(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930859
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】路上標識装置
(51)【国際特許分類】
E01F 9/619 20160101AFI20160526BHJP
G09F 7/18 20060101ALI20160526BHJP
E01F 9/615 20160101ALN20160526BHJP
【FI】
E01F9/015
G09F7/18 S
G09F7/18 U
!E01F9/016
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-132016(P2012-132016)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-256762(P2013-256762A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】神鋼建材工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英之
(72)【発明者】
【氏名】大森 伯万
(72)【発明者】
【氏名】檜 弥生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義悟
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−180022(JP,A)
【文献】
特開平11−021827(JP,A)
【文献】
実開平03−116494(JP,U)
【文献】
国際公開第2005/040499(WO,A1)
【文献】
特開2002−069953(JP,A)
【文献】
実開平06−024010(JP,U)
【文献】
特開2001−220717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/619
G09F 7/18
E01F 9/615
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段に設けられた索条に取り付け可能な路上標識装置であって、
前記索条間に跨って配置されると共に、複数の前記索条に接するように配置されるステーと、このステーに設けられた標識体とを有し、
前記索条に接する複数の部位のうち、その第1の部位では、前記ステーが前記索条に対して脱落不能に連結され、第2の部位では、前記第1の部位を通る索条がこの第2の部位を通る索条から離れる方向に変位したときに、その係止状態を解放し得るように、前記ステーが前記索条に係止されていることを特徴とする路上標識装置。
【請求項2】
前記第2の部位には、前記ステーと同方向に延びる延出部材が設けられ、
前記第2の部位では、この延出部材と前記ステーとの間に前記索条が入り込むことでその係止状態が確保されていることを特徴とする請求項1に記載の路上標識装置。
【請求項3】
前記第1の部位では、前記索条が前記ステーに拘束されることなく連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の路上標識装置。
【請求項4】
前記ステーに補強用のリブが設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに
記載の路上標識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上に設置されるデリネーター等の路上標識装置に関し、詳細には中央分離体や路肩に設置されるケーブル式防護柵に装着可能な路上標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の路上標識装置として、例えば、
図8に示すデリネーター100が知られている。
このデリネーター100は、道路に沿って設置されたガードケーブル用の支柱101に取り付けられ、例えば、夜間走行時など、その走行車両のライトをドライバー側に反射して注意を促す装置である。
具体的には、反射器102を備えるキャップ状部材103を各支柱101の頭部に被せた後、そのキャップ状部材103を回して各反射器102を走行車線に向けて微調整し、次いでキャップ状部材103の側面に組み込まれたネジ104を締め付けて支柱101にキャップ状部材103を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平05−030217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の路上標識装置は、その設置間隔が狭いほど良好な視認性が得られる。しかしながら、上記構造のデリネーターは支柱に取り付ける構造のため、支柱の無い場所には設置することができなかった。
【0005】
また、車道に沿って設置されているため、走行車両に接触して破損および飛散することがある。とりわけ、支柱に取り付ける構造では、支柱に車両が衝突した際、その衝撃が直にデリネーターに伝わるため、デリネーターの基部が衝撃で割れ、支柱からデリネーターが脱落して周囲に飛散してしまう。
【0006】
また、路上標識装置は、道路に沿った長い区間にわたり数百〜数千個単位で設置する必要があるため、取り付けが容易で且つシンプルな構造が望まれる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたもので、場所を選ばず設置でき、また、取り付けが容易で、しかもシンプルな構造の路上標識装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、多段に設けられた索条に取り付け可能な路上標識装置であって、
前記索条間に跨って配置されると共に、複数の前記索条に接するように配置されるステーと、このステーに設けられた標識体とを有し、
前記索条に接する複数の部位のうち、その第1の部位では、前記ステーが前記索条に対して脱落不能に連結され、前記第2の部位では、前記ステーが前記索条に係止されていることを特徴とする。
【0009】
すなわち、複数本の索条が多段に張り渡されたケーブル式防護柵やガードケーブル等において、その索条間に跨るようにステーを配置し、さらにステーと各索条とが接する部位のうち、第1の部位ではステーを索条に対して脱落不能に連結し、第2の部位では索条に対するステーの振れ回りを防止すべくステーを索条に係止する。
【0010】
なお、ここで脱落不能に連結とは、索条に対してステーをいかなる位置や角度に保持しても索条とステーとの連結状態が確保されている状態を意味する。
一方、係止とは、索条に対するステーの移動を所望の方向においてのみ阻止し得る状態である。そして、索条に連結された第1の部位から離れた第2の部位を、この第2の部位を通る索条に係止することで、第1の部位を中心としたステーの振れ回りを防止している。
【0011】
また、本発明は、前記第2の部位には、前記ステーと同方向に延びる延出部材が設けられ、 前記第2の部位では、この延出部材と前記ステーとの間に前記索条が入り込むことでその係止状態が確保されている構造としてもよい。
【0012】
さらに、前記第1の部位では、前記索条の変位又は変形を妨げることなく前記ステーに連結されている構成とすることができる。
【0013】
この連結構造では、索条の変位や変形を妨げることなくステーに連結されるため、仮に索条に負荷が掛かり、索条の位置ずれ、捻れによる回転、または、その軸方向の伸び縮み等が生じた場合でも、第1の部位における連結状態は維持される。
【0014】
また、前記第2の部位における係止構造は、前記第1の部位を通る索条がこの第2の部位を通る索条から離れる方向に変位したときに、その係止状態を解放し得るように構成することができる。
【0015】
この構成では、例えば、車両が索条に衝突して索条間の距離が変わった場合、この索条の移動に伴って第2の部位の係止状態が解放されるため、索条の変形を伴った防護機能を損なうことなく、路上標識装置を設置することができる。また、索条間の距離の変化に伴う路上標識装置の破損も回避される。
【0016】
また、前記ステーは、表裏面を有し、片面のみでなくその双方に標識体が設けられている構成でもよい。また、前記ステーに補強用のリブが設けられている構成でもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上、本発明によれば、ケーブル式防護柵やガードケーブル等において、その長手方向に、場所を選ばす路上標識装置を設置できる。また、ステーを索条に係止してステーの振れを抑える構成のため、ステーと索条の連結部分では、その連結状態を確保し得る程度のシンプルな構造で足り、取り付けも容易になる。
このように本発明は、場所を選ばす設置でき、また、取り付けが容易であり、且つシンプルな構造で安価な路上標識装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本実施の形態に示す路上標識装置をケーブル式防護柵に取り付けた状態を示す図。
【
図6】デリネーターを本体ステーの側面に取り付けた状態を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳説する。ここでは、路上標識装置を中央分離帯用のケーブル式防護柵に適用した形態を説明する。まず、本発明の路上標識装置に先立ち、ケーブル式防護柵の一般的な構造について
図7を参照して説明する。
【0020】
ケーブル式防護柵2は、中央分離帯に沿って所定間隔毎に立設される支持ポスト3と、この支持ポスト3によってその上下方向に間隔を空けて多段に張り渡されたケーブルCとで構成されている。そして、車両衝突時には、その車両にケーブルが接して車両の向きを変え、対向車線へのはみ出しを阻止する。また、車両衝突時にその衝撃をケーブルCが吸収して乗員を保護する。
【0021】
上記した一般的なケーブル式防護柵2では、その上下方向に等間隔、且つ平行に通常3〜5本のケーブルCが張設されており、本実施の形態では、この多段に設けられたケーブルCのうち、その最上段のケーブルC1とその下段のケーブルC2を利用して、路上標識装置1を設置している。
なお、路上標識装置1は、最上段のケーブルC1と、その下段のケーブルC2との組み合わせのみならず、何れのケーブルCに対しても取り付けることができる。
【0022】
路上標識装置1は、
図1〜3に示すようにケーブルC1〜C2間に跨って、これらに直交するように配置される本体ステー10と、この本体ステー10に沿ってこれに重なるように設けられるケーブル保持用のステー20とを備えている。また、本体ステー10の先端には、表面及び裏面の双方に反射材31が設けられた円形の反射板30(標識体)が取り付けられている。
【0023】
本体ステー10は、耐腐食性を有する金属プレートなどで形成され、ケーブル式防護柵2の最上段に設けられたケーブルC1と、その下段に設けられたケーブルC2とに跨って配置されるように十分な長さを有する。また、その先端部分11には、反射板30を定置させるべく曲げ加工が施され、この先端部分11に反射板30が固定されている。
【0024】
一方、ケーブル保持用のステー20は、本体ステー10に比べて約半分の長さであり、その設置方向において上部近傍には、ケーブルC1の直径に合わせて折り曲げられたクランプ状のケーブル保持部21が形成されている。また、ケーブル保持用ステー20の下部には、ケーブルC2の直径に合わせてクランク状に折り曲げられたケーブル係止部22が形成されている。より詳しくは、
図3に示すように、ケーブル保持用ステー20の下端がクランク状の屈曲部23を経て更に延出され、この延出部分と本体ステー10との間にケーブルC2のスペースが確保されている。
【0025】
そして、このように形成されたケーブル保持用のステー20を、
図1に示すようにケーブルC1、およびケーブルC2の一側方から沿わせ、更に本体ステー10をケーブルC1,C2の他方からあてがって組み付ける。なお、ケーブル保持用ステー20、および、本体ステー10には、これらの組み付けに用いるボルト挿通孔13,24が形成されており(
図3参照)、これらのボルト挿通孔13,24にボルトB1を差し入れ、ナットB2で締め込むことで、両者が重ね合わされた状態に固定される。
【0026】
図1に、これら本体ステー10及びケーブル保持用ステー20をケーブルC1,C2間に組み込んだ状態を示す。
この図から理解されるように、最上段のケーブルC1は、ケーブル保持用ステー20の上部近傍に形成したクランプ状のケーブル保持部21に入り込み、且つ、他方からあてがわれた本体ステー10によってこのケーブル保持部21内に収められている。すなわち、本体ステー10は、最上段ケーブルCに対して一体化し脱落不能に連結される。
【0027】
なお、ケーブル保持部21の内寸は、ケーブルC1の直径に対して若干広めに設定され、ケーブルC1に負荷が掛かった際に、このケーブルC1が捻れたり、軸方向に伸び縮みできるように、遊び(空隙)が確保されている。
すなわち、ケーブル保持部21は、ケーブルC1を拘束することなく本体ステー10に連結している。また、上記したケーブル保持部21が第1の部位に相当する。
【0028】
一方、下段のケーブルC2は、クランク状に折り曲げられたケーブル係止部22の内側に接すると共に、他方からあてがわれた本体ステー10によって、ケーブル係止部22と本体ステー10の間に挟み込まれている。すなわち、下段のケーブルC2がこのケーブル係止部22と本体ステー10との間に入り込むことで、ケーブルC1に対する本体ステー10の振れ回りが阻止される。このようにケーブル係止部22では、ケーブル保持部21を中心とした本体ステー10の振れ回りを阻止すべく、その係止状態が確保されている。なお、上記したケーブル係止部22が第2の部位に相当する。
【0029】
このように本実施の形態に示す路上標識装置1では、ケーブルC1〜C2間を跨ぐように本体ステー10を配置すると共に、本体ステー10と各ケーブルC1,C2とが接する部位のうち、最上段のケーブルC1に接する部位では、本体ステー10が最上段のケーブルC1に対して脱落不能に連結され、下段のケーブルC2に接する部位では、最上段のケーブルC1を中心とした本体ステー10の振れ回りを防止すべく本体ステー10が下段ケーブルC2に係止される。
【0030】
また、本体ステー10をケーブルC1,C2に組み付ける際、この本体ステー10にケーブル保持用ステー20を添えてボルト締めするといった簡単な施工で路上標識装置1を設置することができ、また、部品点数も少なく構造もシンプルで、耐久性も確保される。
【0031】
また、ケーブル上であれば場所を問わず必要箇所に必要数の路上標識装置1を設置できるため、路上標識装置1としての視認性も優れる。
【0032】
また、車両等の衝突に伴い、ケーブルC1に負荷が掛かったとしてもケーブルC1はケーブル保持部21内において、その動きを拘束されることなく自由に撓み、また伸び縮みできるためケーブルの機能を損なう事もない。また、車両衝突後もその連結状態が維持される。
【0033】
また、車両の衝突を伴ってケーブルC1及びケーブルC2の何れかが強く引かれてケーブルC1,C2間の距離が変わった場合には、ケーブルC2がケーブル係止部22の下方に抜け落ち、その係止状態が即座に解除される。よって、ケーブルC1及びケーブルC2は、その動きを拘束されることなく自由に撓むことができ、また、ケーブル間の距離の変化に伴う本体ステー10、およびケーブル保持用ステー20の破損も回避される。
【0034】
このように本実施の形態に示す路上標識装置1は、場所を選ばす設置でき、また、取り付けが容易であり、且つシンプルな構造を有する。また、ケーブルの動きを妨げないため、ケーブル式防護柵2の機能を損なうこと無く設置できる。
さらに、車両衝突時には、その連結状態を維持しつつ、係止部分のみがケーブルから離脱するため、路上標識装置1の破損および飛散の双方が回避される。
【0035】
上記した実施の形態はあくまでも好適な実施形態であり、各部の形状等は各種仕様に応じて変更可能である。
例えば、上記では中央分離帯への設置を想定したため、上り車線と下り車線の双方向から反射板30を認識できるように、表面および裏面の双方に反射材31を取り付けたが、路肩等に設置する場合には片面のみに反射材31を設けてもよい。
また、前記反射板30の固定箇所は本体ステー10の先端部分としたが、
図6に示すように、本体ステー10の側面に、図示しないが支持具などを介して取り付けてもよい。
【0036】
また、本体ステー10の上下方向に伸びる補強用のリブ14を本体ステー10に設けてもよい。例えば、
図4に示すように、本体ステー10の両側縁を折り曲げて形成した断面コの字型の補強リブ14などが考えられる。
【0037】
また、上記実施の形態では、本体ステー10の下端をケーブルCに係止する際、クランク状に折り曲げたケーブル保持用ステー20を用いて係止したが、例えば、
図6に示すように本体ステー10の下方に屈曲片15を設けると共にこの屈曲片15に切り欠き15aを形成し、切り欠き15aにケーブルC2を差し入れて係止するなどの変更例も考えられる。
【0038】
また、上記した実施の形態では、上下多段に設けられたケーブルへの取り付け例を説明したが、横方向に多段に設けられたケーブルへの取り付けも可能である。具体例としては、通常、中央分離体等では上り車線および下り車線の双方にケーブルが張られており、これら上り車線側に設けられたケーブルと、下り車線側に設けられたケーブルに本体ステー10が跨るように本体ステー10を横向きに設置する。このように本実施の形態に示す路上標識装置1は、その向きを問わず設置することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、中央分離帯を想定して説明したが、その設置場所は、中央分離帯に限られず路肩の防護柵にも適用できる。また、上記説明において路上とは、道路のみならず避難経路や誘導路等をも含んでもよく、例えば、通路に沿って設置されたワイヤー式の防護手摺り柵等への適用も可能である。また、本実施の形態では索条としてケーブルを取り上げたが、クサリやロープ等に組み付けることもできる。また、標識体として反射板を例示したが、発光灯や標識等を設けても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 路上標識装置
2 ケーブル式防護柵
3 支持ポスト
10 本体ステー
11 本体ステーの先端部分
13 ボルト挿通孔
14 補強用のリブ
15 屈曲片
15a 屈曲片の切り欠き
20 ケーブル保持用のステー
21 ケーブル保持部
22 ケーブル係止部
23 クランク状の屈曲部
24 ボルト挿通孔
30 反射板
31 反射材
100 デリネーター
101 支柱
102 反射器
103 キャップ状部材
104 ネジ
B1 ボルト
B2 ナット
C ケーブル
C1 最上段のケーブル
C2 下段のケーブル