特許第5930718号(P5930718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5930718-水硬性材料用収縮低減剤 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930718
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】水硬性材料用収縮低減剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/32 20060101AFI20160526BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20160526BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20160526BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20160526BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20160526BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C04B24/32 A
   C04B24/02
   C04B24/16
   C04B24/18 B
   C04B24/22 B
   C08L71/02
【請求項の数】7
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2011-549029(P2011-549029)
(86)(22)【出願日】2011年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2011050164
(87)【国際公開番号】WO2011083839
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2012年6月19日
【審判番号】不服2014-26416(P2014-26416/J1)
【審判請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-74245(P2010-74245)
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-17861(P2010-17861)
(32)【優先日】2010年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-2758(P2010-2758)
(32)【優先日】2010年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【復代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】正長 眞理
(72)【発明者】
【氏名】福原 広二
【合議体】
【審判長】 新居田 知生
【審判官】 中澤 登
【審判官】 大橋 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206403(JP,A)
【文献】 特開2006−206404(JP,A)
【文献】 特開2008−50212(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117372(WO,A1)
【文献】 特開2001−294466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02,40/00-40/06
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のポリオキシアルキレン化合物(A)を必須成分とする水硬性材料用収縮低減剤であって、
該ポリオキシアルキレン化合物(A)が一般式(2)で表され、
−O−(EO)−H (2)
(一般式(2)中、Rは水素原子を表し、EOはオキシエチレン基を表し、mはEOの平均付加モル数を表し、mが80〜1000である。)
該水硬性材料用収縮低減剤を用いたコンクリートの気泡間隔係数が100μm〜300μmである、
水硬性材料用収縮低減剤。
ただし、上記コンクリートの気泡間隔係数は、ジャーマンインストゥルメンツ社製のエアボイドアナライザー(以下、AVAと略す)を用いて、下記の方法によって測定される。
(i)セメントとして、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合したものを用い、細骨材として、掛川産陸砂および君津産陸砂を、重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したものを用い、粗骨材として、青梅産硬質砂岩を用い、該セメントの単位量を320kg/m、該細骨材の単位量を837kg/m、該粗骨材の単位量を942kg/m、水および水硬性材料用収縮低減剤の単位量を170kg/m、水セメント比(W/C)が53%、細骨材率(s/a)が48となる配合割合で、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量する。
(ii)前記粗骨材および使用する半量の前記細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止めて、セメントおよび残りの前記細骨材を投入する。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、前記収縮低減剤を含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出す。なお前記材料の混練の際には、AE剤として、ADEKA社製「アデカネートYES−25」、消泡剤としてADEKA社製「アデカノールLG299」、減水剤としてBASFポゾリス社製「ポゾリスNo.70」を使用して、ポリオキシアルキレン化合物(A)がセメントに対して2重量%となるように前記収縮低減剤を添加し、前記減水剤をセメントに対して0.12重量%となるように添加し、前記AE剤をセメントに対して0.0010重量%となるように添加し、フレッシュコンクリートのスランプ値=16±2cm、空気量=5±1%となるように、前記消泡剤を添加して調整する。
(iii)準備したフレッシュコンクリートから6mm以上の骨材を取り除き、これを気泡間隔係数評価用モルタルとする。この気泡間隔係数評価用モルタルをシリンジに20ml採取する。
(iv)グリセリンおよび水を重量比でグリセリン/水=83/17の割合で混合し、AVA測定用溶液を調製する。
(v)測定用カラムに水を約2000ml注入し、測定用カラム壁面に付着した気泡を刷毛で取り除いた後、AVA測定用溶液250mlを測定用カラムの底部に注入する。注入後、測定用カラムの水面付近に気泡採取用のペトリ皿を設置し、測定部分に固定する。
(vi)シリンジに採取した気泡間隔係数評価用モルタル20mlを測定用カラムの底部に注入した後、このモルタルを30秒間撹拌し、液中にモルタルの連行空気を十分に放出させる。このとき、放出させた気泡を経時で測定することにより、気泡間隔係数を測定する。
(vii)気泡間隔係数の計算に際して、フレッシュコンクリートの空気量以外に、コンクリート全体積より6mm以上の骨材の占める体積を除いた値(モルタル容積率)およびペーストの占める体積(ペースト容積率)が必要となる。モルタル容積率およびペースト容積率は下記の式(I)および(II)より算出する。
モルタル容積率(%)=[(V+V+V)/1000]×100 (I)
ペースト容積率(%)=[(V+V)/1000]×100 (II)
:結合材の体積(=結合材単位量(kg)/結合材の比重)
:水と混和剤の体積(単位水量と同じとする)
:6mm以下の骨材の体積(=細骨材の単位量/細骨材の比重)
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレン化合物(A)が、1価または2価アルコールの活性水素にアルキレンオキシドを付加させた化合物である、請求項に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項3】
さらに減水剤(B)を含み、前記ポリオキシアルキレン化合物(A)と該減水剤(B)との比率が、固形分換算の重量比で、99.9/0.1〜80/20である、請求項1または2に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項4】
さらに、AE剤(C)および消泡剤(D)を含み、AE剤(C)および消泡剤(D)の比率が固形分換算での重量比でAE剤(C)/消泡剤(D)で99/1〜5/95であり、該AE剤(C)の前記水硬性材料用収縮低減剤中の含有割合が、セメント100重量部に対して、固形分換算で、0.000001〜10重量%であり、該消泡剤(D)の前記水硬性材料用収縮低減剤中の含有割合が、セメント100重量部に対して、固形分換算で、0.000001〜10重量%である、請求項1からまでのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン化合物(A)の重量平均分子量が4000を超える、請求項1からまでのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項6】
前記AE剤(C)がポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であり、前記ポリオキシアルキレン化合物(A)と前記AE剤(C)を、重量比で(A)/(C)=400〜4000の比率で含有する、請求項4または5に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項7】
さらに、一般式(3)で表されるポリオキシアルキルエーテル(E)を含み、前記ポリオキシアルキレン化合物(A)と該ポリオキシアルキルエーテル(E)とを、重量比で(A)/(E)=50/50〜90/10の比率で含有する、請求項1からまでのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。
−O−(AO)−R (3)
(一般式(3)中、Rは炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、pはAOの平均付加モル数を表し、pが2〜30である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料用収縮低減剤に関する。詳細には、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与することができる水硬性材料用収縮低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。水硬性材料は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない材料である。
【0003】
水硬性材料は、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、硬化物の内部に残った未反応水分の散逸を起こす。このため、乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じ、強度や耐久性が低下するという問題がある。土木・建築構造物の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大など、重大な問題が生じる。
【0004】
このような問題に対し、法規制が強化されてきている。1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となっている。2009年2月に改訂された、鉄筋コンクリート造に関する建築工事標準仕様書(JASS 5(日本建築学会))では、耐用年数が長期(100年以上)にわたるコンクリートにおける26週での収縮ひずみが800×10−6以下に規制されている。
【0005】
最近、コンクリート硬化物の乾燥収縮を低減させる方法として、水硬性材料用収縮低減剤が重要視されている。上記JASS 5の改訂と同時に、水硬性材料用収縮低減剤に関する建築学会基準も制定された。
【0006】
水硬性材料用収縮低減剤として、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、2〜8価の多価アルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物(特許文献2参照)、低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献4参照)、低分子アルコール類(特許文献5参照)、2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物(特許文献6参照)が報告されている。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリートに使用した場合に強度が低下するという問題がある。このため、強度を保つためにセメントペースト分の割合を高くする必要があり、コンクリートコストが高くなるという問題が生じる。
【0007】
コンクリートに使用した場合の強度低下を抑制し得る水硬性材料用収縮低減剤として、2〜8価の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物が報告されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、いずれも、粉末樹脂、膨張材などの他の混和材料との組み合わせが必要となっており、コンクリートコストが高くなるという問題は解決できていない。
【0008】
さらに、これらの水硬性材料用収縮低減剤を使用したコンクリート硬化物では、耐凍結融解性が著しく低下する問題がある。このために、これらの水硬性材料用収縮低減剤を寒冷地で使用することが困難であり、これらの水硬性材料用収縮低減剤が市場へ普及することが大きく妨げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭56−51148号公報
【特許文献2】特公平1−53214号公報
【特許文献3】特公平1−53215号公報
【特許文献4】特開昭59−152253号公報
【特許文献5】特公平6−6500号公報
【特許文献6】特許第2825855号公報
【特許文献7】特開平9−301758号公報
【特許文献8】特開2002−68813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、膨張材、粉末樹脂および石灰骨材など、従来から多用されているひび割れ抑制や乾燥収縮を低減するための他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できる、水硬性材料用収縮低減剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、1種以上のポリオキシアルキレン化合物(A)を必須成分とする水硬性材料用収縮低減剤であって、該水硬性材料用収縮低減剤を用いたコンクリートまたはモルタルの気泡間隔係数が350μm以下である。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、さらに減水剤(B)を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、さらに、AE剤(C)および消泡剤(D)を含み、AE剤(C)および消泡剤(D)の比率が固形分換算での重量比でAE剤(C)/消泡剤(D)で99/1〜5/95である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレン化合物(A)の重量平均分子量が4000を超える。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレン化合物(A)が一般式(1)で表わされる。
RO−(AO)−H (1)
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは80〜1000である。)
【0016】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレン化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基の50mol%以上がオキシエチレン基である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレン化合物(A)が一般式(2)で表される。
−O−(EO)−H (2)
(一般式(2)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、mはEOの平均付加モル数を表し、mが80〜1000である。)
【0018】
好ましい実施形態においては、上記減水剤(B)が、リグニンスルホン酸塩、ポリオール誘導体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、およびポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記AE剤(C)がポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であり、上記ポリオキシアルキレン化合物(A)と上記AE剤(C)を、重量比で(A)/(C)=400〜4000の比率で含有する。
【0020】
好ましい実施形態においては、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、さらに、一般式(3)で表されるポリオキシアルキルエーテル(E)を含み、前記ポリオキシアルキレン化合物(A)と該ポリオキシアルキルエーテル(E)とを、重量比で(A)/(E)=50/50〜90/10の比率で含有する。
−O−(AO)−R (3)
(一般式(3)中、Rは炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、pはAOの平均付加モル数を表し、pが2〜30である。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、膨張材、粉末樹脂および石灰骨材など、従来から多用されているひび割れ抑制や乾燥収縮を低減するための他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できる、水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】モルタルによる自己ひずみの測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪1.水硬性材料用収縮低減剤≫
本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いたコンクリートまたはモルタルの気泡間隔係数は350μm以下であり、好ましくは330μm以下であり、より好ましくは100〜320μmであり、さらに好ましくは100〜300μmである。本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いたコンクリートまたはモルタルの気泡間隔係数が350μm以下であれば、得られるコンクリート硬化物に優れた耐凍結融解性を付与でき、より幅広い環境での耐久性を向上させたコンクリート硬化物を得ることができる。気泡間隔係数は、コンクリートまたはモルタルの空気量によりその値が変わり得るため、コンクリートの空気量が5±1vol%の範囲内、モルタルの空気量が3.0〜6.0vol%の範囲内で測定する。
【0024】
<1−1.ポリオキシアルキレン化合物(A)>
水硬性材料用収縮低減剤に含まれるポリオキシアルキレン化合物(A)としては、1価以上のアルコールの活性水素にアルキレンオキシドを付加させた化合物が挙げられる。このようなポリオキシアルキレン化合物としては、好ましくは、1価または2価アルコールの活性水素にアルキレンオキシドを付加させた化合物である。水硬性材料用収縮低減剤に含まれるポリオキシアルキレン化合物(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量(Mw)が、好ましくは4000を超え、より好ましくは4500〜500000、さらに好ましくは4500〜300000、特に好ましくは5000〜100000である。重量平均分子量(Mw)が4000以下であると、本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる収縮低減機能および耐凍結融解性を付与する効果が十分に発揮されず、さらにコンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0025】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に含まれるポリオキシアルキレン化合物(A)の5重量%水溶液(固形分換算)の表面張力は、好ましくは55m〜65mN/mであり、より好ましくは55〜63mN/mであり、さらに好ましくは55〜62mN/mである。本発明の水硬性材料用収縮低減剤に含まれるポリオキシアルキレン化合物(A)の5重量%水溶液(固形分換算)の表面張力が55m〜65mN/mであれば、得られるコンクリート硬化物に優れた耐凍結融解性を付与でき、より幅広い環境での耐久性を向上させたコンクリート硬化物を得ることができる。
【0026】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に用いられるポリオキシアルキレン化合物(A)としては、任意の適切なポリオキシアルキレン化合物を用いることができる。このようなポリオキシアルキレン化合物としては、好ましくは、一般式(1)で表わされるポリオキシアルキレン化合物である。
RO−(AO)−H (1)
【0027】
一般式(1)において、Rは水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは、Rは水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基である。Rが水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基であることによって、例えば、消泡剤(C)およびAE剤(D)を併用する際に、コンクリート中への連行空気の量および質の調整を容易に行うことが可能となり、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与することができる。
【0028】
一般式(1)において、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。具体的には、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。上記の範囲の炭素原子数を有するオキシアルキレン基を用いることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は水に良好に溶解し得る。AOは、1種類のみのオキシアルキレン基でも良いし、2種以上のオキシアルキレン基でも良い。2種以上のオキシアルキレン基の場合、(AO)はランダム配列でもブロック配列でもよい。
【0029】
一般式(1)において、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わす。一般式(1)において、nは80〜1000であり、好ましくは100〜700であり、より好ましくは100〜500であり、さらに好ましくは100〜400である。nが80〜1000であることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0030】
一般式(1)で表わされるポリオキシアルキレン化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、ペンチルオキシポリエチレングリコール、ヘキシルオキシペンチルオキシポリエチレングリコール、オクチルオキシペンチルオキシポリエチレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレングリコールなどの低級アルコールおよび炭素原子数8以上の高級アルコールのオキシエチレン付加物;メトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、エトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、プロポキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ブトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ペンチルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ブトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ヘキシルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ヘキシルオキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、オクチルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、オクチルオキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレン/ポリブチレングリコールなどの低級アルコールおよび炭素原子数8以上の高級アルコールのオキシエチレンを必須とする2種以上のオキシアルキレン付加物などが挙げられる。これらの中でも、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与でき、かつ、コストも抑えることができるという点から、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールなどの低級アルコールのオキシエチレン付加物が好ましい。
【0031】
ポリオキシアルキレン化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基のうち、50mol%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、70mol%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90mol%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、95mol%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。ポリオキシアルキレン化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基の50mol%以上がオキシエチレン基であれば、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与でき、さらに、強度低下を抑制することができる。
【0032】
ポリオキシアルキレン化合物(A)は、好ましくは、一般式(2)で表される。
−O−(EO)−H (2)
【0033】
一般式(2)において、Rは水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。Rは、好ましくは水素原子である。
【0034】
一般式(2)において、EOはオキシエチレン基を表し、mはEOの平均付加モル数を表す。一般式(2)において、mは80〜1000であり、好ましくは85〜800であり、より好ましくは90〜500である。mが80〜1000であることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0035】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のポリオキシアルキレン化合物(A)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算の重量比で、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは1〜15重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%であり、特に好ましくは2〜10重量%である。ポリオキシアルキレン化合物(A)の含有割合を0.5〜20重量%にすることにより、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、さらに優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0036】
<1−2.ポリオキシアルキルエーテル(E)>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキルエーテル(E)を含んでいても良い。
【0037】
ポリオキシアルキルエーテル(E)は一般式(3)で表される。
−O−(AO)−R (3)
【0038】
一般式(3)において、Rは炭素原子数1〜8の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基などが挙げられる。Rは、好ましくはプロピル基、ブチル基である。
【0039】
一般式(3)において、Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜8の炭化水素基の具体例としては、Rと同じものが挙げられる。Rは、好ましくは水素原子である。
【0040】
一般式(3)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。AOは好ましくはオキシエチレン基である。一般式(3)中、AOは、1種類のみのオキシアルキレン基でも良いし、2種以上のオキシアルキレン基でも良い。2種以上のオキシアルキレン基の場合、(AO)はランダム配列でもブロック配列でもよい。
【0041】
一般式(3)において、pはAOの平均付加モル数を表す。一般式(3)において、pは2〜30であり、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜6である。pが2〜30の範囲内であれば、ポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(E)の併用により、相乗的に、コンクリート硬化物の強度低下を一層抑制し得るとともに、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0042】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にポリオキシアルキルエーテル(E)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のポリオキシアルキルエーテル(E)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜15重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%である。ポリオキシアルキルエーテル(E)の含有割合を0.5〜20重量%にすることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0043】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にポリオキシアルキルエーテル(E)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキレン化合物(A)およびポリオキシアルキルエーテル(E)を、重量比で、好ましくは(A)/(E)=50/50〜90/10、より好ましくは(A)/(E)=55/45〜85/15、さらに好ましくは(A)/(E)=60/40〜80/20の比率で含有する。(A)/(E)の比率が重量比で上記範囲内に収まることにより、ポリオキシアルキレン化合物(A)およびポリオキシアルキルエーテル(E)を併用することによる相乗効果がより一層発現される。
【0044】
<1−3.減水剤(B)>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、好ましくは、さらに減水剤(B)を含む。減水剤(B)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0045】
減水剤(B)としては、任意の適切な減水剤を採用し得る。このような減水剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩、ポリオール誘導体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、およびポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0046】
ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体としては、例えば、3−メチル3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩が挙げられる。
【0047】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に減水剤(B)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の減水剤(B)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%である。減水剤(B)の含有割合を0.01〜10重量%にすることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0048】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に減水剤(B)が含まれる場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)と減水剤(B)との比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは99.9/0.1〜80/20であり、より好ましくは99.5/0.5〜80/20であり、さらに好ましくは99/1〜85/15である。ポリオキシアルキレン化合物(A)と減水剤(B)との比率が固形分換算の重量比で99.9/0.1〜80/20であることにより、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できる、水硬性材料用収縮低減剤を、より効率的に提供することができる。
【0049】
<1−4.AE剤(C)および消泡剤(D)>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、好ましくは、さらにAE剤(Air Entraining剤)(C)および消泡剤(D)を含む。AE剤(C)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。消泡剤(D)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0050】
AE剤(C)としては、任意の適切なAE剤を採用し得る。AE剤(C)としては、例えば、樹脂石鹸、飽和または不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートが挙げられる。
【0051】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にAE剤(C)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のAE剤(C)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001〜10重量%であり、より好ましくは0.00001〜5重量%である。AE剤(C)の含有割合を0.000001〜10重量%にすることにより、一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0052】
AE剤(C)としては、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0053】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、好ましくは、一般式(4)で表される。
−O−(EO)−SOM (4)
【0054】
一般式(4)中、Rは炭素原子数8〜18の炭化水素基を表す。炭素原子数8〜18の炭化水素基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。EOはオキシエチレン基を表し、qはEOの平均付加モル数を表す。qは2〜8である。Mは水素原子またはアルカリ金属を表す。
【0055】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にAE剤(C)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシエチレン化合物(A)およびAE剤(C)を、重量比で、好ましくは(A)/(C)=400〜4000、より好ましくは(A)/(C)=430〜3800、さらに好ましくは(A)/(C)=450〜3500の比率で含有する。(A)/(C)の比率が重量比で上記範囲内に収まることにより、一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0056】
消泡剤(D)としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。消泡剤(D)としては、例えば、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤などが挙げられる。これらの中でも、オキシアルキレン系消泡剤が好ましい。
【0057】
鉱油系消泡剤としては、例えば、燈油、流動パラフィン等が挙げられる。
【0058】
油脂系消泡剤としては、例えば、動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0059】
脂肪酸系消泡剤としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0060】
脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等が挙げられる。
【0061】
オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数8以上の高級アルコールや炭素数12〜14の2級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;等が挙げられる。
【0062】
アルコール系消泡剤としては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等が挙げられる。
【0063】
アミド系消泡剤としては、例えば、アクリレートポリアミン等が挙げられる。
【0064】
リン酸エステル系消泡剤としては、例えば、リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等が挙げられる。
【0065】
金属石鹸系消泡剤としては、例えば、アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等が挙げられる。
【0066】
シリコーン系消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等が挙げられる。
【0067】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に消泡剤(D)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の消泡剤(D)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001〜10重量%であり、より好ましくは0.00001〜5重量%である。消泡剤(D)の含有割合を0.000001〜10重量%にすることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0068】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にAE剤(C)と消泡剤(D)が含まれる場合、AE剤(C)と消泡剤(D)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは99/1〜5/95であり、より好ましくは95/5〜10/90であり、さらに好ましくは90/10〜15/85である。AE剤(C)と消泡剤(D)の比率を固形分換算の重量比で99/1〜5/95に制御することにより、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できる、水硬性材料用収縮低減剤を、より効率的に提供することができる。
【0069】
<1−5.pH調整剤>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤には、pH調整剤が含まれていても良い。pH調整剤は、水硬性材料用収縮低減剤のpHを中性付近(pH5〜9)に調整する機能を有する化合物であれば、任意の適切な化合物を採用し得る。本発明の水硬性材料用収縮低減剤にpH調整剤が含まれることにより、ポリオキシアルキレン化合物(A)の変色および変性を抑制する効果が得られ、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の保存安定性が良好となる。
【0070】
pH調整剤としては、例えば、酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などが挙げられる。具体的には、無機酸のアルカリ金属塩、無機酸のアルカリ土類金属塩、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、亜硝酸、炭酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などが挙げられる。pH調整剤としては、好ましくは、酸として、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸およびグルコン酸から選ばれる少なくとも1種であり、酸と組み合わせる金属塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩から選ばれる少なくとも1種である。pH調整剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0071】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にpH調整剤が含まれる場合、pH調整剤とポリオキシアルキレン化合物(A)との比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは、pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物(A)=1/50〜1/1000000であり、より好ましくは、pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物(A)=1/50〜1/100000であり、さらに好ましくは、pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物(A)=1/100〜1/100000であり、特に好ましくは、pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物(A)=1/100〜1/10000である。
【0072】
<1−6.組成>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤がポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む形態である場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占めるポリオキシアルキレン化合物(A)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは85〜99.5重量%であり、より好ましくは90〜99重量%である。ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占めるポリオキシアルキレン化合物(A)の比率が固形分換算の重量比で上記の範囲であることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0073】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤がポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む形態である場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占める減水剤(B)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは0.5〜10重量%であり、より好ましくは1〜8重量%である。ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占める減水剤(B)の比率が固形分換算の重量比で上記の範囲であることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0074】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤がポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む形態である場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占めるAE剤(C)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは0.005〜1重量%であり、より好ましくは0.01〜0.1重量%である。ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占めるAE剤(C)の比率が固形分換算の重量比で上記の範囲であることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0075】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤がポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む形態である場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占める消泡剤(D)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは0.0005〜1重量%であり、より好ましくは0.001〜0.5重量%である。ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)の合計に占める消泡剤(D)の比率が固形分換算の重量比で上記の範囲であることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0076】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤がポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む形態である場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)および減水剤(B)の合計とAE剤(C)および消泡剤(D)の合計の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは99.99/0.01〜90/10であり、より好ましくは99.99/0.01〜95/5であり、さらに好ましくは99.99/0.01〜98/2である。ポリオキシアルキレン化合物(A)および減水剤(B)の合計とAE剤(C)および消泡剤(D)の合計の比率を固形分換算の重量比で上記の範囲内にすることにより、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0077】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤がポリオキシアルキレン化合物(A)、ポリオキシアルキルエーテル(E)、消泡剤(D)を含む形態である場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(E)の合計量と消泡剤(D)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは99.99/0.01〜90/10であり、より好ましくは99.99/0.01〜95/5であり、さらに好ましくは99.99/0.01〜98/2である。水硬性材料用収縮低減剤における、ポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(E)の合計量と消泡剤(D)の比率を固形分換算の重量比で上記の範囲にすることにより、ポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(E)との併用による相乗効果によって、コンクリート硬化物の強度低下を一層抑制し得るとともに、一層優れた収縮低減機能および一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0078】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキレン化合物(A)のみからなっていても良いし、ポリオキシアルキレン化合物(A)と、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)、ポリオキシアルキルエーテル(E)から選ばれる少なくとも1種とからなっていても良い。また、必要に応じて、pH調整剤を含んでいても良い。
【0079】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を含んでいても良い。その他の成分としては、例えば、水、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、ポリアルキレングリコールなどの他の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏などが挙げられる。このようなその他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0080】
しかしながら、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できるという効果を発現できるので、上記に挙げたようなその他の成分は、水を除いて、必要でなければ、特に用いなくても良い。
【0081】
≪2.水硬性材料用収縮低減剤の調製≫
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、任意の適切な方法で調製すれば良い。例えば、ポリオキシアルキレン化合物(A)を必須に用い、これと、必要に応じて、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)、ポリオキシアルキルエーテル(E)、pH調整剤、および任意の他の成分から選ばれる少なくとも1種を、任意の適切な方法で混合すれば良い。混合の順序は、任意の適切な順序を採用し得る。
【0082】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、優れた収縮低減機能と優れた耐凍結融解性を併せ持つ。本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキレン化合物(A)を高濃度に含有し、ポリオキシアルキレン化合物(A)の経時安定性が優れており、分離沈殿することなく相溶性に優れ、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(重量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
【0083】
≪3.コンクリート組成物≫
コンクリート組成物は、本発明の水硬性材料用収縮低減剤とセメントを含む。ここで、コンクリート組成物とは、最終的に、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の各構成成分とセメントを含む組成物となっていれば、その調製過程は問わない。すなわち、コンクリート組成物を構成する各構成成分(本発明の水硬性材料用収縮低減剤の各構成成分、セメント、および、必要に応じてその他の成分)から選ばれる一部を予め混合した後に残りを混合して調製しても良いし、コンクリート組成物を構成する各構成成分の全部を一括で混合しても良い。
【0084】
コンクリート組成物は、好ましくは、骨材および水を含む。骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。なお、細骨材および水を含み、粗骨材を含まないコンクリート組成物を、モルタルと称することがある。
【0085】
セメントとしては、例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントが挙げられる。
【0086】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。
【0087】
粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。
【0088】
水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
【0089】
コンクリート組成物中には、任意の適切な添加剤を加えても良い。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤、粉体が挙げられる。粉体としては、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。
【0090】
コンクリート組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0091】
コンクリート組成物は、そのままコンクリート(フレッシュコンクリート)として用い得る。
【0092】
コンクリート組成物における、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の添加量は、目的に応じて任意の適切な量を採用し得る。例えば、セメント100重量部に対し、0.5〜10.0重量%とすることが好ましい。また、セメント組成物100容量部当たりのセメント容量が14容量%を超える場合は、好ましくはセメント100重量部に対して0.5〜10.0重量%であり、より好ましくは0.5〜6.0重量%である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0094】
≪GPC分子量測定条件≫
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
【0095】
≪表面張力の測定≫
ポリオキシアルキレン化合物の固形分5重量%水溶液を調整し、20℃に調温後、動的表面張力計(SITA Science line t60(MESSTECHNIK社))を使用して表面張力の測定を行った。Frequency0.5Hzでの測定値を表面張力とした。
【0096】
≪コンクリート物性の評価≫
〔コンクリートに添加する各成分の固形分測定〕
コンクリート物性の評価に使用した水硬性材料用収縮低減剤に用いる各成分の固形分を以下の方法で測定した。
1.アルミ皿を精秤した。
2.精秤したアルミ皿に固形分を測定する成分をのせ、精秤した。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に、2.で精秤した成分をアルミ皿ごと1時間入れた。
4.1時間後、アルミ皿および固形分を測定する成分を乾燥機から取り出し、デシケーター内で15分間放冷した。
5.15分後、デシケーターから取り出したアルミ皿および固形分を測定する成分(乾燥後)を精秤した。
6.上記で測定した重量を用いて、以下の式により、固形分を算出した。
固形分(%)={[(上記5の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られたアルミ皿の重量)]/[(上記2の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られたアルミ皿の重量)]}×100
【0097】
〔フレッシュコンクリートの評価〕
得られたフレッシュコンクリートについて、スランプフロー、スランプ値、空気量を以下の方法により測定した。
スランプフロー:JIS A 1150−2001
スランプ値:JIS A 1101−1998
空気量:JIS A 1128−1998
【0098】
〔気泡間隔係数の測定〕
エアボイドアナライザー(AVA;商品名、ジャーマンインストゥルメンツ社製)にて耐凍結融解性の指標となる気泡間隔係数の測定を行った。予め、グリセリン(試薬(和光純薬製))および水を重量比でグリセリン/水=83/17の割合で混合し、AVA測定用溶液を調製した。
ミキサーから取り出されたフレッシュコンクリートの空気量(空気量=5±1vol%)を測定した後、6mm以上の骨材を取り除き、気泡間隔係数評価用モルタルを専用のシリンジに20ml採取した。測定用カラムに水約2000mlを注入し、カラム壁面に付着した気泡を刷毛で取り除いた後、予め上記で調製したAVA測定用溶液250mlを専用の器具を用いてカラムの底部に注入した。注入後、カラムの水面付近に気泡採取用のペトリ皿を設置し、測定部分に固定した。シリンジに採取したモルタル20mlをカラムの底部に注入した後、モルタルを30秒間撹拌し、液中にモルタルの連行空気を十分に放出させた。放出させた気泡を経時で測定することにより、気泡間隔係数を測定した。
気泡間隔係数の計算に際して、フレッシュコンクリートの空気量以外にコンクリート全体積より6mm以上の骨材の占める体積を除いた値(モルタル容積率)およびペーストの占める体積(ペースト容積率)が必要となる。モルタル容積率およびペースト容積率は下記の式(I)および(II)より算出した。
モルタル容積率(%)=[(V+V+V)/1000]×100 (I)
ペースト容積率(%)=[(V+V)/1000]×100 (II)
:結合材の体積(=結合材単位量(kg)/結合材の比重)
:水と混和剤の体積(単位水量と同じとする)
:6mm以下の骨材の体積(=細骨材の単位量/細骨材の比重)
【0099】
〔乾燥収縮低減性の評価〕
得られたフレッシュコンクリートをゲージピン付の10×10×40cmの供試体型枠に入れ、2日間20℃にて封緘養生後脱型した。脱型後、さらに5日間静水中で水中養生した後、乾燥収縮低減性の評価を行った。
乾燥収縮低減性の評価は、JIS A1129−3(モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法 第3部:ダイヤルゲージ方法)に準拠して実施した。
静水中で5日間水中養生後の供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、直ちに供試体の長さを測定し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。測定した長さから、供試体の収縮量を算出し、下記の式から、長さ変化比を算出した。下記の式に示すように、長さ変化比は、基準コンクリートの収縮量に対する、実施例または比較例の収縮低減剤を含む供試体の収縮量の比を表し、値が小さいほど収縮を低減することができることを示す。
長さ変化比
={(実施例または比較例の低減剤を用いたコンクリートの収縮量)/(基準コンクリートの収縮量)}×100
【0100】
〔耐凍結融解性の評価〕
得られたフレッシュコンクリートを10×10×40cmの供試体型枠に入れ、2日間20℃にて封緘養生後脱型した。脱型後、さらに5日間20℃の静水中で養生した後、耐凍結融解性の評価を行った。
耐凍結融解性の評価は、JIS A1148−2001中のA法に従い、30サイクルごとにJIS A1127−2001に従って、一次共鳴振動数および供試体重量を測定することにより実施した。
この際30サイクルごとの耐凍結融解性は、下記の式(III)で示されるように、凍結融解サイクル開始前(0サイクル)の一次共鳴振動数に対する、各サイクル終了時点での一次共鳴振動数から相対動弾性係数を算出し、評価した。凍結融解のサイクルは、最大300サイクルとし、300サイクル以前に相対動弾性係数が60%以下となった場合には、その時点で評価を終了した。最終的な耐凍結融解性は、下記の式(IV)で示す耐久性指数を算出することにより、評価した。相対動弾性係数および耐久性指数は、いずれも100に近いほど、良好な耐凍結融解性を有することを示す。
300サイクル時点での相対動弾性係数が60%以上の場合を○とし、300サイクル時点での相対動弾性係数が60%未満の場合を×とした。
相対動弾性係数(%)=(f/f)×100 (III)
:凍結融解nサイクル後の一次共鳴振動(Hz)
:凍結融解0サイクルの一次共鳴振動(Hz)
耐久性指数=(P×N)/300 (IV)
P:凍結融解Nサイクル時の相対動弾性係数(%)
N:相対動弾性係数(%)が60%以下になった凍結融解サイクル数、または300サイクルのいずれか小さい方
【0101】
≪モルタルによる乾燥収縮低減性の評価および気泡間隔係数の測定≫
〔モルタルの混練〕
所定量の本発明の水硬性材料用収縮低減剤を秤量して水で希釈したもの225g、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450g、セメント強さ試験用標準砂(JIS R5201−1997附属書2の5.1.3に規定:セメント協会)1350gを、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N−50)を用い、JIS R5201−1997の方法に従い、モルタルの混練を行った。
また、モルタル空気量が3〜6vol%となるように、必要に応じて消泡剤(アデカノールLG299)を使用して調整した。
【0102】
〔モルタル空気量の測定〕
モルタル空気量の測定は、500mlメスシリンダーを用い、JIS A1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法))に準拠して実施した。
【0103】
〔乾燥収縮低減性の評価〕
乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成を、JIS A1129に従って実施した。型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し、20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースを、たわしを用いて水で洗浄し、続いて、20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。JIS A1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用し、静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。この際、長さ変化比は、下記式で示されるように、基準モルタルの収縮量に対する、収縮低減剤添加モルタルの収縮量の比とし、値が小さいほど、収縮を低減できることを示す。なお、収縮低減剤を添加していないモルタルを基準モルタルとした。
長さ変化比
={(収縮低減剤添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100
長さ変化比と同時に、各材齢において供試体の重量を測定し、下記式により重量減少率を算出した。この重量減少率が大きいほど供試体からの水分の蒸発が大きいことを示す。
重量減少率(%)={(W0−WX)/W0}×100
W0:材齢0日の供試体質量(g)
WX:材齢x日の供試体質量(g)
【0104】
〔フロー値の測定およびフロー値比の評価〕
得られたモルタルについて、JIS R 5201−1997に準じて、フロー値を測定した。
フロー値比は、基準モルタルのモルタルフロー値と実施例または比較例の収縮低減剤を含むモルタルのモルタルフロー値との比であり、以下の式により求められる値である。モルタルフロー値が大きいほど、モルタル粘性への影響が少ないことを示す。なお、収縮低減剤を添加していないモルタルを基準モルタルとした。
フロー値比
={(収縮低減剤添加モルタルのフロー値)/(基準モルタルのフロー値)}×100
【0105】
〔気泡間隔係数の測定〕
所定の空気量(3.0〜6.0vol%)のモルタルを混練した後、エアボイドアナライザー(AVA;商品名、ジャーマンインストゥルメンツ社製)にて耐凍結融解性の指標となる気泡間隔係数の測定を行った。
まず、20℃に調温したAVA測定用溶液250mlと水約2000mlを計量した。次に、カラムに充填した後、モルタル20mlを採取し、カラムの底部に注入した。注入後、モルタルを30秒間攪拌し液中にモルタルの連行空気を十分に液中に放出させた。放出された気泡を経時測定することにより、気泡間隔係数の計算を行った。
気泡間隔係数の計算に際して、空気量以外に全体積より6mm以上の骨材の占める体積を除いた値(モルタル容積率)およびペーストの占める割合(ペースト容積率)が必要となる。ここでは、モルタル容積率を100%とし、ペースト容積率は下記の式により算出した。
ペースト容積率(%)=[(V+V)/(V+V+VIS)]×100
:結合材の体積(=結合材添加量(g)/結合材の比重)
:水と混和剤の体積(添加量と同じとする)
IS:細骨材(砂)の体積(=細骨材(砂)添加量(g)/細骨材(砂)の比重)
気泡間隔係数の値が小さいほど、モルタル中に連行された気泡が細かく密に分散(良質の気泡をモルタル中に連行している)ことを示し、耐凍結融解性に優れていることを示す。
【0106】
≪モルタルによる自己収縮ひずみの測定≫
〔モルタルの混練〕
所定量の本発明の水硬性材料用収縮低減剤を秤量して水で希釈したもの213.7g、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.7g、セメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N−50)を用い、モルタルの混練を行った。モルタルの混練は、全て低速(1速)にて実施した。
また、モルタルフロー値が200±20mm、空気量が±3%となるように、減水剤、消泡剤等を使用して調整した。
より具体的には、普通ポルトランドセメントを5秒間空練り後、15秒間かけて水と水硬性材料用収縮低減剤を投入し、さらに10秒間混練した後に停止させた。30秒間でセメント強さ試験用標準砂を投入し、さらに60秒混練した。混練を停止し、20秒間掻き落しを行った。掻き落し後、さらに120秒間混練した後に停止し、モルタルを取り出した。
【0107】
〔自己収縮ひずみの測定〕
自己収縮ひずみは、ひずみゲージ(型式:KMC−70−120−H4(共和電業))を使用して測定した。
自己収縮ひずみ測定と同時に、貫入抵抗測定による凝結時間の測定を実施し、凝結開始時間を自己収縮ひずみ測定の起点とした。
装置概略は図1に示した。
容器は、口径×下径×高さ=91×84×127mmのポリプロピレン製の容器を使用した。また、容器内部にシリコングリースを塗り、容器とモルタルの接着がないようにした。モルタル充填後、ポリ塩化ビニリデンシートでふたをし、20±2℃で保管して、自己収縮ひずみの測定を実施した。
得られた自己収縮ひずみの値から下記式を用いて長さ変化比を算出した。
長さ変化比
={(ポリマー添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100
凝結時間(凝結始発および終結時間)の測定は、温度20±2℃に設定した部屋で、ASTM C 403/C 403M−99に準じて、貫入抵抗値を測定することにより行った。
混練して得られたモルタルをポリプロピレン製の容器(口径×下径×高さ=91×84×127mm)に2回に分けて詰め、注水から3または4時間目から貫入測定値の測定を開始した。注水から貫入抵抗値が3.5N/mmになるまでの経過時間を凝結始発時間、同様に、注水から貫入抵抗値が28.0N/mmになるまでの経過時間を凝結終結時間とした。
【0108】
≪製造例A−1≫:共重合体(A−1)の合成
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を14.66重量部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体(IPN50)を49.37重量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液2.39重量部を添加し、アクリル酸3.15重量部およびイオン交換水0.79重量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.13重量部、L−アスコルビン酸0.06重量部およびイオン交換水15.91重量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、重量平均分子量が37700の共重合体(A−1)の水溶液を得た。
【0109】
≪製造例A−2≫:共重合体(A−2)の合成
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を42.43重量部、IPN50を49.37重量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液4.12重量部を添加し、アクリル酸3.11重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.90重量部およびイオン交換水2.26重量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.33重量部、L−アスコルビン酸0.11重量部およびイオン交換水15.91重量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、重量平均分子量が31900の共重合体(A−2)の水溶液を得た。
【0110】
≪製造例A−3≫:共重合体混合物PC−1の合成
製造例A−1で得られた共重合体(A−1)および製造例A−2で得られた共重合体(A−2)を、重量比で、共重合体(A−1)/共重合体(A−2)=30/70の割合で混合し、共重合体混合物PC−1の水溶液を得た。
【0111】
≪実施例A−1〜実施例A−8・比較例A−1〜比較例A−3で用いる各種成分≫
実施例A−1〜実施例A−8・比較例A−1〜比較例A−3で用いるポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)および消泡剤(D)を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
≪実施例A−1〜実施例A−3、比較例A−1≫
(配合)
表2に示す配合割合で、練り混ぜ量が30Lとなるようそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して材料を混練した。なお、セメントは、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して用いた。細骨材としては、掛川産陸砂および君津産陸砂を重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したもの、粗骨材としては、青梅産硬質砂岩をそれぞれ使用した。
【0114】
【表2】
【0115】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、ポリオキシアルキレン化合物(A)および減水剤(B)からなる収縮低減剤、AE剤(C)ならびに消泡剤(D)を含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出した。なお、材料の練り混ぜの際には、市販の空気量調整剤(表1に記載のAE剤(C)および消泡剤(D))および減水剤(B)としてPC−1を使用し、フレッシュコンクリートのスランプフロー=350〜400mm、空気量=5±1%となるように調整した。このときのモルタル容積率は60.4%、ペースト容積率は29.3%であった。配合比を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
(評価)
得られた水硬性材料用収縮低減剤を用いたフレッシュコンクリートについて、気泡間隔係数、乾燥収縮低減性、および耐凍結融解性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
表4より、ポリオキシアルキレン化合物(A)および減水剤(B)を含む水硬性材料用収縮低減剤を用いた実施例A−1〜実施例A−3では、ポリオキシアルキレン化合物(A)を含まない比較例A−1に比べて、長さ変化比が小さくなった。また、実施例A−1〜実施例A−3では、気泡間隔係数も小さく、良好な耐凍結溶解性を有しており、耐久性に優れていることがわかる。これらの結果から、実施例A−1〜実施例A−3の水硬性材料用収縮低減剤を用いることにより、得られた水硬性材料の収縮を抑制することができ、かつ、優れた耐凍結融解性を有し、耐久性に優れた水硬性材料が得られることがわかる。一方、比較例A−1の水硬性材料用収縮低減剤は、耐凍結融解性の点では優れているが、水硬性材料の収縮を十分に抑制することができなかった。
【0120】
≪実施例A−4〜実施例A−8、比較例A−2〜比較例A−3≫
(配合)
表5に示す配合割合で、練り混ぜ量が30Lとなるようそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して材料を混練した。なお、セメントは、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して用いた。細骨材としては、掛川産陸砂および君津産陸砂を重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したもの、粗骨材としては、青梅産硬質砂岩をそれぞれ使用した。
【0121】
【表5】
【0122】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、ポリオキシアルキレン化合物(A)および減水剤(B)からなる収縮低減剤、AE剤(C)ならびに消泡剤(D)を含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出した。なお、材料の練り混ぜの際には、市販の空気量調整剤(表1に記載のAE剤(C)および消泡剤(D))および減水剤(B)としてポゾリスNo.70を使用し、フレッシュコンクリートのスランプ値=16±2cm、空気量=5±1%となるように調整した。このときのモルタル容積率は59.9%、ペースト容積率は27.1%であった。配合比を表6に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
(評価)
得られた水硬性材料用収縮低減剤を用いたフレッシュコンクリートについて、気泡間隔係数、乾燥収縮低減性、および耐凍結融解性の評価を行った。評価結果を表7に示す。
【0125】
【表7】
【0126】
表7より、実施例A−1〜実施例A−3と同様に、ポリオキシアルキレン化合物(A)および減水剤(B)を含む水硬性材料用収縮低減剤を用いた実施例A−4〜実施例A−8は、長さ変化比が小さく、また、気泡間隔係数が小さく、良好な耐凍結溶解性を有しており、耐久性に優れていることがわかる。これらの結果から、実施例A−4〜実施例A−8の水硬性材料用収縮低減剤を用いることでも、得られた水硬性材料の収縮を抑制することができ、かつ、優れた耐凍結融解性を有し、耐久性の優れた水硬性材料が得られることがわかる。一方、比較例A−2の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキレン化合物(A)を含んでいないため、耐凍結融解性の点では優れているが、水硬性材料の収縮を十分に抑制することができなかった。また、比較例A−3の水硬性材料用収縮低減剤は、乾燥収縮性は優れていたが、気泡間隔係数が350μmを超えており、耐凍結融解性が低く、耐久性が著しく劣っていた。
【0127】
≪実施例B−1≫
ポリオキシアルキレン化合物(A)としてポリエチレングリコール(商品名:ポリエチレングリコール4000、和光純薬工業(株)製、m=91、分子量=4000)、AE剤(C)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であるアデカホープYES25(ADEKA社製)、消泡剤(D)としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルであるアデカノールLG299(ADEKA社製)を、表8に示す配合割合で混合し、水硬性材料用収縮低減剤を得た。
【0128】
(配合)
以下に示すコンクリート配合割合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、強制2軸練りミキサーを使用して材料の混練を実施した。なお、セメントは太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。この際、細骨材には掛川産陸砂および君津産陸砂、粗骨材には青梅硬質砂岩をそれぞれ使用した。また、コンクリートの空気量=5.0±0.5%となるように調整した。
<コンクリート配合割合>
単位セメント量:301kg/m
単位水量 :160kg/m
単位細骨材量 :824kg/m
単位粗骨材量 :1002kg/m
(水/セメント比(W/C):53.1%、細骨材率(s/a):46.0%)
【0129】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、水硬性材料用収縮低減剤、および、減水剤(B)としてポゾリスNo.70(BASFポゾリス(株)製)をセメントに対して固形分換算で0.17%加え、90秒間混練した後、ミキサーからコンクリートを取り出した。
【0130】
(評価)
取り出したコンクリート(フレッシュコンクリート)についての評価結果を表9に示した。
【0131】
≪実施例B−2≫
ポリオキシアルキレン化合物(A)としてポリエチレングリコール(商品名:XG1000、日本触媒社製、m=227、分子量=10000)、AE剤(C)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であるアデカホープYES25(ADEKA社製)、消泡剤(D)としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルであるアデカノールLG299(ADEKA社製)を、表8に示す配合割合で混合し、水硬性材料用収縮低減剤を得た。
【0132】
(配合)
以下に示すコンクリート配合割合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型強制練りミキサーを使用して材料の混練を実施した。なお、セメントは太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。この際、細骨材には掛川産陸砂および君津産陸砂、粗骨材には青梅硬質砂岩をそれぞれ使用した。また、コンクリートの空気量=5.0±0.5%となるように調整した。
<コンクリート配合割合>
単位セメント量:350kg/m
単位水量 :175kg/m
単位細骨材量 :841kg/m
単位粗骨材量 :905kg/m
(水/セメント比(W/C):50.0%、細骨材率(s/a):49.0%)
【0133】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入し、さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、水硬性材料用収縮低減剤、および、減水剤(B)としてレオビルドSP8LS(BASFポゾリス(株)製)をセメントに対して固形分換算で0.065%加え、90秒間混練した後、ミキサーからコンクリートを取り出した。
【0134】
(評価)
取り出したコンクリート(フレッシュコンクリート)についての評価結果を表9に示した。
【0135】
≪比較例B−1≫
ポリオキシアルキレン化合物(A)としてポリエチレングリコール(商品名:PEG2000、和光純薬工業(株)製、m=45、分子量=2000)、AE剤(C)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であるアデカホープYES25(ADEKA社製)、消泡剤(D)としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルであるアデカノールLG299(ADEKA社製)を、表8に示す配合割合で混合し、水硬性材料用収縮低減剤を得た。
【0136】
(配合)
以下に示すコンクリート配合割合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型強制練りミキサーを使用して材料の混練を実施した。なお、セメントは太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。この際、細骨材には掛川産陸砂および君津産陸砂、粗骨材には青梅硬質砂岩をそれぞれ使用した。また、コンクリートの空気量=5.0±0.5%となるように調整した。
<コンクリート配合割合>
単位セメント量:350kg/m
単位水量 :175kg/m
単位細骨材量 :841kg/m
単位粗骨材量 :905kg/m
(水/セメント比(W/C):50.0%、細骨材率(s/a):49.0%)
【0137】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入し、さらに5秒間空練りを行った後再び回転を止めて、水硬性材料用収縮低減剤、および、減水剤(B)としてポゾリスNo.70(BASFポゾリス(株)製)をセメントに対して固形分換算で0.17%加え、90秒間混練した後、ミキサーからコンクリートを取り出した。
【0138】
(評価)
取り出したコンクリート(フレッシュコンクリート)についての評価結果を表9に示した。
【0139】
≪比較例B−2≫
【0140】
ポリオキシアルキレン化合物(A)としてブタノールのエチレンオキシド3モル付加物(Bu(EO)、商品名:トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、和光純薬工業(株)製)、AE剤(C)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であるアデカホープYES25(ADEKA社製)、消泡剤(D)としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルであるアデカノールLG299(ADEKA社製)を、表8に示す配合割合で混合し、水硬性材料用収縮低減剤を得た。
【0141】
(配合)
【0142】
以下に示すコンクリート配合割合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、強制2軸練りミキサーを使用して材料の混練を実施した。
【0143】
なお、セメントは太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。この際、細骨材には掛川産陸砂および君津産陸砂、粗骨材には青梅硬質砂岩をそれぞれ使用した。また、コンクリートの空気量=5.0±2.0%となるように調整した。
【0144】
コンクリート配合割合>
単位セメント量:301kg/m
単位水量 :160kg/m
単位細骨材量 :824kg/m
単位粗骨材量 :1002kg/m
(水/セメント比(W/C):53.1%、細骨材率(s/a):46.0%)
【0145】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入し、さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、水硬性材料用収縮低減剤、および、減水剤(B)としてレオビルドSP8LS(BASFポゾリス(株)製)をセメントに対して固形分換算で0.065%加え、90秒間混練した後、ミキサーからコンクリートを取り出した。
【0146】
(評価)
取り出したコンクリート(フレッシュコンクリート)についての評価結果を表9に示した。
【0147】
【表8】
【0148】
【表9】
【0149】
表9を見ると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いた実施例B−1、実施例B−2においては、優れた収縮低減機能を示すとともに、優れた耐凍結融解性を示すことが判る。一方、比較例B−1においては、収縮低減機能が実施例B−1、実施例B−2に比べて劣るとともに、耐凍結融解性も非常に劣っていることが判る。また、比較例B−2においては、耐凍結融解性が実施例B−1、実施例B−2に比べて非常に劣っていることが判る。
【0150】
≪実施例C−1〜実施例C−3、参考例C−1〜参考例C−2≫
実施例C−1〜実施例C−3、参考例C−1〜参考例C−2で用いたポリオキシアルキレン化合物(A)、ポリオキシアルキルエーテル(E)、消泡剤(D)としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルを表10に、それぞれの添加量、ならびにポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(E)との配合比を表11に示す。また、得られた水硬性材料用収縮低減剤を用いたモルタルについて、気泡間隔係数、乾燥収縮低減性、および耐凍結融解性の評価を行った結果を表12に示す。このときのペースト容積率は41.8%であった。
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
*ポリオキシアルキレン化合物(A)、ポリオキシアルキルエーテル(E)、消泡剤(D)の添加量は固形分換算の値
【0153】
【表12】
【0154】
表12を見ると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いた実施例C−1〜実施例C−3においては、優れた収縮低減機能を示すとともに、気泡間隔係数が小さく、耐凍結融解性に優れることを示しており、ポリオキシアルキレン化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(E)を併用することにより、これらが相乗的に向上していることがわかる。また、参考例C−1のポリオキシアルキレン化合物(A)のみ用いた場合と比べてフロー値比が高く、モルタル粘性が良好に維持されている。
【0155】
一方、ポリオキシアルキレン化合物(A)のみを含む水硬性材料用収縮低減剤を用いた参考例C−1は、気泡間隔係数が小さく、耐凍結融解性には優れるものの、十分な収縮低減性能が得られないことがわかる。さらに、実施例C−1〜実施例C−3に比べ、フロー値比が小さくなり、モルタルの粘度が増大した。
【0156】
また、ポリオキシアルキルエーテル(E)のみを含む水硬性材料用収縮低減剤を用いた参考例C−2は、導入される気泡の質があまり良くはなく、その結果、気泡間隔係数が大きくなり、十分な耐凍結融解性を得ることができなくなることがわかる。
【0157】
≪製造例D−1≫:共重合体(D−1)の合成
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を14.66重量部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体(IPN50)を49.37重量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液2.39重量部を添加し、アクリル酸3.15重量部およびイオン交換水0.79重量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.13重量部、L−アスコルビン酸0.06重量部およびイオン交換水15.91重量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、重量平均分子量が37700の共重合体(D−1)の水溶液を得た。
【0158】
≪参考例D−1〜参考例D−15で用いる各種成分≫
参考例D−1〜参考例D−15で用いるポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)および消泡剤(D)、pH調整剤を表13に示す。また、参考例D−1〜参考例D−15で用いるポリオキシアルキレン化合物(A)の5重量%水溶液(固形分換算)の表面張力を表14に示す。
【0159】
【表13】
【0160】
【表14】
【0161】
≪参考例D−1〜参考例D−15で用いるpH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物(A)組成物≫
参考例D−1〜参考例D−15で用いるpH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物(A)組成物を表15に示す。
【0162】
【表15】
【0163】
≪参考例D−1〜参考例D−5≫
pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−2)〜(P−5)およびポリオキシアルキレン化合物(A−6)をセメントに対して2%添加したモルタルでの自己収縮ひずみの測定結果を表16に示す。表面張力が33mN/mのポリオキシアルキレン化合物(A−6)では消泡剤(D)による空気量調整が困難であり、10%以上の空気量であったため、自己収縮ひずみの測定が出来なかった。pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−2)〜(P−5)では材齢7日時点での長さ変化比は77〜82であり、良好な自己収縮低減性を示した。これらのことから、pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−2)〜(P−5)は空気量の調整が容易で、自己収縮低減性に優れていることが判る。
【0164】
【表16】
【0165】
≪参考例D−6〜参考例D−8≫
pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−4)〜(P−5)をセメントに対して固形分換算で2重量%添加したモルタルの混和剤配合および材齢28日の収縮低減性、質量減少率を表17に示す。それぞれ74、72の長さ変化比を示しており、これらのpH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物が良好な乾燥収縮低減機能を有していることが判る。また、参考例D−8に対して質量減少率も低くなっていることから、これらのpH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物を添加することによりモルタル供試体からの水分の蒸発が抑制されていることが判る。これらの結果から、pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−4)〜(P−5)は供試体からの水分蒸発および収縮を低減する効果に優れていることが判る。
【0166】
【表17】
【0167】
≪参考例D−9〜参考例D−15≫
(配合)
表18に示す配合割合で、練り混ぜ量が30Lとなるようそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して材料を混練した。なお、セメントは、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して用いた。細骨材としては、掛川産陸砂および君津産陸砂を重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したもの、粗骨材としては、青梅産硬質砂岩をそれぞれ使用した。
【0168】
【表18】
【0169】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、ポリオキシアルキレン化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)、pH調整剤などを含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出した。なお、材料の練り混ぜの際には、フレッシュコンクリートのスランプ値=15±1.5cm、空気量=5±1%となるように、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)などの添加量を調整した。
【0170】
(評価)
pH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−1)〜(P−5)をコンクリートに使用したときのコンクリートの物性、収縮低減性(長さ変化)および耐凍結融解性(耐久性指数)の混和剤配合および評価結果を表19および表20にそれぞれ示す。いずれのpH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物においてもセメントに対して固形分換算で2〜4質量%添加することにより乾燥材齢8週において46〜77の長さ変化を示すことから、モルタルと同様、コンクリートにおいても収縮低減性に優れていることが判る。5%水溶液の表面張力が66.8であるA−1を使用したpH調整剤/ポリオキシアルキレン化合物組成物(P−1)を含む参考例D−15では耐久性指数が13であることから、このコンクリートでは耐凍結融解性が著しく低下していることが判る。それ以外の参考例D−9〜参考例D−14においてはいずれも70以上の耐久性指数を示しており、AE剤(C)や消泡剤(D)によって連行空気を調整することにより、高い耐凍結融解性を達成できることが判る。
【0171】
【表19】
【0172】
【表20】
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できる、水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。
図1