(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930712
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】飲料容器用フィッティング
(51)【国際特許分類】
B67D 1/04 20060101AFI20160526BHJP
F16K 1/36 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
B67D1/04 F
F16K1/36 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-290321(P2011-290321)
(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公開番号】特開2013-139271(P2013-139271A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036996
【氏名又は名称】フジテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(72)【発明者】
【氏名】古市 一雄
(72)【発明者】
【氏名】古市 弘
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−62065(JP,A)
【文献】
特開平8−316047(JP,A)
【文献】
特開平3−311(JP,A)
【文献】
特開平8−66727(JP,A)
【文献】
特開2008−201442(JP,A)
【文献】
特開2002−195418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/04
F16K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器(9)の口金(93)と、
前記口金(93)の内周側に設けられた弁座部(95)と、
前記口金(93)と一体に設けられた取付部(94)と、
上端部が前記取付部(94)に支持された管状のダウンチューブ(5)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁(3)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁(4)とを有し、
前記ガス弁(3)は、金属製の芯金(31)と、当該芯金(31)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)とを備えたものであって、傾斜状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過不能であり、
前記芯金(31)は、その平面外周形状として直径が一定の定径部(311)と前記定径部(311)に対して直径が小さい小径部(312)とを備えたものであり、
さらに、前記芯金(31)は、円形の外周上の中心に対して対称な4位置に切欠(301)が形成された芯金素材(30)を、隣接する前記切欠(301)の内周側の頂点を結ぶ直線より外周側で前記芯金素材(30)の外周部を上方に折り曲げた形状として、前記小径部(312)を形成したものであり、
前記芯金素材(30)の前記切欠は、前記芯金素材(30)の外周を構成する円弧形状に滑らかに連続する形状のものである飲料容器用フィッティング。
【請求項2】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記芯金(31)は、前記小径部(312)を形成するための折り曲げ部分の断面形状が滑らかな曲線形状をなすものである飲料容器用フィッティング。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記芯金(31)は、厚さ方向に貫通する貫通孔(313)が前記定径部(311)の近傍に形成されたものである飲料容器用フィッティング。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)は、前記弁部材(32)および前記芯金(31)に一体的に設けられた補強金具(33)を有するものである飲料容器用フィッティング。
【請求項5】
請求項4に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)は、前記芯金(31)と前記弁部材(32)とを一体成形し、さらに前記補強金具(33)を一体的に接続したものである飲料容器用フィッティング。
【請求項6】
請求項4に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)は、前記芯金(31)と前記補強金具(33)とを接続して一体化した金具を、前記弁部材(32)と一体成形したものである飲料容器用フィッティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール樽等の飲料容器の口金として固定されて、ディスペンスヘッドと接続するための飲料容器用フィッティングに関するものであり、さらに詳しくは、口金と取付部材との間隙をなくし異物や雨水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビール樽等の飲料容器では、飲料容器に口金が溶接等によって固定されており、その口金にフィッティングがねじ込まれて取り付けられている。そして、そのフィッティングにディスペンスヘッドが接続される。このディスペンスヘッドを介して飲料容器内に二酸化炭素等の圧力ガスを供給し、飲料容器内の飲料を容器外に注出する。
【0003】
このような構成の飲料容器では、口金にフィッティングがねじ込み固定されているとはいえ、口金とフィッティングとの間に微少な隙間が存在する。その隙間から雨水や生ビールが侵入する。隙間から侵入したそれらの汚水は、パッキンにより飲料容器内への侵入は阻止されるが、口金とフィッティングとの間に長くとどまり、衛生上好ましいものではない。ビール樽を洗浄し高温殺菌する際に、この隙間内の汚水が沸騰して噴出することから、この隙間内に汚水が溜まっていることを確認することができる。この隙間内の汚水は、ビール樽を炎天下に放置した場合などには、熱膨張して隙間からしみ出てくるおそれがあり、さらには口金内に侵入して生ビールを汚染するおそれもある。
【0004】
そこで、本発明の発明者らにより、下記の特許文献1および特許文献2のようなフィッティングが提案されている。特許文献1、特許文献2には、飲料容器の口金と取付部材とを一体的に構成した飲料容器用フィッティングが記載されている。この一体型フィッティングでは、ガス弁が、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能である。これにより、ガス弁を傾斜状態としてフィッティング上方から弁座部の中央孔を通して交換可能である。ガス弁を正規の状態である水平状態としてフィッティング内にセットすれば、もはやガス弁がフィッティングから外れることはない。
【0005】
さらに、本発明の発明者らにより、下記の特許文献3のようなフィッティングが提案されている。特許文献3には、特許文献1および特許文献2のガス弁を改良した飲料容器用フィッティングが記載されている。具体的には、ガス弁の芯金の外周部を上方に折り曲げて小径部としたガス弁を有する飲料容器用フィッティングが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−55612号公報
【特許文献2】国際公開第2007/023748号パンフレット
【特許文献3】特開2009−62065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、飲料容器の口金にフィッティングがねじ込み固定されているものでは、口金とフィッティングとの隙間から汚水等が侵入し、衛生上の問題点があった。特許文献1、特許文献2のようなフィッティングによって、この問題点は解決されるのであるが、以下に説明するような別の問題点が発生する。
【0008】
特許文献1、特許文献2におけるガス弁は、金属製の芯金の平面外周形状が定径部と小径部とからなるものである。定径部は平面外周形状の直径が一定の部分であり、小径部はその定径部に対して直径が小さい部分である。そして、小径部は平面外周形状が円形の芯金から外周縁の一部を切り取った形状となっている。ガス弁は、このような平面外周形状の金属製芯金と、ゴム等の柔軟性の大きな弁部材とが一体的に成形されたものである。
【0009】
このガス弁は、閉鎖時にはコイルばねによる付勢力および飲料容器の内部圧力により弁座部に押し付けられている。また、飲料容器の洗浄後の殺菌処理ではガス弁が高温・高圧の環境下に置かれる。このように、ガス弁は、定常的な押圧力を受けたり、一時的に高温・高圧にさらされたりするが、芯金に定径部と小径部があるため、それらの部分に対応する弁部材にも不均一な力が加わることになる。特に小径部に対応する部分の弁部材に過大な力が加わり、長期間の使用によってその部分が変形してしまうことがあった。
【0010】
また、弁部材と芯金とを一体成形してから常温まで冷却する際に、弁部材には一定の割合で収縮が発生する。芯金に定径部と小径部があるため、その収縮量も定径部と小径部とでは異なり、ガス弁の外周形状が真円からずれることになる。このような外周形状の真円からのずれにより、ガス弁としてのシール性能が損なわれることがあった。
【0011】
このようなガス弁における問題点を解決するために、特許文献3の飲料容器用フィッティングが提案されたのである。しかし、特許文献3の飲料容器用フィッティングにおけるガス弁は、芯金素材の外周部分のごく一部だけを上方に折り曲げ成形して芯金としたものであり、加工性が悪く不良品なども出やすいというさらに別の問題点が発生した。このためガス弁の製造コストが増加してしまうという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、口金と取付部材との間隙をなくし、異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することができる飲料容器用フィッティングにおいて、ガス弁の部分的な変形を防止して長寿命化するとともに、ガス弁のシール性能を向上させ、さらに、ガス弁を低コストで製造することのできる飲料容器用フィッティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器用フィッティングは、飲料容器の口金と、前記口金の内周側に設けられた弁座部と、前記口金と一体に設けられた取付部と、上端部が前記取付部に支持された管状のダウンチューブと、前記ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁と、前記ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁とを有し、前記ガス弁は、金属製の芯金と、当該芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材とを備えたものであって、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能であり、前記芯金は、その平面外周形状として直径が一定の定径部と前記定径部に対して直径が小さい小径部とを備えたものであり、さらに、前記芯金は、円形の外周上の中心に対して対称な4位置に切欠が形成された芯金素材を、隣接する前記切欠の内周側の頂点を結ぶ直線より外周側で前記芯金素材の外周部を上方に折り曲げた形状として、前記小径部を形成したものである。
そして、前記芯金素材の前記切欠は、前記芯金素材の外周を構成する円弧形状に滑らかに連続する形状のものである。
【0015】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記芯金は、前記小径部を形成するための折り曲げ部分の断面形状が滑らかな曲線形状をなすものであることが好ましい。
【0016】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記芯金は、厚さ方向に貫通する貫通孔が前記定径部の近傍に形成されたものであることが好ましい。
【0017】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、前記弁部材および前記芯金に一体的に設けられた補強金具を有するものであることが好ましい。
【0018】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、前記芯金と前記弁部材とを一体成形し、さらに前記補強金具を一体的に接続することにより製造することができる。
【0019】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、前記芯金と前記補強金具とを接続して一体化した金具を、前記弁部材と一体成形することにより製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0021】
飲料容器の口金に取付部と弁座部が一体に設けられているので、口金と取付部材の上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、ガス弁の交換作業も容易に行うことができるので、メインテナンス作業を大幅に軽減することができる。さらに、フィッティングの部品点数を減少させ、飲料容器の製造コストを低減させることができる。
【0022】
そして、芯金の立上部により小径部を形成することにより、ガス弁の寿命を大幅に延長することができるとともに、ガス弁のシール性能を向上させることができる。また、芯金を4位置に切欠のある芯金素材から成形することにより、加工性が向上して低コストでガス弁を製造することができる。
【0023】
芯金の小径部を形成するための折り曲げ部分の断面形状が滑らかな曲線形状をなすものでは、小径部を形成する際の折り曲げの曲率が小くなり、立上部として形成された小径部の近傍でも、過大な応力集中が発生せず、芯金の強度、寿命および信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の飲料容器用フィッティングの断面図である。
【
図2】
図2は、ガス弁3を上方から見た平面図である。
【
図3】
図3は、ガス弁3のX−X矢視断面図である。
【
図4】
図4は、ガス弁3のY−Y矢視断面図である。
【
図5】
図5は、芯金31の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、芯金31のV−V矢視断面図である。
【
図7】
図7は、芯金31のW−W矢視断面図である。
【
図8】
図8は、芯金31を形成するための芯金素材の形状を示す図である。
【
図9】
図9は、ガス弁3の製造手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のフィッティングの断面図である。飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。従来のフィッティングは、口金の内周にフィッティングの取付部材をねじ込んで固定したものであったが、本発明のフィッティングでは口金と取付部材が一体となっている。その取付部材を一体とした口金93が、ビール樽9に溶接によって接続固定されて密封容器となっている。口金93には一体的に取付部94が形成されており、口金93の内周側には弁座部95が形成されている。弁座部95は図示のように2段階の傾斜面(円錐内面)により形成されている。なお、弁座部95は通常の1段階の円錐内面で構成しても良い。
【0026】
取付部94にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が支持されている。ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3はダウンチューブ5とともにコイルばね6によって上方に付勢されており、口金93内周側の弁座部95に押し付けられている。ビール弁4は、コイルばね7による付勢力によってガス弁3下部の弁座部分に押し付けられている。ガス弁3およびビール弁4は通常状態が閉状態である。
【0027】
口金93にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。口金93の上部内周側には内方に突出する係合突起22が設けられており、ディスペンスヘッドと口金93とは、係合凹部と係合突起22とからなる接続機構によって容易に結合することができる。ディスペンスヘッドにより、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に排出させることができる。
【0028】
ガス弁3は全体形状が環状に形成されており、使用状態では中心軸が垂直方向に向くように配置されている。このガス弁3は、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32がステンレス材等からなる芯金31と一体に成形され、さらに補強金具33を一体に結合したものである。従来のガス弁ではこの芯金の外周縁が円形であったが、本発明では、ガス弁3を弁座部95の中央孔を通して交換する必要があるため、芯金31の外周縁形状を円形とは異なるものとしている。
【0029】
図2は、ガス弁3を上方から見た平面図である。芯金31の外周縁には、中心に対して対称な2位置に互いに平行な平坦部が設けられている。このため平坦部が設けられた位置での芯金31の直径(短径=平坦部間の距離)は、これと直交する方向の直径(長径)に比較して小さくなっている。この平坦部が設けられた部分は、弁座部95の中央孔を通過可能な寸法となっている。すなわち、芯金31の短径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも小さく、芯金31の長径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも大きくなっている。
【0030】
また、
図3はガス弁3のX−X矢視断面図であり、
図4はガス弁3のY−Y矢視断面図である。このガス弁3の製造方法は、まず芯金31と弁部材32を一体的に成形する。芯金31には上面と下面とを連通させる連通孔313(
図5参照)が複数個形成されており、一体成形の際にゴム等の弁部材32が上下面間で相互に流動するとともに、成形後は上下面間を強固に連結する。その後、芯金31と弁部材32の一体成形品に、上方から補強金具33を挿入して、図示のように一体に接続する。
【0031】
補強金具33は図示のようにガス弁3の内周面から上面内周側部分を覆う形状とされている。補強金具33の内周側の下端部は、接続前は鉛直方向に形成されているが、補強金具33の内周側の下端部を図示のように外側に押し広げる。このように補強金具33の内周側下端部を拡径することにより、補強金具33が芯金31の内周部と一体的に接続され、弁部材32、芯金31および補強金具33が一体のガス弁3となる。
【0032】
図5は、芯金31の構成を示す平面図である。また、
図6は芯金31のV−V矢視断面図であり、
図7は芯金31のW−W矢視断面図である。これらの図を参照して芯金31の形状をさらに詳しく説明する。芯金31は垂直方向の中心軸Cを有する環状に形成されている。従来の芯金では、上方から見た外周側の輪郭形状(以下、平面外周形状という)が完全に円形である。
図5では従来の円形輪郭形状を点線で示している。
【0033】
この芯金31は、平面外周形状が円形の一部を平坦とした形状とされており、長軸と短軸を有する形状とされている。ここで、平面外周形状の長軸方向を直線Aとして、短軸方向を直線Bとする。直線Aおよび直線Bは、中心軸Cと1点で交わり、互いに直交している。芯金31の平面外周形状は、円形から点線で示す部分を平坦部として成形し、小径部312が形成されている。小径部312は、例えば、本来の円形輪郭形状の点線部分に対応する部分を上方に折り曲げて立上部とすることにより形成する。
【0034】
芯金31の内周側には、芯金31の厚さ方向に貫通する連通孔313が複数形成されている。連通孔313は円周方向に6個形成されている。ただし、連通孔313は小径部312の近傍位置には設けられていない。芯金31と弁部材32を一体的に成形する際に、ゴム等の弁部材32が連通孔313を通って流動するが、小径部312の近傍では小径部312の外方からゴム等の弁部材32が流動できるため連通孔313は特に必要ない。
【0035】
互いに対向する小径部312間の距離が図示の短径dとなる。短径dは芯金31の直線B方向の寸法である。これに対して、芯金31の直線A方向の寸法が長径Dとなる。芯金31の平面外周形状の小径部312以外の部分は直径が一定の定径部311となっている。定径部311の直径が長径Dである。連通孔313はこの定径部311の近傍位置に設けられている。定径部311の近傍の隣接する2個の連通孔313と中心のなす角度は45度である。
【0036】
定径部311は円弧形状である。芯金31の平面外周形状は、
図5に示すように、直線Aに対して対称形であり、直線Bに対しても対称形である。芯金31の典型的な寸法例としては、長径Dが34mm、短径dは28mmである。弁座部95中央孔の直径は約31.8mmであるから、長径Dは中央孔の直径より大きく、短径dは中央孔の直径より小さくなっている。
【0037】
図7に示すように、定径部311においては芯金31の外周部が外方に平面状に張り出している。しかし、
図6に示すように、小径部312においては芯金31の外周部は、上方に折り曲げられて立上部とされている。その立上部が小径部312をなしている。小径部312を形成するための折り曲げ部分の断面形状は、図示のように滑らかな曲線形状をなしている。このため折り曲げられて形成された小径部312の近傍でも、過大な応力集中が発生せず、芯金31の強度、寿命および信頼性が向上する。
【0038】
ガス弁3をダウンチューブ5の上端部に取り付ける際には、ガス弁3を直線Aの方向に傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる必要がある。したがって、ガス弁3に直線A方向を示すマークや刻印などを形成することが望ましく、これによりガス弁3(芯金31)の直線A方向が一目で判別でき、取付作業の作業性が著しく向上する。
【0039】
図8は、芯金31を形成するための芯金素材30の形状を示す図である。芯金素材30はステンレス鋼の板材を打ち抜き加工によって形成した素材であり、中央孔303が設けられたほぼ円環板状の形状である。芯金素材30の外周形状は、点線で示す円形の外周から図示の4位置に示す切欠301が形成された形状となっている。4位置の切欠301は、円形の外周上で中心に対して対称な位置に形成されている。
【0040】
芯金素材30の切欠301の部分の形状は、芯金素材301の外周を構成する円弧形状に滑らかに連続している。4位置の切欠301により、芯金素材30は花弁が4弁の花のような形状となっている。これらの切欠301のうち互いに隣接する2組の切欠301の内周側の頂点を結ぶ直線E,E(破線で示す)より外周側の芯金素材30の外周部分が上方に折り曲げられた形状に成形される。その折り曲げられた立上部が芯金31の小径部312となる。
【0041】
また、芯金素材30には貫通孔302が6位置に設けられている。貫通孔302は、芯金31における連通孔313に対応するものである。平板状の芯金素材30は、さらにプレス成形により立体的な形状に成形加工されて、
図5から
図7に示すような芯金31の形状とされる。小径部312としての立上部の形成においても、芯金素材30に切欠301が設けられているため加工性がよい。
【0042】
図9は、ガス弁3の製造手順を示す図である。まず芯金31と弁部材32を一体的に成形する。芯金31には接着剤が塗布され、モールド成形等によって芯金31と弁部材32とが一体的に成形される。芯金31には上面と下面とを連通させる連通孔313(
図5参照)が複数個形成されており、一体成形の際にゴム等の弁部材32が上下面間で相互に流動するとともに、成形後は上下面間を強固に連結する。
【0043】
その後、芯金31と弁部材32の一体成形品に、上方から補強金具33を挿入して、図示のように一体に接続する。補強金具33の内周側の下端部は、接続前は鉛直方向に形成されているが、補強金具33の内周側の下端部を図示のように外側に押し広げる。このように補強金具33の内周側下端部を拡径することにより、補強金具33が芯金31の内周部と一体的に接続され、弁部材32、芯金31および補強金具33が一体のガス弁3となる。
【0044】
図10は、ガス弁3の他の製造手順を示す図である。この製造手順では、まず芯金31と補強金具33とを一体的に接続する。芯金31の上方から補強金具33を挿入して、補強金具33の内周側の下端部を外側に押し広げ、図示のように一体に接続する。その後、芯金31と補強金具33とを一体化した金具に接着剤を塗布し、モールド成形等によって弁部材32を一体的に成形することによりガス弁3となる。
【0045】
以上のように、芯金31の外周部分を上方に折り曲げた立上部により小径部312を形成することにより、小径部に対応する部分の弁部材に過大な力が加わることを防止でき、弁部材の全周にわたりほぼ均等な力が加わるようにできる。これにより、ガス弁3の寿命を大幅に延長することができる。また、弁部材と芯金とを一体成形する際にも、立上部によって弁部材の収縮を抑制でき、弁部材の全周にわたりほぼ均等な収縮量とすることができる。これにより、ガス弁のシール性能を向上させることができる。
【0046】
ガス弁3をフィッティングに組み付けるには、ガス弁3を直線Aの方向に傾斜させて弁座部95中央孔を通過させて行う。専用の作業工具を使用することにより、ガス弁3の取り付け、取り外し、交換の作業を簡単に行うことができる。本発明のフィッティングでは、交換等の保守作業が必要な部品はガス弁3のみであり、ガス弁3の交換作業も簡単に行うことができるため、保守作業のためのコストを大幅に低減することができる。
【0047】
以上のように、本発明によれば、ビール樽の口金に取付部と弁座部が一体に設けられているので、口金と取付部材の上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、ガス弁の交換作業も容易に行うことができるので、メインテナンス作業を大幅に軽減することができる。
【0048】
そして、芯金31の立上部により小径部312を形成することにより、ガス弁3の寿命を大幅に延長することができるとともに、ガス弁のシール性能を向上させることができる。また、芯金31を4弁の花形状の素材から成形することにより、加工性が向上して低コストでガス弁を製造することができる。さらに、芯金の小径部を形成するための折り曲げ部分の断面形状が滑らかな曲線形状をなすものでは、小径部312を形成する際の折り曲げの曲率が小くなり、立上部として形成された小径部312の近傍でも、過大な応力集中が発生せず、芯金31の強度、寿命および信頼性が向上する。
【0049】
なお、以上の実施の形態では、飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例に挙げて説明したが、それ以外の任意の飲料と飲料容器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、口金と取付部材との間隙が存在しないので異物や汚水等の侵入も発生せず衛生的に優れた飲料容器用フィッティングを低コストで提供し、飲料容器用フィッティングのメインテナンス作業を大幅に軽減することができる。また、ガス弁の寿命を大幅に延長することができるとともに、ガス弁のシール性能を向上させることができ、さらに、ガス弁の製造コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0051】
3 ガス弁
4 ビール弁
5 ダウンチューブ
6,7 コイルばね
9 ビール樽
22 係合突起
30 芯金素材
31 芯金
32 弁部材
33 補強金具
93 口金
94 取付部
95 弁座部
301 切欠
302 貫通孔
303 中央孔
311 定径部
312 小径部
313 連通孔