(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930831
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】架橋性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20160526BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20160526BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20160526BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/04
C08K5/3492
C08J7/00 302
C08J7/00CFD
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-101928(P2012-101928)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-227461(P2013-227461A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化スタイロンポリカーボネート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一郎
【審査官】
岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−161689(JP,A)
【文献】
特開2009−013343(JP,A)
【文献】
特開2009−298938(JP,A)
【文献】
特開2006−257195(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/075564(WO,A1)
【文献】
特開2009−006623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
67/00−67/04
C08J 7/00−7/18
C08K 5/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対してポリカプロラクトン(B)10〜70重量部および架橋性化合物(C)0.05〜30重量部からなり、該架橋性化合物がトリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする架橋性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の架橋性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に電離性放射線を照射して得られる、架橋処理が施された成形品。
【請求項3】
電離性放射線が、電子線またはガンマ線であることを特徴とする請求項2に記載の架橋処理が施された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。更に詳しくは、ポリカーボネート樹脂の特徴である透明性を保持したまま、耐熱性を飛躍的に向上させた成形品が得られる架橋性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられている。しかしながら、その耐熱性は必ずしも充分ではない。例えば、電気・電子分野における耐半田性が求められる部品などにおいては、通常のポリカーボネート樹脂よりも遙かに高い耐熱性が要求されることが多く、かねてから、本用途などに好適に用いることができる耐熱性に極めて優れた透明性の高いポリカーボネート樹脂が要望されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の耐熱性を改良する目的で、該樹脂を重合する際、その主鎖にフルオレン骨格を導入し耐熱性を向上させる方法(特許文献1参照)、アリル基を持つ化合物をコモノマーに用いた共重合ポリカーボネート樹脂に多官能重合性モノマーを配合して、該組成物を放射線照射により架橋させる方法(特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、これらは熱可塑性樹脂としての成形性が充分ではなく、生産効率やコストの面において不具合があるなどの理由から、今日においても商業化がなされていないのが実情である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−176325
【特許文献2】特開2007−314718
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する透明性を保持したまま、耐熱性を飛躍的に向上させた成形品が得られることができる架橋性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる架橋処理が施された成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂に特定のポリカプロラクトンと特定の架橋性化合物を特定量配合した組成物を成形してなる成形品に電離性放射線を照射することにより、驚くべきことに耐熱性が飛躍的に改良できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対してポリカプロラクトン(B)10〜70重量部および架橋性化合物(C)0.05〜30重量部からな
り、該架橋性化合物がトリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする架橋性ポリカーボネート樹脂組成物ならびに当該樹脂組成物を成形してなる成形品に電離性放射線を照射して得られる架橋処理が施された成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の架橋性ポリカーボネート樹脂組成物は、これから得られた成形品に電離性放射線を照射することにより、ポリカーボネート樹脂が本来有する優れた透明性を保持したまま耐熱性を飛躍的に向上させることが可能となり、透明で290℃以上の耐熱性が必要な用途、例えば、電子回路周辺で使用する半田実装部品などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0010】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0011】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0012】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0013】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは14000〜30000、さらに好ましくは16000〜26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0014】
本発明にて使用されるポリカプロラクトン(B)は、ε−カプロラクトンを触媒存在下で開環重合して製造されるポリマーであり、とりわけ2−オキセパノンのホモポリマーが好適に用いられる。該ポリマーは市販品として容易に入手可能で、ダウ・ケミカル社製トーンポリマー、パーストープ社製CAPAなどが用いられる。ポリカプロラクトン(B)の粘度平均分子量としては、10000〜100000のものが好適で、さらに好ましくは20000〜50000である。
【0015】
さらに、ポリカプロラクトン(B)には、ε−カプロラクトンを開環重合させる際に、1,4−ブタンジオールなどと共存させて変性したものやポリマー鎖の末端をエーテルあるいはエステル基などで置換した変性ポリカプロラクトンも含まれる。
【0016】
ポリカプロラクトン(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり10〜70重量部である。配合量が10重量部未満では架橋が充分に起こらないため耐熱性や透明性に劣り、70重量部を越えると造粒加工が困難になり、樹脂組成物のペレットを得ることができなくなることから好ましくない。好ましい配合量は、15〜60重量部、更に好ましくは25〜45重量部である。
【0017】
本発明にて使用される架橋性化合物(C)としては、その分子内にアリル基、アクリル基、メタクリル基などの不飽和基を2以上有する多官能性化合物が好適に使用される。
【0018】
上記アリル基を有する多官能性化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピルイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ブチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0019】
また、アクリル系もしくはメタクリル系の多官能性化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ―ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いる架橋性化合物(C)としては、比較的低濃度で高い架橋度を得ることができることから、アリル系化合物を用いることが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好適に用いられる。
【0021】
架橋性化合物(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.05〜30重量部である。配合量が0.05重量部未満では架橋が充分に起こらないため、耐熱性や透明性に劣り、30重量部を越えると造粒加工が困難になり、樹脂組成物のペレットを得ることができなくなることから好ましくない。好ましい配合量は、1〜20重量部、更に好ましくは5〜15重量部である。
【0022】
本発明の架橋性ポリカーボネート樹脂組成物の成形方法としては、特に制限は無いが、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、回転成形、インフレーション成形などが挙げられる。当該成形方法により所要形状に成形した成形品に対して照射する電離性放射線としては、電子線、γ線、エックス線、β線またはα線などが使用できるが、工業的生産には電子線加速器による電子線照射やコバルト−60によるγ線照射が好適に使用できる。このうち、経済性および架橋効率などの点から特に電子線照射が好ましい。
【0023】
電子線の照射量としては、30〜300KGyが好ましい。より好ましくは、70〜250KGyである。
【0024】
本発明の架橋性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に電離性放射線を照射して得られる、架橋処理が施された成形品の塩化メチレン不溶分は、40%以上であることが好ましい。より好ましくは50%以上である。
【0025】
前記塩化メチレン不溶分は、以下のように測定している。電離性放射線を照射後の成形品(試験片)を0.3g精評し(試料の初期重量)、これに100mlの塩化メチレンを加えて一夜、室温にて静置した。その後、重量既知の300メッシュの金網を用いて、前述の塩化メチレン溶液を濾過し、金網上の塩化メチレン不溶分(ゲル分)を数時間、風乾した。さらに、ゲル分を50℃に設定した防爆オーブンにて1時間乾燥させ、300メッシュ金網状のゲル分の重量(濾過・乾燥後のゲル重量)を測定した。
塩化メチレン不溶分(%):(濾過・乾燥後のゲル重量/試料の初期重量)×100
【0026】
本発明の架橋処理が施された成形品は、無数の三次元状網目構造を形成しているため、290℃以上の高温環境下においても変形しない耐熱性を具備している。
【0027】
さらに、本発明の架橋処理が施された成形品は、ポリカーボネート樹脂が本来有する優れた透明性をも具備している。
【0028】
本発明の架橋処理が施された成形品は、架橋構造を有し、優れた透明性と耐熱性を具備していることから、自動車用部品、電気・電子部品、医療用部品、各種シート、フィルムなどに幅広く利用することができる。
【0029】
本発明の各種配合成分(A)、(B)および(C)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えば高速ミキサー、タンブラー、リボンブレンダー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で溶融混練することができる。また、これら配合成分の配合順序や一括混合、分割混合を採用することについても特に制限はない。
【0030】
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、蜜蝋、ペンタエリスリトール(PETS)、グリセロールモノステアレート(GMS)などの離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ化大豆油、流動パラフィン等)や強化材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ等)等、ならびに他の樹脂を配合することができる。
【0031】
熱安定剤としてはリン系タイプが好ましく、このようなリン系安定剤には、例えば、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、ホスフェート化合物などが含まれる。ホスファイト化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0032】
ホスフェート化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。
【0033】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニルジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニルジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニルジホスホナイトなどが挙げられる。
これらの中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトトリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイトなどが好適に使用できる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、部や%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0035】
使用した配合成分は、以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂:
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−13
粘度平均分子量:21000、以下、PCと略記)
ポリカプロラクトン:
パーストープ社製 CAPA6500C
(分子量:50000、以下、PCLと略記)
架橋性化合物:
日本化成社製 トリアリルイソシアヌレート(以下、TAICと略記)
【0036】
前述の各種配合成分を表1に示す配合比率にて一括して高速ミキサーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度220℃にて混練し、架橋性ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0037】
(試験片の成形加工と電子線照射)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ60℃で7時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度240℃、射出圧力1600kg/cm
2にて試験片(50mm(巾)x50mm(長さ)x2mm(厚み))を作成した。得られた試験片をNHVコーポレーション社製モデルEBC800−35(加速電圧:800KV)により、線量200KGyにて電子線照射(空気中)を行った。
【0038】
(電子線照射後の試験片の耐熱性と透明性の評価)
上記で得られた電子線照射後の試験片を、温度290℃に設定した熱風循環オーブン内に20分間静置し、試験片をオーブンから取り出した後に、その外観状態を目視により確認した。耐熱性については、試験後の試験片が溶融せず、そのエッジが完全に残っているものを合格とした。また、透明性については、試験後の試験片が分解・発泡せず、光透過性の良いものを合格とした。
【0039】
(電子線照射後の試験片の塩化メチレン不溶分の測定)
上記で得られた電子線照射後の試験片を0.3g精評し(試料の初期重量)、これに100mlの塩化メチレンを加えて一夜、室温にて静置した。その後、重量既知の300メッシュの金網を用いて、前述の塩化メチレン溶液を濾過し、金網上の塩化メチレン不溶分(ゲル分)を数時間、風乾した。さらに、ゲル分を50℃に設定した防爆オーブンにて1時間乾燥させ、300メッシュ金網状のゲル分の重量(濾過・乾燥後のゲル重量)を測定した。
塩化メチレン不溶分(%):(濾過・乾燥後のゲル重量/試料の初期重量)×100
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
架橋性ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1〜3)にあっては、架橋処理された成形品の耐熱性および透明性のそれぞれに亘って良好な結果を示した。
【0043】
一方、架橋性ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、TAICの配合量が本発明の定める範囲より少ないため、耐熱性および透明性に劣っていた。
比較例2は、ポリカプロラクトンの配合量が本発明の定める範囲より少ないため、耐熱性および透明性に劣っていた。
比較例3は、試料に電子線が照射されていないため、耐熱性および透明性に劣っていた。
比較例4は、ポリカプロラクトンの配合量が本発明の定める範囲より多いため、造粒困難となり、ペレットが作成出来なかった。
比較例5は、TAICの配合量が本発明の定める範囲より多いため、造粒困難となり、ペレットが作成出来なかった。