特許第5930617号(P5930617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930617流体静力学的なリニアガイドのためのシール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930617
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】流体静力学的なリニアガイドのためのシール
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/74 20060101AFI20160526BHJP
   F16C 29/02 20060101ALI20160526BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20160526BHJP
【FI】
   F16C33/74 Z
   F16C29/02
   F16J15/32 301A
   F16J15/32 301Z
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-129944(P2011-129944)
(22)【出願日】2011年6月10日
(62)【分割の表示】特願2010-513857(P2010-513857)の分割
【原出願日】2008年6月19日
(65)【公開番号】特開2011-196552(P2011-196552A)
(43)【公開日】2011年10月6日
【審査請求日】2011年6月10日
【審判番号】不服2014-22077(P2014-22077/J1)
【審判請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】102007030883.5
(32)【優先日】2007年7月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【復代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング バウアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ギートル
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト ペシュケ
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 森川 元嗣
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−537446(JP,A)
【文献】 特開2003−322259(JP,A)
【文献】 実開平6−45114(JP,U)
【文献】 特開2005−147317(JP,A)
【文献】 特開2000−263649(JP,A)
【文献】 特開平7−243443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/74
F16C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の調整方向(5)を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシール(1)であって、調整方向(5)に対してほぼ平行に延在する長手方向シール区分(7,7′)と、調整方向(5)に対してほぼ横方向に延在する横方向シール区分(8,8′)とを備えており、長手方向シール区分(7,7′)に沿って第1のシールリップ(12)が延在し、横方向シール区分(8,8′)に沿って第2のシールリップ(14)が延在している、所定の調整方向を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシールにおいて、
第1のシールリップ(12)がガイドレールに対して平面的に載置されるよう第1のシールリップ(12)の基底に対してほぼ垂直な延伸部が、調整方向(5)に沿って波形に変動する均等に繰り返す支持面を形成しており、
第2のシールリップ(14)は、調整方向(5)に対して横方向に延びていて、
長手方向シール区分(7,7′)及び横方向シール区分(8,8′)は互いに結合されていることを特徴とする、所定の調整方向を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシール。
【請求項2】
前記支持面は正弦状に変動することを特徴とする、請求項1記載のシール。
【請求項3】
横方向シール区分(8,8′)は、第2のシールリップ(14)に対してほぼ平行に延在する第3のシールリップ(16)を有していることを特徴とする、請求項1又は2記載のシール。
【請求項4】
第1のシールリップ(12)及び/又は第2のシールリップ(14)は、第1のシールリップ(12)及び/又は第2のシールリップ(14)の長手方向に対して横方向において、尖端を形成する端部を備えたプロフィル(23、29)を有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のシール。
【請求項5】
第1のシールリップ(12)と第2のシールリップ(14)とは均一なプロフィル(23,29)を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項記載のシール。
【請求項6】
第1のシールリップ(12)及び/又は第2のシールリップ(14)は、他のシール材料に比べて高められた剛性を有する材料から製造されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載のシール。
【請求項7】
第1のシールリップ(12)及び/又は第2のシールリップ(14)は、金属又はプラスチックによって補強されていることを特徴とする、請求項6記載のシール。
【請求項8】
長手方向シール区分(7,7′)及び/又は横方向シール区分(8,8′)は、前記リニアガイドの構成要素と形状接続的及び/又は摩擦接続的な接続のための手段を有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項記載のシール。
【請求項9】
前記シールは複数の部材から製造されており、個別部材(A,A′,B,B′)はそれぞれ突合わせ縁(25,30)を介して互いに架橋が行われていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載のシール。
【請求項10】
突合わせ縁(25,30)はそれぞれシールリップ(12,14,16,21)の長手方向に対して斜めに延在しているか、又は、段状に形成されていることを特徴とする、請求項9記載のシール。
【請求項11】
突合わせ縁(25,30)はそれぞれ長手方向シール区分(7,7′)に配置されていることを特徴とする、請求項9又は10記載のシール。
【請求項12】
組付け状態において前記リニアガイドの構成要素に対してシールするために第4のシールリップ(21)が設けられていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項記載のシール。
【請求項13】
ガイドレールを収容する中央の切欠き(4)を備えた流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディ(3)において、
切欠き(4)の循環する縁(6)に沿って、請求項1から12までのいずれか一項記載のシール(1)が配置されていることを特徴とする、ガイドレールを収容する中央の切欠きを備えた流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の調整方向を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシールであって、調整方向に対してほぼ平行に延在する長手方向シール区分と、調整方向に対してほぼ横方向に延在する横方向シール区分とを備えており、長手方向シール区分に沿って第1のシールリップが延在し、横方向シール区分に沿って第2のシールリップが延在し、長手方向シール区分及び横方向シール区分が互いに接続されている、所定の調整方向を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシールに関する。
【背景技術】
【0002】
流体静力学的なリニアガイドのためのこのようなシールは、例えばUS2004/0042689A1において公知である。提示されたシールは不都合なオイル流出を回避するためにキャリアボディの縁に配置されている。キャリアボディはガイドレールに対して流体静力学的に支承されて、所定の調整方向に沿って線状に運動する。流体静力学的な支承のために、オイルは供給管路を介してキャリアボディのポケット内にポンプ供給され、スライディングフィルムを形成するためにガイドレールに対して押し付けられる。適切な戻り流通路を介してオイルは排出され、循環プロセスにおいて改めてポケット内に戻し供給される。キャリアボディの縁に配置されたシールはシールリップを有しており、キャリアボディの調節時にガイドレールに対するオイルの不必要なリークは回避される。このために、調整方向に対して平行に延在する、キャリアボディの長手方向側面にはそれぞれ調整方向に延在する第1のシールリップを備えた長手方向シール区分が配置されており、キャリアボディの横方向縁若しくは横方向側面にはそれぞれ調整方向に対して横方向に延在する第2のシールリップを備えた横方向シール区分が配置されている。長手方向シール区分と横方向シール区分とは、特に収容領域を介して互いに結合されている。
【0003】
ガイドレールに対してスライディングフィルム(Gleitfilm)上をスライドするキャリアボディを備えた流体静力学的なリニアガイドの発揮可能な機能のために、使用されるシールは確実な動的な油密性を発揮する必要があり、全体としてオイル損失は可能な限り回避される。システムの静止状態において、ガイドレールに対するシールは外方に可能な限り油密に閉鎖したい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2004/0042689A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、冒頭で述べた形式の流体静力学的なリニアガイドのためのシールを改良して、先行技術において公知の構成に対してシールの油密性がさらに改良されたシールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は本発明によれば、冒頭で述べた形式のシールのために、第1のシールリップと第2のシールリップとが連続的な曲率を持って互いに移行することにより達成される。
【0007】
本発明は、所定の調整方向を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシールであって、調整方向に対してほぼ平行に延在する長手方向シール区分と、調整方向に対してほぼ横方向に延在する横方向シール区分とを備えており、長手方向シール区分に沿って第1のシールリップが延在し、横方向シール区分に沿って第2のシールリップが延在し、長手方向シール区分と横方向シール区分とは互いに接続されている、所定の調整方向を備えた流体静力学的なリニアガイドのためのシールにおいて、第1のシールリップと第2のシールリップとは連続的な曲率を持って互いに移行していることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、第1のシールリップと第2のシールリップとは湾曲部を介して互いに移行している。
【0009】
好ましくは、横方向シール区分は、第2のシールリップに対してほぼ平行に延在する第3のシールリップを有している。
【0010】
好ましくは、第1のシールリップの高さは調整方向に沿って波形に変動する。
【0011】
好ましくは、高さは正弦状に変動することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、第1のシールリップ(12)及び/又は第2のシールリップは、第1のシールリップ及び/又は第2のシールリップの長手方向に対して横方向において、尖端を形成する端部を備えたプロフィルを有している。
【0013】
好ましくは、第1のシールリップと第2のシールリップとは均一なプロフィル(23)を有している。
【0014】
好ましくは、第1のシールリップ及び/又は第2のシールリップは、他のシール材料に比べて高められた剛性を有する材料から製造されている。
【0015】
好ましくは、第1のシールリップ及び/又は第2のシールリップは担体材料、特に金属又はプラスチックによって補強されている。
【0016】
好ましくは、長手方向シール区分及び/又は横方向シール区分は、前記リニアガイドの構成要素と形状接続的及び/又は摩擦接続的な接続のための手段を有している。
【0017】
好ましくは、シールは複数の部材から製造されており、個別部材はそれぞれ突合わせ縁を介して互いに堅固に結合されている、特に連結されている。
【0018】
好ましくは、突合わせ縁はそれぞれシールリップの長手方向に対して斜めに延在しているか、又は、段状に形成されている。
【0019】
好ましくは、突合わせ縁はそれぞれ長手方向シール区分に配置されている。
【0020】
好ましくは、横方向シール区分は連続的な曲率の大部分の領域を含めて個別部材として製造されている。
【0021】
好ましくは、組付け状態においてリニアガイドの構成要素に対してシールするために第4のシールリップが設けられている。
【0022】
さらに本発明は、長手方向レールを収容する中央の切欠きを備えた流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディにおいて、切欠きを循環する縁に沿って前記シールが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
まず本発明は、特に長手方向シール区分と横方向シール区分との間の移行個所が動的なオイルシールにおいて問題であるという考察から出発する。システムの運転中には、すなわちガイドレールに対するキャリアボディの運動に基づき、シールリップにおいて常にほぼオイルが流出する。しかしこのオイルは逆の運動時にはシステム内に再び収容される。長手方向シール区分と横方向シール区分との間のまさに突合わせ個所において、このようなシールは問題である。好ましくは、長手方向シール区分と横方向シール区分とは、互いに結合されている。
【0024】
これまで使用されてきたシールの場合、長手方向シール区分と横方向シール区分とのシールリップは角領域において鈍角に互いに突き合わされる。換言すれば、一方のシールリップが、このシールリップに対して横方向に延在する他のシールリップと衝突する個所において終わる、ということである。したがって、所定の角領域において調整方向に対して斜めに流出するオイルを、キャリアボディ3のガイドレールに対する一次元的な運動に基づき、システム内に十分に戻すことはもはやできない。
【0025】
そこで次に本発明は、第1のシールリップと第2のシールリップとが連続的な曲率を持って互いに移動する場合にこの問題を回避できるということを認識した。こうして、まず、キャリアボディのガイドレールに対する運動時に簡単にリークが生じることがある問題となる角領域をまず回避する。むしろ循環するシールエッジが提供される。連続的な曲率の結果、場合によっては運動に起因するリーク個所が回避されている。オイルは確実に押しとどめられる。また角領域において流出するオイルを、この形状を付与した場合、逆の運動時にシステム内に再び戻すことができる。
【0026】
全体的にこの構成により先行技術と比べて改良された動的な油密性が達成される。循環して延びているシール縁により静止状態における油密性は高められる。
【0027】
本発明において「曲率」という概念は、長さの単位ごとのシールリップの方向変化量のことであり、又は、換言すると直線に対するシールリップにより与えられた曲線延在の一次微分のことである。
【0028】
シール自体は複数の長手方向シール区分と複数の横方向シール区分とを有していてよく、特に全体として閉鎖された形状を有していてよい。シールは全体を一部材として製造されていてよいか、又は、個別部材から製造されていてよい。これらの個別部材は続いて組み立てられてシールを形成する。シールの材料として、基本的にはゴム等及び特にエラストマといった弾性的な材料、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマが適している。特に、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリラートゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)又はエチレンプロピレンジエンモノマ(EPDM)を使用することができる。基本的にはポリアミドも考慮可能である。このようなプラスチックは簡単に、例えば射出成形又は押出し成形により製造することができるか、若しくは加工することができる。
【0029】
本発明は、第1のシールリップと第2のシールリップとの間の移行領域に関して、移行領域が連続的な曲率を有する必要があるということだけを要求する。曲率が長手方向シール区分と横方向シール区分との間の角領域おいて曲率の値を飛躍的にひいては不連続に交番しない限りは、種々異なる特に波形の延在が提供される。
【0030】
有利には、容易に製造可能であるので、第1のシールリップと第2のシールリップとは湾曲部を介して互いに移行する。特に湾曲部は円弧であってよいので、曲率領域は曲線経過に沿って一定の曲率を有する。こうして長手方向シール区分と横方向シール区分との間の角領域は同形に形成されている。このことは油密性に関してさらなる改良をもたらす。
【0031】
別の有利な構成において、横方向シール区分は第2のシールリップに対してほぼ平行に延在する第3のシールリップを有している。したがって、横方向シール区分は二重リップ式に構成されている。この構成により、第2のシールリップがオイルシールする機能を担い、第3のシールリップがゴミ、埃又は粒子剥離の機能を有し、ひいてはゴミ又は埃粒子がキャリアボディの内部に達し、ひいてはリニアガイドの機能性を脅かすことを防ぐように、機能分離を実施することができる。特にこのために、第3のシールリップは、外側からキャリアボディの内室への方向に見て第2のシールリップに前置されているようになっている。特に異なって備え付けられている機能性に基づき第2及び第3のシールリップのプロフィルは互いに異なっていてよい。
【0032】
有利には長手方向シール区分に沿って延在する第1のシールリップは、第1のシールリップの高さ、つまり基底に対してほぼ垂直な延伸部は調整方向に沿って波形に変位するように構成されている。このような構成により、長手方向シール区分にとって、油密性、摩擦及び磨耗の最適性が達成される。長手方向シール区分に沿った波延在の数を介して所望の特性を、要求及び流体静力学的なリニアガイドの設計に応じて合わせることができるか若しくは調節することができる。波形の構成により、ガイドレールに対しシールリップが平面的に載置されることになり、これにより支持縁(Auflagekante)に対する密性は改良されている。
【0033】
有利な構成では第1のシールリップの高さは調整方向に沿って正弦状に変化する。これにより長手方向シール区分に沿って、シールリップの均等に繰り返す支持面がもたらされる。
【0034】
シールリップ、特に長手方向シール区分のシールリップの高さの前記波形の構成は、独立して発明性のあるアイデアでもある。この種の構成は平面状の支持、及び、長手方向シール区分に沿った構成の場合には運動方向に沿った波形の延在により、特に流体静力学的なリニアガイドのために真っ直ぐな縁に比べて動的な油密性を改良する。調整方向に沿った波形の延在により、運転中に波延在に沿って流出するオイルは隣接する波延在から再びシステムに戻る。
【0035】
さらに別の有利な構成において、第1及び/又は第2のシールリップはその長手方向に対して横方向に、尖端を成すように延びている端部を備えたプロフィルを有している。各シールリップの外側縁に尖端部を設けることにより、ガイドレールに対する圧着は高められ、このことはまたシール性に関しても有利である。尖端部はプロフィルにおいて対称的に構成されている必要はなく、ポンプ作用ひいては動的な油密性の改良のために非対称的に構成されていてよい。
【0036】
有利には、第1のシールリップの連続的かつ均一な移行のために第1及び第2のシールリップのための一様なプロフィルが設けられている。第1及び第2のシールリップのプロフィルは互いに異なっているということは同様に良好に考慮可能である。この構成において移行領域における第1及び第2のシールリップの異なるプロフィルは緩やかに連続的に互いに移行するので、移行領域において油密性を減少させる急激な変化は起こらない。
【0037】
有利には、シールリップの圧着力をさらに高めるために、第1及び/又は第2のシールリップは他のシール材料に比べて高められた剛性を有する材料から製造されている。このことは、例えば使用されるプラスチックの組成に関するプラスチックの調整により、又は、特にシールリップをキャリア材料、特に金属又はプラスチックによって補強することによりもたらすことができる。両構成において、シールリップはシールの他の材料に比べて補強されることにより、確実に動的かつ静的な油密性の改良を達成することができる。
【0038】
このようなシールは基本的にキャリアボディに接着されていてよいか、又はキャリアボディに射出成形されていてよいか、又は製造方法においてキャリアボディに架橋(vernetzt)が行われていてよい、特に加硫されていてよい。しかし機能確実性の向上のために、長手方向シール区分及び/又は横方向シール区分は、リニアガイドの構成要素、特にキャリアボディとの形状接続的及び/又は摩擦接続的な接合のための付加的な手段を有している。このような手段は、例えばリニアガイドの構成要素の適切に相補的に構成されたエレメントと協働する、切欠き、溝又は突条(Stege)であってよい。特にシールはクリップ結合のための手段を有していてよい。
【0039】
既述したように、シールは1つの部材から製造されていてよく、又は複数の個別部材から組み立てられていてよい。有利な構成において、シールは複数の部材から製造されている。個別部材はそれぞれ突合わせ縁を介して互いに堅固に結合、特に連結若しくは架橋されている。突合わせ縁は確かに基本的には互いに接着されていてもよいものの、架橋、特に比較的高い油密性を有する結合である加硫が行われる。適切な接着剤へ耐油性及び油密性に関して高い要求を課すこともできる。さらに接着剤は硬化後に可能な限り接着剤に接着したシール素材と同様の弾性を有していることが望まれる。例えば押圧作用下及び/又は温度作用下において直接工具内において架橋を行うことができ、またこれにより、油密性に関して不都合であるずれの危険性はない。
【0040】
個別部材の確実でかつ持続的な接合のために、接着であろうと又は架橋であろうと、突合わせ縁がそれぞれシールリップの長手方向に対して傾斜して延在しているか、又は段状に形成されていると有利である。両構成は接合面を増大するので、結合は全体的に改良されている。特にこのような構成により製造公差を補償することができる。
【0041】
さらに有利な構成において、個別部材間の突合わせ縁はそれぞれ長手方向シール区分に配置されている。この構成においては、長手方向シール区分と横方向シール区分との間の角領域に直に突合わせ縁を取り付けることは、油密性に関しても結合の寿命に関しても問題を含んでいるということが考慮されている。さらに横方向シール区分における取付けに比べての長手方向シール区分における突合わせ縁の取付けに関しては、横方向シール区分への移行部を有する長手方向シール区分の射出成形のための工具は、通常、長手方向シール区分への若しくは長手方向シール区分に向かう移行部又は角領域を有する横方向シール区分の射出成形のための工具よりも複雑でかつコストがかかる、ということは事実である。つまり、通常、長手方向シール区分に1つの個別のシールリップが備えられていることは有利であり、有利には横方向シール区分に平行に延在する2つのシールリップが備え付けられている。横方向シール区分において突合わせ縁を設ける場合、それに応じて、長手方向シール区分を製造するための工具を、第2のシールリップの始端部を移行領域に成形するために構成する必要がある。逆の場合には、横方向シール区分に含まれている移行領域において第2のシールリップは単純に終わっており、このことは射出成形技術において比較的簡単に実現することができる。
【0042】
横方向シール区分が連続的な曲率の大部分の領域を含めて個別部材として製造されている限りは、製造技術的に廉価でかつ簡単である。長手方向シール区分の架橋又は接着又は一般的には接合は工具自体において実施することもできる。
【0043】
有利な構成において、組付け状態においてリニアガイドの構成要素に対してシールする、つまり特にキャリアボディに対してシールするために、第4のシールリップがシールに含まれている。有利には、第4のシールリップは、シールが組み付けられているリニアガイドの構成要素に対するシールの内縁に沿って延在している。
【0044】
さらに有利な構成において、流体静力学的なリニアガイドのためのキャリアボディの切欠きの循環している縁に沿ってシールが配置されている。長手方向レール又はガイドレールを収容するためにキャリアボディの中央の切欠きが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】長手方向シール区分と横方向シール区分とを備えた、流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディに配置されている循環シールを、斜視的にかつ部分的に透明にして示した図である。
図2】流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディを示した斜視図であり、この場合、キャリアボディには循環シールが取り付けられている。
図3図1記載のシールの横方向シール区分の一部分を斜視的に示した図である。
図4図1記載のシールの長手方向シール区分の一部分を斜視的に示した図である。
図5図1記載のシールの長手方向シール区分と横方向シール区分との間の接合領域の斜視的な部分図である。
図6図1記載のシールの、キャリアプレートに配置された横方向シール区分の断面縁の斜視的な部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0047】
図1には、循環しているシール1が部分的に透明な斜視図において示されている。循環しているシール1は流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディ3に取り付けられている。キャリアボディ3は、ガイドレール(図示せず)を収容するために働く中央の切欠き4を有している。さらにキャリアボディ3はその内面に複数のオイルポケット(図示せず)を有している。オイルポケット内に適切な供給管路を介してオイルがポンプにより供給される。適切な表面構造を介してオイルはポケットから進出し、切欠き4において案内されているガイドレールに対して内面にスライディングフィルムを形成する。その結果、キャリアボディ3はガイドレールに対して記載の調整方向5に沿って流体静力学的に支承されて線状に調整可能である。キャリアボディ3とガイドレール(図示せず)とは、いわゆる流体静力学的なリニアガイドを一緒に形成する。
【0048】
キャリアボディ3の中央の切欠き4の循環している縁6に沿って、ワンピースでかつ同様に循環しているシール1が案内されている。シール1は突条及び溝によって、形状接続的(formschluessig)に、つまり形状による束縛によりキャリアボディ3に取り付けられている。付加的にキャリアボディ3に対してシール1のクリップ結合又は接着並びに架橋が行われていてよい。通常、キャリアボディ3は金属から成っている。架橋は定着剤を介して行われる。
【0049】
循環しているシール1は全部で2つの長手方向シール区分7,7′と、調整方向5に対してほぼ横方向に延在している2つの横方向シール区分8,8′とを有している。長手方向シール区分7,7′は調整方向5に対して平行に、切欠き4若しくはガイドレール寄りの、キャリアボディ3の長手方向縁に沿って延び、横方向シール区分8,8′はキャリアボディ3の、調整方向5に対して横方向に延在する縁をガイドレールに対してシールする。長手方向シール区分7,7′はそれぞれ角領域において横方向シール区分8,8′に移行する。横方向シール区分8,8′はキャリアプレート9に取り付けられている。キャリアプレート9はまた実際のキャリアボディ3に螺合されている。キャリアプレート9はプラスチック又は金属から成っていてよい。さらに2つの横方向シール区分8,8′の図1における上側に、円弧状のシールゾーン11が設けられている。シールゾーン11はキャリアプレート9におけるオイル戻し案内のために働く切欠きのシールのために働く。内側に位置するキャリアボディ3に対する他のシールリップを介し、オイルポケットを介して流出しかつスライディングゾーンを介して流れたオイルはシールゾーン11に導かれ、そこで排出される。排出されたオイルは改めてオイルポケット内にポンプ供給され、全体としてオイル循環回路がもたらされている。
【0050】
さらに2つの長手方向シール区分7,7′に沿って延在する第1のシールリップ12が図1に示されている。第1のシールリップ12は波形の形状を有している。同様に図1から第2のシールリップ14が見て取られる。第2のシールリップ14は2つの横方向シール区分8,8′に沿ってそれぞれ延在している。角領域10へと第1のシールリップ12と第2のシールリップ14とはそれぞれ連続的な曲率を持って互いに移行している。これにより全体として、切欠き4の縁部6を循環する一様なシール縁がもたらされる。シール縁は、静止状態においてガイドレールに対するキャリアボディ3の静的な油密性をもたらし、かつ、運転状態においてガイドレールに対するキャリアボディ3の動的な油密性をもたらす。
【0051】
長手方向シール区分7,7′の部分、横方向シール区分8,8′の部分及び長手方向シール区分7,7′と横方向シール区分8,8′とに沿って延在する第1のシールリップ12と第2のシールリップ14との部分は、別の図面から見て取ることができる。特に、4つの個別部材A,A′及びB,B′からシール1は製造されている。4つの個別部材A,A′及びB,B′は2つの長手方向シール区分7,7′及び2つの横方向シール区分8,8′によりほぼ形成されている。しかし、個別部材A,A′,B,B′間の突合わせ個所は角領域10に設けられているのではなく、長手方向シール区分7,7′の領域に配置されている。このことは図1においてその領域に示されている横方向線からわかる。設けられた角領域10を含む横方向シール区分8,8′はそれぞれ個別部材A若しくはA′として製造されている。個別部材A,A′を結合する他の個別部材B,B′は、実質的に2つの長手方向シール区分7,7′を有している。シール1は全体として熱可塑性のエラストマ又は射出成形法によるエラストマから製造されている。さらに個別部材A,A′,B,B′は架橋が行われている、特に加硫により既に工具において堅固に互いに結合されている。
【0052】
図2には、流体静力学的なリニアガイドのキャリアボディ3がより詳細に示されている。循環するシール1の横方向シール区分8を収容するキャリアプレート9が明確に見て取られる。キャリアプレート9の上側端部の中央に、オイル戻し案内開口13を見て取ることができる。このオイル戻し案内開口13を介して、内側に位置する円弧状のシールゾーン11を介してスライディングゾーンから流出するオイルは排出される。キャリアボディ3の内部にはオイルポケット15が見て取られる。オイルポケット15は面領域15′によって囲まれている。面領域15′はガイドレール(図示せず)に対して僅かなギャップ寸法を形成する。この面領域15′に、オイルポケット15から圧力下で流出するオイルによりスライディングゾーンが形成される。その結果、キャリアボディ3はガイドレールにおいて滑走することができる。スライディングゾーン15′から横方向シール区分8に向かって流出するオイルは、内側の別のシールリップを介して集められ、オイル戻し案内開口13を介して円弧状のシールゾーン11から排出される。
【0053】
図3には、長手方向シール区分7′への移行のための、一緒に製造される下側の角領域10を含めて横方向区分8の一部分が斜視図において示されている。換言すると、図1に示した個別部材Aの一部分が示されている。図3では、ガイドレールに対するオイルシーリングのために調整方向5に対して横方向に設けられている、内側において延在する第2のシールリップ14を明確に見て取ることができる。さらに、横方向シール区分8は第2のシールリップ14に対して平行に延在している第3のシールリップ16を有している。第3のシールリップ16はガイドレールに対するゴミ剥離又は粒子剥離のために形成されている。
【0054】
内側の第2のシールリップ14は角領域10において連続的な曲率18の領域に移行する。連続的な曲率18の領域は湾曲部20として形成されている。さらに横方向シール区分8の内側縁に第4のシールリップ21が配置されている。第4のシールリップ21はキャリアボディ3に対するオイルシールするための二次シールとして働く。
【0055】
第2のシールリップ14の湾曲部20の下側端部に、第2のシールリップ14の延在に対して直交して、シールリップ14のプロフィル(横断面の輪郭)23を見て取ることができる。プロフィルは上側端部において尖端24を有している。これにより第2のシールリップ14のガイドレールに対する圧着は高められる。さらに、圧着を補強するために第2のシールリップ14は全体として材料組成の適合によりその剛性においてシール1の他の材料に比べて高められる。択一的には金属による補強(Armierung)が行われる。
【0056】
さらに、記載の横方向シール区分8の左の下側端部、つまり角領域10の端部には、長手方向シール区分7又は7′との結合のために形成されている、斜めに延在する突合わせ縁25を見て取ることができる。
【0057】
また図4には斜視的な部分図において、長手方向シール区分7′の一部分が示されており、長手方向シール区分7′は図3に示した横方向シール区分8の突合わせ縁25に接合されている。換言すれば、個別部材B′の一部が示されている。長手方向シール区分7′の内側縁に沿って、調整方向5に対して平行に延在する第1のシールリップ12を見て取ることができる。図4において、第1のシールリップ12の高さ27は調整方向5に沿って波形に変動していることが明示されている。第1のシールリップ12のプロフィル29においてもまた、第1のシールリップ12が尖端24において終わっていることが明らかである。
【0058】
また、長手方向シール区分7′の右側の下側端部には傾いて延在する突合わせ縁30が設けられている。突合わせ縁30は、横方向シール区分8と共に形成される図3に示した角領域10の突合わせ縁25に接合するために設けられている。
【0059】
図4に示した長手方向シール区分7′の上側の縁に沿って、2つの突条33,34が設けられている。これらの突条33,34はキャリアボディ3と長手方向シール区分7′との形状接続的な接合のために働く。
【0060】
図5には、図3,4に示した個別部材が接合された位置において示されている。長手方向シール区分7′は突合わせ縁25,30における架橋により、横方向シール区分8と共に製造されている角領域10に結合されている。第2のシールリップ14が連続的な曲率18の領域を介して、つまり湾曲部20を通って第1のシールリップ12に移行することが判る。工具内での突合わせ縁25,30の架橋により、突合わせ縁25,30の側方のずれは互いに回避されており、これにより全体として2つの個別部材A,B′の滑らかで連続的な移行が互いにもたらされる。
【0061】
第1のシールリップ12、湾曲部20及び第2のシールリップ14からもたらされる、連続している循環するシール縁により、ガイドレールに対するキャリアボディ3の内面の静的及び動的な確実なオイルシールが達成される。
【0062】
さらに図5において再度、キャリアボディ3に対して二次的にシールするために設けられている第4のシールリップ21の位置と、2つの突条33,34の延在が見られる。
【0063】
図6においてまた斜視的な部分図において、キャリアボディ3に固定されているキャリアプレート9の断面縁が見られる。図6において明確に第2のシールリップ14と、第2のシールリップ14に対して平行に延在する第3のシールリップ16とが見られる。第3のシールリップ16は、調整方向5に対して横方向に配置されている。キャリアプレート9の内面に、第4のシールリップ21の延在も見られる。
【0064】
さらに横方向シール区分8のプロフィルから2つの脚部35を見て取ることができる。これらの脚部35の間には切欠き36が形成されており、切欠き36内にキャリアプレート9の対応する突条が係合する。これにより横方向シール区分8とキャリアプレート9との形状接続的な接続が形成される。形状接続的な接続は、調整方向5におけるガイドレールに対するキャリアボディ3の調整時に、横方向シール区分8の確実な保持をもたらす。
【符号の説明】
【0065】
1 シール、 3 キャリアボディ、 4 切欠き、 5 調整方向、 6 循環している縁、 7,7′ 長手方向シール区分、 8,8′ 横方向シール区分、 9 キャリアプレート、 10 角領域、 11 シール区分、 12 第1のシールリップ、 13 オイル戻し案内開口、 14 第2のシールリップ、 15 オイルポケット、 16 第3のシールリップ、 18 連続的な曲率の領域、 20 湾曲部、 21 第4のシールリップ、 23 第2のシールリップのプロフィル、 24 尖端、 25 突合わせ縁、 27 第1のシールリップの高さ、 29 第1のシールリップのプロフィル、 30 突合わせ縁、 33,34 突条、 35 脚部、 36 切欠き、 A,A′,B,B′ 個別部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6