【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]ヒト線維芽培養細胞のヒアルロン酸産生に対するタウリンの作用
ヒト線維芽細胞(理化学研究所バイオリソースセンター)を100mmディッシュ(AGCテクノグラス)にて、10%仔ウシ血清(SAFCバイオサイエンス)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium:DMEM)にて培養した。ディッシュ当たりの細胞占有率が90%以上に達した時点で、0.25%トリプシンおよび0.02%EDTAを含むリン酸緩衝液を用いて細胞を剥離し、48ウェルマルチプレートまたは60mmディッシュ(AGCテクノグラス)にそれぞれ1x10
4細胞/ウェルまたは3x10
4細胞/ディッシュの細胞数で播種した。ウェルまたはディッシュ当たりの細胞占有率が90%以上に達した時点で、滅菌蒸留水に溶解したタウリン(最終濃度6.25〜50mM)、またはタウリンと5α-ジヒドロテストステロン(5α-DHT)(最終濃度20μM)を培養液に添加し、24時間培養した。
【0026】
細胞からの全RNAの抽出は、細胞にアイソジェン(ニッポンジーン)を添加して細胞を溶解することにより実施した。細胞溶解液にクロロホルムを添加して混和し、遠心分離(10,000回転/分にて10分)後、水層を回収し同用量のイソプロパノールを添加して混和した。遠心分離(10,000回転/分にて10分)後、上清を除去し、沈殿したRNAを回収した。RNAには75%エタノールを添加して混和後、上清を除去し、RNAを風乾させた。抽出した全RNAは、核酸分解酵素を含有しない滅菌蒸留水に溶解し、260nmにおける吸光度を測定することにより、RNA量を定量した。
【0027】
培養液中に分泌されたヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ELISAキット(生化学バイオビジネス)により定量した。すなわち、培養液中のヒアルロン酸を、キットのマイクロプレート上に固相化されたヒアルロン酸結合タンパク質(HABP)に結合させた後、ペルオキシダーゼ結合HABPを添加して反応させ、次いでtetramethylbenzidineおよび過酸化水素を加え、450nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。ヒアルロン酸量は標準ヒアルロン酸溶液を用いて同時に作成した検量線より算出した。
【0028】
細胞におけるヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現はリアルタイムPCR(RT-PCR)にて測定した。逆転写反応はQuantiTect
R Reverse Transcription Kit(QIAGEN)を用い、添付の操作法に従い、一本鎖cDNAを合成した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、一本鎖cDNAを鋳型とし、ヒトヒアルロン酸合成酵素2(HAS-2)、ヒトI型コラーゲンα1およびヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なプライマーを用いて実施した。反応終了後、GAPDHを内標準遺伝子として各遺伝子発現量を標準化した。その後、未処理群に対するタウリン処理群の相対的な遺伝子発現量を算出した。なお、PCRに使用したプライマーは以下の通りである:
ヒトHAS-2(Accession No. NM_005328.2)センスプライマー:5’-GACAGGCATCTCACGAACCG-3’/配列番号:1
ヒトHAS-2(Accession No. NM_005328.2)アンチセンスプライマー:5’-CAACGGGTCTGCTGGTTTAGC-3’/配列番号:2
ヒトコラーゲン-Iα1(Accession No. NM_000088.3)センスプライマー:5’-CTCCAGGGCTCCAACGAGAT-3’/配列番号:3
ヒトコラーゲン-Iα1(Accession No. NM_000088.3)アンチセンスプライマー:5’-CAGCCATCGACAGTGACG-3’/配列番号:4
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)センスプライマー:5’-CATCCCTGCCTCTACTGGCG-3’/配列番号:5
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)アンチセンスプライマー:5’-AGCTTCCCGTTCAGCTCAGG-3’/配列番号:6
その結果、ヒト線維芽培養細胞においてタウリンは濃度依存的にヒアルロン酸産生量を増加させ(
図1)、同時にヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現も増加させた(
図2)。一方、タウリンはヒト線維芽培養細胞のI型コラーゲンα1遺伝子発現には影響を与えなかった(
図3)。また、ヒト線維芽培養細胞のヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現は男性ホルモンである5α-ジヒドロテストステロン(5α-DHT)により有意に低下したが、タウリンは濃度依存的にHAS-2遺伝子発現を回復させた(
図4)。
【0029】
[実施例2]ヒト表皮角化細胞のヒアルロン酸産生に対するタウリンの作用
ヒト表皮角化細胞(コージンバイオ)を60mmディッシュ(AGCテクノグラス)にて、正常ヒト表皮角化細胞用無血清培地(コージンバイオ)を用いて培養した。ディッシュ当たりの細胞占有率が80%以上に達した時点で、EDTAトリプシン液(コージンバイオ)、D-PBS(-)(コージンバイオ)およびトリプシンインヒビター液(コージンバイオ)を用いて細胞を剥離し、35mmディッシュ(AGCテクノグラス)に1x10
5細胞/ディッシュで播種した。ディッシュ当たりの細胞占有率が80%以上に達した時点で、タウリン(最終濃度が6.25〜50mM)を含む無血清基本培地にて24時間培養した。
【0030】
細胞からの全RNAの抽出は、細胞にアイソジェン(ニッポンジーン)を添加して細胞を溶解することにより実施した。細胞溶解液にクロロホルムを添加して混和し、遠心分離(10,000回転/分にて10分)後、水層を回収し同用量のイソプロパノールを添加して混和した。遠心分離(10,000回転/分にて10分)後、上清を除去し、沈殿したRNAを回収した。RNAには75%エタノールを添加して混和後、上清を除去しRNAを風乾させた。抽出した全RNAは、核酸分解酵素を含有しない滅菌蒸留水に溶解し、260nmにおける吸光度を測定することにより、RNA量を定量した。
【0031】
培養液中に分泌されたヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ELISAキット(生化学バイオビジネス)により定量した。すなわち、培養液中のヒアルロン酸を、キットのマイクロプレート上に固相化されたヒアルロン酸結合タンパク質(HABP)に結合させた後、ペルオキシダーゼ結合HABPを添加して反応させ、次いでtetramethylbenzidineおよび過酸化水素を加え、450nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。ヒアルロン酸量は標準ヒアルロン酸溶液を用いて同時に作成した検量線より算出した。
【0032】
細胞におけるヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現は、リアルタイムPCR(RT-PCR)にて測定した。逆転写反応においては、QuantiTect
R Reverse Transcription Kit(QIAGEN)を用い、添付の操作法に従い、一本鎖cDNAを合成した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、一本鎖cDNAを鋳型とし、ヒトヒアルロン酸合成酵素2(HAS-2)およびヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なプライマーを用いて実施した。反応終了後、GAPDHを内標準遺伝子として各遺伝子発現量を標準化した。その後、未処理群に対するタウリン処理群の相対的な遺伝子発現量を算出した。なお、PCRに使用したプライマーは以下の通りである:
ヒトHAS-2(Accession No. NM_005328.2)センスプライマー:5’-GACAGGCATCTCACGAACCG-3’/配列番号:7
ヒトHAS-2(Accession No. NM_005328.2)アンチセンスプライマー:5’-CAACGGGTCTGCTGGTTTAGC-3’/配列番号:8
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)センスプライマー:5’-CATCCCTGCCTCTACTGGCG-3’/配列番号:9
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)アンチセンスプライマー:5’-AGCTTCCCGTTCAGCTCAGG-3’/配列番号:10
その結果、ヒト表皮角化細胞において、タウリンはヒアルロン酸産生量を増加させ(
図5)、同時にヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現も増加させた(
図6)。
【0033】
[実施例3]ヒト関節滑膜細胞のヒアルロン酸産生に対するタウリンの作用
ヒト関節滑膜細胞(大日本製薬)を100mmディッシュ(AGCテクノグラス)にて、10%仔ウシ血清(SAFCバイオサイエンス)含有ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium:DMEM)にて培養した。ディッシュ当たりの細胞占有率が90%以上に達した時点で、0.25%トリプシンおよび0.02%EDTAを含むリン酸緩衝液を用いて細胞を剥離し、48ウエルマルチプレートまたは60mmディッシュ(AGCテクノグラス)にそれぞれ1x10
4細胞/ディッシュまたは3x10
4細胞/ディッシュの細胞数で播種した。ウエルまたはディッシュ当たりの細胞占有率が90%以上に達した時点で、滅菌蒸留水に溶解したタウリンを最終濃度が6.25〜50mMになるように培養液に添加し、24時間培養した。
【0034】
細胞からの全RNAの抽出は、細胞にアイソジェン(ニッポンジーン)を添加して細胞を溶解することにより実施した。細胞溶解液にクロロホルムを添加して混和し、遠心分離(10,000回転/分にて10分)後、水層を回収し同用量のイソプロパノールを添加して混和した。遠心分離(10,000回転/分にて10分)後、上清を除去し、沈殿したRNAを回収した。RNAには75%エタノールを添加して混和後、上清を除去しRNAを風乾させた。抽出した全RNAは、核酸分解酵素を含有しない滅菌蒸留水に溶解し、260nmにおける吸光度を測定することにより、RNA量を定量した。
【0035】
培養液中に分泌されたヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ELISAキット(生化学バイオビジネス)により定量した。すなわち、培養液中のヒアルロン酸を、キットのマイクロプレート上に固相化されたヒアルロン酸結合タンパク質(HABP)に結合させた後、ペルオキシダーゼ結合HABPを添加して反応させ、次いでtetramethylbenzidineおよび過酸化水素を加え、450nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。ヒアルロン酸量は標準ヒアルロン酸溶液を用いて同時に作成した検量線より算出した。
【0036】
細胞におけるヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現は、リアルタイムPCR(RT-PCR)にて測定した。逆転写反応においては、QuantiTect
R Reverse Transcription Kit(QIAGEN)を用い、添付の操作法に従い、一本鎖cDNAを合成した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、一本鎖cDNAを鋳型とし、ヒトヒアルロン酸合成酵素2(HAS-2)およびヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なプライマーを用いて実施した。反応終了後、GAPDHを内標準遺伝子として各遺伝子発現量を標準化した。その後、未処理群に対するタウリン処理群の相対的な遺伝子発現量を算出した。なお、PCRに使用したプライマーは以下の通りである:
ヒトHAS-2(Accession No. NM_005328.2)センスプライマー:5’-GACAGGCATCTCACGAACCG-3’/配列番号:11
ヒトHAS-2(Accession No. NM_005328.2)アンチセンスプライマー:5’-CAACGGGTCTGCTGGTTTAGC-3’/配列番号:12
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)センスプライマー:5’-CATCCCTGCCTCTACTGGCG-3’/配列番号:13
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)アンチセンスプライマー:5’-AGCTTCCCGTTCAGCTCAGG-3’/配列番号:14
その結果、ヒト関節滑膜細胞において、タウリンはヒアルロン酸産生量を増加させ(
図7)、同時にヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)の遺伝子発現も増加させた(
図8)。
【0037】
[実施例4]マウス皮膚ヒアルロン酸量に対するタウリン投与の作用
5週齢のHR-1マウス(日本エスエルシー)を順化後、8週齢から24週齢まで、タウリンを3%溶解した飲水を与えた。対照群には精製水のみを与えた。投与終了後、マウスの背部皮膚を摘出し、組織切片を作製した。次いで組織切片とビオチン標識ヒアルロン酸結合性タンパク質(HABP)(2ng/mlリン酸緩衝液)(生化学バイオビジネス)を反応させた後、リン酸緩衝液にて1000倍希釈したストレプトアビジン-FITC(fluorescein isothiocyanate)(シグマアルドリッチ)を添加し、ヒアルロン酸に結合したHABPを蛍光染色した。組織切片を5から8の計測視野に分け、それぞれの視野における表皮と真皮の単位面積(μm
2)当たりの蛍光強度をLumina Vision(三谷商事)により測定した。真皮の蛍光強度に対する表皮の蛍光強度の比を算出して表皮におけるヒアルロン酸量とし、タウリン投与群と非投与群で比較した。
【0038】
その結果、タウリンを投与マウスの表皮において、タウリン非投与対照マウスの表皮と比較し、有意なヒアルロン酸の増加が認められた(
図9)。