(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加熱物を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下方に設けられ、前記被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルへの供給電力を制御する制御手段と、前記トッププレートの裏面に接触して前記被加熱物の鍋底の温度を検出する接触式温度センサーと、前記被加熱物の鍋底の温度を検出する赤外線温度センサーとを備え、
前記制御手段は、加熱開始時の前記接触式温度センサーと前記赤外線温度センサーとのそれぞれのスタート温度に応じて、前記被加熱物の予熱処理に定められた所定の加熱時間を変更し、
前記制御手段は、加熱開始時の前記接触式温度センサーにより検出された温度が低く、加熱開始時の前記赤外線温度センサーにより検出された温度が低い場合は所定時間を長く、加熱開始時の前記接触式温度センサーにより検出された温度が高く、加熱開始時の前記赤外線温度センサーにより検出された温度が高い場合は所定時間を短くし、更に、加熱開始時の前記接触式温度センサーにより検出された温度が高く、加熱開始時の前記赤外線温度センサーにより検出された温度が低い場合および加熱開始時の前記接触式温度センサーにより検出された温度が低く、加熱開始時の前記赤外線温度センサーにより検出された温度が高い場合は所定時間を中間の時間に設定するように、前記所定の加熱時間を変更することを特徴とする誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る誘導加熱調理器の一実施の形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の実施の形態に係る誘導加熱調理器の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態の誘導加熱調理器100は、本体11と、本体11の上面を形成し、鍋などの被加熱物を載置する耐熱ガラス製のトッププレート(天板とも称する)3とから構成されている。また、トッププレート3の下方には被加熱物を誘導加熱する加熱コイル6が配置されている。
本体11の前面側にはグリル12が扉と受け皿を引き出し自在に設けられており、魚などの焼き物料理等の調理が可能となっている。さらに、本体11の前面右側(グリル12に対して右側)には操作手段としての操作部13が設けられており、ユーザーがこの操作部13を操作することにより、加熱出力の調整や誘導加熱調理器100への設定などの操作・設定情報が入力可能である。なお、操作部13には、グリル12の操作部も含まれている。
また、
図1において、3つの加熱コイル6a、6b及び6cは、いわゆる3口型の加熱部を構成しているが、加熱コイル6cに代えて、ほぼ同径の例えばラジエントヒーターのような輻射式ヒーターを配置しても良い。
【0011】
図2は誘導加熱調理器100の制御系の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本体11(
図1参照)の内部には、加熱コイル6、温度検出手段7、加熱コイル6に高周波電力を供給するインバーター回路9、インバーター回路9を制御する制御手段8、および時間を計算する計時手段10を搭載するプリント回路基板(図示せず)が基板ケース(図示せず)内に収容された状態で取り付けられている。制御手段8はマイコンなどで構成されており、図示しない記憶手段を内蔵している。上記のプリント回路基板の設置場所については、発熱個所から遠く、冷却可能な風路中であれば、どこでもよいが、冷却効率の観点から、加熱コイル6よりも上流に配置するのがよい。また、本発明とは関係ないため、詳細な説明は省略するが、冷却ファン(図示せず)は本体11の下部後方の両側に設置され、本体11の外部から空気を吸入し、上記のプリント回路基板及び加熱コイル6に冷却風を送ってこれらを冷却した後、後方に進んで本体11の後方に形成された排気口を介して調理器本体11の外へ排気するようになっている。なお、
図2において、1は調理用の鍋であり、この鍋1の中に例えば油2を入れた状態を示している。
【0012】
天板3の裏面の加熱コイル6と対応する面には、サーミスターなどの接触式温度センサー4aおよび4bが天板3の裏面に接触するように配置されている。接触式温度センサー4aおよび4bは、鍋1から天板3へ伝わる熱を検出するもので、鍋底の外周部に対応する位置で、ほぼ直径方向の位置に2つ設けられている。これによって、接触式温度センサー4a、4bは、加熱時に鍋底の温度を検出することができる。接触式温度センサー4a、4bを加熱コイル6の直径方向に2個配置する理由は、加熱コイル6に対して鍋1がずれた位置に置かれた場合でも、いずれか一方の温度センサーで鍋底の温度を正確に検出できるようにするためである。
【0013】
また、天板3の下方には、赤外線温度センサー5が配置されている。赤外線温度センサー5は、発熱により鍋底から放射される赤外線を検出するもので、加熱コイル6上の天板3表面に置かれた鍋底中央部の温度を検出するべく天板3を通して赤外線を検出するものである。さらに、天板3の下方には、接触式温度センサー4および赤外線温度センサー5の検知信号をA/D変換して温度に換算する温度検出手段7が設けられており、換算した温度情報を制御手段8へ出力する。
【0014】
なお、以下の説明では、接触式温度センサー4をTH(サーミスター)と呼ぶことがある。また、赤外線温度センサー5をIRセンサーと呼ぶことがある。また、接触式温度センサー4により検出された鍋底の温度を「サーミスター温度またはTH温度」、赤外線温度センサー5により検出された鍋底の温度を「IRセンサー温度」と呼ぶことがある。
【0015】
次に、本実施の形態における制御手段8の動作を
図1、
図2を用いて説明する。
ユーザーが誘導加熱調理器本体11の電源スイッチ(図示せず)を投入すると、制御手段8が起動される。制御手段8は、まず、内部に保有しているカウンターのクリヤーや初期値設定などの初期処理を行った後、操作部13からユーザーによって設定された情報を入力し、次に制御手段8は、入力した設定情報が調理開始命令か否かを調べ、調理開始でなければ、調理開始命令が入力されるまで待ち状態となる。
この入力待ち状態において、ユーザーが天板3に被加熱物である鍋1を載置し、続いて火力情報などを設定して調理開始スイッチを押下すると、操作部13から調理開始命令の信号が生成されて制御手段8に入力される。制御手段8は、調理開始命令が入力されると、設定情報の中の火力情報に基づいてインバーター回路9を制御して、加熱コイル6への高周波電力(以下、加熱電力と呼ぶことがある)の供給を開始させる。これにより誘導加熱による鍋1の加熱が開始する。
【0016】
次に、制御手段8の加熱処理の動作について、
図3〜
図6を参照して説明する。
図3はフライパンの予熱工程の手順を示すフローチャート、
図4はフライパン予熱工程における加熱のための所定時間TTの補正に用いる表、
図5は冷えた状態からフライパンの予熱を行った場合の温度曲線を示すグラフで、
図6は熱い状態からフライパンの予熱を行った場合の温度曲線を示すグラフである。
【0017】
本実施の形態では、被加熱物として深さの浅い鍋(深さが約8cm以下の鍋)で、炒めものや焼きもの調理に向いているフライパンを使用し、誘導加熱によりフライパンの予熱を行う場合、
図3に示すような手順で予熱が実施される。
まず、操作部13からユーザーによってフライパン予熱メニューを設定し、調理開始スイッチを押下してフライパン予熱モードの加熱がスタートする(ステップS1)。次に、ステップS2ではサーミスター4aまたは4bにてフライパン鍋底のスタート温度t0を検知し、また、IRセンサー5にてフライパン鍋底のスタート温度t0_IRを検知する。本実施の形態では、サーミスター温度はサーミスター4aまたは4bの検出する温度のうち高い方の温度を制御に使用する。これは、サーミスター4aまたは4bにおいて、加熱されているフライパンの鍋底の温度に近い温度を検出しているサーミスターの温度情報を使用するためである。
【0018】
次に、ステップS3にて検出されたサーミスター4aまたは4bのスタート温度t0とIRセンサー5のスタート温度t0_IRより定められたフライパン予熱モードにおける最低限必ず加熱を行う所定時間TTがセットされる。所定時間TTは、サーミスター4aまたは4bの加熱スタート時の温度とIRセンサー5の加熱スタート時の温度にて定められ、その後の加熱により変化した温度には関係なく加熱スタートから必ず加熱を実施する時間である。次にステップS4にて加熱がスタートする。本実施の形態では、加熱Wは例えば1.0kWにて加熱がスタートする。
【0019】
次に、ステップS5では加熱がスタートしてからTT秒間経過したかを検出する。加熱スタートしてからTT秒経過していれば、ステップS6に進み、サーミスター4aまたは4bの温度tがリミット温度A以上になったかどうかを判断する。一般にフライパン調理を行うために予熱を行う時の適正温度は、フライパンの表面温度が180℃前後であり、その温度に制御するためのリミット温度Aは例えば190℃となる。サーミスター4aまたは4bの温度tがリミット温度A以上であれば、ステップS9に進み、ブザー報知などの報知を行い、フライパン予熱工程は終了する。
サーミスター4aまたは4bの温度tがリミット温度A未満の場合はステップS7に進む。
【0020】
次に、ステップS7ではIRセンサー温度ttがリミット温度B以上になったかどうかを判断する。先に説明したように、フライパンの表面温度を180℃前後に制御するためのIRセンサー5のリミット温度Bは例えば200℃となる。IRセンサー温度ttがリミット温度B以上であれば、ステップS9に進み、ブザー報知などの報知を行い、フライパン予熱工程は終了する。
IRセンサー温度ttがリミット温度B未満の場合はステップS8に進む。ステップS8では加熱スタートしてから加熱最大時間C秒経過したかどうかを判断する。本実施の形態では、安全のために最大加熱時間Cを設けており、サーミスター4またはIRセンサー5がそれぞれ対応するリミット温度に達していなくても、最大加熱時間Cを経過した場合は加熱を停止させる。例えば1.0kWで加熱した場合、最大加熱時間Cは例えば120秒となる。加熱スタートしてから120秒経過した場合はS9に進み、ブザー報知などの報知を行い、フライパン予熱工程は終了する。また、加熱スタートしてから最大加熱時間Cが経過するまではステップS6に戻って上記の処理を行う。
【0021】
フライパン予熱工程が終了したら予熱温度をキープするべく弱い加熱W、例えば300Wに加熱Wが切り替わり、保温が行われる(図示せず)。また、予熱の時または保温の時に火力設定を変更すると、フライパン予熱モードは直ちに終了し、通常加熱に移行する(図示せず)。
【0022】
図4はフライパン予熱工程における加熱のための所定時間TTを補正するための表で、フライパン予熱処理において、それぞれスタート温度である、サーミスター温度とIRセンサー温度とにより所定時間TTを補正するものである。
すなわち、サーミスター温度が低く(例えば80℃未満)、IRセンサー温度が低い(例えば100℃未満)ときは、先に加熱を行っておらず、また、冷えたフライパンをセットしたと判断し、所定時間TTは長くする(例えば60秒)。次に、IRセンサー温度が低く(例えば100℃未満)、サーミスター温度が高い(例えば80℃以上)ときは、先に違う加熱を行っていてその余熱で天板3は温まっていて、冷えたフライパンにてフライパン予熱モードをスタートさせた場合か、または、連続してフライパン予熱を行っているが、フライパンの置かれている位置がずれていてIRセンサー5上にフライパンがない場合であり、このときは所定時間TTは中間の値、例えば40秒とする。IRセンサー温度が高く(例えば100℃以上)、サーミスター温度が低い(例えば80℃未満)ときは、すでに温められているフライパンを置いてフライパン予熱モードをスタートした場合か、フライパンの置き位置がずれてサーミスター4aまたは4bの上に無い状態で先にフライパン予熱モードを行い、更に連続してフライパン予熱を行っている場合などであり、このときは所定時間TTは中間の値、例えば40秒とする。更に、IRセンサー温度が高く(例えば100℃以上)、サーミスター温度が高い(例えば80℃以上)ときは、温まっているフライパンにて連続してフライパン予熱モードを行おうとしている場合であり、このときは所定時間TTは短く、例えば20秒とするものである。
【0023】
図5は冷えた状態からフライパンの予熱を行った場合の温度曲線を示すグラフで、この例では、TT秒経過後も加熱が継続され、最大加熱時間C秒経過までに、TH温度とIRセンサー温度がいずれも対応するリミット温度A、Bに達しておらず、最大加熱時間のC秒まで加熱が実施された場合を示している。
【0024】
また、
図6は熱い状態からフライパンの予熱を行った場合の温度曲線を示すグラフで、この例では、TT秒経過前にTH温度とIRセンサー温度がいずれも対応するリミット温度A、Bを超えているため、TT秒間だけ加熱を実施した後、保温工程に移行している場合を示している。
【0025】
本実施の形態の誘導加熱調理器100では、以上のように制御されるため、フライパン予熱モード加熱開始時に接触式温度センサー4および赤外線温度センサー5により鍋底温度を検出し、検出した温度によって所定時間以上行われる加熱時間を変更し、サーミスター温度が低く、IRセンサー温度が低い場合は所定時間を長くし、また、サーミスター温度が高く、IRセンサー温度が高い場合は所定時間を短くし、更に、サーミスター温度が高く、IRセンサー温度が低い場合およびサーミスター温度が低く、IRセンサー温度が高い場合は所定時間を中間の時間に設定するので、フライパンの予熱において冷えたフライパンで加熱開始した場合は充分に加熱が行われ所望する温度にでき、また予熱動作を何度も繰り返し行うなどのように熱い状態からの加熱を行ったとしても、フライパンの温度が異常に上昇してしまうことのないよう制御することができる。
【0026】
上記実施の形態では、深さの浅いフライパンを使う調理の予熱処理について説明したが、本発明は深さの浅いフライパンのような調理鍋に限らず、鍋を使って予熱処理する炒めものや焼きもの調理であれば適用することができる。