(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故により放射性物質(主に放射性セシウム)が拡散すると、放射性物質により汚染された土壌等の放射能汚染物が生じる。また、放射性物質により汚染された土壌等の放射能汚染物の一部が雨水等により下水道に流入すると、放射性物質により汚染された下水汚泥、あるいはその下水汚泥を焼却減容化することで放射性物質が濃縮された焼却灰が生じる。さらに、放射性物質で汚染された草木類や塵芥などの可燃性廃棄物がゴミ焼却場などで焼却減容化されると、放射性物質が濃縮されたゴミ焼却灰が生じる。
放射能汚染物は人体に有害な放射線(ガンマ線など)を放出するため、適切に除去・保管等の処置を行い、放射線被爆による健康被害を防ぐ必要がある。しかしながら、特に汚染規模が大きく、広い地域に大量の放射能汚染物が発生した場合には、放射能汚染物による被爆防止処置(放射能汚染物の除去処理、放射線の遮蔽・低減処理など)に膨大な手間と時間と費用が必要になるほか、放射能汚染物の保管場所の確保が大きな課題となる。そのため、効率的かつ迅速に放射能汚染物の処理を進めるためには、放射線の濃度レベルや土地利用等に応じて適切な処理方法を選択する必要がある。特に、広範囲に大量に発生した放射線濃度が比較的低い土壌や焼却灰などの放射能汚染物については、埋立処分あるいは原位置処理による迅速な被爆防止処置を可能とする技術が必要であり、具体的には、放射能汚染物の放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量を効果的に低減するとともに放射能汚染物の粉塵飛散を防止し、放射能汚染物の保管をより容易に行うことができる効率的かつ経済的な処理技術が求められていた。
【0003】
従来、放射能汚染物の処理技術としては、アンモニア性液体を用いて汚染土壌から放射性物質(ウラン・プルトニウム等)を含む土壌細粒を分離する方法(特許文献1)、放射線遮蔽機能のある容器、コンクリート構造体、複合板、マット(特許文献2〜6)などが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の技術では、放射性物質を分離するために大掛かりな処理システムが必要となる、分離した高濃度の放射性物質含有廃棄物の処理・保管を別途講じる必要がある、遮蔽体の製造ならびに放射能汚染物の格納作業等に多額の費用と手間が必要となる、放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の効果的な低減が期待できない等の問題があり、大量の放射能汚染物質を効率的かつ経済的に処理できるものではなかった。
従って、本発明の課題は、放射能汚染物の放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量を効果的に低減し、さらには放射能汚染物の粉塵飛散を防止し、放射能汚染物の保管をより容易に行うことができる効率的かつ経済的な処理技術の提供であり、具体的には、効率的かつ経済的な放射能汚染物の処理を可能とする処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題解決のため検討を重ねた結果、カルシウムアルミネート、アルカリ土類金属硫酸塩及びセメントを含有する処理剤を水と混合することで放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果がある組成物が形成されることを見出し、放射能汚染物に対し該処理剤を水とともに混合すること、あるいは、該処理剤と水との混合物で放射能汚染物を被覆することにより、放射能汚染物の放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量が効果的に低減できることを見出した。また、放射能汚染物に対し該処理剤を水とともに混合した場合には、放射線低減効果と併せて放射能汚染物を団粒化して粉塵の発生を防止する効果が得られることも見出した。さらに、CaOとAl
2O
3が特定のモル比で構成された非晶質カルシウムアルミネートと結晶質カルシウムアルミネートを特定割合で含むカルシウムアルミネートを用い、アルカリ土類金属硫酸塩として硫酸カルシウム及び/又は硫酸バリウムを用い、セメントとして白色ポルトランドセメントを用いることで放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果と団粒化効果が向上し、環境安全性が高まるという知見を得、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[6]に係るものである。
[1]カルシウムアルミネート、アルカリ土類金属硫酸塩及びセメントを含有する放射能汚染物処理剤。
[2]カルシウムアルミネートが、CaOとAl
2O
3が等モル比の結晶質カルシウムアルミネートと、CaOとAl
2O
3の含有モル比がCaO/Al
2O
3=1.6〜2.6の非晶質カルシウムアルミネートとを含むものである[1]の放射能汚染物処理剤。
[3]カルシウムアルミネートが、CaOとAl
2O
3が等モル比の結晶質カルシウムアルミネートと、CaOとAl
2O
3の含有モル比がCaO/Al
2O
3=1.6〜2.6の非晶質カルシウムアルミネートとを100:15〜100:120の質量比で含むものである[1]又は[2]の放射能汚染物処理剤。
[4]アルカリ土類金属硫酸塩が、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種又は2種以上である[1]〜[3]のいずれかの放射能汚染物処理剤。
[5]アルカリ土類金属硫酸塩が、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムである[1]〜[4]の放射能汚染物処理剤。
[6]セメントが、白色ポルトランドセメントである[1]〜[5]のいずれかの放射能汚染物処理剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の放射能汚染物処理剤は、焼却灰や土壌等の放射能汚染物に対し該処理剤を水とともに混合するという簡便な処理で、放射能汚染物の放射能濃度を効果的に低減できるため、大量に発生した放射能汚染物に対する被爆防止処置を効率的かつ経済的に行うことができる。しかも、該処理剤を水とともに放射能汚染物に混合すると放射能汚染物が団粒化して、粉塵の発生を防止することもできるため、処理後の放射能汚染物を埋立処分する場合や運搬する場合、あるいは放射能汚染物を原位置処理する場合などの環境安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の放射能汚染物処理剤に用いるカルシウムアルミネートは、基本的にはCaO原料とAl
2O
3原料を熱処理することにより得られる物質である。カルシウムアルミネートは化学成分としてCaOとAl
2O
3からなる結晶質やガラス化が進んだ構造の水和活性物質であれば良く、CaOとAl
2O
3に加えて他の化学成分が加わった化合物、固溶体、ガラス質物質又はこれらの混合物等でもよい。前者(結晶質)としては例えば12CaO・7Al
2O
3、CaO・Al
2O
3、3CaO・Al
2O
3、CaO・2Al
2O
3、CaO・6Al
2O
3等が挙げられ、後者(ガラス質)としては例えば、4CaO・3Al
2O
3・SO
3、11CaO・7Al
2O
3・CaF
2、Na
2O・8CaO・3Al
2O
3等が挙げられる。
【0010】
さらに、本発明で用いるカルシウムアルミネートとしては、CaOとAl
2O
3が等モル比の結晶質カルシウムアルミネートと、CaOとAl
2O
3の含有モル比がCaO/Al
2O
3=1.6〜2.6の非晶質カルシウムアルミネートとを含むものが好ましい。
【0011】
CaOとAl
2O
3が等モル比の結晶質カルシウムアルミネートは、前記のようなCaO源とAl
2O
3源をそれぞれCaO換算及びAl
2O
3換算して等モル比となるよう混合したものを、例えば1600℃で加熱し、これを徐冷すれば得られる。また、徐冷は加熱装置内での自然放冷が一般的に採用できるが、加熱装置の構造上急激な温度低下が起こる場合は、概ね10℃/分以下の降温速度になるよう加熱調整するのが好ましい。CaO源は特に限定されないが、例えば石灰石粉、消石灰や生石灰粉を好適に挙げることができ、Al
2O
3源は例えばボーキサイト粉、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミ残灰、アルミナ粉末等を好適に挙げることができる。該結晶質カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、3000〜10000cm
2/gが好ましく、これと共に使用する非結晶質カルシウムアルミネートのブレーン比表面積と概ね同じものとするのが好ましい。
【0012】
CaOとAl
2O
3の含有モル比がCaO/Al
2O
3=1.6〜2.6の非晶質カルシウムアルミネートは、CaO源とAl
2O
3源をそれぞれCaO換算及びAl
2O
3換算して当該モル比の範囲に混合したものを、例えば1400〜1900℃で加熱溶融し、これを急冷することによって得られる。急冷は、例えば溶融物の該加熱温度からの炉外取り出し、水中急冷、冷却ガスの吹き付け等の公知の急冷手法で行うことができる。CaOとAl
2O
3の含有モル比(CaO/Al
2O
3)が1.6未満では反応性が低下し、放射能汚染物に対する団粒化効果が十分得られないので好ましくない。またモル比(CaO/Al
2O
3)が2.6を超えると、ガラス化には極めて高い融点と当該温度からの急冷操作が必要になり、製造が困難となるため実用的でない。また前記非晶質カルシウムアルミネートは、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、ブレーン比表面積で3000〜10000cm
2/gにしたものを用いるのが好ましい。なお、CaO源及びAl
2O
3源は、前記結晶質カルシウムアルミネートの場合と同じものが使用できる。
【0013】
本発明で用いるカルシウムアルミネートは、前記のCaOとAl
2O
3が等モル比の結晶質カルシウムアルミネートと、前記のCaOとAl
2O
3の含有モル比がCaO/Al
2O
3=1.6〜2.6の非晶質カルシウムアルミネートと、100:10〜100:200の質量比で含むものが好ましく、100:15〜100:120の質量比で含むものがより好ましい。この質量比のカルシウムアルミネート混合物を用いることで、放射能汚染物に対する放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果及び団粒化効果を特に良好に発揮することができる。非晶質カルシウムアルミネートが少なすぎるか又は多すぎる場合は、カルシウムアルミネートの水和反応性が十分ではなく、水和生成物であるエトリンガイトの生成遅延あるいは生成量の減少が生じて放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果及び団粒化効果が低下する。
【0014】
本発明で用いるアルカリ土類金属硫酸塩としては硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。本発明ではこれらのうち、硫酸カルシウムを用いるのが好ましく、硫酸カルシウムとしては無水石膏のみならず反応活性がより高いことから半水石膏を使用しても良い。アルカリ土類金属硫酸塩は、カルシウムアルミネートの水和反応を促進する作用をもたらし、放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果及び団粒化効果の向上が期待できる。
【0015】
本発明で用いるアルカリ土類金属硫酸塩としては、硫酸カルシウムと硫酸バリウムを併用するのがより好ましく、これらを併用することにより放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果をより向上させることができる。硫酸バリウムのように密度の高い物質には、放射線(ガンマ線)の遮蔽効果があることが知られているが、カルシウムアルミネートの水和生成物であるエトリンガイトと硫酸バリウムが共存する組成物を形成させることで、より良好な放射線遮蔽効果が得られる。硫酸バリウムとしては、化学反応で製造した工業薬品である沈降性硫酸バリウムのほか、硫酸バリウムを主成分とする天然鉱物(バライト)の粉砕品(バライト粉)が使用できる。また、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムとしては、粉末度がブレーン比表面積で1000〜10000cm
2/g程度のものを用いるのが好ましい。
【0016】
アルカリ土類金属硫酸塩として硫酸カルシウムを用いる場合の配合割合は、放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果の点から、カルシウムアルミネート100質量部に対して10〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。また、硫酸バリウムを用いる場合の配合割合は、放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果と団粒化効果の点から、カルシウムアルミネート100質量部に対して30〜800質量部が好ましく、50〜500質量部がより好ましい。
【0017】
本発明で用いるセメントとしては、ポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメント、エコセメントが挙げられる。ポルトランドセメントとは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及びそれらの低アルカリ型のポルトランドセメント等を言う。混合セメントとは、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等を言う。特殊セメントとは、セメント系固化材、アルミナセメント、超速硬セメント、アウイン系セメント、超微粒子セメント、油井セメント等を言う。エコセメントとは、都市ごみ焼却残渣などの廃棄物を主原料として製造されたセメントを言う。本発明においては、これらのセメントのうち、白色ポルトランドセメントが特に好ましい。白色ポルトランドセメントはセレンや6価クロムなど有害な重金属類をほとんど含まないため、本発明の処理剤を用いて処理した放射能汚染物を埋立処分する場合、あるいは本発明の処理剤を用いて放射能汚染土壌を原位置処理する場合に環境安全性を損なう恐れがない。
【0018】
本発明では、セメントを配合することにより放射能汚染物に対する団粒化効果と放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果を向上させることができる。セメントの配合割合は、カルシウムアルミネート100質量部に対して30〜400質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましい。セメントの配合量が少なすぎると、含有効果が実質得られないことがあるので適当ではなく、多すぎると相対的に処理剤中のカルシウムアルミネートの配合量が減少し、放射線濃度あるいは該汚染物による空間線量の低減効果が低下する恐れがあるため好ましくない。また、本発明の放射能汚染物処理剤は、放射線低減効果を損なうものでない限り、ベントナイト、フライアッシュ、高炉スラグ粉末、製綱スラグ粉末、磁鉄鉱粉末、石灰石粉末、増粘剤、減水剤などを含むものであっても良い。
【0019】
本発明の放射能汚染物処理剤を焼却灰や土壌などの放射能汚染物に水とともに添加・混合して処理を行う場合は、該処理剤を、放射能汚染物100質量部に対して1〜50質量部使用するのが好ましく、2〜30質量部使用するのがより好ましい。該処理剤が少なすぎると放射線濃度の低減効果ならびに団粒化効果が十分ではないため好ましくない。一方、多すぎると放射線濃度の低減効果ならびに団粒化効果は向上するが、経済性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。また、該処理剤とともに用いる水の量は特に限定されず、処理対象物の種類や処理方法などに応じて設定するが、好ましくは該処理剤100質量部に対して30質量部以上、さらに40質量部以上とするのが良い。水量が少ないと、該処理剤の水和反応が不十分となり、放射線濃度の低減効果ならびに団粒化効果が損なわれる恐れがあるため好ましくない。
【0020】
本発明の放射能汚染物処理剤は、水とともに放射能汚染物に混合する方法で使用するほか、あらかじめ該処理剤と水との混合物を作成してから、その混合物で放射能汚染物を被覆するなどの方法で使用しても良い。該処理剤を水とともに放射能汚染物に混合する方法は、放射線濃度の低減効果と併せて放射能汚染物を団粒化して粉塵の発生を防止する効果も期待できるため、焼却灰など粉末状の放射能汚染物の処理に適している。また、ガレキ類や草木類等の放射能汚染物あるいは容器中に保管された土砂等の放射能汚染物からの放射線量(空間線量)を低減する場合には、あらかじめ該処理剤と水との混合スラリーを製造しておき、該スラリーを放射能汚染物の周囲に流し込むなどして被覆する方法が適する。また、放射能で汚染された表土(例えば、学校の校庭や未舗装の道路など)を原位置処理する場合などには、放射能汚染物(表土等)の上に放射能汚染物処理剤を散布し、次いで散水を行うことで、放射能汚染物の上面に放射線遮蔽効果のある組成物を形成することができる。
【0021】
本発明の放射能汚染物処理剤を水とともに放射能汚染物に混合する方法、あるいは該処理剤と水との混合物(スラリー)を製造する方法は特に限定されず、一般的な製造方法を用いることができる。例えば、処理後の放射能汚染物を埋立処分する場合には、パン型ミキサーや強制二軸ミキサーなどの一般的なミキサーを用いて本発明の放射能汚染物処理剤を水とともに放射能汚染物に混合してから埋め立てることができる。また、該処理剤と水との混合物を製造する場合、混合物が比較的少量の場合はハンドミキサー等、多量の場合はグラウトミキサー等を用いて混合物を製造することができる。
【実施例】
【0022】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はここに示す実施例に限定されるものではない。
【0023】
CaO源に石灰石(CaO含有量;56質量%)、Al
2O
3源にバン土頁岩(Al
2O
3含有量;88質量%)のそれぞれ粗砕粒(粒径約1mm以下)を用い、以下のA1〜A6で表すカルシウムアルミネートの粉末を作製した。その作製方法は、CaO源とAl
2O
3源を所定のモル比に配合したものを、電気炉で1800℃(±50℃)に加熱し、60分間保持した後、加熱を停止して炉内で自然放冷して得た(A1〜A3)。同様に1800℃(±50℃)に加熱し、60分間保持した後、温度1800℃の電気炉から加熱物を常温下に取り出し、取り出し後は直ちに加熱物表面に流量約100cc/秒で窒素ガスを吹き付けて急冷して得た(A4〜A6)。得られた冷却物はボールミルで粉砕し、ブレーン比表面積が5000±500cm
2/gとなるよう粉砕時間を変えて粉末度を調整した。
A1;CaO/Al
2O
3=モル比1.0の結晶質カルシウムアルミネート
A2;CaO/Al
2O
3=モル比1.7の結晶質カルシウムアルミネート
A3;CaO/Al
2O
3=モル比0.5の結晶質カルシウムアルミネート
A4;CaO/Al
2O
3=モル比1.7の非晶質カルシウムアルミネート
A5;CaO/Al
2O
3=モル比2.3の非晶質カルシウムアルミネート
A6;CaO/Al
2O
3=モル比2.9のガラス化率10%のカルシウムアルミネート
【0024】
A1〜A6のカルシウムアルミネートと次に示すB〜Dから選定される材料を用い、表1に示す配合割合でヘンシェル型ミキサーを用いて3分間乾式混合し、放射能汚染物処理剤を作製した。
B;無水石膏(ブレーン比表面積4200cm
2/g、市販試薬)
C;硫酸バリウム(ブレーン比表面積6000cm
2/g、市販試薬)
D;白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
【0025】
【表1】
【0026】
(放射能汚染物処理剤を用いた放射能汚染物の混合処理)
放射能汚染物として放射線濃度(セシウム134と137のガンマ線濃度の合計値)が12204Bq/kgである下水汚泥焼却灰を用い、この放射能汚染物に対し放射能汚染物処理剤及び水を表2に示す配合割合で添加し、ホバート式モルタルミキサーを用いて3分間混合して放射能汚染物の処理物を調整した。該処理物は、3日間常温で密封養生した後に粒径15mm以下に解砕し、さらに7日間30℃で乾燥してから放射線濃度の測定及び団粒化による粉塵防止効果の確認試験を実施した。
【0027】
(放射線濃度の測定方法)
該処理物の放射線濃度(セシウム134と137のガンマ線濃度の合計値)は、シンチレーター式ガンマ線スペクトロメーターLB2045(ベルトールドジャパン社製)で測定した。放射線濃度の測定結果を表2に示す。
【0028】
(団粒化による粉塵防止効果の確認試験方法)
該処理物3kgを円錐状に盛り立て、その後、円錐状の処理物の側面より送風機で風速8mの風を当て、円錐の外周部より50cm以上飛散した処理物を集めて質量を測定し、全処理物に対する割合を求めて粉塵飛散率(質量%)とした。粉塵飛散率を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2の結果より、本発明の放射能汚染物処理剤を放射能汚染物(焼却灰)に混合処理したものは、無処理あるいは水だけを混合処理した場合に比べて放射線濃度が大幅に低減されていることが分かる。さらに、本発明の放射能汚染物処理剤を用いて混合処理を施したものは、粉塵飛散率が極めて小さくなっており、団粒化による粉塵防止効果が良好に発揮されていることが分かる。これに対し、本発明以外の処理剤を用いた場合では、放射線濃度の低減効果と粉塵防止効果のいずれも小さいものとなった。
【0031】
(放射能汚染物処理剤のスラリーを用いた放射能汚染物の被覆処理)
放射能汚染物として放射線濃度(セシウム134と137のガンマ線濃度の合計値)が12204Bq/kgである下水汚泥焼却灰を用い、この放射能汚染物4kg(かさ容積約7リットル)を容積15リットル(内径282mm×内部高さ365mm)の放射線遮蔽容器(藤崎工業社製)に入れ、汚染物の上面を平らに均した後に10g/cm
2の重さで上面から押し固めた。次に、放射能汚染物処理剤と水をハンドミキサー(回転数200r.p.m)で3分間混合してスラリー状に調整し、該スラリーを放射線遮蔽容器内の放射能汚染物の上面に流し込んで汚染物を被覆した。スラリー中の放射能汚染物処理剤と水の配合割合及び放射能汚染物上面へのスラリーの流し込み量(被覆量)を表3に示す。
【0032】
(放射線の空間線量の測定方法)
放射能汚染物の上面を処理剤と水からなるスラリーで被覆した後、放射線遮蔽容器を密閉して常温で保管し、2日間経過後に遮蔽容器を開放してスラリー被覆物上面から高さ20cmの位置の放射線の空間線量(μSv/h)をGM管式ガイガーカウンター(ファルーム社製JG22N)で測定した。空間線量の測定結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3の結果より、本発明の放射能汚染物処理剤と水からなるスラリーを用いて放射能汚染物(焼却灰)を被覆処理したものは、無処理の場合に比べて放射線の空間線量が大幅に低減されており、スラリーの被覆量が多いほど低減効果が増加することが分かる。一方、本発明以外の処理剤を用いた場合では、空間線量の低減効果は小さいものとなった。
【0035】
(放射能汚染物処理剤の散布による放射能汚染物の遮蔽処理)
放射能汚染物として放射線濃度(セシウム134と137のガンマ線濃度の合計値)が12204Bq/kgである下水汚泥焼却灰を用い、この放射能汚染物4kg(かさ容積約7リットル)を容積15リットル(内径282mm×内部高さ365mm)の放射線遮蔽容器(藤崎工業社製)に入れ、汚染物の上面を平らに均した後に10g/cm
2の重さで上面から押し固めた。次に、放射線遮蔽容器内の放射能汚染物の上面に放射能汚染物処理剤を均等な厚みになるように散布し、続けて、散布した処理剤の上に散水を施すことで放射能汚染物の遮蔽処理を行った。放射能汚染物処理剤の散布量と散水量を表4に示す。
【0036】
(放射線の空間線量の測定方法)
放射能汚染物の上面に処理剤の散布と散水を行った後、放射線遮蔽容器を密閉して常温で保管し、2日間経過後に遮蔽容器を開放してスラリー被覆物上面から高さ20cmの位置の放射線の空間線量(μSv/h)をGM管式ガイガーカウンター(ファルーム社製JG22N)で測定した。空間線量の測定結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4の結果より、本発明の放射能汚染物処理剤を散布し、続けて散水を行って放射能汚染物(焼却灰)を遮蔽処理したものは、無処理の場合に比べて放射線の空間線量が大幅に低減されており、処理剤の散布量が多いほど低減効果が増加することが分かる。一方、本発明以外の処理剤を用いた場合では、空間線量の低減効果は小さいものとなった。