特許第5930822号(P5930822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930822CDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置及びCDQ設備の操業方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930822
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】CDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置及びCDQ設備の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 39/02 20060101AFI20160526BHJP
   B04C 5/28 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C10B39/02
   B04C5/28
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-93250(P2012-93250)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-221076(P2013-221076A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】江口 和也
(72)【発明者】
【氏名】横手 孝輔
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−203278(JP,A)
【文献】 特開昭61−114762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 1/00−57/18
B04C 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤熱コークスの冷却チャンバーから発生する循環ガスの保有する顕熱をボイラーによって回収し、前記ボイラーを通過した循環ガスを、マルチサイクロン集塵機及び左右に吸込み口を備え、前記マルチサイクロン集塵機の二次側に接続される両吸込み式ファンを介して前記冷却チャンバーに送り、定常負荷運転と該定常負荷運転時より前記循環ガスの風量を減らす低負荷運転とを交互に行うCDQ設備において、
前記マルチサイクロン集塵機をそれぞれ複数のユニットサイクロンを有する(1+2n)の区画に左右均等に分割すると共に、前記各区画に通過する前記循環ガスのオンオフを行う開閉ダンパーを設け、前記低負荷運転時に前記両吸込み式ファンの左右の吸込み口の風量の均等化を行いながら、前記循環ガスの風量に応じて前記開閉ダンパーの開閉を行う制御手段を設け、前記両吸込み式ファンを通過するダスト濃度を一定値以下に保持することを特徴とするCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置。
【請求項2】
請求項1記載のマルチサイクロン集塵装置において、前記開閉ダンパーは分割された前記各区画の入側と出側にそれぞれ設けられていることを特徴とするCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマルチサイクロン集塵装置において、前記低負荷運転時に前記ユニットサイクロンに流れる前記循環ガスの風速を、前記定常負荷運転時の風速の67%〜120%の範囲で制御することを特徴とするCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置において、前記(1+2n)の値は3又は5であることを特徴とするCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置。
【請求項5】
赤熱コークスの冷却チャンバーから発生する循環ガスの保有する顕熱をボイラーによって回収し、前記ボイラーを通過した循環ガスを、マルチサイクロン集塵機及び左右に吸込み口を備え、前記マルチサイクロン集塵機の二次側に接続される両吸込み式ファンを介して前記冷却チャンバーに送り、更に定常負荷運転と該定常負荷運転時より前記循環ガスの風量を減らす低負荷運転とを交互に行うCDQ設備の操業方法において、
前記マルチサイクロン集塵機をそれぞれ複数のユニットサイクロンを有する(1+2n)の区画に左右均等に分割し、前記各区画に通過する前記循環ガスのオンオフを行う開閉ダンパーを設け、
前記定常負荷運転時に、前記マルチサイクロン集塵機の前記各区画の開閉ダンパーを全て開にし、前記両吸込み式ファンの定常負荷運転を行う第1工程と、
前記低負荷運転時に、前記両吸込み式ファンの風量を前記定常負荷運転時より減らすと共に、前記両吸込み式ファンの左右の吸込み口の風量の均等化を行いながら、前記循環ガスの風量に応じて前記開閉ダンパーの開閉を行って、前記循環ガスが通過する前記区画の風速を確保し、前記循環ガスに含まれるダスト濃度を一定値以下に保持する第2工程とを有することを特徴とするCDQ設備の操業方法。
【請求項6】
請求項5記載のCDQ設備の操業方法において、前記低負荷運転時に前記ユニットサイクロンに流れる前記循環ガスの風速を、前記定常負荷運転時の風速の67%〜120%の範囲で制御することを特徴とするCDQ設備の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤熱コークスの冷却チャンバーから発生する循環ガス(主成分は窒素ガス)の保有する顕熱をボイラーによって回収し、ボイラーを通過した循環ガス中のダストを、マルチサイクロン集塵機によって回収し、両吸込み式ファンによって再度冷却チャンバーに送るCDQ設備(コークス乾式消火設備)に係り、特に、この設備に使用するマルチサイクロン集塵装置及びこの設備の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、コークス炉に付設して使用され、赤熱コークスを冷却チャンバーに入れて、循環ガス(不活性ガス)を通じて赤熱コークスを冷却し、冷却チャンバーから発生する高温の循環ガスの保有する顕熱をボイラーで回収し、二次集塵装置(通常、サイクロン)で除塵した後、ファンで冷却チャンバーを介して循環させるCDQ設備が開示されている。そして、コークス炉の排出する赤熱コークスの量に対応するために循環する循環ガスの風量を変動させてボイラーで常に最大蒸気量を確保できるようにしている。このCDQ設備では、ボイラーの出側に赤熱コークスから排出され循環ガスに含まれるダストを除去するCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置が使用されている。
【0003】
また、特許文献2には、ディーゼル機関の排ガスに含まれる煤塵を除去するマルチサイクロン集塵装置が提案されている。このマルチサイクロン集塵装置においては、集塵室に仕切りを設けて複数の区画に分割し、分割された各区画の入口に、排気ガスの流入を制御する開閉ダンパーを設け、全体の排気ガス流量が少ない場合、分割された所定の区画に流入する排気ガス流量を開閉ダンパーを用いて閉止して、残りの区画に流す排気ガス流量を大きくしている。その結果、残りの区画に設けられた各ユニットサイクロンの集塵性能が低下しないため、マルチサイクロン集塵装置の性能を維持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−298554号公報
【特許文献2】特開平8−80455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のCDQ設備は、循環する循環ガスの風量を変動させて稼働させているにもかかわらず、定格の循環ガスの風量で運転することで最大の集塵能力を発揮するようなCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置が使用されているが、循環ガスの流量を減らした場合、マルチサイクロンを通過する風量(即ち、風速)が下がり、遠心力を利用したこのようなマルチサイクロンにおいては、集塵の能力の低下が起こることについて何ら配慮がされていなかった。即ち、CDQ設備においては、赤熱コークスを冷却チャンバーに入れた後、所定時間(例えば、3時間)定常負荷運転(通常は設備の最大能力で行う)を行い、その後、コークス炉からの赤熱コークス供給が一時的に停止するとき等、赤熱コークスの処理量が減少するときに、風量を例えば最大負荷の40%程度まで減少させる低負荷運転を例えば1時間行っている。
【0006】
ここで、低負荷運転時に循環ガスの量を減少した状態でCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置を運転すると、CDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置を通過する循環ガスに対する集塵能力が落ちて、循環ガスに含まれるダスト量及び平均粒径が増加していた。そのため、循環ガスの循環経路にある両吸込み式ファンの羽根は、粒径の大なものが増加したダストにより摩耗が加速して両吸込み式ファンの寿命が短くなるという問題が生じていた。
【0007】
この理由について詳細に説明すると、1つのサイクロン(以下、「ユニットサイクロン」と称する)の集塵効率と風量(即ち、風速)との関係は図8(a)に示すように、風量(風速)が落ちると集塵効率は下がる。また、図8(b)に、ユニットサイクロンの風量と平均粒径比の関係を示すが、風量が減少するとダストの平均粒径比が増加する。
【0008】
一方、マルチサイクロン集塵装置の下流側に配置されるファンの羽根の摩耗量は、ダスト粒が有する運動エネルギーにより決定され、運動エネルギーは質量と風速の二乗に比例するが、質量はダスト粒径の三乗に比例するので、結局はダスト量とダスト粒径に大きく依存することになり、この様子を図8(c)に示す。
【0009】
また、特許文献2のマルチサイクロン集塵装置は、排気ガス流量が変わっても使用する集塵室を限定して、風速を維持し、高い集塵効率を得ている技術が開示されているが、ディーゼル機関の煤塵を回収するものであるため、排ガスの質は、比較的広い粒度分布のダスト(即ち、コークス粉が主体)を有するCDQ設備に使用する循環ガスとは異なっている。また、CDQ設備では省スペース化の要請のため、小型化ができ、しかも大きい循環ガスの風量を出力する両吸込み式ファンが使用されているが、特許文献2はこのような両吸込み式ファン及びこの両吸込み式ファンの羽根の摩耗についての考慮は全くなされていない。
【0010】
本発明は、CDQ設備において、循環する循環ガスの風量を変動させて稼働させても、集塵装置の除塵能力を維持して、循環ガスを循環させる両吸込み式ファンの羽根の摩耗を極力防止できるCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置及びCDQ設備の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う第1の発明に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置は、赤熱コークスの冷却チャンバーから発生する循環ガスの保有する顕熱をボイラーによって回収し、前記ボイラーを通過した循環ガスを、マルチサイクロン集塵機及び左右に吸込み口を備え、前記マルチサイクロン集塵機の二次側に接続される両吸込み式ファンを介して前記冷却チャンバーに送り、定常負荷運転と該定常負荷運転時より前記循環ガスの風量を減らす低負荷運転とを交互に行うCDQ設備において、
前記マルチサイクロン集塵機をそれぞれ複数のユニットサイクロンを有する(1+2n)の区画に左右均等に分割すると共に、前記各区画に通過する前記循環ガスのオンオフを行う開閉ダンパーを設け、前記低負荷運転時に前記両吸込み式ファンの左右の吸込み口の風量の均等化を行いながら、前記循環ガスの風量に応じて前記開閉ダンパーの開閉を行う制御手段を設け、前記両吸込み式ファンを通過するダスト濃度を一定値以下に保持する。
【0012】
即ち、低負荷運転時に、ユニットサイクロンを通過する循環ガスの風速を定常負荷運転と同様な条件又はその近傍に維持するので、集塵効率を高い状態に維持すると共に、定常負荷運転時に除去されていた、両吸込み式ファンにとって特に有害な高粒径のダストも積極的に除去される。
【0013】
第1の発明に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置において、前記開閉ダンパーは分割された前記各区画の入側と出側にそれぞれ設けられていることが好ましい。なお、ここで、開閉ダンパーを区画の入側又は出側だけに設けると、複数の区画の一部のみを運転する場合、循環ガスが他の区画をバイパスする場合があり好ましくない。
【0014】
第1の発明に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置において、前記低負荷運転時に前記ユニットサイクロンに流れる前記循環ガスの風速を、前記定常負荷運転時の風速の67%〜120%の範囲で制御するのが好ましい。なお、ユニットサイクロンに流れる循環ガスの風速をより上げることは除塵能力が上がり好ましいが、定常負荷運転時の67%以上、より好ましくは80%以上にすれば十分である。
【0015】
第1の発明に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置において、前記区画の個数(1+2n)の値は3又は5であるのが好ましい。区画の数が3の場合は、設備の構造が簡単であるが、数が増えると装置構成が複雑になるので、最大5とするのがよい。なお、左右対称に配置(左右均等に分割)される各区画の広さが異なる場合も本発明は適用される。
【0016】
前記目的に沿う第2の発明に係るCDQ設備の操業方法は、赤熱コークスの冷却チャンバーから発生する循環ガスの保有する顕熱をボイラーによって回収し、前記ボイラーを通過した循環ガスを、マルチサイクロン集塵機及び左右に吸込み口を備え、前記マルチサイクロン集塵機の二次側に接続される両吸込み式ファンを介して前記冷却チャンバーに送り、更に定常負荷運転と該定常負荷運転時より前記循環ガスの風量を減らす低負荷運転とを交互に行うCDQ設備の操業方法において、
前記マルチサイクロン集塵機をそれぞれ複数のユニットサイクロンを有する(1+2n)の区画に左右均等に分割し、前記各区画に通過する前記循環ガスのオンオフを行う開閉ダンパーを設け、
前記定常負荷運転時に、前記マルチサイクロン集塵機の前記各区画の開閉ダンパーを全て開にし、前記両吸込み式ファンの定常負荷運転を行う第1工程と、
前記低負荷運転時に、前記両吸込み式ファンの風量を前記定常負荷運転時より減らすと共に、前記両吸込み式ファンの左右の吸込み口の風量の均等化を行いながら、前記循環ガスの風量に応じて前記開閉ダンパーの開閉を行って、前記循環ガスが通過する前記区画の風速を確保し、前記循環ガスに含まれるダスト濃度を一定値以下に保持する第2工程とを有する。
【0017】
第2の発明に係るCDQ設備の操業方法において、前記低負荷運転時に前記ユニットサイクロンに流れる前記循環ガスの風速を、前記定常負荷運転時の風速の67%〜120%の範囲で制御するのがよい。なお、ユニットサイクロンに流れる循環ガスの風速をより上げることは除塵能力が上がり好ましいが、定常負荷運転時の80%以上にすれば十分である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置、及び第2の発明に係るCDQ設備の操業方法は、マルチサイクロン集塵機を左右対称な区画に分割して、それぞれの区画に開閉ダンパーを設けているので、通過する循環ガスの風量に応じて、開閉ダンパーの開閉を切り換えることによって、ユニットサイクロンを通過する風速を維持できるので、低負荷運転時においてもユニットサイクロンの集塵効率を確保でき、粒径の大きいダストがユニットサイクロンを通過するのを防止できる。
これによって、低負荷運転時においても、循環ガス中のダスト濃度を一定にでき、更に、粒径の大きいダストも各ユニットサイクロンで確実に除去できるので、両吸込み式ファンの羽根の摩耗が著しく減少し、長寿命となる。
また、マルチサイクロン集塵機を左右対称な区画に分割しているので、両吸込み式ファンの左右の吸込み口に均等に循環ガスを流すことができる。
【0019】
特に、このCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置において、開閉ダンパーが、分割された各区画の入側と出側にそれぞれ設けられた場合は、循環ガスの流れを統一して、マルチサイクロン集塵装置内の無用な流れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1、第2の実施の形態に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置を含むCDQ設備の説明図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置のマルチサイクロン集塵機と両吸込み式ファンとを接続する詳細配管の上面からの模式図である。
図3】(a)〜(c)は同マルチサイクロン集塵装置の動作状態を示す説明図、(d)は本発明の他の実施の形態に係るマルチサイクロン集塵装置の動作を示す説明図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置の動作状態の説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置の説明図である。
図6】(a)〜(d)は同CDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置の動作説明図である。
図7】(a)、(b)は従来例に係るマルチサイクロン集塵装置の動作と摩耗量を説明するグラフ、(c)、(d)は本発明の第2の実施の形態に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置の動作と摩耗量を示すグラフである。
図8】(a)、(b)、(c)はそれぞれ風量(風速)と集塵効率、平均粒径比、摩耗量比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るCDQ設備に用いるマルチサイクロン集塵装置22を含むCDQ設備10は、赤熱コークスの冷却チャンバー11と、冷却チャンバー11から発する循環ガスの顕熱を回収し冷却チャンバー11にダストキャッチャー12を介して接続される顕熱回収用のボイラー13と、ボイラー13を通過した循環ガスからダストを回収するマルチサイクロン集塵機15と、マルチサイクロン集塵機15の二次側ダクト16、17にそれぞれ左右の吸込み口18、19が接続される両吸込み式ファン20とを有し、冷却ガス(主として窒素ガス)を循環ガスとして循環して、冷却チャンバー11内の赤熱状態のコークス21を冷却し、その熱をボイラー13によって回収している。
【0022】
なお、マルチサイクロン集塵機15と両吸込み式ファン20と制御手段を有して、CDQ設備10に付設するマルチサイクロン集塵装置22が構成されている。
このCDQ設備10は、冷却チャンバー11内に充填された赤熱コークス21を冷却する冷却ガス流量(循環ガスの風量)が100%の定常負荷運転と、定常負荷運転時より循環ガスの風量を約33〜40%まで減らす低負荷運転とを交互に行っている。なお、低負荷運転は、コークス炉からの赤熱コークス供給が一時的に停止するとき等、赤熱コークスの処理量が減少する場合に行われている。
【0023】
ボイラー13に接続ダクト23を介して接続されるマルチサイクロン集塵機15は、この実施の形態では、分割された同一大きさの3個(1+2nの一例)の区画24〜26を有し、各区画24〜26にはそれぞれ同数及び同一形状のユニットサイクロン27を多数備えている。
各区画24〜26の上流側及び下流側には、それぞれ、通過する循環ガスのオンオフを行う開閉ダンパー28〜33が設けられ、区画24の上流側の開閉ダンパー28及び下流側の開閉ダンパー31、区画25の上流側の開閉ダンパー29及び下流側の開閉ダンパー32、区画26の上流側の開閉ダンパー30及び下流側の開閉ダンパー33が同時に開閉し、区画24〜26の開閉を行えるようになっている。
【0024】
なお、周知のようにマルチサイクロン集塵機15は、各区画24〜26に循環ガスを導入する入側部屋と、分離したダストを集める下段の部屋と、ダストが除去され循環ガスを集める上段の部屋とを有し、上流側の開閉ダンパー28〜30は入側部屋の上流側に、下流側の開閉ダンパー31〜33は、上段の部屋の下流側に設けられている。また、開閉ダンパー28〜33には、バタフライ開閉ダンパーを使用しているが、図示しない制御手段によって、各区画24〜26の通路の上流側及び下流側に設けられている開閉ダンパー28〜33を同時に完全開、又は完全閉の状態にするように制御している。
【0025】
各区画24〜26の出口側は、二次側ダクト16、17を通じて、両吸込み式ファン20の左右の吸込み口18、19に接続されているので、左右の吸込み口18、19に風を一定(均等)に流すために、制御手段によって、図3(a)に示すように各区画24〜26が全開(風量67〜100%)、図3(b)に示すように区画24、26が全開で区画25が全閉(風量34〜67%)、図3(c)に示すように区画24、26が全閉で区画25が全開(風量33%以下)の、左右均等に3段階に集塵風量を調整できる構造となっている。この実施の形態では、各区画24〜26を均等領域としたが、例えば、図3(d)に示すように、区画35、37をそれぞれ30%、区画36を残りの40%と区分することもできる。
【0026】
この実施の形態に係るマルチサイクロン集塵装置22においては、定常負荷運転では図3(a)に示すように、各区画24〜26は全開で運転しているが、低負荷運転を行う場合は、両吸込み式ファン20の回転数又は吸込みダンパー(両吸込み式ファンの両入り側に設けられている)の開度を徐々に下げて風量を下げる。そして、図4の点aに示すように定常負荷運転は100%で行い、風量が定常負荷運転時の例えば67%になった点bで、中央の区画25の開閉ダンパー29、32を閉じる。これによって、両側の区画24、26のみの運転となるので、点cに示すように、区画24、26のユニットサイクロン27を流れる風量(風速)が増加し、定常負荷運転時と同一になる。これによって、図8に示すように、集塵効率も増加する。従って、循環ガスに含まれる大粒径のダストが除去される。
【0027】
この状態で、更に、両吸込み式ファン20の風量を点eまで落とすと、各ユニットサイクロン27の風速が下がり集塵効率も下がることになる。そこで、全体の風量が定常負荷運転時の34%になった時点eで、図3(c)に示すように、左右の区画24、26の開閉ダンパー28、31、30、33を閉じて、中央の区画25のみの運転とする。これによって区画25のユニットサイクロン27を通過する風量が点fのように増加し、集塵効率が上昇し、大径のダストも除去される。両吸込み式ファン20の風速が減少し、かつマルチサイクロン集塵機15の集塵効率は変わらないので、両吸込み式ファン20を通過するダスト濃度を一定値以下に保持でき、従来に比較して大幅に両吸込み式ファン20の羽根の摩耗を軽減できる。
なお、マルチサイクロン集塵機15の集塵能率を変えないで、最低風量(例えば、低負荷運転時の風量を定常負荷運転の40%とする)を変える場合には、例えば図3(c)に示すように、各区画24〜26の処理量を左右対称に区分けすればよい。
【0028】
前記実施の形態において、循環ガスの風量が67%で、区画25を閉じるようにしたが、例えば、循環ガスの風量が70〜80%で区画25を閉じるようにすることもできる。この場合、区画24、25のユニットサイクロン27を通過する循環ガスの風速は、一時的に100%を超える(例えば、120%)が、この時期は冷却チャンバー11内のコークス量は少ないので、圧損が少なく、特に問題は生じない。
【0029】
続いて、図1図5図7を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係るCDQ設備40に用いるマルチサイクロン集塵装置41について説明する。
このCDQ設備40の基本的構成は、図1に示すCDQ設備10と同様であるが、マルチサイクロン集塵設備41を構成するマルチサイクロン集塵機42aの構成が異なり、左右対称に5つの区画(1+2nの一例)42〜46に分割されている。そして、各区画42〜46の上流側及び下流側には、それぞれ同時に開閉する開閉ダンパー47、48がそれぞれ設けられている。
【0030】
そして、図示しない制御手段によって、両吸込み式ファン20の風量の変動に対応して、各区画42〜46の開閉ダンパー47、48が切り換えられ、図6の(a)〜(d)に示すように、風量が100%、80%、60%、40%の4段階に切り換えられ、更に二次側ダクト16、17の風速を均等に維持している。
【0031】
この状態を、図7(c)、(d)を参照しながら説明すると、100%風量の定常負荷運転においては、開閉ダンパー47、48の全部を開いて区画42〜46の全部に循環ガスを流す。これによって各区画42〜46のユニットサイクロンは100%の風量で作動し、集塵効率は高く、両吸込み式ファン20の羽根の摩耗量は最小となる(この状態を1とする)。
【0032】
次に、低負荷運転とする場合は、各区画42〜46を全開状態で、両吸込み式ファン20の回転数又は吸込みダンパーの開度を徐々に下げて風量を80%とする。この様子を、図7(c)のp−qに示すが、マルチサイクロン集塵機42aを構成する各ユニットサイクロンの風量が80%まで減少するので、図8(a)に示すグラフから集塵効率が下がる。集塵効率が下がると、大粒のダストが増加し、図8(c)から摩耗量比は増大する(約3倍)。この様子を図7(d)に示す。
そこで、図6(b)に示すように、区画42、43、45、46を開いて区画44を閉じると、マルチサイクロン集塵機42aの通過風量が定常時の80%になり、区画42、43、45、46のユニットサイクロンの風速は、100%に戻る(図7(c)のr)ので、集塵効率は維持でき、羽根の摩耗量は減少する。
【0033】
次に、両吸込み式ファン20の吸込みダンパーの回転数又は吸込みダンパーの開度を下げて(図7(c)のq−s)、風量を定常負荷運転の60%にする(図7(c)のs)と、4つの区画42、43、45、46のユニットサイクロンの風速が下がるので、集塵効率が下がり、結果として両吸込み式ファン20の羽根の摩耗量が増加する(図7(d)参照)。
そこで、図6(c)に示すように、区画43〜45を開いて区画42、46を閉じると、マルチサイクロン集塵機42aの通過風量が定常時の60%になり、区画43〜45のユニットサイクロンの風速は、100%に戻るので、集塵効率は維持でき、羽根の摩耗量は減少する。
【0034】
この状態で、更に両吸込み式ファン20の回転数又は吸込みダンパーの開度を下げて風量を定常負荷運転の40%まで下げる(図7(c)のs−t)と、区画43〜45のユニットサイクロンの風速が下がり集塵効率が低下する。これによって、羽根の摩耗量は図7(d)のように増加するので、図6(d)に示すように、再度、区画42、44、46の開閉ダンパー47、48を閉じて、区画43、45の開閉ダンパー47、48を開にすると、区画43、45の各ユニットサイクロンの風速が100%に戻るので、集塵効率が維持でき、羽根の摩耗量が減少する。
以上の制御を行うことによって、両吸込み式ファン20の風量を徐々に低負荷運転(例えば、定常負荷運転の40%)にする場合に、両吸込み式ファン20の羽根の摩耗量を著しく減少させることができる。
【0035】
図7(a)、(b)に従来技術に係るCDQ設備及びこれに用いるマルチサイクロン集塵装置の動作を示すが、100%の風量の定常負荷運転から、40%負荷の低負荷運転に切り換える場合、マルチサイクロン集塵機を区画分けしないで、操業を行っている。この場合、マルチサイクロン集塵機の各ユニットサイクロンの風量(風速)が約40%に落ちるので、図8(a)から明らかなように、集塵効率が約55〜60%程度に落ちる。
更に、ユニットサイクロンの風速が落ちると、サイクロンによる分離限界粒子径が大きくなるため、ダストの平均粒径が大きくなる。
【0036】
この数字を具体的に記載すると、例えば、10g/Nm3のダストを含む循環ガスの風量を100%から40%に減少させた場合には、図8(a)に示すように、集塵効率が約40%低下、ダストの平均粒径は図8(b)に示すように、1.44倍になることが確認されている。従って、集塵機の各部屋を区画しないマルチサイクロン集塵機においては、図8(c)に示すように、風量が約40%に減少すると、両吸込み式ファン20のファンの摩耗量が約16倍に増えることになる。
【0037】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲の操業状況を変えることもできる。例えば、前記実施の形態においては、定常負荷運転から低負荷運転の切替を3段階又は4段階に分けて行ったが、更に、多数段又は2段階、場合によっては1段階で行うこともできる。
【符号の説明】
【0038】
10:CDQ設備、11:冷却チャンバー、12:ダストキャッチャー、13:ボイラー、15:マルチサイクロン集塵機、16、17:二次側ダクト、18、19:吸込み口、20:両吸込み式ファン、21:赤熱コークス、22:マルチサイクロン集塵装置、23:接続ダクト、24〜26:区画、27:ユニットサイクロン、28〜33:開閉ダンパー、35〜37:区画、40:CDQ設備、41:マルチサイクロン集塵装置、42a:マルチサイクロン集塵機、42〜46:区画、47、48:開閉ダンパー
図1
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図8