(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係る梁床接合構造について説明する。
【0017】
図1の断面図に示すように、第1の実施形態の梁床接合構造10は、梁12と、床スラブ14と、凹部16とを有している。
【0018】
梁12は、荷重を支持する木製の梁心材18と、梁心材18の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層20と、燃え止まり層20の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層22とを備えている。
【0019】
床スラブ14は、鉄筋コンクリートにより形成され、梁12の上面に設けられている。すなわち、梁心材18、燃え止まり層20、及び燃え代層22の上面に、床スラブ14が設けられている。また、凹部16は、梁心材18と床スラブ14との接合部に設けられている。
【0020】
梁心材18及び燃え代層22は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築の梁材に用いられる木材(以下、「一般木材」とする)を単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成されている。
【0021】
床スラブ14を形成する前の状態の梁12の上部を描いた
図2の斜視図に示すように、梁心材18は、上下方向に複数集成された板状の単材24と、最上層の単材24(以下、「単材24A」とする)の上面に略等間隔に複数配置され固定された角柱状の単材26と、材軸が単材26の材軸と略直交するようにして単材24Aの上面に配置され固定された角柱状の単材28とによって構成されている。単材28は、梁12の梁長方向に対して単材26と交互に配置されている。
【0022】
そして、隣り合う単材26と単材26との間に形成される切り欠き部が凹部16となっている。これにより、梁心材18の上面に凹部16が形成されている。
【0023】
梁心材18と床スラブ14とは、床スラブ14を形成するコンクリートVを現場打ちで梁心材18の上に流し込み、このコンクリートVを凹部16に入り込ませ硬化させることによって一体化されている。すなわち、凹部16にコンクリートVを入り込ませ硬化させることによって、せん断力伝達手段が構成されている。
【0024】
次に、本発明の第1の実施形態に係る梁床接合構造の作用と効果について説明する。
【0025】
本発明の第1の実施形態の梁床接合構造10では、火災が発生したときに火炎が燃え代層22に着火し、燃え代層22が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層22は炭化する。よって、梁12の外部から梁心材18への熱伝達及び酸素供給を、炭化した燃え代層22と、コンクリートVにより形成された床スラブ14とが遮断し、燃え止まり層20が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材18の温度上昇を抑制することができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材18を着火温度未満に抑え、梁心材18を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0026】
また、凹部16を設けることにより、梁心材18に対して略水平方向へ床スラブ14が相対移動することに抵抗する力が大きくなる。すなわち、凹部16を介して、梁心材18と床スラブ14との間でせん断力を伝達することができる。また、凹部16を設けることによって、梁心材18と床スラブ14とを一体化することができる。これにより、合成梁効果が得られ、梁心材18の曲げ剛性を見かけ上大きくすることができる。また、梁心材18の横断面や縦断面を小さくできるので、梁12の横断面や縦断面を小さくすることができる。
【0027】
また、梁心材18の上面をせん断力伝達手段(凹部16)の構成要素とすることができる。すなわち、せん断力伝達手段を構成するための部材を別途設けなくてよい。
【0028】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0029】
なお、本発明の第1の実施形態の梁床接合構造10では、一般木材を加工した単材を複数集成し一体化することによって梁心材18や燃え代層22を形成した例を示したが、梁心材18や燃え代層22は、木材によって形成されていればよく、単材の形状や大きさは何れであってもよいし、1つの木材により梁心材18や燃え代層22を構成するようにしてもよい。また、凹部16は、どのような方法で形成してもよいし、どのような形状にしてもよい。例えば、凹部16を、梁心材18の上面に形成した円柱状や半球状の穴としてもよい。
【0030】
また、例えば、
図3の断面図に示すように、長さ(幅)の異なる2種類の単材24を縦にして交互に配置して、凹部16を形成してもよい。この場合には、隣り合う単材24と単材24とにより形成される段差部が凹部16となる。また、床スラブ14を形成する前の状態の梁12の上部を描いた
図4の斜視図に示すように、単材26を平面視にて市松模様状に配置してもよい。
【0031】
また、例えば、
図5の断面図に示すように、梁心材18の上面を切削加工して形成した溝を凹部16としてもよい。床スラブ14を形成する前の状態の梁12の上部を描いた
図6の斜視図に示すように、梁心材18の上面に形成する溝は、交差溝であってもよいし、平行溝であってもよい。このようにすれば、簡単な切削加工により、任意の位置に凹部16を形成することができる。凹部16を平行溝とした場合においても、床スラブ14に接する梁心材18の表面積が大きくなる。これにより、梁心材18に対して床スラブ14が溝(凹部16)の縦方向へ相対移動することに抵抗する力を、溝(凹部16)を設けない場合の抵抗力に比べて大きくすることができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係る梁床接合構造について説明する。
【0033】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図7の断面図に示すように、第2の実施形態の梁床固定構造30では、せん断力伝達手段を抵抗部材32としている。
【0034】
抵抗部材32は、木ネジにより構成されており、梁心材18の上面に固定されている。また、抵抗部材32は、床スラブ14を形成する現場打ちされたコンクリートVに埋設されている。すなわち、抵抗部材32は、梁心材18と床スラブ14との接合部に設けられている。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係る梁床接合構造の作用と効果について説明する。
【0036】
本発明の第2の実施形態の梁床接合構造30では、せん断力伝達手段としての抵抗部材32が、梁心材18に対して略水平方向へ床スラブ14が相対移動することに抵抗する。すなわち、抵抗部材32を介して、梁心材18と床スラブ14との間でせん断力を伝達することができる。また、抵抗部材32によって、梁心材18と床スラブ14とを一体化することができる。これにより、合成梁効果が得られ、梁心材18の曲げ剛性を見かけ上大きくすることができる。また、梁心材18の横断面や縦断面を小さくできるので、梁12の横断面や縦断面を小さくすることができる。
【0037】
また、梁床接合構造30では、せん断力伝達手段を、梁心材18の上面に固定され床スラブ14のコンクリートVに埋設された抵抗部材32とすることによって、床スラブ14のコンクリートVを打設する直前にせん断力伝達手段を設けることができる。
【0038】
また、抵抗部材32の形状や配置によって、抵抗力(抵抗部材32を介して梁心材18と床スラブ14との間で伝達されるせん断力の大きさ)を調整することができる。すなわち、梁12の標準化に貢献することができ、設計変更に対して柔軟に対応することができる。
【0039】
また、抵抗部材32を、梁心材18の上面に固定される突起部材(木ネジ)とすることにより、任意の位置にせん断力伝達手段を設けることができる。なお、突起部材としては、木ネジの他に、釘、頭付きボルトや、
図8(a)の断面図に示すワンタッチ固定式のピン部材34等が挙げられる。これらのものを用いても、木ネジとほぼ同様の効果を得ることができる。ピン部材34は、上部に鍔部36を備え、下部に可撓性を有する脚部38を備えている。
図8(b)の断面図に示すように、梁心材18の上面に形成され下部が拡径している挿入孔40へ、脚部38を内側へ撓ませながら挿入する。そして、
図8(c)の断面図に示すように、脚部38の先端に設けられた爪部42が挿入孔40の下部(拡径部44)へ到達したときに、脚部38は外側へ拡がって元の形状に戻る。これにより、爪部42が拡径部44の上面縁部に引っ掛かって脚部38が挿入孔40から引き抜けなくなり、ピン部材34が梁心材18の上面に固定される。
【0040】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0041】
なお、第2の実施形態では、抵抗部材32を突起部材とした例を示したが、
図9の断面図に示すように、抵抗部材32を抵抗板によって構成してもよい。
図9には、抵抗板として鋼製の波板が、木ネジにより梁心材18の上面に固定されている状態が描かれているが、抵抗板は、この抵抗板を介して、梁心材18と床スラブ14との間でせん断力を伝達することができれば、どのような材料によって形成してもよいし、どのような形状に形成してもよい。例えば、抵抗板を、樹脂製の平板やパンチングメタル等にしてもよい。抵抗板を波板やパンチングメタルにすれば、1つの抵抗板を取り付けるだけで、多くの凹部を形成することができる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る梁床接合構造について説明する。
【0043】
第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図10の断面図に示すように、第3の実施形態の梁床固定構造46では、せん断力伝達手段を突出部48としている。
【0044】
突出部48は、梁心材18の上部を構成し、燃え止まり層20及び燃え代層22の上面高さよりも上方へ突出し、床スラブ14の現場打ちされたコンクリートVに埋設されている。すなわち、突出部48は、梁心材18と床スラブ14との接合部に設けられている。
突出部48の上面には、矩形断面の切り欠き50が複数形成され、突出部48の略中央高さの位置に、梁12の梁幅方向へ貫通する貫通孔52が形成されている。
【0045】
床スラブ14のコンクリートVに埋設され、梁12の梁幅方向へ配置された下端筋54は、貫通孔52へ貫通されている。また、床スラブ14のコンクリートVに埋設され、梁12の梁長方向へ配置された下端筋56のいくつかは、切り欠き50内へ配置されている。
【0046】
次に、本発明の第3の実施形態に係る梁床接合構造の作用と効果について説明する。
【0047】
本発明の第3の実施形態の梁床接合構造46では、せん断力伝達手段としての突出部48が、梁心材18に対して略水平方向へ床スラブ14が相対移動することに抵抗する。すなわち、突出部48を介して、梁心材18と床スラブ14との間でせん断力を伝達することができる。また、突出部48によって、梁心材18と床スラブ14とを一体化することができる。これにより、合成梁効果が得られ、梁心材18の曲げ剛性を見かけ上大きくすることができる。また、梁心材18の横断面や縦断面を小さくできるので、梁12の横断面や縦断面を小さくすることができる。
【0048】
また、梁床接合構造46では、梁心材18の一部(突出部48)が床スラブ14のコンクリートVに埋設されるので、床スラブ14の下面から下方へ突出する梁12の部分Lを少なくすることができる。すなわち、床スラブ14下方の部屋空間を広くすることができる。
【0049】
以上、本発明の第3の実施形態について説明した。
【0050】
なお、第3の実施形態では、突出部48に切り欠き50及び貫通孔52を形成した例を示したが、切り欠き50や貫通孔52は無くてもよい。
【0051】
次に、本発明の第4の実施形態に係る梁床接合構造について説明する。
【0052】
第4の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図11の断面図に示すように、第4の実施形態の梁床固定構造58では、燃え止まり層20と燃え代層22との上部を切り欠いて切り欠き部60を形成することにより、梁心材18の上部を、切り欠かれた燃え止まり層20及び燃え代層22の上面高さよりも上方へ突出する突出部64としている。そして、梁心材18の上に、床スラブ14を形成するコンクリートVを現場打ちで流し込み、このコンクリートVを切り欠き部60に入り込ませ硬化させることによって、突出部64(梁心材18)が床スラブ14のコンクリートVに埋設され、突出部64(梁心材18)と床スラブ14とが一体化されている。すなわち、梁床固定構造58では、突出部64をせん断力伝達手段としている。
【0053】
次に、本発明の第4の実施形態に係る梁床接合構造の作用と効果について説明する。
【0054】
本発明の第4の実施形態の梁床接合構造58では、突出部64を設けることにより、梁心材18に対して略水平方向へ床スラブ14が相対移動することに抵抗する力が大きくなる。すなわち、突出部64を介して、梁心材18と床スラブ14との間でせん断力を伝達することができる。また、突出部64を設けることによって、梁心材18と床スラブ14とを一体化することができる。これにより、合成梁効果が得られ、梁心材18の曲げ剛性を見かけ上大きくすることができる。また、梁心材18の横断面や縦断面を小さくできるので、梁12の横断面や縦断面を小さくすることができる。
【0055】
また、梁床接合構造58では、床スラブ14のコンクリート打設によって、せん断力伝達手段を構成することができる。よって、施工の合理化を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の第4の実施形態について説明した。
【0057】
なお、第4の実施形態では、燃え止まり層20及び燃え代層22の上部を切り欠いて突出部64を形成した例を示したが、例えば、
図12(a)〜(c)の断面図のように切り欠いて突出部64を形成してもよい。
図12(a)には、燃え止まり層20の上部のみに切り欠き部60が形成されている例が示され、
図12(b)には、燃え代層22の上部のみに切り欠き部60が形成されている例が示され、
図12(c)には、燃え止まり層20の上部と燃え代層22の上部内側とに切り欠き部60が形成されている例が示されている。
【0058】
図11、12(a)〜(c)では、梁心材18上部の上面と側面とが床スラブ14との接合部となる。すなわち、せん断力伝達手段(突出部64)は、梁心材18と床スラブ14との接合部に設けられている。
【0059】
梁心材18の突出部64を床スラブ14のコンクリートVで挟む構成にすることにより、梁心材18と床スラブ14との間で効果的にせん断力を伝達できる。また、
図12(a)、(c)のように、燃え代層22の外側に切欠き部60を形成しない構成にすれば、コンクリート打設の際の側型枠として燃え代層22を用いることができる。
【0060】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明した。
【0061】
なお、本発明の第1〜第4の実施形態で示した燃え止まり層20は、熱の吸収が可能な層であればよい。例えば、燃え止まり層20は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0062】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0063】
また、本発明の第1〜第4の実施形態では、現場打ちコンクリートにより床スラブ14を形成した例を示したが、プレキャストコンクリート製のPC版(プレストレストコンクリート版)によって床スラブ14を構築するようにしてもよい。例えば、
図13の断面図に示すように、ハーフプレキャスト製のPC版62を梁12の上に載置し、この上からコンクリートVを打設して床スラブ14を構築してもよい。この場合、ハーフプレキャストPC版62の端部を梁心材18に略2cm以上載せておくのが好ましい。
【0064】
また、第1〜第4の実施形態で示した梁12は、水分の浸透により強度が低下することが考えられるので、梁12の上面に、撥水材を塗布する等の防水処理を施すのが好ましい。梁心材18は荷重を負担する部材なので、梁心材18の上面へ防水処理を施すことが特に有効となる。
【0065】
また、第1〜第4の実施形態では、梁心材18、燃え止まり層20、及び燃え代層22を備えている梁12を用いた例を示したが、第1〜第4の実施形態は、一般的な木造の梁に対しても適用可能である。
【0066】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第4の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。