(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、前記工程(e)と(f)との間で、前記第一の検出器流出液流動チャンネルからの前記リサイクル流を、帯電した発生器バリアによって溶離剤発生チャンバーから分離されている電解溶離剤発生器中の流通式イオン交換媒体を通して流動させ、該発生器イオン交換媒体を横切って電流を流して溶離剤を電解により発生させ、該サプレッサイオン交換媒体を電解的に再生し、かつ該発生した溶離剤を該クロマトグラフィー分離媒体に流す工程を含む、請求項10記載の方法。
更に、(g) 帯電した発生器バリアにより溶離剤発生器チャンバーから分離されている、流通式サプレッサイオン交換媒体を含む、電解溶離剤発生器を含み、該サプレッサイオン交換媒体が、前記遅延導管と流体連絡状態にあり、かつ該溶離剤発生器チャンバーが、クロマトグラフィーカラムと流体連絡状態にある、請求項17記載の装置。
前記遅延導管が、遅延ハウジングを含み、かつ前記触媒を用いるガス除去チャンバー流出液が、曲がりくねった流路で、該ハウジングを通って流れる、請求項17記載の装置。
請求項17に記載のクロマトグラフィー装置に使用されるガスおよびイオン種除去デバイスであって、液体流通ハウジング、該ハウジング中に設けられた、水素ガスと酸素ガスとを触媒的に結合し、または触媒的に過酸化水素を分解し、あるいはこれら両方を実施するための白金族金属触媒、および該ハウジング中に設けられた流通式イオン交換媒体を含むことを特徴とする、触媒を用いるガスおよびイオン種除去デバイス。
クロマトグラフィー分離媒体、該クロマトグラフィー分離媒体の下流側にあり、かつ該クロマトグラフィー分離媒体と流体連絡状態にある検出器、該検出器と該クロマトグラフィー媒体との間の流体用導管を含むクロマトグラフィーシステムと組み合わされ、該導管と流体連絡状態にあることを特徴とする、請求項30記載のデバイス。
流動する液体サンプル流中で、水素ガスと酸素ガスとを触媒的に結合し、または過酸化水素を触媒的に分解し、あるいはこれら両方を実施し、かつ検体イオン、対イオン、またはこれら両者を除去する方法であって、該方法が、クロマトグラフィー法に使用され、しかも、前記方法が、イオンを含有する液体サンプル流中で、水素ガスと酸素ガスとを結合し、あるいは過酸化水素を触媒的に分解する工程であって、該結合および分解は、該液体サンプル流を、該結合または分解を触媒することのできる白金族金属触媒を含む流通式の触媒を用いるデバイスを通して流すことにより行われる工程、および該デバイス中に設けられた流通式イオン交換媒体と接触させることによって、該流通式デバイス中の該液体サンプル流から該イオンを除去する工程を含み、前記クロマトグラフィー法が、
(a) サンプルイオン種を、溶離剤源からの水性溶離剤流中に注入する工程;
(b) 該溶離剤流中の該サンプルイオン種をクロマトグラフィー分離媒体を通して流すことにより、該サンプルイオン種をクロマトグラフィーにより分離して、クロマトグラフィー流出液として流出させる工程;
(c) 該クロマトグラフィー流出液中の、該分離されたサンプルイオン種を検出するために、該クロマトグラフィー流出液を検出器を通して流動させて、検出器流出液流として流出させる工程;
(d) 触媒を用いるガス除去チャンバーを通して該検出器流出液流を流すことにより、該検出器流出液流中で、水素ガスと酸素ガスとを触媒的に結合し、または過酸化水素を触媒的に分解し、あるいはこれら両方を行って、水を生成し、かつ該ガス除去チャンバーから流出する溶離剤流出液流のガス含有率を減じる工程;および
(e) 該触媒を用いるガス除去チャンバーからの該触媒を用いるガス除去チャンバー流出液流を、該クロマトグラフィー分離カラムに再循環する工程、
を含み、不安定な酸化性化合物の分解を容易にするために、該検出器と該触媒を用いるガス除去チャンバーとの間における、該検出器流出液流の流動に係る滞留時間を、遅延導管により、少なくとも約1分間とすることを特徴とする、前記方法。
クロマトグラフィー法における一段階として行われる請求項40記載の方法であって、該方法が、サンプルイオン種を水性溶離剤流に注入する工程と、該溶離剤流中の該サンプルイオン種を、クロマトグラフィー分離媒体を通して流すことにより、該サンプルイオン種をクロマトグラフィーにより分離する工程と、および該分離されたサンプルイオン種を検出する工程とを含み、前記触媒を用いるデバイスによる触媒作用が、該溶離剤流との流体連絡状態において発揮されることを特徴とする、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のシステムは、専らアニオンまたはカチオンとしてのイオン種を測定するのに有用である。適当な液状サンプルは、表面水、他の液体、例えば工業的、化学的廃棄物、体液、飲料、または飲用水を含む。
【0020】
該「イオン種」なる用語は、イオン形状にある分子種および本発明の条件下においてイオン化可能な分子を含む。該「溶離剤」なる用語は、検出すべきサンプルを搬送する、液体クロマトグラフィーシステムにおいて流動する溶液を意味する。本明細書においては、しばしば該溶離剤なる用語は、該溶液中の電解質をも意味する。該溶離剤は、通常水を主成分とするものであるが、電気化学的に安定である限り、有機溶媒を含むこともできる。
【0021】
幾つかの態様において、本発明は、サプレッサを含む。サプレッサ使用の目的は、該分析流バックグラウンドの導電率およびノイズを減じ、しかも被検体の導電率を高め(即ち、シグナル/ノイズ比を増大し)、一方でクロマトグラフィー効率を維持することにある。
【0022】
他の態様において、本発明は、改善された触媒を用いるガス除去デバイスおよび方法、並びに触媒を用いるガス除去デバイスおよび米国特許第7,329,346号に記載されたシステムを使用するための改善されたシステムに係る。ここで、該米国特許第の内容全体を参考としてここに組入れる。先ず、本発明を、
図1に示した態様について説明する。
【0023】
図1を参照すると、本発明を実施するための単純化された装置が例示されている。このシステムはサプレッサを含み、検出器から該サプレッサへの流出液のリサイクルを伴う。該システムの該当部分は、米国特許第5,248,426号に例示されている一般的なシステムと類似する。本発明においては、該サプレッサからの流出液は、好ましくは流出液貯槽内の溶離剤と混合した後に、分離のために使用される該溶離剤電解液の一部としてこの装置の分離カラムにリサイクルされる。好ましい一態様においては、1またはそれ以上の溶離液精製カラム、例えばイオントラップカラムをこのシステムにおいて使用して、該リサイクルされる流れにおける、典型的にはイオン形状にある汚染物を除去した後に、該リサイクル流を該分離カラムにおける溶離剤として使用する。
【0024】
図1を参照すると、該システムは、典型的にはクロマトグラフィー分離媒体クロマトグラフィーカラム10の形状にある、クロマトグラフィー分離媒体を含む。(ここで使用する用語「カラム」とは、指示された機能を果たす任意の形状にある、内部チャンバーを備えた流通式ハウジングを意味する)。あらゆる公知のクロマトグラフィー分離媒体を使用することができ、その例は、樹脂床、モノリスまたはその他の形状にあるイオン交換樹脂、イオン交換サイトに永続的に結合した、多孔質疎水性クロマトグラフィー樹脂、および移動相イオンクロマトグラフィー(MPIC)に使用されている媒体を含む。
【0025】
該カラム10由来の溶離剤の電解質の導電率を抑制するが、分離されたイオンの導電率を抑制しないように機能するサプレッサ12が、カラム10と直列式に配列されている。サプレッサ12からの該流出液は、好ましくは流通式導電率検出器セル14の形状にある、カラム10において分解されたイオン種を検出するための検出器に導かれる。イオン種を含む適当なサンプルは、サンプル注入バルブまたは注入器16を通して供給され、ここで、該サンプルは、溶離剤源または貯槽18からポンプ20によって組み上げられ、次いで注入バルブ16を通る溶離剤の溶液として該装置に通される。カラム10から出てくる該クロマトグラフィー流出液としての溶液は、サプレッサ12を介して導かれ、該サプレッサにおいて、該電解質は軽度に導電性の形状に変換される。サプレッサ12からの該クロマトグラフィー流出液は、模式的に導電率測定セルとして例示された検出器14を通り、該検出器内で、イオン種の存在は、イオン性物質の量に比例する電気シグナルを生成する。このようなシグナルは、典型的には検出器14から導電率測定器(図示せず)に導かれる。クロマトグラフィーシステム中のイオン種を検出するのに有用な、任意の他の公知の検出器を使用することも可能であり、例えば吸光度および電気化学的検出器が挙げられる。
【0026】
一態様において、検出器流出液と呼ばれる、導電率検出器14由来の流出液は、リサイクル導管22を介して、サプレッサ12における少なくとも一つの流通式検出器流出液流動チャンネル24に導かれる。イオン交換膜26は、検出器流出液流動チャンネル24と、クロマトグラフィー分離流出液流動チャンネル28とを分離しており、該流動チャンネル28は、クロマトグラフィーカラム10からの流出液を受取る。例示され単純化された変形では、単一の検出器流出液流動チャンネル24のみが使用されている。本発明のシステムは、また他の膜サプレッサ、例えば米国特許第5,248,426号に例示されている型の、サンドイッチ型サプレッサにも適用できる。サンドイッチ型サプレッサにおいて、該クロマトグラフィー分離流出液は、イオン交換膜によって分離された2つの検出器流出液流動チャンネルが側面に位置する中央流動チャンネルを流通する。この態様において、該検出器流出液流動チャンネルには、スプリッタバルブの使用により、導電率検出器14由来の該検出器流出液が供給される。このようなサンドイッチ型サプレッサおよび該導電率測定セルからのリサイクル液の利用に関する詳細は、米国特許第5,248,426号に例示されているような検出器流出液流動チャンネルによって与えられている。例示した如く、アニオンの分析に関連して、該検出器流出液流動チャンネルは正に帯電しており、また以下の式に従って、膜26を通過するために、ヒドロニウムイオンが発生する:
6H
2O → 4H
3O + O
2 + 4e
-
【0027】
アニオン分析に関連して、該クロマトグラフィー流出液流動チャンネルにおいて、該電解質のカチオン、例えばナトリウムイオンは、膜26を介して、電解サプレッサ用の図示されていないカソードに向かって、検出器流出液流動チャンネル12を流通する。ヒドロキシドイオンは、以下の式に従って水に転化される:
OH
- + H
3O
+ → 2H
2O
【0028】
好ましい一態様において、該サプレッサは、米国特許第5,352,360号の
図3および4に例示されているような、電解型のものである。
【0029】
アニオンのイオンクロマトグラフィーにとって適した溶離剤溶液は、アルカリ水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、アルカリ炭酸塩および重炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、アルカリ硼酸塩、例えば硼酸ナトリウム、これらの組合せ、および上記特許に記載されている溶離剤系を包含する。
【0030】
本発明のリサイクルシステムは、またカチオン(例えば、リチウム、ナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウム)の分析に対しても適用できる。この例において、該溶離剤の電解質は、典型的には該膜を損傷することのない酸である。メタンスルホン酸は、電解条件下で、該膜に対して不活性であることが分かっている。他の酸、例えば硝酸および塩酸は、該膜に損傷を与える恐れのある、電気化学的な副産物を生成し、従って該当する典型的な膜にとって一般的には好ましくない。
【0031】
米国特許第5,248,426号の流出液リサイクルシステムにおいて、該検出器流出液流動チャンネル由来の流出液は、廃棄される。これとは対照的に、
図1のシステムにおいて、該流出液流は、好ましくは溶離剤貯槽18を通して流すことにより、再度分離カラム10に導かれる。
図1に示された態様は、該触媒を用いるガス除去カラムに送られる前に、該流れが遅延される点を除き、米国特許第7,329,346号に記載されているシステムと類似する。
【0032】
図1を具体的に参照すると、該検出器流出液チャンネルからの流出液は、触媒を用いるガス除去カラム31、場合により遅延導管46を介してライン30に流入し、場合により溶離剤精製カラム32に流れ込み、またそこから溶離剤貯槽18の容器38の蓋36を通して突出するチューブを流動する。随意のガスベント40が、該システム内で電解的に発生した水素および酸素ガスをガス抜きするために、貯槽容器38内に設けられている。貯槽18からの溶離剤溶液は、ライン42を介して、分離用の溶離剤源として分離カラム10に導かれる。例示の如く、ライン42内の該溶離剤は、ポンプ10を介して流動し、また随意の溶離剤精製カラム44を流動した後に、分離カラム10に流入する。
【0033】
同様に
図1に例示した如く、随意のトラップカラム23を、ライン22内の、導電率測定セル14とサプレッサ12との間に配置することができる。好ましくは、このイオントラップカラム23には、炭酸塩溶離剤を用いるアニオン分析に対しては、炭酸塩型のアニオン交換樹脂が、あるいは水酸化物溶離剤を用いるアニオン分析に対しては、水酸化物型のアニオンイオン交換樹脂が充填される。典型的には、該イオントラップカラムは、単一の電荷、即ち正または負のイオンのみを除去する。酸溶離剤を用いるカチオン分析に関連して、該イオントラップカラムには、ヒドロニウム型のカチオン交換樹脂を充填することができる。該イオントラップカラムは、該抑制された溶離剤中の被検体イオンを保持する機能を果たす。
【0034】
溶離剤が該検出器から該分離カラムにリサイクルされるシステムにおいては、注入バルブ16から注入されるサンプルの汚染物を除去することが好ましく、また他の痕跡の汚染物が、該イオンクロマトグラフィーシステムの動作に起因して発生する恐れがある。該汚染物の除去は、精製カラム32または44の一方または両方を使用して行うことができる。溶離剤精製カラムの一つの型は、好ましくは図示されていない入口部および出口部を含み、例えば該入口部においては、好ましくは使用する該溶離剤のカチオンの形状にある、樹脂等の強酸性カチオン交換物質を備えている。例えば、該樹脂は、好ましくは、炭酸ナトリウム溶離剤に対してはナトリウム型にあり、あるいは硫酸溶離剤に対してはヒドロニウム型にある。該出口部には、該流動する溶離剤のアニオンの形状にある、樹脂等の強塩基性カチオン交換物質が充填されている。例えば、この形状は、炭酸ナトリウム溶離剤に対しては炭酸塩型であり、あるいは硫酸溶離剤に対しては硫酸塩型であり得る。該精製カラムで使用する該カチオン交換樹脂および該アニオン交換樹脂両者に対して、高度に架橋され、かつマクロ多孔質の高い表面積を使用することが好ましい。該樹脂として、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%なる架橋率、および少なくとも10m
2/g、好ましくは少なくとも20m
2/gなる表面積を有する樹脂を使用することが好ましい。このような樹脂は、該注入されたサンプルの成分および該システムにおいて生成される、他の痕跡の汚染物を除去する上で効果的である。このような樹脂の例は、バイオ-ラド(Bio-Rad)社(CA州、ハーキュルス)から入手できるAG MP-50強酸性カチオン交換樹脂およびAG MP-1M強塩基性アニオン交換樹脂を含む。他の型の、随意の溶離剤精製装置を使用することも可能である。
【0035】
場合により、該溶離剤精製カラム32または44は、また該リサイクル溶離剤中の電荷をもたない汚染物を除去するために、好ましくは高い表面積を有する、中和された多孔質樹脂からなる追加の区画を含むこともできる。該例示された態様においては、分離カラム10内に入る前に、該溶離剤を更に精製するために、ポンプ20の出口に配置された上記随意の小さな溶離剤精製カラム44に比較して、より大きな溶離剤精製カラム32が、サプレッサ12の上流側に配置されている。カラム32は、少なくとも0.5ミリ当量なるイオン交換容量を有することが適当である。
【0036】
一般に、該溶離剤精製カラムおよび該イオントラップカラムは、注入された該サンプル由来のイオンおよび該システムを由来とする幾分かの痕跡の成分を除去する。該精製された溶離剤を、リサイクルによって溶離剤貯槽18に戻す場合、該溶液は、典型的に電解的に発生した水素および酸素ガスの混合物を含んでいる。これらガスの幾分かは、取付けられたガスベント口40を介して、該溶離剤貯槽18から除去することができる。
【0037】
触媒を用いるガス除去カラム31は、検出器を備えた電解サプレッサ、例えば米国特許第5,248,426号に記載されている型の該サプレッサ再生流動チャンネルに対する流出液リサイクルが利用されているシステムにおいて、特に有用である。ディオネックス社(Dionex Corporation)により登録商標SRSの下で市販されているこのようなシステムは、例えば炭酸ナトリウム溶離剤を使用する、アニオン分析のために使用できる。この態様において、検出器セルからの流出液は、該サプレッサのアノードおよびカソードチャンバーにおける電解反応用の水の源として使用される。印加された電場の下で、水は酸化されて、アノードにおいてヒドロニウムイオンおよび酸素ガスを生成し、またカソードにおいて水酸イオンおよび水素ガスに還元される。該ヒドロニウムイオンは、該カチオン交換膜を横切って該サプレッサの溶離剤チャンバーに移動して、該溶離剤中の炭酸イオンと反応し、僅かに導電性のカルボン酸を生成する。ところで、注入された該サンプル中の対イオン(例えば、Na
+)は、ヒドロニウムイオンと置換えられ、別のカチオン交換膜を横切って、該デバイスのカソードチャンバーに、強制的に移動される。該被検体アニオン:X
-は、該導電率検出器によって、H
+ + X
-からなるより導電性の高い形状で検出される。この電気化学的過程の正味の結果は、該サプレッサのアノードおよびカソードチャンバーからの併合された流出液が、水素ガス、酸素ガス、および水性溶液の混合物であることであり、ここで該溶液は、イオン性の溶離剤成分、注入された該サンプル由来のイオン、および恐らく該分離カラムおよびサプレッサの動作に起因する幾つかの痕跡成分を含む。
【0038】
該電解サプレッサの該アノードおよびカソードチャンバーにおける電解反応は、反応性または酸化性の種の生成に導く。例えば、オゾンが、該電解サプレッサのアノードチャンバーにおいて生成する可能性がある(H
2O → 2H
+ + 2e
- + 1/3 O
3)。過酸化水素が、該電解サプレッサのカソードチャンバーにおいて生成する可能性がある(2H
2O + O
2 + 2e
- → 2OH
- + H
2O
2)。炭酸ナトリウム溶離剤を抑制するためにアニオン電解サプレッサが使用される場合、過炭酸ナトリウムの電解的生成も、該アノードチャンバーにおいて起る可能性がある。電解サプレッサの流出液における、これら不安定な反応性または酸化性種の存在は、溶離剤のリサイクル機能を備えたイオンクロマトグラフィーシステムの性能に有害な作用を及ぼす恐れがある。
【0039】
該不安定な反応性または酸化性の種、例えばオゾン、過酸化水素、および過炭酸ナトリウムは、該システム内の該溶離剤精製カラムおよび該分離カラムにおけるイオン交換性官能基を攻撃し、またこれらカラムのイオン交換容量を劣化させる恐れがある。該溶離剤精製カラムおよび該分離カラムが、その所望のイオン交換容量を失った場合、溶離剤のリサイクル機能を備えたイオンクロマトグラフィーシステムの性能は、信頼性が失われる。例えば、該分離カラムのイオン交換容量の漸進的な喪失は、該分離カラム上で分離されたターゲット被検体に関する滞留時間の下方へのドリフト発生に導く。溶離剤精製カラムのイオン交換容量の漸進的な喪失は、注入されたサンプルの成分および他の痕跡汚染物を除去する、該カラムの能力の低下を来たす。該痕跡の汚染物は、溶離剤のリサイクル機能を備えたイオンクロマトグラフィー全体の動作に起因して発生する可能性がある。
【0040】
従って、触媒を用いるガス除去カラム31を通して流動する該水性リサイクル流は、不安定な酸化性化合物、例えばオゾンおよび過炭酸ナトリウムを含む可能性がある。このような不安定な酸化性化合物は、典型的に比較的短い半減期を有している。例えば、オゾンはpH 9.2において約3分という半減期を有し、また水性溶液中で分解して酸素となる。その結果、該システムにおいて、特に該電解サプレッサと該触媒を用いるガス除去カラムとの間に、遅れ時間を与えることが有利である。これは、触媒を用いるガス除去カラム31にリサイクルされるべき、該電解サプレッサの再生チャンネル12の流出液中に存在する可能性のある、該不安定な酸化性の種が、非-反応性あるいは非-酸化性の種に分解することを可能とする。この時延のもう一つの利点は、溶離剤精製カラム32および分離カラムにおけるイオン交換性官能基に及ぼす強力な作用を最小化することである。
【0041】
遅れ時間がないと、例えば遅延導管46において行われるような、セル14またはサプレッサ12と触媒を用いるガス除去カラム31との間の、
図1に例示された型のシステムを介する該リサイクル流の流れは、比較的短時間を要する。本発明の一態様によれば、不安定な酸化性化合物の分解を容易にするためには、該検出器と該触媒を用いるガス除去カラムとの間を流動するための滞留時間は、少なくとも1分、好ましくは少なくとも2分、より好ましくは少なくとも5〜20分またはそれ以上である。別の態様によれば、サプレッサ12の検出器流出液流動チャンネル24および触媒を用いるガス除去カラム31からのリサイクルの流動時間は、少なくとも0.5分、好ましくは少なくとも2分、より好ましくは5〜20分またはそれ以上である。
【0042】
ここで使用する用語「滞留時間」とは、指定されたデバイス間のオンライン流動に対する時間および更に不連続システムにおいて停止された流れに対する遅延時間を包含する。例えば、適当なバルブ手段を設けることにより、該リサイクル流の一部を、停止された流動チャンネルおよび該停止された流れとオンライン連続流れとの間で留められた流れに、送ることができる。従って、該滞留時間は、該リサイクル溶液が停止された流動チャンネル内にある時間をも含む。このシステムにおいては、該検出器からの全ての流れを、所定期間に渡り、該停止された流動チャンネルに送ることが好ましい。
【0043】
ここで使用する用語「遅延導管」とは、該遅延導管の終点に関してこの用語を使用する内容に依存して、該リサイクル流が、該検出器または該サプレッサと触媒を用いるガス除去カラムとの間を流動する際に通る、あらゆるチューブおよびデバイスを意味する。
【0044】
一態様において、該遅延導管は遅延ハウジングを含み、また該検出器流出液流は、該検出器(または該サプレッサ)から螺旋状の通路等の曲がりくねった通路内を流れて、該デバイス中の気泡の滞留時間を最大にする。このような遅延導管の一つは、
図2に示されている。これは、入口および出口夫々50aおよび50bを有する、例えば円筒形状の流通式ハウジングまたはカラム50を含む。例示の如く、ハウジング50内には、流れ方向に整列されていない、流動用開口52aを有するバッフル52が設けられており、該リサイクル溶液を、非線形通路54内を流動させ、即ち遅延流動させる。
【0045】
図3は、流通式遅延カラムのもう一つの態様を示す。この態様において、該遅延カラムは、多数の薄肉チューブを含むセグメントで充填され、結果として多数の気泡に対する通路が存在し、該気泡はこの遅延カラムを介して移動し、該遅延カラム内でのその有効滞留時間を増大する。
図3を具体的に参照すると、カラム60は、入口および出口それぞれ60aおよび60bを含む。これは複数のチューブ62を含み、各チューブは、該検出器と平行で連絡状態にある。入口60aを介してカラム60に流入する該検出器流出液は、チューブ62により多数の流れに分割され、また出口60bを通して退出口において再度併合され、結果として該カラム内の該リサイクル流および気泡の、流動時間が遅延され、また滞留時間が延長される。
【0046】
図示されていないもう一つの態様において、該遅延導管は、解放状態にあるか、あるいは
図2のバッフル以外の充填物(packing)で満たされている大容積のデバイスを含み、更に流れを遅延することができる。このような充填物は、例えばポリプロピレンビーズまたは多孔質ポリマーモノリスの充填床(paked bed)を含むことができる。
【0047】
図示されていないもう一つの態様において、該遅延導管は長いチューブを含むことができる。占有空間を考慮すれば、このような長いチューブは、例えば適当な内径および長さを持つ不活性ポリマーチューブのスプール状に、螺旋を形成するものであることが好ましい。該チューブは、適当な入口および出口部取付け部品により取付けることができる。このようなチューブは、適当な壁の厚みを有し、また水素および酸素ガスに対して実質的に不透過性であって、該チューブの壁を横切る水素または酸素ガスの漏れがないことが好ましい。この水素および酸素ガスの漏れが生じた場合、該触媒を用いるガス除去カラムに入る水素および酸素ガスの化学量論比が変更され、結果的に水素と酸素との水-形成反応が、該触媒を用いるガス除去カラムにおいて非-化学量論的となり、このことは水素および酸素ガスの不完全な除去に導く。溶離剤のリサイクルを伴うイオンクロマトグラフィーシステムにおいて、該触媒を用いるガス除去カラムにおける、この水素および酸素ガスの不完全な除去は、該溶離剤貯槽における水素ガスの蓄積および結果としての潜在的な爆発の危険性をもたらす恐れがある。従って、該流通式遅延チューブの壁を横切る水素または酸素ガスの漏れがないことが好ましい。
【0048】
該流通式遅延導管のもう一つの態様は、流通式末端取付け部品を備えた、クロマトグラフィーカラムハウジングにおけるように、チャンバー形状をとる。該カラムハウジングは、所定の遅延体積を与えるように、適当な内径と長さとを有するべきである。電解サプレッサからの流出液は、H
2、O
2、およびO
3ガス、および主としてイオン性の溶離剤成分を含む水性溶液の混合物である。電解サプレッサ由来の流出液は気-液混合物であるので、このような流通式遅延カラムにおいては、オゾン-含有気泡の滞留時間を最大にすることが望ましい。該遅延カラムが垂直に据えられている場合、該オゾン-含有気泡は、該流通式遅延カラムの内側チャンバーを介して、上方に迅速に泡立ち、その結果該遅延カラムにおける有効滞留時間が減じられる可能性がある。従って、該遅延カラムを水平に設置して、気泡が、該カラムを流動する液体の速度と同一の速度にて、移動することが好ましいことであり得る。
【0049】
該クロマトグラフィーカラムは、カラム内腔を画成し、該内腔には、流通式クロマトグラフィー用媒体が配置されている。該媒体、例えば充填床またはモノリスは、液体流通通路を画成する。このような通路の全体積は、所定の位置における、該媒体を含むカラムによって保持される液体の体積により測定することができる。これは、該流通式通路の全体積または「該クロマトグラフィーカラムの空隙率」と呼ばれるものである。同様に、該遅延導管は、様々な型の充填物を含むことができる。該遅延導管の全体積は、停止された流れにおける、該遅延導管の様々な部材の全長によって保持される、液体の全体積によって定義される。
【0050】
一態様において、該遅延導管の流通全体積は、該クロマトグラフィーカラムの流通式通路の全体積の、好ましくは少なくとも0.5倍、より好ましくは少なくとも1または2倍、最も好ましくは少なくとも3、4、5倍またはそれ以上である。
【0051】
該クロマトグラフィーカラムの態様に適用可能なもう一つの態様において、該遅延導管は遅延ハウジングを含み、該遅延ハウジングは、該リサイクル導管におけるチューブの断面積の、少なくとも3、4、5倍、より好ましくは少なくとも8、9、10倍、および最も好ましくは少なくとも15または20倍またはそれ以上の、流体の流れを横切る断面積を有する。
【0052】
図4に示された態様は、
図1の態様と類似しており、従って
図1と同様な部品は、同様な参照番号で指定する。ここで、電解サプレッサ70は、イオン交換性充填物で満たされたクロマトグラフィー流出液流動チャンネル72および電極夫々80および82と電気的に連絡状態にある、第一および第二の検出器流出液流動チャンネルそれぞれ74および76を含む。図示されていないイオン交換膜は、該第一および第二の検出器流出液流動チャンネル74および76と、クロマトグラフィー流出液流動チャンネル72とを分離している。導管84は、流動チャンネル74の出口と、流動チャンネル76の入口とを接続している。
【0053】
この態様において、該検出器流出液は、継続的に電解サプレッサのアノードチャンバーおよびカソードチャンバーを通して流動する。このような電解サプレッサは、米国特許第6,610,546号の
図2に記載されているものと類似する。この米国特許を参考としてここに組入れる。好ましくは、この型の電解サプレッサのアノードチャンバーおよびカソードチャンバーは、相互に隣接していない。該サプレッサが、溶離剤リサイクル機能を備えたイオンクロマトグラフィーシステムにおいて、アニオン分析のために動作している場合、該検出器流出液は該アノードチャンバーからカソードチャンバーへと流動する。該アノードチャンバーの流出液は、電気化学的還元カソードチャンバーを通って流れるので、該アノード流出液中のオゾンおよび過炭酸ナトリウム等の反応性または酸化性の種は、電気化学的に還元されて、非-酸化性の種となる。従って、該反応性または酸化性の種の最終的なサプレッサ流出液における濃度は、大幅に低下する。この型のサプレッサの使用は、溶離剤リサイクルを伴うイオンクロマトグラフィーシステムの性能を改善する。
【0054】
図5は、本発明のもう一つの態様を示すものである。
図4と同様な部品は、同様な参照番号で指定する。この態様では、エネルギー発生器90が、サプレッサ70の出口と触媒を用いるガス除去カラム31との間に設けられている。例示の如く、これは、サプレッサ流動チャンネル76と遅延導管46の入口との間に配置されている。幾つかの用途において、該遅延導管46は省略することができ、従って流れは直接カラム31に送られる。該エネルギーは、UV光等による輻射線照射、熱あるいはある他のエネルギー源由来のものであり得る。輻射線照射のための、エネルギー発生装置は、高圧水銀ランプ等のUV光源を含む反応コイル(reaction coil)であり得る。というのは、該水性溶液中のオゾンの分解が、紫外光照射の利用によって促進されることが知られているからである。該エネルギー源は、また該サプレッサ再生チャンネル流出液中のオゾンの分解を促進するための、熱源であってもよい。該水性溶液(pH 7)中のオゾンの半減期は、温度を20℃から35℃に高めた場合に、約20分から約8分に減少することが知られている。
【0055】
また、
図5は、触媒を用いるガス除去カラム31の下流側にある気泡検出器92を例示するものであり、該検出器は、ここに記載される任意のシステムにおいて使用できる。光学的および電気的測定技術を含む多数の検出法が、流動する液体流中の気泡の存在を検出するために応用できる。該気泡検出器の機能は、該触媒を用いるガス除去カラムが故障した際に、該システムの安全な動作を保証することにある。該触媒を用いるガス除去カラムが故障し、また該サプレッサ流出液中の水素ガスと酸素ガスとを再結合し得ない場合には、水素ガスが、爆発の危険性をもたらすほどのレベルまで、該溶離剤貯槽中に蓄積される恐れがある。この危険性を最小化または排除するために、本態様は、気泡検出器を使用して、リサイクルにより該溶離剤貯槽に戻される該溶離剤が、気泡を含むか否かを監視する。該リサイクルされる溶離剤において、過度の体積のガスが検出された場合には、該気泡検出器は、該ポンプの出力を降下すべしとのシグナルを発し、また溶離剤リサイクルを伴うイオンクロマトグラフィーシステム内の該電解サプレッサへの電流供給を停止して、その安全な動作を保証すべきとのシグナルを発するように設計することができる。
【0056】
また、有機溶媒を含むイオンクロマトグラフィー溶離剤をリサイクルすることも、該有機溶媒が電気化学的に安定である限り可能である。
【0057】
図6に示したもう一つの態様において、遅延導管46および触媒を用いるガス除去カラム31は、組合せて単一のカラムデバイスまたはハウジングとすることができる。例えば、
図6を参照すると、カラム94は、該遅延導管の一部である上流ゾーンまたは区画94aを含む。区画94aは、不活性な微細ペレットまたはビーズ等の充填物で満たすことができ、あるいは上で論じた遅延導管に関する他の形状の一つをとることができる。該下流側の区画94b(例示したような上部区画)は、例えばカラム31について記載した如き型の、該カラムの出口と流体連絡状態にある触媒ゾーンである。
【0058】
図7を参照すると、水のリサイクルを利用する、イオン-還流を基本とするクロマトグラフィーシステムが例示されており、これは、本明細書に記載した如き遅延導管46を付加した、米国特許第7,329,346号の
図2に示した原理およびこれと同様なシステムを利用する。該特許'346号の
図2に関する説明を、参考としてここに組入れる。ここでは、
図1と同様な部品を、
図7においても同様な参照番号で指定する。
【0059】
図7のシステムは、イオン-還流を基本とするイオンクロマトグラフィーシステムにおいて、水精製カラムと、水をリサイクルするための該触媒を用いるガス除去カラムとを組合せて利用する例を示すものであり、ここで該イオンクロマトグラフィーシステムは、アニオン分析のために、水酸化カリウム溶離剤を生成し、かつリサイクルする。このイオンクロマトグラフィーシステムにおいては、水酸化カリウム溶離剤の電解生成およびリサイクルにおける好ましい担体流として、脱イオン水を使用する。該溶離剤生成およびリサイクルモジュールの出口からの流出液は、水、水素ガス、酸素ガス、および恐らくイオン-還流を基本とするイオンクロマトグラフィーシステム全体の動作に起因する幾つかの痕跡成分を含む混合物である。水をリサイクルするために、該溶離剤生成およびリサイクルモジュールからの溶出液を、まず該触媒を用いるガス除去カラムに通して、水素および酸素ガスを除去する。化学量論量の水素および酸素ガスが、該電解溶離剤生成およびリサイクルモジュールおよび該電解サプレッサにおいて起る電気化学的過程において生成されるので、水素と酸素とが結合して、最初に消費された水の量と同一量の水を生成することが予想される。該触媒を用いるガス除去カラムからの流出液を、次に該水精製カラムを通して流して、残留する痕跡量のイオン性および非イオン性の汚染物を除去する。こうして生成された水は、該水貯槽に戻される。
【0060】
図7を具体的に参照すると、ライン265において、該溶離剤発生器251から出てくる溶液は、触媒を用いるガス除去カラム31、溶離剤精製カラム32、およびライン34を介して、溶離剤貯槽18のための容器38に流入する。ライン34内のリサイクルされた溶液は、溶離剤貯槽18において混合され、ライン42内をポンプ20を介して第二の溶離剤精製カラム44に導かれる。貯槽18におけるベント口は例示されていない。というのは、水素および酸素ガスが、カラム31において除去できるからである。そこから後は、該システムは、上記の如くである。
【0061】
再度
図7を参照すると、イオンクロマトグラフィーシステムが例示されており、これは連続的に電解再生され、充填された床からなるサプレッサ(CERPBS)式のサプレッサおよび上記溶離剤発生器の一態様を使用している。このシステムは、チューブ212によってサンプル注入バルブ214と接続されている分析ポンプ20を含み、該サンプルバルブは、更にチューブ216によって流通式クロマトグラフィー分離器218と接続されており、該分離器は、典型的にはクロマトグラフィー樹脂粒子が充填されたクロマトグラフィーカラムの形状にある。クロマトグラフィーカラム218からの流出液は、チューブ220を介して、充填イオン交換樹脂床式の流通式サプレッサ222まで流動する。典型的には、サプレッサ222は、イオンクロマトグラフィーによる抑制のために使用される型の、イオン交換樹脂床226で満たされたカラム224で作られている。電極が、該サプレッサ内で隔置されており、ここで少なくとも一つの電極は、以下に説明するバリアによって該樹脂から分離されている。これらの電極は、図示されていない直流電源に接続されている。この構成は、水性流が該サプレッサを流通しまた電力が印加されるのに伴って、該水性流中の水が電解されて、ヒドロニウムイオンまたは水酸イオン源が生成され、該分析中、該イオン交換樹脂が連続的に再生される。
【0062】
該サプレッサ流出液は、チューブ230を介して適当な検出器232に導かれ、次いで最終的には廃棄される。好ましい検出器は、流通式導電率測定セルを備えた、導電率検出器である。該クロマトグラフィー流出液は、該セルを介して流動する。
【0063】
サプレッサ222は、そのアノードにおいてヒドロニウムイオンを、またそのカソードにおいて水酸イオン(および水素ガス)を発生する。即ち、電解質を含む水-含有溶離剤溶液は、ポンプおよびチューブ212を通して導かれる。サンプルは、サンプル注入バルブ214を通して注入され、チューブ216を介してクロマトグラフィーカラム218に導かれ、そこで該サンプルの分離されたイオン種を含む、第一のクロマトグラフィー流出液を生成する。説明を簡単にするために、特に述べない限り、以下において該システムは、電解質として水酸化ナトリウムを含有する溶離剤を用いた、アニオン分析に関連して説明される。
【0064】
ポンプ20から供給される溶離剤溶液として搬送される、適当なサンプルを、サンプル注入バルブ214を通して供給する。アノード236は、樹脂床226の出口末端部に、該床内の樹脂と密に接触した状態で設けられている。床226からの流出液は、検出器に導かれ、該検出器は、導電率測定器と接続された、該流出液中の分解されたアニオンを検出するための、導電率検出器(図示せず)の流通式導電率測定セル232の形状にあることが相応しい。
【0065】
該システムは、また、検出に先立ってサプレッサ222からの流出液を加圧するための随意の構成部品を含んでいて、以下に説明するような、該システムにおいて発生したガス(水素または酸素)による悪影響を最小化する。このような加圧手段は、該イオンクロマトグラフィーシステムを加圧状態に維持するために、導電率測定セル232の下流側に、圧力レストリクタ238を含む。
【0066】
カラム224は、典型的にイオン交換カラムに対して従来から使用されているプラスチックで作られている。これは、適当な長さ、例えば長さ60mmおよび径4mmの円筒状の空洞を有する。これには、高い交換容量を有する、例えばスルホン化されたポリスチレン型のカチオン交換樹脂が充填されている。この樹脂は、多孔質フリットによって該カラム内に適切に収納され、該フリットは、該カラムに対して出口を与えるように機能する。該例示した態様では、該多孔質フリットは、二重の機能、即ち該樹脂の収納機能および電極としての機能を果たす、多孔質電極236である。
【0067】
バリア240は、電極チャンバー244においてイオン受容流動チャンネルを画成する、中空ハウジング内部において、電極242と床226とを分離しており、結果としてあらゆる重大な液体流動を阻止するが、樹脂床226上の交換可能なイオンの電荷と同一の電荷をもつイオンのみの輸送を可能とする。アニオン分析に関しては、バリア240は、カチオン交換膜、あるいは該カチオン交換樹脂と電極チャンバー244とを分離するプラグ形状にあることが適当である。
【0068】
導管248が、該水性液体流を、電極チャンバー244の入口250に導くために与えられている。導管252は、チャンバー244からの流出液を該溶離剤発生器251に案内する。これは、電極との電気的な接触を実現するための手段を与え、これは同時に液漏れに対する封止を容易にする。
【0069】
該樹脂床226を横切るラインX-Xが図示されている。以下において説明される理由のために、該点線の上流側の樹脂は、主としてあるいは完全に、分離中に該電解質として使用された塩基のカチオン性対イオンの形状であり得る。該ラインX-Xの下流側において、該樹脂は、主としてあるいは完全に、ヒドロニウム形状であり得る。該ラインX-Xは、これらの界面を表す。
【0070】
アニオン分析のためには、分極DC電位がカソード242とアノード236との間に印加され、また以下のような反応が起る。
【0071】
水が電解されまたヒドロニウムイオンが、以下の式に従ってアノード236において発生する:
H
2O + 2e
- → 2H
+ + 1/2 O
2↑
【0072】
これは、該カチオン交換樹脂床226において、バリア240まで移動するカチオンを生成する。これは、更に床226を介して上方にヒドロニウムイオンを移し、これは前方への該カチオンの同様な移動を生じる。該カチオンは、該バリア240に向かってエレクトロマイグレーションして、カソードチャンバー244内のカソードに向かって、該バリア240を横切って搬送され、一方水は、カソード242において電解され、以下の式に従ってヒドロニウムイオンを生成する:
2H
2O + 2e
- → 2OH
- + H
2↑
【0073】
該バリアを横切って搬送された該カチオンは、カソードチャンバー244内で、該発生した水酸イオンと結合し、カチオン性の水酸化物を形成する。分離器の床からの流出液は、床部分226において該カチオン型の樹脂を通して、床部分226内の該ヒドロニウム型樹脂に至るまで広がり、該床部分では、該流出液は中和され、一方該カチオンは該樹脂状に残される。この点において、該アニオンの塩は、その各酸に変換され、また該カチオン性水酸化物は軽度にイオン化された形状の水に転化される。
【0074】
該分離されたアニオンを含有する、該抑制された流出液は、導管230を介して床226を離れ、導電率測定セル232を通過し、該セルにおいて該分離されたアニオンの導電率が測定される。
【0075】
以上、
図7のサプレッサを、アニオンの分析のためのシステムに関連して説明した。しかし、該システムは、またカチオンの分析に対しても適用できる。この例において、電極236は、カソードであり、また電極242はアノードである。該イオン交換型の樹脂は、逆のものとなる。即ち、該分離器の床218内の樹脂は、カチオン交換樹脂であり、またサプレッサの床226内の樹脂は、アニオン交換樹脂である。該プラグまたは膜240は、アニオン交換性材料で作られる。
【0076】
簡単に説明すると、該サプレッサは、カチオン分析に対しては以下のように作用する。検出すべきカチオンを含む該水性液体流および酸電解質の水性溶離剤は、カチオン交換樹脂を含む分離器の床218を通して導かれる。分離器の床218由来の流出液は、交換性の水酸イオンを有するアニオン交換樹脂を含有する、サプレッサの床226を介して流れる。該溶離剤中の酸は、軽度にイオン化された形状に転化される。該交換性の水酸イオンの幾分かは、該酸由来のアニオンにより置換される。
【0077】
該カソード236とアノード242との間に電位を印加する。この際に、水は電極236において電解されて、水酸イオンを発生し、該アニオン交換樹脂床上のアニオンは、バリア240に向けてエレクトロマイグレーションし、電極チャンバー244におけるイオン受容流動チャンネル内の正に帯電したアノード242に向けて、該バリアを横切って搬送され、一方チャンバー244内の水は、電解されてヒドロニウムイオンを発生し、該イオンは、該搬送されたアニオンと結合して、該電極チャンバー244内で酸を生成する。該サプレッサの床226由来の流出液は、検出器232を通って流れ、該検出器において、分離されたカチオンが検出され、また該流出液は、電極チャンバー244にリサイクルされる。
【0078】
再度
図7を参照すると、該溶離剤発生器251の一態様が例示されており、該態様ではまずアニオン分析用のシステムを説明するが、そこでは、電極チャンバー244において発生した塩基が該溶離剤発生器251に導かれる。この態様は、電気化学的動作の点でサプレッサ224に類似する。該溶離剤発生器のこの態様において、適当なハウジング254は、イオン交換樹脂の充填床256としての、電解質イオン貯槽を含む。樹脂床256は、帯電した発生器バリア260によって第一の発生器電極チャンバー258から分離されており、該バリアは、大幅な液体流の発生を防止するが、電解質イオンの輸送を可能とし、従ってサプレッサバリア240に関連して説明した型のものであり得る。発生器電極262が、発生器電極チャンバー258内に設けられており、またそこに包囲されており、また電極チャンバー244と同様な型の構成を有するものであり得る。バリア260の、電極262とは反対側には、機能および構造において、サプレッサ電極236と類似する、流通式発生器電極264がある。
【0079】
該サプレッサと関連して上記した電気化学反応が、該溶離剤発生器内で起る。従って、これを参考としてここに組入れる。このように、アニオンの分析に対して、該ラインx-xは、樹脂床256の入口部分256aと出口部分256bとを分離している。ライン252における供給材料の流れは、カチオン型である場合には入口部256aに流入し、一方その出口部分はヒドロニウムイオン形状にある。しかし、違いの一つは、導管252内の該供給材料の流れが、既に塩基を含んでいる点にある。該供給材料の流れは、バリア260に隣接する充填樹脂床256を出て、床256を横切って流動し、また電極264を介して該出口から流出し、あるいは上記のようにある他の形状の電極を通過する。同様に、該充填床は、バリア260に隣接するその入口端部においては、電解質イオン型の(例えば、カリウムまたはナトリウム)樹脂、また電極264に隣接するその出口端部においては、水素イオン型の樹脂を含む。
【0080】
同一の型の樹脂充填床または他の型のマトリックスを、該サプレッサにおけるように、該溶離剤発生器において使用することができる。図示した如く、発生器電極チャンバー258を流通する水性液体の源は、該樹脂床チャンバー254の出口からリサイクルされる液体であり得る。具体的には、このような液体は、導管265を通して流れ、また混合(カチオンおよびアニオン交換)床の水精製カラム、または溶離剤精製カラム32に流入する。このカラムは、典型的に長さ2〜40cmおよび内径0.5〜10cmである。該カラムから、該液体流は、導管を流通し、また溶離剤貯槽18に流れ込む。アニオン分析の場合、該カチオン性水酸化物は、該カソードに隣接するチャンバー258において、上記サプレッサに関連して上述した様式で発生する。該水精製装置を通過した後の該水の源は、脱イオン処理され、従ってこの分析を妨害することはない。随意の溶離剤精製カラム44が、該脱イオン水の流れを更に精製するために、ポンプ20の背後に配置されている。
【0081】
遅延導管46が、サプレッサ224と溶離剤発生器251との間に設けられている。カラム31内の触媒および/またはイオン交換媒体に対して有害であり得る不安定な酸化性化合物が、溶離剤発生器251内のイオン交換媒体にとっても同様に有害であることから、この配置は有利である。従って、導管46における遅れは、このような化合物の有害な作用を減じることを可能とする。しかし、該遅延導管は、他の位置、例えばセル232とカラム31との間、好ましくはサプレッサ224とカラム31との間に設けることができる。
【0082】
本発明においてはカラムと呼んでいる流通式ハウジング内に、典型的に含まれている、触媒を用いるガス除去チャンバーの動作原理を論じることは有用である。たとえ水素と酸素との結合による水の生成が発熱過程であったとしても、水素と酸素とは、一緒に混合した場合に自動的に反応することはない。その理由は、この反応を開始させるためには、比較的大きな活性化エネルギーが必要とされることにある。そのメカニズムは幾分複雑である。これはフリーラジカルメカニズムであって、その初期段階の一つは、以下の過程である:
H
2(g) → 2H・(g)
【0083】
該2個の水素原子間の結合を切断するには、432kJ/モルなるエネルギーが必要となる。このエネルギーは、初めは火花放電または火炎によって与えられる。該反応が開始された後には、そこで生成されるエネルギーが、水素分子を破壊し続けるのに必要なエネルギーを与える。触媒は、別のメカニズムを与え、該メカニズムにおいては、より低い活性化エネルギーを要し、この触媒反応は、火花放電または火炎等の初期のエネルギー付加の必要性なしに、上記反応の進行を可能とする。
【0084】
本発明によれば、触媒を用いるガス除去カラム31における好ましい金属触媒は、白金族金属から選択される1種またはそれ以上の金属を含む。このような白金族金属は、本発明においては、原子量の増加する順で、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金を含むものとして定義される。このような金属触媒は、別々にまたは組合せとして使用することができ、あるいは合金、例えば白金-ニッケル合金として配合することができる。本発明を、まず白金金属触媒に関連して説明する。
【0085】
白金は、水素と酸素との反応に触媒作用を及ぼすことが知られている(Nature, vol. 390, 495-497, 1997; Journal of Chemical Physics, vol. 107, 6443-6447, 1997; Surface Science, vol. 324, 185-201, 1995)。白金を、水素および酸素で満たされた容器内に配置した場合、白金はそれが加熱されるにつれて白光を放ち、また水滴は該容器内で凝縮する。該混合物が直ぐに着火しないように白金を冷却すると、水素と酸素との水への転化が滑らかとなる。この反応は、白金が該反応の新たな経路を与えることから起る。この新たな経路において、水素分子は白金原子と該白金の表面において反応する。この反応はH-H結合を破壊し、また2つのPt-H結合を生成する。この過程に対する活性化エネルギーは小さい。酸素が、これらのPt-H群と反応して水を生成するが、この場合にも活性化エネルギーは極めて低い。該反応のためのこの低エネルギー経路を通して、白金は、酸素および水素ガスの再結合に対して、触媒作用を及ぼす。該用語「触媒」とは、この機能を果たすあらゆる触媒を包含する。このような触媒の一特定例として、白金を説明する。
【0086】
触媒を用いて水素ガスと酸素ガスとの反応を誘発して水を生成するために、白金等の触媒の既知特性を利用する上記の原理は、液体クロマトグラフィーにおいて使用するための本発明の触媒を用いるガス除去チャンバーに係る基礎を与える。この原理は、
図1に示したようなシステムの溶離剤中の、電解サプレッサにおけるこれらガス状電解副産物の除去を可能とする。このようなシステムにおいて、該電解サプレッサ再生チャンバー24の出口からの流出液は、該触媒を用いるガス除去カラム31を通過し、そこで該流出液中に存在する水素および酸素は、触媒的に反応して水を生成する。カラム31には、金属粒子、メッシュ、または箔形状にある、純Pt等の適当な触媒を充填することができる。あるいはまた、該カラムには、Ptで被覆した不活性な支持体を充填することもできる。本発明において、随意の触媒を用いるガス除去カラム31は、数種の重要な機能を果たす。第一に、該カラムは、蓄積された水素および酸素ガスを都合よく除去するためのエレガントな手段を与え、また結果として溶離剤の連続的なリサイクル操作を簡便にする。第二に、水素と酸素との該水-形成反応は、該カラムにおいて化学量論的であるものと予想され、また生成される水の量は、元々、該サプレッサの電解操作中に水素および酸素ガスを製造するのに消費された水の量と、原理的に同一であることが予想される。原理的に、この特徴は、該サプレッサの電解操作中の水の消費による、溶離剤の濃度における増大を打ち消す。第三に、該Pt触媒を用いるガス除去カラムは、また該サプレッサの電解操作中に生成される可能性のある痕跡レベルの過酸化水素を、触媒的に分解する機能をも果たす。該リサイクルされた溶離剤における過酸化水素の存在は、潜在的に有害である。というのは、過酸化水素は、該システムにおける該分離カラムおよび該溶離剤精製カラム内のイオン交換性官能基を攻撃し、また該カラムの性能を劣化させる恐れがあるからである。過酸化水素の分解に対して触媒作用を及ぼすためにPtを使用することは、周知である(Bull. Korean Chem. Society, 1999, vol. 20(6), 696; U.S. Patent 6,228,333)。
【0087】
該触媒を用いるガス除去チャンバーは、広範囲に渡る物理的形状を有し得る。その一態様は、フリット化された流通式末端取付け部品を備えたクロマトグラフィーカラムハウジングを使用する。該取付け部品は、該カラム内部に充填される純Pt粒子、メッシュ、または箔を維持するために使用される。また、該カラムを、Ptで被覆した他の不活性支持体で充填することができる。好ましい態様において、該カラムの内径は、0.1mmまたはそれ以上であり、また該カラムの長さは、0.5cmまたはそれ以上である。触媒効率を高めるために、大きな表面積を与える形状の、Pt充填物質を使用することが好ましい。また、該触媒を用いるガス除去チャンバーを、0.1μL/分〜50mL/分なる範囲の流量にて動作させることが好ましいが、他の流量を使用することも可能である。
【0088】
もう一つの態様は、触媒を用いるガスおよびイオン種除去デバイス(CGISRD)に係る。これは、クロマトグラフィーシステム、特に本明細書で記載するイオンクロマトグラフィーシステムにおいて、特に有用である。一般的に、このデバイスは、液体流通式ハウジング、水素と酸素とを触媒的に結合し、または過酸化水素を触媒的に分解し、あるいはこれら両方を実施するための、該ハウジング内に配置される白金族金属触媒、および同様に該ハウジング内に配置される流通式イオン交換媒体を含む。好ましい態様において、該白金族金属触媒は、単独の金属または合金状態にある、白金、パラジウム、またはこれらの混合物である。ここに列挙する如き該白金族金属触媒は、また実質的に純粋金属状態または合金の状態にある、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、およびイリジウムを含むこともできる。
【0089】
該CGISRDは、
図1の触媒を用いるガス除去カラム31に関連して本明細書に記載した型の流通式ハウジングとして製造できる。しかし、該白金族金属触媒に加えて、該CGISRDは、該ハウジング内に設けられる流通式イオン交換媒体を含む。適当な流通式イオン交換媒体は、イオン交換粒状床またはイオン交換モノリス、例えば米国特許第7,074,331号に記載されているものを含むことができる。幾つかの態様において、該金属触媒は、該イオン交換媒体に結合されていない。ここで、該イオン交換媒体は、該金属触媒の下流側または上流側に配置することができ、あるいは該金属触媒と混合することができる。この方法の利点の一つは、被検体イオン、対イオンまたはこれら両者を除去するためのイオン交換相を含む別のカラム、および該金属触媒用の別のカラムを備える必要性を排除し、結果としてこの作業に必要なハードウエアの全体としてのコストを下げる点にある。更に単一のカラムの囲いを備えることは、取付け部品およびチューブの接続数を最少化する。
【0090】
該CGISRDの好ましい一態様において、該白金族金属触媒は、静電結合等により、該イオン交換媒体に対して被膜として不可逆的に結合している。該デバイスは、流動する液体流中の、サンプルイオンまたはサンプル対イオン等のイオンとイオン交換するために、十分なイオン交換容量を有し、その結果、イオン交換媒体に対して
図1の溶離剤精製カラム32においてなされた如く、このようなイオンの実質的な量、好ましくはその殆どまたは全部が結合して、該流動する液体から除去され、その後該分離媒体にリサイクルされる。このようなイオン交換容量は、該被覆されたイオン交換媒体に過剰なイオン交換容量を与えることによって、部分的にまたは完全に該媒体から得ることができ、ここで該媒体は、該被覆への不可逆的結合によって消費されることはない。従って、このようなイオンの除去を該被覆されたイオン交換媒体により行う場合、該除去のために利用できる、該触媒-被覆イオン交換媒体のイオン交換相の該過剰な容量は、未被覆のイオン交換相の容量の、好ましくは0.1倍を超え、より好ましくは0.3倍を越え、また最も好ましくは0.5倍またはそれ以上である。このようなイオン交換容量は、該デバイス中の該被覆されたイオン交換媒体に、未被覆のイオン交換媒体を添加することにより補うことができる。この付加されたイオン交換容量は、サンプルイオンまたはサンプル対イオンの除去の改善を助けとなる。
【0091】
一態様においては、該イオン交換媒体上のイオン交換部分と不可逆的、静電的に結合している、イオン性部分を含む試薬内に該金属を用いることによって、該金属触媒を、該イオン交換媒体と結合させる。イオン交換樹脂と結合させるための、適当な金属触媒試薬は、金属化合物、好ましくはカチオン交換樹脂と結合させるための金属-含有アミンカチオン、またはアニオン交換樹脂と結合させるための金属-含有アニオンとしての、金属-含有クロロ-化合物である。該試薬は、好ましくはイオン交換樹脂表面に永続的に結合する前に、該イオン交換部分と静電的に結合される。このような試薬は、テトラアンミン白金(II)クロリド、ジアンミンパラジウム(II)ニトリット、ナトリウムヘキサクロロパラデート(IV)、ナトリウムヘキサクロロプラチネート(IV)、アンモニウムペンタクロロアクオロデート(III)、カリウムペンタクロロロデート(III)、ペンタアンミンクロロロジウム(III)ジクロリド、アンモニウムペンタクロロアクオルテネート(III)、ヘキサアンミンルテニウム(III)クロリド、アンモニウムヘキサクロロイリデート(III)、カリウムヘキサクロロイリデート(IV)、カリウムヘキサクロロオスメート(IV)等を含む。このような試薬は、該イオン交換物質上に様々な触媒金属を被覆するために、別々にまたは混合物として使用することができる。例えば、2種またはそれ以上の試薬を混合し、様々な比率にて、該カチオン交換樹脂と静電的に結合させることができる。これは、混合触媒を含む表面を持つ層を生成する。例えば、被覆層における白金とパラジウムとの組合せは、電解ガスからの水の、良好な接触的形成に加えて、過酸化水素の優れた接触的分解をもたらす。このようにして、該触媒被覆物質を、所定の各用途に対してあつらえることができる。被覆触媒の一態様において、該金属触媒は、薄層、好ましくは単分子層状態にあって、使用される全触媒を最小化する。また、合成後に、様々な触媒で被覆されたイオン交換材料の混合物を使用することも可能である。
【0092】
好ましい一態様において、該白金族金属触媒は、白金およびパラジウム両者を含む。例えば、該イオン交換樹脂は、夫々白金およびパラジウムについて、2つの別々の合成段階により別々に被覆することができ、またその後該樹脂相を一緒に混合し、カラムに充填する。これは、白金およびパラジウム-被覆相の組合せを与える。上記態様における該2つの相を、これら2相を実質的に混合することなしに、2相または多相態様において、別々の相に充填することも可能であることに注意すべきである。もう一つの態様において、該2つの金属触媒試薬を、一緒に密に混合して、単一の合成段階において該イオン交換樹脂と結合する。これは、これら両試薬を含む表面、および最終的に該イオン交換樹脂の表面上にこれら両金属触媒を含む表面を生成する。幾つかの樹脂相を用いて、一種の触媒金属で該樹脂を被覆し、次いで別の触媒金属を別の被覆工程により適用することも可能である。
【0093】
アニオン分析に関して、好ましいイオン交換媒体は、カチオン交換状態にある。その残留カチオン交換容量は、該被検体イオンに対する対イオンとしてのカチオンを除去するために使用できる。例えば、飲料水を分析する場合、該対イオンは、典型的には1価および2価のカチオン、例えばナトリウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムである。カチオン分析に関して、好ましいイオン交換媒体は、該サンプルカチオンに対するアニオン性対イオンを除去するために、アニオン状態にある。
【0094】
上で示した如く、該触媒-被覆イオン交換媒体は、対イオン保持能力を高めるために、未被覆の支持体イオン交換媒体と混合することができる。例えば、以下において論じる被検体イオンの電気溶出(electroelution)による分離後等に行われる、対イオンおよび被検体イオン両者を除去することが望ましい用途においては、両電荷をもつ床または混合床におけるように、触媒-被覆イオン交換媒体と反対電荷をもつイオン交換媒体との混合物を使用することができる。
【0095】
適当なイオン交換物質は、公知技術において開示されており、またダウケミカル社(Dow Chemical Co.)からダウエックスイオン(Dowex Ion)交換樹脂として市販されているカチオン交換またはアニオン交換物質、またはローム&ハース社(Rohm & Haas)からアンバージェット(Amberjet)またはアンバーライト(Amberlite)等として市販されているものである。該イオン交換物質は、触媒金属被覆によって、本発明により改善することのできるイオン交換基を有する。
【0096】
同様に、ここに開示する物質の合成は、カラムに充填する前に、ばらばらに行うことができ、あるいはカラム内でその場で行うこともできることに注意すべきである。コストおよび実用上の理由から、前者が、後者よりも好ましい。
【0097】
全ての態様の該システムは、またアニオン分析用の上記試薬および帯電した成分の極性を適切に反転させて、塩基性溶離剤の生成に適用することも可能である。
【0098】
図8は、触媒を用いるガス除去カラムおよび電気溶出分離カラムを使用したクロマトグラフィーシステムを例示するものである。水性源112を備えた水性流源の容器110は、流動可能な状態でポンプ116に接続されており、該ポンプは導管118により注入バルブ120と接続されている。該配管のこの位置は、従来技術のイオンクロマトグラフィーシステムと類似している。該注入バルブは、従って公知技術におけるように、クロマトグラフィー分離器122と配管により接続されている。該分離カラム122は、適当な分離媒体(図示せず)で充填されている。2つの流通式電極128および130が、該分離媒体の両端に配列されている。これらの電極は、コネクタ124および126を介して電源(図示せず)と接続されている。カラム122からの流動ラインは、触媒を用いるガス除去カラム134の入口と接続されており、該カラムは、本発明の上記態様の何れかについて記載したように組立て、また動作させることができる。触媒を用いるガス除去カラム134の出口は、検出器セル138(好ましくは導電率測定セル)と接続されている。該セル138の出口は、廃棄物140へと迂回され、あるいは該源容器110に戻される。
【0099】
動作に際して、電解質を含まない水であり得る水性流が、容器110からポンプで汲み上げられ、また導管118および注入バルブ120を通して運ばれる。次いで、該水性流は、該注入されたサンプルを含もうが、含むまいが、バルブ120から、個々の成分に分離するために分離カラム122に運ばれる。カラム122は、水素および酸素ガス両者を生成し、これらは本明細書の上記態様の何れかに関連して記載したように、触媒を用いるガス除去カラム134において触媒的に水に再結合される。更に、あらゆる過酸化物も、本発明に従って分解される。イオン交換媒体が触媒を用いるガス除去カラムにおいて使用されていない、本明細書の
図1の態様に対しては、該カラム122内に保持されていない該被検体の対イオンは、
図1のカラム32について記載したもの等の精製カラム内で除去することができる。ここに記載された如きイオン交換媒体を含む、触媒カラム134に関しては、このようなイオンは、カラム134内で除去することができる。該サンプルイオンは、触媒カラム134から運ばれ、また検出のために該検出器セル138において実質的に妨害を受けない。該水性流は、廃棄物処理部140に送られ、あるいは導管142を利用して、リサイクルにより、水性流源の容器110に戻すことができる。1またはそれ以上のトラップカラム(図示せず)をライン142内に設置して、該被検体イオンまたはあらゆる中性の種を除去することができる。
【0100】
電気溶出式分離器122の構築および操作は、米国特許第6,093,327号、特にその第11-18欄に記載されているようにして行うことができる。該米国特許の内容を参考としてここに組入れる。このシステムにおいて、その溶離剤は、脱イオン水、または酸、塩基もしくは塩-含有水性溶液等の水性液体であり得る。
【0101】
もう一つの態様(図示せず)において、触媒を用いるガス除去カラム134は、検出器セル38の後方に据え付けることができる。この態様においては、幾分かの背圧を掛けて、電解ガスを圧縮して検出を補助することが好ましい。この態様におけるカラム134は、過酸化物の分解を助け、更には被検体イオンまたは対イオンもしくはこれら両者の除去を助けると共に、触媒反応を可能とする。本態様において、該水性流は、導管142を介して水性流源の容器110に戻される。トラップカラム(図示せず)を、ライン142に設けて、あらゆる中性の種を除去することができる。更に、精製カラムを使用して、ライン114またはライン118内の水性流を精製することができる。
【0102】
本発明の上記態様において、水素および酸素ガスの接触的結合により生成された水は、該生成した水を該溶離剤流に流込むことにより、溶離剤流用の水源として使用できる。該ガスは、該クロマトグラフィーシステム内で電解により発生し、あるいは独立した水素および酸素ガス源、例えば加圧容器から供給することができる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は、溶離剤がオフラインで製造され、リサイクルされ、また水がイオンクロマトグラフィーにおける、電解的な溶離剤の調製において使用されるシステムに関連して、本発明を明らかにするものである。
【0104】
実施例1:電解サプレッサおよび炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム溶離剤のリサイクルを利用した、共通のアニオンのイオンクロマトグラフィー分離:
【0105】
本実施例は、フッ素、塩素、硝酸、リン酸および硫酸イオンを含む共通のアニオンを測定するための、
図1に示された溶離剤-リサイクルイオンクロマトグラフィーシステムの使用を例示する。ダブルピストン式高圧ポンプ、6-口注入器、カラムオーブン、および導電率検出器からなる、ジオネックス(Dionex) ICS-2000イオンクロマトグラフィーシステムを使用した。ジオネックス(Dionex) 4-mm AS22カラム(4mm×250mm)を、分離カラムとして使用した。4.5mMの炭酸ナトリウムおよび1.2mMの重炭酸ナトリウムを含む溶液を該溶離剤として使用し、また該分離は、1.2mL/分にて行った。ジオネックス(Dionex) ASRS-300電解サプレッサを、本実験において使用した。また、流通式遅延カラム(10mm×250mm)を使用した。該触媒を用いるガス除去カラムは、Ptで被覆したカチオン交換樹脂を含む。該溶離剤精製カラム(9mm×85mm)には、適当なイオン交換樹脂を充填した。該被検体トラップカラム(9mm×50mm)には、アミノ化されたアニオン交換樹脂を充填した。
【0106】
一連の実験において、共通のアニオン、例えばフッ素、塩素、臭素、硝酸、リン酸、および硫酸イオンを含むサンプル溶液を毎日注入し、各被検体の滞留時間を、400時間という期間に渡り監視し、該期間中、4Lの、4.5mMの炭酸ナトリウムおよび1.2mMの重炭酸ナトリウムを含む溶液を連続的にリサイクルした。該溶離剤がリサイクルされない場合、該溶離液の全消費量は、上記の400時間という期間に渡り、28.8Lとなったであろう。
図9は、該ターゲット被検体について得られた、該滞留時間の再現性に関するデータを示す。該ターゲット被検体に関する滞留時間の百分率:RSDは、該400時間という期間に渡り、リン酸イオンに対する0.48%から、硫酸イオンに対する1.3%まで変動した。これらの結果は、長期間に渡り、リサイクルされた炭酸ナトリウム溶離剤を用いて、対象とする被検体イオンの分離を、再現性良く実施するのに、
図1に示したイオンクロマトグラフィーシステムが、使用可能であることを示している。このようなフォーマットでの、イオンクロマトグラフィーシステムの動作は、該システムの動作を単純化し、廃棄物投棄量を最少化し、かつ稼働コストを減じる。
【0107】
実施例2:電解サプレッサおよびメタンスルホン酸溶離剤のリサイクルを利用する、共通カチオンのイオンクロマトグラフィー分離:
【0108】
本実施例では、リチウム、ナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムを含む共通のカチオンの測定のための、
図1に示した、溶離剤のリサイクルを伴うイオンクロマトグラフィーシステムの使用を例示する。ダブルピストン式高圧ポンプ、6-口注入器、カラムオーブン、および導電率検出器からなる、ジオネックス(Dionex) ICS-2000イオンクロマトグラフィーシステムを使用した。ジオネックス(Dionex) 4-mm CS12Aカラム(4mm×250mm)を、分離カラムとして使用し、20mNのメタンスルホン酸の溶液を該溶離剤として使用し、また該分離は、1.0mL/分にて行った。ジオネックス(Dionex) CSRS-300電解サプレッサを、本実験において使用した。流通式遅延カラム(10mm×250mm)を使用した。該触媒を用いるガス除去カラムは、Ptで被覆したカチオン交換樹脂を含む。該溶離剤精製カラム(9mm×85mm)には、適当なイオン交換樹脂を充填した。該被検体トラップカラム(9mm×50mm)には、完全にスルホン化されたカチオン交換樹脂を充填した。
【0109】
一連の実験において、リチウム、ナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを含むサンプル溶液を毎日注入し、各被検体の滞留時間を追跡した。
図10は、60日という期間に渡る、6種のカチオンの代表的な分離を示す。これらの結果は、長期間に渡り、対象とするカチオンの分離を、再現性良く実施するのに、
図1に示したイオンクロマトグラフィーシステムが、使用可能であることを示している。このようなフォーマットでの、イオンクロマトグラフィーシステムの動作は、該システムの動作を単純化し、廃棄物投棄量を最少化し、かつ稼働コストを減じる。
【0110】
実施例3:
本実施例は、この用途のための白金-被覆樹脂の調製方法を説明する。カチオン交換樹脂(ローム&ハース社、ダウケミカル社等の様々な樹脂製造元から市販品として入手できる)を該支持体として使用した。100gの該樹脂を、1M濃度の水酸化ナトリウム溶液を用いて、ナトリウム型に転化した。次いで、該樹脂を、脱イオン(DI)水で洗浄し、濾別した。この樹脂を、2L容量のボトルに加え、濃度4000mg/Lにて、約630mLの適当な触媒溶液(例えば、テトラアンミン白金(II)クロリド溶液)を添加した。該ボトルに栓をし、該樹脂と該触媒溶液とを密に混合すべく、2時間に渡り転動させた。該樹脂を洗浄しかつ濾別した。この時点において、白金の層を、静電的手段によって該樹脂に接着させた。次いで、5%の硼化水素溶液を作成し、該樹脂を、該溶液を含む容器に入れ、注意深く混合した。該ボトルは、外部環境に対して開放状態とし(該容器内の発泡のため)、また65℃にて4時間に渡りオーブンに入れた。4時間後、該樹脂を濾別し、DI水で洗浄して、全ての反応体を取出した。該樹脂は黒色の外観を呈し、触媒操作のために直ぐに使用できる。
【0111】
実施例4:
径10μmの樹脂(ジビニルベンゼンで55%架橋されたエチルビニルベンゼン)を、本実験の支持体として使用した。この樹脂を、a) 4000mg/Lのテトラアンミン白金(II)クロリド溶液、2) 4000mg/Lのジアンミンパラジウム(II)ニトリット溶液および3) 濃度各2000mg/Lの1)および2)の組合せで被覆した。該樹脂合成プロトコールは、実施例3において上に列挙した概要に従った。9×50mmなる寸法の、ジオネックス社(Dionex Corporation)から入手した、3種の標準的なクロマトグラフィーガードカラム(guard column)を、充填媒体として、DI水を用いる上記被覆樹脂で充填した。
【0112】
CA州、サニーバレーのジオネックス社から入手した、電気化学的検出器を備えた、DX600 ICシステムを用いて、過酸化物の除去について、これらのカラムをテストした。CP PA20カラムを、100mM NaOH溶液を含む溶離剤と共に、0.5mL/分なる流量にて、30℃で使用した。金製の電極を該システムの電極として使用し、また検出は、AgCl基準電極により、予圧式四重極波形を用いて追跡した。10μL注入サンプルループを、この作業において使用した。該触媒の機能をテストするために、光学センサを用いて、気泡の移行を検出した。該気泡の移行に対する電圧応答を記録した。このセットアップが、全ての気泡を検知し、また取付け部品等からの漏れに起因するあらゆる気泡をも検知するであろうことに注意すべきである。従って、該取付け部品の全てが、堅牢かつ漏れがないように維持すべく注意を払った。該気泡検出器からの電圧シグナルを、ジオネックス社から入手したUI 20インターフェースモジュールに送り、また該シグナルを、ジオネックス社(CA州、サニーバレー)から入手したクロマトグラフィーソフトウエアである、クロメレオン(Chromeleon
TM)を使用して集めた。この実験的セットアップにおいて、ジオネックス社から入手した4mm ASRSサプレッサを、9mMの炭酸ナトリウム溶離剤と共に、1mL/分なる流量にてポンプ輸送し、また該サプレッサの廃棄物を、本発明による9×50mmの触媒カラムに分流させ、溶出する流体を、約3.175mm(1/8インチ)のテフロン(登録商標)(Teflon)製チューブに迂回させた。また、該チューブ上には気泡検出用の光学センサが装備されている。本発明によるこのセットアップは、気泡の移行を追跡するのに十分であった。該約3.175mm(1/8インチ)のテフロン(登録商標)製チューブから溶出される流体を容器に送り、あるいは過酸化物の検出のために、直接注入バルブに送った。幾つかの場合において、既知の標準的な量の過酸化物を、該触媒カラムにポンプ輸送し、また過酸化物の除去効率をテストするために、該注入バルブに送った。
【0113】
実施例5:
図11は、このデバイスの過酸化物除去効率を示す図である。10mg/Lの過酸化物の標準物質を、この実験において使用し、また実施例4において論じたセットアップによりテストした。
図11のトレースAは、白金-被覆イオン交換樹脂の性能を示し;トレースBは、パラジウム-被覆イオン交換樹脂の性能を示し;またトレースCは、組み合わせ(パラジウムおよび白金)-被覆した樹脂の性能を示す。ピーク1の強度から、該過酸化物の殆どが、トレースCのセットアップにより除去されたことは明らかである。これら3つのトレースの全てが、ピーク1の強度から明らかな如く、大幅な過酸化物の除去を示した。標準実験(図示せず)のピーク面積は、4.084であり、また上記3種の触媒カラムは、以下の表1に示すように、過酸化物に対して良好な除去効率を示した。ここで、該除去効率とは、触媒-担持樹脂を全く含まないコントロールに対する百分率(%)で表される。
【0114】
表1:10μmの樹脂(ジビニルベンゼンで55%架橋されたエチルビニルベンゼン)による、過酸化物除去テスト結果
【表1】
【0115】
実施例6:
図12は、上記3種のテストされたカラム同士の、気泡除去に関する比較を示す。ここで、気泡は、電圧シグナルの負のスパイクとして検出される。検出される気泡の数が多いほど、その触媒の機能は低い。トレースA、BおよびCは、実施例5において既に論じた上記3種の触媒-担持樹脂の性能を示す。優れた気泡の除去結果は、白金およびパラジウムの組合せで被覆された樹脂について観測される。
【0116】
実施例7:
気泡は完全には除去されないので、我々は、この用途に関してもう一つの樹脂を検討した。該樹脂は、ジオネックス社(CA州、サニーバレー)から入手したポリスチレンジビニルベンゼンを主成分とする専売樹脂であり、これは2%架橋されており、また15.4μmなる径を有していた。この樹脂を、実施例3に記載したプロトコールに従って、上記3種の組合せで被覆した。過酸化物除去の結果を
図13に示したが、これは再度単一金属-被覆樹脂よりも、組合せ-被覆樹脂(トレースC)の性能が優れていることを示している。これら結果を以下の表2にまとめた。
【0117】
表2:15.4μmの樹脂(ジビニルベンゼンで2%架橋されたスチレンを主成分とする樹脂)を用いた、過酸化物除去テスト結果
【表2】
【0118】
実施例8:
該触媒を用いたガスの除去を、実施例7のイオン交換支持体についてテストし(
図14のトレースA、B及びC)、またトレースCに示すように、組合せ金属触媒につき、優れたガス除去性能が示された。
【0119】
実施例9:
ジオネックス社から入手した、完全にスルホン化された、径50μmの樹脂(ジビニルベンゼンで16%架橋されたポリスチレン)を、本実験における支持体として使用した。あらゆる他の合成条件は、実施例3と同様であり、また該テストのセットアップは、実施例4と同様であった。
図15を参照すると、過酸化物除去に関する結果は、パラジウム-被覆樹脂(B)が、白金-被覆樹脂(A)を越える性能を有し、また組み合わせ-被覆樹脂(C)が、これら両者を越える性能を有することを示した。S/N比に近いピークから明らかな如く、該組合せ触媒の使用により、完全な除去が可能であった。以下の表3は、これらの結果をまとめたものである。同様に、触媒を用いるガス除去効率をテストしたところ、白金-被覆樹脂(A)がパラジウム-被覆樹脂(B)を越える性能を有し、またこれら2種の金属を含む組合せ-被覆樹脂(C)の場合に、気泡が存在しないことおよび単一金属-被覆樹脂を越える性能を有することを示した。
【0120】
表3:完全にスルホン化された樹脂、即ち径50μmの樹脂(ジビニルベンゼンで16%架橋されたポリスチレン)
【表3】