【0027】
一方、低分子の発光材料としては、例えば、配位子に2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)
3)、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq
3)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq
3)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq
2)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)
3(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(H
2Pc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、さらには特開2009−155325号、特願2010−230995号および特願2011−6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(青色発光ポリマーの合成)
(合成例1)
窒素雰囲気下、1−ブロモ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(14.8g,50.3mmol)にジエチルエーテル200mlを加え−78℃に冷却し、ここへノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.65M,30.9ml,50.9mmol)を滴下し、−78℃で1時間攪拌した。さらに塩化亜鉛のジエチルエーテル溶液(1M,24.3ml,24.3mmol)を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。そこへ5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(5.6g,11.6mmol)を含むトルエン溶液(200mL)を加え、85℃で15時間過熱攪拌した。室温まで冷却し、反応溶液を氷水に加え、クロロホルムで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:2)で精製することにより、下記式(1);
【0035】
【化1】
【0036】
で表されるホウ素含有化合物(1)を収率69%で得た。
得られたホウ素含有化合物(1)(187.2mg,0.25mmol)、下記式(2)で表されるフルオレン化合物(140.2mg,0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg,0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間攪拌した。
【0037】
【化2】
【0038】
ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg,0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調整した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間攪拌し、脱揮を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱攪拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg,0.25mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg,0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(3);
【0039】
【化3】
【0040】
で表される青色発光ポリマーを得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(テトラヒドロフラン溶媒)によるポリスチレン換算重量平均分子量は71,000であった。
(有機電界発光素子の作成)
(実施例1)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板を用意した。この時、基板のITO電極は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板をアセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。約1×10
−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約2nmの酸化亜鉛層を作成した。この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が成膜されないようにした。
[3]酢酸マグネシウムの1%水−エタノール(体積比で1:3)混合溶液を作成した。工程[2]で作成した基板を、工程[1]と同様にして再度洗浄した。洗浄した酸化亜鉛薄膜付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上に酢酸マグネシウム溶液を滴下し、毎分1300回転で60秒間回転させた。これを大気中、400℃にセットしたホットプレートで2時間焼成することにより、酸化マグネシウム層を形成した。
[4]次に、合成例1で作成した青色発光ポリマー(3)の1.2重量%テトラヒドロフラン溶液を1mL作成した。作成した酸化物薄膜層付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上に青色発光ポリマーの溶液を滴下し、毎分1600回転で30秒間回転させることにより、膜厚約100nmの有機化合物層を形成した。これをアルゴン雰囲気のグローブボックス中に移動し、ホットプレートを用いて200℃で1時間加熱して有機化合物層中の残溶媒を除去した。
[5]有機化合物層まで形成した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。三酸化モリブデンをアルミナルツボに入れて第1の蒸着源にセットした。同時に、金をアルミナルツボに入れて第2の蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10
−4Paまで減圧し、三酸化モリブデンを膜厚10nmになるように蒸着した。次に、金を膜厚20nmになるように蒸着し、有機電界発光素子(Mg:Zn=4:0)を作成した。このとき、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作成した有機電界発光素子の発光面積は、4mm
2とした。
(実施例2)
実施例1の工程[2]において亜鉛金属ターゲットの代わりにチタン金属ターゲットを使用した以外は同様にして、酸化チタン薄膜層の上にマグネシウム化合物層を持つ有機電界発光素子を作成した。
(比較例1)
実施例1の工程[3]を省略した以外は同様にして、酸化物薄膜層として酸化亜鉛単層を持つ有機電界発光素子を作成した。
(比較例2)
実施例2の工程[3]を省略した以外は同様にして、酸化物薄膜層として酸化チタン単層を持つ有機電界発光素子を作成した。
(比較例3)
実施例1の工程[2]を省略した以外は同様にして、酸化物薄膜層として酸化マグネシウム単層を持つ有機電界発光素子を作成した。
(比較例4)
実施例1の工程[3]の代わりに次の工程[3’]を行った以外は同様にして、酸化亜鉛薄膜層の上にセシウム化合物層を持つ有機電界発光素子を作成した。
[3’]酸化物薄膜層まで形成した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。炭酸セシウムをアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10
−4Paまで減圧し、炭酸セシウムを膜厚3nmになるように蒸着した。この基板を大気中で12時間放置し、セシウム化合物層を形成した。
(作成した有機電界発光素子)
実施例1〜2、比較例1〜4で作成した有機電界発光素子の構成をまとめると、次表の通りである。
【0041】
【表1】
【0042】
(有機電界発光素子の発光特性測定)
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM−7」により、発光輝度を測定した。実施例1比較例1および比較例3で作成した有機電界発光素子を、アルゴン雰囲気下で−4V〜15Vまでの直流電圧を印加した時の電圧−輝度特性、電流密度−電力効率特性を
図2および
図3にそれぞれ示す。
図2から、本発明の酸化物膜とマグネシウム化合物膜の積層構造を用いた実施例1の有機電界発光素子は、単層酸化物薄膜を用いた比較例1および比較例3の有機電界発光素子に比べて低い電圧から発光することが明らかである。
さらに
図3から、本発明の酸化物膜とマグネシウム化合物膜の積層構造を用いた実施例1の有機電界発光素子は、単層酸化物薄膜を用いた比較例1および比較例3の有機電界発光素子に比べて高い電力効率を示すことが明らかである。
次に、実施例2、比較例2および比較例3で作成した有機電界発光素子を、アルゴン雰囲気下で−4V〜15Vまでの直流電圧を印加した時の電圧−輝度特性、電流密度−電力効率特性を
図4および
図5にそれぞれ示す。
図4から、本発明の酸化物膜とマグネシウム化合物膜の積層構造を用いた実施例2の有機電界発光素子は、単層酸化物薄膜を用いた比較例2および比較例3の有機電界発光素子に比べて低い電圧から発光することが明らかである。
さらに
図5から、本発明の酸化物膜とマグネシウム化合物膜の積層構造を用いた実施例2の有機電界発光素子は、単層酸化物薄膜を用いた比較例2および比較例3の有機電界発光素子に比べて高い電力効率を示すことが明らかである。
(有機電界発光素子の寿命特性測定)
システム技研社製の「有機EL寿命測定装置」により、素子への電圧印加と、相対輝度測定を行った。この装置では素子に一定電流が流れるように電圧を自動的に調整しながら、フォトダイオードによる相対輝度測定が行える。測定開始時の輝度が100cd/m
2になるように素子ごとに電流値を設定した。実施例1および比較例4で作成した有機電界発光素子の寿命特性を
図6に示す。
図6から、本発明の酸化物膜とマグネシウム化合物膜の積層構造を用いた実施例1の有機電界発光素子は、単層酸化物薄膜とセシウム化合物層を持つ比較例4の有機電界発光素子に比べて寿命が長いことが分かる。