特許第5930557号(P5930557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930557シリカガラスを製造するために気化した前駆体および気体を混合するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930557
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】シリカガラスを製造するために気化した前駆体および気体を混合するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20160526BHJP
   C03B 8/04 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C03B37/018 C
   C03B8/04 C
   C03B8/04 G
   C03B8/04 J
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-518885(P2014-518885)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公表番号】特表2014-520747(P2014-520747A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012043968
(87)【国際公開番号】WO2013006292
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年4月30日
(31)【優先権主張番号】13/176,804
(32)【優先日】2011年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】バーンスタイン,ルイス エー
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ シー
(72)【発明者】
【氏名】ディラード,ジェイソン エー
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,ジェニファー エル
(72)【発明者】
【氏名】スマン,バルラム
(72)【発明者】
【氏名】タンドン,プシュカー
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−119910(JP,A)
【文献】 特開2003−277072(JP,A)
【文献】 特表2000−502040(JP,A)
【文献】 特開2001−349514(JP,A)
【文献】 特開2001−294429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
C03B 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカスートを形成する方法において、
混合機筐体、該混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、該混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および該混合機筐体内で、前記前駆体送達槽の出口と前記酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材を備えた装置を提供する工程であって、前記逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である工程、
前記前駆体送達槽を通じて、前記混合機筐体内に気化した前駆体を送達する工程、
前記酸化性ガス送達槽を通じて、該気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを、該気化した前駆体と該酸化性ガスが前記混合機筐体内で混合されるように送達する工程、
混合された気化した前駆体と酸化性ガスを流れとしてバーナに排出して、シリカスートを形成する工程
を有してなる方法。
【請求項2】
基体上に前記シリカスートを堆積させて、光ファイバプリフォームを形成する工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流れのレイノルズ数が、Re=UρD/μにより定義され、式中、ρは前記気体の密度であり、Dは前記逆火部材と前記酸化性ガス送達槽との間の距離であり、μは前記前駆体の気体粘度である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
シリカスートを形成する方法において、
混合機筐体、該混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、該混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および該混合機筐体内で、前記前駆体送達槽の出口と前記酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材を備えた装置を提供する工程であって、前記逆火部材は、気化した気体の再循環を減少させるために少なくとも一方の側にテーパー状表面を備えたものである、工程、
前記前駆体送達槽を通じて、前記混合機筐体内に気化した前駆体を送達する工程、
前記酸化性ガス送達槽を通じて、前記気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを、該気化した前駆体と該酸化性ガスが前記混合機筐体内で混合されるように送達する工程、および
混合された気化した前駆体と酸化性ガスを流れとしてバーナに排出して、シリカスートを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項5】
基体上に前記シリカスートを堆積させて、光ファイバプリフォームを形成する工程をさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流速であり、Reは、流れのレイノルズ数である、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
シリカ粒子を製造するために気化した前駆体を気体と混合するための装置において、
混合機筐体、
前記混合機筐体内に気化した前駆体を送達するための、該混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、
前記気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを送達するための、前記混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および
前記混合機筐体内で、前記前駆体送達槽の出口と前記酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材であって、該逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である逆火部材、
を備えた装置。
【請求項8】
前記流れのレイノルズ数は、Re=UρD/μにより定義され、式中、ρは前記気体の密度であり、Dは前記逆火部材と前記酸化性ガス送達槽との間の距離であり、μは前記前駆体の気体粘度である、請求項記載の装置。
【請求項9】
シリカ粒子を製造するために気化した前駆体を気体と混合するための装置において、
混合機筐体、
気化した前駆体を送達するための、前記混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、
前記気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを送達するための、前記混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および
前記混合機筐体内で、前記前駆体送達槽の出口と前記酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材であって、気化した気体の再循環を減少させるために少なくとも一方の側にテーパー状表面を備えている逆火部材、
を備えた装置。
【請求項10】
前記テーパー状表面が前記逆火部材の発散側にある、請求項記載の装置。
【請求項11】
前記発散側が、6°から50°の範囲の角度を有する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流速であり、Reは、流れのレイノルズ数である、請求項9から11いずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全てが引用される、2011年7月6日に出願された米国特許出願第13/176804号の米国法典第35編第120条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、広く、前駆体と気体の混合ユニットに関し、より詳しくは、溶融シリカおよび光ファイバプリフォームの製造に使用されるものなどの熱分解生成されたシリカ粒子を製造するための、気化した前駆体を気体と混合するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の光ファイバプリフォームは一般的にシリカ粒子を含む。溶融シリカおよび光ファイバプリフォームの製造に現在使用されている熱分解生成されたシリカ粒子を製造するための前駆体として、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)などの、ハロゲン化物を含まないシクロシロキサンが一般に使用されている。その前駆体は、一般に、気化器内で気化され、下流において混合ユニット内で酸素と混ぜ合わされるように送達管に流れ込む液体である。次いで、前駆体と酸素の混合物はバーナに供給され、そこで、この混合物は、火炎の存在下による高温で酸化反応を経て、シリカ粒子を形成する。酸素と前駆体が混合される合流部で、前駆体(高分子量シロキサン、不揮発性残留物、アミン、シラン、酸(例えば、HCl)、および塩基(NaOH、KOH)などの不純物の存在を含む)は酸素と重合し、結果としてゲルを形成し得る。送達システム内でのゲル化は、一般に、背圧の上昇をもたらし、ゲル層を除去するために設備を定期的に洗浄する必要が生じる。これにより、設備の停止時間が生じ、製造プロセスが非効率的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、望ましくないゲルの形成を低減させるか排除する、前駆体および気体送達システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施の形態によれば、シリカスートを形成する方法が提供される。この方法は、混合機筐体、混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材(flashback member)を備えた装置を提供する工程を有してなり、この逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である。この方法は、前駆体送達槽を通じて、混合機筐体内に気化した前駆体を送達し、酸化性ガス送達槽を通じて、気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを、気化した前駆体と酸化性ガスが混合機筐体内で混合されるように送達する各工程をさらに含む。この方法は、混合された気化した前駆体と酸化性ガスを流れとしてバーナに排出して、シリカスートを形成する工程をさらに含む。
【0006】
別の実施の形態によれば、シリカスートを形成する方法が提供される。この方法は、混合機筐体、混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材を備えた装置を提供する工程を有してなり、この逆火部材は、気化した気体の再循環を減少させるために少なくとも一方の側にテーパー状表面を備えている。この方法は、前駆体送達槽を通じて、混合機筐体内に気化した前駆体を送達し、酸化性ガス送達槽を通じて、気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを、気化した前駆体と酸化性ガスが混合機筐体内で混合されるように送達する各工程をさらに含む。この方法は、混合された気化した前駆体と酸化性ガスを流れとしてバーナに排出して、シリカスートを形成する工程をさらに含む。
【0007】
さらに別の実施の形態によれば、シリカ粒子を製造するために気化した前駆体を気体と混合するための装置が提供される。この装置は、混合機筐体、この混合機筐体内に気化した前駆体を送達するための混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、および気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを送達するための混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽を備えている。この装置は、混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材をさらに備えており、この逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である。
【0008】
らなる実施の形態によれば、シリカ粒子を製造するために気化した前駆体を気体と混合するための装置が提供される。この装置は、混合機筐体、気化した前駆体を送達するための混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、および気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを送達するための混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽を備えている。この装置は、混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材をさらに備え、この逆火部材は、気化した気体の再循環を減少させるために少なくとも一方の側にテーパー状表面を備えている。
【0009】
追加の特徴および利点が、以下の詳細な説明に述べられており、その一部は、その説明から当業者には容易に明白になるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【0010】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、単なる例示であり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。これらの図面は、1つ以上の実施の形態を図解しており、説明と共に、様々な実施の形態の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】1つの実施の形態による、前駆体を気体と混合するための混合装置の説明図
図2図1に示された混合装置の拡大部分図
図3】別の実施の形態による、角度の付けられた逆火オリフィスを利用した、前駆体を気体と混合するための混合装置の説明図
図4図3に示された混合装置の拡大部分図
図5】スートプリフォームを形成するための外付け法(OVD)を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、現在好ましい実施の形態を詳しく参照する。その実施例が添付図面に図解されている。できるときはいつでも、同じまたは同様の部材を称するために、図面全体に亘り、同じ参照番号が使用されている。
【0013】
シリカ粒子を製造するための、ハロゲン化物を含まないシロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)などの気化した前駆体を気体と混合するための混合ユニットまたは装置の様々な実施の形態が、ここに開示されている。この装置は、混合機筐体、この混合機筐体内に気化した前駆体を送達するための混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、および気化した前駆体と混合すべき酸素などの酸化性ガスを送達するための混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽を備えている。この装置は、混合機筐体内に、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材を有する。1つの実施の形態によれば、この逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のセンチメートル/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である。別の実施の形態によれば、逆火部材は、混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置されており、この逆火部材は、気化した気体の再循環を減少させるために少なくとも一方の側にテーパー状表面を備えている。
【0014】
前記装置は、送達システム内の望ましくないゲル化を減少させるまたは排除する様式で、酸素などの気体およびシクロシロキサン(例えば、OMCTS)などの前駆体を都合よく混合する。このゲル化の減少または排除は、OMCTSが酸素流と接触する前に、それが導入されるところを越えた延長長さが最小になるような様式で、OMCTS蒸気流と酸素流を混合することによって達成してもよい。いくつかの実施の形態において、前駆体と酸素は、バーナ面を出る前に混合される。いくつかの実施の形態において、前駆体と酸素が、バーナ面を出る前に混合される最小長さは、1cm以上である。他の実施の形態において、前駆体と酸素が、バーナ面を出る前に混合される最小長さは、10cm以上である。他の実施の形態において、前駆体と酸素が、バーナ面を出る前に混合される最小長さは、100cm以上である。他の実施の形態において、前駆体と酸素が、バーナ面を出る前に混合される最小長さは、1m以上である。オリフィスまたはリングの形態にある逆火部材は、一般に、送達システムに入る逆火を停止させるための逆火防止装置として使用される。延長長さが不十分な場合、酸素のOMCTS蒸気流中への著しい逆拡散をもたらす強烈な再循環区域が発生するかもしれない。この再循環区域による酸素の逆拡散および増加した滞留時間により、重合反応が生じるのに十分な酸素濃度と十分な時間がもたらされ、それによって、2つの流れが接触する位置の近くに著しいゲル化が生じるであろう。OMCTSが酸素流と接触する前に、それが導入されるところを越えた最小の延長距離に逆火オリフィスを配置することによって、ゲル化作用を減少させるまたは排除することができる。その最小延長長さは、OMCTS蒸気がここに開示されるようにそれを通じて導入される開口の寸法およびOMCTSの流量との関係に依存するであろう。その上、逆火オリフィスまたはリングは、捕捉された再循環渦をさらに防ぐテーパー状逆火ベンチュリにより構成してよく、これは、流動における再循環区域の捕捉を排除するのに役立ち、それによって、重合速度を減少させるのに役立つ。再循環区域を回避できる場合、重合反応が生じるための滞留時間が十分ではなくなる。
【0015】
図1を参照すると、1つの実施の形態によれば、シリカ粒子を製造するための、気化した前駆体を酸化性ガスと混合するための混合装置10が概して図解されている。この装置10は、概して、液体から気化された前駆体供給源24からの気化した前駆体の流れを受け入れるための第1の入口および酸化性ガス供給源26から酸化性ガスの流れを受け入れるための第2の入口を有する混合機筐体12を備えている。この混合機筐体12は、気化した前駆体と酸化性ガスを混合するための内容積、および前駆体と気体の混合物の流れをバーナ28に排出するための排出口または出口14をさらに備えている。このバーナ28は、概して、前駆体と気体の混合物からシリカ粒子を熱分解生成するための火炎を含む。この混合機筐体12は、1つの実施の形態によれば、円筒形筐体であってよい。
【0016】
前記混合装置10は、前駆体供給源24から提供される気化した前駆体を混合機筐体12中に送達するための、混合機筐体12と、特に第1の入口で、連通した出口または排出口を有する前駆体送達槽16を備えている。液体前駆体から気化した前駆体を提供するための気化器が当該技術分野において公知であることを認識すべきである。この気化した前駆体は、ハロゲン化物を含まないシクロシロキサンを含んでよい。ハロゲン化物を含まないシクロシロキサンの一例は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)である。前駆体送達槽16は、1つの実施の形態によれば、円筒形管として構成されてもよい。気化した前駆体は、公知の直径を有する出口または排出口18を通じて所望の前駆体流量で前駆体送達槽16を通る流れとして送達される。
【0017】
混合装置10は、気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを送達するための、混合機筐体12と、特に第2の入口で、連通した出口または排出口22を有する酸化性ガス送達槽20も備えている。この酸化性ガス送達槽20は、酸化性ガス供給源26から酸化性ガスを受け入れ、所望の流量で混合機筐体12中に、排出口22で酸化性ガスの流れを送達する。この酸化性ガス送達槽20は、1つの実施の形態によれば、円筒形管を含んでもよい。酸化性ガス送達槽20は、1つの実施の形態によれば、0.4インチ(1cm)の内径(ID)L6および0.5インチ(1.3cm)の外径(OD)を有してもよい。酸化性ガスは、1つの実施の形態によれば、酸素を含んでよい。他の実施の形態によれば、酸化性ガスは、窒素酸化物、亜酸化窒素および酸素を含有する空気の内の1つ以上を含んでもよい。
【0018】
混合装置10は、混合機筐体12内で、前駆体送達槽16の排出口18と、酸化性ガス送達槽20の排出口22との間に配置された逆火部材30をさらに備えている。この逆火部材30は、前駆体送達槽16から混合機筐体12中への前駆体の流動のためにそれらの間に通路を提供するように、混合機筐体12の内壁と、酸化性ガス送達槽20の外壁との間の容積の一部を使用するリングの形状の逆火オリフィスとして構成されている。気化した前駆体の流れは、酸化性ガス送達槽20の外面と逆火部材30との間の間隙を流通し、酸化性ガスと混ざる。この逆火部材30は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽20の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である。逆火部材30は、送達システム中への逆火を停止し、最小距離L最小のために、前駆体と気体の流れが接触する場所で著しいゲル化が生じるのを防ぐように、OMCTS蒸気流中への酸素の著しい逆拡散を防ぐ。この実施の形態において、逆火リング30は、混合機筐体12の縦軸または流動軸に対して垂直に延在するように90°の角度θ1を有する。
【0019】
逆火リング30は、酸化性ガス送達槽20の出口22から距離L3に示されている。最小距離L最小は、長さL3の最小距離を規定する。混合機筐体12の内面と酸化性ガス送達槽20の外面との間の距離がL2により示されている。逆火リング30と酸化性ガス送達槽20の外面との間の距離は、長さL1を有する。この長さL1は、気化した前駆体の流れが混合機筐体12にそこを通って送達される間隙サイズを定義する。長さL2対長さL1の比は、3以上かつ20未満であることが好ましく、13未満であることがより好ましい。長さL3は、最も狭い間隙すなわち最小の長さL1を提供する逆火リング30上の地点から測定され、または逆火リング30が一定の高さの幅を有する場合、長さL3は、酸化性ガス送達槽20の排出口22に最も近い逆火リング30上の地点から測定される。
【0020】
流れのレイノルズ数は、Re=UρD/μにより定義され、式中、ρは気体の密度であり、Dは、長さL1として示されている、逆火リング30と酸化性ガス送達槽20との間の距離であり、μは前駆体の気体粘度である。距離L最小は、1つの実施の形態によれば、少なくとも2センチメートルである。OMCTS前駆体の流量が460g/分であり、酸素流の流量が160slpmであり、酸素流送達管20の外径が0.5インチ(1.3cm)であり、その内径が0.4インチ(1cm)であり、OMCTS流送達管18の直径が1.0インチ(2.5cm)であり、逆火リング30のオリフィス直径が0.62インチ(1.6cm)であり、温度が205℃である、一例によれば、延長長さL3は、再循環区域が避けられ、酸素逆拡散が制限されるように、約2.0インチ(5.1cm)の長さを有する。比較として、約0.25インチ(0.6cm)のより短い延長長さL3では、OMCTS蒸気流中への価値を下げ得る酸素の逆混合が生じた。ここに定義したように最小延長長さL3を維持することによって、再循環区域は劇的に減少し、酸素の逆拡散がなくなり、重合作用が抑制され、ゲル化問題が実質的に排除される。1つの実施の形態によれば、酸素管20中に戻る再循環を回避するために、酸化性ガス送達槽20の直径L6を横切る酸素ガス流について、レイノルズ数Reは1,000超である。
【0021】
下記の表1を参照すると、3つの実施例の混合装置10には、様々な長さおよび90°の角度特性が設けられている。これらの3つの実施例において、460g/分のOMCTS前駆体流量、160slpmの酸素流量、0.5インチ(1.3cm)の酸素流送達管20の直径、1.0インチ(2.5cm)のOMCTS流送達管18の直径、0.62インチ(1.6cm)の逆火リング30のオリフィス直径、および205℃の温度を含む、先に定義した流量と直径の情報を使用した。実施例1〜3は、長さ寸法L1、L2およびL3、およびL2対L1の長さ比を示しており、全てが90°のθ1である。実施例1〜3の全てにおいて、再循環がなく、ゲル化の問題もない。
【0022】
【表1】
【0023】
図3を参照すると、別の実施の形態によれば、シリカ粒子を製造するために、気化した前駆体を気体と混合するための混合装置10であって、角度がついた逆火ベンチュリを利用した混合装置10が図解されている。この実施の形態において、混合装置10は、同様に、混合機筐体12、前駆体供給源24からの気化した前駆体を送達するための前駆体送達槽16、および気体供給源26から酸化性ガスの流れを送達するための酸化性ガス送達槽20を備えている。気化した前駆体および酸化性ガスの流れは互いに混合されて、バーナ28に供給される流れを形成する。この実施の形態において、混合機筐体12内で、前駆体送達槽16の排出口18と酸化性ガス送達槽20の排出口22との間に配置された逆火部材30は、気化した気体の再循環を減少させるまたは排除するために、少なくとも一方の側にテーパー表面を備えている。この逆火部材30は、前駆体流の上流側にある収束壁34および前駆体流の下流側にある発散壁32を有するテーパー状ベンチュリとして形成されている。収束壁34は、図4に示されるように、筐体12の水平壁に対して角度θ2で形成されている。発散壁32は、図4に示されるように、筐体12の水平壁に対して角度θ1で形成されている。発散壁32は、1つの実施の形態によれば、6°から50°の範囲の角度θ1を有する。別の実施の形態によれば、発散壁32は10°から35°の範囲の角度θ1を有する。収束−発散ベンチュリ形状を有する逆火オリフィス30の使用は、流動における再循環区域の捕捉をなくし、それによって、重合速度を減少させるのに役立つ。
【0024】
逆火オリフィス30は、気化した前駆体がそこを通って、オリフィスリング30と酸化性ガス送達槽20の外壁との間の流れで流動する、長さL3とふられた最小間隙を有する。混合機筐体12の内面と酸化性ガス送達槽20の外面との間の距離も、長さL2より示されている。長さL2対長さL1の比は、1つの実施の形態によれば、3以上であることが好ましい。さらに、長さL2対長さL1の比は、20未満であることが好ましく、13未満であることがより好ましい。長さL3は、最も狭い間隙または最初の長さL1を提供する逆火オリフィス30上の最も狭い地点から測定される。収束壁34は長さL5に亘り収束し、発散壁32は水平長さL3に亘り発散する。この実施の形態において、発散壁32の長さは、酸化性ガス送達槽20の排出口22を長さL4だけ越えて延在している。この実施例において、酸化性ガス送達槽20の排出口22は、L7とふられた、バーナ28からの距離にある。
【0025】
逆火オリフィス30は、間隙L1により決定される第1の断面積を規定する。距離L2は、筐体12の内壁と、酸化性ガス送達槽20の外壁との間の第2の断面積を規定する。第2の断面積対第1の断面積の比は、1つの実施の形態によれば、4から10の範囲にあり、4から6の範囲にあることが好ましい。
【0026】
下記の表2を参照すると、その全てが、再循環を防ぐか減少させ、それゆえ、ゲルの形成を防ぐか減少させる、様々な長さL1、L2およびL3、並びに角度θ1を有する混合装置10の実施例が示されている。実施例4〜14は、OMCTS前駆体は460g/分の流量を有し、酸素の流量は160slpmであり、酸素流送達管20の直径は0.5インチ(1.3cm)であり、OMCTS流送達管18の直径は1.0インチ(2.5cm)であり、逆火リング30のオリフィス直径は0.62インチ(1.6cm)であり、温度が205℃である、先の実施例に関連して先に記載された流量および直径の寸法を含む。
【0027】
【表2】
【0028】
実施例1〜14の全ては、再循環または逆混合が回避できるか、または実質的に減少でき、それによって、ゲルの形成を減少させるまたは排除できることを示している。したがって、前記装置は、逆火部材から酸化性ガス送達槽での最小距離を都合よく利用して、再循環を十分に最小にする。その上、逆火部材のテーパー状表面は、気化した気体の再循環も減少させ、実質的にゲルを含まない送達システムがもたらされる。混合装置により、熱分解生成されたシリカ粒子を製造するために気化した前駆体および酸化性ガスを効率的に混合することができる。この混合装置は、1つの実施の形態によれば、溶融シリカを製造するために都合よく利用できる。別の実施の形態によれば、シリカ粒子は、光ファイバプリフォームを製造するために利用できる。
【0029】
図5は、気化した前駆体を気体と混合するための装置と共に使用できるスート光ファイバプリフォーム100を製造する方法を図解している。図示された実施の形態において、スートプリフォーム100は、回転しており、平行移動しているマンドレルまたは心棒104の外側にシリカ含有スート102を堆積させることによって形成される。このプロセスは、OCD法または外付け法として公知である。マンドレル104はテーパー状であってもよい。スート102は、気体形態のガラス前駆体24をバーナ28の火炎128に提供して、それを酸化することによって形成される。メタン(CH4)などの燃料130、および酸素などの燃焼支援気体26がバーナ28に提供され、着火されて、火炎128を形成する。Vとふられた質量流量制御装置が、好ましくは全てが気体形態にある、適切なドーパント化合物132、シリカガラス前駆体24、燃料130および燃焼支援気体26の適量を計量する。ガラス形成化合物24および132は火炎128内で酸化して、概して円筒形スート領域134を形成する。特に、所望であれば、ドーパント化合物132が含まれてもよい。例えば、ゲルマニウム化合物を屈折率上昇ドーパントとして(例えば、ファイバのコア中に)含んでもよく、または屈折率を低下させるために(例えば、ファイバのクラッドおよび/または空隙含有領域内に)、フッ素含有化合物を含んでもよい。
【0030】
1つの実施の形態によれば、シリカスートを形成する方法が提供される。この方法は、混合機筐体、混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材を備えた装置を提供する工程を有してなり、この逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス送達槽の出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である。この方法は、前駆体送達槽を通じて、混合機筐体内に気化した前駆体を送達し、酸化性ガス送達槽を通じて、気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを、気化した前駆体と酸化性ガスが混合機筐体内で混合されるように送達する各工程をさらに含む。この方法は、混合された気化した前駆体と酸化性ガスを流れとしてバーナに排出して、シリカスートを形成する工程をさらに含む。この方法は、基体上にシリカスートを堆積させて、光ファイバプリフォームを形成する工程をさらに含む。
【0031】
この方法の様々な態様によれば、流れのレイノルズ数は、Re=UρD/μにより定義され、式中、ρは気体の密度であり、Dは逆火部材と酸化性ガス送達槽との間の距離であり、μは前駆体の気体粘度である。距離L最小は少なくとも2センチメートルであってよい。この逆火部材は、気体の再循環を減少させるための少なくとも一方の側に、さらに前駆体の流れの発散側に、テーパー状表面を備えている。この逆火部材は、6°から50°の範囲の角度でテーパー状表面を有する。前駆体送達槽と酸化性ガス層との間の第1の距離の、逆火部材と酸化性ガス層との間の第2の距離に対する比は、3より大きい。第1の距離の第2の距離に対する比は20未満である。この逆火部材は、入口側に第1のテーパー状表面を、出口側に第2のテーパー状表面を有する。前駆体は、ハロゲン化物を含まないシクロシロキサンを含む。ハロゲン化物を含まないシクロシロキサンは、オクタメチルシクロテトラシロキサンを含み、酸化性ガスは酸素を含む。
【0032】
シリカスートを形成する方法であって、混合機筐体、混合機筐体と連通した出口を有する前駆体送達槽、混合機筐体と連通した出口を有する酸化性ガス送達槽、および混合機筐体内で、前駆体送達槽の出口と酸化性ガス送達槽の出口との間に配置された逆火部材を備えた装置を提供する工程を有してなり、この逆火部材は、気化した気体の再循環を減少させるために少なくとも一方の側にテーパー状表面を備えている方法も提供される。この方法は、前駆体送達槽を通じて、混合機筐体内に気化した前駆体を送達し、酸化性ガス送達槽を通じて、気化した前駆体と混合すべき酸化性ガスを、気化した前駆体と酸化性ガスが混合機筐体内で混合されるように送達し、混合された気化した前駆体と酸化性ガスを流れとしてバーナに排出して、シリカスートを形成する各工程をさらに含む。この方法は、基体上にシリカスートを堆積させて、光ファイバプリフォームを形成する工程をさらに含む。
【0033】
本発明の様々な態様によれば、テーパー状表面は逆火部材の発散側にあり、この発散側は6°から50°の範囲の角度を有する。前駆体送達槽と酸化性ガス層との間の第1の距離の、逆火部材と酸化性ガス層との間の第2の距離に対する比は、3より大きい。第1の距離の第2の距離に対する比は20未満であり、第1の距離の第2の距離に対する比は13未満である。この逆火部材は、入口側に第1のテーパー状表面を、出口側に第2のテーパー状表面を有する。この逆火部材は、L最小(cm)=0.453U(Re)-0.5567により定義された酸化性ガス管の排出口からの最小距離に配置されており、式中、Uは、前駆体のcm/秒で表された流であり、Reは、流れのレイノルズ数である。流れのレイノルズ数は、Re=UρD/μにより定義され、式中、ρは気体の密度であり、Dはリングと酸化性ガス送達槽との間の距離であり、μは前駆体の気体粘度である。距離L最小は少なくとも2センチメートルである。
【0034】
特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが当業者に明白であろう。
【符号の説明】
【0035】
10 混合装置
12 混合機筐体
16 前駆体送達槽
20 酸化性ガス送達槽
24 液体気化した前駆体供給源
26 酸化性ガス供給源
28 バーナ
30 逆火部材、逆火リング
100 スートプリフォーム
102 シリカ含有スート
104 マンドレル、心棒
128 火炎
130 燃料
図1
図2
図3
図4
図5