特許第5930880号(P5930880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930880
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】浴室床
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   E03C1/20 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-147737(P2012-147737)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9523(P2014-9523A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 和典
(72)【発明者】
【氏名】重白 賢志
(72)【発明者】
【氏名】利川 史佳
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−007298(JP,A)
【文献】 特開2010−104627(JP,A)
【文献】 特開2006−177093(JP,A)
【文献】 特開2004−176324(JP,A)
【文献】 特開2002−364045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が洗い場床となっている洗い場パンと、
前記洗い場パンの周縁部を載せた状態で支持するフレームと、
前記洗い場パンの下面に下方へ突出するように形成され、少なくとも下端部が前記フレームの上面よりも下方に配されるリブと、
前記フレームから下方へ延びて床スラブに載置される第1支持脚と、
前記洗い場パンのうち前記周縁部で囲まれた領域に設けられ、下方へ延びて前記床スラブに載置される第2支持脚とを備えていることを特徴とする浴室床。
【請求項2】
前記フレームが、
洗い場の3面の内壁に沿うように配置されて、前記洗い場パンの前記周縁部を支持する3本の壁沿い梁と、
洗い場と浴槽との境界に沿うように配置されて、前記洗い場パンの前記周縁部を支持する1本の境界梁と、
前記境界梁と略平行をなし、前記境界梁と平行な前記壁沿い梁よりも前記境界梁側に寄った位置に配置された内梁とを備えて構成され、
前記第1支持脚が、前記内梁に設けられていることを特徴とする請求項1記載の浴室床。
【請求項3】
洗い場と浴槽とが並ぶ方向において、前記第2支持脚が前記洗い場パンの中央よりも前記浴槽側に寄った位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の浴室床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室床に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴室の床スラブ上に設置される浴室床として、床スラブに載置される方形のフレームと、フレームに載置される洗い場パンとを備えたものが開示されている。フレームには、洗い場パンを下から支えるために格子状の桟部が張り渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−169805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の浴室床は、フレームを床スラブに設置した状態で、洗い場パン上の水を排出するための配管作業を行う場合、格子状に張り渡した桟が邪魔になって作業がし難いという問題がある。具体的には、桟があることにより洗い場パンの上面側からフレームの下へ配管を通すことができないので側面から配管を通さなければならないという点や、格子状の桟の隙間から手を差し入れて配管作業を行わなければならないという点により、作業し難いという問題がある。また、配管に干渉しないように桟の位置を高くする必要があるため、洗い場パンの設置高さが高くなってしまうという問題もある。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、フレームを床スラブに設置した状態での配管作業を行い易く、洗い場パンを全領域に亘って安定して支持できる浴室床を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の浴室床は、
表面が洗い場床となっている洗い場パンと、
前記洗い場パンの周縁部を載せた状態で支持するフレームと、
前記洗い場パンの下面に下方へ突出するように形成され、少なくとも下端部が前記フレームの上面よりも下方に配されるリブと、
前記フレームから下方へ延びて床スラブに載置される第1支持脚と、
前記洗い場パンのうち前記周縁部で囲まれた領域に設けられ、下方へ延びて前記床スラブに載置される第2支持脚とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この浴室床は、洗い場パンの周縁部をフレームと第1脚部とで支持するとともに、洗い場パンのうち周縁部で囲まれた領域を第2脚部で支持しているので、洗い場パンを全領域に亘って安定して支持することができる。また、フレームの中央部には、洗い場パンを支持するための格子状の桟を張り渡す必要がないので、フレームを床スラブに設置した状態で、洗い場パン上の水を排出するための配管作業を行う際の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例の浴室床の分解斜視図
図2】浴室に洗い場用フレームと浴槽用フレームを設置した状態をあらわす平面図
図3】浴室に洗い場用フレーム、洗い場パン、及び浴槽を設置した状態をあらわす平面図
図4】浴室に洗い場用フレーム、洗い場パン、及び浴槽を設置した状態をあらわす断面図
図5】長辺梁と洗い場パンとの固定構造をあらわす部分拡大断面図
図6】浴室に洗い場用フレームを設置した状態をあらわす断面図
図7】洗い場用フレームに排水トラップと排水パイプを取り付けた状態をあらわす断面図
図8図7の状態から、洗い場パンを設置する様子をあらわす断面図
図9】洗い場用フレームに洗い場パンを取り付けた状態において、浴槽用フレームを取り付ける様子をあらわす断面図
図10】浴槽用フレームを設置した状態をあらわす断面図
図11図3のX−X線断面図
図12図3のY−Y線断面図
図13】洗い場パンと目皿との取付け構造をあらわす部分拡大平面図
図14】目皿の平面図
図15】目皿の底面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の浴室床は、
前記フレームが、
洗い場の3面の内壁に沿うように配置されて、前記洗い場パンの前記周縁部を支持する3本の壁沿い梁と、
洗い場と浴槽との境界に沿うように配置されて、前記洗い場パンの前記周縁部を支持する1本の境界梁と、
前記境界梁と略平行をなし、前記境界梁と平行な前記壁沿い梁よりも前記境界梁側に寄った位置に配置された内梁とを備えて構成され、
前記第1支持脚が、前記内梁に設けられていてもよい。
この構成によれば、洗い場の内壁のうち境界梁と平行な内壁から逆梁が張り出している場合や、洗い場の内壁のうち境界梁と平行な内壁に沿って既存配管が設けられている場合でも、第1支持脚を逆梁や既存配管と干渉させずに設けることができる。
【0009】
本発明の浴室床は、
洗い場と浴槽とが並ぶ方向において、前記第2支持脚が前記洗い場パンの中央よりも前記浴槽側に寄った位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、浴槽を設置せずに洗い場パンをフレームに載せた状態にしておけば、浴槽の設置予定領域側から床スラブと洗い場パンとの間に手を差し入れたときに、第2支持脚に手が届き易いので、第2支持脚を床スラブに設置する際の作業性が良い。
【0010】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図15を参照して説明する。
【0011】
<浴室床20の全体構成>
本実施例の浴室床20は、マンションや戸建て住宅の浴室10内に設けられる。浴室10は、機能上、洗い場11と浴槽66とで構成されている。浴室床20は洗い場11用の防水床として機能する。図1に示すように、浴室床20は、金属製の洗い場用フレーム21(本発明の構成要件であるフレーム)と、洗い場用フレーム21に取り付けた5本の第1支持脚28と、合成樹脂製の洗い場パン30と、洗い場パン30に取り付けた3本の第2支持脚40とを備えて構成されている。また、浴室床20には、排水トラップ50と、浴槽用フレーム60とが組み付けられるようになっている。尚、以下の説明における前後の方向については、便宜上、洗い場11側を前側、浴槽66側を後側ということにする。
【0012】
<洗い場用フレーム21>
図1,2に示すように、洗い場用フレーム21は、全体として長辺を左右方向に向けた長方形をなし、長辺梁22(本発明の構成要件である壁沿い梁)と、長辺梁22の左右両端から後方へ直角に延出する左右対称な一対の短辺梁23(本発明の構成要件である壁沿い梁)と、長辺梁22と平行をなして左右両短辺梁23の後端同士を連結する境界梁24とを備えている。図2に示すように、長辺梁22と短辺梁23は、浴室10の内壁12のうち洗い場11を構成する3面の内壁12に沿うように配置される。境界梁24は、洗い場11と浴槽66(浴槽領域17)との境界に沿うように配置される。
【0013】
洗い場用フレーム21は、長辺梁22及び境界梁24と平行をなして、左右両短辺梁23の間に張り渡された1本の内梁25を備えている。内梁25は、長辺梁22よりも少し境界梁24側へずれた位置、つまり、前後方向(洗い場11と浴槽66が並ぶ方向と平行な方向)において、洗い場用フレーム21の中央よりも長辺梁22側に寄った位置に配置されている。図1,4に示すように、境界梁24の下面には、左右に間隔を空けた一対の連結脚27が下向きに突出して固定されている。
【0014】
<第1支持脚28>
5本の第1支持脚28は、いずれも、高さ調整(長さ調整)の機構(図示省略)を有している。図2,4に示すように、5本のうち3本の第1支持脚28は、内梁25の長さ方向における略中央位置と、内梁25の両端部近傍位置とに設けられている。この3本の第1支持脚28は、内梁25から下方へ鉛直方向に突出している。5本のうち2本の第1支持脚28は、連結脚27に設けられている。2本の第1支持脚28は、連結脚27の下端面から下方へ鉛直方向に突出している。図2に示すように、内梁25に設けた3本の第1支持脚28のうち中央の第1支持脚28は、左右方向において境界梁24の第1支持脚28の間に位置し、両側の2本の第1支持脚28は、境界梁24の第1支持脚28よりも端部側に位置している。これらの第1支持脚28は、その下端の位置を個別に上下方向に調節できるようになっている。第1支持脚28の下端は、浴室10の床スラブ15(洗い場領域16)の上面に載置されて接着されるようになっている。
【0015】
<洗い場パン30>
図3,4に示すように、洗い場パン30は、全体として一枚板状をなし、床スラブ15における洗い場領域16の全体を覆うように左右方向に長い長方形をなす。洗い場パン30は、洗い場用フレーム21とほぼ整合する形状及び大きさとされている。洗い場パン30の表面(上面)は、洗い場床となっていて、防水機能を備えている。洗い場パン30の周縁部31は、その全周に亘り、長辺梁22の上面、短辺梁23の上面、及び境界梁24の上面に載置された状態で固定されるようになっている。
【0016】
図1,4,11に示すように、洗い場パン30の上面は、前後方向においては後方(浴槽66側)に向かって下り勾配となるように傾斜し、左右方向においては左右両端から中央に向かって下り勾配となるように傾斜している。図1,3,8に示すように、洗い場パン30のうち最も低い位置(洗い場パン30の後端縁における左右方向中央位置)には、上面を浅く凹ませた形態の収容凹部32が形成されている。図13に示すように、収容凹部32の平面形状は、全体として方形をなす。収容凹部32の底面には、洗い場パン30の下面へ連通する貫通形態の円形の洗い場用排水口33が形成されている。
【0017】
図1,3,4に示すように、収容凹部32には、目皿35が取外し可能に収容されている。目皿35の平面形状は、全体として収容凹部32とほぼ整合するような方形をなし、目皿35の外形寸法は、収容凹部32の開口寸法よりも少し小さく設定されている。図14に示すように、目皿35の上面は、洗い場パン30と同様に、前後方向においては後方(浴槽66側)に向かって下り勾配となるように傾斜し、左右方向においては左右両端から中央に向かって下り勾配となるように傾斜している。
【0018】
また、図15に示すように、目皿35の下面(裏面)には4つの脚部36が突出形成されている。脚部36は、平面形状がL字形をなしており、目皿35の4つの角縁部に沿って配置されている。また、それぞれの脚部36の下面には、円盤形のゴム55が取り付けられている。目皿35を収容凹部32に正しく収容したときには、脚部36によって、目皿35の下面が収容凹部32の底面から浮いた状態となる。したがって、洗い場パン30の上面の湯水は、収容凹部32の内周面と目皿35の外周縁との隙間と、脚部36の間と、目皿35の下面と収容凹部32の底面の隙間とを順に通過して洗い場用排水口33から排出される。
【0019】
図13〜15に示すように、収容凹部32の4つの内周面のうち後面には、その左右両端部を除いた領域を後方へ浅く凹ませた形態の排水凹部34が形成されている。排水凹部34は、収容凹部32の内周面に比べ目皿35の外周縁との隙間が大きくなるため、洗い場パン30の上面の湯水の多くは排水凹部34から排水される。また、排水凹部34は、目皿35を取り外す際の手掛けにも利用できる。一方、目皿35の4つの外周縁のうち1つの外周縁には、その長さ方向における中央から一方向へずれた位置から突出する向き決め突起37が形成されている。目皿35が、水平方向において正しい向きで収容凹部32に嵌め込まれた状態では、向き決め突起37が、排水凹部34の一方の端部に対し、接近して対向又は当接するように位置する。
【0020】
これに対し、目皿35を、水平方向において不正な向きで収容凹部32に嵌め込もうとしても、向き決め突起37が収容凹部32の開口縁と干渉するので、この干渉部分において目皿35が浮いてしまい、目皿35を収容凹部32に収容することはできない。このように、排水凹部34と向き決め突起37により、目皿35を収容部に対して正しい向きに収容することができる。
【0021】
また、排水凹部34は、前後方向の寸法に比べて左右方向の寸法が大きい。そして、排水凹部34の左右両端部では、排水凹部34の後面と左右両側面とが鈍角状をなしている。このように、排水凹部34には狭小な角隅部が存在しないので、排水凹部34の内面を清掃する際の作業性がよい。また、向き決め突起37は、目皿35の裏面から突出させるのではなく、目皿35の外周から平面方向外側へ突出させている。したがって、目皿35の裏面の形状が簡素化され、清掃がし易くなっている。さらに、向き決めを目皿35の外周と排水凹部34で行うため、収容凹部32内に向き決め用の突起を設ける必要が無く、また、排水凹部34と同様、狭小な角隅部も存在しないので、収容凹部32の内面を清掃する際の作業性がよい。
【0022】
図4,11,12に示すように、洗い場パン30の下面(裏面)には、洗い場パン30の上面に作用する負荷に対する剛性を高める手段として、洗い場パン30と略直角に下方へ突出する複数のリブ38が、洗い場パン30の全領域に亘って形成されている。リブ38は、前後方向及び左右方向に沿って格子状に配置されている。洗い場パン30と床スラブ15との隙間には、排水トラップ50に接続された排水パイプ54が配管されるのであるが、図12に示すように、排水パイプ54の配管位置が比較的低く、洗い場パン30の高さが比較的高い領域では、リブ38の下方への突出寸法を必要寸法だけ確保して洗い場パン30の強度アップを十分に実現しても、リブ38が排水パイプ54と干渉することはない。尚、排水パイプ54の高さは、左右方向におる中央部で高くなっているため、リブ38の下方への突出寸法は、左右方向両端部に比べて左右方向中央部を小さく設定しているが、左右方向中央部における洗い場パン30の剛性は、十分に確保されている。
【0023】
また、排水パイプ54の配管位置が比較的高く、洗い場パン30の高さが比較的低い領域では、図11に示すように、リブ38の下方への突出寸法が、左右方向の全領域に亘って概ね同じ寸法とされている。しかし、排水パイプ54の高さが比較的高いので、リブ38の左右方向中央部、即ち、排水パイプ54と対応する位置には、排水パイプ54との干渉を回避するための切欠部39が形成されている。また、排水トラップ50は、洗い場パン30と床スラブ15との隙間に配置され、洗い場パン30のうち前後方向及び左右方向において最も低い領域と対応するように配置されている。したがって、リブ38のうち排水トラップ50と対応する領域には、排水トラップ50との干渉を回避するための切欠部(図示省略)が形成されている。
【0024】
<第2支持脚40>
図1,8に示すように、洗い場パン30には、高さ調整(長さ調整)の機構(図示省略)を有する3本の第2支持脚40が設けられている。洗い場パン30のうち周縁部31で囲まれた中央領域は、この3本の第2支持脚40によって支持されるようになっている。3本の第2支持脚40は、洗い場パン30の下面から下方へ鉛直方向に突出している。第2支持脚40は、その下端の位置を個別に上下方向に調節できるようになっている。そして、第2支持脚40の下端は、浴室10の床スラブ15(洗い場領域16)の上面に載置されて接着されるようになっている。
【0025】
図3に示すように、3本の第2支持脚40は、左右方向に一列に配置されている。3本の第2支持脚40のうち両端の2本の第2支持脚40は、左右方向において両端に配置された2本の第1支持脚28と対応するように配置されている。また、左右方向において、右側の第2支持脚40と中心近くの第2支持脚40との間には、境界梁24の右側の第1支持脚28が位置し、左側の第2支持脚40と中心近くの第2支持脚40との間には、境界梁24の左側の第1支持脚28が位置する。つまり、第2支持脚40と、第2支持脚40よりも浴槽66側に位置する境界梁24の第1支持脚28とは、互いに左右方向にずれた位置関係となっている。3本の第2支持脚40は、前後方向において、内梁25と境界梁24との間の位置であって、内梁25よりも境界梁24に近い位置に配置されている。つまり、第2支持脚40は、前後方向において、洗い場用フレーム21の中央よりも浴槽66側に寄った位置に配置されている。
【0026】
<排水トラップ50>
図1,2,4に示すように、排水トラップ50は、上面に開口する洗い場用流入口51と、上面に開口する浴槽用流入口52と、前面に開口する流出口53とを有する。排水トラップ50は、床スラブ15と洗い場パン30との間の隙間、及び床スラブ15と浴槽用防水パン64との間の隙間に配置される。洗い場用流入口51は、洗い場パン30の洗い場用排水口33に接続され、浴槽用流入口52は、浴槽用防水パン64の浴槽用排水口65に接続される。流出口53には、排水パイプ54の上流端が接続される。
【0027】
<浴槽用フレーム60>
図1,2に示すように、浴槽用フレーム60は、前後方向に細長い左右一対の側梁61と、左右方向に細長くて左右両側梁61を連結する前後一対の連結梁62とを備えて構成されている。各側梁61の前端部は、連結脚27に結合されるようになっている。側梁61と連結梁62は、洗い場用フレーム21よりも低い位置に設置される。各側梁61の後端部近くには、夫々、高さ調整(長さ調整)の機構(図示省略)を有する第3支持脚63が1本ずつ設けられている。第3支持脚63は、側梁61の下面から下方へ鉛直方向に突出している。第3支持脚63は、その下端の位置を個別に上下方向に調節できるようになっている。そして、第3支持脚63の下端は、床スラブ15の浴槽領域17の上面に載置されて接着されるようになっている。
【0028】
<浴槽用防水パン64、浴槽66、エプロン67>
図4に示すように、浴槽用フレーム60には、上面と前面(洗い場11側の側面)が開放された箱状をなす浴槽用防水パン64が、載置した状態で固定されている。浴槽用防水パン64の底面には浴槽用排水口65が貫通形成されている。浴槽用防水パン64内には、湯を貯留するための浴槽66が収容される。浴槽用防水パン64には、浴槽66における洗い場11側の外面を覆い隠すためのエプロン67が取り付けられる。エプロン67は、浴槽用防水パン64に組み付けられるエプロン本体69と、エプロン本体69に組み付けられる化粧板68とで構成される。エプロン本体69には点検口69Aが形成されている。化粧板68の表面は、洗い場11に臨む。
【0029】
<浴室床20及び浴槽66等の施工手順>
浴室10内における浴室床20の設置等は、次の手順で行う。まず、洗い場用フレーム21を浴室10内に搬入し、長辺梁22と短辺梁23を、浴室10の内壁12のうち洗い場11に臨む内壁12に当接させ、第1支持脚28を床スラブ15に載置する。そして、5本の第1支持脚28の長さを調整することにより、各枠22,23,24,25が水平となるようにレベル調整する。洗い場用フレーム21をレベル調節した後は、全ての第1支持脚28を床スラブ15に接着して固定する。
【0030】
また、5本の第1支持脚28のうち洗い場用フレーム21の長辺に沿った3本の第1支持脚28は、長辺梁22ではなく、長辺梁22よりも浴槽66側(つまり、内壁12から遠ざかる方向)へ退避した内梁25に設けられている。したがって、図4に示すように、洗い場11の内壁12のうち浴槽66とは反対側の内壁12に沿うように逆梁や既存配管等の張出部13が張り出していたとしても、この3本の第1支持脚28が張出部13と干渉することはない。
【0031】
洗い場用フレーム21を設置した後は、境界梁24の長さ方向中央にブラケット42を取付ける。次に、このブラケット42に、排水トラップ50を組み付ける。排水トラップ50を組み付けた状態では、洗い場用流入口51と浴槽用流入口52とが境界梁24を挟むように配置される。排水トラップ50を組み付けた後は、洗い場11に排水パイプ54を配索し、排水パイプ54の上流端を、排水トラップ50の流出口53に接続する。
【0032】
この排水トラップ50の組み付け作業と、排水パイプ54の配索作業と、排水トラップ50と排水パイプ54の接続作業は、いずれも、洗い場用フレーム21に洗い場パン30を取り付ける前に行われる。洗い場パン30を取り付ける前の状態では、洗い場11内に存在するのは、洗い場11の外周縁に沿って配置された長辺梁22、短辺梁23、境界梁24と、長辺梁22に近い位置に配置された内梁25だけである。つまり、洗い場11の大部分は、排水トラップ50の組み付け作業や排水パイプ54の配索作業及び接続作業の邪魔になるような他部材が存在せず、開放された領域となっている。
【0033】
排水トラップ50の組み付けと排水パイプ54の接続が完了した後、洗い場用フレーム21に洗い場パン30を載せて固定する。このとき、洗い場パン30の周縁部31を、長辺梁22の上面と短辺梁23の上面と境界梁24の上面に当接させる。これにより、洗い場パン30の周縁部31が、全周に亘って洗い場用フレーム21に支持される。そして、載置した周縁部31を、長辺梁22と短辺梁23に固定する。
【0034】
ここで、長辺梁22と洗い場パン30の固定構造(支持構造)を説明する。図5に示すように、洗い場パン30の周縁部31には、断面が略U字形をなすように屈曲して上面に溝44を開口させた形態の屈曲部43が形成されている。屈曲部43は、長辺梁22の上面に直接、載置されている。屈曲部43と長辺梁22とは、溝44の底面を上下に貫通して長辺梁22の上面にねじ込まれたビス45で固定されている。溝44内には、ビス45の貫通部分をシールするためのシリコン製のシール材46が充填されている。溝44の開口部に支持バー47が嵌合され、支持バー47の上面には、内壁パネル14の下端縁部が固着されている。支持バー47と内壁パネル14の下端縁との隙間は、その隙間をシールするためにシリコン製のシール材48が充填されている。短辺梁23及び境界梁24と洗い場パン30の固定構造は、長辺梁22と同じである。
【0035】
また、洗い場用フレーム21に載置した洗い場パン30は、排水トラップ50と排水パイプ54を上から覆い隠す。洗い場パン30の底面には、その全領域に亘って補強用のリブ38が格子状に形成されているため、リブ38が排水トラップ50や排水パイプ54と干渉することが懸念される。しかし、本実施例では、リブ38に切欠部39を形成しているので、リブ38が排水トラップ50や排水パイプ54と干渉する虞はない。また、切欠部39が形成されているのは、干渉回避のための必要最小限の部分だけであるから、切欠部39が形成されても、リブ38全体としての強度アップ機能は殆ど損なわれず、洗い場パン30の剛性は充分に保たれる。
【0036】
洗い場パン30を洗い場用フレーム21に固定した後、洗い場用流入口51と洗い場用排水口33とを液密状に接続して固定する。この後、3本の第2支持脚40の長さを調整し、第2支持脚40の下端を床スラブ15(洗い場領域16)の上面に届かせる。全ての第2支持脚40が床スラブ15に当接して載置されたら、接着剤により第2支持脚40を床スラブ15に固定する。この第2支持脚40により、洗い場パン30の中央部分が支持される。洗い場パン30の周縁部31は洗い場用フレーム21によって支持されているので、洗い場パン30は、その全領域に亘って安定して支持される。
【0037】
第2支持脚40の長さ調整と接着の作業は、浴槽用防水パン64を設置する前に行われるので、作業者は浴槽領域17側から洗い場パン30と床スラブ15との隙間に手を差し入れて作業することができる。ここで、3本の第2支持脚40は、前後方向(洗い場11と浴槽66とが並ぶ方向)において、洗い場パン30の中央よりも浴槽66(浴槽領域17)側に寄った位置に配置されているので、第2支持脚40に手が届き易い。しかも、第2支持脚40は、配前後方向においては排水パイプ54よりも浴槽領域17側の位置に配置され、左右方向においては排水トラップ50からずれた位置に配置されている。したがって、浴槽領域17側から第2支持脚40に向かって手を延ばしたときに、排水パイプ54や排水トラップ50が邪魔にならずに済む。以上のように、第2支持脚40を床スラブ15に設置する際の作業性に優れている。
【0038】
洗い場パン30の設置が完了した後は、浴槽66側の設置作業を行う。まず、浴槽領域17に浴槽用フレーム60を搬入し、側梁61の前端部を洗い場用フレーム21の連結脚27に、軸線を左右方向に向けたボルト(図示省略)を介して仮組みする。これにより、浴槽用フレーム60が水平方向において位置決めされる。そして、第3支持脚63を長さ調整して、側梁61と連結梁62が水平となるようにレベル調整する。浴槽用フレーム60をレベル調節した後は、全ての第3支持脚63を床スラブ15に接着して固定するとともに、ボルトにナット(図示省略)を締め付けて洗い場用フレーム21(連結脚27)と浴槽用フレーム60(側梁61)とを固定する。この後、浴槽用フレーム60に浴槽用防水パン64を載せて固定し、浴槽用防水パン64内に浴槽66を収容して固定する。そして、浴槽用排水口65と浴槽用流入口52を接続する。最後に、浴槽用防水パン64の前面(洗い場11側の外面)にエプロン68を組み付ける。以上により、浴槽66等の設置が完了する。
【0039】
<実施例の作用及び効果>
本実施例は、洗い場用フレーム21を床スラブ15に設置した状態で排水トラップ50や排水パイプ54の配管作業等を行い易く、しかも、洗い場パン30を全領域に亘って安定して支持できる浴室床20を提供することを課題としている。課題解決の手段としては、本実施例の浴室床20は、洗い場パン30と、洗い場パン30の周縁部31を載せた状態で支持する洗い場用フレーム21と、洗い場用フレーム21から下方へ延びて床スラブ15に載置される第1支持脚28と、洗い場パン30のうち周縁部31で囲まれた領域に設けられ、下方へ延びて床スラブ15に載置される第2支持脚40とを備えている。
【0040】
この浴室床20は、洗い場パン30の周縁部31を洗い場用フレーム21と第1脚部36とで支持するとともに、洗い場パン30のうち周縁部31で囲まれた領域を第2支持脚40で支持しているので、洗い場パン30を全領域に亘って安定して支持することができる。また、洗い場用フレーム21の中央部には、洗い場パン30を支持するための格子状の桟を張り渡す必要がないので、洗い場用フレーム21を床スラブ15に設置した状態で、洗い場パン30上の水を排出するための配管作業を行う際に、作業性に優れている。
【0041】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、第1支持脚を内梁と境界梁だけに設けたが、第1支持脚は、内梁と境界梁に限らず、長辺梁や短辺梁に設けてもよい。
(2)上記実施例では、第1支持脚の数を5本としたが、第1支持脚の数は、4本以下でも、6本以上でもよい。
(3)上記実施例では、フレームの外周に沿った長辺梁(壁沿い梁)、短辺梁(壁沿い梁)及び境界梁だけで洗い場パンを支持するようにしたが、長辺梁(壁沿い梁)、短辺梁(壁沿い梁)及び境界梁以外にも、洗い場パンを支持するための梁を設けてもよい。この場合、排水トラップや排水管の配管経路と干渉せず、配管作業に支障がないような位置に配置することが望ましい。
(4)上記実施例では、第2支持脚の数を3本としたが、第2支持脚の数は、2本以下でも、4本以上でもよい。
(5)上記実施例では、洗い場と浴槽の並び方向において、第2支持脚を洗い場パンの中央よりも浴槽側に寄った位置に配置したが、第2支持脚は、洗い場と浴槽との並び方向において、洗い場パンの中央に配置してもよく、洗い場の中央よりも浴槽とは反対側に寄った位置に配置してもよい。
(6)上記実施例では、洗い場用フレームと浴槽用フレームとを別体の部材として浴室内で組み付けたが、洗い場用フレームと浴槽用フレームを一体部材として浴室内に搬入してもよい。
(7)上記実施例では、洗い場用フレームと洗い場パンと排水トラップを浴室内で組み付けたが、本実施例の浴室床は、予め、工場内で洗い場用フレームと洗い場パンと排水トラップを組み付けてユニット化しておき、それを浴室内に搬入する場合にも用いることが可能である。
(8)上記実施例では、洗い場パンと浴槽用防水パンとを別体の部材として浴室内で組み付けたが、洗い場パンと浴槽用防水パンを一体部材として浴室内に搬入してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…浴室
11…洗い場
15…床スラブ
20…浴室床
21…洗い場用フレーム(フレーム)
22…長辺梁(壁沿い梁)
23…短辺梁(壁沿い梁)
24…境界梁
25…内梁
28…第1支持脚
30…洗い場パン
31…洗い場パンの周縁部
40…第2支持脚
66…浴槽
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