特許第5930689号(P5930689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000002
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000003
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000004
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000005
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000006
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000007
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000008
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000009
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000010
  • 特許5930689-近距離無線通信システム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930689
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】近距離無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/00 20090101AFI20160526BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20160526BHJP
   H04W 4/04 20090101ALI20160526BHJP
   H04W 76/02 20090101ALI20160526BHJP
   H04W 12/06 20090101ALI20160526BHJP
【FI】
   H04W8/00 110
   H04W84/10 110
   H04W4/04 115
   H04W76/02
   H04W12/06
【請求項の数】22
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-272313(P2011-272313)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-126003(P2013-126003A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】須田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 寛
【審査官】 田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−173569(JP,A)
【文献】 特開2004−241911(JP,A)
【文献】 特開2002−223466(JP,A)
【文献】 特開2007−213479(JP,A)
【文献】 特開2009−071657(JP,A)
【文献】 特開2001−249899(JP,A)
【文献】 特開2009−253603(JP,A)
【文献】 特開2010−193140(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0298428(US,A1)
【文献】 特開2002−359873(JP,A)
【文献】 特開2006−109292(JP,A)
【文献】 特開2006−148864(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0009309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、スレーブ側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、前記接続プロファイルは、マスターおよびスレーブ間の接続サービス毎に規定され、スレーブ側の通信機器が、マスター側の接続プロファイルと共通の接続プロファイルを有するとき、所定の近距離無線通信プロトコルによってマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信システムであって、
マスター側の通信機器から特定のスレーブ側の通信機器へ、前記プロトコル上での特定の接続プロファイルに従う接続サービスによる接続を要求する要求手段と、
前記要求手段に応答して、該接続サービスのための接続プロファイルを備えているか否かを、該要求を受けたスレーブ側の通信機器で判断する判断手段と、
前記スレーブ側の通信機器において前記判断手段により接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、前記マスター側の通信機器へスレーブ側の通信機器が前記接続プロファイルに非対応である旨を送信する送信手段と、
前記マスター側の通信機器において、前記送信手段によりスレーブ側の通信機器が前記接続プロファイルに非対応である旨の送信があったとき、スレーブ側の通信機器が前記接続プロファイルに非対応である旨を、ユーザに通知する手段と、
を有する通信システム。
【請求項2】
前記スレーブ側の通信機器において前記接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、他のスレーブ側の通信機器を探索する探索手段と、
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、該通信機器に前記接続サービスによる接続を要求する手段と、
をさらに有する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、該スレーブ側の通信機器との前記接続サービスによる接続の要否を求める手段を、さらに有する請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、前記接続サービスによる接続が可能か否かを判断する情報を、該スレーブ側の通信機器から取得する手段を、さらに有する請求項2または3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見されなかった場合に、ユーザに対してその旨を通知する手段を、さらに有する請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、前記接続サービスによる接続の要否を求める手段は、前記スレーブ側の通信機器の情報と共に、前記接続サービスによる接続が可能か否かを判断する接続プロファイルの情報を提示するものである、請求項4または5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記スレーブ側の通信機器から取得した、前記接続サービスによる接続が可能か否かを判断する接続プロファイルの情報に基づいて、該接続サービスによる接続が可能な通信機器が存在しないと判断された場合に、ユーザに対してその旨を通知する手段を、さらに有する請求項4ないし6いずれか1つに記載の通信システム。
【請求項8】
前記マスター側の通信機器は、前記プロトコルにより接続したスレーブ側の通信機器の情報を記憶する手段を、さらに有し、
前記要求手段は、前記記憶した通信機器の情報に基づいて、該スレーブ側の通信機器を決定するものである、請求項1ないし7いずれか1つに記載の通信システム。
【請求項9】
前記要求手段は、前記記憶した通信機器の情報に基づいて、その最後に接続した通信機器を、該スレーブ側の通信機器として選択するものである、請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記マスター側の通信機器からの、前記接続サービスを利用するための認証要求を受けて、前記スレーブ側の通信機器において該認証要求を実行する手段、をさらに有する請求項1ないし9いずれか1つに記載の通信システム。
【請求項11】
マスター側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、スレーブ側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、前記接続プロファイルは、マスターおよびスレーブ間の接続サービス毎に規定され、スレーブ側の通信機器が、マスター側の接続プロファイルと共通の接続プロファイルを有するとき、所定の近距離無線通信プロトコルによってマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信システムにおける通信機器であって、
特定のスレーブ側の通信機器へ、前記プロトコル上での特定の接続プロファイルに従う接続サービスによる接続を要求する要求手段と、
前記要求手段に応答して、前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルを備えているか否かの接続プロファイル情報を受信する手段と、
前記接続プロファイル情報に基づいて、前記特定のスレーブ側の通信機器において前記特定の接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である旨をユーザに通知する手段と、
を有する通信機器。
【請求項12】
前記接続プロファイル情報に基づき前記特定のスレーブ側の通信機器が前記接続サービスを備えていないと判断された場合に、他のスレーブ側の通信機器を探索する探索手段と、
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、該通信機器に前記接続サービスによる接続を要求する手段と、
をさらに有する請求項11に記載の通信機器。
【請求項13】
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、該スレーブ側の通信機器との前記接続サービスによる接続の要否を求める手段を、さらに有する請求項12に記載の通信機器。
【請求項14】
前記探索手段により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、前記接続サービスによる接続が可能か否かを判断する接続プロファイルの情報を、該スレーブ側の通信機器から取得する手段を、さらに有する請求項12または13に記載の通信機器。
【請求項15】
マスター側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、スレーブ側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、前記接続プロファイルは、マスターおよびスレーブ間の接続サービス毎に規定され、スレーブ側の通信機器が、マスター側の接続プロファイルと共通の接続プロファイルを有するとき、所定の近距離無線通信プロトコルによってマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信プログラムであって、
マスター側の通信機器から特定のスレーブ側の通信機器へ、特定の接続プロファイルに従う接続サービスによる接続を要求するステップと、
前記マスター側の通信機器からの接続要求を受けて、該接続サービスのための前記特定の接続プロファイルを備えているか否かを、該要求を受けた前記特定のスレーブ側の通信機器で判断するステップと、
前記特定のスレーブ側の通信機器において前記判断するステップにより前記特定の接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、前記マスター側の通信機器へ前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である旨を送信するステップと、
前記マスター側の通信機器において、前記送信ステップにより前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である旨の送信があったとき、前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である前記接続サービスによる接続が不可能である旨を、ユーザに通知するステップと、
を有する通信プログラム。
【請求項16】
前記特定のスレーブ側の通信機器において前記特定の接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、他のスレーブ側の通信機器を探索するステップと、
前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、該通信機器に前記接続サービスによる接続を要求するステップと、
をさらに有する請求項15に記載の通信プログラム。
【請求項17】
前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、該スレーブ側の通信機器との前記接続サービスによる接続の要否を求めるステップを、さらに有する請求項16に記載の通信プログラム。
【請求項18】
前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、前記接続サービスによる接続が可能か否かを判断する接続プロファイルの情報を、該スレーブ側の通信機器から取得するステップを、さらに有する請求項16または17に記載の通信プログラム。
【請求項19】
マスター側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、スレーブ側の通信機器は、少なくとも1つまたは複数の接続プロファイルを有し、前記接続プロファイルは、マスターおよびスレーブ間の接続サービス毎に規定され、スレーブ側の通信機器が、マスター側の接続プロファイルと共通の接続プロファイルを有するとき、所定の近距離無線通信プロトコルによってマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信方法であって、
マスター側の通信機器から特定のスレーブ側の通信機器へ、特定の接続プロファイルに従う接続サービスによる接続を要求するステップと、
前記マスター側の通信機器からの接続要求を受けて、該接続サービスのための前記特定の接続プロファイルを備えているか否かを、該要求を受けた前記特定のスレーブ側の通信機器で判断するステップと、
前記特定のスレーブ側の通信機器において前記判断するステップにより前記特定の接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、前記マスター側の通信機器へ前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である旨を送信するステップと、
前記マスター側の通信機器において、前記送信ステップにより前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である旨の送信があったとき、前記特定のスレーブ側の通信機器が前記特定の接続プロファイルに非対応である前記接続サービスによる接続が不可能である旨を、ユーザに通知するステップと、
を有する通信方法。
【請求項20】
前記特定のスレーブ側の通信機器において前記特定の接続プロファイルを備えていないと判断された場合に、他のスレーブ側の通信機器を探索するステップと、
前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、該通信機器に前記接続サービスによる接続を要求するステップと、
をさらに有する請求項19に記載の通信方法。
【請求項21】
前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、該スレーブ側の通信機器との前記接続サービスによる接続の要否を求めるステップを、さらに有する請求項20に記載の通信方法。
【請求項22】
前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、前記接続サービスによる接続が可能か否かを判断する接続プロファイルの情報を、該スレーブ側の通信機器から取得するステップを、さらに有する請求項20または21に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の近距離無線通信プロトコルによって接続可能なマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信システムに関し、特に、そのプロトコル上での任意のサービスによる接続を確立する際の手順に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ同士またはその周辺機器との接続に、有線による接続に代えて、所定の通信プロトコルに基づく近距離無線通信による接続が普及してきている。この種の代表的な無線通信プロトコルはブルートゥース(Bluetooth:登録商標)である。ブルートゥースでは、多様なデバイスにおける無線通信を実現するために、その接続サービス毎に多数の接続プロファイルが規定されている。各ブルートゥース対応デバイスはそれが利用できる1または複数の接続プロファイルを持っており、そのペアリングの過程で、同じプロファイルを持ったデバイス同士が通信できるようにされる。ブルートゥースにおける代表的な接続プロファイルには、例えば、オーディオ信号をレシーバ付きヘッドフォンに伝送するためのA2DPプロファイル(Advanced Audio Distribution Profile)、ハンズフリー通話において音声データを同期型パケットで通信を制御するHFPプロファイル(Hands-Free Profile)、携帯電話等を介してインターネットにダイヤルアップ接続するためのDUNプロファイル(Dial-up Networking Profile)、マウスやキーボード等の入力装置を無線化するためのHIDプロファイル(Human Interface Device Profile)などがある。
【0003】
ブルートゥース対応デバイスのペアリング、すなわち初期接続設定においては、その接続を開始するデバイスをマスター、被接続デバイスをスレーブと呼ぶ。例えば、今、AV再生、放送受信およびナビゲーション機能などを搭載した多機能車載器をマスター側デバイスとして、スマートフォンに代表される多機能情報端末(スレーブ側)との間でDUNプロファイルによる通信を確立し、車載器上のナビゲーションアプリケーションを、多機能情報端末が利用できる無線公衆回線を介して、インターネットにダイヤルアップ接続する場合を想定すると、その接続手順は概略以下のようになる。
【0004】
車載器上でナビゲーションアプリケーションを起動し、それがアクセスするインターネット上のサーバへのユーザ認証情報を入力する。これを契機に車載器側ではペアリングするスレーブ側の通信機器の探索を開始し、発見された情報端末に対し、この認証情報を送信して、インターネットへのダイヤルアップ接続を求める。この要求に応じて情報端末側では、インターネットにダイヤルアップ接続し、目的サーバへアクセスしてその認証をおこない、該サーバと車載器の間の接続を確立する。
【0005】
しかしながら、このような接続の手順において、車載器がペアリングする情報端末がDUNプロファイルに非対応のものである場合には、次のような問題が生じる。すなわち、DUNプロファイル非対応の通信機器では、車載器からのユーザ認証の要求に対して、ダイヤルアップ接続が行えず、従って、認証手続きは失敗に終わる。通常、その結果は車載器側に送信され、ユーザに通知されるが、認証が失敗したのが、入力した認証情報が不適切であったためなのか、それとも接続に係る情報端末がDUNプロファイルに非対応であるためなのかの判別ができないという問題がある。
【0006】
このような問題に関連して、事前にマスター側の通信機器に、スレーブ側の通信機器のプロファイル情報を登録しておき、ペアリングに際して、この情報をユーザに提示して適当なスレーブ側の通信機器を選択できるようにすることで、上記のような問題が生じることを回避する技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−199718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ユーザが使用するブルートゥース対応機器が交換されたり、その対応するプロファイルが追加・変更されたりされた場合には、その車載器上の登録情報を書き換える必要が生じ、常に最新の登録情報を維持することは必ずしも容易ではない。特に、ブルートゥース対応機器は多種多様であり、その数も相当増えてきている現状において、車内に持ち込まれる可能性のあるブルートゥース対応機器をすべて登録しておくことは困難である。その結果、登録情報と実際に持ち込まれた通信機器との間に不整合が生じ、迅速に好適なペアリングを行うことができない場合が生じる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、スレーブ側の通信機器が、マスター側の通信機器から要求されているプロファイルに対応していない場合おいて、その旨をユーザに通知し、これを受けてユーザが他の通信機器をスレーブ側として選択できるよう促す、近距離無線通信システムの接続確立手順を提供することを目的とする。また、スレーブ側の通信機器が、マスター側の通信機器から要求されているプロファイルに対応していない場合おいて、該プロファイルに対応している他の通信機器を探索し、その接続を確立する手順を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定の近距離無線通信プロトコルによって接続可能なマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信システムであって、マスター側の通信機器から特定のスレーブ側の通信機器へ、前記プロトコル上での任意のサービスによる接続を要求する手段と、前記マスター側の通信機器からの接続要求を受けて、該サービスによる接続が、該要求を受けたスレーブ側の通信機器で可能かを判断する手段と、前記スレーブ側の通信機器において前記サービスによる接続が不可能であると判断された場合に、前記マスター側の通信機器へその旨を送信する手段と、前記マスター側の通信機器において、前記サービスによる接続が不可能である旨を、ユーザに通知する手段と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記スレーブ側の通信機器において前記サービスによる接続が不可能であると判断された場合に、他のスレーブ側の通信機器を探索する手段と、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、該通信機器に前記サービスによる接続を要求する手段と、をさらに有する。好ましくは、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、該スレーブ側の通信機器との前記サービスによる接続の要否を求める手段を、さらに有する。また、好ましくは、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、前記サービスによる接続が可能か否かを判断する情報を、該スレーブ側の通信機器から取得する手段を、さらに有する。好ましくは、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見されなかった場合に、ユーザに対してその旨を通知する手段を、さらに有する。好ましくは、前記ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、前記サービスによる接続の要否を求める手段は、前記スレーブ側の通信機器の情報と共に、前記サービスによる接続が可能か否かを判断する情報を提示するものである。好ましくは、前記スレーブ側の通信機器から取得した、前記サービスによる接続が可能か否かを判断する情報に基づいて、該サービスによる接続が可能な通信機器が存在しないと判断された場合に、ユーザに対してその旨を通知する手段を、さらに有する。好ましくは、前記マスター側の通信機器は、前記プロトコルにより接続したスレーブ側の通信機器の情報を記憶する手段を、さらに有し、前記特定のスレーブ側の通信機器へ任意のサービスによる接続を要求する手段は、前記記憶した通信機器の情報に基づいて、該スレーブ側の通信機器を決定するものである。好ましくは、前記特定のスレーブ側の通信機器へ任意のサービスによる接続を要求する手段は、前記記憶した通信機器の情報に基づいて、その最後に接続した通信機器を、該スレーブ側の通信機器として選択するものである。好ましくは、前記マスター側の通信機器からの、前記サービスを利用するための認証要求を受けて、前記スレーブ側の通信機器において該認証要求を実行する手段、をさらに有する。
【0012】
本発明は、また、所定の近距離無線通信プロトコルによって接続可能なマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信システムにおける通信機器であって、特定のスレーブ側の通信機器へ、前記プロトコル上での任意のサービスによる接続を要求する手段と、前記特定のスレーブ側の通信機器からの、前記サービスによる接続が可能か否かの情報を受信する手段と、前記サービスによる接続が可能か否かの情報に基づいて、前記スレーブ側の通信機器において前記サービスによる接続が不可能であると判断された場合に、その旨をユーザに通知する手段と、を有する。
【0013】
好ましくは、前記スレーブ側の通信機器において前記サービスによる接続が不可能であると判断された場合に、他のスレーブ側の通信機器を探索する手段と、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、該通信機器に前記サービスによる接続を要求する手段と、をさらに有する。好ましくは、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、ユーザに対して該スレーブ側の通信機器の情報を提示して、該スレーブ側の通信機器との前記サービスによる接続の要否を求める手段を、さらに有する。好ましくは、前記探索により他のスレーブ側の通信機器が発見された場合に、前記サービスによる接続が可能か否かを判断する情報を、該スレーブ側の通信機器から取得する手段を、さらに有する。
【0014】
本発明は、また、所定の近距離無線通信プロトコルによって接続可能なマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信プログラムであって、マスター側の通信機器から特定のスレーブ側の通信機器へ、前記プロトコル上での任意のサービスによる接続を要求するステップと、前記マスター側の通信機器からの接続要求を受けて、該サービスによる接続が、該要求を受けたスレーブ側の通信機器で可能かを判断するステップと、前記スレーブ側の通信機器において前記サービスによる接続が不可能であると判断された場合に、前記マスター側の通信機器へその旨を送信するステップと、前記マスター側の通信機器において、前記サービスによる接続が不可能である旨を、ユーザに通知するステップと、を有する。
【0015】
本発明は、また、所定の近距離無線通信プロトコルによって接続可能なマスターおよびスレーブ通信機器間の接続を確立する通信方法であって、マスター側の通信機器から特定のスレーブ側の通信機器へ、前記プロトコル上での任意のサービスによる接続を要求するステップと、前記マスター側の通信機器からの接続要求を受けて、該サービスによる接続が、該要求を受けたスレーブ側の通信機器で可能かを判断するステップと、前記スレーブ側の通信機器において前記サービスによる接続が不可能であると判断された場合に、前記マスター側の通信機器へその旨を送信するステップと、前記マスター側の通信機器において、前記サービスによる接続が不可能である旨を、ユーザに通知するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スレーブ側の通信機器が、マスター側の通信機器から要求されているプロファイルに対応していない場合においては、その旨がユーザに通知されるので、ユーザはこれを受けて他の通信機器をスレーブ側として選択できるように促され、結果として、迅速に好適なペアリングを行うことができるようになる。また、本発明によれば、スレーブ側の通信機器が、マスター側の通信機器から要求されているプロファイルに対応していない場合においては、該プロファイルに対応している1または複数の他の通信機器が探索され、そこでユーザがその何れかを選択できるようになるので、迅速に好適なペアリングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】情報端末の典型的な構成を示すブロック図である。
図3】車載器の典型的な構成を示すブロック図である。
図4】情報端末の通信接続部と、車載器の通信接続部の内部構成を示すブロック図である。
図5】車載器が最初に接続した情報端末が、DUNプロファイルに対応している場合の、車載器ー情報端末間の信号のタイミングチャートを示した図である。
図6】車載器が最初に接続した情報端末が、DUNプロファイルに対応していない場合の、車載器ー情報端末間の信号のタイミングチャートを示した図である。
図7】情報端末とのペアリング実行時における車載器側の処理の手順を示したフローチャートである。
図8】情報端末とのペアリング実行時における車載器側の処理の手順を示したフローチャートである。
図9】車載器とのペアリング実行時における情報端末側の処理の手順を示したフローチャートである。
図10】ペアリング実行時における車載器のディスプレイ上の画面遷移の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の好ましい実施の形態は、AV再生、放送受信およびナビゲーション機能などを搭載した車載器を、車内に持ち込まれた多機能情報端末とブルートゥース規格に基づきペアリングさせて利用する態様に係る。例えば、ブルートゥースのDUNプロファイルに従ってこれら機器を接続することで、車載器を情報端末の公衆回線接続機能を介してインターネットに接続し、車載器が実装している情報提供サービスが利用できるようになる。また、A2DPプロファイルに従ってこれら機器を接続することで、情報端末上の楽曲を車載器側で再生出力可能にする。さらに、HFPプロファイルに従ってこれら機器を接続することで、情報端末に着信した通話を、車載器側に接続したヘッドセットを通して受けることができるようになる。ここで情報端末は、情報を処理することができる通信機能を備えた多機能型のポータブルな端末であり、例えば、携帯電話機、スマートフォン、パームトップ型パーソナルコンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータなどである。一方、車載器は、車両に搭載された電子装置であって、オーディオ/ビデオ再生機能、テレビ/ラジオ放送受信機能、ナビゲーション機能などを含むことができる。もっとも本発明の技術は、ここに示されるブルートゥース規格に係る通信システムに限定されず、他の近距離無線通信プロトコルに係る通信システムにおいても利用しうるものである。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。同図において、通信システム10は、1台または複数台の情報端末20a〜20cと、情報端末20a〜20cの何れかにブルートゥース規格による近距離無線通信(以下、ブルートゥース接続40という)により接続される車載器30とを含んで構成される。ここでは、情報端末20は、通信機能を備えた多機能型のスマートフォンあるいは携帯電話である。車載器30は、ナビゲーション機能やマルチメディア機能を備える。車載器30のナビゲーション機能は、本発明に関連してその機能の一部として、インターネット上のサービスに接続して、そのサーバから自車位置近隣の施設情報、渋滞情報、ルート情報その他の運転支援情報を取得し、ディスプレイ上に表示構成する。
【0020】
車載器30は、ブルートゥース規格に係る1または複数の任意の接続プロファイルを持ち得るが、前記ナビゲーション機能を実現するために、少なくともDUNプロファイルを備えている。一方、情報端末20も同様に複数の任意の接続プロファイルを持ち得る。ここでは、1台目の情報端末20aはDUNプロファイルを備えておらず、他の情報端末20b、20cはそのプロファイルを備えているものとする。すなわち、車載器30のナビゲーション機能を利用する際に、情報端末20bおよび20cは、インターネットへの接続のハブと成り得るが、情報端末20aはそのハブとしては機能しないものとする。これらの通信機器20、30は、他のプロファイル、例えば、ハンズフリー通話において音声データを同期型パケットで通信を制御するHFPプロファイル、モノラルまたはステレオのオーディオ信号を高品質で非同期データ転送を制御するA2DPプロファイルを持つことができる。従って、情報端末20が車内に持ち込まれたとき、これらと車載器30とは、任意の接続プロファイルによるブルートゥース接続40によりペアリング可能となる。なお、情報端末20および車載器30は、他のデータ交換通信手段、例えばUSB(Universal Serial Bus)による有線接続、Wi-Fi(Wireless Fidelity)による無線LAN接続などを備えるものであって良い。
【0021】
図2は、情報端末の典型的な構成を示すブロック図である。情報端末20は、ユーザからの入力を受け取る入力部100、ブルートゥース接続40により車載器30との接続を実現する通信接続部110、ディスプレイに種々の画像や情報を表示する表示部120、音声を出力する音声出力部130、外部のネットワークとのデータ通信、および公衆無線回線網を介しての電話機との通話やインターネットへの接続等を可能にする通信部140、制御部150、情報端末20が保有するアプリケーション、プログラム等を格納するプログラムメモリ160、オーディオデータ、ビデオデータ、地図データなどを記憶するデータメモリ170、各部を接続するバス180とを備えている。
【0022】
プログラムメモリ160には、種々のアプリケーションやプログラムが格納される。例えば、オーディオデータやビデオデータを再生するアプリケーション、ゲームを実行するアプリケーション、音声通話を行うためのプログラム、通信部140を介してインターネット上の情報をブラウズするためのプログラムなどが格納される。さらにプログラムメモリ160には、情報端末20と車載器30とがブルートゥース接続40を介して接続されているとき、車載器30から送信されたコマンド信号を解読し、当該コマンド信号によりアプリケーションを実行する拡張プログラムが含まれる。
【0023】
データメモリ170には、その情報端末が対応するブルートゥースの1または複数のサービスプロファイルが格納される。情報端末20と車載器30は、それらが共通して持っているプロファイルによりペアリング可能である。前述のように情報端末20b、20cは、少なくとも車載器30をダイヤルアップによりインターネットに接続可能にするDUNプロファイルを持っている。DUNプロファイルを備えた情報端末では、車載器30からインターネットの特定サイト等への接続要求がなされると、その契約電話事業者回線網を介して、インターネット網にダイヤルアップ接続し、目的サイトにリクエストを発行し、そのレスポンスを車載器30へ返す。
【0024】
次に、図3は、車載器30の典型的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、車載器30は、ユーザからの入力を受け取る入力部200、ブルートゥース接続40により情報端末20との接続を可能にする通信接続部210、各種メディアの再生情報やナビゲーション情報など実行されるアプリケーションに係る各種情報を表示する表示部220、音声を出力する音声出力部230、種々のメディアの再生等を実行するマルチメディア部240、制御部250、アプリケーション等を実行するためのプログラムを格納するプログラムメモリ260、オーディオデータ、ビデオデータ、地図データなどのデータを記憶するデータメモリ270、各部を接続するバス280とを備えている。
【0025】
マルチメディア部240は、CD、DVD、ブルーレイディスク、メモリ媒体、データメモリ270などに記録されたオーディオデータやビデオデータを再生する機能、テレビ放送やラジオ放送を受信する機能などを有する。プログラムメモリ260には、ナビゲーション機能を実行するアプリケーションやマルチメディア部240を制御するプログラムに加え、情報端末20との間の通信接続を制御するプログラムなどが記憶される。なお、車載器30は、ナビゲーション動作に必要なGPS測位情報、車速情報、方位情報などを受け取ることができる。データメモリ270には、車載器30が対応するブルートゥースの1または複数のサービスプロファイルが格納される。また、ブルートゥースによるペアリングを確立したスレーブデバイスについての情報は、データメモリ270に格納され保持される。格納されるスレーブデバイスについての情報には、少なくともその識別ID、アドレス、最終接続日時の情報が含まれる。実施例において、車載器30は少なくともDUNプロファイルを持っている。ここで、プログラムメモリ260に格納されたナビゲーションアプリケーションは、インターネット上でサービス展開する特定のナビゲーションサービスのサーバに接続して、自車位置近隣の施設情報、渋滞情報、ルート情報その他の運転支援情報を取得し、ディスプレイ上に表示構成する機能を有している。車載器30における、このナビゲーションサービスの利用は、インターネットへの接続機能を持った情報端末20とのDUNプロファイルによるペアリングを介して実現される。
【0026】
図4は、情報端末20の通信接続部110と、車載器30の通信接続部210の内部構成を示すブロック図である。図では、車載器30がマスター側、情報端末20がスレーブ側として機能されて、両通信機器間でブルートゥースによるペアリングを実現するための機能ブロックのみを示している。つまり、両通信機器は、ブルートゥースによるペアリングに関してマスター側およびスレーブ側のいずれにも成り得るよう同じ機能を備えているが、図にはそれぞれの担当する側の構成ブロックのみが示されている。
【0027】
車載器30においてその通信接続部210は、そのマスター側の機能として、登録リストの中からペアリングするスレーブデバイスを選択し、決定する接続デバイス決定部211、選択されたスレーブデバイスに対し、ユーザが所望するサービスプロファイルによる接続を要求する接続要求部212、スレーブデバイスに対する接続要求の結果をユーザに通知する接続要求結果通知部213、ブルートゥースによる通信可能範囲内に存在する1または複数のスレーブデバイスを探索するスレーブデバイス探索部214、発見されたスレーブデバイスに対してその利用できるサービスプロファイルを要求するBTプロファイル要求部215、発見されたスレーブデバイスの情報をディスプレイ上に表示するためのスレーブデバイス情報表示制御部216、ユーザの選択に基づいてペアリングするスレーブデバイスを切り替える接続デバイス切替部217、および特定のスレーブデバイスとのペアリングを確立するための接続確立実行部218を備えている。
【0028】
接続デバイス決定部211は、典型的な実施形態において、データメモリ270に記録された複数のスレーブデバイスの中から最も最近に接続したデバイスを、接続すべきデバイスとして決定することができる。もっとも、他の決定アルゴリズム、例えば、特定期間において最も接続回数の多いデバイスを選択するアルゴリズムを採用してもよいし、複数の決定アルゴリズムに重み付けしその総合評価によりデバイスを選択するものであってもよい。接続要求部212は、ユーザがインターネット上のナビゲーションサービスを利用するために、ナビゲーションアプリケーションを起動し、ディスプレイを介してその接続のためのユーザ認証情報を入力して、接続要求を実施することによって、実行される。接続要求部212は、これを受けて、先に決定されたスレーブデバイスに対してDUNプロファイルによるペアリングを要求する。そして、ペアリングが確立された場合、後述するように一スレーブデバイスである情報端末20では、ダイヤルアップ接続によりインターネットに接続し、目的サイトに対してこの認証情報を伴うリクエストを発行する。
【0029】
接続要求結果通知部213は、スレーブデバイスから受信した接続要求に対する結果の情報を、表示部220上に表示させて、ユーザにその結果を認識させるものであり、少なくともその結果の情報としては3種類ある。すなわち、(1)認証が成功してサービスが利用できる旨の通知、(2)認証が失敗した旨の通知、および(3)スレーブデバイスがDUNプロファイルに非対応である旨の通知、がある。車載器30ではスレーブデバイスからのこれらの結果通知に応じて、その後の処理を決定し、通知を行う。スレーブデバイス探索部214は、最初に接続した情報端末20がDUNプロファイルに非対応であった場合に起動され、1または複数のスレーブデバイスから発信される識別信号を待ち受け、ペアリング候補となる別のデバイスを発見する。BTプロファイル要求部215は、スレーブデバイス探索部214で発見されたスレーブデバイスのアドレスに対し、SDP(Service Discovery Protocol)プロトコルを介してBTプロファイルを要求する信号を所定周期でポーリング送信し、その応答信号を待ってこれを取得する。スレーブデバイス情報表示制御部216は、発見された1または複数のスレーブデバイスの識別IDを、その対応するプロファイルのアイコンと共にリスト表示する。接続デバイス切替部217は、DUNプロファイルを持った別の情報端末20が発見された場合に、その旨をユーザに提示し、ユーザがその端末に対する接続を所望する場合に、ペアリングを試みるデバイスを切り替える処理を実行する。
【0030】
一方、スレーブ側の情報端末20においてその通信接続部110は、そのスレーブ側の機能として、自デバイスをマスター側に認識させるための識別情報を送出するBTデバイス識別情報送信部112、マスター側からのプロファイル要求に基づいて、自デバイスが当該プロファイルに対応しているかを確認し、その結果をマスター側に送信するためのBTプロファイル処理部114、マスター側からのインターネット上のサービスに対する認証要求を処理するための認証要求処理部116、およびマスターデバイスとのペアリングを確立するための接続確立実行部118を備えている。BTデバイス識別情報送信部112は、ユーザ操作により情報端末20がペアリングモードに移行したタイミングで送信されるもので、その信号には、自デバイスの識別ID、接続アドレスが含まれる。もっとも機器の電源が投入されたタイミングで、ペアリングモードに自動的に移行し、この識別信号を送出するよう構成することもできる。
【0031】
次に、車載器30においてユーザがナビゲーションアプリケーションを起動し、インターネット上のナビゲーションサービスを、情報端末20のダイヤルアップ接続機能を介して利用する場合に実行される手順について説明する。なお、ここでは図1に示したように、車内には車載器30との間でブルートゥース規格による接続が可能な3台の情報端末20a〜20cが存在し、情報端末20aは最も最近に使用されている端末であるものの、DUNプロファイルに対応しておらず、他の情報端末20b、20cのみがDUNプロファイルに対応しているものとする。
【0032】
図5および図6は、ペアリング時における情報端末20ー車載器30間の信号の送受信のタイミングを表した図である。ここで図5は、車載器30が最初に接続した情報端末20が、DUNプロファイルに対応しており、その結果として該端末を介してのインターネットへのダイヤルアップ接続が可能になる場合の例を示している。一方で、図6は、車載器30が最初に接続した情報端末20が、DUNプロファイルに対応しておらず、その結果としてインターネットに接続できない場合の例を示している。
【0033】
図5において、ユーザ操作に基づいて車載器30側でナビゲーションアプリケーションが起動されると、システムはダイヤルアップ接続を実現するために、登録リストの中から1つのスレーブ側のデバイス(情報端末20)を選択502し、このデバイスに対してDUNプロファイルによるペアリングを要求504する。システムに対しユーザが認証情報を入力すると、この選択された情報端末20に認証情報506を送信する。情報端末20側で自デバイスがDUNプロファイルに対応していることが確認されると、これを車載器30側に通知し、両端末間で接続確立処理508、510が実行されて、両端末はDUNプロファイルに基づいてペアリング512される。情報端末20においては、インターネットへのダイヤルアップ接続514が開始され、目的のナビゲーションサービスを提供するサイトに、認証情報516を伴うリクエストを発行する。当該サイトからのレスポンス518は、情報端末20で処理520され、車載器30へ応答情報522として返され、ユーザに通知524される。
【0034】
一方、図6において、最初の情報端末20aがDUNプロファイルに対応していない場合の処理について説明すると、図5の場合と同様に、ユーザ操作に基づいて車載器30側でナビゲーションアプリケーションが起動されると、システムはダイヤルアップ接続を実現するために、登録リストの中から1つのスレーブ側のデバイス(情報端末20a)を選択602し、このデバイスに対してDUNプロファイルによるペアリングを要求604する。システムに対しユーザが認証情報を入力すると、この選択された情報端末20aに認証情報606を送信する。ここで、情報端末20a側で自デバイスがDUNプロファイルに非対応であることが確認608されると、この情報610は直ちに車載器30側に通知される。車載器30側では、この情報を処理しユーザに、所有の情報端末20aがDUNプロファイルに非対応である旨を通知612する。
【0035】
次に、車載器30においては、車内にある他のスレーブデバイスの探索614が開始される。ここで、車内にブルートゥース規格による接続が可能な情報端末20b、20cが存在する場合、車載器30側でその端末の識別情報616が受信される。車載器30では、これらの情報端末20に対し、その対応プロファイルの情報を要求618し、その応答620を受信する。そして、これらの情報をユーザに提示622して、ユーザがそこからDUNプロファイルに対応した情報端末20bを選択624できるようにする。このユーザの指示に基づいて、車載器30および情報端末20bでは接続確立処理626、628が実行されて、両端末はDUNプロファイルに基づいてペアリング630されることとなる。
【0036】
次に、図7図9に沿って、車載器30および情報端末20における処理のフローを説明する。図7および図8は、情報端末20とのペアリング実行時における車載器30側の処理の手順を示したフローチャートである。本処理は、ユーザが車載器30においてナビゲーションアプリケーションを起動することで開始される(ステップS700)。アプリケーションが起動されると、システムは最初にダイヤルアップ接続を試みる1つのスレーブ側のデバイスを登録リストから選択し、接続先デバイスとして特定する(ステップS702)。システムのディスプレイ上には、接続先サイトの認証情報を入力する画面が表示され、ユーザにその入力を要求する(ステップS704)。ユーザによって認証情報が入力されると、システムは、先に特定したスレーブデバイス(情報端末20)に対しDUNプロファイルによるペアリングを要求し(ステップS707)、またユーザ認証情報を送信する(ステップS708)。
【0037】
この接続要求に対して、情報端末20からの応答があると(ステップS710)、その内容を判断し(ステップS712)、それがスレーブデバイスへのDUNプロファイルによる接続を許可するものであった場合には、所定のペアリング処理を実行して、情報端末20との接続を確立し(ステップS714)、本処理は終了する。これによってユーザは、車載器30から情報端末20のダイヤルアップ接続を介してインターネット上の目的サイトにアクセスできるようになり、そのサービスを利用できるようになる。
【0038】
一方で、情報端末20からの応答がその接続を拒否するものであった場合には、その理由が判断される(ステップS716)。そして、接続拒否の理由が、認証情報が無効であるという事由の場合には、その旨をディスプレイ上に表示してユーザに通知し(ステップS718)、ユーザに対して再認証の手続きを行うかを求める(ステップS720)。これに対してユーザが再認証の手続きを望む指示を出すと、処理はステップS704に戻り、新たな認証情報の入力要求からの一連の手続きS704〜S714が実行される。
【0039】
ステップ716において接続拒否の理由が、接続先の情報端末20がDUNプロファイルに非対応であるという事由の場合には、その旨をディスプレイ上に表示してユーザに通知し(ステップS722)、さらに図8に示す一連の処理に移行する。図8に移り、最初に車内に通信可能な別のスレーブデバイスがあるかの探索が開始される(ステップS802)。そして、別のスレーブデバイスが発見されない場合、本処理はここで終了する(ステップS804)。一方で、車内にブルートゥース規格による接続が可能なデバイス(情報端末20b、20c)が存在する場合、それらの識別情報を取得し(ステップS806)、これらのデバイスに対し、その対応プロファイルの情報を要求する(ステップS808)。
【0040】
情報端末20からの応答を受けて、それらがDUNプロファイルに対応しているか判断し(ステップS810)、DUNプロファイルに対応しているデバイスが存在する場合には、その情報をディスプレイ上に表示してユーザに通知する(ステップS812)。好適な実施例において、ディスプレイ上には発見された1または複数のデバイスの識別情報とそのプロファイル情報をリスト表示し、ユーザがその中からDUNプロファイルに対応するデバイスを選択できるようにすることが好ましい。そして、ユーザがDUNプロファイルに対応した他のデバイスによる接続を望む場合(ステップS814)、システムはこのデバイスを接続先デバイスとしてセットして(ステップS816)、処理を図7のステップ704に戻し、ユーザに認証情報の入力を求め、続く一連の手続きS706〜S714を実行する。ステップS810において、DUNプロファイルに対応するデバイスが発見されなかった場合には、その旨をディスプレイに表示してユーザに通知して、本処理を終了する(ステップS818)。
【0041】
次に、図9は、車載器30とのペアリング実行時における情報端末20側の処理の手順を示したフローチャートである。本処理は、情報端末20がペアリングモードにセットされていることで開始される(ステップS900)。この状態で、本デバイスに対する車載器30からのDUNプロファイルによる接続要求がなされると、端末側でこれが受信され(ステップS902)、自デバイスがDUNプロファイルに対応しているかが確認される(ステップS904)。そしてステップS906において、自デバイスがDUNプロファイルに対応していないと判断された場合には、その情報を車載器30に送信して(ステップS908)、本処理を終える。
【0042】
一方、自デバイスがDUNプロファイルに対応していると判断された場合には、車載器30側から受信した認証情報を使って、インターネット上の目的サイトのサーバに対して認証リクエストを発行する(ステップS910)。サーバからの認証リクエストに対するレスポンスを受け取り、その内容が認証が失敗したというものである場合には(ステップS912)、その情報を車載器30へ送信して、本処理を終了する(ステップS918)。一方、サーバにおいてユーザ認証が成功した場合には、その情報を車載器30側へ送信し(ステップS914)、所定のペアリング処理を実行して、車載器30との接続を確立し(ステップS916)、本処理は終了する。これによってユーザは、車載器30から情報端末20のダイヤルアップ接続を介してインターネット上の目的サイトにアクセスできるようになり、そのサービスを利用できるようになる。
【0043】
次に、前記ペアリング実行時において、本実施例における車載器30のディスプレイ上に表示される画面遷移の一例について説明する。図10(A)〜(F)は、ペアリング実行時における画面遷移の一例を示した図である。同図(A)は、ナビゲーションアプリケーションを起動して、ユーザに対してサーバへの認証情報、すなわちログインIDとパスワードの入力を求める画面を示している。ユーザがこれら情報の入力を行なって完了ボタン1002をクリックすることで、画面は同図(B)の状態に遷移する。同図(B)は、情報端末20を介してインターネットにダイヤルアップ接続し、目的サーバにアクセスしその認証リクエストを行なっている際の画面を示しており、メッセージ付きダイアログボックス1004を表示してユーザにその結果の待受状態であることを知らせている。同図(C)は、目的サーバへの認証が失敗した旨の情報を、ダイアログボックス1006で表示した画面を示している。同図(D)は、ペアリングを試みた情報端末がDUNプロファイルに非対応であった旨の情報を、ダイアログボックス1008で表示した画面を示している。接続を試みた情報端末がDUNプロファイルに非対応の場合、システムは先に説明したように他のスレーブデバイスを探索し、それらが発見された場合にはその情報をリスト表示する。同図(E)は、そのようなディスプレイ上に表示されるデバイス情報のリスト1010の一例を示している。表示においてDUNプロファイルに対応するデバイスの項目を目立たせるよう、その表示色を他と異ならせている(図中、斜線表示)。同図(F)は、ユーザが選択したデバイスの情報を表示し、DUNプロファイルによる接続を実現するためにそのデバイスの使用を促すダイアログボックス1011が表示されている画面を示している。これらの画面は、本発明を実施するための好適な一実施例であるが、その画面構成は説明のための一例に過ぎず、既存の方法による種々の画面構成態様が考えられる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施例では、ブルートゥース規格に基づくペアリング手順を例としたが、他の近距離無線通信規格に基づくペアリングにおいて、本発明の技術を当然に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
10:通信システム 20a〜20c:情報端末
30:車載器 40:ブルートゥース接続
100:入力部 110:通信接続部
112:BTデバイス識別情報送信部 114:BTプロファイル処理部
116:認証要求処理部 118:接続確立実行部
120:表示部 130:音声出力部
140:通信部 150:制御部
160:プログラムメモリ 170:データメモリ
180:バス 200:入力部
210:通信接続部 211:接続デバイス決定部
212:接続要求部 213:接続要求結果通知部
214:スレーブデバイス探索部 215:BTプロファイル要求部
216:スレーブデバイス情報表示制御部 217:接続デバイス切替部
218:接続確立実行部 220:表示部
230:音声出力部 240:マルチメディア部
250:制御部 260:プログラムメモリ
270:データメモリ 280:バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10