(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)の構造を示す正面図である。
本実施形態では、DBFを行うレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)の配置構成を示す。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置の構造(立体構造)であって、(A)は
図1に示す鎖線囲み部分の範囲3000の正面図であり、(B)は正面図において横方向に沿う切断線I−Iにおける横方向断面図であり、(C)は正面図において横方向と直交する縦方向に沿う切断線II−IIにおける縦方向断面図であり、(D)は横方向断面図において金属プレート22を高さ方向にIII矢視した裏面図である。
【0029】
なお、この例では、N(Nは複数値)列の受信アンテナ12−1〜12−Nの構造を示してあるが、送信アンテナ11についても、寸法は異なり得るが、いずれかの受信アンテナ12−1〜12−N(つまり、1列分の構造)と同様な構造を用いることができる。
【0030】
ここで、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置は、例えば、自動車などの車両の前方部に、アンテナ装置の横方向が車両の横方向(車両が地面に存在するときにおける略水平(左右)方向)となり且つアンテナ装置の縦方向が車両の縦方向(車両が地面に存在するときにおける略垂直(上下)方向)となるように設置される。
【0031】
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)の構造について説明する。
図1に示すように、レーダアンテナ1は、複数のアンテナ素子を縦方向に沿って配列する1列の送信アンテナ11と、複数のアンテナ素子を縦方向に沿って配列し、横方向にN列設けられた受信アンテナ12−1〜12−Nを備える。
各受信アンテナ12−1〜12−Nは、等しい受信アンテナの横方向の間隔(ホーン33、矩形導波管31、スロット32の横方向の間隔)Pで横方向に並べて配置される。
【0032】
また、1列分の送信アンテナ11は、縦方向に等しい間隔Qtで並べられるアンテナ素子の行数(縦方向のホーン51の並びの数)として、縦方向に12行を有している。
また、1列分の受信アンテナ12−1〜12−Nは、縦方向に等しい間隔Qrで並べられるアンテナ素子の行数(縦方向のホーン33の並びの数)として、縦方向に12行を有している。
【0033】
図2に示すように、レーダアンテナ1は、アンテナ板21と、アンテナ板21の裏面側に配設された金属プレート22と、を備える。
アンテナ板21は、裏面側に開口するようにして縦方向に延設された断面略矩形の導波管溝34と、導波管溝34の表面側に形成され、アンテナ板21の表面に開口するホーン33と、ホーン33と導波管溝34とに連通するスロット32と、を有する。
【0034】
アンテナ板21の裏面には、タップ穴23と、タップ穴23の縦方向両側へと延設されたチョーク溝24と、が形成されている。金属プレート22は、タップ穴23に螺合されたボルト25によってアンテナ板21の裏面に固定されている。
導波管溝34は、金属プレート22によって閉塞され、これにより断面略矩形の矩形導波管31が形成されている。矩形導波管31(導波管溝34)は、縦方向に延設され、横方向に複数間隔をおいて設けられている。
また、ホーン33およびスロット32は、矩形導波管31と対応して縦方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0035】
なお、本実施形態では、矩形の形状を有する導波管(矩形導波管31)を用いた場合を示すが、他の形状を有する導波管が用いられてもよい。
【0036】
本実施形態では、ホーン33として、段付きの角錐ホーンを用いている。
具体的には、ホーン33は、表面側の開口部に対して裏面側の底部が縮小するような角錐状に形成されている。開口部、底部は、横方向に沿う長辺と、縦方向に沿う短辺とを有する略矩形に形成されている。開口部の長辺、短辺は、それぞれ底部の長辺、短辺より大きく設定されている。
スロット32も、断面略矩形に形成されている。スロット32の横方向に沿う長辺は、ホーン33の底部の長辺より小さく設定されている。また、スロット32の縦方向に沿う短辺は、ホーン33の底部の短辺と略等しく設定されている。そして、ホーン33の底部には、スロット32の横方向両側にアンテナ板21の表面および裏面に略平行な平面を有する段部が形成されている。
【0037】
このように、本実施形態では、各受信アンテナ12−1〜12−Nは、一本の矩形導波管31の長辺面に導波管の長さ方向に垂直なスロット32を持ち、各スロット32には各々ホーン33が設けられる(本実施形態では、装加される)。
これらはアンテナ板21に一体加工され、ホーン33の開口側(放射面)に対して導波管溝34側の面(裏面)に金属プレート22を合わせてボルト25で密着固定し、矩形導波管31の中空構造を成す。
また、
図2(D)の裏面図は、アンテナ板21を裏面から見たものであり、ボルト25を通すタップ穴23、チョーク溝24も同じく一体加工で設けられる。
【0038】
また、
図2には、ホーン33の開口部における長辺の長さとなる横幅(開口幅)A、開口部における短辺の長さとなる縦幅B、受信アンテナ12−1〜12−Nの横方向の間隔(ホーン33、矩形導波管31、スロット32の横方向の間隔)P、受信アンテナ12−1〜12−Nの縦方向の間隔(ホーン33、スロット32の縦方向の間隔)Qr、矩形導波管31の長辺幅(本実施形態では、横方向の幅)Waを示す。
【0039】
裏面では、間隔2λに対して矩形導波管31の長辺幅(横幅)Waは通常1λ未満であるため、隣り合う矩形導波管31の間に幅広い隔壁35が残る。
例えば、76GHz帯では約4mmの余地があり、径3mm程度のボルト25を要所に配して密着を得ることができる。
但し、矩形導波管31の長辺幅(横幅)Waについては、他の構成もあり得る。
【0040】
更に、チョーク溝24を併用すれば、少ないボルト数でも確実に漏れ込みを阻止することができる。
また、本実施形態では、組み付けボルト25は放射面の裏側に設置され、装置外周のチョーク溝やボルトしろのための外枠構造も不要であり、装置面積は放射に要する面積とほぼ等しい最小寸法にすることができる。
本実施形態に係るレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)は、アンテナ性能上も、DBFを行うレーダ装置に適した特長を持つ。
【0041】
次に、各種の寸法について説明する。
送信アンテナ11のホーン51の縦方向の間隔Qtと各受信アンテナ12−1〜12−Nのホーン33の縦方向の間隔Qrとは等しく(Qt=Qr=Qとする)、このホーンの縦方向の間隔Qを、矩形導波管31の管内波長λgと等しくすることにより各ホーンが同位相で給電される。
ここで、矩形導波管31の管内波長λgは、矩形導波管31の長辺幅Waに対して式(1)で表される。
【0042】
λg=(1/λ
2−1/4Wa
2)
−1/2 ・・・(1)
【0043】
λは、使用周波数の自由空間波長であり、車載用のミリ波レーダに用いられる76GHz帯では76.5GHzで3.92mmである。Wa=3.6mmである場合には、λg=4.67mmであり、ホーンの縦幅Bは4mm程度になる。
なお、本実施形態では、送信アンテナ11のホーン51の横幅(開口幅)Cは、3λ以上の値であるが、他の例として、受信アンテナ12−1〜12−Nのホーン33の横幅(開口幅)Aと同等或いはそれ以上(且つ3λ未満)である構成が用いられてもよい。
【0044】
レーダ性能として、例えば、自走車線或いは隣接車線の先行車を分離して検出することができる高分解能が求められる。このためには、走査ビーム幅はできるだけ鋭俊なものが望ましい。
DBFビーム幅は、概ね受信アンテナ12−1〜12−Nの列数Nとその間隔Pの積に反比例するが、受信アンテナの列数(N)が増えるに伴って受信器、信号変換器など、受信系の規模が増大し、装置が高価格、大型になる。
【0045】
一方、アンテナ間隔が大きすぎると、グレーティングローブが障害となる。
アンテナ面に真直方向を基準(0°)に、レーダの視野角(検知範囲)を左右ω°として、グレーティングローブは、sin
−1[ιλ/P±sin(ω)]の範囲に現れる(ι=1,2,・・・)。
ω=10°の場合は、間隔Pが2.88λより大きいと視野角内にグレーティングローブが現れるため、走査ビームと判別できず到来波の方位が特定できなくなる。
【0046】
このため、車載用のレーダ装置では、受信アンテナ12−1〜12−Nの間隔Pを2λ前後(つまり、約2λ)に選ぶことが適切と考えられる。
例えば、P=2λである場合には、グレーティングローブは19〜42°および56〜90°の範囲に現れる。この方向から強い到来波があると正面方向にあるものと誤検知されるため、レーダアンテナの送受信指向特性において、グレーティングローブの出現角度範囲のサイドローブレベルを低抑する必要がある。
【0047】
図3は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置のホーン(本実施形態では、段付きの角錐ホーン)33の構造および原理を示す説明図である。
図3は、(A)はホーン33の開口面の電界図であり、(B)はホーン33の正面図(放射面)であり、(C)はホーン33の正面図において横方向に沿う切断線IV−IVにおけるホーン33の横方向断面図である。
ここで、
図3(C)のホーン33の横方向断面図では、各モード(TE10モード電界、TE30モード電界)の伝搬、発生を示してある。また、矩形導波管31の長辺幅(本実施形態では、横方向の幅)Wa、ホーン33の底部の横方向の幅F、ホーン33の奥行き(本実施形態では、高さ方向の長さ)Hを示してある。
【0048】
ホーン33は、スロット32側の底部が長辺方向(本実施形態では、横方向)に1.5λ以上の横幅Fを持ち、スロット32の長辺寸法(本実施形態では、矩形導波管31の長辺幅Waと等しい寸法)から段状に不連続に広げられた形状を有し、これによって発生する高次モードを用いて放射特性を修整するものである。
通常、導波管は単一のモードのみが伝送されるように寸法を決める。矩形導波管31では、長辺がλ/2以上1λ未満、短辺がλ/2未満である場合、TE10モードだけが伝送され、これを主モードと称する。
【0049】
ここで、導波管の長辺が1λ、或いは1.5λより大きくなると、それぞれ、TE20モード、或いはTE30モードを伝送できるようになる。
図3において、(A)のホーン33の開口面の電界図に示すように、本実施形態では、ホーン33は、底部の不連続でTE30モードを発生させ、放射開口面にはTE10モードの電界とTE30モードの電界が合成された電界分布を生ずる。
図3(A)のホーン33の開口面の電界図は、ホーン33の開口面での両モード成分の電界方向および分布様相を示す。
【0050】
図4は、各モードの電界分布を示す図である。
このグラフの横軸はホーン33の横方向の開口幅Aの横幅方向(中心位置を0として、−A/2〜A/2)を表しており、このグラフの縦軸は電界強度を表している。これにより、横軸を横幅方向として、開口電界強度分布の計算例を示してある。
具体的には、TE10モードの電界強度分布2001、TE20モードの電界強度分布2002、TE30モードの電界強度分布2003、TE10モードの電界とTE30モードの電界が合成された電界(TE10モード+TE30モード)の電界強度分布2004を示してある。
【0051】
図4に示されるように、TE10モードとTE30モードの電界比が3:1で、中央での電界方向が逆向きである場合に、最も効率が高く、TE10モード単一の場合より0.5dBの利得増が得られる。
ここで、TE30モードの発生量および相対位相は、ホーン33の底部の横方向の幅F、ホーン33の横方向の開口幅A、ホーン33の奥行きHの寸法を選んで調整することができる。この調整は、一例として、レーダのローブの様子を検出して、設定者がレーダのサイドローブの様子を画面で見ながら行うことができる。
【0052】
なお、TE20モードも存在できるが、
図4に示されるように、左右逆対称な電界分布を持つため、左右に大きな非対称がある場合にのみ発生し、76GHz帯でも0.1mm程度の精度で対称性が保たれていれば無視できることが実験でも確かめられている。
【0053】
また、ここでは、TE10モード、TE20モード、TE30モードを示したが、更に高次のモードが用いられてもよい。但し、更に高次のモードは、レベルが小さいため、通常は、TE10モード、TE30モードを用いるのが好ましいと考えられる。
【0054】
図5は、他の構造を有するホーン41の例を示す横方向断面図である。
この例に係る段付きのホーン41は、多段(この例では、2段)で、段状に不連続に広げられた形状を有する。
具体的には、本変形例のホーン41は、表面側に開口する第一部分と、第一部分の裏面側に設けられた第二部分とを有する。
【0055】
本変形例のホーン41において、第一部分は、断面略矩形で、表面側から裏面側に向かって同一の断面に形成されている。また、第二部分は、断面略矩形で、表面側から裏面側に向かって同一の断面に形成されている。第二部分は、矩形断面の大きさが第一部分よりも小さく形成されて、第一部分と連通している。そして、第一部分の第二部分と連通する底部には、表面および裏面に略平行な平面を有する段部が形成されている。また、第二部分は、スロットに連通していて、矩形断面の大きさがスロットよりも大きく形成されている。そして、第二部分のスロットと連通する底部にも、表面および裏面に略平行な平面を有する段部が形成されている。
【0056】
図6は、他の構造を有するホーン42の例を示す横方向断面図である。
この例に係る段付きのホーン42は、多段(この例では、2段)で、テーパ状(段付きの一例とする)に広げられた形状を有する。
すなわち、本変形例のホーン42も、表面側に開口する第一部分と、第一部分の裏面側に設けられた第二部分とを有する。第一部分および第二部分は、それぞれ、側面が、表面側から裏面側へと向かうに従って、外側から内側へと傾斜するような傾斜面として形成されていて、互いに傾斜角度が異なっている。
【0057】
図7は、他の構造を有するホーン43の例を示す横方向断面図である。
この例に係る段付きのホーン43は、多段(この例では、2段)に形成されている。
本変形例のホーン43も、表面側に開口する第一部分と、第一部分の裏面側に設けられた第二部分とを有する。第一部分は、テーパ状に形成されている。また、第二部分は、スロットと連通する底部に段部が形成されている。
この例に係るホーン43の形状は、
図5に示される段部の形状と
図6に示されるテーパ部の形状を組み合わせたような形状である。
【0058】
このように、段付きのホーンの形状としては、
図5に示されるような多段構成、
図6に示されるようなテーパ状、或いは
図7に示されるようなこれらの複合形状、等々、多様に考えられるが、1.5λ以上の幅で不連続を持つことで同じ作用が得られる。
従って、段付きのホーンの開口寸法は、横幅(開口幅)Aが2λ程度或いはそれより大きい場合に効果が現れる。
【0059】
ここで、
図1〜
図3および
図5〜
図7では、段付きのホーンの形状として幾つかの例を示したが、不連続な他の様々な形状が用いられてもよい。
一例として、六角形など他の矩形の形状が用いられてもよい。
また、他の例として、矩形のような直線状の形状ばかりでなく、円状や楕円状など曲線状の形状が一部または全部に用いられてもよい。
なお、通常は、曲線状の形状よりも直線状の形状を用いた方が、製造上で作りやすいという利点がある。
【0060】
また、段付きのホーンの段数としては、1段以外に、2段以上の構成が用いられてもよい。但し、段数は少ない方が、小型化や低価格を実現するためには好ましいと考えられる。
【0061】
次に、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置により得られる放射特性について、従来のスロットアレーで構成したアンテナ装置との比較で示す。
ここで、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置は
図1および
図2に示されるものであり、従来のスロットアレーで構成したアンテナ装置は
図8に示されるものである。
【0062】
図9は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置に備えられた、段付きのホーン33の横方向面の放射指向特性(アンテナ特性)を示す図である。横軸は中心からの離角θ(度)を表しており、縦軸は利得(dBi)を表している。
図10は、従来のスロットアレーの横方向面の放射指向特性(アンテナ特性)を示す図である。横軸は中心からの離角θ(度)を表しており、縦軸は利得(dBi)を表している。
【0063】
図9に示すグラフについて説明する。
特性2011(I)、特性2012(II)、特性2013(III)は、受信アンテナを想定したものである。
この例では、
図2および
図3において、アンテナの横方向の間隔Pを2λ(=7.84mm)として、ホーン33の寸法は、横方向の開口幅A=7.4mm、開口面の縦幅B=4mmとし、また、ホーン33の奥行きH=5mmとした場合である。
【0064】
そして、特性2011(I)は、例外的に段無しのホーンとしたものであり、ホーンの底部の横方向の幅F=3.6mm(段無し)とした場合の計算値である。
特性2012(II)は、段付きのホーン33の底部の横方向の幅F=6mmとした場合の計算値である。
特性2013(III)は、段付きのホーン33の底部の横方向の幅F=7.1mmとした場合の計算値である。
【0065】
利得としては、本実施形態の構造では、段無しのホーン(特性2011)においても12.7dBi(開口効率77%)が得られる。また、段付きのホーン33を用いた場合(特性2012、特性2013)には、13.2〜13.4dBi(開口効率86〜90%)の高性能が得られる。
【0066】
指向特性としては、横方向の開口幅Aが一定である場合はビーム幅を狭めるとサイドローブは高くなるが、送信アンテナ11では開口幅に配置上の制約はないため、ホーンの横方向の開口幅C、底部の横方向の幅F’、奥行きH’の寸法を適宜選ぶことによって、同じ狭いビームでも低サイドローブの特性を得ることもできる。
【0067】
具体例として、特性2014(IV)、特性2015(V)は、送信アンテナ11を想定したものである。
特性2014(IV)は、ホーン51の寸法は、横方向の開口幅C=14.5mm、開口面の縦幅B’=4mm、奥行きH’=13.5mm、底部の横方向の幅F’=6.5mmとした場合の計算値である。
特性2015(V)は、ホーン51の寸法は、横方向の開口幅C=15.7mm、開口面の縦幅B’=4mm、奥行きH’=15mm、底部の横方向の幅F’=6.32mmとした場合の計算値である。
【0068】
なお、送信アンテナ11のホーン51に関する横方向の開口幅C、開口面の縦幅B’、奥行きH’、底部の横方向の幅F’は、それぞれ、受信アンテナ12−1〜12−Nのホーン33に関する横方向の開口幅A、開口面の縦幅B、奥行きH、底部の横方向の幅Fと対応した部分の長さを表す。
【0069】
図10に示すグラフについて説明する。
特性3011(I)は、
図9に示すグラフで使用した受信アンテナのホーン33と同じ放射面積での放射特性である。
図8において、アンテナの横方向の間隔は同じくP1=2λとする。また、スロット112は横方向と直交する縦方向にλg/2の間隔で配置されるため、
図8に示される範囲3001(
図8における鎖線囲みの部分の範囲)のスロット112は、4個一組がホーン1個に相当する。
この4素子アレーで、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=3.92mm(=1λ)の場合を示す。
特性3011(I)は、
図8に示す例のように、リニアアレー本数m=2である場合である。
【0070】
特性3013(III)は、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=2.6mmとして、リニアアレー本数m=2とした場合の特性である。
特性3014(IV)は、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=2.6mmとして、リニアアレー本数m=3とした場合であり、6素子アレーの特性である。
【0071】
特性3011(I)では、素子アレーのグレーティングローブが大きく現れる。
これに比べると、特性3014(IV)の方がサイドローブを低くできるが、導波管幅が狭くなり、遮断寸法(λ/2)に近いと周波数や製造精度による特性変動が大きくなる。また、素子が近接するため、スロット112間の相互結合も増え、安定した性能が得難くなる。
【0072】
次に、送信アンテナについて、特性3012(II)および特性3015(V)を説明する。
特性3012(II)は、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=3.92mm(=1λ)で、リニアアレー本数m=3とした場合である。
特性3015(V)は、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=2.6mmで、リニアアレー本数m=4とした場合である。
【0073】
受信/送信のいずれにおいても、特にDBFを行うレーダアンテナでは素子数が少ないため、素子アレーの特性では放射電界の相殺点(ヌル)および重畳点(ピーク)が顕著に現れ、ホーンのような連続電界面からの放射に比べて高いサイドローブが生じる。
【0074】
図11は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)の横方向面の放射指向特性(アンテナ特性)の設計例を示す図である。横軸は中心からの離角θ(度)を表しており、縦軸は相対レベル(dB)を表している。
この例では、アンテナの横方向の間隔Pを2λ(=7.84mm)とした。
受信特性2021は、ホーン33の寸法を、横方向の開口幅A=7.4mm、開口面の縦幅B=4mm、奥行きH=5mm、底部の横方向の幅F=7.1mmとした場合の設計例である。
送信特性2022は、ホーン33の寸法を、横方向の開口幅C=15.7mm、開口面の縦幅B’=4mm、奥行きH’=15mm、底部の横方向の幅F’=6.32mmとした場合の設計例である。
【0075】
レーダ指向特性2023は、受信特性2021と送信特性2022を掛け合わせたものである。
この例では、レーダ指向特性2023として、DBFのグレーティングローブが現れる離角19°以上の領域で、−30dB以下を狙った設計例を示す。
【0076】
図12は、従来のスロットアレーによるアンテナ装置(レーダアンテナ)の横方向面の放射指向特性(アンテナ特性)の設計例を示す図である。横軸は中心からの離角θ(度)を表しており、縦軸は相対レベル(dB)を表している。
設計諸元は、受信特性3021は、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=2.6mmで、リニアアレー本数m=3とした場合である。また、送信特性3022は、
図8に示される間隔(隣り合う導波管103の横方向の間隔)D=2.7mmで、リニアアレー本数m=4とした場合である。
【0077】
レーダ指向特性3023は、受信特性3021と送信特性3022を掛け合わせたものである。
この例では、受信特性3021と送信特性3022のうちの一方のピークに他方のヌルを重ねることで調整しても、本実施形態に比べると高いサイドローブが残る。
【0078】
更に、本実施形態では、種々のレーダ性能要件に対しても、ホーン33、51の寸法選定だけで設計対応することができる。例えば、少ない受信系統数で高分解能を得るためには、受信アンテナ12−1〜12−Nの横方向の間隔Pを広げることが有効である。
【0079】
図13は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)で、受信アンテナ12−1〜12−Nの横方向の間隔Pを広げた場合における横方向面の放射指向特性(アンテナ特性)の設計例を示す図である。横軸は中心からの離角θ(度)を表しており、縦軸は相対レベル(dB)を表している。
この例では、受信アンテナ12−1〜12−Nの横方向の間隔Pを8.5mmとした。
受信特性2031は、ホーン33の寸法を、横方向の開口幅A=8mm、開口面の縦幅B=4mm、奥行きH=6mm、底部の横方向の幅F=7.6mmとした場合の設計例である。
送信特性2032は、ホーン51の寸法を、横方向の開口幅C=17mm、開口面の縦幅B’=4mm、奥行きH’=18mm、底部の横方向の幅F’=6.8mmとした場合の設計例である。
【0080】
レーダ指向特性2033は、受信特性2031と送信特性2032を掛け合わせたものである。
この場合、グレーティングローブは17°以上の角度方向に現れるが、この領域でも−30dB以下の低サイドローブ特性が得られている。
本実施形態では、受信アンテナ12−1〜12−Nのホーン33の横方向の開口幅Aは受信アンテナ12−1〜12−Nの横方向の間隔Pに応じて広げることができるため、より高利得が得られ、ヌル点も内側に作ることができる。また、送信アンテナ11のホーン51は、横方向の開口幅C、奥行きH’の寸法を3mm程度増すだけで、所期の特性が得られている。
【0081】
<他の構成の説明>
次に、横方向以外のサイドローブ特性について説明する。
特許文献2等に、斜め方向への不要放射について示されている。
従来のスロットアレーでは、格子状配置の対角方向にも周期配列となるため、スロット間隔が広くなるとアレーのグレーティングローブが現れることになる。
【0082】
一方、本実施形態の構造では、斜め方向の配列は無いため、これは生じない。
しかしながら、縦方向のホーン間隔は1λより大きいため、仰角方向にはアレーのグレーティングローブが現れる。その出現角度は、縦方向のホーン間隔をQとして、sin
−1[λ/Q]で与えられ、Q=4.67mmである場合には57°となる。この方向では、ホーン自体の指向性減衰によりグレーティングローブのレベルは−15〜−20dBに抑えられ、主ビームの利得を低下させるような劣化は生じない。
【0083】
だが、受信/送信でグレーティングローブの出現角度を違えることにより、これらを重畳させない方が更に望ましい。主ビーム幅が4°程度である場合は、アンテナの縦方向の間隔(ホーン、スロットの縦方向の間隔)Qr、Qtを5%程度違えれば、レーダ指向性としては−40dB以下に抑えることができる。
【0084】
ここで、ホーンの縦方向の間隔Qr、Qtを小さくする方がグレーティングローブが低くなり、縦方向の間隔Qr、Qtを詰めてその分ホーンの数を増す方が設計上望ましい。このためには、導波管の横幅(
図3の例では、長辺幅Wa)を広く選ぶ必要がある。
なお、この横幅(
図3の例では、長辺幅Wa)が1λ以上になると不要高次モードが伝送できるため通常は用いられないが、本実施形態では、左右対称構造であるためTE20モードは発生しない。
但し、導波管内ではTE30モードは遮断する必要がある。従って、本実施形態では、導波管の横幅(
図3の例では、長辺幅Wa)を1λ以上1.5λ未満で選ぶことができる。
【0085】
図14は、本発明の実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)の仰角方向の放射指向特性(アンテナ特性)の設計例を示す図である。横軸は仰角η(度)を表しており、縦軸は相対レベル(dB)を表している。
送信特性2041と、受信特性2042と、送信特性2041と受信特性2042を掛け合わせたものであるレーダ指向特性2043を示してある。
【0086】
ここで、送信特性2041は、アンテナ間隔(アンテナ間隔Pに対応するもの)=4.67mm、導波管の横幅(長辺幅Waに対応するもの)=3.6mm、縦方向のホーン間隔Qt=4.67mmである場合である。
また、受信特性2042は、アンテナ間隔P=4.35mm、導波管の横幅(長辺幅)Wa=4.5mm、縦方向のホーン間隔Qr=4.35mmである場合である。
【0087】
<DBFパターンの例>
図15は、DBFパターンの例を示す図である。横軸は角度(度)を表しており、縦軸はレベルを表している。
図15に示すように、様々な特性からなるDBFパターン4001が得られる。
具体的には、角度が0度(正面方向)に対応した特性4011を中心として、中心から角度を次第にずらした複数の特性4012、4013、・・・、4018、4019、4020、・・・、4025、4026を示してある。
【0088】
<以上に示した実施形態のまとめ>
ここで、他に導波管スロットアレーにホーンを付加するものとして、例えば特許文献3等に示される構造がある。
これは、導波管の長さ方向を横方向に配して横方向に狭俊なビームを作り、アンテナ全体を回転して走査を行うものであり、船舶レーダなどで主にS帯やX帯などのマイクロ波帯で用いられるため、実寸法は大きく、用途上軽量が求められる。このため、導波管素管にホーン板を板金溶接等で取り付けるような構造が適しており、各々のスロットに角錐ホーンを付加するのは製造が複雑になり、重量も大幅に増加する。
【0089】
これに比べて、本実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)は、実寸法は小さく、また、多数のアンテナを配するため、例えば、ダイキャスト等による一体製造が望ましい。
【0090】
ここで、本実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)の配置において、横方向の壁面が無いとすれば、導波管部に金属肉の薄い部分が生じ、ホーン部の肉の厚い部分とが繰り返し隣り合うため製作上で反りなどが生じ易くなる。このような壁面を設けることで、金属肉の薄い部分を無くし、また、梁の機能を持たせることにより、
図2に示す一体製造に適した構造が可能になる。
また、電気性能上でも、角錐のホーン33、51により、開口面に平面波の電界分布が作られ、高利得が得られる。
また、四面を囲うことによって、導波管の境界条件が定まり、所要の高次モードを制御することができる。
【0091】
以上のように、本実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)は、例えば、DBF走査のミリ波車載レーダに用いられ、複数列の受信アンテナ12−1〜12−Nと少なくとも1列の送信アンテナ11が横方向に並べて設置される。また、受信アンテナ12−1〜12−Nは約2λの横幅(開口幅)Aであり、送信アンテナ11は一例として3λ以上の横幅Cである。
また、各アンテナ11、12−1〜12−Nは、縦方向に長い一本の矩形導波管31の長辺面に、導波管断面の長辺方向に長い矩形のスロット32を概ね1λgの間隔Qで多数設ける。また、各々のスロット32に、段付きの角錐のホーン33が装加される。
段付きの角錐のホーン33は、スロット32側の底部が導波管の長辺方向に1.5λ以上の横幅(底部の幅F)を持ち、スロット32の長辺寸法から段状に不連続に広げられた形状を有する。
【0092】
本実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)は、一例として、受信或いは送信の少なくとも一方のアンテナの矩形導波管31の長辺幅Waが1λ以上1.5λ未満である。
【0093】
本実施形態に係る車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)は、例えば、アンテナ間の漏れ込みを確実に塞ぐことにより混信によるレーダ検知性能の低下を防ぎ、また、広角度範囲で低サイドローブ特性が得られるため、DBFのグレーティングローブによる誤検知を解消することができる
【0094】
ここで、本実施形態では、車載用のレーダ装置に設けられたアンテナ装置(レーダアンテナ1)を、DBFを行うレーダに適用する場合を示したが、DBF以外のものに適用されてもよい。
また、本実施形態で示したようなアンテナ装置を車載用のレーダ装置以外の任意の装置に適用することも可能である。
【0095】
また、受信アンテナ12−1〜12−Nの複数の列数(N)は、任意の値が用いられてもよい。
また、本実施形態では、送信アンテナ11が1列である場合を示したが、他の例として、複数列の送信アンテナを備える構成が用いられてもよい。
また、1列分の受信アンテナ12−1〜12−Nや1列分の送信アンテナ11におけるアンテナ素子の行数(縦方向のホーンの並びの数)は、任意の数が用いられてもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。