(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930543
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】新生児搬送具
(51)【国際特許分類】
A61G 1/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
A61G1/00 502
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-7699(P2013-7699)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136121(P2014-136121A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】513014101
【氏名又は名称】キャピー・インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 悦子
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−230113(JP,A)
【文献】
特開2007−259894(JP,A)
【文献】
実開平04−025564(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3127392(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児を包んだ状態で搬送者が携帯して搬送可能な新生児搬送具であって、柔軟なシート部材を菱形状に形成した搬送具本体部と、携帯する搬送者から見て、前記搬送具本体部の右端隅部と左端隅部間に設けることにより連結又は切離可能な肩掛用バンド部と、前記搬送具本体部の右部(又は左部)の一部を利用することにより、左方(又は右方)に開口する開口部を有し、かつ三角ポケット状に形成して、新生児の頭部を保護する頭巾部と、少なくとも首の座っていない新生児の尻部から頭部部分が載置される程度の大きさに形成し、かつ当該尻部から頭部を支持可能な剛性を有する略長方形状に形成したプレート部材からなり、このプレート部材の長手方向を、前記右端隅部と前記左端隅部間の対角線上の範囲における前記搬送具本体部の内側に配することにより当該搬送具本体部に対して積層状に重なる基体部とを備えてなることを特徴とする新生児搬送具。
【請求項2】
前記シート部材は、一種又は二種以上の、天然及び/又は合成の繊維素材により形成することを特徴とする請求項1記載の新生児搬送具。
【請求項3】
前記搬送具本体部は、前記肩掛用バンド部に対して直角方向に取付け、かつ当該搬送具本体部により新生児を包んだ際に、包んだ状態に保持する保持用バンド部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の新生児搬送具。
【請求項4】
前記肩掛用バンド部は、搬送者の肩に当接可能なパッド部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の新生児搬送具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時等において新生児を搬送する際に用いて好適な新生児搬送具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病人や乳幼児等は、地震や火災等の災害発生時に自力で避難できないため、病人や乳幼児等を、如何に安全に搬送するかは社会的にも重要な課題となっている。このため、このような課題に対処した用具も提案されており、特許文献1には、人を運搬または載置するための用具が開示されている。
【0003】
この用具は、地震等の天災の発生時、火災や急病などの緊急時、寝たきりの老人や病人などの入浴介助時などに、人命救助、介助などの目的で、怪我人、病人、老人、未だ歩けなかったり、よちよち歩きの乳幼児等を速やかに且つ円滑に運搬又は載置することを目的としたものであり、具体的には、メッシュの目合が5mm以上であるメッシュ状布帛を用いることにより、人を運搬又は載置するための用具として製作、即ち、担架、乳幼児の運搬具、簡易ベッド、入浴介助用ベッド等に製作したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−258940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の用具、即ち、人を運搬または載置するための用具は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、用具としては、担架或いはその類似具の域を出ていないため、担架の有する短所をそのまま保有する。具体的には、大型化する傾向があり保管性や携帯性に難がある。搬送時には二人必要となり一人では扱えない。高価になる傾向があるため数量を確保するにも限界がある。狭い通路等では使えないため使い勝手や利便性に劣る。などの短所をそのまま保有し、通常の使用ではさほど問題にならないとしても、災害発生時のように、緊急性が要求される場合や十分な搬送路が確保されていない状況等においては致命的ともいえる無視できない短所となる。
【0007】
第二に、怪我人、病人、老人等のある程度の身長及び体重のある場合には、メッシュ状布帛が沈み込むため、安定に搬送することができるが、体重が軽く、かつ首の座っていない新生児の場合には、安定かつ安全に搬送できるかは疑問となる。このように、従来の用具は、新生児に対する十分な適合性を考慮しているとは言えない。結局、災害発生時等において、新生児を安全に搬送するための望ましい搬送具は何ら実用化されていないのが実情である。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した新生児搬送具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、新生児Hを包んだ状態で搬送者Cが携帯して搬送可能な新生児搬送具1であって、柔軟なシート部材2xを菱形状に形成した搬送具本体部2と、携帯する搬送者から見て、搬送具本体部2の右端隅部2psと左端隅部2qs間に設けることにより連結又は切離可能な肩掛用バンド部3と、搬送具本体部2の右部2p(又は左部2q)の一部を利用することにより、左方(又は右方)に開口する開口部11iを有し、かつ三角ポケット状に形成して、新生児Hの頭部Hhを保護する頭巾部11と、少なくとも首の座っていない新生児Hの尻部Hbから頭部Hh部分が載置される程度の大きさに形成し、かつ当該尻部Hbから頭部Hhを支持可能な剛性を有する略長方形状に形成したプレート部材4xからなり、このプレート部材4xの長手方向を、右端隅部2psと左端隅部2qs間の対角線上の範囲における搬送具本体部2の内側に配することにより当該搬送具本体部2に対して積層状に重なる基体部4とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、シート部材2xは、一種又は二種以上の、天然及び/又は合成の繊維素材2xmにより形成することができる。また、搬送具本体部2には、肩掛用バンド部3に対して直角方向に取付け、かつ当該搬送具本体部2により新生児Hを包んだ際に、包んだ状態に保持する保持用バンド部13を設けることができる。他方、肩掛用バンド部3には、搬送者Cの肩部Csに当接可能なパッド部14を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る新生児搬送具1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 基本的な構成として、新生児Hを包んだ状態で搬送者Cが携帯して搬送可能に構成するため、従来の用具(担架)の有する様々な短所を解消できる。即ち、第一に、全体を折畳むことにより小型コンパクト化が可能なため保管性及び携帯性に優れる。第二に、一人で搬送する(扱う)ことができる。第三に、安価に製造できるため、大量確保が容易であり、災害発生時に不足するなどの不具合を排除できる。第四に、狭い搬送路等であっても使用可能であり、使い勝手及び利便性に優れる。
【0013】
(2) 柔軟なシート部材2xを菱形状に形成した搬送具本体部2と、携帯する搬送者から見て、搬送具本体部2の右端隅部2psと左端隅部2qs間に設けることにより連結又は切離可能な肩掛用バンド部3と、少なくとも首の座っていない新生児Hの尻部Hbから頭部Hh部分が載置される程度の大きさに形成し、かつ当該尻部Hbから頭部Hhを支持可能な剛性を有する略長方形状に形成したプレート部材4xからなり、このプレート部材4xの長手方向を、右端隅部2psと左端隅部2qs間の対角線上の範囲における搬送具本体部2の内側に配することにより当該搬送具本体部2に対して積層状に重なる基体部4とを備えてなるため、災害発生時等に、小さい体で首の座っていない新生児Hの搬送を迅速かつ安全に行うことができるなど、特に、新生児Hの搬送に用いて最適となる。
【0014】
(3) 搬送具本体部2に、右部2p(又は左部2q)の一部を利用することにより左方(又は右方)に開口する開口部11iを有し、かつ三角ポケット状に形成して、新生児Hの頭部Hhを保護する頭巾部11を設けたため、菱形状となる搬送具本体部2の右部2p(又は左部2q)における三角部の一部を利用でき、一枚の三角布部を付加するのみで、頭巾部11を容易に設けることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、シート部材2xを、一種又は二種以上の、天然及び/又は合成の繊維素材2xmにより形成すれば、菱形状となる搬送具本体部2の上部,下部及び左部2q(又は右部2p)の一部である各三角状部により新生児Hを包むことができるため、衣類としての防寒機能及び保護機能等を有効に付加することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、搬送具本体部2に、肩掛用バンド部3に対して直角方向に取付け、かつ当該搬送具本体部2により新生児Hを包んだ際に、包んだ状態に保持する保持用バンド部13を設ければ、搬送具本体部2により新生児Hを包んだ状態を確実に保持することができるため、より安定した搬送を行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、肩掛用バンド部3に、搬送者Cの肩部Csに当接可能なパッド部14を設ければ、搬送者Cの肩部Csに対する荷重の集中的付加を回避し、搬送者Cの肩部Csに対する荷重の負担を軽減できるため、搬送者Cに対する不快感を低減し、より長時間となる搬送も可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る新生児搬送具の外観斜視図、
【
図3】同新生児搬送具の一部抽出拡大段面図を含む正面図、
【
図6】同新生児搬送具の使用方法を順を追って説明するための第一の説明図、
【
図7】同新生児搬送具の使用方法を順を追って説明するための第二の説明図、
【
図8】同新生児搬送具の使用方法を順を追って説明するための第三の説明図、
【
図9】同新生児搬送具の使用方法を順を追って説明するための第四の説明図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る新生児搬送具1の構成について、
図1〜
図5を参照して具体的に説明する。
【0021】
本実施形態に係る新生児搬送具1は、大別して、搬送具本体部2,肩掛用バンド部3及び基体部4を備えて構成する。
【0022】
搬送具本体部2は、一種又は二種以上の、天然及び/又は合成の繊維素材2xmにより形成する柔軟なシート部材2xを使用し、このシート部材2xを、
図2に示すように菱形状に形成したものを用いる。例示のシート部材2xは、一対のシート材により綿を挟んで形成したキルティング材を用いた。この場合、シート材には弱撥水加工したナイロン素材を用いることが望ましい。これにより、搬送具本体部2は防水性が確保され、搬送具本体部2の上でオムツ交換等も可能となる。なお、例示のシート部材2xは二種類の繊維素材を使用したが、一種類であってもよいし三種以上であってもよく、また、天然繊維素材であるか合成繊維素材であるかは問わない。このように、シート部材2xを、一種又は二種以上の、天然及び/又は合成の繊維素材2xmにより形成すれば、菱形状となる搬送具本体部2の上部,下部及び左部2q(又は右部2p)の一部である各三角状部により新生児Hを包むことができるため、衣類としての防寒機能及び保護機能等を有効に付加できる利点がある。
【0023】
さらに、
図2に示すように、搬送具本体部2の上面部2Fにおける上下方向一端側には面ファスナを構成する装着部21sを設けるとともに、搬送具本体部2の底面部2R(
図4参照)の中央付近であって上下方向他端寄りには当該装着部21sに対して着脱する被装着部21rを設ける。なお、本明細書では、新生児搬送具1の位置関係において、便宜上、
図2の状態を基本とした。したがって、後述する頭巾部11を設ける隅部(角部)が搬送具本体部2の右端として説明する。
【0024】
また、搬送具本体部2には、
図1及び
図2に示すように、右部2pの一部を利用することにより左方に開口する開口部11iを有し、かつ三角ポケット状に形成して、新生児Hの頭部Hhを保護する頭巾部11を設ける。搬送具本体部2に、このような頭巾部11を設ければ、菱形状となる搬送具本体部2の右部2pにおける三角部の一部をそのまま利用できるため、一枚の三角布部11pを付加するのみで、頭巾部11を容易に設けることができる。なお、この三角布部11pには、シート部材2xと同様の材料を用いることができる。
【0025】
一方、
図4に示すように、搬送具本体部2の底面部2Rには肩掛用バンド部3に対して直角方向、即ち、搬送具本体部2の上下方向に、当該搬送具本体部2により新生児Hを包んだ際に、包んだ状態に保持する保持用バンド部13を設ける。この場合、保持用バンド部13を搬送具本体部2に配する左右方向位置は、新生児Hの尻部Hb付近を選定し、保持用バンド部13の中央付近を搬送具本体部2の底面部2Rに縫い付ければよい。なお、保持用バンド部13の一端側の上面には面ファスナを構成する装着部22sを設けるとともに、保持用バンド部13の他端側の下面には当該装着部22sに対して着脱する被装着部22rを設ける。このような保持用バンド部13を設ければ、搬送具本体部2により新生児Hを包んだ状態を確実に保持できるため、より安定した搬送を行うことができる利点がある。
【0026】
肩掛用バンド部3は、搬送具本体部2の右端隅部2psと左端隅部2qs間に設けることにより連結又は切離可能に構成する。例示の場合、
図4に示すように、左右両端を開口した収容袋部25を用意し、この収容袋部25を、搬送具本体部2の底面部2Rにおける上下方向中央位置に縫い付ける。そして、この収容袋部25の内部における上下端位置にそれぞれ補助バンド部26u,26dを縫い付けることにより、各補助バンド部26u,26dの左右両端を収容袋部25の開口から外部に導出し、補助バンド部26u,26dの右側における二つの右端部を主バンド部27mの一端に縫い付けて結合するとともに、各補助バンド部26u,26dの左側における二つの左端部を副バンド部27sの一端に縫い付けて結合した。
【0027】
また、副バンド部27sの他端にはバックル28を取付ける。これにより、このバックル28と主バンド部27mの他端を着脱することができる。なお、バックル28は例示であり、着脱可能な各種着脱具を用いることができる。さらに、主バンド部27m(肩掛用バンド部3)の中途には、搬送者Cの肩部Csに当接可能なパッド部14を配する。この場合、パッド部14は、例えば、両端を開口した袋状に形成し、このパッド部14の内部に主バンド部27mを挿通させることにより実施できる。これにより、パッド部14の、肩掛用バンド部3上の位置調整が可能になる。このようなパッド部14を設ければ、搬送者Cの肩部Csに対する荷重の集中的付加を回避し、搬送者Cの肩部Csに対する荷重の負担を軽減できるため、搬送者Cに対する不快感を低減し、より長時間となる搬送も可能にできる利点がある。
【0028】
基体部4は、一種又は二種以上の樹脂素材4xmにより剛性を有する一枚のプレート部材4xにより形成する。この基体部4は、
図3及び
図4に示すように、上述した収容袋部25の内部に収容することができる。この場合、補助バンド部26uと26d間に基体部4を介在させる。これにより、基体部4は、搬送具本体部2に対して積層状に重なることになる。例示の場合、プレート部材4xの素材には、ポリエチレン系樹脂素材を用いた。なお、例示は一種の樹脂素材を用いて一体形成したが、二種以上の積層タイプであってもよいし、或いは混合タイプにより構成できる二種以上の樹脂素材を用いてもよい。このように、プレート部材4xを、一種又は二種以上の樹脂素材4xmにより形成すれば、新生児搬送具1の全体の軽量化,必要な剛性化,可及的な低コスト化を実現する観点から最も望ましい形態により実施できるとともに、適度な剛性及び弾性を容易に得ることができる利点がある。
【0029】
また、基体部4の形状は、
図1及び
図2に示すように、少なくとも新生児Hの尻部Hbから頭部Hhの少なくとも一部(
図6参照)を支持可能に形成する。具体的には、略長方形状に形成し、新生児Hの尻部Hbから頭部Hhを支持可能にする。なお、
図4に示すように、中間位置に縫付部Kcを設けることにより、収容袋部25の内部における基体部4の位置ズレを固定することができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る新生児搬送具1の使用方法について、
図6〜
図9を参照して説明する。
【0031】
本実施形態に係る新生児搬送具1は、前述した基体部4をベースとして、その上に他の部位を折り畳むことができる。したがって、基体部4の形状を有し、かつ所定の厚さを有する収納ケース(袋)を用意し、この収納ケースに入れて保管することができる。
【0032】
一方、新生児搬送具1を使用するに際しては、
図6に示すように、まず、搬送具本体部2を菱形状に広げる。そして、新生児Hを搬送具本体部2の上面部2Fに寝かせ、頭部Hhを頭巾部11の開口部11iから中に収容する。この後、
図7に示すように、搬送具本体部2の左部2q(左端部2qs)を持ち上げ、新生児Hの足部Ht(
図6参照)の上に掛ける。次いで、搬送具本体部2の上部2dを持ち上げ、新生児Hの胴体部Hm(
図6参照)の上に掛ける。
図7は、ここまでの状態を示している。この後、同様に搬送具本体部2の下部2dを持ち上げ、新生児Hの胴体部Hm、即ち、既に掛けた上部2uの上に掛けるとともに、面ファスナを構成する装着部21sを被装着部21rに止着する。
【0033】
次いで、
図8に示すように、保持用バンド部13を両端を持ち上げ、面ファスナを構成する装着部22sを被装着部22rに止着することにより、保持用バンド部13を新生児Hの胴体部Hmに巻付けた状態にする。この後、主バンド部27mの先端側を副バンド部27sのバックル28に装着し、主バンド部27mと副バンド部27sを接続する。この際、バックル28に対する主バンド部27mの装着位置を任意に調整して必要な長さ調整を行う。これにより、搬送者Cの肩部Csに掛ける肩掛用バンド部3が構成される。この状態を
図8に示している。以上により、新生児搬送具1に対する新生児Hの収容が終了するため、
図9に示すように、搬送者Cの肩部Csに、肩掛用バンド部3を掛け、新生児Hを収容した搬送具本体部2を搬送者Cの前に位置させればよい。このように、新生児Hの収容は極めて容易に行うことができるとともに、搬送時に、搬送者Cは、両手が空くことになる。
【0034】
よって、このような本実施形態に係る新生児搬送具1によれば、基本的な構成として、新生児Hを包んだ状態で搬送者Cが携帯して搬送可能に構成するため、従来の用具(担架)の有する様々な短所を解消できる。即ち、第一に、全体を折畳むことにより小型コンパクト化が可能なため保管性及び携帯性に優れる。第二に、一人で搬送する(扱う)ことができる。第三に、安価に製造できるため、大量確保が容易であり、災害発生時に不足するなどの不具合を排除できる。第四に、狭い搬送路等であっても使用可能であり、使い勝手及び利便性に優れる。また、柔軟なシート部材2xを菱形状に形成した搬送具本体部2と、携帯する搬送者から見て、搬送具本体部2の右端隅部2psと左端隅部2qs間に設けることにより連結又は切離可能な肩掛用バンド部3と、少なくとも首の座っていない新生児Hの尻部Hbから頭部Hhを支持可能な剛性を有するプレート部材4xにより形成するとともに、搬送具本体部2の内部に配し、かつ当該搬送具本体部2に対して積層状に重なる基体部4とを備えてなるため、災害発生時等に、小さい体で首の座っていない新生児Hの搬送を迅速かつ安全に行うことができるなど、特に、新生児Hの搬送に用いて最適となる。加えて、搬送具本体部2に、右部2p(又は左部2q)の一部を利用することにより左方(又は右方)に開口する開口部11iを有し、かつ三角ポケット状に形成して、新生児Hの頭部Hhを保護する頭巾部11を設けたため、菱形状となる搬送具本体部2の右部2p(又は左部2q)における三角部の一部を利用でき、一枚の三角布部を付加するのみで、頭巾部11を容易に設けることができる。
【0035】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、搬送具本体部2に頭巾部11を設けが、この頭巾部11は例示のように一体に設けてもよいし、ボタン等により着脱可能に設けてもよい。また、保持用バンド部13を設けた場合を示したが、例示のように、必要な個所に面ファスナを設けることにより、必ずしも保持用バンド部13を設けることを要しない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る新生児搬送具は、病院,産院,家庭等において、地震や火災等の災害発生時に看護師や親等が新生児を搬送する際に利用できる。なお、新生児には乳幼児等も含む概念である。
【符号の説明】
【0037】
1:新生児搬送具,2:搬送具本体部,2x:シート部材,2p:搬送具本体部の右部,2q:搬送具本体部の左部,2R:搬送具本体部の底面部,2ps:搬送具本体部の右端隅部,2qs:搬送具本体部の左端隅部,2xm:天然及び/又は合成の繊維素材,3:肩掛用バンド部,4:基体部,4x:プレート部材,11:頭巾部,11i:開口部,13:保持用バンド部,14:パッド部,H:新生児,Hb:新生児の尻部,Hh:新生児の頭部,C:搬送者,Cs:搬送者の肩