、C末端のヘテロジェニティーを低減させるためにさらに325番目のGlyおよび326番目のLysが欠損したIgG2定常領域を挙げることができる。このような抗体の例として、配列番号:55(M86ΔGK)のアミノ酸配列からなる定常領域を有するIgG2を挙げることができる。
【0026】
さらに本発明は酸性での安定性が改善され、ヒンジ領域のヘテロジェニティーが改善されたIgG2定常領域の好ましい態様として以下のIgG2定常領域を挙げることができる。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、276番目のMet、14番目のCys、16番目のArg、102番目のCys、20番目のGlu、21番目のSerが他のアミノ酸に置換されたIgG2定常領域。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、276番目(EUナンバリング397)のMetをVal、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目の(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
このようなIgG2定常領域の例として、配列番号:6(M31)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を挙げることができる。
【0027】
又、本発明のIgG2定常領域の他の好ましい態様として、上述のIgG2定常領域において、さらに325番目のGlyおよび326番目のLysが欠損したIgG2定常領域を挙げることができる。このような抗体の例として、配列番号:7(M31ΔGK)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を挙げることができる。
【0028】
さらに本発明はヒンジ領域のヘテロジェニティーが改善されたIgG2定常領域の好ましい態様として以下のIgG2定常領域を挙げることができる。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、14番目のCys、16番目のArg、102番目のCys、20番目のGlu、21番目のSerが他のアミノ酸に置換されたIgG2定常領域。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目の(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
このようなIgG2定常領域の例として、配列番号:56(M40)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を挙げることができる。
【0029】
又、本発明のIgG2定常領域の他の好ましい態様として、上述のIgG2定常領域において、さらに325番目のGlyおよび326番目のLysが欠損したIgG2定常領域を挙げることができる。このような抗体の例として、配列番号:57(M40ΔGK)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を挙げることができる。
【0030】
本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、14番目(EUナンバリング131番目)のCys、16番目(EUナンバリング133番目)のArg、102番目(EUナンバリング219番目)のCys、20番目(EUナンバリング137番目)のGlu、21番目(EUナンバリング138番目)のSer、147番目(EUナンバリング268番目)のHis、234番目(EUナンバリング355番目)のArgおよび298番目(EUナンバリング419番目)のGlnが他のアミノ酸に置換され、かつ325番目(EUナンバリング446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリング447番目)のLysが欠損したアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を提供する。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目のCysはSerに、16番目のArgはLysに、102番目のCysはSerに、20番目のGluはGlyに、21番目のSerはGlyに、147番目のHisはGlnに、234番目のArgはGlnに、298番目のGlnはGluに置換することが好ましい。
具体的には本発明は、配列番号:35に記載のアミノ酸配列を有する定常領域(M58)を提供する。
【0031】
本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、14番目(EUナンバリング131番目)のCys、16番目(EUナンバリング133番目)のArg、102番目(EUナンバリング219番目)のCys、20番目(EUナンバリング137番目)のGlu、21番目(EUナンバリング138番目)のSer、147番目(EUナンバリング268番目)のHis、234番目(EUナンバリング355番目)のArg、298番目(EUナンバリング419番目)のGln、および313番目(EUナンバリング434番目)のAsnが他のアミノ酸に置換され、かつ325番目(EUナンバリング446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリング447番目)のLysが欠損したアミノ酸配列を有するIgG2定常領域を提供する。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目のCysはSerに、16番目のArgはLysに、102番目のCysはSerに、20番目のGluはGlyに、21番目のSerはGlyに、147番目のHisはGlnに、234番目のArgはGlnに、298番目のGlnはGluに、313番目のAsnはAlaに置換されることが好ましい。
具体的には本発明は、配列番号:37に記載のアミノ酸配列を有する定常領域を提供する(M73)。
【0032】
これらの抗体定常領域は、Fcγレセプターへの結合活性の低下、免疫原性リスクの低減、酸性条件下での安定性の向上、ヘテロジェニティーの低減、薬物動態の向上および/または、IgG1定常領域と比較した製剤中での高い安定性という性質を有する、最適化された抗体定常領域である。
【0033】
<アミノ酸改変IgG4>
本発明は酸性での安定性が改善されたIgG4定常領域を提供する。
より具体的には、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域において、289番目(EUナンバリング409番目)のArgが他のアミノ酸に置換されたIgG4定常領域を提供する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Lysへの置換であることが好ましい。配列番号:3に記載のアミノ酸配列において277番目(EUナンバリングの409番目)のArgを他のアミノ酸に置換することにより、抗体の酸性条件下での安定性を向上させることが可能である。
本発明により提供される酸性での安定性が改善されたIgG4定常領域は少なくとも上述のアミノ酸置換が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
【0034】
さらに本発明はC末端のヘテロジェニティーが改善されたIgG4定常領域を提供する。
より具体的には、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域において、326番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび327番目(EUナンバリングの447番目)のLysが欠損したIgG4定常領域を提供する。これらのアミノ酸を両方欠損させることにより、初めて抗体のH鎖C末端に由来するヘテロジェニティーを低減することが可能である。
本発明により提供されるC末端のヘテロジェニティーが改善されたIgG4定常領域は少なくとも上述のアミノ酸欠損が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
【0035】
さらに本発明は酸性での安定性が改善され、ヘテロジェニティーが改善され、および/またはFcγレセプターへの結合活性が低減したIgG4の好ましい態様として以下の定常領域からなるIgG4を挙げることができる。
配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域において、14番目のCys、16番目のArg、20番目のGlu、21番目のSer、97番目のArg、100番目のSer、102番目のTyr、103番目のGly、104番目のPro、105番目のPro、113番目のGlu、114番目のPhe、115番目のLeu、および289番目のArgが他のアミノ酸に置換され、かつ116番目のGlyが欠損したIgG4定常領域。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目(EUナンバリング131)のCysをSerに、16番目(EUナンバリング133)のArgをLysに、20番目(EUナンバリング137)のGluをGlyに、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに、97番目(EUナンバリング214)のArgをThrに、100番目(EUナンバリング217)のSerをArgに、102番目(EUナンバリング219)のTyrをSerに、103番目(EUナンバリング220)のGlyをCysに、104番目(EUナンバリング221)のProをValに、105番目(EUナンバリング222)のProをGluに、113番目(EUナンバリング233)のGluをProに、114番目(EUナンバリング234)のPheをValに、115番目(EUナンバリング235)のLeuをAlaに、289番目(EUナンバリング409)のArgをLysに置換することが好ましい。
このようなIgG4定常領域の例として、配列番号:8(M11)のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域を挙げることができる。
【0036】
又、本発明のIgG4定常領域の他の好ましい態様として、上述のIgG4定常領域において、さらに325番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリングの447番目)のLysが欠損したIgG4定常領域を挙げることができる。このような抗体の例として、配列番号:9(M11ΔGK)のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域を挙げることができる。
【0037】
<アミノ酸改変IgG1>
本発明はC末端のヘテロジェニティーが改善されたIgG1定常領域を提供する。
より具体的には配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域において、329番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび330番目(EUナンバリングの447番目)のLysが欠損したIgG1定常領域を提供する。これらのアミノ酸を両方欠損させることにより、初めて抗体のH鎖C末端に由来するヘテロジェニティーを低減することが可能である。
【0038】
また本発明は、薬物動態の向上したIgG1定常領域を提供する。
より具体的には配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域において、317番目(EUナンバリングの434番目)のAsnが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有するIgG1定常領域を提供する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Alaへの置換が好ましい。
さらに、本発明は配列番号:36に記載のアミノ酸配列から329番目のGlyおよび330番目のLysを欠損させた定常領域を提供する。より具体的には本発明は配列番号:43(M83)に記載のアミノ酸配列を有する定常領域を提供する(M83)。
本発明により提供されるC末端のヘテロジェニティーが改善されたIgG1定常領域は少なくとも上述のアミノ酸欠損が行われていればよく、同時に他のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または挿入などがおこなわれていてもよい。
又、本発明は上述のいずれかに記載の抗体定常領域を含む抗体を提供する。本発明の抗体は上述の抗体定常領域を有する限り、抗原の種類、抗体の由来などは限定されず、いかなる抗体でもよい。
【0039】
本発明の抗体には、上述のいずれかに記載のアミノ酸置換を含む抗体の修飾物も含まれる。また抗体の由来としては、特に限定されないが、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体などを挙げることができる。又、本発明の抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体等であってもよい。本発明の抗体の好ましい態様として、ヒト化抗体を挙げることができる。
【0040】
また、上述の抗体定常領域および/または上述の抗体定常領域を含む抗体分子は、抗体様結合分子(scaffold分子)、生理活性ペプチド、結合ペプチド等をFc融合分子として結合させることも可能である。
【0041】
また本発明の抗体には、上述のいずれかに記載の定常領域を含む抗体であればその修飾物も含まれる。
抗体の修飾物の例としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や細胞障害性物質等の各種分子と結合させた抗体を挙げることができる。このような抗体修飾物は、本発明の抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0042】
さらに、本発明の抗体は二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体とは、異なるエピトープを認識する可変領域を同一の抗体分子内に有する抗体をいうが、当該エピトープは異なる分子中に存在していてもよいし、同一の分子中に存在していてもよい。
上述の抗体定常領域は任意の抗原に対する抗体の定常領域として使用することが可能であり、抗原は特に限定されない。
【0043】
本発明の抗体は、例えば以下のようにして取得することが可能である。本発明の抗体を取得する一つの態様においては、まず、抗体の定常領域において、1又は複数のアミノ酸残基を、目的の他のアミノ酸に置換又は欠損する。1又は複数のアミノ酸残基を目的の他のアミノ酸に置換する方法としては、例えば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492)が挙げられる。該方法を用いて、抗体の定常領域の所望のアミノ酸を目的の他のアミノ酸に置換することができる。
【0044】
抗体を取得する為の別の態様としては、まず、当業者に周知な方法によって、目的の抗原に結合する抗体を得る。取得された抗体が非ヒト動物抗体であれば、ヒト化することもできる。抗体の結合活性は当業者に公知の方法で測定することができる。次いで、抗体の定常領域中の1又は複数のアミノ酸残基を、目的の他のアミノ酸に置換または欠損する。
【0045】
より具体的には、本発明は、以下の(a)及び(b)の工程を含む抗体の製造方法に関する。
(a)定常領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換または欠損されたH鎖をコードするDNA、及びL鎖をコードするDNAを発現させる工程
(b)工程(a)の発現産物を回収する工程
本発明の製造方法においては、まず、抗体のH鎖をコードするDNAであって、定常領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換または欠損されたH鎖をコードするDNA、および抗体のL鎖をコードするDNAを発現させる。定常領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換または欠損されたH鎖をコードするDNAは、例えば、野生型のH鎖をコードするDNAの定常領域部分を取得し、該定常領域中の特定のアミノ酸をコードするコドンが目的の他のアミノ酸をコードするよう、適宜置換を導入することによって得ることが出来る。
【0046】
また、あらかじめ、野生型H鎖の定常領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換または欠損されたタンパク質をコードするDNAを設計し、該DNAを化学的に合成することによって、定常領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換または欠損されたH鎖をコードするDNAを得ることも可能である。
アミノ酸置換の種類としては、これに限定されるものではないが、本明細書に記載の置換が挙げられる。
【0047】
また、定常領域中において、1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換または欠損されたH鎖をコードするDNAは、部分DNAに分けて製造することができる。部分DNAの組み合わせとしては、例えば、可変領域をコードするDNAと定常領域をコードするDNA、あるいはFab領域をコードするDNAとFc領域をコードするDNAなどが挙げられるが、これら組み合わせに限定されるものではない。L鎖をコードするDNAもまた、同様に部分DNAに分けて製造することができる。
【0048】
上記DNAを発現させる方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、H鎖可変領域をコードするDNAを、H鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込みH鎖発現ベクターを構築する。同様に、L鎖可変領域をコードするDNAを、L鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込みL鎖発現ベクターを構築する。これらのH鎖、L鎖の遺伝子を単一のベクターに組み込むことも出来る。発現ベクターとしては例えばSV40 virus basedベクター、EB virus basedベクター、BPV(パピローマウイルス)basedベクターなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
以上の方法で作製された抗体発現ベクターにより宿主細胞を共形質転換する。宿主細胞としてはCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)等上述の細胞の他にも大腸菌、酵母や枯草菌などの微生物や動植物の個体が用いられる(Nature Biotechnology 25, 563 - 565 (2007)、Nature Biotechnology 16, 773 - 777 (1998)、Biochemical and Biophysical Research Communications 255, 444-450 (1999)、Nature Biotechnology 23, 1159 - 1169 (2005)、Journal of Virology 75, 2803-2809 (2001)、Biochemical and Biophysical Research Communications 308, 94-100 (2003))。また、形質転換にはリポフェクチン法(R.W.Malone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6077 (1989), P.L.Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413 (1987)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(F.L.Graham & A.J.van der Eb,Virology 52,456-467(1973))、DEAE-Dextran法等が好適に用いられる。
【0050】
抗体の製造においては、次に、工程(a)で得られた発現産物を回収する。発現産物の回収は、例えば、形質転換体を培養した後、形質転換体の細胞内又は培養液より分離することによって行うことが出来る。抗体の分離、精製には、遠心分離、硫安分画、塩析、限外濾過、1q、FcRn、プロテインA、プロテインGカラム、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて行うことができる。
【0051】
<IgG2定常領域の酸性条件下における安定性を向上させる方法>
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(IgG2)において、276番目(EUナンバリングの397番目)のMetを他のアミノ酸に置換する工程を含む、抗体の酸性条件下における安定性を向上させる方法に関する。本発明の抗体の酸性条件下における安定性を向上させる方法は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(IgG2)において276番目(EUナンバリングの397番目)のMetを他のアミノ酸に置換する工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。置換後のアミノ酸は特に限定されないがValへの置換が好ましい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例に記載の方法によって行うことが出来る。
【0052】
<IgG2定常領域のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを改善する方法>
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(IgG2)において、14番目(EUナンバリング131番目)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、16番目(EUナンバリングの133番目)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、および/または102番目(EUナンバリングの219番目)のCysを他のアミノ酸に置換する工程を含む、抗体のヘテロジェニティーを改善する方法に関する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目のCysはSerに、16番目のArgはLysに、102番目のCysはSerに置換されることが好ましい。本発明の抗体のヘテロジェニティーを改善する方法は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(IgG2)において、14番目(EUナンバリング131番目)のCysを置換する工程、16番目(EUナンバリングの133番目)のArgを置換する工程、および/または102番目(EUナンバリングの219番目)のCysを置換する工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。置換されるアミノ酸は上述の3つのアミノ酸全てが置換されてもよいし、1又は2(例えば14番目と102番目、など)のアミノ酸が置換されてもよい。
【0053】
<IgG2定常領域のC末端アミノ酸欠損に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法>
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、325番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリングの447番目)のLysを欠損させる工程を含む、抗体のヘテロジェニティーを改善する方法に関する。本発明の抗体のヘテロジェニティーを改善する方法は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、325番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリングの447番目)のLysを欠損させる工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含んでもよい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0054】
<IgG2定常領域のアミノ酸を置換することにより薬物動態を向上する方法>
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、147番目(EU268)のHis、234番目(EU355)のArg及び/又は298番目(EU419)のGlnを他のアミノ酸に置換する工程を含む、抗体の薬物動態を向上する方法に関する。本発明の薬物動態を向上する方法は、上述の工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、147番目(EU268)のHisはGlnに、234番目(EU355)のArgはGlnに、298番目(EU419)のGlnはGluに置換されることが好ましい。
また本発明は、配列番号:20又は配列番号:35(M58)のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、313番目(EU434)のAsnを他のアミノ酸に置換する工程を含む、抗体の薬物動態を向上する方法に関する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Alaへの置換が好ましい。本発明の薬物動態を向上する方法は、上述の工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。
【0055】
<IgG1定常領域のアミノ酸を置換することにより薬物動態を向上する方法>
また本発明は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域において、317番目(EU434)のAsnを他のアミノ酸に置換する工程を含む、抗体の薬物動態を向上する方法に関する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Alaへの置換が好ましい。本発明の薬物動態を向上する方法は、上述の工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。
また本発明は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域において、317番目(EU434)のAsnを他のアミノ酸に置換する工程、および329番目(EU446)のGlyおよび330番目(EU447)のLysを欠損する工程を含む、抗体の薬物動態を向上し、C末端アミノ酸欠損に由来するヘテロジェニティを軽減する方法に関する。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Alaへの置換が好ましい。本発明の薬物動態を向上する方法は、上述の工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。
【0056】
<IgG2定常領域のヒト配列を維持したままFcγRへの結合を低減させる方法>
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、209番目(EU330)のAlaをSerに置換する工程、210番目(EU331)のProをSerに置換する工程、および218番目(EU339)のThrをAlaに置換する工程を含む、抗体のFcγRへの結合を低減させる方法に関する。本発明の抗体のFcγRへの結合を低減させる方法は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、209番目(EU330)のAlaをSerに置換する工程、210番目(EU331)のProをSerに置換する工程、および218番目(EU339)のThrをAlaに置換する工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含むものであってもよい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0057】
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG2のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法、酸性条件下での安定性を向上させる方法、C末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法および/または抗体のFcγRへの結合を低減させる方法に関する(M14ΔGK)。
(a)配列番号:2の209番目(EUナンバリング330)のAlaを他のアミノ酸に置換する工程、
(b)配列番号:2の210番目(EUナンバリング331)のProを他のアミノ酸に置換する工程、
(c)配列番号:2の218番目(EUナンバリング339)のThrを他のアミノ酸に置換する工程、
(d)配列番号:2の276番目(EUナンバリング397)のMetを他のアミノ酸に置換する工程、
(e)配列番号:2の14番目(EUナンバリング131)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(f)配列番号:2の16番目(EUナンバリング133)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(g)配列番号:2の102番目(EUナンバリング219)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(h)配列番号:2の20番目(EUナンバリング137)のGluを他のアミノ酸に置換する工程、
(i)配列番号:2の21番目(EUナンバリング138)のSerを他のアミノ酸に置換する工程、
及び
(j)配列番号:2の325番目のGly及び326番目のLys(EUナンバリング446および447)を欠損させる工程。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、209番目(EUナンバリング330)のAlaをSer、210番目(EUナンバリング331)のProをSer、218番目(EUナンバリング339)のThrをAla、276番目(EUナンバリング397)のMetをVal、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
【0058】
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG2のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法、C末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法および/または抗体のFcγRへの結合を低減させる方法に関する(M86ΔGK)。
(a)配列番号:2の209番目(EUナンバリング330)のAlaを他のアミノ酸に置換する工程、
(b)配列番号:2の210番目(EUナンバリング331)のProを他のアミノ酸に置換する工程、
(c)配列番号:2の218番目(EUナンバリング339)のThrを他のアミノ酸に置換する工程、
(d)配列番号:2の14番目(EUナンバリング131)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(e)配列番号:2の16番目(EUナンバリング133)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(f)配列番号:2の102番目(EUナンバリング219)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(g)配列番号:2の20番目(EUナンバリング137)のGluを他のアミノ酸に置換する工程、
(h)配列番号:2の21番目(EUナンバリング138)のSerを他のアミノ酸に置換する工程、
及び
(i)配列番号:2の325番目のGly及び326番目のLys(EUナンバリング446および447)を欠損させる工程。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、209番目(EUナンバリング330)のAlaをSer、210番目(EUナンバリング331)のProをSer、218番目(EUナンバリング339)のThrをAla、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
【0059】
本発明の方法は、上記工程を含む限り、他のアミノ酸置換や欠損、その他工程を含むものであってもよい。アミノ酸の置換や欠損の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0060】
また本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG2のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法、酸性条件下での安定性を向上させる方法、および/またはC末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法に関する(M31ΔGK)。
(a)配列番号:2の276番目(EUナンバリング397)のMetを他のアミノ酸に置換する工程、
(b)配列番号:2の14番目(EUナンバリング131)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(c)配列番号:2の16番目(EUナンバリング133)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(d)配列番号:2の102番目(EUナンバリング219)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(e)配列番号:2の20番目(EUナンバリング137)のGluを他のアミノ酸に置換する工程、
(f)配列番号:2の21番目(EUナンバリング138)のSerを他のアミノ酸に置換する工程、
及び
(g)配列番号:2の325番目のGly及び326番目のLys(EUナンバリング446および447)を欠損させる工程。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、276番目(EUナンバリング397)のMetをVal、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
【0061】
さらに本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG2のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法および/またはC末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法に関する(M40ΔGK)。
(a)配列番号:2の14番目(EUナンバリング131)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(b)配列番号:2の16番目(EUナンバリング133)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(c)配列番号:2の102番目(EUナンバリング219)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(d)配列番号:2の20番目(EUナンバリング137)のGluを他のアミノ酸に置換する工程、
(e)配列番号:2の21番目(EUナンバリング138)のSerを他のアミノ酸に置換する工程、
及び
(f)配列番号:2の325番目のGly及び326番目のLys(EUナンバリング446および447)を欠損させる工程。
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目(EUナンバリング131)のCysをSer、16番目(EUナンバリング133)のArgをLys、102番目(EUナンバリング219)のCysをSer、20番目(EUナンバリング137)のGluをGly、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに置換することが好ましい。
【0062】
また本発明は配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG2のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法、薬物動態を向上する方法および/またはC末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法に関する(M58)。
(a)配列番号:2の14番目(EUナンバリング131番目)のCysをSerに置換する工程、
(b)配列番号:2の16番目(EUナンバリング133番目)のArgをLysに置換する工程、
(c)配列番号:2の102番目(EUナンバリング219番目)のCysをSerに置換する工程、
(d)配列番号:2の20番目(EUナンバリング137番目)のGluをGlyに置換する工程、
(e)配列番号:2の21番目(EUナンバリング138番目)のSerをGlyに置換する工程、
(f)配列番号:2の147番目(EUナンバリング268番目)のHisをGlnに置換する工程、
(g)配列番号:2の234番目(EUナンバリング355番目)のArgをGlnに置換する工程、
(h)配列番号:2の298番目(EUナンバリング419番目)のGlnをGluに置換する工程、
(i)配列番号:2の325番目(EUナンバリング446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリング447番目)のLysを欠損させる工程。
【0063】
また本発明は配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有するIgG2定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG2のヒンジ部分に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法、薬物動態を向上する方法および/またはC末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法に関する(M73)。
(a)配列番号:2の14番目(EUナンバリング131番目)のCysをSerに置換する工程、
(b)配列番号:2の16番目(EUナンバリング133番目)のArgをLysに置換する工程、
(c)配列番号:2の102番目(EUナンバリング219番目)のCysをSerに置換する工程、
(d)配列番号:2の20番目(EUナンバリング137番目)のGluをGlyに置換する工程、
(e)配列番号:2の21番目(EUナンバリング138番目)のSerをGlyに置換する工程、
(f)配列番号:2の147番目(EUナンバリング268番目)のHisをGlnに置換する工程、
(g)配列番号:2の234番目(EUナンバリング355番目)のArgをGlnに置換する工程、
(h)配列番号:2の298番目(EUナンバリング419番目)のGlnをGluに置換する工程、
(i)配列番号:2の313番目(EUナンバリング434番目)のAsnをAlaに置換する工程、
(j)配列番号:2の325番目(EUナンバリング446番目)のGlyおよび326番目(EUナンバリング447番目)のLysを欠損させる工程。
【0064】
本発明の方法は、上記工程を含む限り、他のアミノ酸置換や欠損、その他工程を含むものであってもよい。アミノ酸の置換や欠損の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0065】
<IgG4定常領域の酸性条件下における安定性を向上させる方法>
本発明はまた、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域(Mol Immunol. 1993 Jan;30(1):105-8.)において、289番目(EUナンバリング409番目)のArgを他のアミノ酸に置換する工程を含む、抗体の酸性条件下における安定性を向上させる方法に関する。本発明の抗体の酸性条件下における安定性を向上させる方法は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列(ヒトIgG4定常領域)において289番目(EUナンバリング409番目)のArgを他のアミノ酸に置換する工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含んでもよい。置換後のアミノ酸は特に限定されないが、Lysへの置換が好ましい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0066】
<IgG4定常領域のC末端アミノ酸欠損に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法>
また本発明は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域(Mol Immunol. 1993 Jan;30(1):105-8.)において、326番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび327番目(EUナンバリングの447番目)のLysを欠損させる工程を含む、抗体のヘテロジェニティーを改善する方法に関する。本発明のヘテロジェニティーを改善する方法は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域において、327番目(EUナンバリングの447番目)のLysおよび/または326番目(EUナンバリングの446番目)のGlyを欠損させる工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含んでもよい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0067】
また本発明は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域において、下記に記載の工程を含む、IgG4の酸性条件下での安定性を向上させる方法、C末端に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法、抗体のFcγRへの結合を低減させる方法に関する(M11ΔGK)。
(a)配列番号:3の14番目(EUナンバリング131)のCysを他のアミノ酸に置換する工程、
(b)配列番号:3の16番目(EUナンバリング133)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(c)配列番号:3の20番目(EUナンバリング137)のGluを他のアミノ酸に置換する工程、
(d)配列番号:3の21番目(EUナンバリング138)のSerを他のアミノ酸に置換する工程、
(e)配列番号:3の97番目(EUナンバリング214)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(f)配列番号:3の100番目(EUナンバリング217)のSerを他のアミノ酸に置換する工程、
(g)配列番号:3の102番目(EUナンバリング219)のTyrを他のアミノ酸に置換する工程、
(h)配列番号:3の103番目(EUナンバリング220)のGlyを他のアミノ酸に置換する工程、
(i)配列番号:3の104番目(EUナンバリング221)のProを他のアミノ酸に置換する工程、
(j)配列番号:3の105番目(EUナンバリング222)のProを他のアミノ酸に置換する工程、
(k)配列番号:3の113番目(EUナンバリング233)のGluを他のアミノ酸に置換する工程、
(l)配列番号:3の114番目(EUナンバリング234)のPheを他のアミノ酸に置換する工程、
(m)配列番号:3の115番目(EUナンバリング235)のLeuを他のアミノ酸に置換する工程、
(n)配列番号:3の116番目(EUナンバリング236)のGlyを欠損する工程、及び
(o)配列番号:3の289番目(EUナンバリング409)のArgを他のアミノ酸に置換する工程、
(p)配列番号:3の326番目(EUナンバリング446)のGlyおよび327番目(EUナンバリング447)のLysを欠損させる工程。
【0068】
置換後のアミノ酸は特に限定されないが、14番目(EUナンバリング131)のCysをSerに、16番目(EUナンバリング133)のArgをLysに、20番目(EUナンバリング137)のGluをGlyに、21番目(EUナンバリング138)のSerをGlyに、97番目(EUナンバリング214)のArgをThrに、100番目(EUナンバリング217)のSerをArgに、102番目(EUナンバリング219)のTyrをSerに、103番目(EUナンバリング220)のGlyをCysに、104番目(EUナンバリング221)のProをValに、105番目(EUナンバリング222)のProをGluに、113番目(EUナンバリング233)のGluをProに、114番目(EUナンバリング234)のPheをValに、115番目(EUナンバリング235)のLeuをAlaに、289番目(EUナンバリング409)のArgをLysに置換することが好ましい。
本発明の方法は、上記工程を含む限り、他のアミノ酸置換や欠損、その他工程を含むものであってもよい。アミノ酸の置換や欠損の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0069】
<IgG1定常領域のC末端アミノ酸欠損に由来するヘテロジェニティーを低減させる方法>
また本発明は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域において、329番目(EUナンバリングの446番目)のGlyおよび330番目(EUナンバリングの447番目)のLysを欠損させる工程を含む、抗体のヘテロジェニティーを改善する方法に関する。本発明の抗体のヘテロジェニティーを改善する方法は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するIgG1定常領域において、330番目(EUナンバリングの447番目)のLysおよび329番目(EUナンバリングの446番目)のGlyを欠損させる工程を含む限り、他のアミノ酸置換を含んでもよい。アミノ酸置換の方法は特に限定されるものではないが、例えば上述の部位特異的変異誘発法や実施例の記載の方法によって行うことが出来る。
【0070】
上述の抗体定常領域は特に限定されず、如何なる抗体に用いてもよいが、本発明の定常領域を用いた抗体の例として例えば以下の抗体を挙げることができる。
(a) 配列番号:48((VH4-M73)のアミノ酸配列を有する重鎖)、
(b) 配列番号:46((VH3-M73)のアミノ酸配列を有する重鎖)、
(c) 配列番号:44((VH5-M83)のアミノ酸配列を有する重鎖)、
(d) 配列番号:49((VL1-kappa)のアミノ酸配列を有する軽鎖)、
(e) 配列番号:47((VL3-kappa)のアミノ酸配列を有する軽鎖)、
(f) 配列番号:45((VL5-kappa)のアミノ酸配列を有する軽鎖)、
(g) (a)の重鎖と(d)の軽鎖を含む抗体(FV3-M73)、
(h) (b)の重鎖と(e)の軽鎖を含む抗体(FV4-M73)、
(i) (c)の重鎖と(f)の軽鎖を含む抗体(FV5-M83)。
【0071】
<抗体を含む医薬組成物>
本発明は、本発明の抗体を含む、医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、抗体に加えて医薬的に許容し得る担体を導入し、公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0072】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0073】
投与は好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与することができる。
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。抗体または抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001から100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0074】
本明細書で用いられているアミノ酸の3文字表記と1文字表記の対応は以下の通りである。
アラニン:Ala:A
アルギニン:Arg:R
アスパラギン:Asn:N
アスパラギン酸:Asp:D
システイン:Cys:C
グルタミン:Gln:Q
グルタミン酸:Glu:E
グリシン:Gly:G
ヒスチジン:His:H
イソロイシン:Ile:I
ロイシン:Leu:L
リジン:Lys:K
メチオニン:Met:M
フェニルアラニン:Phe:F
プロリン:Pro:P
セリン:Ser:S
スレオニン:Thr:T
トリプトファン:Trp:W
チロシン:Tyr:Y
バリン:Val:V
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕IgG2およびIgG4の酸性条件下における安定性の向上
IgG2、IgG4化ヒト化IL-6レセプター抗体発現ベクターの作製・発現
Fcγレセプターへの結合性を低下させるためにヒト化抗ヒトIL-6レセプター抗体であるヒト化PM1抗体(Cancer Res. 1993 Feb 15;53(4):851-6)の定常領域はIgG1アイソタイプであるが、定常領域をIgG2に置換した分子(WT-IgG2、配列番号:13)、および、IgG4(Mol Immunol. 1993 Jan;30(1):105-8.)に置換した分子(WT-IgG4、配列番号:14)を作製した。IgGの発現には動物細胞発現用ベクターを使用した。参考例1で使用しているヒト化PM1抗体(IgG1)の定常領域部分のNheI/NotI消化とligationにより定常領域をIgG2あるいはIgG4に置換した発現ベクターを構築した。各DNA断片の塩基配列は、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用い、DNAシークエンサーABI PRISM 3730xL DNA SequencerまたはABI PRISM 3700 DNA Sequencer(Applied Biosystems)にて、添付説明書記載の方法に従い決定した。L鎖としてWT(配列番号:15)を用い、WT-IgG1、WT-IgG2、WT-IgG4の発現は以下の方法で実施した。ヒト胎児腎癌細胞由来HEK293H株(Invitrogen)を10 % Fetal Bovine Serum (Invitrogen)を含むDMEM培地(Invitrogen)へ懸濁し、5〜6 × 10
5個 /mLの細胞密度で接着細胞用ディッシュ(直径10 cm, CORNING)の各ディッシュへ10 mLずつ蒔きこみCO
2インキュベーター(37℃、5 % CO
2)内で一昼夜培養した後に、培地を吸引除去し、CHO-S-SFM-II(Invitrogen)培地6.9 mLを添加した。調製したプラスミドDNA混合液(合計13.8μg)を1μg/mL Polyethylenimine (Polysciences Inc.) 20.7μLとCHO-S-SFMII培地 690μLと混合して室温10分間静置したものを各ディッシュの細胞へ投入し、4〜5時間、CO
2インキュベーター(37℃にて5 % CO
2)内でインキュベートした。その後、CHO-S-SFM-II(Invitrogen)培地6.9 mLを添加して、3日間 CO
2インキュベーター内で培養した。培養上清を回収した後、遠心分離(約2000 g、5分間、室温)して細胞を除去し、さらに0.22μmフィルターMILLEX
(R)-GV(Millipore)を通して滅菌した。該サンプルは使用するまで4℃で保存した。
(1) ヒト化PM1抗体(PM-1 VH + IgG1)H鎖:配列番号:12(アミノ酸配列)
(2) ヒト化PM-1 VH + IgG2H鎖:配列番号:13(アミノ酸配列)
(3) ヒト化PM-1 VH + IgG4H鎖:配列番号:14(アミノ酸配列)
【0076】
WT-IgG1、WT-IgG2、WT-IgG4のプロテインA塩酸溶出による精製
得られた培養上清にTBS中に懸濁させた50μLのrProtein A Sepharose
TM Fast Flow(Amersham Biosciences)を添加し、4℃で4時間以上転倒混和した。その溶液を0.22μmのフィルターカップUltrafree
(R)-MC(Millipore)に移し、TBS 500μLにて3回洗浄後、rProtein A Sepharose
TM樹脂に100μLの10mM HCl, 150mM NaCl, pH2.0に懸濁して2分間静置したのち、抗体を溶出させた(塩酸溶出法)。直ちに、6.7μLの1.5M Tris-HCl , pH 7.8を加えて中和した。溶出は2回行い、200μLの精製抗体を得た。
【0077】
塩酸溶出法により精製したWT-IgG1、WT-IgG2、WT-IgG4のゲルろ過クロマトグラフィー分析
塩酸溶出法により得られた精製品の会合体含量を評価するためにゲルろ過クロマトグラフィー分析を行った。
会合体評価法:システム Waters Alliance
カラム G3000SWxl(TOSOH)
移動相 50mM sodium phosphate, 300mM KCl, pH7.0
流速・波長 0.5ml/min、220nm
結果を
図1に示した。WT-IgG1の精製後の会合体含量は2%程度であったのに対して、WT-IgG2、および、WT-IgG4の精製後の会合体含量は25%程度であった。このことから、IgG1は塩酸溶出時の酸に対して安定であるが、IgG2およびIgG4は塩酸溶出時の酸に対して不安定であり変性・会合化が進行したと考えられ、IgG2およびIgG4は、IgG1と比較して酸性条件下における安定性が低いことが明らかとなった。IgG分子の精製においては、プロテインAが多用されるが、IgG分子のプロテインAからの溶出は酸性条件下で行われる。またIgG分子を医薬品として開発する上で必要なウィルス不活化は、一般に酸性条件下において行われる。これらのことから、IgG分子の酸性条件下における安定性は高いほうが望ましいが、IgG2およびIgG4分子は酸性条件下における安定性がIgG1よりも劣ることが分かり、医薬品として開発するには酸性条件下での変性・会合化という課題が存在することが初めて明らかとなった。医薬品として開発するには変性・会合化という課題が解決されることが望ましいと考えられたが、これまでにアミノ酸置換によりこれを解決する方法は報告されていない。
【0078】
WT-IgG2、WT-IgG4のCH3ドメイン改変体の作製と評価
IgG2およびIgG4分子は酸性条件下における安定性がIgG1よりも劣ることが示されたため、IgG2およびIgG4分子の酸性条件下での安定性を改善させる改変体を検討した。IgG2およびIgG4分子の定常領域のモデルより、酸性条件下における不安定要因として、CH3ドメインにおけるCH3/CH3界面の不安定性が考えられ、IgG2においてはEUナンバリングの397番目のメチオニン、IgG4においてはEUナンバリングの409番目のアルギニンがそれぞれIgG2およびIgG4のCH3/CH3界面を不安定化していると考えられた。IgG1においては、EUナンバリングの397番目はバリンであり、409番目はリジンであることから、IgG2 のEUナンバリングの397番目のメチオニンをバリンに改変した抗体(IgG2-M397V 配列番号:16(アミノ酸配列)、および、IgG4のEUナンバリングの409番目のアルギニンをリジンに改変した抗体(IgG4-R409K 配列番号:17(アミノ酸配列))を作製した。
目的の抗体の発現ベクターの作製・発現・精製は、上述の塩酸溶出の方法を用いて行った。Protein Aからの塩酸溶出法により得られた精製品の会合体含量を評価するためにゲルろ過クロマトグラフィー分析を行った。
会合体評価法:システム Waters Alliance
カラム G3000SWxl(TOSOH)
移動相 50mM sodium phosphate, 300mM KCl, pH7.0
流速・波長 0.5ml/min、220nm
結果を
図1に示した。WT-IgG1の精製後の会合体含量は2%程度であったのに対して、WT-IgG2、および、WT-IgG4の精製後の会合体含量は25%程度であった。それに対して、CH3ドメイン改変体であるIgG2-M397V、および、IgG4-R409Kの会合体含量がIgG1と同等レベルの2%程度であった。IgG2 のEUナンバリングの397番目のメチオニンをバリンに改変することで、あるいは、IgG4のEUナンバリングの409番目のアルギニンをリジンに改変することで、IgG2抗体およびIgG4抗体の酸性条件下における安定性を向上させることが可能であることが明らかになった。精製抗体を20mM sodium acetate, 150mM NaCl, pH6.0の溶液に対して透析(EasySEP, TOMY)を行い、約0.1mg/mLのタンパク質濃度で、40℃から100℃まで1℃/minの昇温速度でDSC測定(熱変性中間温度、Tm値測定)を行った。WT-IgG2、WT-IgG4、IgG2-M397V、および、IgG4-R409Kの熱変性中間温度を測定した結果、WT-IgG2、WT-IgG4に比べてIgG2-M397V、IgG4-R409Kはそれぞれ改変を導入したCH3ドメインのTm値が高いことが分かった。このことから、IgG2-M397V、IgG4-R409KはそれぞれWT-IgG2、WT-IgG4に比べて熱安定性においても優れていることが分かった。
IgG2およびIgG4はプロテインAを用いた精製工程およびウィルス不活化工程において酸性条件下に暴露されることから、同工程における変性・会合化が課題であったが、IgG2及びIgG4の定常領域配列として、IgG2-M397VおよびIgG4-R409Kを使用することによって、その課題を解決することが可能であることが明らかになり、同改変はIgG2及びIgG4抗体を医薬品として開発する上で極めて有用であることが分かった。また、IgG2-M397VおよびIgG4-R409Kは熱安定性にも優れている点からも有用であることが分かった。
【0079】
〔実施例2〕IgG2のジスルフィド結合由来のヘテロジェニティーの改善
WT-IgG1、WT-IgG2、WT-IgG4のプロテインA酢酸溶出による精製
実施例1で得られた培養上清にTBS中に懸濁させた50μLのrProtein A SepharoseTM Fast Flow(Amersham Biosciences)を添加し、4℃で4時間以上転倒混和した。その溶液を0.22μmのフィルターカップUltrafree
(R)-MC(Millipore)に移し、TBS 500μLにて3回洗浄後、rProtein A Sepharose
TM樹脂に100μLの50 mM 酢酸ナトリウム水溶液, pH 3.3に懸濁して2分間静置したのち、抗体を溶出させた。直ちに、6.7μLの1.5M Tris-HCl, pH 7.8を加えて中和した。溶出は2回行い、200μLの精製抗体を得た。
【0080】
WT-IgG1、WT-IgG2、WT-IgG4の陽イオン交換クロマトグラフィー(IEC)分析
精製されたWT-IgG1、WT-IgG2、WT-IgG4の均一性を評価するために陽イオン交換クロマトグラフィーによる分析を行った。
IEC評価法:システム Waters Alliance
カラム ProPac WCX-10 (Dionex)
移動相 A : 25mM MES-NaOH, pH6.1
B : 25mM MES-NaOH, 250mM Na-Acetate, pH6.1
流速・波長 0.5ml/min、280nm
グラジエント B : 50%-75% (75min) WT-IgG1分析時
B : 30%-55% (75min) WT-IgG2、WT-IgG4分析時
結果を
図2に示した。WT-IgG1、WT-IgG4はイオン交換分析でシングルピークであったが、WT-IgG2は複数のピークが存在していることが分かり、IgG2分子は、IgG1やIgG4と比較してヘテロジェニティーが多いことが分かった。実際、IgG2のアイソタイプは、ヒンジ領域のジスルフィド結合に由来するヘテロジェニティー(不均一性)が報告されており(非特許文献10)、
図2に示されたIgG2のヘテロピークもこれに由来する目的物質/関連物質と考えられる。目的物質/関連物質のヘテロジェニティーの製造間差を維持しつつ医薬品として大量に製造することは難しく、医薬品として開発する抗体分子は望ましくは可能な限り均一な(ヘテロジェニティーが少ない)物質であったほうがよい。よって野生型IgG2は、抗体を医薬品として開発するにあたって重要な均一性に課題があると考えられた。実際、US20060194280(A1)において、天然型IgG2はイオン交換クロマトグラフィー分析においてジスルフィド結合に由来する様々なヘテロピークが観察されており、これらのピーク間では生物活性が異なることも報告されている。このヘテロピークを単一化する方法として、US20060194280(A1)においては精製工程におけるリフォールディングが報告されているが、製造においてこれらの工程を用いることはコストがかかり煩雑であるため、好ましくはアミノ酸置換によりヘテロピークを単一化する方法が望ましい。医薬品として開発するにはヒンジ領域のジスルフィド結合に由来するヘテロジェニティーが解決されることが望ましいと考えられたが、これまでにアミノ酸置換によりこれを解決する方法は報告されていない。
【0081】
WT-IgG2のCH1ドメイン、ヒンジ領域の改変体の作製と評価
図3に示すとおりIgG2分子に関しては様々なジスルフィド結合パターンが考えられる。IgG2のヒンジ領域に由来するヘテロジェニティーの原因として、ジスルフィド結合の掛け違い、および、フリーのシステインの存在が考えられた。IgG2はupper hinge領域に2つのシステインを有し(EUナンバリング219番目と220番目、このupper hingeの2つのシステインに隣接するシステインとして、H鎖のCH1ドメインに存在するEUナンバリング131番目のシステインとL鎖のC末端のシステイン、および、2量化する相手H鎖の同じupper hingeの2つのシステインが挙げられる。すなわち、IgG2のupper hinge周辺にはH2L2の会合した状態では合計8個のシステインが隣接しており、これにより、ジスルフィド結合の掛け違い、および、フリーのシステインによる様々なヘテロジェニティーが存在することが考えられる。
IgG2のヒンジ領域に由来するヘテロジェニティーを低減することを目的にIgG2のヒンジ領域配列とCH1ドメインの改変を行った。IgG2においてジスルフィド結合の掛け違い、および、フリーのシステインによるヘテロジェニティーを回避するための検討を行った。各種改変体の検討の結果、野生型IgG2定常領域配列のうち、H鎖のCH1ドメインに存在するEUナンバリング131番目のシステインと133番目のアルギニンをそれぞれセリンとリジンに改変し、H鎖のupper hingeに存在するEUナンバリング219番目のシステインをセリンに改変する(以下、IgG2-SKSC)(IgG2-SKSC:配列番号:18)ことによって、熱安定性を低下させることなくヘテロジェニティーを回避することが可能であると考えられた。これにより、IgG2-SKSCのH鎖とL鎖の共有結合は、EUナンバリング220番目のシステインとL鎖のC末端のシステインでジスルフィド結合により均一に形成されると考えられる(
図4)。
IgG2-SKSCの発現ベクターの作製、発現、精製は参考例1に記した方法で実施した。精製されたIgG2-SKSCおよび野生型IgG2(WT-IgG2)の均一性を評価するために陽イオン交換クロマトグラフィーによる分析を行った。
IEC評価法:システム Waters Alliance
カラム ProPac WCX-10 (Dionex)
移動相 A : 25mM MES-NaOH, pH5.6
B : 25mM MES-NaOH, 250mM Na-Acetate, pH5.6
流速・波長 0.5ml/min、280nm
グラジエント B : 50%-100% (75min)
結果を
図5に示した。上述のとおり、WT-IgG2は複数のピークが存在しているが、IgG2-SKSCはシングルピークとして溶出することが分かった。IgG2のヒンジ領域のジスルフィド結合に由来するヘテロジェニティーは、EUナンバリング220番目のシステインとL鎖のC末端のシステインで単一のジスルフィド結合を形成するようなIgG2-SKSCの改変を導入することで回避できることが示された。また、実施例1と同様の方法で、WT-IgG1、WT-IgG2およびIgG2-SKSCの熱変性中間温度を測定した結果、WT-IgG2はWT-IgG1に比べて低いTm値を示すFabドメインのピークが観察されたが、IgG2-SKSCにおいてはそのピークが認められなかった。このことから、IgG2-SKSCはWT-IgG2と比較して熱安定性においても優れていることが分かった。
野生型IgG2は、抗体を医薬品として開発するにあたって重要な均一性に課題があると考えられたが、IgG2-SKSCをIgG2の定常領域配列として使用することにより、この課題を解決することが可能であることが明らかになり、IgG2を医薬品として開発する上で極めて有用であることが分かった。また、IgG2-SKSCは熱安定性にも優れている点からも有用であることが分かった。
【0082】
〔実施例3〕IgG分子のC末端ヘテロジェニティーの改善
WT-IgG1のH鎖C末端ΔGK抗体の発現ベクター構築
抗体のC末端配列のヘテロジェニティーとして、C末端アミノ酸のリジン残基の欠損、および、C末端の2アミノ酸のグリシン、リジンの欠損によるC末端アミノ基のアミド化が報告されており(非特許文献12)、医薬品として開発する上ではこれらのヘテロジェニティーは存在しないことが望ましい。実際、ヒト化PM-1抗体であるTOCILIZUMABにおいても、その主成分は塩基配列上存在するC末端アミノ酸のリジンが翻訳後修飾により欠損した配列であるが、リジンが残存している副成分もヘテロジェニティーとして存在する。そこで、C末端アミノ酸のヘテロジェニティーを低減させることを目的にC末端アミノ酸の改変を行った。具体的には、野生型IgG1のH鎖定常領域のC末端のリジンおよびグリシンを塩基配列上あらかじめ欠損させることで、C末端の2アミノ酸のグリシン、リジンの欠損によるC末端アミノ基のアミド化を抑制することが可能かどうかを検討した。
参考例1で得たヒト化PM1抗体(WT)のpB-CHベクターを用いてH鎖C末端配列に変異を導入した。QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて、添付説明書記載の方法でEUナンバリング447番目のLysおよび/またはEUナンバリング446番目のGlyをコードする塩基配列について、これを終止コドンとする変異を導入した。これにより、C末端の1アミノ酸のリジン(EUナンバリング447)をあらかじめ欠損させた抗体、C末端の2アミノ酸のグリシン(EUナンバリング446)、リジン(EUナンバリング447)をあらかじめ欠損させた抗体の発現ベクターを作製した。ヒト化PM1抗体のL鎖と発現させることでH鎖C末端ΔK抗体、および、H鎖C末端ΔGK抗体を得た。発現・精製は参考例1で記した方法で実施した。
【0083】
精製したH鎖C末端ΔGK抗体の陽イオン交換クロマトグラフィー分析を以下のとおりに行った。精製したH鎖C末端ΔGK抗体を用いて以下の方法で陽イオン交換クロマトグラフィーによる分析を行い、C末端欠損がヘテロジェニティーに及ぼす影響を評価した。陽イオン交換クロマトグラフィー分析条件は以下のとおりであり、ヒト化PM1抗体、H鎖C末端ΔK抗体、H鎖C末端ΔGK抗体のクロマトグラムを比較した。
カラム:ProPac WCX-10 (Dionex)
移動相:A: 25 mmol/L MES/NaOH, pH 6.1
B: 25 mmol/L MES/NaOH, 250 mmol/L NaCl, pH 6.1
流速:0.5 mL/min
グラジエント:25 %B(5 min)→(105 min)→67 %B→(1 min)→100 %B (5 min)
検出:280 nm
【0084】
未改変ヒト化PM-1抗体、H鎖C末端ΔKおよびH鎖C末端ΔGK抗体の分析結果を
図6に示す。非特許文献10から、主ピークよりも保持が遅い塩基性ピークにH鎖C末端449番目のLys残存体、447番目のProアミド体が含まれるが、H鎖C末端ΔK では認められなかった塩基性ピークの大幅な減少がH鎖C末端ΔGK抗体では認めたことから、H鎖C末端の2アミノ酸を欠損させることによって初めてH鎖C末端ヘテロジェニティーを軽減することが可能であると分かった。
H鎖C末端の2残基の欠損の及ぼす熱安定性への影響を評価するために、DSCによるH鎖C末端ΔGK抗体の熱変性温度測定を行った。DSC測定用として150 mM NaClを含む20 mM 酢酸緩衝液、pH6.0に透析することで緩衝液を置換した。ヒト化PM1抗体、H鎖C末端ΔGK抗体およびリファレンス溶液(透析外液)を十分に脱気した後、これらをそれぞれ熱量計セルに封入し40℃での熱平衡化を十分に行った。次にDSC走査を40℃〜100℃で約1K/分走査速度で行った。得られた変性ピークについて、非特許文献(Rodolfoら、Immunology Letters、1999年、p47-52)を参考にピークアサインを行ったところ、C末端欠損はCH3ドメインの熱変性温度に影響しないことを確認した。
これにより、H鎖定常領域のC末端のリジンおよびグリシンを塩基配列上あらかじめ欠損させることで、抗体の熱安定性に影響を与えることなく、C末アミノ酸のヘテロジェニティーを低減させること可能となった。ヒト抗体定常領域IgG1、IgG2、IgG4において、C末端配列はいずれもEUナンバリング447番目がLys、EUナンバリング446番目がGlyになっていることから、本件等で見出されたC末アミノ酸のヘテロジェニティーを低減させる方法はIgG2定常領域とIgG4定常領域にも適用可能であると考えられる。
【0085】
〔実施例4〕新規最適化定常領域M14ΔGK配列の作製
抗原を中和することが目的の抗体医薬においてはFc領域の有するADCC等のエフェクター機能は必要ではなく、従って、Fcγレセプターへの結合は不必要である。免疫原性や副作用の点から考えるとFcγレセプターへの結合は好ましくない可能性も考えられる(非特許文献5、6)。ヒト化抗IL-6レセプターIgG1抗体であるTOCILIZUMABはIL-6レセプターに特異的に結合し、その生物学的作用を中和することで、関節リウマチ等のIL-6が関連する疾患の治療薬として利用可能であり、Fcγレセプターへの結合は不必要である。
【0086】
Fcγレセプター非結合の最適化定常領域M14ΔGK、M11ΔGK、M17ΔGKの作製と評価
Fcγレセプターへの結合を低下させる方法としては、IgG抗体のアイソタイプをIgG1からIgG2あるいはIgG4アイソタイプに変える方法が考えられる(Ann Hematol. 1998 Jun;76(6):231-48.)。Fcγレセプターへの結合を完全に無くす方法としては、人工的な改変をFc領域に導入する方法が報告されている。例えば、抗CD3抗体や抗CD4抗体は抗体のエフェクター機能が副作用を惹起するため、Fc領域のFcγレセプター結合部分に野生型配列には存在しないアミノ酸変異(非特許文献3、7)を導入したFcγレセプター非結合型の抗CD3抗体や抗CD4抗体の臨床試験が現在行われている(非特許文献5、8)。また、IgG1のFcγR結合部位(EUナンバリング:233、234、235、236、327、330、331番目)をIgG2(EUナンバリング:233、234、235、236)およびIgG4(EUナンバリング:327、330、331番目)の配列にすることでFcγレセプター非結合型抗体を作製することが可能であると報告されている(特許文献3)。しかしながら、IgG1にこれらの変異を全て導入すると、天然には存在しないT-cellエピトープペプチドとなりうる9アミノ酸の新しいペプチド配列が出現し、免疫原性のリスクが高まることが考えられる。医薬品として開発する上では、免疫原性リスクは極力下げることが望ましい。
【0087】
上述の課題を解決するために、IgG2の定常領域への改変を検討した。IgG2の定常領域はFcγR結合部位のうちEUナンバリング:233、234、235、236が非結合型であるが、FcγR結合部位のうちEUナンバリング:327、330、331番目は非結合型のIgG4とは異なる配列であるため、EUナンバリング:327、330、331番目のアミノ酸をIgG4の配列に改変する必要がある(Eur J Immunol. 1999 Aug;29(8):2613-24におけるG2Δa)。しかしながら、IgG4はEUナンバリング:339番目のアミノ酸がアラニンであるのに対して、IgG2はスレオニンであるため、EUナンバリング:327、330、331番目のアミノ酸をIgG4の配列に改変しただけでは天然には存在しないT-cellエピトープペプチドとなりうる9アミノ酸の新しいペプチド配列が出現してしまい、免疫原性リスクが生じる。そこで、上述の改変に加えて新たにIgG2のEUナンバリング:339番目のスレオニンをアラニンに改変することで、新しいペプチド配列の出現を防ぐことが可能であることを見出した。
【0088】
これらの変異に加えて、実施例1で見出したIgG2の酸性条件下での安定性を向上させるIgG2 のEUナンバリングの397番目のメチオニンからバリンへの変異、実施例2で見出されたヒンジ領域のジスルフィド結合に由来するヘテロジェニティーを改善させるEUナンバリングの131番目のシステインからセリンへの変異、133番目のアルギニンからリジンへの変異、219番目のシステインからセリンへの変異を導入した。さらに131番目と133番目の変異導入に伴い天然には存在しないT-cellエピトープペプチドとなりうる9アミノ酸の新しいペプチド配列が出現してしまい免疫原性リスクが生じることから、EUナンバリングの137番目のグルタミン酸からグリシンへの変異、138番目のセリンからグリシンへの変異を導入することで、131番目から139番目付近のペプチド配列を天然に存在するヒト配列と同一のものとした。さらに、C末端に由来するヘテロジェニティーを低減させるためにH鎖C末端のEUナンバリングの446、447番目のグリシンおよびリジンを欠損させた。これらの変異を全て導入した定常領域配列をM14ΔGKとした(M14ΔGK:配列番号:5)。M14ΔGKはT-cellエピトープペプチドとなりうる9アミノ酸の新しいペプチド配列として219番目のシステインからセリンへの変異を導入した1ヶ所が存在するが、システインとセリンはアミノ酸配列としての性質が似ていることから免疫原性のリスクは極めて小さいと考えられ、TEPITOPEによる免疫原性予測においても免疫原性の変化は認められなかった。
【0089】
可変領域配列としてWTを有し、定常領域配列としてM14ΔGKを有するH鎖抗体配列(M14ΔGK:配列番号:5、WT-M14ΔGK:配列番号:19)の発現ベクターを参考例1に記された方法で作製し、H鎖としてWT-M14ΔGK、L鎖としてWTを用いて参考例1に記した方法で発現・精製した。
また、同様の方法で、IgG4定常領域にFcγレセプターへの結合を低下させるためにEUナンバリング:233、234、235、236番目に変異を導入し(Eur J Immunol. 1999 Aug;29(8):2613-24におけるG4Δb、この改変においては新しい非ヒト配列が生じるため免疫原性リスクが上昇する)、免疫原性リスクを低減させるために上述の改変に加えてヒンジ領域のジスルフィド結合様式をM14ΔGKと同じにするためにEUナンバリング:131、133、137、138、214、217、219、220、221、222番目に変異を導入し、さらに酸性条件下での安定性を向上させるためにEUナンバリング409番目に変異を導入し(実施例1)、C末端のヘテロジェニティーを低下させるためにEUナンバリング446番目と447番目を欠損させた(実施例3)WT-M11ΔGK(M11ΔGK:配列番号:8、WT-M11ΔGK:配列番号:21)の発現ベクターを作製した。
さらに、IgG1定常領域にFcγレセプターへの結合を低下させるためにEUナンバリング:233、234、235、236、327、330、331、339番目に変異を導入し(Eur J Immunol. 1999 Aug;29(8):2613-24におけるG1Δab)、さらにC末端のヘテロジェニティーを低下させるためにEUナンバリング446番目と447番目を欠損させた(実施例3)WT-M17ΔGK(M17ΔGK:配列番号:10、WT-M17ΔGK:配列番号:20)を作製した。
H鎖としてWT-M17ΔGKあるいはWT-M11ΔGK、L鎖としてWTを用いて実施例1に記した方法で発現・精製した。
【0090】
WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKのFcγレセプター結合性の評価
FcγRIへの結合評価は以下のとおりに行った。Biacore T100 を用いて、センサーチップに固定化したヒト由来 Fcγ receptor I (以下、FcγRI) と、アナライトとして用いたIgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M1ΔGK 7を相互作用させ、その結合量を比較した。ヒト由来の FcγRI としては Recombinant Human FcRIA / CD64 (R&D systems) を用い、サンプルとして IgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK を用いて測定を行った。アミンカップリング法によりセンサーチップ CM5 (BIACORE) に FcγRIを固定化した。最終的なhFcγRIの固定量は、約13000 RU(resonance units) であった。ランニングバッファーとしてHBS-EP+を用い、流速は20 μL/minとした。サンプルをHBS-EP+を用いて100 μg/mLの濃度に調整した。分析は、抗体溶液の10 μLをインジェクトする2分間を結合相とし、その後HBS-EP+に切り換え、4分間の解離相とした。解離相終了後、20 μLの5 mM水酸化ナトリウムをインジェクトすることにより、センサーチップを再生した。この結合・解離・再生を分析の1サイクルとし、各種抗体溶液をインジェクトし、センサーグラムを得た。アナライトはそれぞれ IgG4、IgG2、IgG1、M11、M14、M17 の順に流し、それを 2 回繰り返した。測定した結合量データを比較した結果を
図7に示した。その結果、結合量は IgG1 > IgG4 >> IgG2 = M11ΔGK = M14 ΔGK = M17ΔGK の順に減少しており、野生型のIgG2、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK は野生型のIgG1、IgG4 よりも FcγRIに対して結合が弱いことが明らかとなった。
【0091】
FcγRIIaへの結合評価は以下のとおりに行った。Biacore T100 を用いて、センサーチップに固定化したヒト由来 Fcγ receptor IIa (以下、FcγRIIa) と、アナライトとして用いたIgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGKを相互作用させ、その結合量を比較した。ヒト由来の FcγRIIa としては Recombinant Human FcRIIA/CD32a (R&D systems) を用い、サンプルとして IgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK を用いて測定を行った。アミンカップリング法によりセンサーチップ CM5 (BIACORE) に FcγRIIa を固定化した。最終的に約 3300 RU の FcγRIIa を固定化した。ランニングバッファーとしてHBS-EP+を用い、流速は20 μL/minとした。その後、ベースラインが安定になるまでランニングバッファーを流し、測定はベースラインが安定してから行った。固定化した FcγRIIa に対して、アナライトとして各 IgG アイソタイプ (IgG1, IgG2, IgG4) および変異を導入した抗体 (M11ΔGK, M14ΔGK, M17ΔGK) を相互作用させ、その結合量を観察した。ランニングバッファーには HBS-EP+ を用い、流速は 20 μL/min 、測定温度は 25℃とした。各 IgG および 改変体は 100 μg/mL に調整し、アナライトとして 20 μL 流し、固定化した FcγRIIa と相互作用させた。相互作用後は 200 μL のランニングバッファーを流すことで FcγRIIa からアナライトを解離させ、センサーチップを再生させた。アナライトはそれぞれ IgG4、IgG2、IgG1、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK の順に流し、それを 2 回繰り返した。測定した結合量データを比較した結果を
図8に示した。その結果、結合量は IgG1 > IgG2 = IgG4 > M11ΔGK = M14ΔGK = M17ΔGK の順に減少しており、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK は野生型のIgG1、IgG2、IgG4 のいずれよりも FcγRIIa に対して結合が弱いことが明らかとなった。
【0092】
FcγRIIbへの結合評価は以下のとおりに行った。Biacore T100 を用いて、センサーチップに固定化したヒト由来 Fcγ receptor IIb(以下、FcγRIIb) と、アナライトとして用いたIgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGKを相互作用させ、その結合量を比較した。ヒト由来の FcγRIIb としては Recombinant Human FcRIIB/C (R&D systems) を用い、サンプルとして IgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK を用いて測定を行った。アミンカップリング法によりセンサーチップ CM5 (BIACORE) に FcγRIIb を固定化した。最終的に約 4300RU の FcγRIIb を固定化した。その後、ベースラインが安定になるまでランニングバッファーを流し、測定はベースラインが安定してから行った。固定化した FcγRIIb に対して、アナライトとして各 IgG アイソタイプ (IgG1, IgG2, IgG4) および変異を導入した抗体 (M11ΔGK, M14ΔGK, M17ΔGK) を相互作用させ、その結合量を観察した。ランニングバッファーには HBS-EP+を用い、流速は 20 μL/min 、測定温度は 25°C とした。各 IgG および 改変体は 200 μg/mL に調整し、アナライトとして 20 μL 流し、固定化した FcγRIIb と相互作用させた。相互作用後は 200 μL のランニングバッファーを流すことで FcγRIIb からアナライトを解離させ、センサーチップを再生させた。アナライトはそれぞれ IgG4、IgG2、IgG1、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK の順に流し、それを 2 回繰り返した。測定した結合量データを比較した結果を
図9に示した。その結果、結合量は IgG4 > IgG1 > IgG2 > M11ΔGK = M14ΔGK = M17ΔGK の順に減少しており、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK は野生型のIgG1、IgG2、IgG4 のいずれよりも FcγRIIb に対して結合が弱いことが明らかとなった。
【0093】
FcγRIIIaへの結合評価は以下のとおりに行った。Biacore T100 を用いて、センサーチップに固定化したヒト由来 Fcγ receptor IIIa(以下、FcγRIIIa) と、アナライトとして用いたIgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGKを相互作用させ、その結合量を比較した。ヒト由来の FcγRIIIa としてはhFcγRIIIaV-His6(組み換えhFcγRIIIaV-His6:社内調製品)を用い、サンプルとして IgG1、IgG2、IgG4 、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK を用いて測定を行った。アミンカップリング法によりセンサーチップ CM5 (BIACORE) に FcγRIIIaを固定化した。最終的なhFcγRIIIaV-His6の固定量は、約8200 RU(resonance units) であった。ランニングバッファーとしてHBS-EP+を用い、流速は5 μL/minとした。サンプルを、HBS-EP+を用いて250 μg/mLの濃度に調整した。分析は、抗体溶液の10μLをインジェクトする2分間を結合相とし、その後HBS-EP+に切り換え、4分間の解離相とした。解離相終了後、20 μLの5 mM塩酸をインジェクトすることにより、センサーチップを再生した。この結合・解離・再生を分析の1サイクルとし、各種抗体溶液をインジェクトし、センサーグラムを得た。アナライトはそれぞれ IgG4、IgG2、IgG1、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK の順に流した。測定した結合量データを比較した結果を
図10に示した。その結果、結合量は IgG1 >> IgG4 > IgG2 > M17ΔGK > M11ΔGK = M14ΔGK の順に減少しており、M11ΔGK、M14ΔGK、M17ΔGK は野生型のIgG1、IgG2、IgG4 よりも FcγRIIIa に対して結合が弱いことが明らかとなった。また、Eur J Immunol. 1999 Aug;29(8):2613-24に報告されているG1Δabの変異を含むM17ΔGKと比較して、M11ΔGK、M14ΔGKのほうがさらに弱い結合であることが明らかとなった。
【0094】
以上より、WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKの各種Fcγレセプターへの結合は野生型のIgG1と比較して著しく低下していることが確認された。WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKを定常領域として使用することで、Fcγレセプターを介したAPCへの取り込みに由来する免疫原性リスクやADCC等のエフェクター機能に由来する副作用を回避することが可能であり、抗原を中和することが目的の抗体医薬の定常領域配列として有用である。
【0095】
WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKの高濃度安定性試験
WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKの高濃度製剤における安定性の評価を行った。WT-IgG1、WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKの精製抗体を20mM histidine chloride, 150mM NaCl, pH6.5の溶液に対して透析(EasySEP, TOMY)を行い、その後限外ろ過膜により濃縮し、高濃度安定性試験を行った。条件は以下のとおりである。
抗体:WT-IgG1、WT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGK
緩衝液:20mM histidine chloride, 150mM NaCl, pH6.5
濃度:61mg/mL
保存温度と期間:40℃-2W、40℃-1M、40℃-2M
会合体評価法:システム Waters Alliance
カラム G3000SWxl(TOSOH)
移動相 50mM sodium phosphate, 300mM KCl, pH7.0
流速・波長 0.5ml/min、220nm
サンプルを1/100に希釈して分析
【0096】
Initial(製剤調製直後)および各条件で保存後の製剤の会合体含有量を上述のゲルろ過クロマトグラフィー法により評価し、initialから会合体含量の変化量について
図11に示した。その結果、WT-IgG1と比較してWT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKの会合体増加量は低く、WTの会合体増加量の約1/2であった。また、
図12に示すようにFab断片の増加量に関しては、WT-IgG1とWT-M17ΔGKは同程度であったが、WT-M14ΔGKとWT-M11ΔGKはWTのFab断片増加量の約1/4であった。IgGタイプの抗体製剤の劣化経路として、WO 2003/039485に記されているように、会合体の生成とFab分解物の生成が主に挙げられる。WT-M14ΔGKとWT-M11ΔGKは、WT-IgG1と比較して会合体とFab断片の生成の2つの点で製剤的安定性に優れていることが見出された。これにより、IgG1定常領域では安定性が十分ではなく、医薬品として開発可能な高濃度溶液製剤が作れなかった抗体においても、定常領域としてWT-M14ΔGK、WT-M17ΔGK、WT-M11ΔGKを用いることがより高い安定性を有する高濃度溶液製剤が作製可能になると考えられた。
【0097】
特にM14ΔGKは、本来IgG2分子が有する酸性条件下での不安定性を向上させ、ヒンジ領域のジスルフィド結合に由来するヘテロジェニティーを改善し、Fcγレセプターに結合せず、T-cellエピトープペプチドとなりうる9アミノ酸の新しいペプチド配列を最小限に抑え、且つ、高濃度製剤における安定性がIgG1よりも優れた新規な定常領域配列として極めて有用であると考えられた。
【0098】
〔実施例5〕M31ΔGKの作製と評価
実施例4で作製したM14ΔGKに対し、EUナンバリング:330、331、339番目をIgG2の配列に改変したM31ΔGKを作製した(M31ΔGK:配列番号:7)。可変領域配列としてWTを有し、定常領域配列としてM31ΔGKを有するH鎖抗体配列(WT-M31ΔGK:配列番号:22)の発現ベクターを参考例1に記された方法で作製し、H鎖としてWT-M31ΔGK、L鎖としてWTを用いて、WT-M31ΔGKを参考例1に記した方法で発現・精製した。
WT-M31ΔGKに加えて、同時に発現・精製したWT-IgG2およびWT-M14ΔGKの陽イオン交換クロマトグラフィー分析を以下のとおりに行った。陽イオン交換クロマトグラフィー分析条件は以下のとおりであり、WT-IgG2、WT-M14ΔGK、WT-M31ΔGKのクロマトグラムを比較した。
カラム:ProPac WCX-10 (Dionex)
移動相:A: 25 mmol/L MES/NaOH, pH 6.1
B: 25 mmol/L MES/NaOH, 250 mmol/L NaCl, pH 6.1
流速:0.5 mL/min
グラジエント:0 %B(5 min)→(65 min)→100 %B→(1 min)
検出:280 nm
WT-IgG2、WT-M14ΔGK、WT-M31ΔGKの分析結果を
図13に示す。WT-IgG2は複数のピークが存在しているが、WT-M31ΔGKはWT-M14ΔGKと同様シングルピークとして溶出することが分かった。WT-M31ΔGKにおいてもIgG2のヒンジ領域のジスルフィド結合に由来するヘテロジェニティーは回避できることが示された。
【0099】
〔実施例6〕WT-M14の血漿中滞留性評価
ヒトにおける血漿中滞留性の予測方法
IgG分子の血漿中滞留性が長い(消失が遅い)のは、IgG分子のサルベージレセプターとして知られているFcRnが機能しているためである(Nat Rev Immunol. 2007 Sep;7(9):715-25)。ピノサイトーシスによってエンドソームに取り込まれたIgG分子は、エンドソーム内の酸性条件下(pH6.0付近)においてエンドソーム内に発現しているFcRnに結合する。FcRnに結合できなかったIgG分子はライソソームへ進みライソソームで分解されるが、FcRnへ結合したIgG分子は細胞表面へ移行し血漿中の中性条件下(pH7.4付近)においてFcRnから解離することで再び血漿中に戻る。
IgGタイプの抗体として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のアイソタイプが知られているが、これらのヒトでの血漿中半減期は、IgG1、IgG2が約36日、IgG3が約29日、IgG4が16日であることが報告されており(Nat Biotechnol. 2007 Dec;25(12):1369-72.)、IgG1およびIgG2の血漿中滞留性が最も長いと考えられている。一般に抗体医薬のアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG4であるが、これらのIgG抗体の薬物動態をさらに向上する方法として、IgGの定常領域の配列を改変することで上述のヒトFcRnへの結合性を向上させる方法が報告されている(J Biol Chem. 2007 Jan 19;282(3):1709-17、J Immunol. 2006 Jan 1;176(1):346-56)。
マウスFcRnとヒトFcRnでは種差が存在することから(Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Dec 5;103(49):18709-14)、定常領域の配列を改変したIgG抗体のヒトにおける血漿中滞留性を予測するためには、ヒトFcRnへの結合評価およびヒトFcRnトランスジェニックマウスにおいて血漿中滞留性を評価することが望ましいと考えられた(Int Immunol. 2006 Dec;18(12):1759-69)。
【0100】
ヒトFcRnへの結合評価
FcRnはFcRnとβ2-microglobulinの複合体である。公開されているヒトFcRn遺伝子配列(J. Exp. Med. 180 (6), 2377-2381 (1994))を元に、オリゴDNAプライマーを作製した。ヒトcDNA(Human Placenta Marathon-Ready cDNA, Clontech)を鋳型とし、作製したプライマーを用いPCR法により遺伝子全長をコードするDNA断片を調整した。得られたDNA断片を鋳型に、PCR法によりシグナル領域を含む細胞外領域(Met1-Leu290)をコードするDNA断片を増幅し、動物細胞発現ベクターへ挿入した(ヒトFcRnアミノ酸配列 配列番号:24)。同様に、公開されているヒトβ2-microglobulin遺伝子配列(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26), 16899-16903 (2002))を元に、オリゴDNAプライマーを作製した。ヒトcDNA(Hu-Placenta Marathon-Ready cDNA, CLONTECH)を鋳型とし、作製したプライマーを用いPCR法により遺伝子全長をコードするDNA断片を調製した。得られたDNA断片を鋳型に、PCR法によりシグナル領域を含むβ2-microglobulin全長(Met1-Met119)をコードするDNA断片を増幅し、動物細胞発現ベクターへ挿入した(ヒトβ2-microglobulinアミノ酸配列 配列番号:25)。
可溶型ヒトFcRnの発現は以下の手順で行った。調製したヒトFcRnおよびヒトβ2-microglobulinのプラスミドを、10 % Fetal Bovine Serum (Invitrogen)を用いたlipofection法により、ヒト胎児腎癌細胞由来HEK293H株(Invitrogen)の細胞へ導入した。得られた培養上清を回収した後、IgG Sepharose 6 Fast Flow(Amersham Biosciences)を用い、(J Immunol. 2002 Nov 1;169(9):5171-80.)の方法に従い精製を行った。その後、HiTrap Q HP(GE Healthcare)により精製を行った。
ヒトFcRnへの結合評価にはBiacore 3000 を用い、センサーチップに固定化したProtein Lあるいはウサギ抗ヒトIgG Kappa chain抗体へ結合させた抗体に、アナライトとしてヒトFcRnを相互作用させた際のヒトFcRnの結合量よりaffinity(KD)を算出した。具体的には、ランニングバッファーとして150mM NaClを含む50mM Na-phosphate buffer、pH6.0を用い、アミンカップリング法によりセンサーチップ CM5 (BIACORE) にProtein Lあるいはウサギ抗ヒトIgG Kappa chain抗体を固定化した。その後、抗体を0.02% Tween20を含むランニングバッファーで希釈してインジェクトしチップに抗体を結合させた後、ヒトFcRnをインジェクトし、ヒトFcRnの抗体への結合性を評価した。
Affinityの算出にはソフトウエア、BIAevaluationを用いた。得られたセンサーグラムより、ヒトFcRnインジェクト終了直前の抗体へのhFcRn結合量を求め、これをsteady state affinity法でフィッティングしてヒトFcRnに対する抗体のaffinityを算出した。
【0101】
ヒト FcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中滞留性の評価
ヒト FcRnトランスジェニックマウス(B6.mFcRn-/-.hFcRn Tg line 276 +/+ マウス、Jackson Laboratories)における体内動態の評価は以下の通り行った。抗体をマウスに1 mg/kgの投与量で静脈内に単回投与し適時採血を行った。採取した血液は直ちに4℃、15,000 rpmで15分間遠心分離し、血漿を得た。分離した血漿は、測定を実施するまで-20℃以下に設定された冷凍庫に保存した。血漿中濃度はELISA法を用いて測定した。
【0102】
WT-M14のヒトにおける血漿中滞留性の予測評価
WT-IgG1とWT-M14のヒトFcRnへの結合性の評価をBIAcoreにより行った結果、表1に示すとおり、WT-M14の結合性のほうが僅かにWT-IgG1よりも優れていた。
【表1】
しかしながら、WT-IgG1とWT-M14のヒトFcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中滞留性の評価を行った結果、
図14に示すとおり、WT-IgG1とWT-M14は同等の血漿中滞留性を示したことから、M14の定常領域はヒトにおいてもIgG1の定常領域と同等の血漿中滞留性を示すと考えられた。
【0103】
〔実施例7〕薬物動態を向上させたWT-M44、WT-M58、WT-M73の作製
WT-M58分子の作製
実施例6に示したとおり、WT-M14のヒト FcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中滞留性はWT-IgG1と同等であった。薬物動態を向上させる方法として、抗体の等電点を低下させる方法とFcRnへの結合性を増強する方法が知られているが、WT-M14の薬物動態を向上させることを目的に以下の改変を導入した。具体的には、実施例4においてWT-M14から作製したWT-M31ΔGKのEUナンバリング397番目のバリンをメチオニンに改変し、268番ヒスチジンをグルタミンへ改変し、355番アルギニンをグルタミンへ改変し、419番グルタミンをグルタミン酸へ改変した。これら4箇所の改変をWT-M31ΔGK に導入し、WT-M58(配列番号:26(アミノ酸配列))を作製した。発現ベクターの作製は、実施例1の方法で作製し、H鎖としてWT-M58を使用し、L鎖としてL(WT)を用いたWT-M58の発現・精製は実施例1に記載した方法で行った。
【0104】
WT-M73分子の作製
一方、IgG1に対して、EUナンバリング:434番目をアラニンに置換したWT-M44(配列番号:27(アミノ酸配列))を作製した。さらにM44に対してH鎖C末端のヘテロジェニティーを低減するために446番目のグリシンおよび447番目のリジンを欠損させたWT-M83(配列番号:58(アミノ酸配列))を作製した。また、WT-M58に対して、EUナンバリング:434番目をアラニンに置換したWT-M73(配列番号:28(アミノ酸配列))を作製した。
これらの発現ベクターの作製は、実施例1の方法で作製し、H鎖としてWT-M44あるいはWT-M58あるいはWT-M73を使用し、L鎖としてL(WT)を用いたWT-M44およびWT-M58およびWT-M73の発現・精製は実施例1に記載した方法で行った。
【0105】
WT-M44、WT-M58、WT-M73のヒトにおける血漿中滞留性の予測評価
WT-IgG1、WT-M44、WT-M58およびWT-M73のヒトFcRnへの結合性の評価をBIAcoreにより行った結果、表2に示すとおり、WT-M44、WT-M58およびWT-M73の結合性はWT-IgG1よりもそれぞれ約2.7倍、約1.4倍および約3.8倍程度優れていた。
【表2】
WT-IgG1、WT-M14およびWT-M58のヒトFcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中滞留性の評価を行った結果、
図24に示すとおり、WT-M58はWT-IgG1、WT-M14と比較して薬物動態の向上が確認された。さらにWT-IgG1、WT-M44、WT-M58およびWT-M73のヒトFcRnトランスジェニックマウスにおける血漿中滞留性の評価を行った結果、
図15に示すとおり、WT-M44、WT-M58およびWT-M73はいずれもWT-IgG1と比較して薬物動態の改善が確認され、その薬物動態の改善効果はヒトFcRnへの結合能と相関した。なかでもWT-M73に関しては、WT-IgG1と比較して28日後の血漿中濃度が約16倍改善していたことから、ヒトにおいてもM73の定常領域を有する抗体はIgG1の定常領域を有する抗体と比較して大幅に薬物動態が向上すると考えられた。
【0106】
〔実施例8〕様々な抗体における新規定常領域M14およびM58によるヘテロジェニティー低減効果
実施例4に示すとおり、抗IL-6レセプター抗体であるヒト化PM1抗体(WT)において、定常領域をIgG2からM14に変換することにより、IgG2のヒンジ領域に由来するヘテロジェニティーを低減できることが確認された。そこで、ヒト化PM1抗体以外IgG2タイプの抗体に対しても、定常領域をM14あるいはM58に変換することでヘテロジェニティーを低減できるかどうかを検討した。
ヒト化PM1抗体以外の抗体として、抗IL-6レセプター抗体であるF2H/L39(F2H/L39_VHアミノ酸配列 配列番号:29、F2H/L39 VLアミノ酸配列 配列番号:30)、抗IL-31レセプター抗体であるH0L0(H0L0_VHアミノ酸配列 配列番号:31、H0L0_VLアミノ酸配列 配列番号:32)、抗RANKL抗体であるDNS(DNS_VHアミノ酸配列 配列番号:33、DNS_VLアミノ酸配列 配列番号:34)、を使用した。それぞれの抗体に対して、定常領域をIgG1(配列番号:1)、IgG2(配列番号:2)、および、M14(配列番号:5)あるいはM58(配列番号:35)にしたものを作製した。
ヘテロジェニティーの評価方法として、陽イオン交換クロマトグラフィーによる評価を行った。作製した抗体のヘテロジェニティーの評価は、カラムとしてProPac WCX-10 (Dionex)を用い、移動相Aとして20mM Sodium Acetate, pH5.0、移動相Bとして20mM Sodium Acetate, 1M NaCl, pH5.0を使用し、適切な流速およびグラジエントを用いて実施した。陽イオン交換クロマトグラフィー(IEC)による評価を行った結果を
図16示した。
図16に示したとおり、抗IL-6レセプター抗体であるヒト化PM1抗体(WT)だけでなく、抗IL-6レセプター抗体であるF2H/L39、抗IL-31レセプター抗体であるH0L0、抗RANKL抗体であるDNSにおいても、定常領域をIgG1からIgG2に変換することでヘテロジェニティーが増大し、定常領域をM14あるいはM58に変換することでいずれの抗体においてもヘテロジェニティーを低減できることが確認された。これより、H鎖のCH1ドメインに存在するEUナンバリング131番目のシステインとH鎖のupper hingeに存在するEUナンバリング219番目のシステインをセリンに改変することにより、可変領域の抗体配列および抗原の種類に関わらず、天然型IgG2に由来するヘテロジェニティーを低減できることが示された。
【0107】
〔実施例9〕様々な抗体における新規定常領域M58による薬物動態改善効果
実施例7に示したとおり、抗IL-6レセプター抗体であるヒト化PM1抗体(WT)において、定常領域をIgG1からM58に変換することにより、ヒトFcRnへの結合性が向上し、ヒトFcRnトランスジェニックマウスにおいて薬物動態が向上することが見出された。そこで、ヒト化PM1抗体以外のIgG1抗体に対しても、定常領域をM58に変換することで薬物動態を向上できるかどうかを検討した。
ヒト化PM1抗体(WT)以外の抗体として、抗IL-31レセプター抗体であるH0L0(H0L0_VHアミノ酸配列 配列番号:31、H0L0_VLアミノ酸配列 配列番号:32)、抗RANKL抗体であるDNS(DNS_VHアミノ酸配列 配列番号:33、DNS_VLアミノ酸配列 配列番号:34)、を使用した。それぞれの抗体に対して、定常領域をIgG1(配列番号:1)およびM58(配列番号:35)にしたものを作製し、実施例6に示した方法でヒトFcRnへの結合性を評価した。その結果を表3に示した。
【表3】
表3に示したとおり、抗IL-31レセプター抗体であるH0L0、抗RANKL抗体であるDNSにおいても、定常領域をIgG1からM58に変換することで、抗IL-6レセプター抗体であるWT同様、ヒトFcRnへの結合性が向上することが確認された。これより、可変領域の抗体配列および抗原の種類に関わらず、定常領域をIgG1からM58に変換することでヒトにおける薬物動態が向上する可能性が示された。
【0108】
〔実施例10〕CH1ドメインのシステインの及ぼすヘテロジェニティーおよび安定性への影響
実施例2に示したとおり、天然型IgG2のヘテロジェニティーを低減することを目的にIgG2のヒンジ部分のシステインおよびCH1ドメインに存在するシステインの改変を行った。各種改変体の検討の結果、野生型IgG2定常領域配列のうち、H鎖のCH1ドメインに存在するEUナンバリング131番目のシステインと133番目のアルギニンをそれぞれセリンとリジンに改変し、H鎖のupper hingeに存在するEUナンバリング219番目のシステインをセリンに改変した定常領域であるSKSC(配列番号:38)によって、安定性を低下させることなくヘテロジェニティーを低減することが可能であるとことが見出された。
一方、ヘテロジェニティーを低減する方法として、H鎖のupper hingeに存在するEUナンバリング219番目のシステインのみをセリンに改変する方法、および、220番目のシステインのみをセリンに改変する方法が考えられる。IgG2のEUナンバリング219番目のシステインをセリンに改変した定常領域であるSC(配列番号:39)、および、IgG2のEUナンバリング220番目のシステインをセリンに改変した定常領域であるCS(配列番号:40)を定常領域と有するWT-SC(配列番号:41)およびWT-CS(配列番号:42)を作製し、WT-IgG1、WT-IgG2、WT-SKSCおよびWT-M58とのヘテロジェニティーおよび熱安定性の比較を行った。また、WT以外の抗体として、異なる抗IL-6レセプター抗体であるF2H/L39(F2H/L39_VHアミノ酸配列 配列番号:29、F2H/L39_VLアミノ酸配列 配列番号:30)に対して、定常領域をそれぞれIgG1(配列番号:1)、IgG2(配列番号:2)、SC(配列番号:39)、CS(配列番号:40)、SKSC(配列番号:38)、M14(配列番号:5)にしたF2H/L39-IgG1、F2H/L39-IgG2、F2H/L39-SC、F2H/L39-CS、F2H/L39-SKSC、F2H/L39-M14を作製し、ヘテロジェニティーの比較を行った。
WT-IgG1、WT-IgG2、WT-SC、WT-CS、WT-SKSC、WT-M58およびF2H/L39-IgG1、F2H/L39-IgG2、F2H/L39-SC、F2H/L39-CS、F2H/L39-SKSC、F2H/L39-M14のヘテロジェニティーの評価方法として、陽イオン交換クロマトグラフィーによる評価を行った。カラムとしてProPac WCX-10 (Dionex)を用い、移動相Aとして20mM Sodium Acetate, pH5.0、移動相Bとして20mM Sodium Acetate, 1M NaCl, pH5.0を使用し、適切な流量およびグラジエントを用いて実施した。陽イオン交換クロマトグラフィーによる評価を行った結果を
図17に示した。
その結果、
図17に示すとおり、WTとF2H/L39のいずれにおいても、定常領域をIgG1からIgG2に変換することでヘテロジェニティーが増大したが、定常領域をSKSCおよびM14あるいはM58に変換することでヘテロジェニティーが大幅に低減された。一方、定常領域をSCにした場合は定常領域をSKSCとした場合と同様にヘテロジェニティーが大幅に低減されたが、定常領域をCSにした場合は十分にヘテロジェニティーが改善しなかった。
一般に抗体を医薬品として開発するためにはヘテロジェニティーが少ないことに加えて、安定な製剤を調製するため高い安定性を有することが望ましい。そこで安定性の評価方法として、示走差査型熱量測定(DSC)による熱変性中間温度(Tm値)の評価を行った(VP-DSC、Microcal社製)。熱変性中間温度(Tm値)は安定性の指標であり、医薬品として安定な製剤を作製するためには、熱変性中間温度(Tm値)が高いことが望ましい(J Pharm Sci. 2008 Apr;97(4):1414-26.)。WT-IgG1、WT-IgG2、WT-SC、WT-CS、WT-SKSC、WT-M58を20mM sodium acetate, 150mM NaCl, pH6.0の溶液に対して透析(EasySEP, TOMY)を行い、約0.1mg/mLのタンパク質濃度で、40℃から100℃まで1℃/minの昇温速度でDSC測定を行った。得られたDSCの変性曲線を
図18に、Fab部分のTm値を以下の表4に示した。
【表4】
WT-IgG1およびWT-IgG2のTm値はほぼ同等で約94℃程度(IgG2のほうが約1℃低い)であったのに対して、WT-SCおよびWT-CSのTm値は約86℃であり、WT-IgG1およびWT-IgG2と比較して著しくTm値が低下していた。一方、WT-M58、WT-SKSCのTm値は約94℃であり、ほぼWT-IgG1およびWT-IgG2と同等であった。WT-SCおよびWT-CSは安定性がIgG2と比較して著しく低いことから、医薬品として開発するためには、CH1ドメインのシステインもセリンに改変したWT-SKSCおよびWT-M58のほうが好ましいと考えられた。WT-SCおよびWT-CSのTm値がIgG2と比較して大幅に低下した理由として、WT-SCおよびWT-CSはIgG2のジスルフィド結合パターンとは異なる様式を取っているためと考えられた。
また、DSC変性曲線を比較した場合、WT-IgG1、WT-SKSC、WT-M58のFab部分の変性ピークはシャープかつ単一であったのに対して、WT-SCおよびWT-CSはこれらと比較して、Fab部分の変性ピークがブロードであり、WT-IgG2はFab部分の変性ピークの低温側にショルダーピークが認められた。DSCの変性ピークは単一成分の場合は通常シャープな変性ピークを示すが、Tmが異なる複数成分(つまりヘテロジェニティー)が存在する場合、変性ピークはブロードになると考えられる。すなわち、WT-IgG2、WT-SCおよびWT-CSには複数成分存在し、WT-SCおよびWT-CSは、天然型IgG2のヘテロジェニティーが十分低減されていない可能性が示唆された。このことから、野生型IgG2のヘテロジェニティーはヒンジ部分のシステインのみならず、CH1ドメインに存在するシステインの両方が関与していると考えられ、DSC上のヘテロジェニティーを低減するためにはヒンジ部分のシステインのみならず、CH1ドメインのシステインも改変する必要があると考えられた。また、上述のとおり、ヒンジ部分のシステインのみならず、CH1ドメインのシステインを改変することで初めて野生型IgG2と同等の安定性を有することが可能である。
以上より、IgG2のヒンジ領域に由来するヘテロジェニティーを低減した定常領域として、ヒンジ部分のシステインのみをセリンに置換した定常領域であるSCとCSはヘテロジェニティーおよび安定性の観点で不十分であると考えられ、ヒンジ部分のシステインに加えて、CH1ドメインに存在するEUナンバリング131番目のシステインもセリンに置換することで初めてIgG2と同等の安定性を維持しつつヘテロジェニティーを大幅に低減することが可能であることが見出された。そのような定常領域としては、上述のM14、M31、M58、M73等が挙げられ、特にM58およびM73は薬物動態が向上し、安定性が高く、ヘテロジェニティーが低減されていることから、抗体医薬品の定常領域として非常に有用であると考えられた。
【0109】
〔実施例11〕PK/PDが改善した完全ヒト化IL-6レセプター抗体の作製
TOCILIZUMAB(H鎖 WT-IgG1(配列番号:12)、L鎖 WT(配列番号:15))に対して、PK/PDが改善した完全ヒト化IL-6レセプター抗体の作製するために以下に示す分子を作製した。完全ヒト化IL-6レセプター抗体として、定常領域に実施例7で作製したM73あるいはM83を使用したFv3-M73(H鎖 VH4-M73 配列番号:48、L鎖 VL1-kappa 配列番号:49)、Fv4-M73(H鎖 VH3-M73 配列番号:46、L鎖 VL3-kappa 配列番号:47)、Fv5-M83(H鎖 VH5-M83 配列番号:44、L鎖 VL5-kappa 配列番号:45)を作製した。
作製したFv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83のIL-6レセプターへのアフィニティーをTOCILIZUMABと比較した。これらの抗体のIL-6レセプターへのアフィニティーを測定した結果を表5に示した(方法は参考例参照)。また、BaF/gp130の中和活性をTOCILIZUMABおよびコントロール(参考例の公知の高親和性高IL-6レセプター抗体、US 2007/0280945におけるVQ8F11-21 hIgG1)と比較した(方法は参考例参照)。これらの抗体のBaF/gp130による生物活性を測定した結果を
図19(IL-6終濃度 300 ng/mL:TOCILIZUMAB、コントロール、Fv5-M83)および
図20(IL-6終濃度 30 ng/mL:TOCILIZUMAB、Fv3-M73、Fv4-M73)に示した。表5に示すとおり、Fv3-M73、Fv4-M73は、TOCILIZUMABと比較して2〜3倍程度強いアフィニティーを有し、Fv5-M83はTOCILIZUMABと比較して100倍程度強いアフィニティーを示した(Fv5-M83ではアフィニティーの測定が困難であったため、定常領域をIgG1にしたFv5-IgG1を用いてアフィニティーを測定した。定常領域は一般にアフィニティーに影響しないと考えられる)。また、
図20に示すとおりFv3-M73、Fv4-M73は、TOCILIZUMABと比較してやや強い活性を示し、
図19に示すとおりFv5-M83はTOCILIZUMABと比較して50%阻害濃度として100倍以上の極めて強い活性を有し、且つ、公知の高親和性高IL-6レセプター抗体であるコントロールと比較しても50%阻害濃度として約10倍程度高い中和活性を示した。
【表5】
TOCILIZUMAB、コントロール、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83の等電点を当業者公知の方法により等電点電気泳動により測定した結果、TOCILIZUMABの等電点は約9.3、コントロールは約8.4〜8.5、Fv3-M73は約5.7〜5.8、Fv4-M73は約5.6〜5.7、Fv5-M83は5.4〜5.5であり、いずれの抗体もTOCILIZUMABおよびコントロールと比較して等電点が大幅に低下した。また、可変領域VH/VLの理論等電点をGENETYX(GENETYX CORPORATION)により計算したところ、TOCILIZUMABの理論等電点は9.20、コントロールは7.79、Fv3-M73は5.49、Fv4-M73は5.01、Fv5-M83は4.27であり、いずれの抗体もTOCILIZUMABおよびコントロールと比較して等電点が大幅に低下した。よって、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はTOCILIZUMABおよびコントロールと比較して薬物動態が向上していると考えられた。
TOCILIZUMAB、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83の可変領域配列に存在するT-cellエピトープをTEPITOPE(Methods. 2004 Dec;34(4):468-75)を用いて解析を行った。その結果、TOCILIZUMABは多くの配列がHLAに結合するT-cellエピトープが存在すると予測されたが、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はT-cellエピトープに結合すると予測された配列が大幅に減少した。また、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はフレームワークにマウス配列が残存せず完全ヒト化されている。これらのことから、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83の免疫原性はTOCILIZUMABと比較して大幅に免疫原性リスクが低減されている可能性が示唆された。
【0110】
〔実施例12〕完全ヒト化IL-6レセプター抗体のサルPK/PD試験
TOCILIZUMAB、コントロール、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83をカニクイザルに1 mg/kgで静脈内に単回投与し血漿中濃度推移を評価した(方法は参考例参照)。TOCILIZUMAB、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83の静脈内投与後の血漿中濃度推移を
図21に示した。その結果、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はいずれもTOCILIZUMABおよびコントロールと比較してカニクイザルにおいて大幅に薬物動態が改善した。なかでも、Fv3-M73とFv4-M73の薬物動態はTOCILIZUMABと比較して大幅に改善した。
カニクイザル膜型IL-6レセプターがどの程度中和されているかの薬効を評価するために、抗体投与6日目から18日目(TOCILIZUMABに関しては3日目から10日目)までカニクイザルIL-6 5μg/kgを腰背部に連日皮下投与し、24時間後の各個体のCRP濃度を測定した(方法は参考例参照)。各抗体投与時のCRP濃度推移を
図22に示した。カニクイザル可溶型IL-6レセプターがどの程度中和されているかの薬効を評価するために、カニクイザル血漿中の非結合型のカニクイザル可溶型IL-6レセプター濃度を測定し、可溶型IL-6レセプターの中和率を計算した(方法は参考例参照)。各抗体投与時の可溶型IL-6レセプターの中和率の推移を
図23に示した。
Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はいずれもTOCILIZUMABおよび公知の高親和性抗IL-6レセプター抗体であるコントロールと比較してカニクイザル膜型IL-6レセプターをより持続的に中和しCRPの増加を長期間抑制した。また、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はいずれもTOCILIZUMABおよびコントロールと比較してカニクイザル可溶型IL-6レセプターをより持続的に中和し非結合型のカニクイザル可溶型IL-6レセプターの増加を長期間抑制した。これより膜型IL-6レセプターおよび可溶型IL-6レセプターの中和の持続性に関しては、Fv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はいずれもTOCILIZUMABおよびコントロールよりも優れていることが見出された。なかでもFv3-M73とFv4-M73の中和の持続性は極めて優れていた。一方、Fv5-M83のほうがFv3-M73とFv4-M73よりCRPおよび非結合型カニクイザル可溶型IL-6レセプターを低く抑制していることから、Fv5-M83は膜型IL-6レセプターおよび可溶型IL-6レセプターをFv3-M73とFv4-M73および公知の高親和性抗IL-6レセプター抗体であるコントロールよりも強力に中和していると考えられた。これはFv5-M83がコントロールよりもIL-6レセプターへのアフィニティーが強く、且つ、BaF/gp130における生物活性が強いことがカニクイザルのin vivoにおいて反映された結果であると考えられる。
これらのことから、TOCILIZUMABおよびコントロールと比較して、Fv3-M73とFv4-M73は抗IL-6レセプター中和抗体として作用の持続性が極めて優れており投与頻度および投与量を大幅に低減することが可能であり、また、Fv5-M83は抗IL-6レセプター中和抗体として作用の強さに極めて優れており、また作用の持続性にも優れていることが見出された。よってFv3-M73、Fv4-M73、およびFv5-M83はIL-6アンタゴニストとしての医薬品として有用であると考えられる。
【0111】
〔参考例〕
組み換えカニクイザル可溶型IL-6レセプター(cIL-6R)の調製
公開されているアカゲザルIL-6レセプター遺伝子配列 (Birney et al, Ensembl 2006, Nucleic Acids Res. 2006 Jan 1;34(Database issue):D556-61.) を元にオリゴDNAプライマーを作製し、カニクイザル膵臓から調製されたcDNAを鋳型とし、プライマーを用いて、PCR法によりカニクイザルIL-6レセプター遺伝子全長をコードするDNA断片を調製した。得られたDNA断片を動物細胞発現ベクターへ挿入し、これを用いてCHO定常発現株(cyno.sIL-6R産生CHO細胞)を作製した。cyno.sIL-6R産生CHO細胞の培養液をHisTrapカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス) で精製後、Amicon Ultra-15 Ultracel-10k(Millipore)を用いて濃縮し、Superdex200pg16/60ゲルろ過カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス)でさらに精製を行い、可溶型カニクイザルIL-6レセプター(以下、cIL-6R)の最終精製品とした。
【0112】
組み換えカニクイザルIL-6(cIL-6)の調製
カニクイザルIL-6は以下のように調製した。SWISSPROT Accession No.P79341に登録されている212アミノ酸をコードする塩基配列を作成し、動物細胞発現ベクターにクローニングし、CHO細胞に導入することで定常発現細胞株を作製した(cyno.IL-6産生CHO細胞)。cyno.IL-6産生CHO細胞の培養液をSP-Sepharose/FFカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス) で精製後、Amicon Ultra-15 Ultracel-5k(Millipore)を用いて濃縮し、Superdex75pg26/60ゲルろ過カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス)でさらに精製を行い、Amicon Ultra-15 Ultracel-5k(Millipore)を用いて濃縮し、カニクイザルIL-6(以下、cIL-6)の最終精製品とした。
【0113】
公知高親和性抗IL-6レセプター抗体の作製
公知の高親和性抗IL-6レセプター抗体として、US 2007/0280945 A1に記載されている高親和性抗IL-6レセプター抗体であるVQ8F11-21 hIgG1(US 2007/0280945 A1, H鎖アミノ酸配列:配列番号:19、L鎖アミノ酸配列:配列番号:27)を発現させるため、動物細胞発現用ベクターを構築した。抗体可変領域については、合成オリゴDNAを組み合わせたPCR法(assembly PCR)により作製し、定常領域についてはIgG1を使用した。Assembly PCR法により抗体可変領域と定常領域を結合させ、動物発現用ベクターへ挿入し、目的のH鎖発現ベクターおよびL鎖発現ベクターを作製した。得られた発現ベクターの塩基配列は当業者公知の方法で決定した。作製した発現ベクターを用い、発現・精製を行った。発現・精製は実施例1に記載した方法で行い、高親和性抗IL-6レセプター抗体(以降、コントロール、と記す)を得た。
【0114】
ヒトgp130発現BaF3細胞(BaF/gp130)による生物活性評価
IL-6/IL-6レセプター依存性増殖を示すBaF3/gp130を用いて、IL-6レセプター中和活性を評価した。BaF3/gp130を10% FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄した後に、5x10
4 cells/mLとなるように600 ng/mLないしは60 ng/mLのhuman interleukin-6 (TORAY)(終濃度は300 ng/mLないしは30 ng/mL)、適当量の組換え可溶性ヒトIL-6レセプター(SR344)および10% FBSを含むRPMI1640培地に懸濁し、96 well-plate (CORNING)の各wellに50μLずつ分注した。次に、精製した抗体を10% FBSを含むRPMI1640に希釈して、各wellに50μLずつ混合した。37℃、5% CO
2条件下で、3日間培養し、PBSで2倍に希釈したWST-8試薬(Cell Counting Kit-8、株式会社同仁化学研究所)を20μL/wellで加え、直後にSUNRISE CLASSIC(TECAN)を用いて450 nmの吸光度(参照波長620 nm)を測定した。2時間培養した後に、再度450 nmの吸光度(参照波長620 nm)を測定し、2時間の吸光度変化を指標にIL-6レセプター中和活性を評価した。
【0115】
BiacoreによるIL-6レセプターへの結合評価
Biacore T100 (GE Healthcare) を用いて、抗原抗体反応の速度論的解析を行った。センサーチップ上にアミンカップリング法でanti-IgG(γ-chain specific)F(ab’)
2を適当量固定化し、次にpH7.4において目的の抗体を結合させ、さらにpH7.4において種々の濃度に調整したIL-6レセプターであるSR344をアナライトとして流し、抗体とSR344の相互作用を測定した。測定は全て37℃で実施した。測定で得られたセンサーグラムから、カイネティクスパラメーターである結合速度定数 k
a (1/Ms)、および解離速度定数 k
d (1/s) を算出し、その値をもとに K
D (M) を算出した。各パラメーターの算出には Biacore T100 Evaluation Software (GE Healthcare)を用いた。
【0116】
サルPK/PD試験による抗体血漿中濃度、CRP濃度、非結合型可溶型IL-6レセプターの測定
カニクイザル血漿中濃度測定はELISA法にて当業者公知の方法で測定した。
CRP濃度はサイアスR CRP (関東化学株式会社)にて、自動分析装置(TBA-120FR、東芝メディカルシステムズ株式会社)を用いて測定した。
カニクイザル血漿中の非結合型のカニクイザル可溶型IL-6レセプター濃度を以下の通り測定した。カニクイザルの血漿30μLを0.22 μmのフィルターカップ(Millipore)において乾燥させた適量のrProtein A Sepharose Fast Flow (GE Healthcare)樹脂に添加することで血漿中に存在する全てのIgG型抗体(カニクイザルIgG、抗ヒトIL-6レセプター抗体および抗ヒトIL-6レセプター抗体-カニクイザル可溶型IL-6レセプター複合体)をProteinAに吸着させた。その後、高速遠心機でスピンダウンし、パス溶液を回収した。パス溶液にはproteinAに結合した抗ヒトIL-6レセプター抗体-カニクイザル可溶型IL-6レセプター複合体は含まれないため、proteinAパス溶液中のカニクイザル可溶型IL-6レセプター濃度を測定することによって、非結合型の可溶型IL-6レセプター濃度を測定可能である。カニクイザル可溶型IL-6レセプター濃度は、上記で作製したカニクイザル可溶型IL-6レセプター(cIL-6R)をスタンダードに用いて、ヒトIL-6レセプター濃度を測定する当業者公知の方法で測定した。可溶型IL-6レセプターの中和率は以下の計算式によって計算した。
(抗体投与後の非結合型の可溶性IL-6レセプター濃度÷抗体投与前の可溶性IL-6レセプター濃度)×100