(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930907
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】ファンモータの駆動装置、駆動方法、冷却装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02P 6/06 20060101AFI20160526BHJP
H02P 6/12 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
H02P6/02 321J
H02P6/02 321P
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-167741(P2012-167741)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-27820(P2014-27820A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 信介
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−223861(JP,A)
【文献】
特開2012−143070(JP,A)
【文献】
特開2001−012267(JP,A)
【文献】
特開2004−208370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象のファンモータの目標トルクに応じてパルス幅変調された制御信号のデューティ比をデジタル値に変換するデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタの出力値を、前記制御信号の周期と非同期なサンプリングタイミングでサンプリングすることによりトルク指令値を生成するサンプリング回路と、
前記トルク指令値にもとづいて前記ファンモータを駆動する駆動回路と、
を備えることを特徴とするファンモータの駆動装置。
【請求項2】
前記サンプリング回路が前記トルク指令値を更新するタイミングは、前記ファンモータのゼロクロス点に応じていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記サンプリング回路は、前記デジタルフィルタの出力値をサンプリングすると直ちに前記トルク指令値を更新することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記サンプリング回路は、前記ファンモータのゼロクロス点に応じて、前記デジタルフィルタの出力値をサンプリングし、前記トルク指令値を更新することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記サンプリング回路は、前記ファンモータが所定の電気角回転するごとに、前記デジタルフィルタの出力値をサンプリングし、前記トルク指令値を更新することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記デジタルフィルタの出力値のサンプリングタイミングと、前記トルク指令値の更新タイミングは異なることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
ひとつの半導体基板に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項8】
ファンモータと、
前記ファンモータを駆動する請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動装置と、
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
請求項8に記載の冷却装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
ファンモータの駆動方法であって、
前記ファンモータの目標トルクに応じてパルス幅変調された制御信号を生成するステップと、
前記制御信号をデジタルフィルタにより平滑化するステップと、
前記デジタルフィルタの出力値を、前記制御信号の周期と非同期なサンプリングタイミングでサンプリングすることによりトルク指令値を生成するステップと、
前記トルク指令値にもとづいて前記ファンモータを駆動するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記トルク指令値が更新されるタイミングは、前記ファンモータのゼロクロス点に応じていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記デジタルフィルタの出力値がサンプリングされると、直ちに前記トルク指令値が更新されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ファンモータのゼロクロス点に応じて、前記デジタルフィルタの出力値がサンプリングされ、前記トルク指令値が更新されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ファンモータが所定の電気角回転するごとに、前記デジタルフィルタの出力値がサンプリングされ、前記トルク指令値が更新されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータ駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のパーソナルコンピュータやワークステーションの高速化にともない、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などの演算処理用LSI(Large Scale Integrated circuit)の動作速度は上昇の一途をたどっている。このようなLSIは、その動作速度、すなわちクロック周波数が高くなるにつれて発熱量も大きくなる。LSIからの発熱は、そのLSI自体を熱暴走に導いたり、あるいは周囲の回路に対して影響を及ぼすという問題がある。したがってLSIをはじめとする発熱体(以下LSIという)の適切な熱冷却はきわめて重要な技術となっている。
【0003】
LSIを冷却するための技術の一例として、冷却ファンによる空冷式の冷却方法がある。この方法においては、たとえば、LSIの表面に対向して冷却ファンを配置し、冷たい空気をLSI表面に吹き付ける。
【0004】
図1は、本発明者らが検討した冷却装置の構成を示す回路図である。冷却装置4は、駆動装置100およびファンモータ6を備える。駆動装置100は、ファンモータ6のトルク(回転数)を指示するための制御信号S1にもとづいてファンモータ6を駆動する。
【0005】
ファンモータ6は、3相交流モータであり、スター結線されたU相、V相、L相のコイルL
U、L
V、L
Wと、図示しない永久磁石を備える。駆動装置100は、ひとつの半導体基板上に集積化された機能IC(Integrated Circuit)であり、その電源端子ICVDDには電源電圧が供給され、その接地端子ICGNDには接地電圧が供給される。
【0006】
駆動装置100は、逆起電力(BEMF:Back ElectroMotive Force)検出回路10、PWM入力段12、駆動信号合成回路14、駆動回路16、回転数信号生成回路20、を備える。
【0007】
PWM入力段12には、ファンモータ6の目標トルク、言い換えれば目標回転数に応じてパルス幅変調された制御信号S1が入力される。最大トルクが指示されるとき制御信号S1のデューティ比は100%となり、最小トルク(ゼロトルク)が指示されるとき、制御信号S1のデューティ比は0%となる。PWM入力段12は、デューティ比−デジタル変換を行い、制御信号S1のデューティ比に応じたデジタルのトルク指令値S2を生成する。
【0008】
BEMF検出回路10は、スター結線されるU、V、W相のコイルL
U、L
V、L
Wそれぞれの一端に生ずる逆起電力V
U、V
V、V
Wを、3つのコイルの共通接続ノードN1に生ずる中点電圧V
COMと比較し、電気角60度ごとにアサートされる回転検出信号S3を生成する。たとえばBEMF検出回路10は、U、V、W相ごとに設けられたコンパレータ(不図示)を備える。各コンパレータは、対応する相のコイルの一端に生ずるコイル電圧(逆起電力)V
U、V
V、V
Wを、中点電圧V
COMと比較し、比較結果を示す信号を生成する。各相のコンパレータから出力される信号を論理合成することにより、回転検出信号S3が生成される。
【0009】
駆動信号合成回路14は、回転検出信号S3およびトルク指令値S2を受け、それらを合成して、駆動制御信号S4を生成する。また駆動信号合成回路14は、駆動装置100の電源投入直後において、ファンモータ6の駆動シーケンスを切りかえる。
【0010】
駆動回路16は、駆動制御信号S4に応じて、コイルL
U、L
V、L
Wそれぞれの一端に、駆動電圧を印加する。駆動回路16は、ファンモータ6をBTL駆動してもよいし、入力信号S1に応じてPWM駆動してもよい。
【0011】
回転数信号生成回路20は、ファンモータ6の機械角(モータ角)180度ごとに、すなわちファンモータ6の1/2回転ごとに遷移する回転数信号FGを生成し、FG端子から出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−31190号公報
【特許文献2】特開2001−284868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図2(a)、(b)は、本発明者らが検討したPWM入力段12の構成例を示す回路図およびその動作を示す波形図である。
図2(a)のPWM入力段12は、ローパスフィルタ12aおよび平滑化回路12bを備える。ローパスフィルタ12aは、たとえばIIR(Infinite Impulse Response)型のローパスフィルタである。平滑化回路12bは、制御信号S1と同じ周波数で、ローパスフィルタ12aのデジタル出力値S10をサンプリングし、トルク指令値S2を更新する。なお、
図2(a)のPWM入力段12の構成およびその動作を公知技術と認定してはならない。
【0014】
図2(a)のPWM入力段12を用いると、制御信号S1のデューティ比が一定値を維持するときに、トルク指令値S2が同じ値を持続する。これにより、モータのトルクが安定化する反面、モータが発生する音響ノイズがある周波数に集中してしまう。静音化が要求されるファンモータにおいて、これは対策すべき課題である。
【0015】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ファンモータのノイズを低減可能な駆動装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のある態様は、ファンモータの駆動装置に関する。駆動装置は、駆動対象のファンモータの目標トルクに応じてパルス幅変調された制御信号のデューティ比をデジタル値に変換するデジタルフィルタと、デジタルフィルタの出力値を、制御信号の周期と非同期なサンプリングタイミングでサンプリングすることによりトルク指令値を生成するサンプリング回路と、トルク指令値にもとづいてファンモータを駆動する駆動回路と、を備える。
【0017】
この態様によると、デジタルフィルタの出力値を、制御信号の周期と非同期でサンプリングすることにより、制御信号のデューティ比が一定値を持続した場合においても、トルク指令値がランダムに変化することになるため、音響ノイズの周波数を分散させることができる。
【0018】
サンプリング回路がトルク指令値を更新するタイミングは、ファンモータのゼロクロス点に応じてもよい。ゼロクロス点で、トルク指令値を更新することにより、トルクの切りかえにともなうノイズを抑制できる。
【0019】
サンプリング回路は、デジタルフィルタの出力値をサンプリングすると直ちにトルク指令値を更新してもよい。つまり、サンプリングと更新のタイミングは一致してもよい。この場合、信号処理および回路構成を簡素化できる。
【0020】
サンプリング回路は、ファンモータのゼロクロス点に応じて、デジタルフィルタの出力値をサンプリングし、トルク指令値を更新してもよい。
【0021】
サンプリング回路は、所定の電気角ごとに、デジタルフィルタの出力値をサンプリングし、トルク指令値を更新してもよい。所定の電気角は360度であってもよい。
ファンモータは、所定の電気角ごとに駆動電流がゼロとなる。したがって、ファンモータの回転と同期してトルク指令値を更新することにより、トルクの切りかえにともなうノイズを抑制できる。
【0022】
サンプリング回路は、デジタルフィルタの出力値のサンプリングタイミングと、トルク指令値の更新タイミングは異なってもよい。
【0023】
本発明の別の態様は冷却装置に関する。冷却装置は、ファンモータと、ファンモータを駆動する上述のモータ駆動装置と、を備える。
【0024】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、冷却装置を備えてもよい。
【0025】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のある態様によれば、音響ノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明者らが検討した冷却装置の構成を示す回路図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、本発明者らが検討したPWM入力段の構成例を示す回路図およびその動作を示す波形図である。
【
図3】実施の形態に係る駆動装置を備える電子機器の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3の駆動装置の具体的な構成例を示す回路図である。
【
図5】PWM入力段の具体的な構成例を示すブロック図である。
【
図7】第2の変形例に係る駆動装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
本発明の実施の形態について、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの電子計算機に搭載され、CPUなどを冷却するためのファンモータを駆動させるためのファンモータ駆動装置を例に説明する。
【0031】
図3は、実施の形態に係る駆動装置100を備える電子機器1の構成を示すブロック図である。
【0032】
電子機器1は、デスクトップまたはラップトップ型パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどの計算機、あるいは冷蔵庫やテレビなどの家電製品であり、冷却対象、たとえばCPU2を備える。冷却装置4は、送風によってCPU2を冷却する。
【0033】
冷却装置4は、駆動装置100およびファンモータ6を備える。ファンモータ6は、冷却対象のCPU2に近接して配置されている。駆動装置100は、ファンモータ6のトルク(回転数)を指示するための制御信号S1にもとづいてファンモータ6を駆動する。冷却装置4は、モジュール化されて市販、流通される。
【0034】
ファンモータ6は、3相交流モータであり、スター結線されたU相、V相、L相のコイルL
U、L
V、L
Wと、図示しない永久磁石を備える。本実施の形態では、ファンモータ6の極数は4である。
【0035】
駆動装置100は、ひとつの半導体基板上に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。電源端子ICVDDには、電源電圧が供給され、接地端子ICGNDには接地電圧が供給される。
【0036】
駆動装置100は、逆起電力(BEMF:Back ElectroMotive Force)検出回路10、PWM入力段12、駆動信号合成回路14、駆動回路16、回転数信号生成回路20を備える。駆動装置100の構成は、
図1で説明した通りである。
【0037】
PWM入力段30には、ファンモータ6の目標トルク、言い換えれば目標回転数に応じてパルス幅変調された制御信号S1が入力される。最大トルクが指示されるとき制御信号S1のデューティ比は100%となり、最小トルク(ゼロトルク)が指示されるとき、制御信号S1のデューティ比は0%となる。PWM入力段12は、デューティ比−デジタル変換を行い、制御信号S1のデューティ比に応じたデジタルのトルク指令値S2を生成する。
【0038】
PWM入力段30は、デジタルフィルタ32およびサンプリング回路34を備える。デジタルフィルタ32は、ファンモータ6の目標トルクに応じてパルス幅変調された制御信号S1を受け、そのデューティ比をデジタル値に変換する。デジタルフィルタ32は、たとえばIIR(Infinite Impulse Response)型のデジタルフィルタである。
【0039】
サンプリング回路34は、デジタルフィルタ32の出力値S10を、制御信号S1の周期と非同期なストローブ信号S11に応じたサンプリングタイミングでサンプリングすることによりトルク指令値S2を生成する。
【0040】
駆動信号合成回路14は、BEMF検出回路10からの回転検出信号S3と、PWM入力段30からのトルク指令値S2にもとづいて、ファンモータ6を駆動するための駆動制御信号S4を生成する。
【0041】
駆動回路16は、駆動制御信号S4に応じて、コイルL
U、L
V、L
Wそれぞれの一端に、駆動電圧を印加する。駆動回路16は、ファンモータ6をBTL駆動してもよいし、入力信号S1に応じてPWM駆動してもよい。
【0042】
回転数信号生成回路20は、ファンモータ6の機械角(モータ角)360度ごとに、すなわちファンモータ6の1/2回転ごとに遷移する回転数信号FGを生成し、FG端子から出力する。
【0043】
図4は、
図3の駆動装置100の具体的な構成例を示す回路図である。
【0044】
BEMF検出回路10は、複数のコンパレータCMP
U〜CMP
W、回転検出信号生成部11を含む。複数のコンパレータCMP
U〜CMP
Wはそれぞれ、ファンモータ6のコイルL
U〜L
Wごとに設けられる。各コンパレータCMP
U〜CMP
Wは、それぞれが対応するコイルL
U〜L
Wの一端に生ずる逆起電力V
U〜V
Wを、複数のコイルL
U〜L
Wの中点電圧V
COMと比較し、比較結果を示す逆起電力検出信号BEMF
U〜BEMF
W(以下、検出信号という)を生成する。
【0045】
各相の逆起電力V
U〜V
Wが中点電圧V
COMと交差するタイミング、言い換えれば逆起電力検出信号BEMF
U〜BEMF
Wが遷移するタイミングをゼロクロス点という。
【0046】
回転検出信号生成部11は、各相の検出信号BEMF
U〜BEMF
Wを受け、それらを論理合成することにより、回転検出信号S3を生成する。回転検出信号生成部11は、合成部94の一部として構成されてもよい。
【0047】
駆動信号合成回路14は、制御パターン生成部90、合成部94を備える。
制御パターン生成部90は、ファンモータ6を第1の方向に回転させる際に、駆動回路16の駆動シーケンスを定義する制御パターンPAT1を出力する。ファンモータ6が正転、反転が切りかえ可能な場合、回転方向に応じて2つの制御パターンが用意される。
【0048】
制御パターンPAT1は、ファンモータ6の各相U、V、WのコイルL
U〜L
Wに信号を与えるべき順序を記述するデータを含み、ROMなどに格納されてもよい。合成部94は、回転検出信号S3と同期して、第1制御パターンPAT1を読み出す。
【0049】
合成部94は、複数のコンパレータCMP
U〜CMP
Wの出力信号と同期して、言い換えれば回転検出信号S3と同期して、制御パターンPAT1にもとづき駆動制御信号S4を生成する。
【0050】
駆動回路16がPWM駆動(スイッチング駆動)を行う場合、ファンモータ6のコイルL
U〜L
Wに印加される駆動電圧は、ハイレベル電圧(電源電圧)とローレベル電圧(接地電圧)をスイッチングする。合成部94は、PWM入力段12からのトルク指令値S2を受け、トルク指令値S2に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号を生成する。そして合成部94は、このパルス幅変調信号を制御パターンPAT1と論理合成し、駆動制御信号S4を生成する。なお、合成部94の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。
【0051】
駆動回路16は、BTL駆動(リニア駆動)を行ってもよい。BTL駆動では、ファンモータ6のコイルL
U〜L
Wに印加される駆動電圧の包絡線は、正弦波、疑似正弦波、台形波などの波形にしたがって変化する。BTL駆動においては、PWM入力段12からのトルク指令値S2に応じたデューティ比を有するパルス幅変調信号が生成され、包絡線の波形とパルス幅変調信号が合成され、駆動電圧が生成される。
【0052】
図5は、PWM入力段30の具体的な構成例を示すブロック図である。PWM入力段30は、デジタルフィルタ32およびサンプリング回路34を備える。
【0053】
デジタルフィルタ32は、ファンモータ6の目標トルクに応じてパルス幅変調された制御信号S1を受け、そのデューティ比をデジタル値に変換する。デジタルフィルタ32は、たとえばIIR(Infinite Impulse Response)型のデジタルフィルタであり、第1変換器40、加算器42、遅延回路44、係数回路46を備える。
【0054】
デューティ比は2
X階調で判定される。第1変換器40は、制御信号S1がハイレベルのとき、デジタル値2
xを出力し、制御信号S1がローレベルのとき、デジタル値0を出力する。x=9の場合、デューティ比は512階調で表現され、第1変換器40の出力は、10進数で512または0の値をとる。加算器42は、第1変換器40の出力および遅延回路44の出力を加算し、係数回路46の出力を減算する。遅延回路44は加算器42の出力をnビット、遅延させる。係数回路46は、遅延回路44の出力に係数2
−nを乗ずる。2
−nはフィルタの係数である。係数回路46の出力S10は、後段のサンプリング回路34に入力される。
【0055】
なおデジタルフィルタ32の構成は
図3に限定されず、その他の形式のデジタルフィルタを用いてもよい。たとえば2次以上のデジタルフィルタを用いてもよいし、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いてもよい。
【0056】
サンプリング回路34は、デジタルフィルタ32の出力値S10を、制御信号S1の周期と非同期なストローブ信号S11に応じたサンプリングタイミングでサンプリングすることによりトルク指令値S2を生成する。具体的にはサンプリング回路34は、フリップフロップFF1やラッチ回路で構成できる。
【0057】
本実施の形態において、サンプリング回路34がデジタルフィルタ32の出力S10をサンプリングすると、後段の駆動信号合成回路14に入力されるトルク指令値S2が直ちに更新される。すなわちサンプリングタイミングt1と更新タイミングt2は実質的に同じであるが、ここではそれらは別々の概念としてとらえることができる。
【0058】
好ましくは、上述のようにサンプリングタイミングt1は、制御信号S1のスイッチング周期とは非同期で生成される。また、好ましくは更新タイミングt2は、所定の電気角ごとに、ファンモータ6のゼロクロス点に応じて生成される。上述のように、ゼロクロス点は、BEMF検出回路10により検出可能である。たとえば、更新タイミングt2は、電気角360度ごとに生成され、4極モータではロータの1/2回転ごと、12極モータではロータの1/6回転ごとに生成される。更新タイミングは、回転検出信号S3のエッジあるいは回転数信号FGのエッジに応じて生成することができる。
【0059】
サンプリングタイミングt1と更新タイミングt2を一致させる場合、それらのタイミングは、制御信号S1の周期と非同期であり、かつファンモータ6のゼロクロス点に応じていることが望ましい。回転検出信号S3のエッジあるいは回転数信号FGのエッジは、ファンモータ6の回転数に応じた周期を有しており、制御信号S1の周期とは非同期である。したがって、ゼロクロス点に応じたタイミングは、更新タイミングt2のみでなく、サンプリングタイミングt1として利用することができる。
【0060】
図5のサンプリング回路34においては、ファンモータ6が所定の電気角回転するたびにストローブ信号S11がアサートされ、デジタルフィルタ32の出力値S10がサンプリングされ、トルク指令値S2が更新される。
【0061】
以上が駆動装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0062】
図6は、
図3の駆動装置100の動作を示す波形図である。サンプリングタイミングt1および更新タイミングt2を指示するストローブ信号S11は、ゼロクロス点に応じて生成される。ゼロクロス点は制御信号S1の周期とは非同期であるから、デジタルフィルタ32の出力S10が周期的に変動する場合であっても、サンプリングタイミングt1におけるデジタルフィルタ32の出力S10の値、すなわちトルク指令値S2は、周期毎にランダムに変動する。
【0063】
この駆動装置100によれば、制御信号S1のデューティ比が一定値を持続する場合であっても、トルク指令値S2が変動するため、ファンモータ6が発生する音響ノイズの周波数成分を拡散することができ、音響ノイズを低減できる。
【0064】
またトルク指令値S2の更新タイミングt2を、ゼロクロス点と一致させることにより、電流波形が歪むのを抑制でき、ノイズの発生を抑制できる。
【0065】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0066】
(第1の変形例)
サンプリング回路34におけるデジタルフィルタ32の出力値S10のサンプリングタイミングt1と、駆動信号合成回路14に入力されるトルク指令値S2の更新タイミングt2は異なってもよい。
この場合、サンプリング回路34は、2個のフリップフロップを直列に接続し、前段のフリップフロップにサンプリングタイミングt1を指示するストローブ信号を、後段のフリップフロップに更新タイミングt2を指示するストローブ信号を入力すればよい。
【0067】
(第2の変形例)
図7は、第2の変形例に係る駆動装置100の構成を示す回路図である。
駆動装置100は、
図3のBEMF検出回路10に代えて、ホール素子50およびホール信号検出部52を備える。ホール素子50は、ファンモータ6のロータの位置に応じたホール信号を生成する。ホール信号検出部52は、ホール信号H+、H−を比較し、あるいはそれらの差分を増幅することにより、回転検出信号S3を生成する。
ホール素子を利用したセンサ付きのファンモータにおいても、音響ノイズを低減できる。なお、ホール素子50は駆動装置100に外付けされてもよい。
【0068】
(第3の変形例)
実施の形態では、駆動装置100に対して、パルス幅変調された制御信号S1が入力される場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。制御信号S1は、トルクの目標値を指示するアナログ電圧であってもよい。この場合、PWM入力段12の前段に、アナログ電圧をパルス幅変調するパルス幅変調器を挿入すればよい。たとえばパルス幅変調器は、のこぎり波あるいは三角波の周期電圧を生成するオシレータと、アナログ電圧を周期電圧と比較するコンパレータと、で構成できる。
【0069】
(第4の変形例)
PWM入力段30のサンプリング回路34は、制御信号S1の周期と非同期なストローブ信号S11と、
図2に示すような制御信号S1の周期と同期したストローブ信号とが切りかえ可能に構成されてもよい。
この変形例によれば、音響ノイズを低減したい用途においては、制御信号S1の周期と非同期なストローブ信号S11を使用し、トルクを安定させたい場合には、制御信号S1と同期したストローブ信号を使用することができる。
【0070】
実施の形態において、冷却装置4を電子機器に搭載してCPUを冷却する場合について説明したが、本発明の用途はこれには限定されず、発熱体を冷却するさまざまなアプリケーションに用いることができる。さらにいえば、本実施の形態に係る駆動装置100の用途は、ファンモータの駆動に限定されるものではなく、その他の各種モータの駆動に用いることができる。
【0071】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0072】
100…駆動装置、1…電子機器、2…CPU、4…冷却装置、6…ファンモータ、10…BEMF検出回路、11…回転検出信号生成部、12…PWM入力段、14…駆動信号合成回路、16…駆動回路、20…回転数信号生成回路、30…PWM入力段、32…デジタルフィルタ、34…サンプリング回路、40…第1変換器、42…加算器、44…遅延回路、46…係数回路、50…ホール素子、52…ホール信号検出部、90…制御パターン生成部、94…合成部、FG…回転数信号、S1…制御信号、S2…トルク指令値、S3…回転検出信号、S4…駆動制御信号。