(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一透明導電体層の材質および前記第二透明導電体層の材質は、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載された導電性フィルムロールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、隣接する導電性フィルムの金属層どうしが圧着しない導電性フィルムロールを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の導電性フィルムロールの製造方法は、次の工程を含む。
(a) フィルム基材が巻回されてなる第一ロールを準備する工程
(b) 第一ロールからフィルム基材を巻き戻し、フィルム基材の第一面に第一透明導電体層を積層する工程。フィルム基材には二枚の主面があるが、フィルム基材の第一面とは、フィルム基材の一方の主面をいう。第一面は二枚の主面のうちのどちらでもよい。
(c) 第一透明導電体層上に第一金属層を積層する工程
(d) 酸素雰囲気内で第一金属層の表面を酸化して金属酸化膜層を形成する工程
(e) フィルム基材の第二面に第二透明導電体層を積層する工程。フィルム基材の第二面とは、フィルム基材の他の主面をいう。
(f) 第二透明導電体層上に第二金属層を積層する工程
(g) 第一透明導電体層、第一金属層、金属酸化膜層、第二透明導電体層および第二金属層を積層したフィルム基材をロール状に巻回する工程
(h) 上記の全工程は成膜装置内で連続的に行なわれる。
(2)本発明の導電性フィルムロールの製造方法において、第一金属層の材質および第二金属層の材質は銅であり、金属酸化膜層の材質は酸化銅である。
(3)本発明の導電性フィルムロールの製造方法において、第一透明導電体層の材質および第二透明導電体層の材質は、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により得られる導電性フィルムロールは、フィルム基材の第一面の表面に金属酸化膜層を有する。金属酸化膜層は自由電子を持たないため、フィルム基材の第二面の表面の第二金属層と金属結合しない。そのためフィルム基材の第一面の金属酸化膜層と、フィルム基材の第二面の第二金属層は圧着しない。本発明により、金属層どうしが圧着しない導電性フィルムロールが実現された。
【0007】
導電性フィルムをロール状に巻回したとき、フィルム基材の第一面の金属酸化膜層と、フィルム基材の第二面の第二金属層が接する。しかし金属酸化膜層と第二金属層は圧着しないため、導電性フィルムをロール状に巻回するとき、間に合紙(slip sheet)を挿入する必要がない。(もし金属酸化膜層が無ければ、導電性フィルムをロール状に巻回したとき、フィルム基材の第一面の第一金属層と、フィルム基材の第二面の第二金属層が接する。第一金属層と第二金属層は金属結合するため圧着する可能性が高い。第一金属層と第二金属層の圧着を避けるため、導電性フィルムの間に合紙(slip sheet)を挿入しなければならない)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法では、第一面の成膜工程の完了したフィルム基材を、成膜装置内を搬送して連続的に第二面の成膜工程に供給する。もし、第一面の成膜工程と第二面の成膜工程を分割して実施するならば、第一面の成膜工程の完了後に、一旦フィルム基材をロール状に巻回しなければならない。このとき、フィルム基材の表面にごみが付着する可能性が高い。本発明の製造方法では、フィルム基材の第一面の成膜工程と、フィルム基材の第二面の成膜工程を、成膜装置内で連続的に実施する。そのため本発明の製造方法では、第一面の成膜工程と第二面の成膜工程を分割して実施する場合に比べて、積層された各層の間にごみが混入する可能性が低い。そのため、本発明の製造方法により製造された導電性フィルムロールは欠陥が少なく品質が良い。また、本発明の製造方法は、第一面の成膜工程と第二面の成膜工程の間に、フィルム基材を巻回して一旦ロールにするという工程がないため、導電性フィルムロールの製造効率が高い。
【0010】
[導電性フィルムロールの製造方法]
本発明の製造方法は、好ましくは、
図1のスパッタ装置10で実施される。以下スパッタ装置10に備えられる部品および材料を説明する。チャンバー11(chamber)は、スパッタに適した低圧雰囲気を維持するのに用いられる。スパッタに適した低圧雰囲気とは、例えば、0.1Pa〜1Paのアルゴンガス雰囲気である。
【0011】
第一ロール12は長尺のフィルム基材13を巻回したものである。フィルム基材13は製造工程のスタート材料であり、以後の成膜の下地となる。フィルム基材13は第一ロール12から巻き戻された後、以下に述べる各成膜工程を経由し、最終的に第二ロール25に巻回される。各成膜工程は、全てスパッタ装置10内で行なわれるため、途中でフィルム基材13や積層膜が外気に接することはない。そのため、フィルム基材13および各積層膜にごみが付着する可能性は低い。
【0012】
第一成膜ロール14は、その表面にフィルム基材13を巻き付けながら回転して、フィルム基材13を移動させつつ、フィルム基材13の第一面に第一透明導電体層29(
図2)、第一金属層30(
図2)を連続成膜するのに用いられる。第一成膜ロール14はロール表面の温度が制御可能であり、温度制御範囲は、例えば20℃〜250℃である。成膜時のフィルム基材13の温度は第一成膜ロール14の表面温度とほぼ等しい。
【0013】
第一ターゲット材15は第一透明導電体層29(
図2)の材料である。第一ターゲット材15は第一成膜ロール14の表面の一部に対向し、チャンバー11外の図示しない直流電源に電気的に接続される。第一ターゲット材15として、例えば酸化インジウムと酸化スズを含む焼成体ターゲットが用いられる。この場合、第一透明導電体層29(
図2)はインジウムスズ酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)層となる。
【0014】
第二ターゲット材16は第一金属層30(
図2)の材料である。第二ターゲット材16は第一成膜ロール14の表面の一部に対向し、チャンバー11外の図示しない直流電源に電気的に接続される。第二ターゲット材16は、好ましくは銅、銀、アルミニウム、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、銀合金のいずれかであり、さらに好ましくは銅である。第二ターゲット材16が銅の場合、第一金属層30(
図2)は銅層となる。
【0015】
チャンバー11の一部が仕切られて酸素雰囲気室17となっている。酸素ガスが、酸素ボンベ18から圧力の調整弁19を経て酸素ガス導入管20を通り、酸素雰囲気室17に供給される。酸素雰囲気室17の酸素ガスの圧力は、例えば0.0005Pa〜1Paである。酸素雰囲気室17には、実質的に酸素ガスだけが存在する。酸素ガスにより、フィルム基材13の第一面の第一金属層30(
図2)の表面が酸化され、金属酸化膜層31(
図2)が形成される。
【0016】
第二成膜ロール21は、その表面にフィルム基材13を巻き付けながら回転してフィルム基材13を移動させつつ、フィルム基材13の第二面に第二透明導電体層32(
図2)、第二金属層33(
図2)を連続的に成膜するのに用いられる。第二成膜ロール21はロール表面の温度が制御可能であり、温度制御範囲は、例えば20℃〜250℃である。成膜時のフィルム基材13の温度は第二成膜ロール21の表面温度とほぼ等しい。
【0017】
第三ターゲット材22は第二透明導電体層32(
図2)の材料である。第三ターゲット材22は第二成膜ロール21の表面の一部に対向し、チャンバー11外の図示しない直流電源に電気的に接続される。第三ターゲット材22として、例えば酸化インジウムと酸化スズを含む焼成体ターゲットが用いられる。この場合、第二透明導電体層32(
図2)はインジウムスズ酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)層となる。
【0018】
第四ターゲット材23は第二金属層33(
図2)の材料である。第四ターゲット材23は第二成膜ロール21の表面の一部に対向し、チャンバー11外の図示しない直流電源に電気的に接続される。第四ターゲット材23は、好ましくは銅、銀、アルミニウム、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、銀合金であり、さらに好ましくは銅である。第四ターゲット材23が銅の場合、第二金属層33(
図2)は銅層となる。
【0019】
第一透明導電体、第一金属、第二透明導電体、第二金属の各スパッタ領域、および酸素雰囲気室17の領域は、各々仕切り板26で区分されて独立しており、スパッタガス(例えばアルゴンガス)および酸素ガスはそれぞれの領域に閉じ込められている。そのため酸素ガスが隣接するスパッタ領域に入り込むことはない。またスパッタガスが酸素雰囲気室17の領域に入り込むことはない。
【0020】
適当な位置に配置された複数のガイドロール24が、フィルム基材13をチャンバー11内を搬送するのに用いられる。第二ロール25は全ての成膜が終了したフィルム基材13(すなわち導電性フィルム35)をロール状に巻回したものである。次に本発明の製造方法を工程順に説明する。
【0021】
まずフィルム基材13の第一面に第一透明導電体層29(
図2)を成膜する。長尺のフィルム基材13を第一ロール12から巻き戻しながらチャンバー11内を搬送して第一成膜ロール14に巻き付け、第一成膜ロール14を回転させて、連続的に第一透明導電体層29(
図2)の成膜位置に移動させる。第一透明導電体層29(
図2)のスパッタ成膜の際、第一成膜ロール14と第一ターゲット材15の間に直流電圧を印加し、例えばアルゴンプラズマを発生させる。直流電圧は、例えば、第一成膜ロール14が0V、第一ターゲット材15が−400V〜−100Vである。アルゴンイオンを第一ターゲット材15に衝突させ、第一ターゲット材15から飛散した第一透明導電体層29(
図2)の材料をフィルム基材13の第一面に付着させる。このようにしてフィルム基材13の第一面に第一透明導電体層29(
図2)を成膜する。
【0022】
引き続き第一透明導電体層29(
図2)の上に第一金属層30(
図2)を成膜する。第一成膜ロール14を回転させて、第一透明導電体層29(
図2)の成膜の完了したフィルム基材13を、第一金属層30の成膜位置に連続的に移動させる。第一金属層30のスパッタ成膜の際、第一成膜ロール14と第二ターゲット材16の間に直流電圧を印加し、例えばアルゴンプラズマを発生させる。直流電圧は、例えば、第一成膜ロール14が0V、第二ターゲット材16が−400V〜−100Vである。アルゴンイオンを第二ターゲット材16に衝突させ、第二ターゲット材16から飛散した第一金属層30(
図2)の材料を、フィルム基材13上の第一透明導電体層29(
図2)の表面に付着させる。フィルム基材13上の第一透明導電体層29(
図2)の表面に第一金属層30(
図2)が成膜される。
【0023】
引き続き第一金属層30(
図2)の表面を酸化して金属酸化膜層31(
図2)を得る。酸素雰囲気室17に酸素ガスを供給し、酸素ガスの圧力を、好ましくは0.0005Pa〜1Pa、より好ましくは0.0005Pa〜0.1Paとする。酸素雰囲気室17には、実質的に酸素ガスだけが存在する。第一金属層30(
図2)を成膜したフィルム基材13を第一成膜ロール14に巻き付けたまま、第一成膜ロール14を回転させて、酸素雰囲気室17へ連続的に移動させる。第一金属層30(
図2)の表面が酸素雰囲気で酸化されて、金属酸化膜層31(
図2)が形成される。
【0024】
引き続きフィルム基材13の第二面に第二透明導電体層32(
図2)を成膜する。第二透明導電体層32(
図2)の成膜の前に、フィルム基材13を一旦巻回してロールにすることはない。金属酸化膜層31(
図2)が形成されたフィルム基材13はスパッタ装置10内を搬送されて、第二透明導電体層32(
図2)の成膜工程に搬送される。
【0025】
フィルム基材13を第二成膜ロール21に巻き付け、第二成膜ロール21を回転させて、フィルム基材13を第二透明導電体層32(
図2)の成膜位置に連続的に移動させる。このときフィルム基材13の第二面を外側にして第二成膜ロール21に巻き付ける。第二透明導電体層32(
図2)のスパッタ成膜の際、第二成膜ロール21と第三ターゲット材22の間に直流電圧を印加し、例えばアルゴンプラズマを発生させる。直流電圧は、例えば、第二成膜ロール21が0V、第三ターゲット材22が−400V〜−100Vである。アルゴンイオンを第三ターゲット材22に衝突させ、第三ターゲット材22から飛散した第二透明導電体層32(
図2)の材料をフィルム基材13の第二面に付着させる。このようにしてフィルム基材13の第二面に第二透明導電体層32(
図2)を成膜する。
【0026】
引き続き第二透明導電体層32(
図2)の上に第二金属層33(
図2)を成膜する。第二成膜ロール21を回転させて、フィルム基材13を第二金属層33(
図2)の成膜位置に連続的に移動させる。第二金属層33のスパッタ成膜の際、第二成膜ロール21と第四ターゲット材23の間に直流電圧を印加し、例えばアルゴンプラズマを発生させる。直流電圧は、例えば、第二成膜ロール21が0V、第四ターゲット材23が−400V〜−100Vである。アルゴンイオンを第四ターゲット材23に衝突させ、第四ターゲット材23から飛散した第二金属層33(
図2)の材料を第二透明導電体層32(
図2)の表面に付着させる。このようにして第二透明導電体層32(
図2)の表面に第二金属層33(
図2)を成膜する。
【0027】
第一面および第二面の成膜の完了したフィルム基材13(導電性フィルム35(
図2))をロール状に巻回し、第二ロール25を得る。第二ロール25が導電性フィルムロール34(
図2)の完成品である。
【0028】
なお第二金属層33(
図2)を成膜した後、第二ロール25に巻回する前に、第二金属層33(
図2)の表面を酸化させ、第二金属酸化膜層(図示しない)を得ることもできる。
【0029】
[導電性フィルムロール]
本発明の製造方法により得られた導電性フィルム35(conductive film)は、
図2に示す次の構成を有する。
(a) フィルム基材13
(b) フィルム基材13の第一面に積層された第一透明導電体層29
(c) 第一透明導電体層29の上に積層された第一金属層30
(d) 第一金属層30の表面に形成された金属酸化膜層31
(e) フィルム基材13の第二面に積層された第二透明導電体層32
(f) 第二透明導電体層32の上に積層された第二金属層33
【0030】
導電性フィルムロール34(conductive film roll)は、長尺の導電性フィルム35をロール状に巻回したものである。導電性フィルム35の長さは、代表的には100m以上であり、好ましくは500m〜5000mである。導電性フィルムロール34の中心部には、通常、導電性フィルム35を巻き付けるため、プラスチック製または金属製の巻芯36が配置される。
【0031】
[フィルム基材]
フィルム基材13の厚さは、例えば20μm〜200μmである。フィルム基材13の材料は、透明性と耐熱性に優れた材料が望ましい。フィルム基材13の材料は、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィンまたはポリカーボネートである。
【0032】
フィルム基材13は第一面に、フィルム基材13と第一透明導電体層29の密着性を高めるための易接着層(図示しない)を備えていてもよい。またフィルム基材13は第二面に、フィルム基材13と第二透明導電体層32の密着性を高めるための易接着層(図示しない)を備えていてもよい。
【0033】
フィルム基材13は第一面に、フィルム基材13の反射率を調整するための屈折率調整層(index-matching layer;図示しない)を備えていてもよい。またフィルム基材13は第二面に、フィルム基材13の反射率を調整するための屈折率調整層(index-matching layer;図示しない)を備えていてもよい。
【0034】
フィルム基材13は第一面に傷がつくことを防止するためのハードコート層(図示しない)を備えていてもよい。またフィルム基材13は第二面に傷がつくことを防止するためのハードコート層(図示しない)を備えていてもよい。
【0035】
[透明導電体層]
第一透明導電体層29は、可視光領域(400nm〜700nm)で透過率が高く、単位面積当たりの表面抵抗値が低いものが望ましい。第一透明導電体層29の可視光領域の透過率は80%以上であることが好ましい。第一透明導電体層29の単位面積当たりの表面抵抗値は、500Ω/□(ohms per square)以下であることが好ましい。第一透明導電体層29を形成する材料は、好ましくはインジウムスズ酸化物(ITO; indium tin oxide)、インジウム亜鉛酸化物または酸化インジウム−酸化亜鉛複合酸化物である。第一透明導電体層29の厚さは、好ましくは20nm〜80nmである。第二透明導電体層32の透過率、表面抵抗値、材料、厚さは、第一透明導電体層29と同様である。
【0036】
[金属層]
第一金属層30は、第一透明導電体層29の表面に形成される。第一金属層30の材質は好ましくは銅、銀、アルミニウム、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、銀合金であり、さらに好ましくは銅である。第一金属層30の単位面積当たりの表面抵抗値は、10Ω/□(ohms per square)以下であることが好ましく、0.1Ω/□〜1Ω/□であることがより好ましい。第一金属層30の厚さは、好ましくは20nm〜300nmである。第一金属層30の厚さが20nm未満であると、第一金属層30が完全な膜にならない可能性がある。第一金属層30の厚さが20nm未満であると、第一金属層30が完全な膜となっても、電気抵抗が過度に高くなる可能性がある。第一金属層30の厚さが300nmを超えると、配線の加工性が低下する可能性がある(ファインパターンの形成が難しくなる)。第二金属層33の材質、表面抵抗値、厚さは第一金属層30と同様である。
【0037】
[金属酸化膜層]
金属酸化膜層31は第一金属層30の表面が酸化されたものである。金属酸化膜層31は、好ましくは酸化銅、酸化銀、酸化アルミニウム、ニッケル合金の酸化物、銅合金の酸化物、チタン合金の酸化物、銀合金の酸化物であり、さらに好ましくは酸化銅である。金属酸化膜層31の厚さは、好ましくは1nm〜15nmである。金属酸化膜層31の厚さが1nm未満であると、金属酸化膜層31が第一金属層30の表面を完全に覆うことができない可能性がある。この場合、圧着防止効果が十分得られない可能性がある。金属酸化膜層31の厚さが15nmを超えると、第一金属層30の酸化時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0038】
本発明に用いられる導電性フィルム35は、第二金属層33の表面に第二金属酸化膜層(図示しない)をさらに有していてもよい。第二金属酸化膜層は第二金属層33の表面を酸化して得られる。第二金属酸化膜層の材質、厚さは金属酸化膜層31と同様である。
【実施例】
【0039】
[実施例]
フィルム基材13を巻回してなる第一ロール12を
図1のスパッタ装置10内にセットした。フィルム基材13は、厚さ100μm、長さ1000mのポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン社製「ZEONOR」(登録商標))であった。スパッタ装置10のチャンバー11の雰囲気を、圧力0.4Paのアルゴンガス雰囲気にした。第一ターゲット材15および第三ターゲット材22として、酸化インジウムと酸化スズを含む焼成体ターゲット材を用いた。第二ターゲット材16および第四ターゲット材23として、無酸素銅(Oxygen-free copper)ターゲット材を用いた。
【0040】
第一ロール12を巻き戻しながらフィルム基材13を、第一面を外側にして第一成膜ロール14に巻き付け、第一成膜ロール14を回転させてフィルム基材13を連続的に移動させた。フィルム基材13の第一面に、第一透明導電体層29および第一金属層30を連続成膜した。第一透明導電体層29は厚さ20nmのインジウムスズ酸化物層(ITO層)であった。第一金属層30は厚さ50nmの銅層であった。
【0041】
酸素ガス導入管から酸素ガスを酸素雰囲気室17に供給し、酸素雰囲気室17の酸素ガス分圧を0.001Paとした。この酸素雰囲気により第一金属層30(銅層)の表面を酸化させ、金属酸化膜層31(酸化銅層、厚さ2nm)を形成した。
【0042】
第一面に成膜の完了したフィルム基材13を、スパッタ装置10内を搬送し、第二成膜ロール21に供給した。フィルム基材13を、第二面を外側にして第二成膜ロール21に巻き付け、第二成膜ロール21を回転させてフィルム基材13を連続的に移動させた。フィルム基材13の第二面に、第二透明導電体層32および第二金属層33を連続成膜した。第二透明導電体層32は厚さ20nmのインジウムスズ酸化物層(ITO層)であった。第二金属層33は厚さ50nmの銅層であった。このようにして、全ての成膜の完了したフィルム基材13(導電性フィルム35)が得られた。
【0043】
全ての成膜の完了したフィルム基材13(導電性フィルム35)をプラスチック製の巻芯36に巻回してロール状にし、導電性フィルムロール34を作製した。
【0044】
(圧着試験)実施例の導電性フィルムロール34を巻き戻して、導電性フィルム35の表面を観察した。実施例の導電性フィルムロール34においては、巻き戻しの際に圧着部分の剥離音が発生しなかった。また、巻き戻した導電性フィルム35の表面に圧着部分の剥離の際に発生する傷は認められなかった。従って実施例の導電性フィルムロール34においては、圧着は発生していなかったと推測される。
【0045】
[比較例]
第一金属層30の表面の酸化工程を実施しなかったこと以外は、実施例と同様にして導電性フィルムロールを作製した。(具体的には酸素雰囲気室17へ酸素ガスを供給しなかった。)比較例の導電性フィルムロールにおいては、巻き戻しの際、圧着を破壊する剥離音が生じた。また導電性フィルムの表面に圧着に起因する多数の傷が見られた。従って比較例の導電性フィルムロールには圧着が発生していたと推測される。
【0046】
[測定方法]
[金属酸化膜層の厚さ]
金属酸化膜層の厚さは、X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析装置(PHI社製「QuanteraSXM」)を用いて測定した。
[透明導電体層の厚さ、金属層の厚さ、フィルム基材の厚さ]
透明導電体層の厚さおよび金属層の厚さは、透過型電子顕微鏡(日立製作所製「H−7650」)により、断面観察を行なって測定した。フィルム基材の厚さは、膜厚計(Peacock社製デジタルダイアルゲージDG−205)を用いて測定した。
[導電性フィルムロールの圧着]
導電性フィルムロール34から導電性フィルム35を巻き戻し、導電性フィルム35の表面を観察して、圧着の有無を確認した。圧着が発生していると、巻き戻しの際、圧着を破壊する剥離音が生じる。また導電性フィルム35の表面に、圧着に起因する多数の傷が生じる。