特許第5930835号(P5930835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930835
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160526BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H05K7/20 T
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-107456(P2012-107456)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-236476(P2013-236476A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−054974(JP,A)
【文献】 特開2011−035267(JP,A)
【文献】 特開2006−087212(JP,A)
【文献】 特開2005−348533(JP,A)
【文献】 特開平03−268483(JP,A)
【文献】 特開2013−230010(JP,A)
【文献】 特開2010−016924(JP,A)
【文献】 特開2004−180424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L相(Lは2以上の整数)の負荷を駆動する電力変換装置であって、
L相に対応し、第1方向に他相と離間して配置されるL個の冷却フィンと、
L相に対応し、前記第1方向と垂直な第2方向に延びるL本のP極ブスバーと、
L相に対応し、前記第2方向に延びるL本のN極ブスバーと、
L相に対応し、前記第2方向に延びるL本の出力ブスバーと、
L相に対応し、それぞれが同相の前記冷却フィンに搭載されるL相のパワーモジュール群と、
前記L個の冷却フィンに前記第2方向に向かって風を供給する送風手段と、
を備え、
(i)各相のパワーモジュール群は、同相の冷却フィンの上に、前記第2方向に配置されたM個(Mは2以上の整数)のパワーモジュールを含み、
(ii)各パワーモジュールは、前記第2方向の第1辺またはそれに対向する第2辺に設けられたP極直流端子、N極直流端子および交流端子と、モジュール内に内蔵される上アームトランジスタおよび下アームトランジスタと、を有しており、
(iii)各パワーモジュールのP極直流端子およびN極直流端子はそれぞれ、同相のP極ブスバーおよびN極ブスバーと接続され、各パワーモジュールの交流端子は、同相の出力ブスバーと接続され、
(iv)前記L個の冷却フィンの間隔は、前記P極ブスバー、前記N極ブスバー、前記出力ブスバーを配置するためのスペースに応じて生じており、
前記電力変換装置には、前記L個の冷却フィンの上流部に、風が隣接する冷却フィンの間隔に入り込むのを遮蔽する第1遮蔽手段が設けられることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
i相(1≦i≦L)のP極ブスバーは、第i相の前記パワーモジュール群と、第(i−1)相の前記パワーモジュール群の間の領域に前記第2方向に延設され、
i相(1≦i≦L)のN極ブスバーは、第i相の前記パワーモジュール群と、第(i−1)相の前記パワーモジュール群の間の領域に前記第2方向に延設され、
i相(1≦i≦L)の出力ブスバーは、第i相の前記パワーモジュール群と、第(i+1)相の前記パワーモジュール群の間の領域に前記第2方向に延設されており、
前記第i相と第(i−1)相の冷却フィンの間には、前記第i相のP極ブスバー、前記第i相のN極ブスバーおよび第(i−1)相の出力ブスバーを延設するためのスペースに応じた間隔が生じていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1遮蔽手段は、板状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記P極ブスバーと前記N極ブスバーの間に電気的に設けられる複数の平滑コンデンサをさらに備え、
前記複数の平滑コンデンサが、前記第1遮蔽手段として機能することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1遮蔽手段は、ブロック状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記L個の冷却フィンの底部と対向して設けられ、前記冷却フィンを通過する風が下側に逃げるのを遮蔽する第2遮蔽手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記L個の冷却フィンはそれぞれ、複数に分割されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記L個の冷却フィンはそれぞれ、それぞれに搭載される同相のパワーモジュール群に含まれるパワーモジュールごとに分割されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電動機などの負荷を駆動するために、電力変換装置(インバータ)が利用される。 電力変換装置は、負荷の各相ごとに設けられた上アームトランジスタ、下アームトランジスタ、負荷の状態に応じて変調された制御信号を生成するコントローラ、制御信号にもとづいて上アームトランジスタおよび下アームトランジスタを駆動するゲート駆動回路、を備える。
【0003】
上アームトランジスタおよび下アームトランジスタは、FET(Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなどのスイッチ素子を含むパワーモジュールで構成される。大容量の電力変換装置では、パワーモジュールに大電流が流れるため、その冷却技術が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−54974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、かかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、パワーモジュールを適切に冷却可能な電力変換装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、L相(Lは2以上の整数)の負荷を駆動する電力変換装置に関する。電力変換装置は、P極電源ラインと、N極電源ラインと、L相に対応するL個の出力端子と、L相に対応し、第1方向に離間して配置されたL個の冷却フィンと、L相に対応するL個のパワーモジュール群と、送風手段と、第1遮蔽手段と、を備える。(i)各相のパワーモジュール群は、対応する相の冷却フィン上に第1方向と垂直な第2方向に配列されたM個(Mは2以上の整数)のパワーモジュールを含んでいる。(ii)各パワーモジュールは、P極電源ラインと接続されるP極直流端子、N極電源ラインと接続されるN極直流端子、対応する相の出力端子と接続される交流端子、P極直流端子と交流端子の間に設けられた上アームトランジスタ、交流端子とN極直流端子の間に設けられた下アームトランジスタ、を有する。送風手段は、L個の冷却フィンに第2方向に向かって風を供給する。L個の冷却フィンの上流部に設けられ、風が隣接する冷却フィンの間に入り込むのを遮蔽する
【0007】
各相のパワーモジュール群が、それと隣接する相のパワーモジュール群に対して、ある程度の間隔を空けて配置される場合に、すべてのパワーモジュールを、共通のひとつの冷却フィンにより冷却しようとすると、冷却フィンのサイズが大きくなる。この態様によれば、パワーモジュール群ごとすなわち相ごとに冷却フィンを個別に形成し、それらを離間して配置することにより、冷却フィンを小型化できる。また、冷却フィンのサイズを小さくして個数を増やすことにより、量産効果によりコストを下げることができる。さらに第1遮蔽手段を設けることにより、冷却フィンの部分に集中的に冷却媒体である風を導くことができ、パワーモジュールを適切に冷却できる。
【0008】
各パワーモジュールは、第1方向が長辺、第2方向が短辺の長方形であり、交流端子は、2つの短辺のうち第1方向の正側の短辺に沿って設けられ、P極直流端子およびN極直流端子は、第1方向の負側の短辺に沿って設けられてもよい。電力変換装置は、L相に対応するL個のP極ブスバーと、L相に対応するL個のN極ブスバーと、L相に対応するL個の出力ブスバーと、をさらに備えてもよい。
第i相(1≦i≦L)のP極ブスバーは、第i相のパワーモジュール群と、第(i−1)相のパワーモジュール群の間の領域に第2方向に延設されている。第i相(1≦i≦L)のN極ブスバーは、第i相のパワーモジュール群と、第(i−1)相のパワーモジュール群の間の領域に第2方向に延設されている。第i相(1≦i≦L)の出力ブスバーは、第i相のパワーモジュール群と、第(i+1)相のパワーモジュール群の間の領域に第2方向に延設されている。3相の場合、第1相はU相に、第2相はV相に、第3相はW相に対応する。かかる構成では、各相のパワーモジュール群の間には、ブスバーを配置する空間が必要となる。電力変換装置は、このように配置されるパワーモジュールを好適に冷却できる。
【0009】
第1遮蔽手段は、板状部材であってもよい。
【0010】
ある態様の電力変換装置は、P極電源ラインとN極電源ラインの間に電気的に設けられる複数の平滑コンデンサをさらに備えてもよい。複数の平滑コンデンサは、第1遮蔽手段として機能してもよい。
【0011】
ある態様の電力変換装置は、L個の冷却フィンの底部と対向して設けられ、冷却フィンを通過する風が下側に逃げるのを遮蔽する第2遮蔽手段をさらに備えてもよい。これにより、冷却フィンの部分に集中的に冷却媒体である風を導くことができ、パワーモジュールを適切に冷却できる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力変換装置のパワーモジュールを適切に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】大容量の電力変換装置(インバータ)の回路図である。
図2】U相のハイサイドスイッチMHUおよびローサイドスイッチMLUの構成を示す回路図である。
図3】電力変換装置のレイアウトを示す斜視図である。
図4】パワーモジュールの外観を示す斜視図である。
図5】パワーモジュール、電源ライン、出力ラインを模式的に示す平面図である。
図6】電源ラインを構成するブスバーのレイアウトを示す斜視図である。
図7】入力ラインおよび出力ラインを構成するブスバーのレイアウトを示す斜視図である。
図8】パワーモジュールおよび冷却フィンの配置を示す斜視図である。
図9】パワーモジュールおよび冷却フィンの配置を示すy−z平面の断面図である。
図10図10(a)は、第1の変形例に係る電力変換装置を示す平面図であり、図10(b)は、第2の変形例に係る電力変換装置を示す平面図である。
図11】第3の変形例に係る電力変換装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、大容量の電力変換装置(インバータ)2の回路図である。電力変換装置2は、直流電源6からの直流電圧を受け、交流信号に変換して、モータをはじめとする多相の負荷4を駆動する。たとえば直流電源6は、3相交流電圧を整流するダイオード整流回路6aと、平滑コンデンサ6bを含む。あるいは直流電源6は電池であってもよい。負荷の相数Lは任意でよいが、本実施の形態では3相の場合について具体的に説明する。
【0017】
電力変換装置2は、ハイサイドスイッチ(上アームトランジスタともいう)MH(U〜W)およびローサイドスイッチ(下アームトランジスタともいう)ML(U〜W)、ハイサイド駆動回路10H、ローサイド駆動回路10L、コントローラ12、電源14、電流検出回路16、A/Dコンバータ18、出力端子(出力ラインともいう)OUTU〜OUTWと、を備える。
【0018】
ハイサイドスイッチMH(U〜W)およびローサイドスイッチML(U〜W)は、各相(U〜W)ごとに設けられる。具体的には、ハイサイドスイッチMHU(V,W)は、対応する相の出力端子OUTU(OUTV,OUTW)とP極電源ラインLPの間に設けられる。ローサイドスイッチMLU(V,W)は、対応する相の出力端子OUTU(V,W)とN極電源ラインLNの間に設けられる。
【0019】
ハイサイド駆動回路10Hは、各相のハイサイドスイッチMH(U〜W)を駆動し、ローサイド駆動回路10LはローサイドスイッチML(U〜W)を駆動する。コントローラ12は、駆動回路10H、10Lに対する制御指令S1を生成する。
【0020】
電源回路14は、ハイサイド駆動回路10H、ローサイド駆動回路10Lそれぞれに対する電源電圧VDDH、VDDLを生成する。電流・電圧検出回路16は、電力変換装置2の各ノードの電圧、電流を検出する。A/Dコンバータ18は、電流・電圧検出回路16によって検出された電流値、あるいは電圧値S3をデジタル値に変換する。コントローラ12は、電流、電圧に応じたデジタル値に基づいて制御指令S1を生成する。
【0021】
同相のハイサイドスイッチMHとローサイドスイッチMLが同時にオンすると貫通電流が流れ、回路の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。そこで各相のハイサイド駆動回路10Hおよびローサイド駆動回路10Lは、ハイサイドスイッチMHがオン、ローサイドスイッチMLがオフの状態と、ハイサイドスイッチMHがオフ、ローサイドスイッチMLがオンの状態と、の間に、ハイサイドスイッチMHとローサイドスイッチMLがともにオフとなるデッドタイムを挿入し、貫通電流を防止する。
【0022】
図2は、U相のハイサイドスイッチMHUおよびローサイドスイッチMLUの構成を示す回路図である。V相、W相もU相と同様に構成される。
ハイサイドスイッチMHUおよびローサイドスイッチMLUは、M個のパワーモジュールPMで構成される。パワーモジュールの個数Mは、電力変換装置2の電流容量に応じて定められ、図2にはM=3の場合が示される。
【0023】
各パワーモジュールPMは、P極直流端子20、N極直流端子22、交流端子24、26、上アームトランジスタ28、下アームトランジスタ30を備える。
P極直流端子20はP極電源ラインLPと電気的に接続され、N極直流端子22はN極電源ラインLNと電気的に接続される。上アームトランジスタ28は交流端子24、26と、P極直流端子20の間に設けられ、下アームトランジスタ30は交流端子24、26と、N極直流端子22の間に設けられる。パワーモジュールPMの交流端子24、26は、出力端子OUTUと電気的に接続される。
【0024】
図3は、電力変換装置2のレイアウトを示す斜視図である。電力変換装置2は、筐体40、複数の吸気ファン42、複数の排気ファン44、整流ダイオード46、平滑コンデンサ48、冷却フィン50U〜50W、冷却フィン52、複数のパワーモジュール群PM〜PMを備える。
【0025】
L個(L=3)の冷却フィン50U〜50Wは、L相(三相)に対応して設けられ、第1方向(図中x軸方向)に離間して配置される。
【0026】
L個(L=3)個のパワーモジュール群PM〜PMは、L相(三相)に対応して設けられる。U相のパワーモジュール群PMは、U相のM個のパワーモジュールPMU1〜PMU3を含む。V相、W相も同様である。
【0027】
U相のパワーモジュール群PMを構成するパワーモジュールPMU1〜PMU3は、対応する相の冷却フィン50U上に第1方向と垂直な第2方向(y軸方向)に配列される。V相、W相も同様である。
【0028】
複数の吸気ファン42は、筐体40の手前側の側面に設けられる。複数の吸気ファン42は、3個の冷却フィン50U〜50Wに対して、第2方向(y軸方向)に向かって風を送風する。複数の排気ファン44は、筐体40の奧側の側面に設けられる。複数の平滑コンデンサ48は、図1の平滑コンデンサ6bに対応する。平滑コンデンサ48は、複数のパワーモジュールPMが配置される領域の上流に配置される。
【0029】
複数の整流ダイオード46は、図1のダイオード整流回路6aを構成する。複数の整流ダイオード46は、冷却フィン52の上に、第1方向(x軸)に配列される。冷却フィン52は、パワーモジュールPMが配置される領域の下流に配置される。
【0030】
吸気ファン42が筐体40の外部から吸い込んだ空気は、平滑コンデンサ48、冷却フィン50U〜50W、冷却フィン52を経て、排気ファン44から排気される。
【0031】
図3のパワーモジュールPM、整流ダイオード46、平滑コンデンサ48は、ブスバーを介して電気的に、かつ機械的に接続される。
【0032】
図4は、パワーモジュールPMの外観を示す斜視図である。パワーモジュールは長方形状であり、2つの交流端子24、26は、2つの短辺の一方に沿って設けられる。P極直流端子20およびN極直流端子22は、反対の短辺に沿って設けられる。P極直流端子20、N極直流端子22、交流端子24、交流端子26は、ツイスト線やブスバーなどを、ねじ止め可能となっている。
【0033】
図5は、パワーモジュールPM、電源ライン、出力ラインを模式的に示す平面図である。電力変換装置2において、電源ラインおよび出力ラインは、ブスバーで構成される。電源ブスバー62U、62V、62Wは、図1の電源ラインLP、LNに相当する。電源ブスバー62Uは、P極電源ラインLPの一部である電源ブスバー62Upと、N極電源ラインLNの一部である電源ブスバー62Unを含む。電源ブスバー62Upは、対応する相のパワーモジュールPMU1U3それぞれのP極直流端子20と接続され、電源ブスバー62Unは、対応する相のパワーモジュールPMU1U3それぞれのN極直流端子22と接続される。V相、W相についても同様である。
【0034】
出力ブスバー70U、70V、70Wは、図1の出力ラインOUTU、OUTV、OUTWに相当する。U相のブスバー70Uは、対応するU相のパワーモジュールPMU1〜PMU3それぞれの交流端子24、26と接続される。V相、W相についても同様である。
【0035】
図6は、電源ラインを構成するブスバーのレイアウトを示す斜視図である。コンデンサ用のブスバープレート60は、互いに絶縁された積層されたブスバープレート60Pおよび60Nを含む。平滑コンデンサ48はそれぞれ、その上面に第1電極E1および第2電極E2を備える。第1電極E1は、ブスバープレート60Pと接続され、第2電極E2は、ブスバープレート60Nと接続される。ブスバープレート60P、60Nはそれぞれ、図1のP極電源ラインLP、N極電源ラインLNの一部である。
【0036】
ブスバープレート60Pからは、U相、V相、W相それぞれのパワーモジュール用の電源ブスバー62P、62V、62Wが、第2方向(y軸方向)に延設される。U相の電源ブスバー62Pは、互いに絶縁されて積層されるP極ブスバーとN極ブスバーを含む。V相、V相についても同様である。W相に着目すると、電源ブスバー62WとパワーモジュールPMW1〜PMW3それぞれの直流端子20、22の間は、第3方向(z軸方向)に延設されるバーチカルブスバー64Wによって接続される。バーチカルブスバー64Wは、互いに絶縁されて積層されるP極ブスバーとN極ブスバーを含む。電源ブスバー62WのP極と、W相のパワーモジュールPMW1〜W3のP極直流端子20の間は、バーチカルブスバー64WのP極を介して接続される。電源ブスバー62WのN極と、W相のパワーモジュールPMW1〜W3のN極直流端子22の間は、バーチカルブスバー64WのN極を介して接続される。U相、V相についても同様である。電源ブスバー62U、62V、62W、64U、64V、64Wも、図1のP極電源ラインLP、N極電源ラインLNの一部である。
【0037】
ダイオード用のブスバー66は、N極ブスバーを有し、図4には図示されない整流ダイオード46と接続される。
【0038】
図7は、入力ラインおよび出力ラインを構成するブスバーのレイアウトを示す斜視図である。入力端子INR、INS、INTには、外部の商用交流電源が接続される。入力側のブスバー68R、68S、68Tは、整流ダイオード46(不図示)と、入力端子INR、INS、INTの間を接続する。
【0039】
出力端子OUTU、OUTV、OUTWには、出力ラインを形成する出力ブスバー70U、70V、70Wが接続される。W相に着目する。出力ブスバー70WはW相のパワーモジュール群PMに含まれるパワーモジュールPMW1〜W3それぞれの交流端子24、26の上部まで伸びている。バーチカルブスバー72Wは、交流端子24、26と、出力ブスバー70Wを接続する。U相、V相についても同様である。
【0040】
出力ブスバー70U、70V、70Wそれぞれには、図1の電流検出回路16であるカレントトランスCTU、CTV、CTWが設けられている。
【0041】
図5から図7を参照して説明したように、隣接する相のパワーモジュール群PMの間には、バーチカルブスバー64および72が形成される。したがって、パワーモジュール群PMとPMの間、およびPMとPMの間にはそれぞれ、ブスバーを挿入するためのスペースSP1、SP2(図5に図示)が必要である。本実施の形態では、冷却フィン50の第1方向(x軸方向)の幅を、パワーモジュールPMの幅と同程度としているため、隣接する冷却フィン50は、スペースSP1、SP2に対応する間隔、離間して配置される。
【0042】
図8は、パワーモジュールおよび冷却フィンの配置を示す斜視図である。冷却フィン50U、50V、50Wは、風洞76に固定されている。第1遮蔽手段74は、冷却フィン50U、50V、50Wの上流部に設けられた板状部材(遮蔽プレートともいう)であり、吸気ファン42から送られる風が、隣接する冷却フィンの間のスペースに入り込むのを遮蔽する。第1遮蔽手段74と風洞76は一体に形成されてもよい。
【0043】
図9は、パワーモジュールおよび冷却フィンの配置を示すy−z平面の断面図である。電力変換装置2は、3個の冷却フィン50U〜50Wの底部と対向して設けられ、冷却フィン50U〜50Wを通過する風が下側に逃げるのを遮蔽する第2遮蔽手段78をさらに備える。第2遮蔽手段78は、風洞76と一体に形成されてもよい。
【0044】
以上が電力変換装置2の構成である。続いてその動作を説明する。
電力変換装置2が始動すると、吸気ファン42および排気ファン44が回転し、風が筐体40の内部を第2方向(y軸方向)に流れる。風は、平滑コンデンサ48を通過した風は、冷却フィン50U〜50Wに供給される。第1遮蔽手段74は、風が冷却フィン50U〜50W間のスペースに入り込むのを遮蔽する。その結果、第1遮蔽手段74を設けない場合に比べて、冷却フィン50U〜50Wに供給される風量は増大する。その結果、冷却フィン50U〜50Wを効率的に冷却することができる。
【0045】
また第2遮蔽手段78を設けたことにより、一旦、冷却フィン50U〜50Wに供給された風が、下方に逃げるのを抑制できる。第2遮蔽手段78を設けない場合、冷却フィン50の下流部に進むにしたがい、風が逃げてしまうため、冷却効率が悪化するおそれがあるが、第2遮蔽手段78を設けることにより、下流に設けられるパワーモジュールPMU1、PMV1、PMW1を効率的に冷却できる。
【0046】
電力変換装置2の利点は、以下の比較技術との対比によって明確となる。
第1の比較技術においては、単一の冷却フィン50に、すべてのパワーモジュールを搭載される。この場合、冷却フィン50が大型化し、コストが高くなる。実施の形態に係る電力変換装置2では、冷却フィンを複数に分けて構成するため、量産効果によって、個々の冷却フィンのコストを下げることができる。
【0047】
第2の比較技術において、冷却フィン50U〜50Wの幅は、スペースSP1、SP2をカバーする程度に広い。この場合、冷却フィンのうち、パワーモジュールPMの直下の部分は放熱に大きく寄与するが、スペースSP1、SP2に対応する部分は、それほど放熱に寄与しない。したがって風量が同じ場合、実施の形態に係る電力変換装置2によれば、比較技術に比べてパワーモジュールを効率的に冷却することができる。
【0048】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0049】
(第1の変形例)
実施の形態では、第1遮蔽手段74として遮蔽プレートを用いる場合を説明したが本発明はそれに限定されない。図10(a)は、第1の変形例に係る電力変換装置2aを示す平面図である。第1の変形例では、第1遮蔽手段74aとして複数の平滑コンデンサ48が利用される。平滑コンデンサ48を、冷却フィン50の上流部のスペースSP1、SP2に近接して配置することにより、風が冷却フィン50の間のスペースSP1、SP2に入り込むのを防止できる。
【0050】
(第2の変形例)
図10(b)は、第2の変形例に係る電力変換装置2bを示す平面図である。第2の変形例では、第1遮蔽手段74bとしてブロック状の部材が用いられる。これにより、風が冷却フィン50の間のスペースSP1、SP2に入り込むのを防止できる。
【0051】
(第3の変形例)
実施の形態では、ひとつのパワーモジュール群に対する冷却フィン50が一体に形成される場合を説明したが、本発明はそれに限定されない。図11は、第3の変形例に係る電力変換装置2cを示す平面図である。第3の変形例において、冷却フィン50U〜50Wはそれぞれ、複数に分割して形成される。たとえば冷却フィン50は、それに搭載される対応する相のパワーモジュール群に含まれるパワーモジュールPMごとに分割されてもよい。
【0052】
上述したように、ひとつのパワーモジュール群に含まれるパワーモジュールの個数Mは、電力変換装置2の電流容量に応じて定められる。図3の構成では、パワーモジュールの個数Mが異なるいくつかの製品を設計する場合、製品ごとの冷却フィン50を、個数Mに応じて個別に設計する必要がある。これに対して、冷却フィン50をパワーモジュールごとに分割して構成することにより、パワーモジュールの個数Mが異なるいくつかの製品を設計する場合に、冷却フィン50とパワーモジュールを含むユニットの個数を変更すればよい。つまり冷却フィン50は、ひとつ設計すれば、それを流用できるため、設計を簡略化できる。また、第3の変形例では、同じ部材を多数使用することになるため、量産効果により低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
2…電力変換装置、4…負荷、6…直流電源、10…ゲートドライブ回路、12…コントローラ、14…電源、16…電流検出回路、18…A/Dコンバータ、LP…P極電源ライン、LN…N極電源ライン、PM…パワーモジュール、20…P極直流端子、22…N極直流端子、24,26…交流端子、28…上アームトランジスタ、30…下アームトランジスタ、40…筐体、42…吸気ファン、44…排気ファン、46…整流ダイオード、48…平滑コンデンサ、50,52…冷却フィン、74…第1遮蔽手段、76…風洞、78…第2遮蔽手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11