(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような分析装置では、容器内に収容された試料(検体)を廃棄又は減菌処理するために、前記容器を筐体の外部へ取り出す必要がある。このような要求に対し、筐体内の容器を所定の取り出し位置まで引き出す機構が考えられる。
【0005】
しかしながら、筐体内における容器の位置(検体を収容する位置)と取り出し位置との距離が長くなると、筐体に対する引き出し機構の引き出し量(操作量)が多くなる可能性がある。そのため、ユーザの手間や労力が増加し、分析装置のユーザビリティが低下する可能性がある。
【0006】
一方、筐体内における容器の位置を取り出し位置の近傍に定めることにより、引き出し機構の引き出し量を少なく抑える方法も考えられる。しかしながら、筐体内に収容される機器(たとえば、分析装置を構成する機器)のレイアウトを決定する際に容器の位置を考慮しなければならず、機器を好適な位置に配置することができない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記したような種々の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分析装置の筐体内に容器が配置されるものにおいて、分析装置のユーザビリティを高めるとともに、筐体内におけるレイアウトの自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するために、分析装置を収容する筐体と、前記筐体内の所定位置に配置される容器と、を備えた分析装置において、筐体に設けられた操作部の動作に連動して前記容器を所定位置から容器取り出し位置まで搬送する搬送機構と、前記操作部の動作量(操作量)を増速して前記搬送機構を伝達する機構と、を備えるようにした。
【0009】
詳細には、本発明に係わる分析装置は、分析装置を収容する筐体と、前記筐体内の所定位置に配置される容器と、前記筐体に設けられ前記容器を前記筐体の内外に出し入れするための開口部と、前記開口部を介して前記容器の出し入れを行うために操作される操作部と、前記操作部の動作に連動して前記容器を前記所定位置から容器取出し位置まで搬送する搬送機構と、前記容器が前記所定位置から前記容器取出し位置まで移動する量に比べ、前記操作部の動作量を少なくする変速機構と、を備えるようにした。
【0010】
ここでいう「所定位置」とは、分析装置を収容する筐体内における容器の配置される位置を意味する。このような所定位置は、分析装置の種類などによって様々であり、筐体内の中央部に位置する場合もあれば、筐体内の壁面寄りに位置する場合もあり、筐体内である限り特に限定されるものではない。
【0011】
このように構成された分析装置によると、容器が所定位置から容器取り出し位置まで移動する量に比して、操作部の動作量(操作量)が少なくなる。そのため、所定位置が容器取り出し位置から離間した位置に設定された場合であっても、操作部の動作量(操作量)を少なく抑えつつ、所定位置から容器取出し位置まで容器を搬送することができる。
【0012】
操作部の動作量(操作量)が少なく抑えられると、容器を出し入れする際のユーザの労力や手間が軽減されるため、分析装置のユーザビリティを高めることができる。また、容器取出し位置から離間した場所に所定位置を設定することが可能になると、所定位置を設定可能な場所の選択肢が増えるため、筐体内におけるレイアウトの自由度が高められる。たとえば、試料に対して光学的測定を行うとともに測定済みの試料を容器に収容させる分析装置では、筐体内において外光の及ばない場所(たとえば、開口部から離れた場所)に測定機器及び所定位置を配置することにより、測定精度の低下を抑制することができる。
【0013】
したがって、本発明に係わる分析装置によれば、分析装置のユーザビリティを高めつつ、筐体内に収容される機器のレイアウトの自由度を高めることができる。なお、搬送機構は、容器を所定位置から容器取り出し位置へ搬送する場合に加え、容器を容器取り出し位置から所定位置へ搬送する場合も、前記操作部の動作に連動して容器を搬送することができる機構であってもよい。
【0014】
本発明に係わる操作部としては、開口部又はその近傍に設けられ、筐体の外部へ突出しながら動作する操作部を用いることができる。その場合、搬送機構は、操作部の突出動作に連動して容器を所定位置から取り出し位置まで搬送する機構としてもよい。
【0015】
このように操作部及び搬送機構が構成された場合においては、容器が所定位置から容器取り出し位置まで移動する量に比して、操作部の突出動作量が少なくなる。そのため、所定位置が容器取り出し位置から離間した位置に設定された場合であっても、操作部の突出量(筐体の外部へ突出する量)を少なく抑えることができる。
【0016】
操作部の突出量が少なく抑えられると、分析装置を設置可能な場所の選択肢が増加する。よって、分析装置のユーザビリティ及び筐体内におけるレイアウトの自由度を高めつつ、分析装置を設置可能な場所の選択肢の増加を図ることが可能となる。
【0017】
本発明に係わる変速機構としては、操作部が動作するときに該操作部の動力を増速して容器に伝達する機構を用いることができる。このような変速機構によれば、操作部が操作されるときに、該操作部の動作量(操作量)に対して容器の移動量が多くなる。その結果、操作部の操作量を少なく抑えつつ、容器を長距離搬送することが可能になる。
【0018】
操作部の動力を増速して容器に伝達する機構としては、たとえば、一対の第1プーリ間に掛け渡され前記操作部の動作に連動して巡回する第1ベルトと、一対の第2プーリ間に掛け渡され前記容器の移動動作に連動して巡回する第2ベルトと、第1プーリの回転力を等速で第2プーリへ伝達する伝達部材と、を備えた機構であって、第1プーリの径が第2プーリの径より小さく形成された機構を用いることができる。
【0019】
このような機構によると、操作部が動作したときに、該操作部の動力が第1ベルトを介して第1プーリに伝達される。第1プーリの回転力は、等速で第2プーリに伝達される。第2プーリの回転力は、第2ベルトを介して容器へ伝達される。その際、第1プーリの径が第2プーリの径より小さく形成されているため、第1ベルトの巡回量に対して第2ベルトの巡回量が多くなる。その結果、操作部の動力は、変速機構によって増速された後に容器へ伝達されることになる。
【0020】
なお、前記した第1プーリ及び第2プーリの代わりにチェーンスプロケットを用い、前記したベルトの代わりにチェーンを用いることも可能である。
【0021】
操作部の動力を増速して容器に伝達する機構の他の構成としては、たとえば、操作部の動作に連動して回転する第1ギアと、第1ギアと歯合するとともに容器の移動動作に連動して回転する第2ギアと、を備えた機構であって、第1ギアの径が第2ギアの径より大きく形成された機構を用いることができる。
【0022】
このような機構によると、操作部が動作したときに、該操作部の動力により第1ギアが回転される。第1ギアの回転力は、第2ギアへ伝達される。その際、第1ギアの径が第2ギアの径より大きく形成されているため、第1ギアの回転量に対して第2ギアの回転量が多くなる。その結果、操作部の動力は、変速機構によって増速された後に容器へ伝達されることになる。
【0023】
なお、操作部の動力が増速されて容器に伝達されると、操作部の動作速度が高くなった場合に、容器の姿勢が不安定になる可能性がある。特に、操作部が手動により操作される構成においては、操作部が勢いよく操作された場合に、容器の搬送速度が急速になるため、容器の姿勢が不安定になる可能性が高い。
【0024】
これに対し、操作部のフリクションを増大させる機構、或いは搬送機構のフリクションを増大させる機構を付加し、操作部及び搬送機構の急速な動作を抑制するようにしてもよい。なお、フリクションを増大させる機構としては、プーリやギアの回転軸に当接するように配置されたブッシュ、操作部又は搬送機構と筐体との間に架設された油圧ダンパなどを用いることができる。
【0025】
本発明に係わる操作部としては、前記した開口部を開閉する機構であって、筐体の外部方向へ突出しながら開く開閉扉を利用することができる。その場合、開閉扉の開閉動作に連動させて容器を移動させることができる。たとえば、開閉扉が手動により開閉される場合は、ユーザはワンモーションで開閉扉の開閉と容器の移動を行うことができるため、ユーザビリティが一層向上する。
【0026】
上記したような開閉扉としては、筐体に対してスライド自在に取り付けられた引出型の開閉扉、又は筐体に対して回動自在に取り付けられた回動型の開閉扉を用いることができる。
【0027】
また、本発明は、1つの筐体内に複数の分析装置が収容された分析システムにも好適である。その場合、本発明は、複数の分析装置と、それら複数の分析装置を収容する筐体と、を備えた分析システムであって、前記筐体内に配置される容器と、前記筐体の壁面に設けられ前記容器を前記筐体の内外に出し入れするための開口部と、前記開口部を介して前記容器を出し入れするために操作される操作部と、前記操作部の動作に連動して前記容器を前記所定位置から容器取出し位置まで搬送する搬送機構と、前記容器が前記所定位置から前記容器取出し位置まで移動する量に比べ、前記操作部の動作量を少なくする変速機構と、備えるようにしてもよい。
【0028】
このように構成された分析システムによれば、容器を取り出す際に操作部の操作量を少なく抑えることができる。そのため、分析システムのユーザビリティが高くなる。また、所定位置が容器取り出し位置の近傍に設定される必要がないため、所定位置を設定し得る場所の選択肢も増える。所定位置を設定し得る場所の選択肢が増えると、それに応じて複数の分析装置が採り得るレイアウトの選択肢、並びに各分析装置を構成する機器が採り得るレイアウトの選択肢も増えることになる。その結果、ユーザビリティの高いレイアウトを採用することが可能となる。
【0029】
なお、本発明に係わる変速機構は、筐体内に配置される容器を筐体の内外へ出し入れする必要がある装置又はシステムであれば適用可能である。その場合、筐体を設置可能な場所の選択肢が増えるとともに、筐体内に収容される機器等のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0030】
本発明は、筐体内に配置された容器の出し入れ方法として捉えることもできる。たとえば、本発明は、分析装置を収容する筐体に対し、前記筐体内の所定位置に配置される容器を前記筐体に設けられた開口部から前記筐体の内外に出し入れする容器の出し入れ方法であって、前記開口部を介して前記容器を出し入れするために操作される操作部の動作に連動させて前記容器を前記所定位置から容器取出し位置まで搬送させるステップを含み、当該ステップにおいて前記容器が前記所定位置から前記容器取出し位置まで移動する量に比べ前記操作部の動作量が少なくされる方法としてもよい。すなわち、本発明は、操作部の動作を増速させて伝達する容器の出し入れ方法としてもよい。
【0031】
このような方法によれば、筐体から容器を取り出す際に、操作部の操作量を少なく抑えることができるため、ユーザの労力を低減することができる。さらに、所定位置を容器取り出し位置の近傍に配置する必要がないため、所定位置を設定し得る場所の選択肢が増える。それにより、筐体内に収容される機器等のレイアウトの自由度を高めることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、分析装置の筐体内に容器が配置されるものにおいて、分析装置のユーザビリティを高めることができるとともに、筐体内におけるレイアウトの自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0035】
ここでは、本発明に係わる分析装置の一実施態様として、尿(試料)に含まれる化学成分を分析して尿定性試験を行う装置について説明する。尿定性試験は、たとえば、試験片の化学反応による色調変化、すなわち呈色反応を光学的測定機器で測定することにより、尿中に含まれる糖やタンパクの量あるいは潜血の有無などを検査するための試験である。
【0036】
なお、以下の各実施例で述べる説明は、本発明に係わる分析装置を尿定性試験用の分析装置に限定するものではなく、血液やその他の生化学的試料の分析を行う装置であってもよい。
【0037】
<実施例1>
先ず、本発明の第1の実施例について
図1乃至
図8に基づいて説明する。
図1は、分析装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、分析装置1の概略構成を示す断面図である。分析装置1は、筐体(ハウジング)11に収容されている。筐体11には、ラック設置部13、表示パネル111、操作スイッチ群112、プリンタ113などが設けられている。筐体11の内部には、試験片供給ユニット12、試験片搬送装置14、試料点着装置15、測光装置16、廃棄ボックス17、廃棄ボックス搬送機構19などが収容されている。
【0038】
操作スイッチ群112は、ユーザー(使用者)が分析装置1を操作するための各種スイッチであり、例えば分析装置1の主電源のオン、オフを切り替える電源スイッチ、試料の分析処理(測定処理)を開始するための測定開始スイッチ、分析装置1による試料の分析結果をプリンタ113に印字させるための印字スイッチ、などである。
【0039】
表示パネル111は、例えばLCD(liquid crystal display)や発光ダイオードなどを備えており、操作スイッチ群112の操作に応じた各種情報(たとえば、測定結果)が表示されるようになっている。
【0040】
ラック設置部13は、試料としての尿を収容した複数の試料容器を起立保持するための試料ラックが設置されるユニットである。ラック設置部13は、該ラック設置部13に設置された試料ラックを該ラック設置部13内の水平面内で移動可能に構成されている。
【0041】
試験片供給ユニット12は、使用前の試験片2を収容しておき、収容された試験片2を1つずつ試験片搬送装置14へ供給するユニットである。詳細には、試験片供給ユニット12は、短冊状の基材上に一つ又は複数の試薬パッドが設けられた試験片2を収容するホッパ121と、このホッパ121から試験片2を1つずつ取り出すための回転ドラム122と、回転ドラム122により取り出された試験片2を1つずつ試験片搬送装置14へ移動させるための一対のガイド123と、を備えている。
【0042】
ホッパ121の上部開口には開閉蓋1211が設けられ、この開閉蓋1211によりホッパ121の内部と外部とが区画されている。回転ドラム122は、その外周面に試験片2を1枚のみ嵌入可能とする凹部1221を有している。回転ドラム122が回転することによって凹部1221に嵌入した試験片2はホッパ121の外部に移送された後、一対のガイド123内に投入される。一対のガイド123内に投入された試験片2は、試験片搬送装置14へ移送される。
【0043】
試験片搬送装置14は、試験片供給ユニット12から供給された試験片2を試料点着装置15が試料を点着可能な位置(以下、「点着位置」と称する)へ搬送する。さらに、試験片搬送装置14は、試料点着後の試験片2を測光装置16が測光可能な位置(以下、「測光位置」と称する)へ移動させるとともに、測光終了後の試験片2(分析済みの試験片2)を廃棄ボックス17へ投下する。試験片供給ユニット12は、たとえば、試験片2を一枚のみ嵌入可能とする凹部141を複数備え、その凹部141へ供給された試験片2を隣接された凹部141へ順次ピッチ送りする機構である。
【0044】
試料点着装置15は、試験片2の試薬パッドに対して尿を点着させる装置である。試料点着装置15は、ノズル151と、ノズル151を移送させるためのノズル駆動部152と、を備える。ノズル151は、ノズル駆動部152のアームに支持されており、筐体11内における上下方向及び水平方向に移動可能となっている。ノズル駆動部152は、往復シリンダなどのアクチュエータ、あるいは循環駆動ベルトなどの適当な駆動手段を用いて構成することができる。ノズル151は、試料ラック131に保持された試料容器から尿を吸引し、試験片搬送装置14によって点着位置へ移送された試験片2の各試薬パッドに尿を滴下、すなわち点着する。
【0045】
測光装置16は、試料点着装置15によって試料が点着された試験片2の各試薬パッドに対して光を照射したときの反射光を受光して、各試薬パッドの発色の程度(呈色反応)に応じた情報を得るための装置である。この測光装置16は、発光部161、及び受光部162を有している。測光装置16は、たとえば、測光位置において試験片2の長手方向に沿って往復移動可能に設けられている。発光部161は、例えば特定のピーク波長を有する光を出射可能なものであり、発光ダイオード(Light-emitting Diode、LED)により構成や、半導体レーザなどを使用することができる。一方、受光部162は、試料が点着された各試薬パッドから反射してきた光を受光するためのものであり、例えばフォトダイオードにより構成することができる。
【0046】
廃棄ボックス17は、測光装置16による測光終了後の試験片2(すなわち、分析済みの試験片2)を収容するボックスであり、本発明に係る容器に相当する。廃棄ボックス17は、廃棄ボックス搬送機構19に設置されたホルダ18により支持されている。ホルダ18は、廃棄ボックス17を起立保持するための支持部材である。
【0047】
廃棄ボックス搬送機構19は、ホルダ18を所定位置P1から取り出し位置P2へ移送する機構である。前記した所定位置P1は、試験片搬送装置14により分析済みの試験片2が投下される位置である。前記した取り出し位置P2は、筐体11の外部へ廃棄ボックス17を取り出すことが可能な位置であり、筐体11の側面に設けられた開口部200の近傍に定められている。なお、この図では、取り出し位置P2は筐体11の外側に位置しているが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、取り出し位置P2は、廃棄ボックス17を筐体11の外部に取り出せる位置であればよく、筐体11の内側に位置していてもよい。
【0048】
なお、筐体11には、前記した開口部200を開閉するための扉114が設けられている。本実施例の扉114は、筐体11の側面から水平方向へ突出しながら開く引き出し型の開閉扉(以下、「引き出し扉」と称する)である。廃棄ボックス搬送機構19は、引き出し扉114の開閉に連動して前記ホルダ18を移送する。言い換えれば、廃棄ボックス搬送機構19は、引き出し扉114を開閉する動力を利用して前記ホルダ18を移送する。
【0049】
前記した引き出し扉114には、該引き出し扉114を引き出す(開く)ための把手115が取り付けられており、ユーザが把手115を利用して引き出し扉114を引き出す(開く)ことができるようになっている。なお、引き出し扉114は、電力や油圧などを利用して開閉されても構わない。
【0050】
ところで、廃棄ボックス搬送機構19が引き出し扉114の開閉動作に連動してホルダ18を移送させる構成において、ホルダ18と引き出し扉114とが直に連結されると、引き出し扉114の引き出し量は、所定位置P1と取り出し位置P2との距離と同等になる。そのため、
図2に示したように所定位置P1と取り出し位置P2との距離が長くなる場合は、引き出し扉114の引き出し量(筐体11の側面から突出する量)が過多となり、分析装置1の設置場所が限られるという問題がある。
【0051】
このような問題に対し、所定位置P1を取り出し位置P2の近傍に設定する方法が考えられる。しかしながら、所定位置P1が取り出し位置P2の近傍に設定されると、筐体11の内部に収容される機器のレイアウトの自由度が低くなる可能性もある。たとえば、測光装置16の配置が所定位置P1と同様に取り出し位置P2の近傍に制限される可能性がある。その場合、開口部200から外光が漏洩する可能性があり、それにより測光装置16の測定精度が低下する可能性がある。なお、測光装置16の位置と所定位置P1とを離間させる方法も考えられるが、測光装置16による測光終了後の試験片2を測光装置16の近傍から所定位置P1まで搬送する経路が長くなってしまい、試験片搬送装置14が大型化する可能性がある。
【0052】
そこで、本実施例では、引き出し扉114を開閉させるための動力が増速されてホルダ18へ伝達されるように、廃棄ボックス搬送機構19を構成した。以下、廃棄ボックス搬送機構19の具体的な構成について、
図3乃至
図6に基づいて説明する。
【0053】
図3及び
図4は、廃棄ボックス搬送機構19の側面図である。なお、
図3は引き出し扉114が閉じた状態を示し、
図4は引き出し扉114が開いた状態を示している。廃棄ボックス搬送機構19は、ホルダ18を所定位置P1と取り出し位置P2との間で摺動自在に支持するガイドレール190と、一対の第1プーリ193の間に掛け渡された第1ベルト194と、一対の第2プーリ195の間に掛け渡された第2ベルト196と、を備えている。
【0054】
ガイドレール190は、所定位置P1と取り出し位置P2とを結ぶ仮想直線に沿って伸縮自在に構成されている。具体的には、ガイドレール190は、
図5に示すように、2本のレール191,192を入れ子状に嵌合させて構成されている。2本のレール191,192のうち、一方のレール191は筐体11に固定され、他方のレール192は引き出し扉114に固定されている。つまり、ガイドレール190は、引き出し扉114の開閉動作に伴って伸縮するようになっている。
【0055】
また、2本のレール191,192には、同一直線上に連続するガイド溝191a,192aが形成されている。ガイド溝191a,192aはレール191,192の上面から下面へ貫通しており、このガイド溝191a,192aにはホルダ18の下面に設けられた突起18bが挿入されるようになっている(
図6を参照)。つまり、ホルダ18は、ガイド溝191a,192aに沿ってガイドレール190上を摺動可能になっている。
【0056】
ここで、
図3,4に戻り、ホルダ18の突起18bは第2ベルト196に連結されており、第2ベルト196が巡回動したときに該第2ベルト196とともにホルダ18が移動するようになっている。また、引き出し扉114の下面にも突起114aが形成されている。引き出し扉114の突起114aは第1ベルト194に連結されており、引き出し扉114の開閉動作したときに該引き出し扉114に連動して第1ベルト194が巡回動するようになっている。
【0057】
第1プーリ193の一方と第2プーリ195の一方とは同一の回転軸に固定されており、それら第1プーリ193と第2プーリ195とが等速で回転するようになっている。ただし、第1プーリ193の径は、第2プーリ195の径より小さく形成されている。そのため、第2プーリ195の1回転当たりに第2ベルト196が巡回する量は、第1プーリ193の1回転当たりに第1ベルト194が巡回する量より多くなる。
【0058】
このように構成された廃棄ボックス搬送機構19によれば、ホルダ18及び廃棄ボックス17が所定位置P1から取り出し位置P2へ移動する量に比べ、引き出し扉114の引き出し量が少なくなる。なお、上記した第1プーリ193の径と第2プーリ195の径との比率は、ホルダ18が取り出し位置P2に到達したときに該ホルダ18の端面(
図3,4において右側に位置する面)が引き出し扉114に当接するように設定されることが望ましい。その場合、引き出し扉114の引き出し量を最小限に抑えつつ廃棄ボックス17を取り出すことができる。
【0059】
以上述べた実施例によれば、所定位置P1が取り出し位置P2から離れた位置に設定された場合であっても、引き出し扉114の引き出し量を少なく抑えつつ、ホルダ18及び廃棄ボックス17を取り出し位置P2まで移動させることができる。その結果、廃棄ボックス17を取り出す際のユーザの労力や手間が軽減されるため、分析システムのユーザビリティが向上する。さらに、筐体11の内部に収容される機器のレイアウトの自由度が高くなるとともに、分析装置1を設置可能な場所の選択肢が増加する。
【0060】
なお、ホルダ18には、該ホルダ18が取り出し位置P2に位置するときに筐体11の開口部200を閉塞するための閉塞板18aが設けられてもよい。その場合、廃棄ボックス17の取り出し作業中も筐体11の内部と外部とを区画することが可能となる。
【0061】
本実施例では、プーリとベルトを組み合わせた廃棄ボックス搬送機構19を例に挙げたが、プーリとベルトの代わりにチェーンスプロケットとチェーンを用いることも可能である。また、第1プーリ193及び第1ベルト194の代わりに、ピニオンとラックを組み合わせたギア機構(ラックアンドピニオン)を用いることも可能である。たとえば、ラックを引き出し扉114に固定するとともに、ピニオンギアを一方の第2プーリ195と共通の回転軸に固定すればよい。
【0062】
本実施例では、第1プーリ193と第2プーリ195とを同一の回転軸に固定することにより、第1プーリ193の回転力を等速で第2プーリ195へ伝達する構成を例に挙げたが、第1プーリ193の回転力を増速して第2プーリ195へ伝達する構成を用いることも可能である。
【0063】
たとえば、
図7に示すように、第1プーリ193と等速回転する第1ギア193aと、第2プーリ195と等速回転する第2ギア195aと、第1ギア193aの回転を第2ギア195aへ伝達する中間ギア197と、を備え、第1ギア193aの径が中間ギア197の径より大きく形成されるとともに、第2ギア195aの径が中間ギア197の径より小さく形成されたギア機構を用いることができる。
【0064】
このようなギア機構によれば、第1ギア193a(第1プーリ193)の回転が中間ギア197により増速され、さらに中間ギア197の回転が増速されて第2ギア195a(第2プーリ195)へ伝達されることになる。その結果、第1プーリ193の回転力を大幅に増速して第2プーリ195へ伝達することが可能になる。この機構は、第1プーリ193の径と第2プーリ195の径が同等の場合にも適用することができるし、第1プーリ193の径が第2プーリ195の径より小さい場合にも適用することができる。
【0065】
ところで、上記したような種々の方法により引き出し扉114の開閉動作が増速されてホルダ18及び廃棄ボックス17へ伝達されるようになると、引き出し扉114が勢いよく開閉されたときに、ホルダ18及び廃棄ボックス17の移動速度が急速になるため、廃棄ボックス17の姿勢が不安定になる可能性がある。そこで、廃棄ボックス搬送機構19のフリクションを増大させる機構が付加されるようにしてもよい。
【0066】
たとえば、
図8に示すように、伸縮自在の油圧ダンパ198の一端を筐体11に固定するとともに、他端を引き出し扉114に固定するようにしてもよい。その際、油圧ダンパ198による抵抗の大きさは、凡そ1kgf程度に設定されてもよい。このように油圧ダンパ198が設けられると、引き出し扉114が勢いよく開閉される事態が回避され、それに伴ってホルダ18及び廃棄ボックス17が急速に移動する事態も回避することができる。なお、油圧ダンパ198の他端はホルダ18に固定されても同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、第1ベルト194又は第2ベルト196にテンションをかける機構を設けることにより、廃棄ボックス搬送機構19のフリクションを増大させることもできる。さらに、第1プーリ193の回転軸と第2プーリ195の少なくとも一方を回転自在に支持するブッシュを設けることにより、回転軸の回転抵抗を高めることもできる。
【0068】
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について
図9乃至
図12に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同等の構成については説明を省略する。
【0069】
前述した第1の実施例と本実施例との相違点は、廃棄ボックス17の取り出し時に開閉される扉が回動型の開閉扉(以下、「回動扉」と称する)で構成される点にある。
図9及び
図10は、本実施例における廃棄ボックス搬送機構19の側面図である。なお、
図9は回動扉が閉じた状態を示し、
図10は回動扉が開いた状態を示している。
【0070】
図9及び
図10に示す回動扉114bは、平板状に形成された扉部材の底部が支軸50に固定されている。支軸50は、周方向へ回転自在な状態で筐体11に支持されている。このように構成された回動扉114bは、把手115bが斜め下方へ引かれたときに、支軸50を中心にして回転しながら開くことになる。なお、回動扉114bは、上部又は側部が回転自在に支持される構成であってもよい。
【0071】
次に、本実施例の廃棄ボックス搬送機構19は、前記した支軸50に取り付けられた駆動ギア51と、一方の第2プーリ195の回転軸に取り付けられた従動ギア52と、駆動ギア51及び従動ギア52に歯合して駆動ギア51の回転力を従動ギア52へ伝達する中間ギア53と、を備えている。駆動ギア51は中間ギア53より径大に形成されており、従動ギア52は中間ギア53より径小に形成されている。
【0072】
このように構成された分析装置1によると、回動扉114bが開閉された場合に、支軸50と等速で駆動ギア51が回転する。駆動ギア51の回転力は、中間ギア53に伝達される。その際、駆動ギア51が中間ギア53より径大に形成されているため、駆動ギア51の回転力は増速されて中間ギア53へ伝達される。
【0073】
駆動ギア51から中間ギア53へ伝達された回転力は、従動ギア52へ伝達される。その際、中間ギア53が従動ギア52より径大に形成されているため、中間ギア53の回転力はさらに増速されて従動ギア52へ伝達される。従動ギア52へ伝達された回転力は、等速で第2プーリ195へ伝達される。
【0074】
したがって、回動扉114bの回転力(言い換えれば、支軸50の回転力)は、上記のギア機構よって増速された後に第2プーリ195へ伝達されることになる。そのため、回動扉114bの回動量(支軸50の回転量)に対して、第2プーリ195の回転量が多くなる。その結果、所定位置P1と取り出し位置P2とが離れている場合であっても、ホルダ18及び廃棄ボックス17を所定位置P1から取り出し位置P2へ移動(又は、取り出し位置P2から所定位置P1へ移動)させることが可能となる。
【0075】
なお、ガイドレール190の一方のレール192と回動扉114bとはリンク機構54を介して連結されており、そのリンク機構54が屈曲及び伸長することによりガイドレール190が収縮及び伸長されるようになっている。
【0076】
以上述べた実施例によれば、開閉扉が回動型の開閉扉で構成された場合であっても、ホルダ18及び廃棄ボックス17の搬送可能距離を伸ばすことができる。その結果、分析装置1のユーザビリティを高めることができる。さらに、分析装置1を設置可能な場所の選択肢が増えるとともに、筐体11の内部に収容される機器のレイアウトの自由度が高まる。
【0077】
なお、本実施例では、回動扉114bの支軸50の回転量を増速してホルダ18及び廃棄ボックス17へ伝達する構成を例に挙げたが、回動扉114bの上端の移動量を増速してホルダ18及び廃棄ボックス17へ伝達する構成を採用することもできる。たとえば、
図11及び
図12に示すように、垂直方向に配置された一対の第3プーリ55と、第3プーリ55間に掛け渡される第3ベルト56と、一方の第3ベルト56と共通の回転軸に固定されたギア57と、円弧状の板材の内周面に平歯が設けられた弧状ギア58と、を備えた構成を例示することができる。
【0078】
その際、弧状ギア58は、該弧状ギア58の一端が回動扉114bの上部に固定されるとともに、該弧状ギア58の歯がギア57と歯合するように配置されている。すなわち、弧状ギア58は、回動扉114bの回動動作したときに、ギア57と歯合しつつ周方向へ移動するようになっている。また、一対の第3プーリ55の他方は、一方の第2プーリ195と共通の回転軸に固定されており、それら第3プーリ55と第2プーリ195が等速回転するようになっている。さらに、第3プーリ55は、第2プーリ195より径小に形成されている。
【0079】
図11及び
図12に示した構成によれば、回動扉114bが開閉動作したときに、それに伴って弧状ギア58が周方向(回動扉114bの上部が回動する方向とも言える)へ移動する。弧状ギア58が周方向へ移動すると、それに伴ってギア57が回転する。ギア57の回転力は、一方の第3プーリ55へ等速で伝達される。一方の第3プーリ55へ伝達された回転力は、第3ベルト56によって他方の第3プーリ55へ伝達され、次いで他方の第3プーリ55から第2プーリ195へ等速で伝達される。第2プーリ195の回転力は、第2ベルト196を介してホルダ18へ伝達される。
【0080】
第2プーリ195が第3プーリ55より径大に形成されているため、第2プーリ195及び第3プーリ55の1回転当たりに第2ベルト196が巡回する量は、第3ベルト56の巡回量より多くなる。よって、
図11及び
図12に示した構成においても、
図9及び
図10に示した構成と同様の効果を得ることができる。
【0081】
<応用例>
前述した第1及び第2の実施例では、筐体11の内部に一種類の分析装置が収容される例について述べたが、筐体11の内部に複数種の分析装置が収容された複合機(分析システム)においても本発明を好適に適用することができる。
【0082】
たとえば、
図13に示すように、筐体11の内部において、分析装置1の両側面に各々異なる他の分析装置1a,1bが収容される場合が想定される。そのような場合は、所定位置P1から取り出し位置P2までの距離が一層長くなるため、引き出し扉114を利用した場合には引き出し扉114の引き出し量(突出量)が一層多くなり、ユーザの労力や手間が増加するとともに、分析システムを設置可能な場所の選択肢が少なくなるという問題があった。これに対し、分析装置1,1a,1bのレイアウトを変更する方法が考えられるが、レイアウトの選択肢が限定されてしまい、ユーザビリティが低下する可能性がある。
【0083】
これに対し、前述した第1の実施例で述べたような廃棄ボックス搬送機構19を適用すれば、引き出し扉114の引き出し量を最少限に抑えつつ、廃棄ボックス17の長距離搬送が可能になる。その結果、分析システムのユーザビリティを高めることが可能になるとともに、分析システムを設置可能な場所の選択肢の増加や、筐体11の内部に収容される装置レイアウトの自由度の向上を図ることができる。
【0084】
なお、
図13に示す例では、開閉扉として引き出し扉が用いられているが、前述した第2の実施例で述べたような回動扉を用いることも可能である。