特許第5930761号(P5930761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930761
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】髪止め具
(51)【国際特許分類】
   A45D 8/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   A45D8/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-32513(P2012-32513)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-165927(P2013-165927A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100098109
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】栗田 圭子
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−026704(JP,U)
【文献】 実開昭60−015202(JP,U)
【文献】 実開昭64−050705(JP,U)
【文献】 実開昭58−157403(JP,U)
【文献】 特開平09−326311(JP,A)
【文献】 特開2007−014644(JP,A)
【文献】 実開平07−018676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 8/00−8/40
24/00−31/00
42/00−97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の髪挟持部材を含み、それら一対の髪挟持部材が容易に分離可能な結合手段によって結合され、その結合された両髪挟持部材が協働して髪を挟持する髪止め具であって、各髪挟持部材はそれぞれ基部及びその基部から延びる髪挟持部を有し、それぞれの基部には、互いの基部が面接触により結合されるための2以上の平らな面が凸の二面角をなして並ぶように形成され、容易に分離可能な面接触の結合は磁石の吸引力による結合であり、面接触させる面を変えることにより、両髪挟持部材のなす挟持角度を段階的に変更可能としたことを特徴とする髪止め具。
【請求項2】
一対の髪挟持部材を含み、それら一対の髪挟持部材が容易に分離可能な結合手段によって結合され、その結合された両髪挟持部材が協働して髪を挟持する髪止め具であって、各髪挟持部材はそれぞれ基部及びその基部から延びる髪挟持部を有し、それぞれの基部には、互いの基部が面接触により結合されるための2以上の平らな面が凸の二面角をなして並ぶように形成され、容易に分離可能な面接触の結合は面ファスナーによる結合であり、面接触させる面を変えることにより、両髪挟持部材のなす挟持角度を段階的に変更可能としたことを特徴とする髪止め具。
【請求項3】
少なくとも一方の髪挟持部は櫛状に形成されている請求項1又は請求項2記載の髪止め具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に女性が在宅時、外出時あるいは入浴時などに使用する髪止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の髪挟持部材が結合軸を中心に回動可能に結合された髪止め具が従来から多く存在するが、これらの髪止め具で髪を束ね止めするときなどに髪の毛が髪挟持部材の結合部分に挟まってしまうことがある。その場合、髪の毛を引っ張れば容易に切れてしまうので、挟まった髪の毛を完全に取り除く作業に手間がかかっていた。また、結合部には髪のほかゴミが溜まりやすいという欠点もあった。
【0003】
さらに、髪止め具は、入浴時に邪魔な髪を束ね上げておくために使用されることが多い頭髪用品である。従来の髪止め具は、髪を挟持するための髪挟持部を有し、結合軸にコイルばねを装着して、このコイルばねの弾性力により双方の髪挟持部がそれらの閉じる方向に付勢される構成である。そして、結合軸は両髪挟持部材の結合部に組み込まれているから、両髪挟持部材は容易に分離することができない構造となっている。通常、両髪挟持部材を結合する結合軸とコイルばねは金属製であり、入浴時に使用すると使用後に錆びてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−14644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、両髪挟持部材の結合部に残留している水分や、結合部に挟まっている髪の毛を容易に取り除くことができる髪止め具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明は、一対の髪挟持部材を含み、それら一対の髪挟持部材が容易に分離可能な結合手段によって結合され、その結合された両髪挟持部材が協働して髪を挟持する髪止め具であって、各髪挟持部材はそれぞれ基部及びその基部から延びる髪挟持部を有し、それぞれの基部には、互いの基部が面接触により結合されるための2以上の平らな面が凸の二面角をなして並ぶように形成され、容易に分離可能な面接触の結合は磁石の吸引力による結合であり、面接触させる面を変えることにより、両髪挟持部材のなす挟持角度を段階的に変更可能とした構成である。
【0007】
請求項2記載の発明は、一対の髪挟持部材を含み、それら一対の髪挟持部材が容易に分離可能な結合手段によって結合され、その結合された両髪挟持部材が協働して髪を挟持する髪止め具であって、各髪挟持部材はそれぞれ基部及びその基部から延びる髪挟持部を有し、それぞれの基部には、互いの基部が面接触により結合されるための2以上の平らな面が凸の二面角をなして並ぶように形成され、容易に分離可能な面接触の結合は面ファスナーによる結合であり、面接触させる面を変えることにより、両髪挟持部材のなす挟持角度を段階的に変更可能とした構成である。
【0008】
請求項3記載の発明は、少なくとも一方の髪挟持部が櫛状に形成されている構成である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明は、各髪挟持部材がそれぞれ基部及びその基部から延びる髪挟持部を有し、それぞれの基部には、互いの基部が面接触により結合されるための2以上の平らな面が凸の二面角をなして並ぶように形成され、容易に分離可能な面接触の結合は磁石の吸引力による結合であり、面接触させる面を変えることにより、両髪挟持部材のなす挟持角度を段階的に変更可能である。また、請求項1記載の発明において、容易に分離可能な面接触の結合が磁石の吸引力による結合であるところ、請求項2記載の発明は、容易に分離可能な面接触の結合が面ファスナーによる結合である。従来の容易に分離することができない髪止め具は、両髪挟持部材が結合する部分に隙間が生じ、その隙間に浸み込んだ水分や、その隙間に挟まった髪の毛を取り除くことが容易でなかった。本発明は、両髪挟持部材を分離することにより、隙間に浸み込んだ水を拭き取るなどして容易に取り除くことができ、隙間に挟まっている髪の毛なども隙間がなくなるので容易に取り除くことができる。
【0010】
また、髪止め具が、両髪挟持部材を結合して髪を挟持したときの両髪挟持部材のなす挟持角度を段階的に変更することができる手段を有するものである。したがって、まとめようとする毛束の太さに応じて挟持角度を変更することができる。
【0011】
また、両髪挟持部材の結合手段が、少なくとも一方の髪挟持部材に設けられた磁石と、他方の髪挟持部材に設けられた磁石又は強磁性体部材とによる磁石の吸引力による結合であり、磁石の吸引力により結合された両髪挟持部材が協働して髪を挟持するものである。髪挟持部材に磁石或いは強磁性体部材を取り付けるだけでよいので、結合構造を簡易なものとすることができる。
【0012】
また、各髪挟持部材がそれぞれ基部及びその基部から延びる髪挟持部を有し、その髪挟持部が髪を挟持する作用をなすものであり、両髪挟持部材を結合する結合手段は基部に設けられている。したがって、毛を束ねて両髪挟持部で挟持するときに、両手で各髪挟持部材を持ち、両髪挟持部材の間の距離を離した状態から、両髪挟持部材の間に存在する髪を手を使わずに髪挟持部で両側から一気に掻き集めるように両髪挟持部材の間隔を詰め、最後に両髪挟持部材の基部同士を結合して効率的に髪をまとめることができる。特に、各髪挟持部材の基部を両手で持った場合には操作がしやすいのである。さらには、基部を両手で持った場合には、両髪挟持部材を結合するときに、手で持った基部同士を合わせれば結合できるので、簡単な操作で結合させることができる。従来の、コイルばね等の弾性力を利用したクリップ式の髪止め具の場合、両髪挟持部材が分離できないので、予め手で髪を集めてからクリップで止めていたのであるが、それよりも簡単に髪を束ね止めることができる。
【0013】
また、各髪挟持部材が、互いの基部を面接触により結合するための少なくとも1つの平らな面を基部に有しているものである。したがって、基部同士の結合が面接触によるものであるから、結合作業を容易に行える。また、分離するときは面接触を引き離すだけでよいので容易に分離することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、少なくとも一方の髪挟持部が櫛状に形成されている。したがって、分離した一方の髪挟持部材を櫛として使用することができる。また、髪をまとめるときに、櫛状の髪挟持部を使用して櫛のように髪を梳きながら髪を集めて髪を止めることができる。さらに、櫛歯の先端を滑らかな曲面に形成すれば、頭皮マッサージ具として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の側面図である。
図2図2は本発明の正面図である。
図3図3は本発明の平面図である。
図4図4は髪挟持部の挟持角度を変更した状態の側面図である。
図5図5は一方の髪挟持部材の斜視図である。
図6図6は一方の髪挟持部材の正面図である。
図7図7図6のA−A端面図である。
図8図8図6のB−B端面図である。
図9図9は本発明の使用状態図である。
図10図10は本発明の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例について説明する。髪止め具1は、一対の髪挟持部材2,2の組み合わせから成る。2つの髪挟持部材2,2は同一形状に形成されている。同一形状でなくてもよいことは勿論である。また、髪挟持部材2,2は、例えばポリエチレン樹脂等の樹脂により成形されており、基部3とその基部3から一体に延びる櫛状の髪挟持部4を有している。髪挟持部4が櫛状に形成されているので、髪をまとめるときに、櫛状の髪挟持部4を櫛のように使用して髪を梳きながら髪を集めて髪を止めることができる。また、単独の髪挟持部材2を櫛として使用することもできる。図1に示すように、髪挟持部4を構成する各櫛歯5は外側に張り出すように弧状に形成されている。これにより、毛束を包むように挟持することができる。また、図5に示すように、各櫛歯5の先端部6は内側に突出して先端面7の面積を広くし、その先端面7が滑らかな凸面に形成されている。したがって、先端面7が頭皮にソフトに当たるので、この面で頭皮をマッサージすることができる。また、図3に示すように、各櫛歯5の先端面7を結ぶ線は凹状の曲線をなしている。したがって、頭皮をマッサージする場合など各櫛歯5の先端面7を頭皮に当てたときに、頭皮のカーブにフィットさせることができる。髪挟持部材2の長さは約90mmであり、図1での左右方向の最大幅は約52mmであり最大高さは約48mmであるが、この数値に限定されないことは勿論である。
【0017】
図5から図8に示すように、基部3は、その内面から突出する結合部8を有している。結合部8は、凸の二面角を形成する平らな第一の面9と平らな第二の面10を有する。二面角の角度は約167度である。結合部8の内部であって第一の面9及び第二の面10に寄った部分に磁石12,13が取り付けられている。磁石12,13は小さな円板状をなすネオジム磁石であって、それぞれの結合部8の第一の面9と第二の面10に寄った内部に間隔をあけてそれぞれ2個ずつの合計4個取り付けられている。磁石は3個ずつの6個取り付けてもよい。それ以上でもよい。結合部8に磁石12,13を設ける方法は、まず射出成形により独立した結合部8を形成し、結合部8の内部に磁石12,13を嵌め込んでから結合部8の内部を樹脂14で充填する。次いで、その結合部8を金型に固定し、その金型に樹脂を射出させて髪挟持部4や基部3を結合部8と一体的に結合するように成形することにより髪挟持部材2が製造される。結合部8は肉厚であるが、このような成形を行うことにより、肉のヒケ等を防止して、良好な外観形状を維持することができる。なお、磁石はネオジム磁石でなくてもよく、結合部8に1個の細長い板状の磁石を取り付けてもよい。磁石は一方の髪挟持部材2にのみ取り付け、他方の髪挟持部材2には磁石のかわりに強磁性体部材を取り付けてもよい。双方の髪挟持部材2に磁石を取り付けるときは、双方の磁石が引き合うようにS極とN極とが対向するように取り付ける。図1に示すように、両髪挟持部材2,2を結合するときは、それらの第一の面9,9同士を磁石の吸引力で吸着させることにより結合する。また、図4に示すように、第二の面10,10同士を結合させることによって、髪挟持部材2,2の挟持角度を大きくすることができる。これにより、多くの髪を束ね止めることができる。また、第一の面9,9及び第二の面10,10のいずれかで結合している両髪挟持部材2,2を分離させるときに、その結合は磁石の吸引力による面同士の吸着であるから、結合面に垂直な力で両髪挟持部材2,2を引き離そうとすると大きな力が必要である。このとき、指掛部11,11が互いに近づくように指掛部11,11を指で押すと、梃子の原理により容易に両髪挟持部材2,2を分離させることができるのである。両髪挟持部材2,2の第一の面9,9が結合しているときは、まず、図4で示すように、第一の面9と第二の面10との境界15を支点として髪挟持部材2,2が挟持角度を開くように回転し、第一の面9,9が互いに離れ第二の面10,10が結合する。さらに、指掛部11,11を指で押すと、第二の面10,10の吸着している下端16を支点として髪挟持部材2,2が回転し、第二の面10,10が離れ両髪挟持部材2,2を容易に分離させることができる。第二の面10,10が吸着しているときは、髪挟持部材2,2の一度の回転で分離させることができる。
【0018】
図5又は図7に示すように、基部3は外側に突出する指掛部11を有している。髪挟持部材2の持ち方は、例えば、人差し指の第一関節よりも先の部分を指掛部11の表面の長さ方向に沿って宛がい、親指を指掛部11の反対側の面に宛がい、中指の第一関節の背側を基部3の表面に押し当てることにより、しっかりと髪挟持部材2を持つことができる。次に、図9及び図10を参照して本発明の使用方法について説明する。頭の後ろで髪をまとめるには、図9に示すようにまずそれぞれの手で各髪挟持部材2,2を持ち、左右両側の耳の付近から髪を後ろに掻き集めていき、次いで、一気に両髪挟持部材2,2の間隔を詰め、図10に示すように両髪挟持部材2,2の基部同士3,3を結合して髪をまとめる。その際、結合手段として磁石12,13を利用しているため、頭の後ろのような直接見えない場所で髪を止める場合であっても、結合部8,8がある程度の距離まで接近すれば、磁石の吸引力によって双方の結合部8,8が引かれ合い、結合作業を簡単に行うことができる。両髪挟持部材2,2の基部同士3,3が結合されると、図2及び図3にしめすように、一方の髪挟持部材2の櫛歯5が他方の髪挟持部材2の櫛歯5に入り込む。また、片方の髪挟持部材2を手に持って櫛状の髪挟持部4で髪を梳かしたり、櫛歯5の先端部6で頭皮マッサージを行なったりすることもできるが、そのときは、親指の腹を結合部8の第一の面9と第二の面10とに宛がい、人差し指の第一関節が指掛部11の中央付近に位置するように人差し指を少しずらすと、髪挟持部材2をよりしっかりと持つことができるので作業がしやすい。
【0019】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、髪挟持部材2,2の面接触による結合方法として、磁石の吸引力に換えて面ファスナーの結合であってもよい。面ファスナーの結合は多数のフック状繊維とループ状繊維との結合によるものであって面接触と同様の作用をなすものであり、本発明においては面接触として扱う。櫛状の髪挟持部4の各櫛歯5は可撓性を有するものでもよく、そうでなくてもよい。基部3に設けられた凸の二面角を形成する2つの平らな面9、10にさらに1つ以上の平らな面を増やして、3つ以上の平らな面が二面角を持って並ぶ構成であってもよい。この場合、髪挟持部4,4の挟持角度を3つ以上の角度の中から選択することができる。さらに、挟持角度を変更した際に、その挟持角度を確実に維持することができるロック手段を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
両髪挟持部材が容易に分離できることから、両髪挟持部材の結合部に残留している水分や、結合部に挟まっている髪の毛を容易に取り除くことができるので、手入れが簡単にできる。
【符号の説明】
【0021】
1 髪止め具、 2 髪挟持部材、 3 基部、 4 髪挟持部、 5 櫛歯、 6 櫛歯の先端部、 7 櫛歯の先端面、 8 結合部、 9 第一の面、 10 第二の面、 11 指掛部、 12 磁石、 13
磁石、 14 樹脂、 15 境界、 16 吸着している下端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10