特許第5930772号(P5930772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930772
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】内容物押出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   B65D83/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-44416(P2012-44416)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180784(P2013-180784A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝
(72)【発明者】
【氏名】稲川 義則
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/125933(WO,A1)
【文献】 特開2006−112368(JP,A)
【文献】 実開昭64−51781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
F04B 43/02,45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される収容部と、加圧手段により加圧された気体の圧力により、該収容部側に膨らんで該収容部内の内容物を押圧するシート状の弾性体と、該弾性体によって押圧された内容物を外部に送出する送出路とを備えた内容物押出容器であって、
前記シート状の弾性体が、張力を掛けた状態で固定されており、
前記シート状の弾性体は、その周縁部容器に固定されており、その周縁部より内側の部分が、他の部材により押圧されて凸状に変形した状態となっており
前記凸状に変形した部分の形状が偏平な円錐台状である、内容物押出容器。
【請求項2】
前記加圧手段は、ドーム状の押圧変形部を備えた加圧室と、加圧室とシート状の弾性体との間に位置する隔壁とを備え、該押圧変形部の変形により加圧された加圧室内の気体が逆止弁を通って該隔壁と前記弾性体との間の空間内に送り込まれるようになされており、
前記他の部材が、前記隔壁であり、該隔壁に、前記シート状の弾性体の周縁部より内側の部分に当接して該部分を凸状に変形させる凸部が形成されている、請求項1記載の内容物押出容器。
【請求項3】
前記凸部は、環状に形成されている請求項2記載の内容物押出容器。
【請求項4】
前記加圧手段は、ドーム状の押圧変形部を備えた加圧室と、加圧室とシート状の弾性体との間に位置する隔壁とを備え、該押圧変形部の変形により加圧された加圧室内の気体が逆止弁を通って該隔壁と前記弾性体との間の空間内に送り込まれるようになされており、
前記他の部材が、前記隔壁であり、該隔壁は、前記シート状の弾性体の周縁部の近傍に、該隔壁の周方向に沿う環状の傾斜面を有している、請求項1記載の内容物押出容器。
【請求項5】
前記シート状の弾性体は、前記収容部側に膨らむ程度が小さいときには、前記凸部又は前記傾斜面に当接し、膨らむ程度が大きくなると、前記凸部又は前記傾斜面から離れるように配されている、請求項2〜4の何れか1項記載の内容物押出容器。
【請求項6】
前記収容部内の内容物を外部から視認可能であり、且つ内容物の計量用の目盛りが設けられている、請求項1〜5の何れか1項記載の内容物押出容器。
【請求項7】
前記シート状の弾性体は、容器に固定されている状態の伸長倍率が、面積比で1.01〜1.30倍である、請求項1〜6の何れか1項記載の内容物押出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の操作により内容物を押し出すことのできる内容物押出容器は種々知られている。例えば、特許文献1には、整髪料や染毛剤、育毛剤等の内容物を収容するのに好適な容器として、内容物を収容する内容器と内容器を内装する外容器とを組み合わせた二重構造の容器本体を備えたスクイズタイプの櫛付き容器が記載されている。引用文献1記載の容器は、内容物の送出路に配された第1チェック弁と、内容器と外容器の相互間に空気を導入する通気路に配された第2チェック弁とを備え、容器本体の胴部を握って圧縮することにより櫛部から内容物を送出させることができる。
しかし、特許文献1記載の容器においては、内容器内の内容物が減少するに伴い、内容器が小さくなる一方、内容器と外容器との間の空間は大きくなる。そのため、内容物が残り少なくなると、内容物の残量が多い場合と同じ力で外容器を圧縮しても内容物の送出量が少なくなる。
【0003】
そこで、本出願人は、内容物が収容される凹状の収容部、該収容部の開口部を覆うように配置されたシート状の弾性体、該弾性体を気体の圧力により前記収容部側に膨らませる加圧手段、及び前記収容部の内外を連通し、前記弾性体により押圧された内容物を外部に送出する送出路を備えた内容物押出容器で提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−114279号公報
【特許文献2】特開2011−225279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この提案に係る内容物押出容器によれば、内容物の残量が少なくなっても適量の内容物を安定して送出させることができる。
しかし、本発明者らは、そのような内容物押出容器を、内容物を再充填して繰り返し使用することについて検討していたところ、内容物を再充填する際には、充填量の正確な計量が難しくなる場合があることが判明した。そして、その原因について探求した結果、最初の使用時に膨らませたシート状の弾性体が、それを膨らませていた圧力から開放しても、完全には元の状態(好ましくは平面状の状態)に戻らず、それによる容積の変化が、正確な計量の妨げになっていることを知見した。
【0006】
従って、本発明の課題は、繰り返し使用する際にも、内容物の容量を正確に把握することのできる内容物押出容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物が収容される収容部と、加圧手段により加圧された気体の圧力により、該収容部側に膨らんで該収容部内の内容物を押圧するシート状の弾性体と、該弾性体によって押圧された内容物を外部に送出する送出路とを備えた内容物押出容器であって、前記シート状の弾性体が、張力を掛けた状態で固定されている内容物押出容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内容物押出容器によれば、繰り返し使用する際にも、容器内の内容物の容量を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の内容物押出容器の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1のI−I線拡大断面図である。
図3図3は、図1の容器における、蓋体と容器本体とを分離し、更に液体塗布用のノズル部材を取り外した状態を示す図(図3対応図)である。
図4図4は、シート状の弾性体の好ましい固定方法を説明する説明図である。
図5図5は、図1の容器における押圧変形部を押圧変形させた状態を示す断面図である。
図6図6は、図1の容器における押圧変形部が変形状態から元の状態に復帰した状態を示す断面図である。
図7図7は、図1に示す容器に、二剤式染毛剤の第2剤33Bを注入した後にエアゾール容器で二剤式染毛剤の第2剤33Bを注入る様子を示す模式図である。
図8図8は、本発明の内容物押出容器の第2実施形態を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1に示す内容物押出容器1(以下、単に容器1ともいう)は、本発明の第1実施形態であり、図2に示すように、内容物が収容される収容部2と、加圧手段4により加圧された気体の圧力により、該収容部2側に膨らんで該収容部2内の内容物33(図5参照)を押圧するシート状の弾性体3と、該弾性体3によって押圧された内容物33を外部に送出する送出路5とを備えており、シート状の弾性体3が、張力を掛けた状態で固定されている。
【0011】
本実施形態の容器1について、更に説明すると、容器1は、図2に示すように、凹曲面状の内面を有する容器本体6と、容器本体6に脱着自在に取り付けられた蓋体7とを備えている。容器本体6は、上端部の内周面に螺合用凸条8を有し、蓋体7は下端部の外周面に螺合用凸条9を有している。容器本体6と蓋体7とは、螺合用凸条8及び螺合用凸条9を介して脱着自在に螺合されている。
【0012】
蓋体7は、天面部形成部材11、隔壁形成部材12、シート状の弾性体3及び弾性体固定部材13を有する。
天面部形成部材11は、容器外に向かって凸の凸曲面状の天面部14を形成している。天面部14は、その全体又は一部が、手による押圧により容易に変形しその押圧の解除により元の状態に復帰する押圧変形部15を形成している。押圧変形部15は、ドーム状の形状(凸曲面状の形状)を有している。押圧変形部15には、厚みが他の部分より厚い補強部50と、厚みが他の部分より薄い環状の薄肉部60とが設けられており、それによって、小さな力で押圧変形部15を変形させ得ると共に、変形状態から元の状態への回復性も向上している。
【0013】
天面部形成部材11の周縁部には、押圧変形部15の凸曲面の膨出方向とは反対方向に向かって筒状接続部17が垂設され、隔壁形成部材12の周縁部には上下に延びる一対の筒状接続部18,19が設けられている。天面部形成部材11と隔壁形成部材12とは、天面部形成部材11の筒状接続部17と隔壁形成部材12の筒状接続部18とを、それぞれに設けられた螺合用凸条17aと螺合用凸条18aを介して螺合させることにより、気密に接続されて一体化している。また、このように接続されることによって、天面部形成部材11と隔壁形成部材12との間に加圧室22が形成されている。
【0014】
隔壁形成部材12は、加圧室22とシート状の弾性体3との間に平面視円形の平板状の隔壁23を形成している。隔壁23は、ドーム状の押圧変形部15とシート状の弾性体3との間を仕切っていると共に、加圧室22とシート状の弾性体3との間を気密に仕切っている。隔壁23は、天面部形成部材11に比べて高い剛性を有し、図5に示すように、押圧変形部15を手で押圧して変形させたときにも、実質的に変形せず、平板状の形状を維持する。
【0015】
シート状の弾性体3は、伸長状態で、容器1に固定されている。より詳細には、シート状の弾性体3は、伸長状態下に、その周縁部3aを、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟まれて固定されている。
【0016】
しかも、本実施形態におけるシート状の弾性体3は、その周縁部3aを容器に固定するに際し、図4に示すように、その周縁部3aより内側の部分を他の部材(容器における弾性体3以外の部材)で押圧して凸状に変形させることにより、固定状態における張力を増大させてある。
第1実施形態における「他の部材」は、前記隔壁23であり、シート状の弾性体3における、周縁部3aから離間した部位3bに、隔壁23に凸設した環状の凸部23aに押し当てることにより、張力を増大させてある。
【0017】
図4を参照して、より具体的に説明すると、図4(a)に示すように、自然状態(収縮状態)のシート状の弾性体3を、図4(b)に示すように、平面方向(より具体的には、その中心を通る総ての直径方向)に伸長させて、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に位置させ、その状態で、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13とを、それぞれに設けられた螺合用凸条19a,13aを介した螺合により、結合一体化させる。これにより、シート状の弾性体3は、環状の凸部23aに押圧されて、偏平円錐台状に変形し、その状態において、周縁部3aが、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟まれて固定される。なお、シート状の弾性体3の周縁部3aの固定方法としては、本実施形態のように、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間で挟持するのみで固定しても良いし、部材間に挟んで固定するのに代えて又は部材間に挟むと共に、熱融着、接着剤等の他の固定手段を採用することもできる。
【0018】
シート状の弾性体3を、平面方向に伸長させた状態で、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟み込むのに代えて、平面状の状態で、実質的に伸長させずに、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟み込んで固定することもできる。その場合にも、周縁部3aが、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挾まれて固定される一方、その周縁部が固定されている状態においては、周縁部3aより内側の部分が、環状の凸部23aに押圧されて偏平円錐台状に変形している。この変形により、シート状の弾性体3は、その中心を通る総ての直径方向において長さが伸長しており、それによって、張力が増大している。本発明における張力の増大には、張力ゼロの状態から張力が掛かった状態への変化と、低い張力が掛かった状態から、より高い張力が掛かった状態への変化の両者が含まれる。
【0019】
シート状の弾性体3は、容器1に固定された周縁部3a以外の部分は、容器1に固定されておらず、そのため、周縁部3aより内側の部分が、加圧手段4によって送られる空気(気体)の圧力により、収容部2側に膨らむ(図5参照)。
【0020】
本実施形態の容器1においては、前述の通り、シート状の弾性体3が、伸長状態で容器1に固定され、従って、該弾性体3が張力を掛けた状態で固定されているため、シート状の弾性体3を膨らませて内容物33の全量を押し出した後、後述するエア抜き装置24を操作して加圧室22内の加圧気体を排気することによって、シート状の弾性体3を、使用前の元の状態(本実施形態では偏平な円錐台状の形態、図2,3参照)に、ほぼ完全に復帰させることができる。
【0021】
更に、シート状の弾性体3を伸長状態で固定するに際し、周縁部3aより内側の部分を、隔壁23の凸部23a(他の部材)に当接させ、それによって伸長率及び張力を増大させてあるため、シート状の弾性体3に、簡易な構造によって張力を掛けることができ、シート状の弾性体3が、使用前の元の状態に一層確実に復帰する。非伸長状態で平面状としたシート状の弾性体3を、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟んで固定した場合にも奏されるが、伸長状態で平面状としたシート状の弾性体3を、隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟んで固定した場合に一層顕著である。
【0022】
シート状の弾性体3が、使用前の元の状態にほぼ完全に復帰することによって、内容物を再充填する際にも、内容物の量を、正確に計量することができる。
本実施形態における容器本体6は、透明又は半透明の素材(透明な合成樹脂やガラス等)で形成されており、収容部2内の内容物33を外部から視認可能である。また、容器本体6の外面には、図5に示すように、内容物33の計量用の目盛り98が設けられている。そのため、充填中(再充填中も含む)、又は充填後(再充填後も含む)における内容物の計量を一層容易且つ正確に行うことができる。
【0023】
また、本実施形態の容器1においては、シート状の弾性体3は、収容部2側に膨らむ程度が小さいとき(膨らんでいない状態も同様)には、凸部23aに当接し、膨らむ程度が大きくなると、図5に示すように、凸部23aから離れるように配されている。このため、内容物の吐出(押出)性にも優れている。
【0024】
一旦膨らませたシート状の弾性体3を、ほぼ完全に元の状態に復帰させる観点から、シート状の弾性体3は、その中心点を通る総ての直径方向において、伸長率が100.1%以上、特に100.5〜101.5%の状態に伸長されて固定されていることが好ましい。
容器1に固定されている状態のシート状の弾性体3の直径方向の長さa(該弾性体の隔壁23とは反対側の表面に沿う長さ)を測定すると共に、該弾性体を容器から取り外して弛緩状態としたときの対応する長さbを測定し、下記式により求める。
伸長率(%)=(a/b)×100
【0025】
また、同様の観点から、シート状の弾性体3は、面積比で1.01〜1.30倍の伸長倍率、特に1.05〜1.15倍の伸長倍率、とりわけ1.05倍の伸長倍率で固定されていることが好ましい。ここでいう面積は、シート状の弾性体3における、容器に固定された周縁部3aより内側に位置する領域(収容部側に向かって膨らむことができる部分)の面積である。
容器1に固定されている状態のシート状の弾性体3における、固定された周縁部3aより内側の部分の面積S1(該弾性体の隔壁23とは反対側の表面の面積)を測定すると共に、該弾性体を容器から取り外して弛緩状態としたときの対応する面積S2を測定し、下記式により求める。
伸長倍率(倍)=(S1/S2)
【0026】
また、本実施形態の容器1のように、隔壁23の弾性体3側の面等に、シート状の弾性体3に張力を掛けたり、シート状の弾性体3に掛ける張力を増大させたりすることのできる凸部23a(張力付加用凸部)を設ける場合、該凸部23aの高さh〔図4(b)参照〕は、シート状の弾性体3の直径Lの0.1〜5%、特に0.1〜2%、とりわけ0.5〜1.5%であることが好ましい。また、凸部23aと、シート状の弾性体3の周縁部3a(容器1に固定された部分)との間の距離d〔図4(c)参照〕は、シート状の弾性体3の直径Lの2〜10%、特に4〜6%であることが好ましい。
シート状の弾性体3の直径Lは、シート状の弾性体3における、容器1に固定された周縁部3aより内側に位置する領域(収容部側に向かって膨らむことができる部分)の直径であり、シート状の弾性体3が、図4(c)に示すように、偏平な円錐台形状等に変形している場合、直径は、変形した弾性体3の表面に沿って測定する。
【0027】
シート状の弾性体3としては、弾性を示すシート状物を特に制限なく用いることができ、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレン系エラストマー、シリコーンゴム、天然ゴム等のゴム、ウレタン等のゲルが挙げられるが、膨らませ易さと元の状態への復帰性の両立の観点から、EPDM又はスチレン系エラストマーであることが好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、例えばモノマー成分として(1)スチレン、エチレン及びブチレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSEBS)、(2)スチレン、エチレン及びプロピレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSEPS)、(3)スチレン及びブチレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSBS)、(4)スチレン及びイソプレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSIS)などが挙げられる。
また、シート状の弾性体3は、JIS K 6253のA硬度が、10以下、特に1〜5であることが、同様の観点から好ましい。また、シート状の弾性体3の厚みt〔容器1内に組み込まれている状態における厚み,図4(c)参照〕は、5〜0.5mm、特に3〜1mmであることが好ましい。
【0028】
なお、押圧変形部の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂や、熱可塑性エラストマー等を使用することができるが、手による押圧により容易に変形させることができるようにする観点や押圧の解除により自然に元の状態に復帰するようにする観点から、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、特にポリプロピレンであることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。他の部分の形成材料としては、合成樹脂や金属等、任意の素材を用いることができる。
【0029】
本実施形態の容器1について更に説明すると、容器1は、加圧手段4により、シート状の弾性体3に向かって気体を送り、その気体の圧力により弾性体3を、収容部2の凹曲面状の内面41に向かって膨らませ、それにより、収容部2内の内容物33を、開口部25からノズル部材側の開口部27’に亘る流路を介して、外部に送出させることができる。本実施形態の容器1においては、弾性体3を膨らませる気体は、空気(酸素と窒素を含む混合気体)である。
【0030】
本実施形態の容器1における加圧手段4は、前述したドーム状の押圧変形部15を備えた加圧室22と、加圧室22とシート状の弾性体3との間を仕切る隔壁23とを備え、隔壁23は、第1逆止弁28(逆止弁)を有しており、押圧変形部15の変形により加圧された加圧室22内の気体が、第1逆止弁28(逆止弁)を通って隔壁23と弾性体3との間の空間34(以下、膨張室ともいう)に送り込まれるようになされている。
【0031】
第1逆止弁28は、隔壁23に形成された通気路31に設けられており、図5に示すように、押圧変形部15を手で押圧して変形させたときに、通気路31を開放し、加圧室22内の空気を弾性体3に向かって送る。他方、図6に示すように、押圧変形部15の押圧を解除すると、第1逆止弁28によって通気路31が封鎖され、それにより、弾性体3を膨らませた空気が加圧室22に逆流することが阻止される。
また、第2逆止弁29が、天面部形成部材11に形成された吸気路32に設けられており、第2逆止弁29は、図5に示すように、押圧変形部15を手で押圧して変形させる際には、吸気路32を封鎖する。他方、押圧変形部15の押圧後にその押圧を解除すると、図6に示すように、押圧変形部15は、その復元弾性によって元の状態に復帰し、第2逆止弁29は、吸気路32を開放し、容器1の外の空気が加圧室22内へ流入する。
【0032】
また、本実施形態の容器1は、内容物33の押し出し後に、膨張室34内に溜まっている空気を外部に逃がすエア抜き装置24を備えている。エア抜き装置24は、コイルバネ37(弾性部材)により付勢されている栓部材36を有し、通常は、隔壁23と弾性体3との間の膨張室34と容器外とを繋ぐ通気路35を遮断しているが、栓部材36に結合している釦部材71を押圧することで、該通気路35を開放する。
【0033】
また、容器1は、図1に示すように、容器本体6及び蓋体7からなる把持部10と、容器本体6の外周部分から突出し、内部に流体の流路を有する注入及び送出部51とを有している。把持部10は、図1に示すように、扁平楕円体状の概略形状を有している。把持部10は、容器1の内容物33を送出させる際に、使用者が把持する部分である。把持部10の持ち方は、天面部14に親指を当て、把持部10を、その親指と他の複数本の指との間に挟んで持つことが好ましい。
【0034】
注入及び送出部51は、図3に示すように、筒状接続部52と、底部中央に貫通孔53aを有し該底部側が筒状接続部52内に挿入された有底筒状のコイルバネ保持体53と、コイルバネ54と、コイルバネ保持体53内に、コイルバネ54によって開口部27方向に付勢された状態で収容されている有底筒状の弁部材55と、筒状接続部52に外周部に螺合されて、コイルバネ保持体53を内側の所定位置に固定すると共に、コイルバネ保持体53内に延出する弁当接部56aが、弁部材55の開口周縁部と密着して、開口部25と開口部27との間の流路を遮断する弁外郭体56と、弁部材55の底部において底部同士が結合し、該底部近傍の周壁に、前記流路の一部を構成する複数の貫通孔57xを有するノズル接続部材57とを有している。
【0035】
注入及び送出部51は、ノズル部材26を取り付けていない状態や、エアゾール容器90やポンプ式容器の液注入用のノズルを押し付けていない状態においては、弁部材55が弁外郭体56の弁当接部56aに密着して、開口部25と開口部27との間の流路が遮断されている。
これに対して、ノズル部材26を取り付ける際には、ノズル部材26の筒状接続部26bが、ノズル接続部材57を押圧して、ノズル接続部材57及びそれに結合した弁部材55が、コイルバネ54の付勢力に抗して、容器本体6側に向かって押し込まれる。これにより、開口部25と開口部27との間が連通状態となり、開口部25からノズル部材内の内容物送出用の開口部27’までの内容物33の送出路5が開放された状態となる。なお、ノズル部材26を、弁外郭体56に被せて捻ることにより、弁外郭体56の外周部に設けられた凸部56bと、ノズル部材26に設けられたロック用の溝又は開口部26cとが係合して、弁外郭体56との結合状態、及び開口部25から開口部27’までの流路が安定に維持される。
【0036】
ノズル部材26は、容器1内の内容物33を送出させる際に使用するものであり、図7に示すように、容器1内に、内容物33を注入(充填)する際には、注入及び送出部51(より具体的には、弁外郭体56)からノズル部材26を外しておく。
ノズル部材26は、その交換により、容器本体側の開口部25から内容物送出用の開口部27’までの通路の長さや直径を代えることができる。また、ノズル先端側の開口部27’の寸法等が異なるノズル部材に交換したり、周囲に刷毛26aのついたブラシ付きのノズル部材から、そのような刷毛26aのないノズル部材に交換することができる。刷毛26aのついたブラシ付きのノズル部材26は、頭髪や頭皮、それ以外の部分の皮膚等に、染毛剤や頭髪化粧料等のヘアケア剤、スキンケア剤等を塗布するのに適している。なお、図1中の符号26eは、パーテーションフックといって、髪の毛を分けるのに用いる。
また、容器本体6の底面部21を形成する部材に、直接ノズル部材26が、脱着不可能又は脱着自在に固定されて、送出路5が形成されていても良い。
【0037】
容器1に、内容物33を注入(充填)する際には、後述するポンプ式の注入器やエアゾール容器のノズル部材91で、ノズル接続部材57を押圧する。この場合にも、ノズル接続部材57及びそれに結合した弁部材55が、容器本体6側に向かって押し込まれる。これにより、開口部25と注入口となる開口部27との間が連通状態となる。
【0038】
本実施形態の容器1によれば、収容部2に、液状やゲル状、クリーム状の内容物33を充填した状態で、押圧変形部15の押圧及びその解除を繰り返すことにより、シート状の弾性体3を収容部2側に徐徐に膨らませることができる。そのため、弾性体3を膨らませる速度や量を適宜にコントロールすることで、送出させる内容物の量や速度を任意にコントロールすることができる。
また、弾性体3により内容物33を押圧させて送出するようにしたので、特許文献1の容器とは異なり、内容物33が少なくなっても適量の内容物を安定して送出させることができる。なお、本実施形態の容器1は、当初は平面状であったシート状の弾性体3を、収容部2の凹曲面状の内面41に沿う立体形態(やや潰れた半球状の立体形態)となるまで膨らますことができる。
【0039】
また、本実施形態の容器1は、片手に持ちながらその片手で押圧変形部15を押圧して内容物を送出させることができる。「その片手」とは、右手に持っている場合にはその右手、左手に持っている場合にはその左手という意味である。
そのため、例えば内容物として、ヘアカラー等の染毛剤、育毛剤、整髪剤、シャンプー、マッサージ剤等の頭髪又は頭皮処理剤を充填して、それらを頭髪に塗布する場合、塗布する部位を移動させながら塗布作業を行うことも容易である。また、容器1を用いて塗布作業を行いながら、該容器を持っていない方の手で別の作業を同時に行うことも可能である。
【0040】
また、本実施形態の容器1によれば、前述した通り、エア抜き装置24を操作して加圧室22内の加圧状態を解除することによって、シート状の弾性体3が、ほぼ完全に使用前の元の状態(平面状の状態)に復帰するため、最初に充填した内容物33の全量を使い終わって、再度の準備のために内容物33を再充填する途中や再充填後にも、収容部内の内容物の量を、正確に把握することができる。
【0041】
本実施形態の容器1の好ましい使用方法の一例として、収容部2に内容物として、2種類の剤33B,33A、より具体的には、二剤式染毛剤の第2剤33B及び第1剤33Aを順次充填し、それらを内部で混合した後、それらを頭髪に向かって送出させる場合を例に説明する。
先ず、二剤式染毛剤の第2剤33Bを、図示しないポンプ式の注入器により容器1に注入する。ポンプ式の注入器としては、例えば、容器1の前述したノズル接続部材57に押し当てるノズル部材を有し、ノズル接続部材57をノズル部材に押し当てた状態で、所定の操作をすることで、内部の内容物を吐出させるポンプ式の容器を用いることができる。内容物を吐出させるための所定の操作としては、レバーの上下動や前後動、押しボタン等の押圧部の押圧の繰り返し等が挙げられる。
【0042】
そして、容器1の収容部2内に注入した第2剤33Bの量を、第2剤33Bの液面の位置が、目盛り98のどの位置にあるかを目視観察することで計量する。
【0043】
次いで、図5に示すように、容器1の注入及び送出部51を下方に向けて、エアゾール容器90により、容器の内部に、第2剤33Bよりも粘度の高い二剤式染毛剤の第1剤33Aを注入する。具体的には、容器1の前述したノズル接続部材57を、エアゾール容器90のノズル部材91に押し当てて、該ノズル部材91を押し下げることで、容器1の収容部2内に、エアゾール容器90内の第1剤33Aを注入する。
そして、容器1の収容部2内に注入した第1剤33Aの量を、液面の変化量や、第1剤33Aと第2剤33Bの合計量から第2剤33Bの量を差し引いて求める。
【0044】
このようにして、本実施形態の容器1によれば、内容物として複数種類の剤を充填する場合であっても、それぞれの量(容量)や、配合割合を容易に把握することができる。なお、本発明における容器は、目盛りを有さず、大まかな量を把握可能なものであっても良い。
本実施形態の容器1は、手に持って振ることにより、内部に順次注入した第2剤33B及び第1剤33Aを容易に混合することができ、その混合後に、前述した押圧変形部15を押圧する操作を繰り返して、内容物である混合物を、送出路25を介してノズル部材26から外部に送出させることができる。
【0045】
内容物の全量を使い切ったら、容器本体6と蓋体7とを分離すると共に、エア抜き装置24を操作し加圧室22内の気体を排気することによって、加圧室22内の加圧状態を解除する。これにより、シート状の弾性体3は、当初の平面状の状態にほぼ完全に戻る。そのため、容器本体6及び蓋体7を、必要に応じて洗浄した後、再び螺合一体化させて、第2剤33B及び第1剤33Aを充填すれば、最初の使用時と同様に、第2剤及び/又は第1剤の計量を正確に行うことができ、また、それらを所望の割合で混合することもできる。なお、収容部2は、その深さが、深さ方向中央部における該収容部の直径よりも小さいことが好ましい。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態の内容物押出容器1’について、図8を参照して説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる点について主として説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。特に言及しない点については、第1実施形態に関する説明が適宜適用される。
第2実施形態の内容物押出容器1’においては、図8に示すように、加圧室22とシート状の弾性体3との間に位置する隔壁23’が、弾性体3側の面が略平面状をなしている平面部23bと、該平面部23bの周囲に形成された環状の傾斜面23cを有している。
より具体的には、隔壁23’の平面部23bには、第1逆止弁28(逆止弁)を有する通気路31やエア抜き24が設けられているが、そのようなものが形成されていない部分は、弾性体3側の面が平面状をなしている。また、傾斜面23cは、シート状の弾性体3の周縁部3a(容器に固定された周縁部3a)の近傍に、隔壁23’の周方向に沿って環状に形成されている。
【0047】
そして、第2実施形態の容器1’においても、シート状の弾性体3は、伸長状態で、容器1に固定されている。即ち、シート状の弾性体3は、平面方向に伸長させた状態で、周縁部23aを隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟み込まれて固定されているか、又は平面状の状態で、実質的に伸長させずに、周縁部23aを隔壁形成部材12と弾性体固定部材13との間に挟み込まれて固定されている。その結果、シート状の弾性体3は、周縁部3aが固定されている状態においては、周縁部3aより内側の部分が、隔壁23の平面部23b及び傾斜面23cに押圧されて偏平円錐台状に変形しており、この変形により、シート状の弾性体3は、その中心を通る総ての直径方向において長さが伸長し、張力が増大している。
【0048】
第2実施形態の容器1’は、第1実施形態と同様の目的に同様にして用いることができる。そして、シート状の弾性体3が、第1実施形態と同様に、張力を掛けた状態で固定されているため、第1実施形態と同様の効果が奏される。
傾斜面の好ましい高さh’は、第1実施形態の凸部の好ましい高さhと同様であり、傾斜面23cの上端23c’の位置と、シート状の弾性体3の周縁部3a(容器1に固定された部分)との間の好ましい距離d’は、第1実施形態における前記距離dと同様である。特に好ましい範囲やとりわけ好ましい範囲等も同様である。
【0049】
本発明は、上述した第1及び第2実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、容器1は、容器本体6の全体を透明又は半透明の材料で形成するのに代えて、その一部のみを透明とし、その一部から液面が見えるようにしても良い。また、目盛りは、数字と線との組みあわせの他、線のみ、あるいは数字のみであっても良い。また、目盛りをなくしても良い。また、収容部は、内部の内容物を外部から視認不可能なものであっても良い。
【0050】
また、収容部2内には、2種類の剤に代えて、単一種類の剤のみを充填して使用しても良い。また、内容物の充填は、収容部内を内容物で満たすように内容物を入れることを意味せず、収容部内に所望の量を入れる場合等も含む意味である。
また、張力付加用の凸部23aは、隔壁形成部材と一体成形されていても良いし、隔壁形成部材に、それとは別に製造した部材を、接着剤、融着、嵌合、これらの組み合わせ等の任意の固定方法により固定して形成されていても良い。
また、張力付加用の凸部23aは、隔壁23の中央部を囲むように、該中央部の周囲に全周に亘って形成されていることが好ましいが、周方向の一部に切断された箇所等があっても良い。また、傾斜面23cは、隔壁23の中央部の周囲に全周に亘って形成されていることが好ましいが、周方向の一部に分断された箇所等があっても良い。
【0051】
また、天面部形成部材11の筒状接続部17を、隔壁形成部材12の外周部の外側に螺合又は嵌合するように形成し、シート状の弾性体3の周縁部3aを、筒状接続部17と隔壁形成部材12との間に挟んで固定しても良い。また、弾性体固定部材13を無くして、蓋体7と容器本体6とが、螺合や嵌合等により直接結合するようにしても良く、例えば、容器本体6の開口周縁部に、天面部形成部材11の筒状接続部17や隔壁形成部材12が、直接、螺合又は嵌合等するようにしても良い。
【0052】
また、押圧変形部15の補強部50及び薄肉部60は、何れか一方又は両者を省略することもできる。また、加圧手段として、天面部14に蛇腹状のポンプ機構を設けても良い。また、第1逆止弁及び/又は第2逆止弁としては、各種公知の逆止弁を用いることができ、例えば、スイング式逆止弁、ボール式逆止弁、スプリングディスク式逆止弁等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1,1’ 内容物押出容器
2 収容部
3 シート状の弾性体
3a 周縁部
3b 凸部が当接する部位
4 加圧手段
5 送出路
6 容器本体
7 蓋体
15 押圧変形部
22 加圧室
23,23’ 隔壁
23a 凸部(張力付与用の凸部)
23b 中央領域
23c 傾斜面
28 第1逆止弁(逆止弁)
25 送出路
33 内容物
33B,33A 剤
98 目盛り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8