(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930715
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】生体細胞に類する物質のミクロンサイズの検体との間において制御可能な様式で液体を交換するためのプローブ装置
(51)【国際特許分類】
G01Q 60/24 20100101AFI20160526BHJP
G01Q 60/38 20100101ALI20160526BHJP
G01Q 80/00 20100101ALI20160526BHJP
G01R 1/06 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
G01Q60/24
G01Q60/38 101
G01Q80/00 121
G01R1/06 Z
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-520366(P2011-520366)
(86)(22)【出願日】2009年7月24日
(65)【公表番号】特表2011-529190(P2011-529190A)
(43)【公表日】2011年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2009005393
(87)【国際公開番号】WO2010012423
(87)【国際公開日】20100204
【審査請求日】2012年6月1日
【審判番号】不服2014-11348(P2014-11348/J1)
【審判請求日】2014年6月16日
(31)【優先権主張番号】08013528.8
(32)【優先日】2008年7月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506110634
【氏名又は名称】イーティーエイチ・チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】ギャビ, ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレシュ, ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】ザンベッリ, トマソ
(72)【発明者】
【氏名】ベーア, パスカル
【合議体】
【審判長】
郡山 順
【審判官】
▲高▼見 重雄
【審判官】
松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第1990626(EP,A1)
【文献】
特開平10−30921(JP,A)
【文献】
特開2002−156323(JP,A)
【文献】
米国特許第6322683(US,B1)
【文献】
特開2004−20221(JP,A)
【文献】
特開平9−251979(JP,A)
【文献】
特開2006−145510(JP,A)
【文献】
特開2008−79608(JP,A)
【文献】
Nicolaie Moldovan et al.,Design and Fabrication of a Novel Microfluidic Nanoprobe,JOURNAL OF MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS,2006.02.,VOL. 15, NO. 1,pp. 204−213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q10/00−90/00
G01R1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡(34)に接続して、制御可能な態様で液体を、生体細胞に類する物質のミクロンサイズの検体と交換するためのプローブ装置(10b、d)であって、
少なくとも1つの組込み型の第1のチャネル(18)を有するプローブホルダ(11)と、
少なくとも1つの組込み型の第2のチャネル(15)を有するカンチレバー(12)と、
を備え、
前記カンチレバー(12)が、前記第1のチャネル(18)と前記第2のチャネル(15)との間における液体の液密状態での移送が可能となるように、前記第1のチャネル(18)の少なくとも1つの孔が前記第2のチャネル(15)の少なくとも1つの孔に接続される態様で、前記プローブホルダ(11)に装着されるよう設けられている、プローブ装置(10b、d)において、
前記カンチレバー(12)が、前記第1のチャネル(18)と形を合わせる取付け態様で前記プローブホルダ(11)の側方表面から前記プローブホルダ(11)に永続的に装着されて、事前組立されたプローブユニット(10b、d)を形成し、
前記カンチレバー(12)が、接着接合部(27)または溶接接合部(28)により前記プローブホルダ(11)に装着され、
前記カンチレバー(12)が、超微細加工され、Si、SiO2、SiN、GaAs、SiGe、ポリマー材料、ベンゾシクロブテン(BCB)、ベンゾシクロブテン(BCB)、パリレン、ポリアミド、アクリル樹脂(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、液晶ポリマー(LCP)、液晶エラストマー(LCE)、過フッ化炭化水素、圧電性ポリマー、機能性ヒドロゲル、ポリウレタン、ノボラックの中の1つから作製され、
前記少なくとも1つのプローブホルダチャネル(18)が2つの孔にて前記プローブホルダ(11)の側方表面で終端し、前記2つの孔の一方が前記第2のチャネル(15)の少なくとも1つの孔に接続され、前記2つの孔の他方が液体搬送手段に接続されることを特徴とする、プローブ装置(10b、d)。
【請求項2】
前記液体搬送手段が、液体のためのリザーバであることを特徴とする、請求項1に記載のプローブ装置。
【請求項3】
シール材料が、前記カンチレバー(12)と前記プローブホルダ(11)との間に配置されることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載のプローブ装置。
【請求項4】
前記シール材料が、150GPa未満のヤング率を有する液体適合性の弾性材料を含むことを特徴とする、請求項3に記載のプローブ装置。
【請求項5】
前記弾性材料が、0.01GPa〜0.2GPaのヤング率を有することを特徴とする、請求項4に記載のプローブ装置。
【請求項6】
前記カンチレバー(12)と前記プローブホルダ(11)との間の前記弾性材料が、ポリマーであることを特徴とする、請求項4又は5に記載のプローブ装置。
【請求項7】
前記ポリマーが、カルレッツ(登録商標)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ビニルアセテート、アクリレート、ポリアミド、アセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(塩化ビニリデン)、エポキシ、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、天然ゴムの中の1つであることを特徴とする、請求項6に記載のプローブ装置。
【請求項8】
前記カンチレバー(12)と前記プローブホルダ(11)との間の前記弾性材料が、金属、又はPb、Zn、Sn、In、Sb、若しくはAgを含む金属合金であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のプローブ装置。
【請求項9】
前記プローブホルダ(11)が、光透過性であり、レーザベースの力フィードバックのアクセスを含む、前記カンチレバー(12)への光学的アクセスを可能にすることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプローブ装置。
【請求項10】
前記カンチレバー(12)が先端部(14)を有し、前記第2のチャネル(15)が2つの孔(16、17)を有し、前記2つの孔(16、17)の一方が前記カンチレバー(12)の前記先端部(14)の先端に位置し、前記2つの孔(16、17)の他方が前記プローブホルダ(11)の前記少なくとも1つの孔(19)に接続されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプローブ装置。
【請求項11】
前記プローブホルダ(11)が内蔵型液体リザーバ(31)を備え、前記内蔵型液体リザーバ(31)が前記プローブホルダ(11)の前記第1のチャネル(18)に接続されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプローブ装置。
【請求項12】
前記プローブホルダが圧力チャンバを備え、前記圧力チャンバは、中空の前記カンチレバー(12)及び先端部開口を介して前記リザーバから液体を押し出すために使用される、又は前記先端部(14)から前記カンチレバー(12)若しくは前記プローブホルダ(11)内の内蔵型液体リザーバ内に液体を吸入して戻すために使用される圧力を制御するための内蔵型液体リザーバを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプローブ装置。
【請求項13】
前記内蔵型液体リザーバ及び/又は前記圧力チャンバが、圧力制御装置に接続されることを特徴とする、請求項12に記載のプローブ装置。
【請求項14】
前記カンチレバーチャネル(15)が、0.1μm〜1mmの幅及び高さを有し、1μm〜10mmの長さを有する内部寸法を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプローブ装置。
【請求項15】
前記カンチレバーチャネル(15)が、1μm〜100μmの幅及び高さを有する内部寸法を有することを特徴とする、請求項14に記載のプローブ装置。
【請求項16】
前記カンチレバーチャネル(15)が、20μm〜1mmの長さを有する内部寸法を有することを特徴とする、請求項14又は15に記載のプローブ装置。
【請求項17】
走査型プローブ顕微鏡において、プローブとして、請求項1〜16のいずれか一項に記載の前記プローブ装置の使用。
【請求項18】
走査型プローブ顕微鏡がレーザ又はピエゾ抵抗効果に基づく力フィードバックシステムを有する、請求項17に記載の前記プローブ装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体細胞等々に類する物質のミクロンサイズの検体との間において制御される様式で液体を交換するためのシステムの分野に関する。本発明は、請求項1のプリアンブルによる、特に走査型プローブ顕微鏡に接続して、生体細胞に類する物質のミクロンサイズの検体との間において制御可能な様式で液体を交換するためのプローブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の表面を調査し、その特徴を非破壊的な態様で明らかにするために、特に走査型力顕微鏡の形態の走査型プローブ顕微鏡を使用することが当技術においてよく知られている(例えば米国特許第7,114,405号を参照)。試料を調査するために使用されるプローブの設置は、走査型プローブ顕微鏡の作動に関して決定的な重要性を有する。いずれの走査型プローブ顕微鏡においても、プローブは、測定されるそれぞれの物理的変数が試料とプローブの測定先端部との間の距離に依拠して検出され得るように、固定されなければならない。1つのタイプの走査型プローブ顕微鏡が、走査型力顕微鏡であり、この走査型力顕微鏡では、ばねポールが、カンチレバーと通常呼ばれるプローブとして使用される。このカンチレバーの一方の端部には、測定先端部が存在する。プローブ(カンチレバー)は、好ましくはケイ素から構成されるが、窒化ケイ素又はダイヤモンドなどの他の材料が使用されてもよい。一般的には、測定先端部を備えるカンチレバーは、時としてベース又はプローブホルダと呼ばれる基板の上に設置される。このカンチレバーを適切に設置するには、それ相応の様々な要件をさらに満たさなければならない。走査型プローブ顕微鏡におけるカンチレバーの2種類の設置法が、当技術において知られている。それらの中の1つによれば、カンチレバーは、接着接合により装着されるか、又は、接着特性を有する液体により保持される。第2のタイプの既知の設置法は、完全に機械的なものであり、通常はばねにより具現化される。接着剤によるカンチレバーの固定は、多くの走査型プローブ顕微鏡について適していない。その理由は、最も多く用いられる接着材料が、プローブとそのプローブが固定される保持部材との間に長期間持続する接合をもたらし、この接合が、溶剤によってしか切り離すことができないためである。さらに、接着材料を使用することは、液体中で走査型プローブ顕微鏡を作動させることに対して非常に危険である。その理由は、中にプローブが置かれる液体が、接着材料との相互作用により引き起こされる化学的変化を被る場合があるためである。そのため、何らかのばねによる保持を用いた機械的固定が、多くの場合に選択される(本出願の
図1を参照)。
【0003】
さらに、例えば生物学的物質などを構成する例えば流体環境などの中において、物質のミクロンサイズの検体の分析及び/又は操作を実施するために駆動装置によって制御可能であり得る、マイクロチャネルを備えるカンチレバープローブ装置を使用することが、当技術においてよく知られている(欧州特許出願公開第1990626号を参照)。このカンチレバープローブ先端部は、生体組織や、小嚢、細胞膜及びその一部、脂質二重層膜、及び人工脂質二重層膜を含む個々の細胞並びにその要素などの、生物学的物質の検体の例えば静止モード及び走査モードなどの様々なモードに応じた電気生理学的検査を実施するためなどに使用することができる。このマイクロチャネルは、電気生理学的検査が実施されるまさにその範囲において、流体を放出し、検体を収集するのを可能にする。かかるカンチレバープローブ装置の主な用途の1つは、力制御されるカンチレバープローブ先端部による細胞質の細胞間注入又は検体採取、細胞外薬物放出、又は細胞の相対的にごく近接した位置における周囲緩衝液の検体採取など、細胞生物学に関連している。
【0004】
しかし、走査型プローブ顕微鏡と共に、内部マイクロチャネルを有する超微細加工されたカンチレバーを使用する際には、カンチレバーが正確な位置において適切なプローブホルダにしっかりと固定されるように、前記プローブホルダ上にカンチレバーを設置する必要がある。それと同時に、(外部又は内部の)液体リザーバとプローブ探査すべき検体との間での規定の圧力下における液体の交換が可能となるように、カンチレバーとプローブホルダとの間を液密に接続しなければならない。これは、実験室の通常の環境においては困難な課題であり、カンチレバーに損傷を引き起こす、又はカンチレバーとプローブホルダとの間において圧力に耐える接続が得られない結果となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、使用が容易であり、カンチレバーの位置決め及び液圧的な接続に関する不良を解消するプローブ装置を提供することである。
【0006】
本発明によれば、カンチレバーが、前記プローブホルダに永続的に装着されて、事前組立されたプローブユニットを形成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記カンチレバーが、ぴったりと形を合わせる取付態様で(in form fitting manner)前記プローブホルダに装着される。この取付けにより、プローブホルダに対するカンチレバーの位置決め及びシール密封が容易になる。
【0008】
本発明の別の実施形態によれば、前記カンチレバーが、接着接合部により前記プローブホルダに装着される。この接着接合部は、空間節約的であり、適用が簡単であり、シール部として使用することができる。この接着剤は、この接合部を通り流れる液体との適合性を有するように選択することが可能である。しかし、この接着剤は、追加のシール手段と組み合わされてもよい。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、前記カンチレバーが、溶接接合部により前記プローブホルダに装着される。このカンチレバーは、プローブホルダ材料と直接的に溶接されてもよく、又は、カンチレバーとプローブホルダとの間に追加の化合物(金属又はポリマーの)を付加することによって溶接されてもよい。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、シール材料が、前記カンチレバーと前記プローブホルダとの間に概して配置されてよい。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、前記シール材料が、150GPa未満の、好ましくは0.01GPa〜0.2GPaの間のヤング率を有する液体適合性の弾性材料を含む。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、カンチレバーとプローブホルダとの間の弾性材料が、ポリマーであり、特に、カルレッツ(KALREZ)(登録商標)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ビニルアセテート、アクリレート、ポリアミド、アセタール樹脂、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレン、プロピレンブチレン…)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、シリコーン、ポリイソブチレン、エポキシ、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、天然ゴム、又は任意の同様のものの中の1つである。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、カンチレバーとプローブホルダとの間の弾性材料が、金属、又はPb、Zn、Sn、In、Sb、若しくはAgを含む金属合金である。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、前記カンチレバーが、超微細化工され、Si、SiO2、SiN、GaAs、SiGe、若しくはポリマー材料、ベンゾシクロブテン(BCB)、ベンゾシクロブテン(BCB)、パリレン、ポリアミド、アクリル樹脂(PMMA)、ポリジメチルシロキサンPDMS、液晶ポリマー(LCP)、液晶エラストマー(LCE)、過フッ化炭化水素、圧電性ポリマー、機能性ヒドロゲル、ポリウレタン、又はノボラックの中の1つから作製される。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、プローブホルダが、光透過性であり、レーザベースの力フィードバックのアクセスを含む、カンチレバーへの光学的アクセスを可能にする。かかるプローブホルダにより、このプローブユニットが走査型プローブ顕微鏡に設置された場合に、この走査型プローブ顕微鏡の力フィードバック性能を利用することが可能となる。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、カンチレバーが、先端部を有し、前記第2のチャネルが、2つの孔を有し、これらの2つの孔の一方が、カンチレバーの先端部の先端に位置し、これら2つの孔の他方が、プローブホルダの少なくとも1つの孔に接続される。かかるカンチレバーにより、試料との間における液体の交換が、最高の精度で行ない得るようになる。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つのプローブホルダチャネルが、2つの孔にて少なくとも終端し、これらの2つの孔の一方が、カンチレバー孔に接続され、これらの2つの孔の他方が、液体搬送手段、特に液体のためのリザーバに接続される。
【0018】
特に、前記プローブホルダが、内蔵型リザーバを備え、この内蔵型リザーバが、前記プローブホルダの前記第1のチャネルに接続される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、プローブホルダが、中空カンチレバー及び先端部開口を介してリザーバから液体を押し出すために、又は先端部からカンチレバー若しくはプローブホルダ内の内蔵型リザーバ内に液体を吸入して戻すために使用される、圧力を制御するための、少なくとも1つの内蔵型液体リザーバを含む圧力チャンバを備える。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、前記内蔵型液体リザーバ及び/又は前記圧力チャンバが、圧力制御装置に接続される。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、カンチレバーチャネルが、0.1μm〜1mmの間の、好ましくは1μm〜100μmの間の幅及び高さを有し、1μm〜10mmの間の、好ましくは20μm〜1mmの間の長さを有する内部寸法を有する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、前記カンチレバーが、好ましくは少なくとも1つのばね、クランプ、又はねじを使用して、機械力及び/又は磁気力によって前記プローブホルダに永続的に装着される。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、プローブホルダが、プローブユニットの設置の際の様々な要素の正確な位置決めのために、特に溝の形態の位置決め手段を含む。
【0024】
本発明によれば、本発明のプローブ装置が、好ましくはレーザ又はピエゾ抵抗効果に基づく力フィードバックシステムを有する走査型プローブ顕微鏡において、プローブとして適用される。
【0025】
以下、種々の実施形態を用いて、及び図面を参照として、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ばねによりプローブホルダに取外し可能に装着されたカンチレバーの構成を示す図である。
【
図2】カンチレバーがプローブホルダの下方側部にてプローブホルダに接着によって装着されている、本発明によるプローブユニットの第1の実施形態を示す図である。
【
図3】カンチレバーが形を合わせる取付け及びシール密封の態様でプローブホルダに装着されている、本発明によるプローブユニットの第2の実施形態を示す図である。
【
図4】カンチレバーが溶接によりプローブホルダの下方側部にてプローブホルダに装着されている、本発明によるプローブユニットの第3の実施形態を示す図である。
【
図5】カンチレバーが溶接により形を合わせる取付け及びシール密封の態様でプローブホルダに装着されている、本発明によるプローブユニットの第4の実施形態を示す図である。
【
図6】プローブホルダが外部チューブにより外部圧力制御装置に接続されている、
図4と同様の本発明によるプローブユニットの第5の実施形態を示す図である。
【
図7】プローブホルダが、内蔵型リザーバを備え、上方側部にて圧力チャンバを担持し、この圧力チャンバが、外部チューブにより外部圧力制御装置に接続されている、本発明によるプローブユニットの第6の実施形態を示す図である。
【
図8】プローブホルダ中の内蔵型リザーバが、カバーによって閉鎖され、外部チューブによって外部圧力制御装置に接続されている、本発明によるプローブユニットの第7の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
原子間力顕微鏡(AFM)の作動モードにより着想を得て、超微細加工されたチャネルを有するカンチレバー、すなわち力制御による液体の吐出及び収集が可能となるように組込み型チャネルを有するカンチレバーが、使用されている。
図1に示されるように、チャネルを有するカンチレバー12は、プローブホルダ11への設置及び液体送出又は収集システム(液体搬送手段25)への接続を可能にするチップの一部である。カンチレバー12の組込み型チャネル15は、カンチレバー12の中空先端部14から始まり、チップ本体13にて終端する。その結果、2つの孔16及び17が、チャネル15の両方の端部に位置することが予期される。すなわち、第1の孔(17)が、チップ本体13の表面に、及び第2の孔(16)が、カンチレバー12の表面に位置することが予期される。最終的に、カンチレバーは、中空先端部14を備えてよく、この場合には、第2の孔(16)は、
図1に示されるように先端部14の表面に位置する。
【0028】
他方において、プローブホルダ11は、プローブホルダ11の外部表面にて孔19及び20で両側が終端する組込み型チャネル18を有するように、製造される。カンチレバーチップ12及びプローブホルダ11は、カンチレバーチップ12上の孔17と、プローブホルダ11の2つの孔19、20の中の一方とが合致するように、位置合わせされる。さらに、カンチレバーチップ12及びプローブホルダチャネル18は、ばね22又は他の手段により共にクランプ固定される。ポリマーを付着させて、カンチレバーチップ12とプローブホルダ11との間をシールするためのOリング状構造体又はシール部23を形成する。
【0029】
このポリマーは、カルレッツ(登録商標)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ビニルアセテート、アクリレート、ポリアミド、アセタール樹脂、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレン、プロピレンブチレン…)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、シリコーン、ポリイソブチレン、エポキシ、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、天然ゴム、又は任意の同様のものであることが可能である。さらに、このポリマーは、補強のために、粒子、ビード、又は繊維を最終的に添加されてもよい。プローブホルダ11の他方の孔20は、外部チューブ21によって液体リザーバ又は他のものなどあらゆるものに接続させることが可能である。
【0030】
外部液体リザーバを有する代わりに、プローブホルダ内にリザーバを内蔵させることも可能である。
図7の実施形態においては、プローブユニット10fのプローブホルダ11は、内蔵型リザーバ31を備え、この内蔵型リザーバ31は、一方側においてプローブホルダ11のチャネル18に接続され、他方側において圧力チャンバ29に接続される。この圧力チャンバ29は、キャップ30の内部であり、このキャップ30は、プローブホルダ11の上に位置し、シール部23によってシールされる。
図8の実施形態においては、内蔵型リザーバ31は、シールカバー32によって直接的に覆われる。これにより、ユーザは、内蔵型リザーバ31内に少量の液体を容易にピペット分注することが可能となる。内蔵型リザーバ31は、液体リザーバ31の内部の正圧又は負圧を制御するために、外部チューブ21によって、直接的に又は圧力チャンバ29を経由して、外部圧力制御装置(
図8においてはプローブユニット10g中の33)に接続させることが可能である。このようにして、選択された圧力で液体を噴出させることが可能となり、又は、局所の液体検体を中空カンチレバー12若しくは液体リザーバ31内に吸入することが可能となる。
【0031】
このようにして、連続した流体経路が、カンチレバー12の孔16から、最終的にプローブホルダ11又は内蔵型液体リザーバ31に接続される外部チューブ21にまで確立される。AFMの力制御により、チャネルを有するカンチレバー12のあらゆる物体に対する接近が可能となり、流体経路15、18を満たしている液体を先端部孔16から局所的に吐出することが可能となる。
【0032】
事前組立されたプローブユニットを形成するために、カンチレバー12は、接着剤27でプローブホルダ11の下方側部に接着接合することにより(
図2におけるプローブユニット10a)、又は形を合わせる取付け態様で側部から(
図3におけるプローブユニット10b)、プローブホルダ11に装着させることが可能である。さらに、カンチレバー12は、溶接部28によってプローブホルダ11の下方側部に装着されてもよく(
図4におけるプローブユニット10c)、又は、形を合わせる取付け態様で側部からプローブホルダ11に溶接されてもよい(
図5におけるプローブユニット10d)。
図4の溶接されたプローブユニットは、外部チューブ21によって外部圧力制御装置(
図8における33)に接続されてもよい(
図6におけるプローブユニット10e)。さらに、生体細胞の電気生理学の計測のために使用される中空カンチレバー12を通る電流を測定するために、電極(
図8における35)をリザーバ31内に組み込むことが可能である。
【0033】
カンチレバー12は、先端部14に開口16を有する中空の棒であることが可能であり、又は、角錐型若しくは半球型などのより複雑な構造体を装着させることが可能である。角錐型又は半球型の他に、チューブ形状先端部をカンチレバー12に設けてもよい。
【0034】
プローブホルダ11は、走査型プローブ顕微鏡又はAFMの上への迅速な設置を可能にするレール/スライドを有する引出しのように設計することが可能である。
【0035】
[実施例]
ポリカーボネートから作製された市販のAFMプローブホルダ内に、チャネルを穿孔した。このチャネルは、2つの孔で終端し、一方の孔は、プローブホルダの下部表面(下方側部)に、他方の孔は、プローブホルダの側方表面に位置していた。側方の孔は、チューブ類を介して液体リザーバに接続した。プローブホルダの下部ベースの孔は、マイクロチャネルを有するカンチレバーチップに接続した。2成分物質(LOT Oriel、SP−90−10)をプローブホルダの下部チャネル孔の上に付着させて、Oリング状シール構造体を形成した。さらに、このシール部は、実験の際にチャネルに満たされる液状溶液と適合性のある任意の弾性材料から作製することが可能であった。このシール部の内径は、下部孔の直径と優先的に等しいものとし、その外径は、カンチレバーを含むチップ本体上のチャネル開口よりも大きなものとした。プローブホルダの上に最終的に存在する溝(
図1における26)又は印にしたがってチップ本体を位置合わせし、この場合においては金属ばねにより加えた力によって、シール部に対してチップ本体が押圧されるようにした。この力は、例えばねじを含む任意の他の機械的デバイスによって、又は磁気構成要素を含むデバイスによって加えることも可能であった。
【符号の説明】
【0036】
10、10a〜g プローブユニット
11 プローブホルダ
12 カンチレバー(チャネルを有する)
13 本体
14 先端部
15、18 チャネル
16、17 孔
19、20 孔
21 チューブ(外部の)
22 ばね
23 シール部
24 凹部
25 液体搬送手段(例えばリザーバ、等々)
26 溝
27 接着剤
28 溶接部
29 圧力チャンバ
30 キャップ
31 リザーバ(内蔵型)
32 カバー
33 圧力制御装置
34 走査型プローブ顕微鏡
35 電極