(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズの前記中心光学部における前記誘発された球面収差は、第1の領域における正の球面収差と第2の領域における負の球面収差とを含む、請求項1に記載のレンズ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に従った、眼の有効瞳孔を制限し、中心瞳孔における高次収差(球面収差)を誘発する屈折要素を有する、遠方視力、中距離視力、および近方視力に対する、眼の計算されたMTF(変調伝達関数)および網膜像を示す。眼は、調節能力を有しないと仮定される。
【
図2a】眼の瞳孔サイズを1.6mmに制限し、中心瞳孔領域における正の球面収差を誘発する屈折要素、および4.2Dの焦点オフセットを有する眼に対する推定視力を示す。
【
図2b】眼の瞳孔サイズを1.6mmに制限し、中心瞳孔領域における負の球面収差を誘発する屈折要素を有する眼に対する推定視力を示す。
【
図3a】本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される光学素子の概略図を示す。屈折要素は、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、中心瞳孔における球面収差を誘発する。
【
図3b】本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される光学素子の概略図を示す。屈折要素は、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、中心瞳孔における球面収差を誘発する。また、光学素子は、暗所視(杆体視)に対する光量子効率の増加のための外側透明部を含む。
【
図4】本発明に従った、レーザー屈折矯正と組み合わせた角膜インレーによって、眼の焦点深度を増加させるための方法を示す。
【
図5】眼の有効瞳孔を制限し、透明な2つの光学部における反対符号の球面収差を誘発することによって、眼の焦点深度を増加させるための方法の概略図を示す。
【
図6】2つの光学部における反対符号の球面収差を誘発することと組み合わせて、眼の有効瞳孔を制限することによって、眼の焦点深度を増加させるための光学素子を有する、眼の計算されたMTFを示す。
【
図7】
図6に示される、眼の計算されたMTFに基づく推定視力を示す。
【
図8a】本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される光学素子の概略図を示す。屈折要素は、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、2つの光学部における反対符号の球面収差を誘発する。
【
図8b】本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される別の光学素子の概略図を示す。屈折要素は、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、2つの光学部における反対符号の球面収差を誘発する。また、光学素子は、暗所視(杆体視)に対する光量子効率の増加のための外側透明部を含む。
【
図8c】
図8aの環状不透明マスク83の代わりに無色光学部を有する、別の実施形態を示す。
【
図9】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための方法を示す。
【
図10】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるためのプロセスを示す。
【
図11a】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための一実施例における、遠方物体および近接物体に対する眼のMTFを示す。
【
図11b】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための一実施例における、遠方視力および近方視力に対する眼の網膜の視力チャートの計算された網膜像を示す。
【
図12】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための一実施例における、5つの異なる瞳孔サイズにおける、老眼治療のための光学素子を有する眼の推定視力を示す。
【
図13a】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための一実施形態における、遠方物体および近接物体に対する眼のMTFを示す。
【
図13b】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための一実施形態における、遠方物体および近接物体に対する眼の網膜の視力チャートの計算された網膜像を示す。
【
図14】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための一実施形態における、6つの異なる瞳孔サイズにおける、老眼治療のための光学素子を有する眼の推定視力を示す。
【
図15】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるためのさらに別の実施形態における、遠方、中距離、および近接物体に対する眼のMTFを示す。
【
図16】中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるためのさらに別の実施例における、5つの異なる瞳孔サイズにおける、老眼治療のための光学素子を有する眼の推定視力を示す。
【
図17a】制御された球面収差を有する2つの部分を含む、老眼矯正のための光学素子の概略図を示す。外側の第3の部分は、球面収差を含む場合と含まない場合がある。
【
図17b】老眼治療のためのカラーコンタクトレンズの一実施形態を示す。
【
図18】中心瞳孔における球面収差を誘発することによって、瞳孔周囲における高次収差を変化させることなく、眼の焦点深度を増加させるための方法を示す。
【
図19】中心瞳孔における球面収差を誘発することによって、瞳孔周囲における高次収差を変化させることなく、眼の焦点深度を増加させるためのプロセスを示す。個々の眼の高次収差に応じて、外側部における焦点オフセットが必要な場合が多い。
【
図20a】瞳孔周囲における焦点オフセットがある場合とない場合の2つの実施形態における、中心瞳孔における有意な負の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼のMTFを示す。眼は、6mmの瞳孔に対して4μmの負の球面収差を有することが既知である。
【
図20b】中心瞳孔における有意な負の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼の視力チャートの網膜像を示す。中心瞳孔における誘発された球面収差を除いて、光学素子は、眼の瞳孔全体にわたって球面円柱矯正を有する。
【
図20c】中心瞳孔における有意な負の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼の視力チャートの網膜像を示す。中心瞳孔における誘発された球面収差、および瞳孔全体にわたる球面円柱矯正に加えて、光学素子は、眼における高次収差に基づきカスタムで決定される、瞳孔周囲における焦点オフセットを有する。
【
図21a】瞳孔周囲における焦点オフセットが異なる2つの実施形態における、中心瞳孔における有意な正の球面収差を誘発する屈折矯正下での遠方視力(OD)に対する眼のMTFを示す(表6を参照)。
【
図21b】中心瞳孔における有意な正の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼の視力チャートの網膜像を示す。
【
図21c】中心瞳孔における有意な正の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼の視力チャートの網膜像を示す。中心瞳孔における誘発された球面収差、および瞳孔全体にわたる球面円柱矯正に加えて、光学素子は、眼における高次収差に基づきカスタムで決定される、瞳孔周囲における焦点オフセットも有する。
【
図22】中心瞳孔における球面収差を誘発することによる眼の老眼治療のための光学素子、および個々の眼における高次収差に基づく瞳孔周囲における球面屈折力のカスタムオフセットを示す。
【
図23】遠点における眼の最適画質を設定するために、眼の瞳孔にわたる誘発された正の球面収差および焦点オフセットを有する、老眼治療のための方法の概略図である。
【
図24】3つの異なる物体距離に対する3つの瞳孔サイズに対する眼のMTFを示す。
【
図25】表7で指定された、老眼治療のための光学素子を有する眼の推定視力を示す。
【
図26】眼の瞳孔にわたって正の球面収差を含む老眼矯正のための光学素子の概略図を示す。外側部は、球面収差を含む場合と含まない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
瞳孔サイズを制限し、眼の小さい瞳孔内の球面収差を誘発することによる、老眼の治療のための焦点深度の向上
屈折要素を有する眼の光学特性は、概して、
P(r)=A(r)*exp(i 2π Φ(r)/λ)*S(r)*exp(i 2π W(r)/λ) (1)
のような複素瞳孔関数P(r)によって表すことが可能である。
式中、rは、眼の瞳孔にわたる極半径である。A(r)およびΦ(r)は、振幅透過率関数および屈折要素の波面分布をそれぞれ表す。S(r)およびW(r)はそれぞれ、振幅透過率関数(スタイルス−クロフォード効果)および個々の眼の瞳孔にわたる波面誤差である。我々は、単純化のために瞳孔にわたる瞳孔関数の動径成分のみを含む。
【0021】
我々は、明所視に対する眼の有効瞳孔サイズを低減し、中心瞳孔領域における球面収差を誘発することによって、眼に対する焦点深度を増加させる方法を説明する。眼の瞳孔サイズの低減(制限)は、
A(r)=circ(r/r0) (2)
として、方程式1の振幅透過率関数A(r)によって表すことが可能である。式中、r0は、低減した瞳孔の半径であり、circ(r/r0)は、円関数であり、rがr0以下の場合は1に等しく、rがr0よりも大きい場合はゼロに等しい。アパーチャサイズ2r0が、明所視条件での眼の自然瞳孔よりも小さい場合、屈折要素のアパーチャは、眼の有効瞳孔サイズを実際に決定する。制限された瞳孔領域内での球面収差の誘発は、
Φ(r)=cl*(r/r0)
4 (3)
によって表すことが可能である。係数c1は、制限されたアパーチャ内の瞳孔にわたる球面収差の量を示す。
【0022】
当然のことながら、屈折矯正のための光学素子は、従来の球面円柱矯正も含む場合が多い。従来の球面円柱矯正は、単純化のために我々の説明に含まれていない。しかしながら、老眼のための矯正は、眼の遠点から離れた焦点を設定するために、焦点オフセットを含む場合がある。焦点オフセットおよび誘発された球面収差を組み合わせることにより、我々は、
Φ(r)=c1*(r/r0)
4+c2*(r/r0)
2 (4)
として老眼の治療のための波面分布を得ることができる。式中、c2は、焦点オフセットを示す。
【0023】
一実施例では、我々は、1.6mmの制限されたアパーチャ(r0=0.8mm)を選択した。かかる小さい制限された瞳孔内では、スタイルス−クロフォード効果(S(r))は、定数であり、眼の位相誤差(W(r))は、球面収差等の高次収差を有さず、眼の波面誤差は、異なる焦点位置に対する焦点誤差によって単純に表され、すなわち、
W(r)=c3*(r/r0)
2 (5)
であり、c3は、異なる視距離における物体に対する焦点誤差を示すと仮定することが妥当である。
【0024】
制限された瞳孔(c1=1.34μm)にわたる1.34umの正の球面収差(これにより、眼は、縁部よりも中心においてより大きい屈折力を有する)を、制限された瞳孔内で誘発することが可能であり、ゼルニケ多項式において0.1(Z12(r)+3.87*Z4(r))として表すことも可能である。Z12およびZ4は、Z12(r)=2.236(6*r
4−6*r
2+l)およびZ4(r)=1.732(2*r
2−1)の形でのゼルニケ多項式である。
【0025】
小さい制限された瞳孔および誘発された球面収差の組み合わせは、老眼治療のための大きい焦点深度をもたらすことが可能である。正の球面収差は、眼の焦点をより遠視に移動するため、眼が遠方視力のための最適画質を有するようにするために、約4.2Dの焦点オフセットを含むことが可能である。正の球面収差(c1=0)なしでは、焦点オフセットにより、近接物体への眼の焦点は24cmで合う。
【0026】
図1は、遠方視力(無限遠:1段目、3メートルの距離:2段目)、中距離視力(0.7メートルの距離:3段目、0.5メートルの距離:4段目)、および近方視力(0.33メートルの距離:下段)に対して眼からの調節がない、眼の計算されたMTF(変調伝達関数、左列)および網膜像(中央および右列)を示す。眼のMTFは、(r)=1であることを仮定して、瞳孔関数に基づく方程式(1)、(2)、(4)、および(5)から計算される。MTFの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。視力チャートの文字はそれぞれ、20/10(最小)、20/15、20/20、20/40、および20/80(最大)の視力に対する。
【0027】
網膜上の文字がヒト対象によって認識されるために、網膜像における各文字に対するコントラストは、網膜閾値よりも大きくなければならない。我々が、正常網膜に対するコントラスト閾値が、既知の実験データに従って、20/20に対して9%、20/30に対して5%、および20/40に対して2.5%であると仮定した場合、我々は、
図1の第1の列に示される変調伝達関数から、眼の視力を推定することができる。
【0028】
図2は、瞳孔サイズを1.6mmに制限し、正の球面収差を誘発する屈折要素、および4.2Dの焦点オフセットを有する眼に対する推定視力を示す。3つの重要な特徴が見られる。第1に、眼は、1ジオプターよりも大きい焦点深度で、遠方物体に対する優れた視力(20/20)を有し、グレア、ハロ等の夜間視力の問題は、予想されない。第2に、眼は、1メートルから0.33メートルまで、20/30の推定視力の許容できる近方および中距離視力を有する。眼は、眼の前で最大で0.2メートル、20/40の視力を有することが考えられる。
【0029】
別の実施例では、我々は、1.6mmの制限されたアパーチャ(r0=0.8mm)、および制限された瞳孔(c1=−1.34μm)にわたる1.34umの負の球面収差(これにより、眼が中心よりも縁部においてより大きい屈折力を有する)、および眼の光学の屈折力を低減する約−1.2ジオプターの焦点オフセットを選択した。
図2bは、そのような屈折矯正を有する眼の推定視力を示す。2つの重要な特徴が見られる。第1に、眼は、近接物体に対して優れた近方視力(20/20)を有する。第2に、約−1.2Dの焦点オフセットにより、視力は、遠方視力から中距離視力まで、20/30以上になる。
【0030】
図2aおよび
図2bをよく見ると、一方の眼を正の球面収差で矯正し、もう一方の眼を負の球面収差で矯正することによって、近接および遠方物体に対する非常に優れた両眼視力を得るための方法を容易に理解することができる。瞳孔サイズの制限ならびに焦点オフセットの適用が両眼に必要であることは、強調されなければならない。
【0031】
図3aは、本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される光学素子を示す。屈折要素は、従来の球面円柱矯正を提供するだけではなく瞳孔中心内の球面収差を誘発する中心無色光学部31と、中心光学部の外側、および最大で薄明視条件(超微光における明所視条件)下での眼33の自然瞳孔までの光を遮断する、または減衰させる環状マスク32とを含む。屈折要素は、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、中心瞳孔における球面収差を誘発する。中心光学部の直径D1は、1.4mm〜2mmの間である。環状部の外径D2は、薄明視条件(微光レベルにおける明所視条件)での個々の眼の最大瞳孔に応じて、3.5mm〜6mmの間である。中心光学部における光学は、球面収差の誘発された量に応じて、焦点オフセットを含んでもよい。
【0032】
図3bは、本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される光学素子を示す。屈折要素は、従来の球面円柱矯正を提供するだけではなく瞳孔中心内の球面収差を誘発する中心無色光学部34と、中心光学部の外側、および最大で薄明視条件に対する眼33の自然瞳孔までの光を遮断する、または減衰させる環状マスク35とを含む。球面収差の誘発は、レンズ形成において少なくとも1つの非球面を利用することによって達成することが可能である。薄明視に対する眼の自然瞳孔の外側に透明部36があり、それにより、眼は、暗所視条件(杆体視)に対する光子を収集することができる。中心光学部の直径D1は、1.4mm〜2mmの間である。環状部の外径D2は、薄明視条件(微光レベルにおける明所視条件)での個々の眼の最大瞳孔に応じて、3.5mm〜6mmの間である。中心光学部における光学は、球面収差の誘発された量に応じて、焦点オフセットを含んでもよい。
【0033】
図3aおよび
図3b中の光学素子は、先行技術において既知の球面および非球面レンズのための従来のプロセスを用いて製造される、眼内レンズ(IOL)であってもよい。レンズの少なくとも1つの表面は、所望の球面収差を誘発するために、非球面でなければならない。環状の不透明または部分的に透明な部分は、無色レンズ部の一部をコーティングまたは色付けすることによって得ることが可能であり、また、無色レンズの間に不透明層を挟むことによって得ることも可能である。
【0034】
瞳孔サイズの制限および眼の小さい瞳孔内の球面収差の誘発は、角膜インレーと組み合わせたIOLによっても達成することが可能である。IOLは、従来の球面円柱矯正に加えて、焦点オフセット、およびレンズ中心におけるある特定の量の球面収差を提供する。環状部における光線透過率の制御は、角膜に移植される角膜インレー等のデバイスによって達成することが可能である。
【0035】
瞳孔サイズの制限および眼の小さい瞳孔内の球面収差の誘発は、レーザー視力矯正等の手技と組み合わせた角膜インレーによっても達成することが可能である。角膜インレーは、眼の瞳孔にわたる環状領域における光を遮断する、または減衰させるために使用することが可能である。レーザー屈折矯正手術は、眼の焦点範囲を適切に設定するために、球面収差の所望の量および所望の焦点オフセットを生成するために使用することが可能である。そのような手順のための方法は
図4に示され、1)眼41に角膜インレーを移植する工程と、2)眼42の波面収差を測定する工程と、3)レーザー屈折矯正手術によって生成される所望の焦点オフセット44および球面収差43の所望の量を決定する工程と、4)決定された焦点誤差および球面収差に基づき、レーザー屈折矯正手術45を実施する工程とを含む。従来の球面円柱矯正の屈折矯正は、レーザー治療で実行されることも可能である。
【0036】
複数の光学領域における反対符号を有する球面収差を誘発することによる、眼の焦点深度の改善
眼の有効瞳孔を2mm未満に低減するデバイスは、老眼の治療のために焦点深度を増加させることが可能であるが、眼に入る全光も大幅に低減する。
図5は、眼の比較的大きい自然瞳孔を利用し、複数の光学領域における反対符号を有する球面収差を誘発することによって、眼の焦点深度を増加させる方法を示す。明所視条件下での眼の光学は、3つの領域に分けられる。中心領域51、中間領域52、および外側領域53。この屈折矯正方法において、51および52の両方は、光波に対して無色および透明であるが、外側部53は、瞳孔周囲における光を遮断する、または減衰させる。従来の球面円柱矯正に加えて、無色光学部51および52は、異なる焦点オフセット、および反対符号を有する球面収差を有する。薄明視条件における眼の自然瞳孔は、54によって示される。
【0037】
一実施例では、中心無色部51は、1.6mmの直径を有し、1.34um(または0.1(Z12(r)+3.87Z4(r))の正の球面収差、および4.0ジオプターの焦点オフセットを有する。中心無色部の外側において、環状部52は透明であり、3mmの直径を有する。部分52は、52の外側縁部において、異なる焦点力(0D)、および約4.3um(または−0.32(Z12(r)+3.87Z4(r))の負の球面収差を有する。51および52の外側には、明所視条件に対する中心光学部の外側のほとんどの光を遮断する、または減衰させる環状マスク部がある。環状部の外径は、薄明視条件(微光レベルにおける明所視条件)での個々の眼の最大瞳孔に応じて、3.5mm〜6mmの間である。
【0038】
図6は、遠方視力(無限遠:1段目、3メートルの距離:2段目)、中距離視力(0.7メートルの距離:3段目、0.5メートルの距離:4段目)、および近方視力(0.33メートルの距離、下段)に対する、調節なしの眼の計算されたMTFを示す。3つの瞳孔サイズが考慮される。1.5mmの瞳孔(左)、2mmの瞳孔(中央)、および3mmの瞳孔(右)。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。
【0039】
この老眼治療の方法に対して、3つの特徴に気付くことができる。第1に、新しい方法は、眼の瞳孔が1.6mm未満である場合、
図1および
図2aに示すように、同一の光学的品質および焦点深度を有する。第2に、新しい方法は、最後の3つの段に示されるように、より大きい瞳孔に対して近方視力および中距離視力の改善された画質を有する。第3に、新しい方法は、夜間に遠方視力に対して低下した画質を有するが(最初の2つの段)、1.6mmの代わりに3mmの瞳孔サイズで、改善した光量子効率を有する。
【0040】
図7は、
図6に示すような眼の計算された網膜コントラスト(MTF)に基づく推定視力を示す。我々は、無限遠(0D)から0.25メートルにおける近接物体(4D)までの幅広い焦点距離に対して、
図6中の同一の3つの瞳孔サイズを考慮する。推定視力は、3つの瞳孔サイズ全てに対して、および4ジオプターの焦点範囲にわたって、20/40以上であることがわかる。小さい1.5mmの瞳孔に対して、推定視力は、
図2aに示すものと同一である。また、1.6mmよりも大きい瞳孔サイズに対して、20/40よりも良好な視力を有する3つの領域、遠方視力(<0.3D)、中距離視力(約2D)、および近方視力(約3D)があることがわかる。さらに、
図5に説明する方法により、1.6mmの小さい瞳孔サイズを伴う方法と比較して、夜間視力に対してより多くの光(約3.5x)が可能となる。
【0041】
図8aは、本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される光学素子を示す。屈折要素は、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、2つの光学部における反対符号を有する球面収差を誘発する。球面収差の誘発は、レンズ形成において少なくとも1つの非球面を利用することによって達成することが可能である。屈折要素は、中心円形光学部81と、環状光学部82と、中心光学部の外側、および最大で薄明視条件での眼84の自然瞳孔までの光を遮断する、または減衰させる環状マスク83とを含む。屈折要素は、従来の球面円柱矯正を提供し、明所視に対する眼の瞳孔サイズを制限し、2つの光学部における反対符号を有する球面収差を誘発する。中心光学部の直径D1は、1.4mm〜2mmの間である。環状部の外径D2は、2.5mm〜3.5mmの間であり、環状部の外径D3は、直径3.6mm〜12mmの間である。
【0042】
図8bは、本発明に従った、老眼治療のために眼に移植または装用される別の光学素子を示す。
図8aのデバイスとは異なり、本デバイスは、暗所視(杆体視)に対する光量子効率の増加のために、環状マスク部の外側に無色光学部85を有する。
【0043】
別の実施形態を
図8cに示す。
図8aのデバイスとは異なり、該デバイスは、環状不透明マスク83の代わりに無色光学部86を有する。部分86は、瞳孔周囲における高次収差を制御する場合と制御しない場合がある。
【0044】
図8a、
図8b、および
図8cの光学素子は、先行技術において既知の球面および非球面レンズのための従来のプロセスを用いて製造される、眼内レンズ(IOL)またはコンタクトレンズであってもよい。レンズの少なくとも1つの表面は、所望の球面収差を誘発するために、非球面でなければならない。環状の不透明または部分的に透明な部分は、無色レンズ部の一部をコーティングまたは色付けすることによって得ることが可能であり、また、無色レンズの間に不透明層を挟むことによって得ることも可能である。
【0045】
中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによる、眼の焦点深度の改善
我々は、説明される方法およびデバイスが、眼の有効瞳孔サイズを3mm以下の比較的小さい値に制限する環状マスクを含んでいるため、個々の眼における高次収差(球面収差)をこれまで無視してきた。
【0046】
正常なヒトの眼は、ほとんどの正のレンズと同様に大きい瞳孔に対して負の球面収差を有する場合が多い。球面収差の大きさは、正規母集団において、6mmの瞳孔に対して4μm未満(−0.3(Z12+3.87Z4))である場合が多い。表1は、3つの場合における、6mmの瞳孔に対して最大で4mmの球面収差を有する異なる瞳孔サイズの正常なヒトの眼における球面収差を示す。
【0048】
実際の眼に対する小さい瞳孔(直径<3mm)における球面収差は、ごくわずかであるが、直径が4mmよりも大きい瞳孔に対しては有意であり得ることがわかる。したがって、我々は、3mmよりも大きい瞳孔サイズに対して老眼の治療を計画する場合、ヒトの眼における高次収差ならびに球面収差に対応しなければならない。
【0049】
我々は、眼の瞳孔を複数の部分に分け、それらの球面収差を別々に制御することによって、老眼治療のために眼の焦点深度を増加させるための方法を説明する。
図9に示すように、明所視条件における眼の光学は、2つの部分、91(瞳孔中心)および92(瞳孔周囲)に分けられる。自然瞳孔は、93によって示される。眼の焦点深度の増加は、中心瞳孔における球面収差を誘発し、同時に瞳孔周囲における高次収差を制御することによって達成することが可能である。瞳孔中心の直径D1は、2mm〜4mmの間であり、D2の外径は、3.5mm〜6mmの間である。
【0050】
図10は、中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるためのプロセスを示す。第1に、波面収差101を波面収差計を用いて測定する。波面収差計は、従来の球面円柱矯正だけではなく、球面収差、コマ収差等の高次収差も記録する。球面円柱度数等の自覚屈折ならびに眼の調節範囲も主観的に測定される。第2に、眼を遠方視力に対して正視眼にする矯正要素に対する球面円柱矯正102を決定する。第3に、球面収差の所望の大きさを、瞳孔中心103および瞳孔周囲104等の少なくとも2つの瞳孔部において決定する。第4に、矯正要素における球面収差を、眼の高次収差101、ならびに所望の球面収差103および104に基づき、瞳孔中心105および瞳孔周囲106に対して決定する。第5に、矯正要素に対する瞳孔中心107および瞳孔周囲108における焦点オフセットを決定する。最後に、3つの組の屈折パラメータに基づき、レーザー視力矯正、コンタクトレンズ、眼鏡、移植コンタクトレンズ、および眼内レンズに対して、波面誘導老眼矯正109を達成することが可能である。それらは、眼の瞳孔全体にわたる従来の球面円柱矯正102、瞳孔中心における球面収差の大きさ105および瞳孔周囲における球面収差の大きさ106、ならびに瞳孔中心における焦点オフセット107および瞳孔周囲における焦点オフセット108を含む。
【0052】
一実施形態では、有意な負の球面収差が瞳孔中心において誘発される一方で、正の球面収差は瞳孔周囲において誘発される。一実施例として、表2は、これらの矯正のうちの1つに対するパラメータを記載する。第1に、眼の光学を、2つの部分、中心の2.5mmの瞳孔および直径約5mmの外側瞳孔に分ける。第2に、約−4μmの負の球面収差(−0.3(Z12(r)+3.87Z4(r))を中心瞳孔において誘発する一方で、約4μmの正の球面収差(0.3(Z12(r)+3.87Z4(r))を、外側瞳孔部において制御する。各光学サイズに対する焦点オフセットはそれぞれ、−0.6ジオプターおよび1.1ジオプターである。
【0053】
図11aは、眼が表2のパラメータに従った屈折矯正を有する場合の、遠方物体(0D、上)および近接物体(1.9D、下)に対する眼の計算された変調伝達関数を示す。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、3.5mmの瞳孔(中央)、および5mmの瞳孔(右)。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。
図11bは、遠方物体(0D、上)および近接物体(1.9D、下)に対する眼の網膜の視力チャートの計算された網膜像を示す。
図12は、表2に説明する一実施形態における、5つの異なる瞳孔サイズにおける、老眼治療のための光学素子を有する眼の推定視力を示す。
【0054】
推定視力は、直径3.5mm未満の全ての瞳孔サイズに対して、および瞳孔サイズが大きい(4mmまたは5mm)場合の遠方視力に対して、20/30以上であることがわかる。近接物体に対して、推定視力は、瞳孔サイズが大きい(4mmまたは5mm)場合、20/40以上である。
【0055】
老眼矯正のための別の方法では、有意な負の球面収差が瞳孔中心において誘発される一方で、個々の眼における大きい瞳孔に対する球面収差は排除される。
【0057】
別の実施例として、表3は、これらの矯正のうちの1つに対するパラメータを記載する。第1に、眼の光学を、2つの部分、中心の2.8mmの瞳孔および直径約6mmの外側瞳孔に分ける。第2に、約−4μmの負の球面収差(−0.3(Z12(r)+3.87Z4(r))を中心瞳孔において誘発する一方で、眼の瞳孔周囲における球面収差(>2.8mm)のほとんどを低減または排除する。焦点オフセットは、瞳孔中心および瞳孔周囲に対して同一である。
【0058】
図13aは、眼が表3のパラメータに従った屈折分布を有する場合の、遠方物体(0D、上)および近接物体(1.9D、下)に対する眼の計算された変調伝達関数を示す。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。
図13bは、遠方物体(0D、上)および近接物体(1.9D、下)に対する眼の網膜の視力チャートの計算された網膜像を示す。
【0059】
図14は、表3のパラメータに従った6つの異なる瞳孔サイズにおける、老眼治療における眼の推定視力を示す。屈折矯正が、4mmよりも大きい瞳孔サイズ(夜間)に対する遠方視力(約0D)に対して、および4mm未満の瞳孔サイズに対する近方視力(約1.8D)に対して、優れた視力(20/30以上)を提供することが可能であることに留意されたい。また、屈折矯正が、3.5mm以下の瞳孔サイズに対する2ジオプターの焦点深度に対して、許容できる視力(20/40以上)を提供することが可能であることもわかる。さらに、屈折矯正が、3.5mmよりも大きい瞳孔サイズに対して、二重焦点矯正の特性を有し、0.3D〜1.2Dの間の低視力領域があることにも留意されよう。
【0060】
老眼矯正のためのさらに別の実施形態では、有意な正の球面収差が瞳孔中心において誘発される一方で、眼の大きい瞳孔に対する球面収差が矯正される。
【0062】
別の実施例として、表4は、これらの矯正のうちの1つに対するパラメータを記載する。第1に、眼の光学を、2つの部分、中心の4mmの瞳孔および外側環状瞳孔領域に分ける。第2に、約13.4μmの正の球面収差(1.0(Z12(r)+3.87Z4(r))を中心瞳孔において誘発する一方で、眼の瞳孔周囲における球面収差(>4mm)を矯正する。各光学部に対する焦点オフセットはそれぞれ、1.7Dジオプターおよび0ジオプターである。
【0063】
図15は、眼が表4のパラメータに従った屈折分布を有する場合の、遠方物体(0D、上)、および中距離視力(1.0D、中央)、および近方視力(1.8D、下)に対する眼の計算された変調伝達関数を示す。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。
【0064】
屈折矯正が、夜間の優れた遠方視力、および大きい瞳孔サイズにおける低下した近方視力を提供することが可能であることは、MTFデータから明らかである。屈折矯正は、
図16に示すように、4mm以下の瞳孔サイズに対する2ジオプターの焦点深度に対して、許容できる視力(20/40以上の視力)を提供することが可能である。
【0065】
中心瞳孔における球面収差を誘発し、瞳孔周囲における高次収差を制御することによって、眼の焦点深度を増加させるための3つの実施形態を示す。表2〜表4に記載するこれらの屈折矯正が、ある程度の残余調節(1〜2ジオプター)を有する眼に対して最も適切であることは、指摘されなければならない。焦点オフセットおよび球面収差に加えて、屈折矯正は、遠方視力に対する従来の球面円柱矯正を含んでもよい(球面、円柱面、および軸角度)。
【0066】
図17aは、球面収差(または高次収差さえも)が制御される、2つの部分171および172を含む、老眼矯正のための光学素子を示す。明所視に対する眼173の瞳孔の外側において、外側部173は、球面収差を含む場合と含まない場合がある。中心部の直径(D1)は、1.8mm〜4mmの間である。中間部の直径(D2)は、4mm〜6mmの間である。外側部の直径(D3)は、眼鏡、コンタクトレンズ、移植コンタクトレンズ、レーザー屈折手術、および眼内レンズさえもを含む、個々の実施に応じて、6mm〜25mmに及ぶ。
【0067】
図17bは、老眼治療のためのカラーコンタクトレンズの一実施形態を示す。該レンズは、球面収差(または高次収差さえも)が制御される、2つの部分175および176を含む。中間無色部176の外側において、デバイスは、眼への光を遮断する、または減衰させる環状マスクを有する。中心部の直径(D1)は、1.8mm〜3.5mmの間である。中間部の外径(D2)は、直径3.5mm〜5mmの間である。外側部の外径(D3)は、8mm〜12mmに及ぶ。光学素子は、先行技術において既知の従来のプロセスを用いて製造することが可能である。環状の不透明または部分的に透明な部分は、無色レンズ部の一部をコーティングまたは色付けすることによって得ることが可能であり、また、無色レンズの間に不透明層を挟むことによって得ることも可能である。
【0068】
眼の中心瞳孔における高次収差を誘発することによる、眼の焦点深度の増加
表2〜表4の方法は、瞳孔周囲における球面収差の正確な制御を伴うが、それは、いくつかの手技またはデバイスに対して困難であり得る。瞳孔周囲における高次収差を変化させない改善された方法が有利である。
【0069】
我々は、眼の瞳孔を複数の部分に分け、中心瞳孔部における球面収差のみを制御することによって、老眼治療のために眼の焦点深度を増加させるための方法を説明する。
図18に示すように、明所視条件における眼の光学は、2つの部分181(瞳孔中心)および182(瞳孔周囲)に分けられる。我々は、中心瞳孔182における球面収差のみを誘発し、瞳孔周囲における眼の球面収差は変化させない。瞳孔中心181の直径は、2mm〜4mmの間であり、D2の外径は、4mm〜6mmの間である。薄明視条件における眼の自然瞳孔は、183によって示される。
【0070】
図19は、中心瞳孔における球面収差を誘発することによって、眼の焦点深度を増加させるためのプロセスを示す。第1に、眼の瞳孔にわたる波面収差191を波面収差計を用いて測定する。波面収差計は、従来の球面円柱矯正だけではなく、球面収差、コマ収差等の高次収差も記録する。球面円柱度数の自覚屈折ならびに眼の調節範囲も主観的に測定される。第2に、眼を遠方視力に対して正視眼にする矯正要素に対する球面円柱矯正192を決定する。第3に、中心瞳孔(4mm未満)に対する球面収差の所望の量が決定される。眼の中心瞳孔における誘発される球面収差195を、所望の球面収差および個々の眼においてすでに存在する球面収差193に基づいて決定する。第5に、瞳孔周囲における焦点オフセット196を、個々の眼における高次収差(球面収差)194に基づいて決定する。最後に、3つの組の屈折パラメータに基づき、レーザー視力矯正、コンタクトレンズ、眼鏡、移植コンタクトレンズ、および眼内レンズに対して、波面誘導老眼矯正197を達成することが可能である。それらは、眼の瞳孔全体にわたる従来の球面円柱矯正192、瞳孔中心における球面収差の大きさ195、ならびに瞳孔中心および瞳孔周囲における焦点オフセット196を含む。
【0072】
一方法では、屈折矯正は、中心瞳孔部における負の球面収差を誘発するが、瞳孔周囲における高次収差は変化させない。眼が瞳孔周囲における球面収差を有する場合、中心瞳孔よりも大きい瞳孔サイズの眼の光学的品質は、眼における球面収差によって決定される。
【0073】
一実施例として、表5は、6mmの瞳孔に対する−4mmの既知の球面収差(−0.3(Z12(r)+3.87Z4(r))を有する仮想的な眼を説明する。屈折矯正は、中心の2.8mmの瞳孔において、−4mmの負の球面収差(−0.3(Z12(r)+3.87Z4(r))を誘発するように行われる一方で、瞳孔周囲における高次収差は、眼における高次収差によって決定される。
【0074】
瞳孔周囲における眼の球面収差によって、中心の2.8mmの瞳孔よりも大きい瞳孔サイズの眼の光学的品質は、表3に記載する屈折矯正とは異なる。
【0075】
図20aは、瞳孔中心と瞳孔周囲との間で、焦点オフセット(201および203)を有し、焦点オフセット(202および204)を有しない一実施形態における、中心瞳孔における有意な負の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼の計算されたMTFを示す。眼は、6mmの瞳孔に対して4ummの負の球面収差を有することが既知である。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。遠方視力に対するMTFのみを示す。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。
【0076】
図20bは、中心瞳孔における有意な負の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼における視力チャートの網膜像を示す。中心瞳孔における誘発された球面収差を除いて、光学素子は、眼の瞳孔全体にわたって同一の球面円柱矯正を有する。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。
図20a中の低いMTF202および204から予測されるように、4mmの瞳孔(中央)および6mmの瞳孔(左)における視力チャートの網膜像は、非常にぼやけている。
【0077】
図20cは、他の実施形態における、中心瞳孔における有意な球面収差を誘発する屈折矯正下での眼における視力チャートの網膜像を示す。中心瞳孔における誘発された球面収差および瞳孔全体にわたる球面円柱矯正に加えて、光学素子は、眼における高次収差に基づきカスタムで決定される、瞳孔周囲における焦点オフセットを有する。
【0079】
図20a中の改善されたMTF201および203が、4mmの瞳孔(中央)および6mmの瞳孔(右)に対して改善された網膜像をもたらすこと、および瞳孔周囲における焦点オフセットが、中型の瞳孔および大きい瞳孔に対して許容できる画質を達成するために必要であることがはっきりとわかる。
【0080】
別の実施例として、表6は、6mmの瞳孔に対する−4mmの既知の球面収差(−0.3(Z12(r)+3.87Z4(r))を有する仮想的な眼を説明する。また、我々は、屈折矯正が、中心の4mmの瞳孔において、13.4mmの正の球面収差(1.0(Z12(r)+3.87Z4(r))のみを誘発する一方で、瞳孔周囲における高次収差は、眼における高次収差によって決定されると仮定する。
【0081】
瞳孔周囲における球面収差によって、中心瞳孔(4mm)よりも大きい瞳孔サイズの眼の光学的品質は、表4に記載する屈折矯正とは異なる。
【0082】
図21aは、瞳孔周囲における焦点オフセットが異なる2つの実施形態における、中心瞳孔における有意な正の球面収差を誘発する屈折矯正下での遠方視力(0D)に対する眼のMTFを示す(表6を参照)。眼は、6mmの瞳孔に対して4μmの負の球面収差を有することが既知である。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。4mm未満の瞳孔サイズに対して、眼の光学的品質は、予想通り、両方の実施形態に対して同一である。しかしながら、個々の眼における高次収差に基づくカスタマイズされた焦点オフセット211を用いた屈折矯正を有する眼の光学的品質は、0Dの固定された焦点オフセットを用いたものよりも有意に良好である。
【0083】
図21bは、中心瞳孔における有意な正の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼における視力チャートの網膜像を示す。瞳孔周囲における焦点オフセットは、個々の眼における高次収差に関係なくゼロである。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。
図21cは、中心瞳孔における有意な正の球面収差を誘発する屈折矯正下での眼における視力チャートの網膜像を示す。瞳孔周囲における焦点オフセットは、個々の眼における高次収差に基づき決定される。3つの瞳孔サイズが考慮される。2mmの瞳孔(左)、4mmの瞳孔(中央)、および6mmの瞳孔(右)。瞳孔周囲における個々の眼の高次収差に基づく焦点オフセットが、夜間の大きい瞳孔に対する網膜画質を大幅に改善することが可能であることがはっきりとわかる。
【0084】
表5〜表6に記載するこれらの屈折矯正が、ある程度の残余調節(1〜2ジオプター)を有する眼に対して最も適切であることは、指摘されなければならない。焦点オフセットおよび球面収差に加えて、屈折矯正は、遠方視力に対する従来の球面円柱矯正を含んでもよい(球面、円柱面、および軸角度)。
【0085】
図22は、球面収差が中心瞳孔において眼に対して誘発される中心部221と、球面収差(または高次収差)がほとんどまたは全く変化されない外側部222とを含む、老眼矯正のための光学素子を示す。中心部の直径(D1)は、1.8mm〜4mmの間である。外側部の直径(D2)は、眼鏡、コンタクトレンズ、移植コンタクトレンズ、レーザー屈折手術、および眼内レンズさえをも含み得る、個々の実施に応じて、6mm〜25mmである。低明所視条件における眼の瞳孔サイズは、222によって示される。
【0086】
眼の瞳孔にわたって正の球面収差を誘発することによる、眼の焦点深度の増加
眼の焦点深度の増加は、眼の瞳孔にわたって正の球面収差を誘発すること、および眼に対して遠方視力における最適画質を設定するための焦点オフセットによって達成することも可能である。
図23に示すように、明所視条件下での眼の光学は、231として示され、薄明視条件(微光における明所視)に対する眼の瞳孔は、232である。瞳孔の直径(D1)は、眼によって異なるが3mm〜6mmの間である。
【0088】
表7は、異なる瞳孔サイズ内の眼において誘発された正の球面収差の総量を示す。焦点オフセット(例えば、約1.7D)は、眼の遠方視力に対する眼の最適画質を設定するために、従来の球面円柱矯正に追加することが可能である。
【0089】
図24は、3つの瞳孔サイズ:2mm(左)、4mm(中央)、および6mm(右)に対する眼のMTFを示す。3つの異なる視距離が考慮される。0D(上)、1.0D(中央)、および1.75D(下)。屈折矯正によって誘発される大きい正の球面収差により、正常なヒトの眼における高次収差は、無視され得る。MTFプロットの横座標は、サイクル/度での空間周波数である。
【0090】
図25は、7つの異なる瞳孔サイズに対する、表7に記載する老眼治療のための光学素子を有する眼の推定視力を示す。屈折矯正は、直径6mm以下の瞳孔サイズに対する2ジオプターの焦点深度に対して、許容できる視力(20/40以上の視力)を提供することが可能である。遠方視力に対する優れた視力(20/30)は、4.5mm未満の瞳孔サイズに対して達成することが可能である。
【0091】
図26は、明所視条件下での眼の瞳孔263を覆う中心光学部261を含む、老眼矯正のための光学素子を示す。中心部261の直径は、個々の眼の瞳孔サイズに応じて、3mm〜6mmの間である。有意な正の球面収差は、薄明視条件(微光における明所視)における眼の瞳孔263にわたって誘発される。眼の瞳孔の外側にある外側部262は、球面収差を含む場合と含まない場合がある。中間部の直径(D2)は、眼鏡、コンタクトレンズ、移植コンタクトレンズ、レーザー屈折手術、および眼内レンズさえをも含む、個々の実施に応じて、6mm〜25mmである。