(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシルエステルと、2−ビニルピロリドンおよび/または(メタ)アクリル酸からなる共重合体である請求項2記載の経皮吸収製剤。
【背景技術】
【0002】
医薬品の剤型の一つとして、薬物を外皮や粘膜から体内に投与する経皮吸収製剤が知られている。このような経皮吸収製剤は経口剤や注射剤などの場合の肝臓での初回通過による薬物の代謝分解がなく、また薬物による胃腸障害などの副作用も生じずに、長時間にわたって持続的に体内に薬物投与ができるという利点を有するものである。特に、これらの経皮吸収製剤の中でも粘着性膏体中に経皮吸収用薬物を含有させた、所謂、貼付型の経皮吸収製剤は、生体内に簡便に薬物を経皮投与できると共に、投薬量を厳格に制御できるので、近年は活発に製剤開発が行われている。
【0003】
一般的な貼付型の経皮吸収製剤としては、プラスチックフィルムや不織布などの支持フィルムの片面に、経皮吸収用薬物を含有させた粘着剤層を形成したものであって、外皮もしくは粘膜に貼付して経皮吸収用薬物を体内に投与し、各種疾患予防や治療を行うことを目的にしたものである。また、薬物の経皮吸収を促進するために経皮吸収促進剤を配合したり、粘着剤層中への薬物の溶解性を向上させるための薬物溶剤助剤を配合することも検討されており、さらには皮膚面への貼付中や剥離時の皮膚刺激性を低減させるために、比較的多量の油状成分を添加した油性ゲル状の粘着剤の開発も行われている。
【0004】
上記のような経皮吸収促進剤や薬物溶解助剤、皮膚刺激低減用の油状成分は、常温で液状もしくは常温で固形状でも粘着剤層中に溶解する油性添加剤であり、製剤開発を行うに際しては、粘着剤中にこれらの成分を配合した状態で目的とする粘着特性を発揮するように設計されている。しかしながら、粘着剤層の粘着物性は、水分や酸素などの外部環境によって変動しやすく、また、粘着剤層中の油性添加剤が支持フィルムに吸着したり、支持フィルム背面から滲出すると、当然ながら粘着剤層の粘着物性が変動してしまう。特に、経皮吸収促進剤や薬物溶解助剤が支持フィルムに吸着したり、支持フィルム背面から滲出すると、粘着剤層中のこれらの成分の含有量が少なくなるので、薬物の経皮吸収性にも大きな影響を及ぼすようになる。
【0005】
例えば、特許文献1には本発明のような経皮吸収製剤において使用する支持フィルムの材質として、各種プラスチックフィルムが例示されているが、ポリエチレンやポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などから得られる支持フィルムは、柔軟性に優れるので、貼付する皮膚面への追従性に優れ、優れた貼付感を発揮するものであるが、上記したような油性成分を吸着する傾向を示す。
【0006】
一方、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系の支持フィルムは、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムと比較して、安価であると共に液状成分に対してバリアー性に優れるので、上記したような油性添加剤の吸着を抑制することができることが期待される。しかしながら、ポリエステル系の支持フィルムは、一般的に剛直性が高いので、厚みを厚くすると柔軟性に欠けるようになり、その結果、経皮吸収製剤を皮膚面に貼付した際の皮膚追従性に乏しく、貼付中の違和感が大きくなる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の経皮吸収製剤に用いる支持フィルムは、その片面に形成する粘着剤層を保持するものであって、本発明の効果を発揮するために重要な構成要件である。具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む材料から構成され、用いるエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、ケン化度が99〜100%のものを用い、好ましくは完全ケン化したものを用いることは粘着剤層中の油性添加剤の吸着や移行の抑制の点から望ましいものである。ここで、完全ケン化とは実質的にケン化度100%のものであり、具体的には99.9%以上のケン化度をいう。
【0012】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体におけるエチレン単位の比率は、20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%の範囲のものを用いることがよい。共重合体中のエチレン単位の比率が20モル%に満たない場合は、支持フィルム自体が硬くなって、皮膚貼付時にゴワゴワ感が生じたり、皮膚追従性が低下するようになって、貼付感に劣る傾向を示す。また、エチレン単位が60モル%を超える場合は、支持フィルム自体の疎水性が高まるので、粘着剤層中の油性添加剤を吸着したり、吸収しやすくなる傾向を示すので好ましくない。
【0013】
なお、本発明における支持フィルムは上記したエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で支持フィルム構成材料中に他の材料を配合してもよい。
【0014】
上記した支持フィルムは5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度の厚みのものを用いることが、製造効率の面や、得られる支持フィルムの自己支持性の維持や皮膚貼付時の良好な貼付感の点から好ましいものである。
【0015】
さらに、本発明の支持フィルムの表面、特に粘着剤層形成面に粘着剤層との接着性(投錨性)を向上させるために各種処理を行うことができる。具体的には、支持フィルム表面に凹凸処理を施す方法、化学変性層を形成する方法、不織布などの布帛を積層する方法などが挙げられるが、粘着剤層中の油性添加剤の移行や吸着を防止するという観点からは、凹凸処理や化学変性層形成処理を用いることが好ましい。
【0016】
支持フィルム表面に凹凸処理を行う方法としては、公知の方法を用いることができ、ナノインプリント処理やサンドブラスト処理、フォトレジスト処理、化学エッチング処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、スパッタエッチング処理などが挙げられる。凹凸のサイズとしては、中心線平均粗さ(Ra)が0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm程度にすることで、粘着剤層との接着性が良好となるので望ましい。また、凹凸形状は特に限定されず、球状や半球状、楕円球状などの球状、三角錐、四角錐などの多角錐形状、三角柱や四角柱などの多角柱形状などにすることができ、凹凸の配置は整列配置であってもランダム配置であってもよい。
【0017】
また、支持フィルムの表面に化学変性層を形成する方法としては、支持フィルム表面の官能基を変性する処理が挙げられ、具体的には下塗り処理層を形成する方法や、コロナ放電処理やプラズマ処理、紫外線照射処理、スパッタエッチング処理などを行う方法を採用することができる。
【0018】
下塗り処理層を形成する方法としては、例えば、エチレンイミン変性(エチレンイミンをアクリル系ポリマーにエチレンイミンを開環反応)したアクリル系ポリマーや、ポリエチレンイミンによるプライマー処理を行うことができる。つまり、エチレンイミンやポリエチレンイミン内の活性アミノ基が粘着剤層と接する界面で、粘着剤層中の官能基、例えばカルボキシル基とイオン結合やアミド結合を形成することによって、界面接着力(投錨力)を向上させることができると推定される。
【0019】
さらに、不織布などの布帛を積層する方法としては、支持フィルムにおける粘着剤層積層面側に各種材料からなる不織布を接着剤や粘着剤を用いて貼り合わせたり、加熱圧着して貼り合わせたりすることができる。不織布材料としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ジアセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの各種合成繊維、綿や羊毛、絹、麻などの天然繊維などが挙げられ、これらの単独繊維からなる不織布や、二種以上の繊維からなる混紡不織布などを用いることができる。不織布は公知の方法によって製造することができ、具体的には乾式バインダー法やサーマルボンド法、スパンボンド法、スパンレース法、エアレイポロセス法、ニードルパンチ法、TFC法、ベンリーゼ法、湿式法、メルトブローン法などを採用することができる。なお、積層する不織布は、目付量が約5〜100g/m
2程度のものを用いることが、最終的に得られる支持フィルムの柔軟性などの点で好ましいものである。
【0020】
本発明の経皮吸収製剤において、上記した支持フィルムの片面に形成する粘着剤層は、油性添加剤と経皮吸収用薬物を含有するものであり、良好な皮膚接着性の観点からは通常10〜300μm、好ましくは15〜250μmの厚みで形成される。
【0021】
粘着剤層を形成するポリマーとしては、粘着性を有するものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として共重合して得られるアクリル系粘着剤、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体や、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ネオプレンなどからなるゴム系粘着剤、シリコーンゴムや、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサンをベースにしたシリコーン系粘着剤、ポリビニルメチルエーテルや、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどからなるビニルエーテル系粘着剤、酢酸ビニルや、エチレン−酢酸ビニルなどからなるビニルエステル系粘着剤、ジメチルフタレートや、ジメチルイソフタレート、ジエチルフタレートなどのカルボン酸成分と、エチレングリコールなどの多価アルコール成分から得られるポリエステル系粘着剤などを一種もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
また、粘着剤層の凝集力を高めたり、後述する油性添加剤の保持量を増加させるためには、粘着剤層を架橋処理することができる。具体的には、紫外線照射や電子線照射などの放射線照射による物理的架橋や、イソシアネート化合物や有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート、多官能化合物などの外部架橋剤による化学的架橋や、重合反応によって粘着剤層を形成するためのポリマーを調製する場合は、多官能性単量体を共重合することによって内部架橋されたポリマーを得ることもできる。
【0023】
上記した各種粘着剤のうち、所望の粘着物性を得るための調整の行いやすさや、油性添加剤の溶解性(相溶性)、油性添加剤を多量に含有保持できること、架橋処理が比較的容易であることなどの点からは、アクリル系粘着剤が好ましく、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として共重合して得られる非水系のアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%以上重合してなるものであり、好ましくはアルキル基の炭素数が2〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%、共重合性単量体0.1〜50重量%を共重合してなる共重合体を用いることが好ましい。
【0024】
共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシル基含有単量体、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステルなどのアミノ基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミドメチルプロパン酸などのアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングルコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリルエステルなどのアルコキシル基含有単量体のほか、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾールなどの共重合性単量体などが挙げられ、これらを一種もしくは二種以上併用して上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合することによって、アクリル系粘着剤を得ることができる。
【0025】
上記粘着剤層中に含有する油性添加剤としては、粘着剤層を可塑化させて皮膚刺激性を低減したり、粘着剤層に柔軟性を付与したり、紫外線吸収能や抗酸化能を付与する成分であって、粘着剤層への均一分散性や相溶性の点からは、常温で液状を呈する化合物を用いることが好ましい。また、含有する経皮吸収用薬物の経皮吸収性を向上させたり、薬物の安定性を向上させたり、粘着剤層中への薬物の溶解性を向上させたりすることができる成分である。なお、本発明において油性添加剤としては、上記機能を有する添加剤としてだけではなく、油性添加剤自体に薬理作用を有するものであってもよい。
【0026】
このような油性添加剤としては、エチレングリコールやジエチレングルコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、オリーブ油やヒマシ油、スクアラン、ラノリンなどの油脂、流動パラフィンなどの炭化水素、各種界面活性剤、エトキシ化ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪族アルコール、ラウリル酸エチルやミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピルなどの脂肪酸アルキルエステル、オレイン酸モノグリセリドやカプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリド、グリセリンジエステル、グリセリントリエステルなどの脂肪酸グリセリルエステル、オレイン酸やレブリン酸、カプリル酸などの脂肪酸、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなどの中鎖脂肪酸トリグリセリド、N−メチルピロリドン、1,3−ブタンジオールなどが挙げられ、これらを一種もしくは二種以上併用することができる。
【0027】
また、これらの油性添加剤は、粘着剤層中に0.1〜60重量%、特に1〜50重量%の範囲で含有させることが好ましい。含有量が0.1重量%に満たない場合は、前記したような油性添加剤を含有することによる効果を充分に発揮できない場合があり、60重量%を超えて含有させた場合は、粘着剤層中に油性添加剤を安定的に保持できずに、保存中や皮膚面へ貼付中に粘着剤層から油性添加剤が滲出して安定的な効果を発揮できない場合がある。なお、粘着剤層を架橋処理して油性添加剤を保持しやすくすることもできるが、油性添加剤の含有量が多すぎると架橋処理によっても保持できる限界を超えることがある。
【0028】
上記油性添加剤のうち、粘着剤層の可塑化作用や経皮吸収用薬物の安定性や経皮吸収促進能などのバランスを総合的に評価すると、脂肪酸アルキルエステルや脂肪酸グリセリルエステルを用いることが好ましい。上記脂肪酸アルキルエステルとしては、炭素数6〜22、好ましくは12〜16の高級脂肪酸と炭素数1〜20のアルコールからなるものを用いることがよい。具体的には、ラウリル酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル,オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピルなどの脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。
【0029】
また、上記脂肪酸グリセリルエステルとしては、炭素数8〜10の高級脂肪酸とグリセリンからなるものを用いることがよい。具体的には、オレイン酸モノグリセリド、ペラルゴン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリド、カプリル酸トリグリセリドのようなモノエステル体、ジエステル体、トリエステル体などの脂肪酸グリセリルエステルが挙げられる。
【0030】
また、本発明に用いる油性添加剤のうち、炭素数が多すぎる脂肪酸や炭素数が少なすぎる脂肪酸からなるものは、粘着剤層との相溶性が悪くなったり、貼付剤を製造する際の加熱工程で揮散しやすくなる。また、油性添加剤中に二重結合を有するものでは酸化分解などによって保存安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
本発明の経皮吸収製剤における粘着剤層には、経皮吸収用薬物を含有させる。このような薬物としては経皮吸収用として使用できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、製品安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン、抗鬱剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬などの薬物を一種もしくは二種以上併用することができる。
【0032】
本発明の経皮吸収製剤は、上記のような構成からなるものであるが、一般的に粘着剤層表面を被覆保護するために公知の剥離ライナーを積層したシート状形態として提供される。また、経皮吸収製剤は包装材料にて密封包装することによって、使用するまでの保存安定性を確保できるものである。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例の記載によって限定されるものではない。
【0034】
実施例1〜10および比較例1〜2
表1に示す支持体、粘着剤組成、架橋剤、油性添加剤を用いて、支持体の片面に厚み100μmの粘着剤層を形成した経皮吸収製剤を作製した。
なお、表1に記載の材料の詳細は、以下の通りである。
【0035】
<支持フィルム>
・EVOH(EF−E):エチレン−ビニルアルコール共重合体、クラレ社製“EF−E”、ケン化度99.9%、エチレン単位の比率44モル%、厚み30μm
・EVOH(EF−F):エチレン−ビニルアルコール共重合体、クラレ社製“EF−F”、ケン化度99.9%、エチレン単位の比率32モル%、厚み30μm
・EVOH(EF−E)下塗り処理:上記EVOH(EF−E)の片面に、日本触媒社製“ポリメントNK−350”を約0.12μm厚で塗布。
・EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体、タマポリ社製“SBシリーズ”、厚み30μm
・PE:ポリエチレン、3M社製“Cotran9720”、厚み76.2μm
【0036】
<粘着剤>
・EHA/VP/AA:アクリル酸2−エチルヘキシルエステル/2−ビニルピロリドン/アクリル酸の共重合体
・EHA/AA:アクリル酸2−エチルヘキシルエステル/アクリル酸の共重合体
【0037】
<架橋剤>
・ALCH:アルミニウムエチルアセテート・ジイソプロピレート、川研ファインケミカルズ社製
【0038】
<油性添加剤>
・IPM:ミリスチン酸イソプロピル
・GTC:トリカプリル酸グリセリル
【0039】
架橋処理を行っている実施例1〜4および実施例7〜10にて得られた経皮吸収製剤は、粘着剤59.88重量部に対して油性添加剤40重量部を含有させ、架橋剤0.12重量部によって架橋処理を行った粘着剤層を形成したものである。
また、架橋処理を行っていない実施例5〜6にて得られた経皮吸収製剤は、粘着剤60重量部に対して油性添加剤40重量部を含有させた粘着剤層を形成したものである。
比較例1〜2にて得られた経皮吸収製剤は、粘着剤59.88重量部に対して油性添加剤40重量部を含有させ、架橋剤0.12重量部によって架橋処理を行った粘着剤層を形成したものである。
【0040】
【表1】
【0041】
各実施例および比較例品にて得られた経皮吸収製剤における支持フィルムへの油性添加剤の吸着率を以下のように測定し、表1に併記した。
【0042】
<吸着率>
得られた経皮吸収製剤を25℃で30日間密封保存したのち、5cm
2の大きさに裁断し、支持フィルムと粘着剤層を剥離した。
粘着剤層を剥離した支持フィルム中から油性添加剤を抽出して、支持フィルムへの油性添加剤の吸着量を測定した。測定は支持フィルムを抽出溶剤(IPMの抽出:n−ヘキサン、GTCの抽出:N,N−ジメチルアセトアミド)に40℃で1時間浸漬したのち、ガスクロマトグラフィーを用いてFID検出器にて定量した。吸着率は、経皮吸収製剤の作製時に粘着剤層中に配合する油性添加剤の含有量を100重量%として、上記のように抽出、測定した油性添加剤の量の比率を%で表した。
【0043】
表1の結果から明らかなように、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる支持フィルムを用いた実施例品では粘着剤層中に含有する油性添加剤を実質的に全く吸着せず、支持フィルムとして一般的に使用されているエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムやポリエチレンフィルムでは油性添加剤の吸着が大きいものであった。
従って、本発明の経皮吸収製剤では粘着剤中に含有する油性添加剤が支持フィルムに吸着、移行することがないので、当然ながら支持フィルム背面から油性添加剤が滲出することもなく、粘着剤層の粘着物性を安定に維持できると共に、含有する経皮吸収用薬物の安定した経皮吸収性を維持できるものであることが判る。