【実施例】
【0033】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0034】
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が活性化されることにより、サーチュイン遺伝子が活性化されることが知られている(例えばNature, 458, 1056-1062(2009)を参照)。
【0035】
そこで、以下の実験では、ACAがAMPKを活性化するかを検討した。
ACAの調製
4-Hydroxybenzaldehyde (Wako, 12.5 g, 102.4 mmol), triethylamine (Wako, 15.5g, 1.5eq) 及び4-dimethylaminopyridine (Wako, 500mg, 0.04eq) を乾燥ジクロロメタン300mLに溶解し、0℃で撹拌しながら、tert-butyldimethylsilyl chloride (TCI, 18.5g, 1.2eq) を少しずつ加えた。室温で3時間撹拌した後、飽和NaHCO
3水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:Hexane:EtOAc =20:1)にて精製を行い、化合物1を得た(21.5g, 87%)。当該工程スキームを次に示す。
【0036】
【化3】
【0037】
次に、化合物1 (20 g, 84.6 mmol) を乾燥THF300mLに溶解し、窒素気流下、0℃でvinylmagnesium bromide (TCI, 1 mol/L in THF, 102 mL, 1.2 eq) を滴下した。室温で3時間撹拌後、0.5M HCl水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:Hexane:EtOAc =8:1)にて精製を行い、化合物2を得た(17.1 g, 76.4%)。当該工程スキームを次に示す。
【0038】
【化4】
【0039】
さらに、化合物2(12g, 45.4mmol)を乾燥THF(200mL)に溶解し、tetra-n-butylammonium Fluoride (TCI, 1 mol/L in THF, 54.5 mL, 1.2 eq)を0℃で滴下した。0℃で1時間撹拌後、飽和食塩水を加え、エーテル及びジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した後、ピリジン300mLに溶解し、無水酢酸(18.5 g, 4 eq)を加えて室温で一晩撹拌した。ピリジンを減圧留去した後、クロロホルムに溶解し、1M HCl水溶液で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:Hexane:EtOAc =4:1)にて精製を行った。ヘキサンを加えて結晶化させた後、ヘキサンにより再結晶を行い、ラセミACA(ラセミ混合物)を得た(7.01 g, 65.9%, mp. 68℃)。当該工程スキームを次に示す。
【0040】
【化5】
【0041】
また、ラセミACAのスペクトル解析結果を次に示す。
HRMS (FAB, direct) calcd for C
13H
14O
4,
[M]
+234.0892; found, 234.0916.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3); d 2.10 (s, 3 H), 2.29 (s, 3 H), 5.25 (d, 1 H, J = 10.5 Hz), 5.30 (d, 1 H, J = 17.1 Hz), 5.98 (ddd, 1 H, J = 5.9, 10.5, 17.1 Hz), 6.26 (d, 1 H, J = 5.9 Hz), 7.08 (d, 2 H, J = 8.5 Hz), 7.37 (d, 2 H, J = 8.5 Hz).
以下、得られたラセミACAを用いて検討を行った。
【0042】
AMPKの活性化の検討
細胞培養時に培地にラセミACAを加えることにより、AMPKが活性化されるかをウエスタンブロット法により検討した。AMPKはリン酸化されることにより活性化される(リン酸化AMPK(pAMPK)となる)ので、AMPK量が減り、pAMPK量が増えれば、AMPKが活性化されたことがわかる。具体的には、次のようにして検討を行った。
【0043】
マウス線維芽細胞3T3-L1前駆脂肪細胞を1×10
5 cells/mlの濃度で10%FBS を含むDMEM 培地に播種し、コンフルエントになるまで培養した。さらに、2日間培養した後、インスリン、デキサメサゾン、3−イソブチル-1-メチルキサンチンをDMEM培地中に添加し脂肪細胞への分化誘導を開始した。また、これらの分化誘導のための成分の添加と同時に、ラセミACAを最終濃度が2.5μM又は5.0μMとなるよう培地に加えた。コントロールとして、ラセミACAを添加しないものも検討した。
【0044】
分化誘導のための成分を添加してから24時間後、dishをPBSで1回洗浄し、Buffer Xで細胞を回収し、遠心分離 (10,000 rpm、10分、4℃)を行った後、上清を取り除いてBuffer Y を加えた。Buffer X及びBuffer Yの組成は、それぞれ次の表1及び表2に示す通りである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
細胞回収液を超音波処理し、ボルテックスにかけた後、さらに超音波で処理して、細胞膜を破壊した後、すばやく遠心分離 (15,000 rpm、10分、4℃) し、上清の一部をタンパク質定量に用いて、残りに×3 Sample buffer を加え、ウエスタンブロッティングに用いた。
【0048】
20μgのタンパク質をSDS-polyacrylamide gel electrophoresis (PAGE)で分離した。泳動が終わったゲルはTransfer buffer Cで5分間洗浄した。Polyfluolovinylidene (PVDF) メンブレンは、メタノールで5分間、親水基の置換を行った後、transfer buffer Cに10分間浸した。
【0049】
SDS-PAGEによってタンパク質の分離を行ったゲルは、semi-dry transfer cell (BIO-RAD Trans blot SD) を用いて、陽極側からtransfer buffer Aに浸した濾紙2枚、transfer buffer Bに浸した濾紙2枚、PVDFメンブレン、ゲル、transfer buffer C に浸した濾紙2枚を重ねて陰極板をのせ、非連続buffer法で18V、50分間通電し、ブロッティングを行った。ブロッティング終了後、PVDFメンブレンは超純水で洗浄し、blocking bufferで一夜、4℃でブロッティングを行った。
【0050】
ブロッティング終了後、PVDFメンブレンはTBS-Tで20分間洗浄し、1次抗体として1000倍希釈したpAMPKの抗体 : Anti-pAMPK (#2535) rabbit polyclonal IgG (Cell Signaling Technology)又はAnti-AMPK (#2532) rabbit polyclonal IgG (Cell Signaling Technology)が含まれるTBS-T溶液に4℃暗下で一晩浸した。反応終了後、メンブレンをTBS-T で20分間洗浄し、SNAPid (Milipore社) のwell folderに取り付け、本体に設置した。恒常的に発現することが知られているβ−actinをコントロールとして用いた。β−actin検出用抗体としては、Anti-actin [ACTN05(c4)] mouse monoclonal IgG (abcam) を用いた。Anti-actinは、10分間メンブレンに浸して反応させた。
【0051】
反応後、TBS-Tにて3回洗浄し、同様に750倍希釈の 2次抗体として、Polyclonal Goat anti-rabbit immnoglobulins/biotinylatedおよびPolylonal Goat anti-mouse immnoglobulins/biotinylated (Dako cytomation Denmark A/S.) を反応させた。最後にStreptavidin-HRP (Dako cytomation Denmark A/S.)を10分間反応させ、TBS-Tで3回洗浄した。その後、PVDFメンブレンは3,3’-diaminobenzidine, tetrahydrochloride(同仁化学研究所)溶液を用いて発色させた。
【0052】
以下の各表に、上記検討に用いた各試薬の組成を示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
pAMPKの発現量を調べたウエスタンブロットの結果を
図1に、AMPKの発現量を調べたウエスタンブロットの結果を
図2にそれぞれ示す。
図1、
図2には、上側に検出されたシグナルの写真が示され、下側に当該シグナル強度の比(
図1:pAMPK/β−アクチン、
図2:AMPK/β−アクチン)をグラフ化した図が示される。
【0058】
当該結果から、ACA濃度依存的に、細胞においてpAMPK量が増加したことがわかった。このことから、ACA濃度依存的に、AMPKが活性化されたことが確認できた。そして、サーチュイン遺伝子もACA濃度依存的に活性化される蓋然性が極めて高いことがわかった。
【0059】
ところで、ACAは、高温且つ水存在下で下記のような分子内転移反応によって4−((E)−3−ヒドロキシ−1−プロペニル)フェニルアセテート(HPA)へと変換されやすい。このため、上記検討に用いたACAにはHPAが含まれている可能性もある。
【0060】
【化6】