【文献】
小野口 一則,蓄積時間の異なる輝度ヒストグラム間の相関による移動体検出,電子情報通信学会論文誌 D,日本,社団法人 電子情報通信学会,2007年 8月 1日,Vol.J90-D No.8,P.1998-2008
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変動検出部は、前記判定部による前記対象物の判定処理が妨げられる限度以上の面積の前記入力変化領域が前記入力画像中を占めるときに前記変動有りを検出することを特徴とする、請求項2に記載の対象物検出装置。
前記背景変化領域抽出手段は、前記現背景画像と前記前背景画像の差分処理による前記現背景画像の変化が照明変動によって変化したと判断できる基準を満たすときに前記背景変化領域を抽出することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の対象物検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態である対象物検出装置について、図面に基づいて説明する。本実施形態の対象物検出装置は、現在の背景画像である現背景画像と、現背景画像より前の時刻の背景画像である前背景画像とを差分処理して得られる前背景画像が変化した領域であって、かつ前背景画像と入力画像を差分処理して得られる前背景画像が保持されている領域である光影判定領域を求める。かかる光影判定領域が、本発明の判定領域の一例である。そして、対象物検出装置は、入力画像と現背景画像を差分処理して得られる入力画像において変化した入力変化領域について、入力変化領域に占める光影判定領域の面積が大きくなるほど、対象物と判定され難くする。
【0016】
本実施形態の対象物検出装置は、建物外に設定された監視領域への侵入者を対象物として検出する装置である。ただし、対象物検出装置が検出する対象物は、車や動物など、人以外のどのようなものでもよい。監視領域を屋内に設定してもよい。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である対象物検出装置100の概略構成を示した図である。対象物検出装置100は、記憶部20と、画像処理部30と、出力部40とを有する。対象物検出装置100では、撮像部10にて撮像された画像が、画像処理部30に入力される。記憶部20は、本実施形態の処理に必要な画像情報を記憶する。画像処理部30は、撮像部10から入力された画像および記憶部20に記憶された各画像情報に基づいて、監視領域内の対象物を検出する。出力部40は、画像処理部30にて侵入者が検出されると異常検出信号を外部に出力する。
【0018】
なお、本実施形態では、撮像部10を対象物検出装置100とは別個の構成要素としているが、撮像部10を対象物検出装置100に含めてもよい。
【0019】
撮像部10は、CCD素子またはC−MOS素子など、近赤外光または可視光に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系と、2次元検出器から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換する電気回路などを有する。撮像部10は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮像を行う。そして撮像部10は、監視領域を撮像した画像データをA/D変換してデジタル画像(以下、入力画像という)を生成する。そして撮像部10は、生成した入力画像を画像処理部30に出力する。
【0020】
記憶部20は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置である。記憶部20は、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、または磁気ディスク(HDD)などの記憶装置を有してもよい。記憶部20は、対象物検出装置100で使用される各種プログラムや各種データを記憶し、画像処理部30との間でこれらの情報を入出力する。また記憶部20は、例えば、対象物検出装置100が起動したときなどに撮像部10が生成した、監視領域内に移動物体が存在しないときの監視領域の画像を背景画像として記憶する。記憶部20は、現背景画像や、前背景画像、光影判定領域などを記憶する。
【0021】
画像処理部30は、組み込み型のマイクロプロセッサとその周辺回路により構成され、対象物検出装置100全体を制御する。対象物検出装置100の各処理は、そのマイクロプロセッサなどで実行されるプログラムにより実現される。実行されるプログラムに応じて、画像処理部30は、撮像部10から入力された入力画像について各種の処理を行う。入力画像に基づき監視領域内への侵入者を検出するために、画像処理部30は、判定領域抽出部31、入力変化領域抽出部32、追跡部33、特徴量抽出部34、判定部35、背景画像更新部36、および変動検出部37を有する。画像処理部30が有するこれらの各部は、例えば、マイクロプロセッサユニット上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装される。
【0022】
判定領域抽出部31は、記憶部20に記憶されている現背景画像および前背景画像、ならびに撮像部10から入力された入力画像を用いて光影判定領域を抽出し、抽出した光影判定領域を記憶部20に記憶する。そのために、判定領域抽出部31は、背景変化領域抽出手段311、背景保持領域抽出手段312、および判定領域抽出手段313を有する。
【0023】
背景変化領域抽出手段311は、現背景画像と前背景画像を差分処理して、前背景画像に対して現背景画像が変化した領域である背景変化領域を抽出する。その際、背景変化領域抽出手段311は、現背景画像と前背景画像の間で対応する画素間の輝度差を求め、その輝度差の絶対値を画素値とする差分画像を作成し、差分画像の中で画素値が基準値以上となる画素を背景変化領域として抽出する。
【0024】
背景保持領域抽出手段312は、入力画像と前背景画像を背景変化領域抽出手段311と同様に差分処理して、前背景画像が保持されている領域(すなわち、変化がない領域)である背景保持領域を抽出する。
【0025】
判定領域抽出手段313は、背景変化領域抽出手段311と背景保持領域抽出手段312が作成した差分画像間の対応する画素同士で論理積を求め、背景変化領域と背景保持領域が重複する領域を光影判定領域として抽出する。
【0026】
図2は、光影判定領域を説明するための図である。光影判定領域151は、現背景画像121に取り込まれた光などによる入力変化領域のうち、現時点の入力画像123においては、現背景画像121に対して光などによる変化が生じていない領域であると定義される。つまり、光影判定領域151は、一時的な変化が背景画像の更新に伴って背景画像に取り込まれた領域である。光影判定領域151は、現背景画像121と前背景画像122を差分処理して現背景画像121が変化した領域(背景変化領域141)であって、かつ前背景画像122と入力画像123を差分処理して前背景画像122が保持されている領域(背景保持領域142)として抽出される。
【0027】
ここでは、例として、現背景画像121には木183に加えてヘッドライトの光181と懐中電灯の光182が写っているが、それより前の時刻に撮像された前背景画像122にはこれらの光がなく木183だけが写っており、さらに入力画像123には現背景画像121とは異なるヘッドライトの光185が木183および人184とともに写っている場合を考える。
【0028】
差分画像131は、判定領域抽出部31の背景変化領域抽出手段311が、現背景画像121と前背景画像122を差分処理することにより得られた画像である。差分画像131では、現背景画像121のヘッドライトの光181と懐中電灯の光182で照らされている領域が、前背景画像122に対して現背景画像121が変化した背景変化領域141となる。
【0029】
また、差分画像132は、判定領域抽出部31の背景保持領域抽出手段312が、前背景画像122と入力画像123を差分処理することにより得られた画像である。差分画像132では、入力画像123でヘッドライトの光185と人184が写っている領域以外の領域が、前背景画像122が保持されている背景保持領域142となる。背景保持領域142は、前背景画像122、現背景画像121、入力画像123の順序で時間が経過し監視領域に光の変動が起こった前後で一致しており、前背景画像122の対応する部分の情報が保持されている領域に相当する。
【0030】
差分画像133は、判定領域抽出部31の判定領域抽出手段313が、差分画像131の背景変化領域141と差分画像132の背景保持領域142の間で重複する領域をとることにより得られる画像である。この重複する領域が光影判定領域151である。差分画像133では、ヘッドライトの光181および懐中電灯の光182で照らされている現背景画像121の領域から、入力画像123で人184が写っている領域を除いた領域が、光影判定領域151となる。この光影判定領域151は、現背景画像121に取り込まれたものがある領域であるが、前背景画像122と入力画像123の間では変化がなく、したがって、現背景画像121に一時的に取り込まれたものがある領域に相当する。
【0031】
入力変化領域抽出部32は、撮像部10により入力された入力画像と、記憶部20に記憶されている現背景画像との間で背景差分処理を行って2値化した差分画像を作成し、現背景画像に対して入力画像が変化した領域である入力変化領域を抽出する。その際、入力変化領域抽出部32は、現背景画像と入力画像の間で対応する画素間の輝度差を求め、その輝度差の絶対値を画素値とする差分画像を作成し、差分画像の中で画素値が基準値以上となる画素を変動がある画素とする。そして、その変動がある画素からなる領域を入力変化領域として抽出する。
【0032】
さらに、入力変化領域抽出部32は、公知のラベリング手法などを用いることにより、作成した差分画像において変動がある画素同士が1つに連結された領域を1つの入力変化領域として抽出するラベリング処理を行う。このとき抽出される入力変化領域の数は1つに限らず、複数の入力変化領域が抽出されることもある。ラベリング処理は、変動画素同士が縦、横方向に連結された領域を1つの入力変化領域として抽出する4近傍連結で行ってもよいし、縦、横、斜め方向に連結された領域を1つの入力変化領域として抽出する8近傍連結で行ってもよい。また、ラベル付けされた入力変化領域が他のラベル付けされた入力変化領域と近接している場合、入力変化領域抽出部32は、一定の大きさや位置関係にあるラベル付けされた入力変化領域を同一物体による入力変化領域であるとし、これらを1つの入力変化領域としてラベル付けし直す。この処理は、差分が出にくい環境で1つの物体によって生じた入力変化領域が異なる複数の入力変化領域として分割されるのを防ぐために行う。
【0033】
図3は、入力変化領域を説明するための図である。
図3の現背景画像121と入力画像123は、
図2に示したものと同じである。現背景画像121と入力画像123との差分をとると、現背景画像121のヘッドライトの光181と懐中電灯の光182で照らされている領域、および入力画像123のヘッドライトの光185で照らされている領域が、画素値の差分の絶対値が基準値以上である入力変化領域となる。入力変化領域抽出部32は、入力変化領域161、入力変化領域162および入力変化領域163の3つを抽出し、それらに対してラベル付けを行う。
【0034】
追跡部33は、入力変化領域抽出部32により抽出されラベル付けされた入力変化領域に対して、例えば公知のトラッキング処理を利用して、前回処理した入力画像中における入力変化領域のうち同一の物体によるものと判断できる入力変化領域と対応付けする。つまり、追跡部33は、異なる時刻に撮像された入力画像について、同一の物体による入力変化領域を対応付けることで、入力変化領域の追跡を実現する。
【0035】
特徴量抽出部34は、追跡部33により追跡されている入力変化領域ごとに、例えば入力変化領域の大きさや縦横比、移動量、平均輝度値、背景より明るい面積の割合、背景との相関などの特徴量を抽出する。また、特徴量抽出部34は、記憶部20から光影判定領域を読み出し、入力変化領域の面積に占める、入力変化領域と光影判定領域が重複する面積の割合(以下、光影判定領域画素比率という)を、その入力変化領域の特徴量の1つとして抽出する。特徴量抽出部34は、抽出した特徴量を判定部35へ出力する。
【0036】
大きさについての特徴量a1を求めるには、特徴量抽出部34は、入力画像中に占める入力変化領域の大きさを求め、その値が人体の大きさに対応する所定範囲に含まれるか否かを判定する。特徴量抽出部34は、例えば入力変化領域の大きさが所定範囲に含まれる場合に1となり、所定範囲から外れた量が大きくなるほど0に近付くように正規化した値を特徴量a1とする。
【0037】
縦横比についての特徴量a2を求めるには、特徴量抽出部34は、入力変化領域の縦横比を求め、その値が人体の縦横比に対応する所定範囲に含まれるか否かを判定する。特徴量抽出部34は、例えば入力変化領域の縦横比が所定範囲に含まれる場合に1となり、所定範囲から外れた量が大きくなるほど0に近付くように正規化した値を特徴量a2とする。
【0038】
移動量についての特徴量a3を求めるには、特徴量抽出部34は、入力変化領域の移動量を求め、その値が人の平均的な移動量に対応する所定範囲に含まれるか否かを判定する。特徴量抽出部34は、例えば入力変化領域の移動量が所定範囲に含まれる場合に1となり、所定範囲から外れた量が大きくなるほど0に近付くように正規化した値を特徴量a3とする。
【0039】
平均輝度値についての特徴量c1を求めるには、特徴量抽出部34は、入力変化領域について、入力画像中の対応する各画素の輝度値から、平均値を算出する。特徴量抽出部34は、入力変化領域に含まれる画素が全て光に対応する基準値より上の値をもつ場合に1となり、そうした基準値を上回る値をもつ画素が少なくなるほど0に近付くように正規化した値を特徴量c1とする。
【0040】
明るい面積の割合についての特徴量c2を求めるには、特徴量抽出部34は、入力変化領域について、入力画像と現背景画像中の対応する各画素の輝度値の差を求め、その差が正である画素が入力変化領域中で占める割合を算出する。特徴量抽出部34は、入力変化領域中の全ての画素で入力画像が背景画像よりも明るい場合に1となり、入力画像が背景画像よりも明るい画素が少なくなるほど0に近付くように正規化した値を特徴量c2とする。
【0041】
また、相関についての特徴量c3として、特徴量抽出部34は、入力変化領域について、入力画像上の入力変化領域と現背景画像上の対応する領域との間で正規化相関値を算出する。
【0042】
判定部35は、特徴量抽出部34により抽出された複数の特徴量を用いて、入力変化領域に対象物があるか否かを判定する。そのために、判定部35は、それらの特徴量に基づき、入力変化領域ごとに、人らしさの指標となる人属性値および光や影らしさの指標となる人以外属性値を算出する。
【0043】
判定部35は、人らしさの特徴量を表す人属性値を、入力変化領域が人体である場合に高い値となるように設定する。入力変化領域の人属性値は、例えば、入力変化領域の大きさによる特徴量a1と、入力変化領域の縦横比による特徴量a2と、入力変化領域の移動量による特徴量a3に重み付けをして、その総和を求めることにより算出される。
【0044】
特徴量a1、a2、a3に対する重み付けをb1、b2、b3として、判定部35は人属性値を次の式により求める。
人属性値=a1×b1+a2×b2+a3×b3
ただし、b1+b2+b3=1
重み付けb1、b2、b3は、例えば入力変化領域の大きさが人らしさに最も寄与すると考えて、b1=0.5,b2=0.3,b3=0.2と設定してもよい。
【0045】
次に、判定部35は、人以外属性値を、入力変化領域が光である場合に高い値となるように設定する。入力変化領域の人以外属性値は、人属性値と同様に、例えば、入力変化領域の平均輝度値による特徴量c1と、入力変化領域が背景画像よりも明るい面積の割合による特徴量c2と、入力変化領域と背景との相関による特徴量c3に重み付けをして、その総和を求めることにより算出される。
【0046】
特徴量c1、c2、c3に対する重み付けをd1、d2、d3として、判定部35は人以外属性値を次の式により求める。
人以外属性値=c1×d1+c2×d2+c3×d3
ただし、d1+d2+d3=1
重み付けd1、d2、d3は、例えば入力変化領域の平均輝度値が光らしさに最も寄与すると考えて、d1=0.5,d2=0.3,d3=0.2と設定してもよい。
【0047】
さらに、判定部35は、特徴量抽出部34から光影判定領域画素比率を取得し、入力変化領域と光影判定領域が重複する面積の、入力変化領域の面積に占める割合が大きいほど侵入者が検出され難くなるように、対象物の検出基準を変更する。判定部35は、その検出基準として、例えば、その入力変化領域について算出した人以外属性値を、次式のようにボーナス値(e)だけ高い値に補正する。
人以外属性値=(算出された補正前の人以外属性値)+e
その際、判定部35は、抽出された入力変化領域の面積に占める、入力変化領域と光影判定領域が重複する面積の割合(光影判定領域画素比率)が基準値を超えれば超えるほど、入力変化領域が侵入者と判定され難くなるようにボーナス値(e)を高い値にする。そのときの基準値は、例えば40%とする。
【0048】
そして判定部35は、例えば人属性値が人以外属性値以上である入力変化領域を監視領域への侵入者であると判定し、人属性値が人以外属性値未満である入力変化領域を侵入者でないと判定する。判定部35は、その検出結果を出力部40に出力する。
【0049】
図4は、光影判定領域画素比率を説明するための図である。差分画像133と差分画像134は、それぞれ
図2と
図3に示したものと同じである。差分画像135は、差分画像133の光影判定領域151と差分画像134の入力変化領域161,162および163との間で重複する領域をとることにより得られる画像である。その重複する領域を黒色で示している。入力変化領域161,162および163のそれぞれについて、特徴量抽出部34は、入力変化領域に占める光影判定領域151の面積の割合を算出する。
【0050】
入力変化領域161の光影判定領域画素比率は100%である。つまり、入力変化領域161は、現背景画像121に取り込まれた光が入力画像123において移動したことで生じた入力変化領域である。入力変化領域161は、入力画像123では既に消えているため、判定部35が算出する人以外属性値は高い値にならない可能性がある。しかし、入力変化領域161は、光影判定領域画素比率が基準値の40%を超えているため、判定部35が人以外属性値を他の入力変化領域よりも高い値に補正する。
【0051】
入力変化領域162の光影判定領域画素比率は0%である。つまり、入力変化領域162は、光影判定領域151との間で重複する領域がない。入力変化領域162は、現背景画像121と前背景画像122にはなく入力画像123においてヘッドライトの光が照射されている領域であり、光の特徴が現れている画像である。このため、入力変化領域162については、判定部35が算出する人以外属性値はそもそも高い値になる。入力変化領域162は、光影判定領域画素比率が基準値の40%未満であるため、判定部35は人以外属性値を補正しない。
【0052】
入力変化領域163の光影判定領域画素比率は30%である。入力変化領域163は、現背景画像121に取り込まれた光が入力画像123において移動したことで生じた入力変化領域と、入力画像123における人の領域によるものである。このため、入力変化領域163については、判定部35が算出する人以外属性値が入力変化領域162ほど高い値にならず、また、入力画像123に人が写っているので人属性値が高くなる。入力変化領域163は、光影判定領域画素比率が基準値の40%未満であるため、判定部35は人以外属性値を補正しない。
【0053】
背景画像更新部36は、変動検出部37が監視領域における照明変動を検出したときに、すなわち、入力変化領域の大きさが過大と判断できる第1の基準値以上であるときに、背景画像を更新する。また、背景画像更新部36は、入力画像中で入力変化領域が抽出されないかもしくは抽出された入力変化領域が十分小さいときにも、すなわち、入力変化領域の大きさが微小と判断できる第2の基準値以下であるときにも、背景画像を更新する。背景画像更新部36は、現背景画像を更新する際に、更新前の現背景画像を前背景画像として記憶部20に記憶する。
【0054】
変動検出部37は、例えば監視領域の照明変動などの、判定部35による侵入者の判定処理に影響がある変動を検出する。変動検出部37は、監視領域の照度変動を検出する照度計を含んでもよいし、外部の照度計などから監視領域の照度情報を取得して、照明変動を検出してもよい。あるいは、変動検出部37は、入力画像の画面全体の平均輝度値を一定期間保存し、輝度値の変動が大きい場合に変動を検出するようにしてもよい。一定期間のデータがない場合は、照明変動と判断しなくてもよい。
【0055】
出力部40は、構内LANまたは公衆回線網などの通信ネットワークに接続する通信インターフェースおよびその制御回路を有する。そして出力部40は、判定部35により侵入者が検出された場合に、通信ネットワークを介して対象物検出装置100と接続された警備装置または監視センター装置(いずれも図示しない)などの外部に、その情報を異常検出信号として出力する。なお、対象物検出装置100から警報を受け取った警備装置または監視センター装置は、音声や画像により、監視領域内で侵入者が検出された旨を監視者に通知する。また、出力部40は、外部のブザーや警告灯に対して動作信号を出力するインターフェースを有し、判定部35が侵入者を検出したときにブザーを鳴動させたり警告灯を表示させるなどして、対象物検出装置100の周囲に異常の発生を通知してもよい。
【0056】
次に、
図5〜
図8を用いて、本実施形態の対象物検出装置100の動作例を説明する。
図5は、対象物検出装置100の動作例を説明するための概略フロー図である。本フローは、対象物検出装置100の起動によって処理を開始する。
【0057】
撮像部10は、所定の周期で監視領域を順次撮像し、その画像を入力画像として画像処理部30に出力する。画像処理部30は、撮像部10から入力画像を取得する(ST1)。ここで取得した入力画像は、以下に述べる処理に用いられる。
【0058】
判定領域抽出部31は、記憶部20に記憶されている現背景画像および前背景画像、ならびに撮像部10から入力された入力画像を用いて光影判定領域を抽出し、その光影判定領域を記憶部20に記憶する(ST2)。
【0059】
図6は、判定領域抽出部31が光影判定領域を抽出する処理の例を示すフロー図である。まず、判定領域抽出部31は、光影判定領域の作成に必要な現背景画像と前背景画像が記憶部20に記憶されているかどうかを判定する(ST21)。それらの画像が記憶されていない場合は、そのまま入力変化領域抽出処理(
図5のST3)を実行する。一方、それらの画像が記憶されている場合は、判定領域抽出部31は、記憶部20から現背景画像と前背景画像を読み出す(ST22)。
【0060】
次いで、背景変化領域抽出手段311は、現背景画像と前背景画像の差分処理を行い、背景変化領域を抽出する(ST23)。背景変化領域が抽出されない場合(ST24でNo)は、そのまま入力変化領域抽出処理(
図5のST3)を実行する。一方、背景変化領域が抽出された場合(ST24でYes)は、背景保持領域抽出手段312が、同様に前背景画像と入力画像の差分処理を行い、背景保持領域を抽出する(ST25)。そして、判定領域抽出手段313が、背景変化領域と背景保持領域が重複する領域を光影判定領域として抽出する(ST26)。判定領域抽出部31は、抽出された光影判定領域を記憶部20に記憶する(ST27)。以上で、判定領域抽出部31が光影判定領域を抽出する処理は終了し、入力変化領域抽出処理(
図5のST3)を実行する。
【0061】
図5に戻って、入力変化領域抽出部32は、ST1で取得した入力画像と、記憶部20に記憶されている現背景画像との差分を求め、その差分の絶対値が基準値以上の領域を入力変化領域として抽出する(ST3)。入力変化領域が抽出されない場合は、そのままラベリング処理(ST4)を実行する。
【0062】
入力変化領域抽出部32は、抽出した入力変化領域に対してラベル付けを行う(ST4)。例えば、入力変化領域抽出部32は、8連結で隣接する画素をひとまとまりとしてラベル付けする。ラベル付けする入力変化領域がない場合は、そのまま追跡処理(ST5)を実行する。
【0063】
追跡部33は、入力変化領域抽出部32にてラベル付けされた入力変化領域を、前回処理した入力画像中の入力変化領域のうち同一の物体によるものと判断できる入力変化領域と対応付けする追跡処理を行う(ST5)。また、前回処理した入力画像中の入力変化領域と対応付けられない入力変化領域は、監視領域内に新たに出現した物体による入力変化領域として追跡の対象にする。また、前回までに追跡が行われていた入力変化領域について、今回の入力画像中に対応付けられる入力変化領域がない場合、その入力変化領域に対する追跡を終了する。
【0064】
以下のST6からST9の処理は、今回の入力画像中において追跡されている入力変化領域の数だけ繰り返す。すなわち、
図3の例の場合は、入力変化領域161、入力変化領域162および入力変化領域163のそれぞれについて、以下のST6からST9の処理を行う。ST6において追跡されている入力変化領域がない場合は背景画像更新処理(ST11)を実行する。
【0065】
特徴量抽出部34は、ST5で追跡されている入力変化領域ごとに特徴量を抽出し、判定部35は、それらの特徴量を用いて、人らしさの指標となる人属性値、および人以外の変化らしさの指標となる人以外属性値を算出する(ST6)。本実施形態では、光らしさの指標となる光属性値を人以外属性値として算出する。
【0066】
次に、判定部35は、ST3で抽出された入力変化領域(
図3の入力変化領域161,162または163)が、一時的な光の影響を受けた領域であるかどうかを判定する(ST7)。
【0067】
図7は、判定部35が行う光影影響判定処理の例を示すフロー図である。まず、判定部35は、特徴量抽出部34から取得した特徴量を用いて、人以外属性値を算出する(ST41)。記憶部20に光影判定領域が記憶されている場合には(ST42でYes)、判定部35は、ST3で抽出された入力変化領域の面積に占める、入力変化領域と光影判定領域が重複する面積の割合(光影判定領域画素比率)を、特徴量抽出部34から取得する(ST43)。
【0068】
入力変化領域の光影判定領域画素比率が基準値以上であれば(ST44でYes)、判定部35は、上述したように、人以外属性値にボーナス値(e)を加算することにより人以外属性値を高く補正する(ST45)。ここでの基準値は、例えば40%とする。
【0069】
判定部35が人以外属性値を補正すると、光影影響判定処理は終了し、人物判定処理(
図5のST8)を実行する。また、記憶部20に光影判定領域が記憶されていない場合(ST42でNo)と、入力変化領域の光影判定領域画素比率が基準値未満である場合(ST44でNo)は、人以外属性値が補正されずに光影影響判定処理は終了し、人物判定処理(
図5のST8)を実行する。
【0070】
図5に戻って、判定部35は、ST6で算出された入力変化領域の人属性値と、ST7で算出された人以外属性値を比較する。人属性値が十分に高く、かつ、人属性値が人以外属性値より高い場合には、その入力変化領域は侵入者であると判断できる。このため、そのような入力変化領域について、判定部35は、監視領域内に侵入者を検出する(ST8)。判定部35は、検出結果を出力部40に出力する。
【0071】
出力部40は、人物判定処理ST8にて侵入者が検出された場合に、異常検出信号を対象物検出装置100の外部に出力する(ST9)。
【0072】
ここで、今回の入力画像中において追跡されている入力変化領域がまだ他にある場合(ST10でYes)は、ST6に戻る。追跡されている全ての入力変化領域について処理が終了した場合(ST10でNo)は、背景画像更新処理(ST11)を実行する。
【0073】
背景画像更新部36は、判定部35による対象物の判定処理に影響がある変動を変動検出部37が検出したときに、現背景画像を新たな前背景画像として記憶部20に記憶するとともに、入力画像を新たな現背景画像として記憶部20に記憶する(ST11)。背景画像更新部36は、例えば判定部35による判定が妨げられる限度として予め定められた限度以上の大きさを入力変化領域が入力画像中で占めるときに、現背景画像を前背景画像とするとともに、入力画像を現背景画像とする。
【0074】
図8は、背景画像更新部36が行う背景画像更新処理の例を示すフロー図である。まず、現背景画像と前背景画像が記憶部20に記憶されている場合(ST61でYes)、背景画像更新部36は、対象物の判定処理に影響のある変動として照明変動の有無を判断する(ST62)。その際は、例えば、ST3で抽出された入力変化領域の大きさが過大であると判断できる基準値以上であることを変動検出部37が検出したときに、入力画像中に照明変動が有ると判断する。その基準値は、入力画像中に生じた入力変化領域によって対象物の判定が困難となるような大きさを実験的に求め、設定すればよい。
【0075】
照明変動がある場合(ST63でYes)、ST65へ移行する。照明変動がない場合(ST63でNo)でも、入力画像中に入力変化領域が抽出されないか、または抽出された入力変化領域の大きさが基準値以下であれば(ST64でYes)、ST65へ移行する。次に、背景画像更新部36は、記憶部20に前背景画像が記憶されていれば(ST65でYes)、現背景画像を前背景画像として更新し(ST66)、記憶部20に前背景画像が記憶されていなければ(ST65でNo)、現背景画像を前背景画像として記憶する(ST67)。そして、背景画像更新部36は、入力画像を現背景画像として更新し(ST68)、背景画像更新処理を終了する。
【0076】
一方、照明変動がなく(ST63でNo)、かつ入力画像中の入力変化領域の大きさが基準値を超えていれば(ST64でNo)、背景画像更新部36は、現背景画像と前背景画像を更新せずに、背景画像更新処理を終了する。また、対象物検出装置100の初期起動時など、現背景画像と前背景画像が記憶部20に記憶されていない場合(ST61でNo)は、入力画像により、現背景画像および前背景画像を置き換え、記憶部20に記憶する(ST69)。これで、背景画像更新処理は終了する。
【0077】
図5のフローでは、ST11の後、ST1に戻り、画像処理部30は、新たな入力画像123を取得する。以上で、
図5のフローの説明を終了する。
【0078】
このように、本実施形態の対象物検出装置100では、監視領域内を移動する光が背景画像に取り込まれた場合に生じる入力変化領域については、ST7の光影影響判定処理により人以外属性値が高く設定される。これにより、背景画像の更新によって一時的な変化が背景画像に取り込まれ、入力画像と背景画像に差分が生じることで入力変化領域が抽出された場合であっても、そのような入力変化領域は光影判定領域と重なるため対象物と判定され難くなる。このため、対象物検出装置100では、背景画像の更新の際に監視領域内を移動する光が背景画像に取り込まれた場合でも、そのような入力変化領域が人と誤検出されることを防止できる可能性が高まる。また、人以外属性値を高い値に補正する領域は光影判定領域に限られており、そうした補正を行う領域の大きさを必要最小限にすることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。判定領域抽出部31の背景変化領域抽出手段311は、現背景画像と前背景画像の差分処理による現背景画像の変化が照明変動によって変化したと判断できる基準を満たすときに、背景変化領域を抽出してもよい。例えば、変化した領域の大きさが基準値以上であることや、輝度が明るくなった度合い、強い光の条件といった、ヘッドライトや懐中電灯などの照明変動らしい特徴を差分処理により得られる領域が満たす場合に、背景変化領域抽出手段311はその領域を背景変化領域として抽出してもよい。
【0080】
また、背景画像更新部36は、照明変動以外にも、対象物の判定処理に影響がある変動として入力画像中に巨大な入力変化領域の抽出があった場合にも背景更新を行うようにしてもよい。例えば、車がカメラの近くで一時停止したことを検出するものでもよい。この場合、入力変化領域の大きさが基準値以上の場合に背景更新を行うようにすればよい。
【0081】
本実施形態では、光影判定領域を用いて、背景画像に取り込まれた光によって生じた入力変化領域による誤検出を防止する目的として説明したが、同様の処理によって入力画像中の影によって生じた入力変化領域による誤検出を防止する目的としても利用できる。
【0082】
また、人以外属性値について、上記の実施形態では、光らしさを表すものとして説明した。しかし、これに限らず、影らしさを表す影属性値、小動物らしさを表す小動物属性値、雨らしさを表す雨属性値など、植栽揺れらしさを表す植栽ゆれ属性値、虫らしさを表す虫属性値など、複数の事象に個別に対応した属性値を統合して求めるようにしてもよい。人の侵入かどうかの判定精度を向上させることのできる他の種類の人以外らしさを表す属性値を用いることも可能である。人属性値や人以外属性値の算出については、特開2006−277639や特開2001−243475に開示されている。
【0083】
ST7の光影影響判定処理において、判定部35は、人以外属性値を高めるのではなく、人属性値を低くするようにしてもよい。また、対象物検出装置100における侵入者の判定は、人以外属性値を用いずに人属性値を用いるものでもよい。この場合は、光影判定領域を用いた処理によってST7で人属性値を下げればよい。また、対象物として判定しにくくする処理として、各属性値を補正するのではなく、属性値から対象物か否かを判定する際に用いる閾値を補正するようにしてもよい。
【0084】
また、対象物検出装置100は、判定部35として、検出の対象物について光影判定領域画素比率が大きいほど入力変化領域が対象物であると判定し難くなるように事前学習されたパーセプトロンタイプのニューラルネットワークまたはサポートベクトルマシンのような識別器を含んでもよい。かかる場合、特徴量抽出部34は、例えば入力変化領域の大きさや縦横比、移動量、平均輝度値、背景より明るい面積の割合、背景との相関および光影判定領域画素比率などの複数の特徴量を抽出する。そして特徴量抽出部34からそれらの特徴量をその識別器に入力して、監視領域に対象物が存在するか否かを識別器が判定する。
【0085】
なお、かかる識別器は、撮像部10が監視領域を撮影できるように設置された状態にて、光、影および対象物などの撮影条件を変えつつ撮影した多数の学習用画像を用いて、対象物の存否の判定について事前学習されている。なお、各学習用画像には、少なくとも対象物が存在しているか否かの判定結果が事前に設定されている。
【0086】
学習方法は、先ず前述の実施形態にて説明した
図5におけるST1〜ST6の処理を実行する。ST6にて特徴量抽出部34が抽出した入力変化領域の大きさや縦横比、移動量、平均輝度値、背景より明るい面積の割合、背景との相関、光影判定領域画素比率などの複数の特徴量を識別器に入力する。そして、学習用画像に設定されている対象物の存否を識別器の学習結果とする。これを全ての学習用画像に対し行うことにより、光影判定領域画素比率が大きいほど入力変化領域が対象物と判定され難くなるように学習された識別器を得ることができる。なお、識別器は、例えばバックプロパゲーション(逆誤差伝搬法)などの公知の手法を用いて学習させることができる。