特許第5930581号(P5930581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930581
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】自動車用バイザー
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/00 20060101AFI20160526BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B60J3/00 L
   B60R13/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-265385(P2010-265385)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-116233(P2012-116233A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】314014184
【氏名又は名称】DNP田村プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】桑鶴 義浩
(72)【発明者】
【氏名】早川 文治
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/090107(WO,A1)
【文献】 特開2008−290673(JP,A)
【文献】 特開2006−069229(JP,A)
【文献】 特開平10−044776(JP,A)
【文献】 特開2005−199773(JP,A)
【文献】 特開平09−030346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/00
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂によって長尺帯状に形成されたバイザー本体の上縁に沿って金属製の装飾モールを付設してなり、その装飾モールの内側面を自動車の窓枠に当着させることによって、バイザー本体が自動車の窓ガラスの上端際を覆うように自動車に設置される自動車用バイザーであって、
装飾モールの端縁の一部に係止舌片が突設されており、その係止舌片以外の装飾モールの端縁が合成樹脂製の保護部材によって被覆されているとともに、
その保護部材の挿通孔を貫通させた装飾モールの係止舌片、装飾モールの裏面の内側へ折り返されることで、保護部材が装飾モールに固着されてることを特徴とする自動車用バイザー。
【請求項2】
前記保護部材に、装飾モールの裏面に当接する支持片が設けられており、
保護部材を貫通させた装飾モールの係止舌片が、支持片の裏面に当接するように折り返されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用バイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日除けや雨除けとして自動車の窓枠に装着される自動車用バイザーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
日除けや雨除けとして機能する自動車用のバイザー(フロントバイザーやリアバイザー)としては、長尺な刀身状に形成されたバイザー本体の上端縁に沿って、窓枠へ当着させるための帯状の鍔部を設けたものが知られている。また、従来の自動車用バイザーの中には、金属によって形成された自動車の窓枠とデザインを調和させるため、鍔部に沿って、長尺な金属製の装飾モールを取り付けたものもある(特許文献1)。
【0003】
そのように金属製の装飾モールを取り付けた自動車用バイザーにおいては、装飾モールの端縁でバイザー本体や自動車が損傷してしまう事態を防止するため、通常、特許文献2の如く、断面U字状の樹脂モールを装飾モールの端縁に外嵌させて焼き付ける等の方法により、装飾モールの端縁が別の素材で被覆される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−199773号公報
【特許文献2】特開平9−30346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の如く、断面U字状の樹脂モールを装飾モールの端縁に外嵌させて焼き付ける方法は、樹脂モールの装着作業に手間がかかる上、長期間の使用によって樹脂モールが劣化して硬化し、装飾モールの端縁から外れてしまうこともある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の自動車用バイザーの問題点を解消し、長期間に亘って使用した場合でも、装飾モールの端縁を被覆した樹脂が脱離したりしない上、容易かつ安価に製造することが可能な自動車用バイザー(フロントバイザーあるいはリアバイザー)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、合成樹脂によって長尺帯状に形成されたバイザー本体の上縁に沿って金属製の装飾モールを付設してなり、その装飾モールの内側面を自動車の窓枠に当着させることによって、バイザー本体が自動車の窓ガラスの上端際を覆うように自動車に設置される自動車用バイザーであって、
装飾モールの端縁の一部に係止舌片が突設されており、その係止舌片以外の装飾モールの端縁が合成樹脂製の保護部材によって被覆されているとともに、
その保護部材の挿通孔を貫通させた装飾モールの係止舌片、装飾モールの裏面の内側へ折り返されることで、保護部材が装飾モールに固着されてることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記保護部材に、装飾モールの裏面に当接する支持片が設けられており、保護部材を貫通させた装飾モールの係止舌片が、支持片の裏面に当接するように折り返されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る自動車用バイザーは、装飾モールの端縁を被覆した合成樹脂製の保護部材が、装飾モールに一体的に設けられた係止舌片によってかしめられた状態で、装飾モールの端縁に固着されているので、自動車への装着の際に、装飾モールの端縁によって自動車が損傷してしまう、という事態が生じない。加えて、製造時には、装飾モールの端縁によって、バイザー本体が傷付いてしまう事態も生じない。また、装飾モールの端縁に対する合成樹脂製の保護部材の取付強度が非常に高く、長期間に亘って使用した場合でも、保護部材装が脱離したりしない上、容易かつ安価に製造することができる。
【0010】
請求項2に係る自動車用バイザーは、装飾モールに突設された係止舌片が合成樹脂製の支持片を挟んだ状態でかしめられるので、かしめ加工時に過度の力が加わった場合でも、装飾モールの本体がへこんだりしない。それゆえ、請求項2に係る自動車用バイザーは、高い歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】自動車用バイザーの正面図である。
図2】自動車用バイザーの端面図(図1におけるA−A線端面図)である。
図3】装飾モールの端縁部分を示す説明図である(aは正面図であり、bは分解図である)。
図4】保護部材を示す説明図である(aは斜視図であり、bは図3(b)におけるB−B線端面図である)。
図5】保護部材を装飾モールの端縁に固着させる状態を示す説明図(保護部材は、図3(b)におけるB−B線端面図)である。
図6】自動車用バイザーを自動車に装着した状態を示す説明図である。
図7】自動車用バイザーの変更例を示す説明図(鉛直方向の端面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<自動車用バイザー構造>
以下、本発明の自動車用バイザーの一実施形態であるフロントバイザーについて、図面に基づいて詳細に説明する。図1図2は、本発明に係る自動車用バイザーを示したものである。自動車用バイザー1は、合成樹脂製のバイザー本体2、金属製の装飾モール5、合成樹脂製の保護部材6等によって構成されており、バイザー本体2が、適度な透光性と遮光性とを発現するようになっている。
【0013】
バイザー本体2は、薄い黒色に着色された透明な合成樹脂(たとえば、アクリル樹脂)を射出成形することによって、長尺な刀身状に一体成形されており、上下方向に若干湾曲し、中央部分が外側に突出した状態になっている。また、バイザー本体2の上部内側面には、装飾モール5に接着(粘着)させるための接着部7が一体的に設けられており、他の部分より内側に突出した状態になっている。さらに、バイザー本体2の上部外側面は、上端側へといくにつれて徐々に薄厚となるように曲面状に形成されている。
【0014】
一方、装飾モール5は、ステンレス製の薄板を、いわゆるプレス成形によって折り曲げ形成してなるものであり、鉛直断面が略S字状(逆S字状)になっている。そして、上部は、自動車の窓枠を被覆するための上下幅約30.0mmの帯状の被覆部17となっており、被覆部17の内側面には、自動車に取り付けるための両面粘着テープ8が貼着されている。また、被覆部17の上端部には、断面(鉛直断面)コ字状になるように内側へ折り曲げ形成してなる係合部18が設けられている。
【0015】
また、装飾モール5の下部には、バイザー本体2と接合させるための接合部10が、被覆部17の下端縁に沿って一連の帯状に設けられており、被覆部17よりも内側となるように凹状に窪んだ状態になっている。さらに、当該接合部10の下端縁は、バイザー本体2と係合可能に外向きに折り返されている。加えて、接合部10には、バイザー本体2を接着するための両面粘着テープ20が貼着されており、その両面粘着テープ20を利用して、バイザー本体2の上端際の接着部7が接着されている。
【0016】
また、図3は、装飾モール5の端縁部分を示す説明図である。装飾モール5の後端縁際は、他の部分に比べて狭幅(上下幅約10.0mm)に形成されており、後端縁の略中央には、保護部材6を係止させるための係止舌片9が、後方へ突出するように一体的に設けられている。当該係止舌片9は、上下幅が約2.5mmに形成されており、基端の部分が、他の部分に比べて狭幅(上下幅=2.0mm)になっている。そして、当該係止舌片9を利用して、装飾モール5の後端縁に、保護部材6が固着されている(かしめ止めされている)。
【0017】
図4は、保護部材(保護キャップ)6を示したものである。保護部材6は、合成樹脂(たとえば、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)樹脂)を射出成形することによって一体的に形成されている。そして、装飾モール5の後端縁と当接させる板状の後端当接部11の上下に、それぞれ、一定幅(前後幅)の帯状で外面を略円弧状に膨出させてなる外面被覆部12と、一定幅(上下幅)の矩形板状の支持片13とを、内向きに突設させた形状を有しており、水平断面が略コ字状になっている。また、支持片13の基端の略中央(上下方向の略中央)には、略3.0mm幅(上下幅)の長方形状の挿通孔15が穿設されている。さらに、支持片13の裏面(内面)には、かしめた装飾モール5の係止舌片9を嵌入させるための嵌入溝16が、基端から先端にかけて深くなるように刻設されている。加えて、支持片13の下側には、補強リブ14が下向きに連設されており、後端当接部11と連なった状態になっている。
【0018】
図5は、装飾モール5の後端縁に保護部材6を固着させる様子を示したものであり、保護部材6を固着させる際には、まず、保護部材6の挿通孔15に、装飾モール5の係止舌片9を挿通させて、装飾モール5の後端縁を後端当接部11に当接させるとともに装飾モール5の後端縁際の上面を外面被覆部12によって覆わせる(図5(a)の状態)。そして、係止舌片9の裏面を支持片13裏面の嵌入溝16に嵌入させるようにして、係止舌片9の基端の部分をコ字状に屈曲させる(すなわち、保護部材6を係止舌片9でかしめ止めする)ことによって、保護部材6の固着作業を完了する。
【0019】
<自動車用バイザー使用方法>
上記の如く構成された自動車用バイザー1は、図6の如く、自動車21のフロントドアーの窓枠22に装着されて使用される。なお、自動車用バイザー1を窓枠22に装着する際には、前端に設けられた係合片(図示せず)をドアミラーベースに設けられた係合凹部(図示せず)内に挿入するとともに、係合部18を窓枠2に係合させながら、装飾モール5の被覆部17の内側面に貼着された両面粘着テープ8によって、装飾モール5を窓枠22に粘着させる。そのように自動車21に装着された自動車用バイザー1は、日除け、雨除けとして効果的に機能する。さらに、金属製の装飾モール5が、窓枠22のデザインと良くマッチする。また、装飾モール5の端縁に保護部材6が取り付けられているため、自動車21への装着の際には、装飾モール5の端縁によって自動車21が損傷してしまう、という事態が生じない。さらに、かしめられた装飾モール5の端縁の係止舌片9が、良好な保護部材6の脱落防止機能を発現する。
【0020】
<自動車用バイザーの効果>
自動車用バイザー1は、上記の如く、装飾モール5の端縁の一部に係止舌片9が突設されており、その係止舌片9以外の装飾モール5の端縁が合成樹脂製の保護部材6によって被覆されているとともに、その保護部材6を貫通させた係止舌片9を、装飾モール5の裏面の内側へ折り返すことによって、保護部材6が装飾モール5に固着されているので、装飾モール5の端縁に対する保護部材6の取付強度が非常に高い。したがって、自動車用バイザー1は、長期間に亘って使用した場合や自動車21の走行中に大きな衝撃を受けた場合でも、保護部材6が脱離したりせず、装飾モール5の端縁が露出してしまう事態を精度良く防止することができる。
【0021】
また、自動車用バイザー1は、保護部材6に装飾モール5の裏面に当接する支持片13が設けられており、保護部材6を貫通させた係止舌片9が、支持片13の裏面に当接するように折り返されているため、係止舌片9が合成樹脂製の支持片13を挟んだ状態で、装飾モール5の本体にかしめられるので、かしめ加工時に過度の力が加わった場合でも、装飾モール5の本体がへこんだりしない。それゆえ、自動車用バイザー1は、高い歩留まりで製造することができる。
【0022】
加えて、自動車用バイザー1は、保護部材6を貫通させた係止舌片9が、支持片13の嵌入溝16内に嵌入されているため、使用中に大きな力が作用した場合にでも、保護部材6が位置ずれしたりしない。
【0023】
<自動車用バイザーの変更例>
本発明の自動車用バイザーの構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、バイザー本体、装飾モール、保護部材等の材質、形状・構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0024】
たとえば、本発明に係る自動車用バイザーは、上記実施形態の如く、自動車のフロントドアーの窓枠に装着するフロントバイザーに限定されず、自動車のリアドアーの窓枠に装着するリアバイザー等に変更することも可能である。
【0025】
また、バイザー本体は、上記実施形態の如く、保護部材に支持片が設けられたものに限定されず、支持片が設けられていないものでも良い。加えて、支持片に凹部が形成されているものに限定されず、単純な平板状の支持片を保護部材に一体的に形成したもの等に変更することも可能である。
【0026】
一方、保護部材は、上記実施形態の如きASA樹脂製のものに限定されず、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレン−スチレン)樹脂等のASA樹脂以外の合成樹脂によって形成されたものに変更することも可能である。
【0027】
さらに、本発明に係る自動車用バイザーは、上記実施形態の如く、装飾モールの端縁に係止舌片を一つのみ設けたものに限定されず、2つ以上の係止舌片を設けたものに変更することも可能である。なお、そのように構成する場合には、同一個数の挿通孔を保護部材に穿設することが必要である。かかる構成を採用した場合には、保護部材の装飾モールに対する取付強度が一段と向上する、というメリットがある。
【0028】
加えて、本発明に係る自動車用バイザーは、上記実施形態の如く、窓枠に粘着させる金属製の装飾モールを合成樹脂製のバイザー本体の上部に付設したものに限定されず、図7の如く、窓枠に粘着させるための鍔部4が合成樹脂製のバイザー本体2の上縁際に一体的に形成されており、当該鍔部4を金属製の装飾モール5’によって被覆したもの(たとえば、装飾モール5’を両面粘着テープ19によって鍔部4の外面に粘着させたもの)等に変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の自動車用バイザーは、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、自動車の日除け、雨除け用の部材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1・・自動車用バイザー
2・・バイザー本体
3・・庇体
5,5’・・装飾モール
6・・保護部材
9・・係止舌片
13・・支持片
21・・自動車
22・・窓枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7