特許第5930948号(P5930948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930948
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】潜り込み防止装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/56 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   B60R19/56
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-260986(P2012-260986)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104925(P2014-104925A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】田坂 直樹
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−54106(JP,U)
【文献】 実開昭57−41553(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00 − 19/56
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向に沿って配置される中空形状のフレーム部材と、前記フレーム部材を車両側のステーに固定するために該フレーム部材の内部に取り付けられるナットプレートとを有する潜り込み防止装置であって、前記ナットプレートは、前記ステーとの間に前記フレーム部材の後壁を挟んで固定するベース板部と、該ベース板部に固定されたナット部とを有し、前記ベース板部には、その長さ方向の中央部を前記車両の幅方向と直交する方向に拡幅する突出部が設けられており、前記フレーム部材は、前記ベース板部の突出部を前記フレーム部材の長さ方向に沿って移動自在に係合する凹部を有するガイドレールを備え、前記凹部の幅寸法は、前記突出部の両側に配置される前記ベース板部の両端部の幅寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする潜り込み防止装置。
【請求項2】
前記突出部の先端面が、前記凹部の側面と平行に形成されていることを特徴とする請求項1記載の潜り込み防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両同士が衝突した際の潜り込みを防止するために車両に配置される潜り込み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なトラック等の車高の高い車両には、車高の低い乗用車等が衝突した際の潜り込みを防止するために、車両前後の下方位置に車両用バンパーが設けられている。そして、車両用バンパーは、軽量化のために角筒状に形成されたフレーム部材の内部に、ナットを有するナットプレートを取り付け、このナットプレートと車両側のステーとの間にフレーム部材の側部を挟んだ状態で取付ボルトを締結することにより、ステーに固定されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている潜り込み防止装置(トラック用バンパー)では、フレーム部材(バンパー)のステーへの取付部内壁にナットプレートの案内突条を設けており、ナットプレートを案内突条内で摺動自在に配設させることができることから、ナットプレートの取り付けを容易に行えるようになっている。そして、フレーム部材とナットプレートとの位置決め後にステー側から取付ボルトを挿入し、ナットプレートのナットに締結することにより、フレーム部材をステーに堅固に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5‐54106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に提案されているようなナットプレート等では、両端が曲げられた形状のフレーム部材に装着しようとしても、ストレート部には装着できても曲げ部を通過させることができない。曲げ部を通過させるために、フレーム部材内部に対して補強用部材を小型化した場合では、フレーム部材の内壁との隙間が大きくなり過ぎて補強作用が有効に働かず、潜り込み防止機能を十分に発揮できない。そのため、ステーとフレーム部材との取付位置は、限られたものとなっていた。
また、ストレート形状のフレーム部材にナットプレートを組み込んだ後で、その外側に曲げ部の加工を行うことも考えられるが、この場合には、フレーム部材の加工工程と組み付け工程とを交互に行う必要があり、作業が煩雑になるという問題があった。さらに、前加工に曲げ部近傍で発生するしわを抑制するための中子を挿入する場合等では、フレーム部材内部に組み込まれたナットプレートが中子と干渉してしまう問題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車両とフレーム部材との取付位置の自由度を高く設定することができる潜り込み防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の幅方向に沿って配置される中空形状のフレーム部材と、前記フレーム部材を車両側のステーに固定するために該フレーム部材の内部に取り付けられるナットプレートとを有する潜り込み防止装置であって、前記ナットプレートは、前記ステーとの間に前記フレーム部材の後壁を挟んで固定するベース板部と、該ベース板部に固定されたナット部とを有し、前記ベース板部には、その長さ方向の中央部を前記車両の幅方向と直交する方向に拡幅する突出部が設けられており、前記フレーム部材は、前記ベース板部の突出部を前記フレーム部材の長さ方向に沿って移動自在に係合する凹部を有するガイドレールを備え、前記凹部の幅寸法は、前記突出部の両側に配置される前記ベース板部の両端部の幅寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0008】
ナットプレートの突出部をガイドレールの凹部に係合させて、ナットプレートのほぼ中央部の一部分のみでガイドレールにより支持されるようになっており、ガイドレールに沿ってナットプレートを移動できるようになっている。そして、両端が曲げられた形状のフレーム部材にナットプレートを装着する場合にも、フレーム部材の曲げ部において、ガイドレールの凹部とナットプレートの突起部との間にナットプレートが移動可能な隙間が確保されるので、フレーム部材の曲げ部においてもナットプレートを円滑に通過させることができる。
したがって、ステーとフレーム部材との取付位置が曲げ部の前後で制限されることがなく、その取付位置の自由度を高く設定することが可能となっている。また、本発明のナットプレートは、曲げ部が形成されたフレーム部材に装着できるので、フレーム部材の曲げ加工時においては、しわ抑制のための中子を容易に挿入できる等、曲げ加工の作業を容易に行うことができる。
【0009】
本発明の潜り込み防止装置において、前記突出部の先端面が、前記凹部の側面と平行に形成されているとよい。
凹部の側面に最も近接して配置される突出部の先端面が、凹部の側面と平行に形成されているので、ナットプレートの中央部回りの動きが制限され、ガイドプレートをガイドレールに沿って安定した状態で円滑に移動させることができる。また、フレーム部材の曲げ部にナットプレートを通過させる際には、ベース板部の両端部が凹部から外れた位置に配置され、突出部のみが凹部に係合した状態となるが、突出部の先端面が回り止めとして機能するので、ナットプレートを安定した状態で移動させ易くなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ステーとフレーム部材との取付位置が、フレーム部材の曲げ部の前後で制限されることがないので、車両側のステーとフレーム部材との取付位置の自由度を高く設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の潜り込み防止装置を示す斜視図である。
図2図1に示す潜り込み防止装置のフレーム部材の断面図であり、ナットプレートの取り付け状態を示す。
図3図2に示すナットプレートの(a)が正面図、(b)が側面図である。
図4】ガイドレールの間にナットプレートを挿入した状態を説明する図であり、(a)が平面図、(b)がA‐A線に沿う断面図である。
図5図2のナットプレート取り付け部分の要部拡大図である。
図6】フレーム部材へのナットプレートの組込みを説明する図である。
図7】本発明の第2実施形態の潜り込み防止装置のナットプレートの平面図である。
図8】本発明の第3実施形態の潜り込み防止装置のナットプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の潜り込み防止装置の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、第1実施形態の潜り込み防止装置100を示している。この潜り込み防止装置100は、図1に示すように、車両(図示略)の前方部又は後方部の下方位置において車両の幅方向に延びる角筒状のフレーム部材10を、ステー21に固定することにより構成され、図1に荷重Fで示すように、車両がフレーム部材10の前壁(正面)12に衝突して負荷が加えられた際に、車両の潜り込みを防止するものである。
この潜り込み防止装置100には、図2に示すように、フレーム部材10を車両側のステー21に固定するために用いるナットプレート30が、フレーム部材10の内部に取り付けられている。そして、ステー21の取付部22を貫通した取付ボルト40をナットプレート30のナット部32に締付けることにより、フレーム部材10を、車両に固定できるようになっている。
【0013】
フレーム部材10は、アルミニウム合金の押出成形等によって角筒状(中空状)に形成されており、取り付けられる車両の幅寸法と同程度の長さに形成されている。また、フレーム部材10は、両端部が車両側に向いて曲がった状態になるように、長さ方向の途中に曲げ部15が設けられている。この曲げ部15は、曲げ加工などによって成形することができる。
なお、フレーム部材10の材料には、例えば6000系合金又は7000系合金のアルミニウムを使用することができる。
【0014】
ナットプレート30は、例えばスチール等の金属材料で形成され、図2から図5に示すように、ステー21との間にフレーム部材10の後壁11を挟んで固定するベース板部31と、そのベース板部31の表面に立設されるナット部32を溶着して構成されている。
ベース板部31は、その長さ方向のほぼ中央部に、車両の幅方向と直交する方向に拡幅する突出部33が設けられている。なお、突出部33は、ベース板部31の側部を底辺とする台形状に形成されている。
また、ベース板部31には、ベース板部31及びナット部32を貫通する貫通孔が形成され、その貫通孔のナット部32側に雌ねじ部32aが設けられている。そして、ベース板部31の中央部には、ベース板部31を貫通させて、ガイドピンを挿入するためのガイド孔34が設けられている。
【0015】
なお、ナットプレート30の表面には、絶縁のための塗装が施され、アルミニウム合金製のフレーム部材10に直接接触しないようになっている。これは、アルミニウム合金製のフレーム部材10と、電位差の異なる他の金属とを接触させた場合、電離作用を起こしてフレーム部材10に腐食が発生するおそれがあり、これを回避するためである。
【0016】
一方、前述したフレーム部材10の曲げ部15の内周側に配置される後壁11の内面(フレーム部材10の内面であるが、曲げ部15の半径方向で見れば外周面となる。)には、図4及び図5に示すように、ナットプレート30の突出部33を、フレーム部材10の長さ方向に沿って移動自在に係合する凹部16aを有するガイドレール16が形成されている。
このガイドレール16の凹部16aは、内部よりも開口部の幅w3(開口幅という。)が小さいアリ溝状に形成されており、開口幅w3は、突出部33の両側に配置されるベース板部31の両端部の幅寸法w2よりも大きく設定されている。そして、ガイドレール16の凹部16aは、ナットプレート30の幅寸法の最大値、すなわち突出部33の先端面33aどうしの間隔w1よりも僅かに大きい幅で対向して設けられるとともに、先端面33aと凹部16aの側面とが平行に形成されている。
【0017】
そして、ナットプレート30の突出部33とガイドレール16の凹部16aとが係合するフレーム部材10の長さ方向の係合幅sは、図4に示すように、フレーム部材10の曲げ部15にナットプレート30を通過させるために、僅かな隙間が確保されるように設定されている。すなわち、図4(b)に示すように、後壁11上に配置されたナットプレート30のベース板部31及び突出部の上面を延長する面と、ガイドレール16の内面(凹部16a)とが接触するまでの距離Lよりも、係合幅sが小さく設定されており、突出部33とガイドレール16との間に隙間が設定されている。したがって、フレーム部材20の曲げ部15においても、ナットプレート30の突出部33とガイドレール16との間に、常に隙間が設定された状態となる。
なお、曲げ部15の曲率(半径R)が大きくなれば距離Lが大きくなるので、その分だけ係合幅sを大きく設定しても隙間を確保することができるし、曲率が小さくなれば距離Lが小さくなるので、係合幅sを小さくする必要がある。
【0018】
また、ガイドレール16の間に配置される後壁11には、図5に示すように、後壁11を貫通するボルト挿入孔17と、そのボルト挿入孔17とナットプレート30の貫通孔を連通させた位置で、ベース板部31のガイド孔34と連通する位置決め孔(図示略)とが設けられている。
【0019】
そして、このように構成されたナットプレート30のフレーム部材10への取り付けは、次のように行うことができる。
まず、ナットプレート30の突出部33を、ガイドレール16の凹部16aに係合させた状態で、フレーム部材10の内部に押し込む。この際、ナットプレート30と凹部16aとの間には僅かに隙間が形成されているので、ナットプレート30をフレーム部材10の内部でガイドレール16に沿って円滑に移動させることができる。また、凹部16aの側面と平行に形成された突出部33の先端面33aが、ナットプレート30の中央部回りの動きを制限する回り止めとして作用するので、ガイドプレート30をガイドレール16に沿って安定した状態で移動させることができる。
【0020】
そして、図6に示すように、ナットプレート30が、フレーム部材10の曲げ部15を通過する際には、ベース板部31の両端部は凹部16aから外れた位置に配置され、突出部33のみが凹部16aに係合した状態となる。このように、ナットプレート30は、突出部33によって中央部の一部分のみでガイドレール16に支持されるようになっていることから、突出部33と凹部16aとの間に、その突出部33が移動可能な隙間が常に確保され、ナットプレート30を円滑に移動させることができる。
そして、ナットプレート30は、フレーム部材10のボルト挿入孔とナットプレート30の貫通孔とを連通させる位置で、取付ボルト40によりフレーム部材10をステー21に固定すると同時に固定される。
【0021】
このように、ナットプレート30の長さ方向のほぼ中央部を、車両の幅方向と直交する方向に拡幅する突出部33を設け、ナットプレート30の中央部の一部分のみでガイドレール16により支持する構成としたので、両端が曲げられた形状のフレーム部材10にナットプレート20を装着する場合にも、フレーム部材10の曲げ部15において、ガイドレール16の凹部16aとナットプレート30の突起部33との間に突出部33が移動可能な隙間が確保される。これにより、フレーム部材10の曲げ部15においてもナットプレート30を円滑に通過させることができる。
したがって、ステー21とフレーム部材10との取付位置が曲げ部15の前後で制限されることがなく、その取付位置の自由度を高く設定することが可能となる。また、ナットプレート30は、曲げ部15が形成されたフレーム部材10に装着できることから、フレーム部材の曲げ加工時においては、しわ抑制のための中子を容易に挿入できる等、曲げ加工の作業を容易に行うことができる。
【0022】
ところで、ナットプレートの突出部は、上記のナットプレート30のような台形状の突出部33の他にも、図7に示すナットプレート51のような円弧状の突出部35を採用することができる。また、図8に示すナットプレート52のように、ベース板部36を円板状に設けて、その表面に立設されるナット部32の周囲の側縁部をガイドレール16の凹部16aと係合させる構成とすることもできる。この場合、ベース板部36に凹部16aの開口幅w3より小さい幅寸法部分があれば、その部分が曲げ部15を通過する際にガイドレール16から外れてナットプレート52をガイドレール16に沿って容易に移動させることができる。なお、ナットプレート52のように、円形でナット部32が中心に配置される場合には、曲げ部15の通過時等にナットプレート52が回転しても、ナット部32とフレーム部材のボルト挿入孔との高さ位置がずれることがないため、第1実施形態のナットプレート30のような回り止め形状を形成する必要はない。
また、図7及び図8に示すナットプレート51,52の主要な構成は第1実施形態のものと同様であり、第1実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、フレーム部材は、アルミニウム合金だけでなく、スチール等の他の材料を使用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 フレーム部材
11 後壁
12 前壁
12a 内面
13 上壁
14 下壁
15 曲げ部
16 ガイドレール
16a 凹部
21 ステー
22 取付部
30,51,52 ナットプレート
31,36 ベース板部
32 ナット部
33,35 突出部
33a 先端面
34 ガイド孔
40 取付ボルト
100 潜り込み防止装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8