【実施例1】
【0031】
図1から
図4を用いて、実施例1のロールについて説明する。
【0032】
図1、及び
図2において、ロール1は、ロール部2、台座3、止め金具9、及びプレート10より構成されている。台座3は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなる略円柱形状であり、外周にロール部2が形成される本体部4、及び本体部4の両端に連接される継ぎ手部A5と、継ぎ手部B6から構成されている。本体部4の端部の近傍には、スペーサーからなる当て部材15が、ボルトからなる止め具16にて本体部4に固定され、本体部4と一体化されている。台座3は、略円筒形状でもよい。ロール部2は、複数のロール片7A、7Bが台座3の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具9、及びプレート10にて挟み付けられて形成されている。ロール片7Aとロール片7Bは、同一素材である。止め金具9には、スナップリングが使用されている。特に図示しないが、ナットを止め金具9として用いてもよい。ロール片7Aは、本体部4の端部の近傍に積層され、ロール片7Bは、本体部4の略中央部の近傍に積層されている。また、本体部4の端部の近傍に積層されたロール片7Aの所定枚数毎に、ロール片7Aよりも回転外径が小さい補強部材11が挿入されている。補強部材11は、ロール片7A2〜10枚程度にたいし、1枚挿入される。
【0033】
図2、及び
図3において、台座3は、本体部4の両方の端部に継ぎ手部A5と継ぎ手部B6が溶接により連接され、固定されている。本体部4の長手方向における略中央部の近傍における範囲L
2の外径はD
2であり、両方の端部の近傍における範囲L
1の外径はD
1である。端部の近傍の外径D
1は、略中央部の近傍の外径D
2よりも小さくなるよう設定されている。そして、本体部4のL
1の範囲に、略円筒形状で鉄、SUS、アルミニウム、合成樹脂等からなる当て部材15を嵌合挿入すると共に、止め穴17に止め具16を挿入して本体部4に固定して、一体化する。当て部材15の内径は、本体部4の範囲L
1の外径D
1と略同一で、外径は本体部4の範囲L
2の外径D
2よりも大きく設定されている。その為、必然的に当たり部8が本体部4の端部の近傍に形成される。また、継ぎ手部A5と継ぎ手部B6には、止め金具9が嵌合挿入される凹状の嵌合部12がそれぞれ設けられている。
【0034】
図4(a)において、本体部4の端部の近傍における範囲L
1に積層されるロール片7Aは、中心部に穴部13A、外周部に側縁部14が形成された概円環状の不織布からなる。
図4(b)において、本体部4の略中央部の近傍における範囲L
2に積層されるロール片7Bは、中心部に穴部13B、外周部に側縁部14が形成された概円環状の不織布からなる。ロール片7Aとロール片7Bの外径は略同一であり、内径はロール片7Aの方が、ロール片7Bよりも大きい。すなわち、ロール片7Aの内径は、本体部4の端部の近傍における範囲L
1に嵌合挿入され一体化した当て部材15の外径と略同一であり、ロール片7Bの内径は、本体部4の略中央部の近傍における範囲L
2の外径D
2と略同一である。
図4(c)において、補強部材11は、中心部に穴部13Aが形成された概円環状の不織布からなる。補強部材11を構成する不織布は、ロール片7A、7Bと同一の材質であってもよいし、異なる材質であっても構わない。また、補強部材11の材質は、特に限定されるものではなく、織布、編物、樹脂板、フィルム状樹脂組成物、合成樹脂発泡体、ゴム板等でも何ら支障はない。補強部材11の外径は、ロール片7Aよりも小さく、内径はロール片7Aと略同一である。なお、特に図示しないが、台座3にたいするロール片7A、7Bと補強部材11の回転ズレを防止する為に、ロール片7A、7Bと補強部材11の内周に凹状の溝を形成すると共に、本体部4の長手方向の外周に凸状となるキーを装着して、前記凹状の溝を、凸状のキーに嵌合挿入させることにより、ロール片7A、7Bと補強部材11を本体部4に積層してもよい。
【0035】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0036】
最初に、平板状の不織布を用意し、不織布をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、穴部13A、13B、及び側縁部14を有する概円環状のロール片7A、7Bに形成する。補強部材11についても、前記と略同一の方法にて形成する。
【0037】
上記に示したロール片7A、7B、補強部材11が用意されたならば、台座3を構成する継ぎ手部B6側における本体部4の範囲L
1の外周に、当て部材15を嵌合挿入すると共に、止め穴17に止め具16を挿入し、本体部4に固定して一体化する。次に、台座3を構成する継ぎ手部A5の端部から所定枚数のロール片7Bを、穴部13Bが台座3に貫通するように挿入し、本体部4の略中央部の近傍における範囲L
2に積層すると共に、所望の硬度が得られるようプレス機にて圧縮する。次いで、台座3を構成する継ぎ手部A5側における本体部4の範囲L
1の外周に、当て部材15を嵌合挿入すると共に、止め穴17に止め具16を挿入し、本体部4に固定して一体化し、本体部4の略中央部の範囲L
2にロール部2を構成するロール片7Bを形成する。圧縮されたロール片7Bは、継ぎ手部A5側に構成された当たり部8、及び継ぎ手部B6側に構成された当たり部8により、外側に反発して広がろうとする作用が抑制され、所望の硬度を維持することができるよう固定される。
【0038】
次に、継ぎ手部A5の端部からロール片7Aと、ロール片7Aの所定枚数毎に挿入された補強部材11を、穴部13Aが台座3に貫通するように挿入し、本体部4と一体化された当て部材15の外周に積層すると共に、所望の硬度が得られるようプレス機にて圧縮し、プレート10、及び止め金具9にて固定する。次いで、台座3を反転させ、継ぎ手部B6の端部から所定枚数のロール片7Aと、ロール片7Aの所定枚数毎に挿入された補強部材11を、穴部13Aが台座3に貫通するように挿入し、本体部4と一体化された当て部材15の外周に積層すると共に、所望の硬度が得られるようプレス機にて圧縮し、プレート10、及び止め金具9にて固定する。そして、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片7A、7B、及び補強部材11の内部応力を均一化させ、側縁部14をバイト、砥石等により切削加工及び研磨加工し、台座3の外周にロール部2を形成してロール1が製作される。
【0039】
ロール部2の表面部の硬度は、両方の端部の近傍が、略中央部の近傍よりも低くなるよう設定されている。すなわち、本体部4の長手方向における単位長さあたりのロール片7A、7Bの積層枚数が、端部の近傍におけるロール片7Aの方が略中央部の近傍におけるロール片7Bよりも少なく、ロール部2の単位体積あたりの見掛け密度が小さくなるように設定されているからである。ロール部2の端部の近傍における表面の硬度は、30°以上50°未満程度に設定されるのが望ましい。硬度が30°未満の場合、硬度が低すぎて、ロール1に圧力が加わるとロール部2にヘタリが生じやすくなる。硬度が50°以上の場合、硬度が高すぎて、上下のロール1の間に被洗浄面が挟み込まれ、ロール部2が圧接されても、ロール部2が押し潰されず、被洗浄面の両エッジ部分にたいする圧接時の圧力が弱くなり、被洗浄面のエッジに液体が残るエッジドリップ現象が発生しやすくなる。一方、ロール部2の略中央部の近傍における表面の硬度は、50°以上90°未満程度に設定されるのが望ましい。硬度が50°未満の場合、ダム機能が弱く、被洗浄面から液体を、端部方向に流しにくくなる。硬度が90°以上の場合、硬度が高すぎて、ロール部2と被洗浄面の接触面積が狭く、被洗浄面から液体を、均一に除去することが難しくなる。
【0040】
次に、ロール片7A、7B、及び補強部材11を構成する不織布の製造方法について、いくつか述べる。
【0041】
第1の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成する。なお、不織布を形成する繊維には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0042】
第2の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布を得る。得られた不織布にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布を形成する繊維の間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布を形成する繊維には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成樹脂繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0043】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた熱可塑性樹脂繊維にたいして100〜150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維に付着させ、加熱することにより不織布を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0044】
上記に示した不織布の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維を結合して不織布を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維を結合させて不織布を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維を結合して不織布を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維を接着させて不織布を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布を用いても構わない。なお、不織布は、ロール1に形成された場合、被洗浄面の繰り返しの当接に強く、繊維がほつれ難く、織布、編物等の他の布帛をロール1に用いた場合に比べて、ロール1の耐久性の向上につながる。
【0045】
ロール片7A、7B、及び補強部材11に用いられる不織布の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度、除去する液体にたいする耐薬品性等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0046】
上記の如く構成されたロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0047】
ロール1は、ロール部2及び台座3を有し、台座3はロール部2が外周に形成される本体部4、及び本体部4の両端に連接される継ぎ手部A5及び継ぎ手部B6を有し、ロール部2は長手方向における両方の端部の近傍が略中央部の近傍より表面の硬度が小であると共に、少なくとも前記略中央部の近傍には不織布からなる複数の概円環状のロール片7Bが積層されて形成されてあるので、被洗浄面のエッジ部分が通過するロール部2の端部の硬度は、略中央部に比べて、低く設定されている。従って、ロール1に圧力を付加すると、端部は押し潰され、被洗浄面のエッジ部分にロール部2が当接する。その為、エッジドリップ現象が発生することなく、被洗浄面のエッジ部分の液体が除去される。
【0048】
ロール部2の略中央部は、端部より硬度が高く設定されていると共に、不織布にて形成されている。従って、被洗浄面の略中央部においては、付着した液体を堰き止めるダム機能が効果的に作用すると共に、不織布の有する繊維による毛細管現象により、ダム機能で除去できなかった液体を吸い上げることができる。その為、ロール1は被洗浄面の略中央部、両エッジ部分とも液体を除去することができるので、均一な液体の除去性能が発揮される。
【0049】
ロール1は、本体部4の長手方向における両方の端部の近傍に当たり部8が構成されているので、本体部4の端部の近傍にスペーサーからなる当て部材15を嵌めて、本体部4に固定することにより当たり部8を設けることで、本体部4の略中央部の近傍にロール片7Bを積層する場合、当たり部8より本体部4の端部側にロール片7Bがずれることがない。従って、本体部4の端部の近傍と、略中央部の近傍において、軸心方向の単位長さあたりにおけるロール片7A、7Bの積層枚数を任意に変えることができる。その為、ロール部2の端部の近傍と、略中央部の近傍において、表面の硬度を任意に設定することができる。
【0050】
ロール部2は、長手方向における両方の端部の近傍が略中央部の近傍より単位体積あたりの見掛け密度が小にて形成されているので、ロール部2の端部の近傍は、略中央部の近傍よりも硬度を低く設定することができる。ロール部2の端部の近傍における単位体積あたりの見掛け密度を低く設定するには、例えば、ロール片7Aの本体部4にたいする積層枚数を調整することにより、設定することができる。すなわち、ロール片7Aの積層枚数が多ければ見掛け密度が高く、硬度は高くなり、少なければ見掛け密度が低く、硬度は低くなるので、単位長さあたりのロール部2の端部の近傍におけるロール片7Aの積層枚数を、略中央部の近傍におけるロール片7Bの積層枚数よりも少なく設定してロール部2を形成すればよい。
【0051】
ロール部2は、長手方向における両方の端部の近傍においてロール片7Aよりも回転外径が小である補強部材11を有するので、ロール部2の端部は、ロール片7Aよりも回転外径が小さい補強部材11が積層されていることから、ロール部2の端部の表面部は、芯部に比べて硬度が低く、柔らかい為、ロール1の弾力性が向上し、ロール部2と被洗浄面との接触面積が広がり、被洗浄面からの液体の除去性能が向上する。また、ロール部2の端部の芯部は、表面部に比べて硬度が高く、硬い為、ロール1の回転中にロール片7Aが本体部4から位置ずれすることがなく、ロール部2の表面部が凹凸になることが抑制されるので、ロール部2は均一に被洗浄面に摺接し、ロール1は高い耐久性を維持することができる。
【0052】
次に、本発明のロール1の油分除去性能について、下記要領にて試験した。また、対象物のエッジドリップの発生について、目視観察した。
【0053】
実施例として、外径が100mm、内径が70mm、全長が300mmのロール部2を有するロール1を、2本製作し、洗浄装置に上下一対にて前記ロール1を設置した。ロール部2の表面部の硬度は、両端部75mmは40°、略中央部150mmは60°にて設定した。次に、対象物となる厚み5.8mmの鋼板(A4サイズ)に、スギムラ化学工業株式会社製の洗浄油プレトンR−303PX2(動粘度5.0cSt/40℃)を30g/m
2塗布し、周速を毎分100mにて回転させた前記ロール1にたいして、線圧5kgf/cmの圧力を加えて押し付け、上下のロール1の間に鋼板を通過させた。鋼板の残油量を測定したところ0.3g/m
2であった。また、鋼板の両エッジに油残りは発生しなかった。
【0054】
次に、比較例として、外径が100mm、内径が70mm、全長が300mmのロール部2を有するロール1を、2本製作し、洗浄装置に上下一対にて前記ロール1を設置した。ロール部2の表面部の硬度は全長に亘り60°にて設定した。対象物となる厚み5.8mmの鋼板に、スギムラ化学工業株式会社製の洗浄油プレトンR−303PX2(動粘度5.0cSt/40℃)を30g/m
2塗布し、周速を毎分100mにて回転させた前記ロール1にたいして、線圧5kgf/cmの圧力を加えて押し付け、上下のロール1の間に鋼板を通過させた。鋼板の残油量を測定したところ0.5g/m
2であった。また、鋼板の略中央部には油残りは発生しなかったものの、両エッジ約5mmに油が残り、エッジドリップ現象が発生した。
【0055】
上記試験結果より、実施例のロール1は、ロール部2の端部の硬度が、略中央部に比べて低く設定されているので、鋼板の両エッジにたいする密着性が良好で、且つ略中央部はダム機能が効率よく確実に作用することから、エッジドリップ現象を発生させることなく、鋼板から均一に油分を除去することが判明した。
【0056】
なお、本実施例においては、ロール片7A及びロール片7Bの回転外径は同一であり、ロール部2の長手方向における両方の端部の近傍と、略中央部の近傍との間に段差が形成されていないが、前記の段差については、0.1mm程度の段差を形成し、ロール片7Aの回転外径を、ロール片7Bの回転外径よりも大とし、洗浄効果を上げること等も本発明に含まれる。
【実施例2】
【0057】
図5から
図7を用いて、実施例2のロールについて説明する。なお、上記実施例1と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0058】
図5において、ロール21は、ロール部22、台座23、止め金具29、及びプレート30より構成されている。台座23は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなる略円柱形状であり、外周にロール部22が形成される本体部24、及び本体部24の両端に連接される継ぎ手部A25と、継ぎ手部B26から構成されている。本体部24の端部の近傍には、スペーサーからなる当て部材48が、ボルトからなる止め具46にて本体部24に固定され、本体部24と一体化されている。ロール部22は、複数のロール片27A、27Bが台座23を構成する本体部24の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具29、及びプレート30にて挟み付けられて形成されている。止め金具29には、スナップリングが使用されている。ロール片27Aは、本体部24の両方の端部の近傍に積層され、ロール片27Bは、本体部24の略中央部の近傍に積層されている。また、ロール片27Aは、積層されると共に、一体化されたロールモジュール47として構成されている。台座23を構成する本体部24は、長手方向における両方の端部の近傍の外径が、略中央部の近傍の外径より小さく、当て部材48が止め具46で固定されることにより、略中央部の外径よりも大きくなり、外径が変わる境目には当たり部28が形成されている。
【0059】
図6(a)において、本体部24の略中央部の近傍に積層されるロール片27Bは、中心部に穴部33B、外周部に側縁部34が形成された概円環状の不織布からなる。ロール片27Bに用いられる不織布は、複数本の弾性繊維35が絡合されてあり、弾性繊維35は、
図6(b)の如く、繊維36の表面に高分子弾性体37が付着して形成されている。繊維36には、綿、セルロース等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維が用いられ、一般的にレギュラーファイバーと呼ばれる繊度が1dTx(デシテックス)以上の単繊維からなる。1dTxとは、10000mで1gとなる繊維36のことをいう。高分子弾性体37には、NBR(アクリロニトリルブタジエンラバー)、MBR(メタクリル酸メチルブタジエンラバー)、SBR(スチレンブタジエンラバー)等が用いられる。
【0060】
図6(c)において、本体部24の端部の近傍に積層されるロール片27Aは、中心部に穴部33A、外周部に側縁部34が形成された概円環状の不織布からなる。ロール片27Aとロール片27Bの外径は略同一であり、内径はロール片27Aの方が、ロール片27Bよりも大きい。前記に示したようなロール片27A、27Bの構成とすることにより、ロール片27Bを本体部24の外周に積層する際、ロール片27Bは、当たり部28より本体部24の端部側へずれて移動することがなく、ロール部22の長手方向の端部の近傍と、略中央部の近傍においてロール片27A、27Bの積層枚数を調整することにより、任意に表面の硬度を設定することができる。ロール部22は、両方の端部の近傍の硬度が、略中央部の近傍の硬度より低くなるよう設定されている。
【0061】
ロール片27Aに用いられる不織布は、
図6(d)の如く、複数本の極細繊維39が集束した繊維束40が複数個形成されると共に、繊維束40の周りを、極微細な気泡42を有する発泡化したポリウレタンの基部41が付着した二重構造体として形成されている。隣り合う極細繊維39の間には空隙部38が形成されている。極細繊維39は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなり、繊度は1dTx未満である。一般的に、極細繊維39はマイクロファイバーと呼ばれ、繊維束40は海島構造と呼ばれている。
【0062】
次に、ロール片27Aからなるロールモジュール47の製作方法について説明する。
【0063】
最初に、不織布を概円環状に打ち抜き、複数枚のロール片27Aを用意する。次に、軸体(図示せず)を用意し、ロール片27Aを軸体の外周に挿入しながら複数枚重ね合わせると共に、圧縮し、仮ロールモジュールを形成する。次いで、仮ロールモジュールを、100℃程度の温水、あるいは恒温槽に入れ、加熱することで、繊維束40の外周部を形成するポリウレタンの基部41を溶融し、隣り合うロール片27Aを接着させ、軸体から抜き取り、ロールモジュール47が形成される。ロールモジュール47は、前記の手順を踏まえ、ロール部2の端部を形成するのに必要な数量だけ用意する。
【0064】
上記の如く構成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0065】
ロール21は、ロール部22の長手方向の両方の端部の近傍に積層されるロール片27Aと、略中央部の近傍に積層されるロール片27Bの材質が異なる。材質を変えることにより、使用目的や使用環境に応じ、任意にロール部22の特質を選択し、材質を選定することができる。
【0066】
すなわち、ロール部22の略中央部は、常に対象物が通過することから、端部の近傍よりも耐摩耗性に優れた材質が選定される必要がある。ロール片27Bに用いられる不織布は、繊度が太い繊維36が採用されていることから、耐摩耗性に優れ、ロール部22の略中央部に用いられる材質として適している。また、コストもロール片27Aに用いられる不織布よりも安価である。一方、ロール部22の端部の近傍は、硬度が低いことからダム機能は劣るので、吸液性能に優れた材質をロール片27Aに採用し、優れた液体の除去性能が必要となる。ロール片27Aに用いられる不織布は、繊維束40に形成された空隙部38において毛細管現象が発現し、被洗浄面から液体が吸い上げられる。また、ポリウレタンの基部41に形成された気泡42も液体を吸い上げる。その為、ロール片27Aに用いられる不織布は、非常に優れた液体の除去性能を有し、ロール部22の端部に用いられる材質として適しており、エッジドリップ現象の発生を防ぐことができる。
【0067】
また、ロール部2は両方の端部の近傍が、積層された複数のロール片27Aが接合され、一体化されたロールモジュール47にて形成されているので、ロール片27Aが一体化されたロールモジュール47を有することから、ロール部2は端部の硬度が低くても、表面部が凹凸になることが防止され、長期間に亘り、ロール部2の形態安定化を図ることができる。また、ロール片27Aのズレが抑制され、硬度ムラの発生が解消されるので、より均一に被洗浄面から液体を除去することができる。なお、略中央部に積層されるロール片27Bもロールモジュールに形成して用いても構わない。
【実施例3】
【0068】
図8を用いて、実施例3のロールについて説明する。なお、上記実施例1、及び実施例2と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0069】
図8において、ロール51は、ロール部52、台座53、止め金具59、及びプレート60より構成されている。台座53は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなり、外周にロール部52が形成される本体部54、及び本体部54の両端に連接される継ぎ手部A55と、継ぎ手部B56から構成されている。ロール部52は、不織布からなる複数の概円環状のロール片57A、57Bが台座53を構成する本体部54の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具59、及びプレート60にて挟み付けられて形成されている。ロール片57Aは、本体部54の両方の端部の近傍に積層され、ロール片57Bは、本体部54の略中央部の近傍に積層され、ロール片57Aの内径は、ロール片57Bの内径より大きく設定されている。ロール部52の表面の硬度は、長手方向における両方の端部の近傍が、略中央部の近傍よりも低くなるよう設定されている。また、本体部54の端部の近傍に積層されたロール片57Aの所定枚数毎に、ロール片57Aよりも回転外径が小さい不織布からなる補強部材61が挿入されている。台座53を構成する本体部54は、長手方向における両方の端部の近傍の外径が、略中央部の近傍の外径より小さく、当て部材68が止め具66で固定されることにより、略中央部の外径よりも大きくなり、外径が変わる境目には当たり部58が形成されている。
【0070】
台座53は、本体部54に開口部62が形成されると共に、継ぎ手部A55に中空部63が形成され、開口部62と中空部63は連通している。また、本体部54の外周には複数の孔部64が開設され、孔部64は開口部62に連通している。孔部64は、本体部54の外周等分8箇所に形成されると共に、本体部54の長手方向に亘って、等間隔のピッチで開設されている。孔部64は千鳥状に設けてもよい。継ぎ手部A55の端部にはネジ部65が設けられてあり、ネジ部65にはロータリージョイント等が挿入される。
【0071】
上記の如く構成されたロール51の動作、作用は下記の通りである。
【0072】
ロール51は、継ぎ手部A55の端部に、ロータリージョイント、配管等を介してコンプレッサーや真空ポンプ等の外部装置を接続し、コンプレッサーから圧縮流体をロール部52に送出したり、あるいは真空ポンプを用いてロール部52に真空圧を加えることにより、ロール部52に吸収された液体を、ロール51の外部に排出することができる。その為、ロール部52の吸液飽和状態が解消され、ロール51の耐用期間の大幅な長期化を図ることができる。
【0073】
ロール51をコンプレッサーと接続した場合、コンプレッサーから圧縮流体を噴射すると、圧縮流体は配管を通り、中空部63、開口部62の順に流れ込み、孔部64を介してロール部52に入り、ロール部52に吸収された液体と共に、ロール51の外部に放出される。その為、ロール部52の吸液飽和状態が解消され、ロール51は長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を除去、搾取、洗浄することができる。なお、圧縮流体を噴射するタイミングは、ロール51の稼働時においては、被洗浄面に液体が付着する為、ロール51の非稼働時がよい。
【0074】
また、ロール51を真空ポンプと接続した場合、ロール部52に吸収された液体は、ロール部52に付加された真空圧により、孔部64、開口部62、中空部63の順に通り、配管を介してロール51の外部に放出される。その為、ロール部52の吸液飽和状態が解消され、ロール51は長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を除去、搾取、洗浄することができる。なお、ロール部52に真空圧を付加するタイミングは、上記の噴射タイプのロール51と異なり、稼働時においても被洗浄面に液体が付着することなく、ロール51の外部に液体が排出される為、ロール51の稼働時、非稼働時のいずれでもよい。