(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような集塵丸鋸においては、従来より、鋸刃の切断により発生した切粉の周辺への飛散を低減するため、すなわち、集塵効率を高めるために種々の改良がなされてきたが、依然として切粉が周辺に飛散することを避けられず、作業環境の悪化や切断作業前の養生作業および切断作業後の清掃作業の発生により作業効率の低下を招いていた。
【0005】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであって、その目的は、集塵効率の高い集塵丸鋸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る集塵丸鋸は、鋸刃と、前記鋸刃の上方を覆うソーカバーと、前記ソーカバーに接続される集塵ノズルと、を備え、前記ソーカバー内を前記集塵ノズルと接続される集塵領域と非集塵領域とに画成する仕切壁が備えられ
、前記仕切壁は、弾性体により形成されており、さらに、前記仕切壁は、前記鋸刃が挿通する溝部と、前記溝部から分岐する分岐溝とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る集塵丸鋸においては、前記仕切壁は、前記ソーカバーから前記鋸刃に向かって突設することができる。
【0009】
さらに、本発明に係る集塵丸鋸においては、前記仕切壁の前記集塵領域側の側面には、前記鋸刃側から離れる方向で前記集塵領域側から前記非集塵領域側へ傾斜した傾斜面を形成することができる。
【0011】
またさらに、本発明に係る集塵丸鋸においては、前記分岐溝は、前記鋸刃の刃先側に位置する前記溝部から前記鋸刃の回転軸と略平行に分岐することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、集塵効率の高い集塵丸鋸を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る集塵丸鋸の正面図である。
図2は本発明の実施形態に係る集塵丸鋸の右側面図である。
図3は本発明の実施形態に係る集塵丸鋸の底面図であり、一部省略している。
図4は
図1における断面A−Aを示す図である。
図5は
図2における断面B−Bを示す図であり、第1の実施形態を示している。
図6は
図1における断面C−Cを示す図であり、第1の実施形態を示している。
図7は
図2における断面B−Bを示す図であり、第2の実施形態を示している。
図8は
図1における断面C−Cを示す図であり、第2の実施形態を示している。
図9は
図1における断面D−Dの部分断面図であり、第2の実施形態を示している。また、本明細書では、本実施形態の集塵丸鋸の切断作業方向に基づき、「前、後、左、右、上、下」を決定してある。
【0016】
図1から
図3に示すように、第1の実施形態に係る集塵丸鋸は、左右方向の軸線まわりに回転する鋸刃11を備えた本体部10と、被切断材の上面を摺動し、集塵丸鋸を被切断材の上面に沿って案内するためのベース51とを備えている。本体部10は、鋸刃11を回転駆動するための駆動源であるモータを収容するモータケース12と、モータケース12の右側に配置され、モータの回転駆動を減速して鋸刃11に伝達するための歯車等からなる駆動伝達部22を収容するギヤケース21と、切断作業時に集塵丸鋸を把持するためのハンドル13と、ギヤケース21の右側に配置され、鋸刃11の上方を覆うソーカバー31と、ソーカバー31の前側上方に接続される集塵ノズル41と、切断作業を行わないときに鋸刃11を下側から覆うロアガード61とを備えている。
【0017】
ハンドル13には、集塵丸鋸の作動・停止を制御するスイッチ14が配置されている。ベース51には、鋸刃11を下方に突出させるための開口52が形成されている。ロアガード61は、鋸刃11の回転軸周りに回動自在に設置されており、反時計回りに不図示のバネにより付勢されている。また、
図5に示すように、ギヤケース21の下方にはストッパ62がボルト63により取り付けられており、ストッパ62にロアガード61が当接することで、ロアガード61の反時計回りへの回動が規制されている。
【0018】
図4に示すように、駆動伝達部22には、モータの回転駆動が減速して伝達されるギヤシャフト23と、ギヤシャフト23に鋸刃11を固定するための内フランジ25と外フランジ26と固定ボルト24とが備えられている。ギヤシャフト23の右端部23bには雌ネジ23aが形成されており、この雌ネジ23aに固定ボルト24を螺入し、内フランジ25と外フランジ26とで鋸刃11を挟持することで、ギヤシャフト23に鋸刃11が固定される。なお、内フランジ25にはその右端部に小径柱部25aが形成されており、この小径柱部25aに鋸刃11の中央部に形成された取付け孔11aを嵌合させることで精度よく固定することが可能となっている。
【0019】
図5によく示されるように、ギヤケース21の前端部には中央に孔21aが形成されたボス部21bが備えられている。また、ベース51の前部に取付けられたブラケット54には左右方向の軸線を持つネジ軸53が設置されており、孔21aとネジ軸53が回動可能に嵌合することで、本体部10がベース51に対してネジ軸53の軸線まわりに上下に所定角度回動可能となっている。また、ギヤケース21の後部には公知の切り込み深さ調整機構が備えられており、これらにより、ベース51に対する本体部10の固定角度を変更し、ベース51の下面からの鋸刃11の突出量を調整することで、鋸刃11による切り込み深さが調整可能となっている。
【0020】
図5,6に示すように、ソーカバー31は、左側ソーカバー32と右側ソーカバー33とからなる2分割構造として構成されている。左側ソーカバー32と右側ソーカバー33とはネジ止め固定されており、右側ソーカバー33はギヤケース21にネジ止め固定されている。左側ソーカバー32は、鋸刃11の回転中心より前方の領域において鋸刃11の上方を覆っており、右側ソーカバー33は、鋸刃11の前後方向全幅において鋸刃11の上方を覆っている。左側ソーカバー32より後方の領域は、ギヤケース21が鋸刃11の上方を覆う構成を採用している。すなわち、ギヤケース21は、左側ソーカバーとしての機能も併せ持つ構成となっている。ソーカバー31の前方上部には内周に凸条部33aを備える接続口33が形成されている。また、集塵ノズル41の下端部外周には係合溝41aが形成されており、接続口33の内周と集塵ノズル41の下端部外周との嵌合状態において、凸条部33aと係合溝41aが係合することで、集塵ノズル41がソーカバー31に対して分離不能かつ回動自在に接続される。また、係合溝41aの下方に形成される溝41bにはOリング41cが装着されており、接続部の気密性が保たれている。接続口33の後方下部には、鋸刃11の切断により発生した切粉を接続口33へ案内するための案内壁33bが接続口33から下方に延びて形成されている。なお、本実施形態においては、左側ソーカバー32と右側ソーカバー33は、内部の視認性を向上するために透明の樹脂により形成されている。
【0021】
ソーカバー31には、その下方から上方に延びる仕切壁34が鋸刃11の両側面に向かって突設されている。より具体的には、左側ソーカバー32から鋸刃11の左側面に向かって突設される左仕切壁34aと、右側ソーカバー33から鋸刃11の右側面に向かって突設される右仕切壁34bとが形成されている。仕切壁34は、鋸刃11の反時計回りの回転による切断作業において発生する切粉がソーカバー31の内部に放出される軌跡(
図5において矢印線Eで示す)より後方に設けられている。この仕切壁34より前側の内部領域が本発明における集塵領域に相当し、この仕切壁34より後側の内部領域が本発明における非集塵領域に相当する。また、左仕切壁34aと右仕切壁34bは、鋸刃11の外周の上側で接続口33から下方に延設される案内壁33bと接続されており、鋸刃11の切断により発生した切粉を集塵ノズル41へ案内する。なお、本実施形態においては、左仕切壁34aは左側ソーカバー32と一体に形成されており、右仕切壁34bは右側ソーカバー33と一体に形成されている。また、矢印線Eで示す軌跡は、全ての切粉の軌跡を示すものではない。すなわち、切粉の鋸刃11から放出される位置は一定ではなく、その放出位置によりその軌跡は異なる。また、鋸刃11から放出された切粉は、ソーカバー31の内面への衝突等により種々の軌跡を描くものもある。
【0022】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る集塵丸鋸においては、ソーカバー31の内部領域を集塵領域と非集塵領域に画成する仕切壁34を設けたことで、集塵領域から非集塵領域へ進入する切粉が減少し、集塵ノズル41に連結される集塵装置の集塵効率を高めることができる。これにより、切粉の周囲への飛散を低減することができ、作業環境の悪化や切断作業前の養生作業および切断作業後の清掃作業の発生による作業効率の低下を防止できる。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態に係る集塵丸鋸について
図7〜9を参酌図に加えて説明する。なお、第1の実施形態に係る集塵丸鋸と同じ構成については、説明を省略する場合がある。
【0024】
本発明の第2の実施形態に係る集塵丸鋸は、第1の実施形態に係る集塵丸鋸における仕切壁34を弾性体により形成したものである。
【0025】
図7,8に示すように、ソーカバー31には弾性体からなる仕切壁部材36が設置されている。本実施形態においては、弾性体としてNRが採用されているが、NBR等でもよい。仕切壁部材36は、左側ソーカバー32の下方から上方に延び左側ソーカバー32から鋸刃11の左側面に向かって突設される左仕切壁部36aと、右側ソーカバー33の下方から上方に延び右側ソーカバー33から鋸刃11の右側面に向かって突設される右仕切壁部36bと、左仕切壁部36aと右仕切壁部36bとを鋸刃11の外周の上側で接続する接続部36cと、左仕切壁部36aの下方に形成されるボス部36dと、右仕切壁部36bの下方に形成される係止部36eと、を備えている。左右仕切壁部36a,36bは、鋸刃11の反時計回りの回転による切断作業において発生する切粉がソーカバー31の内部に放出される軌跡(
図7において矢印線Eで示す)より後方に設けられている。左右仕切壁部36a,36bより前側の内部領域が本発明における集塵領域に相当し、左右仕切壁部36a,36bより後側の内部領域が本発明における非集塵領域に相当する。
【0026】
第2の実施形態においては、鋸刃11が挿通する左仕切壁部36aと右仕切壁部36bとの間の溝部36fの左右方向の幅(隙間)は、第1の実施形態のものより狭く設定されており、切粉の通過をより低減することができる。また、溝部36fの上方には、溝部36fからさらに左右に分岐する分岐溝36gが形成されている。なお、分岐溝36gの幅は、切粉が通過しないように0.5mm程度の幅狭に設定されている。
【0027】
図9に示すように、左仕切壁部36aの前方の側面には、鋸刃11側から左方に向かって後方に傾斜する傾斜面36hが形成されており、右仕切壁部36bの前方の側面には、鋸刃11側から右方に向かって後方に傾斜する傾斜面36iが形成されている。すなわち、左右仕切壁部36a,36bの集塵領域側の側面には、鋸刃11側から離れる方向で集塵領域側から非集塵領域側に傾斜した傾斜面36h,36iが形成されている。
【0028】
なお、第2の本実施形態の傾斜面36h,36iと同様の傾斜面を、第1の実施形態の仕切壁34に形成することも可能である。
【0029】
次に、仕切壁部材36の取り付け形態について説明する。仕切壁部材36の接続部36cは、その上方において案内壁33bの下端および下端部前面に当接させることで移動が規制されている。ボス部36dは、ボルト63によりギヤケース21に固定されており、係止部36eは、右側ソーカバー33の下端部に挟持させることで移動が規制されている。また、左右仕切壁部36a,36bは、ソーカバー31の内壁と対向する面に上下に延びる溝36j、36kが形成されており、溝36j,36kにソーカバー31に形成された突条部32a,33aとをそれぞれ嵌め込むことで移動が規制されている。なお、ボス部36dは、ロアガード61の反時計回りへの回動を規制するストッパとしての機能も併せ持つ構成となっている。
【0030】
第2の実施形態おいては、鋸刃11が挿通する溝部36fを狭く設定したため、鋸刃11を交換する際に左右仕切壁部36a,36bが鋸刃11と干渉し交換が困難となる場合があるが、仕切壁部材36を弾性体としたことで交換が可能となっている。具体的に説明すると、鋸刃11の交換作業は、ギヤシャフト23から固定ボルト26と外フランジ26を取り外した後、鋸刃11がギヤシャフト23の右端をかわす位置まで移動させてベース51の開口52から抜き取ることになるが、左右仕切壁部36a,36bの間の溝部36fが狭い場合、左右仕切壁部36a,36bと鋸刃11とが干渉することで、鋸刃11がギヤシャフト23の右端をかわす位置まで移動することができないこととなり交換が困難となる。第2の実施形態においては、左右仕切壁部36a,36bを弾性体としたことで、左右仕切壁部36a,36bが鋸刃11の押圧により撓むことで鋸刃11がギヤシャフト23の右端をかわす位置まで移動することができるため鋸刃11の交換が容易となる。
【0031】
また、溝部36fから分岐する分岐溝36gを形成したことで、左右仕切壁部36a,36bは、鋸刃11の押圧でより撓み易くなるため鋸刃交換の作業性を向上することができる。なお、本実施形態においては、分岐溝36gは溝部36fの上方から左右両方に分岐して形成したが、その他の形態も可能である。すなわち、鋸刃11で押圧される方の一方のみに分岐溝を形成してもよい。また、分岐溝は溝部36fの中間部から分岐してもよい。また、溝部36fから斜めに分岐してもよい。要するに、左右仕切壁部36a,36bを撓み易くする目的に沿った形状であればよい。
【0032】
さらに、左右仕切壁部36a,36bには傾斜面36h,36iが形成されていることから、左右仕切壁部36a,36bへ衝突した切粉は、傾斜面36h,36iにより、鋸刃11から離れる方向へ弾き返されることで、切粉が非集塵領域へ進入することを防止できる。また、切粉の衝突により左右仕切壁部36a,36bが非集塵領域側に多少撓んでも、傾斜面36h,36iにより、衝突した切粉が集塵領域側へ確実に弾き返されることで、切粉が非集塵領域へ進入することを防止できる。
【0033】
以上のように、本発明の第2の実施形態の集塵丸鋸おいては、左右仕切壁部36a,36bを弾性体で形成したことで、鋸刃交換の作業性低下を招くことなく、鋸刃11が挿通する溝部36fの左右方向の幅をより狭く設定することが可能となり、これにより集塵領域から非集塵領域へ進入する切粉がさらに減少し、集塵効率をより高めることができる。また、溝部36fに分岐溝36gを形成したことで左右仕切壁部36a,36bがより撓み易くなり、鋸刃交換の作業性を向上することができる。さらに、左右仕切壁部36a,36bに傾斜面36h,36iを形成したことで、さらに集塵効率を高めることができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々なる形態に変更することが可能である。