(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、前記医療用具は、前記医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、前記摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものであり、かつ、スズ系化合物を含有しないものであり、
前記ビニル基を有するシリコーンは、ビニル基を有するシロキサンあるいはシランと環状シロキサンとの重合物であり、かつ、前記ビニル基を有するシロキサンあるいはシランが、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シランであり、
前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、ケイ素原子に結合した水素基を一分子中に少なくとも2個有するポリシロキサンであり、
前記付加反応物であるシリコーン系樹脂は、前記ビニル基を有するシリコーンの前記ビニル基と、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの前記水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化により結合したシリコーン系樹脂であることを特徴とする摺動性被覆層保有医療用具。
前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである請求項1ないし6のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリジメチルシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである請求項1ないし6のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
前記組成物は、アルキルアルコキシシランまたはフェニルアルコキシシランを含有し、さらに、グリシドキシアルキルアルコキシシランを含有している請求項1ないし9のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
前記組成物は、ウレイド基またはウレイレン基を有するアルコキシシラン、または/およびアミノ基を有するアルコキシシランとカルボン酸無水物との反応生成物を含有している請求項1ないし10のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
前記医療用部材は、シリンジ用外筒であり、前記医療用具は、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されるシリンジ用ガスケットであり、該ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記シリンジ用外筒と接触する部分に設けられた前記摺動性被覆層を備えている請求項1ないし14のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
前記医療用部材は、プラスチック製シリンジ外筒であり、前記医療用具は、前記プラスチック製シリンジ外筒用のガスケットである請求項16に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
シリンジ用外筒と、請求項16または17の摺動性被覆層保有医療用具でありかつ前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットと、前記ガスケットに取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャーとを有することを特徴とするシリンジ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の摺動性被膜保有医療用具について説明する。
本発明の摺動性被膜保有医療用具1は、医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であり、医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層3を備える。摺動性被覆層3は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなる。
そして、被覆層3を形成する組成物は、スズ系化合物を含有しないものであることが好ましい。また、被覆層3を形成する組成物は、白金族金属系触媒を含有するものであることが好ましい。そして、被覆層3を形成する組成物のシリコーン系樹脂は、後述するように、ビニル基を有するシリコーンのビニル基と、ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化により結合したシリコーン系樹脂である。
本発明の摺動性被膜保有医療用具をシリンジ用ガスケットおよびシリンジに応用した実施例を用いて説明する。
本発明の実施例であるガスケットについて説明する。
図1は、本発明の実施例であるガスケットの正面図である。
図2は、
図1に示すガスケットの断面図である。
図3は、
図1に示すガスケットの平面図である。
図4は、
図1に示すガスケットの底面図である。
図5は、
図1に示すガスケットを使用するプレフィルドシリンジの断面図である。
この実施例の摺動性被膜保有医療用具は、シリンジ用ガスケット1であり、医療用部材であるシリンジ用外筒11の内部に液密かつ摺動可能に収納されるものである。
本発明の摺動性被膜保有医療用具であるガスケット1は、シリンジの外筒内に摺動可能に接触するガスケットであって、シリンジと接触する部分に設けられた被覆層3を備えており、かつ、被覆層3は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物により形成されている。
そして、この実施例のガスケットでは、被覆層は、上述した組成物により形成されているので、微粒子を含む被覆層に比べ、低速摺動時に良好な摺動性を有するとともに、保存時にシリンジとガスケットの貼り付きを起こすこともないため、使用時に滑らかな初動が可能となり、急激な注入が避けられ、一定速度での注入が可能となる。
また、血管確保の確認のために行われる事の多い吸引操作を行った場合でも、微粒子が入っている被覆層を有するガスケットでは、その微粒子の離脱の可能性が否定できないが、微粒子が無くなることにより薬液中に浮遊するリスクが皆無となるメリットを有している。
この実施例のガスケット1は、シリンジ用ガスケット1であり、シリンジ用外筒11の内部に液密かつ摺動可能に収納されるものである。また、ガスケット1は、外筒11と接触する部分に設けられた被覆層3を備えており、かつ、被覆層3は、後述する特定のシリコーン系樹脂を含有している。このガスケット1は、ガスケット本体(言い換えれば、コア部)2と、少なくともコア部2の外面であって外筒内面と接触する部分に設けられた被覆層3とを備えている。なお、コア部2の外面全体に被覆層3を設けてもよい。
【0010】
シリンジ用ガスケット1のコア部2は、
図1,
図2,
図5に示すように、ほぼ同一外径に延びる本体部5と、本体部5の先端側に設けられ先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部6と、本体部5の基端から先端側に向かって内部に設けられたプランジャー取付部4と、本体部5の先端部側面に設けられた先端側環状リブ7aと、本体部5の後端部側面に設けられた後端側環状リブ7bを備えている。プランジャー取付部4は、
図2,
図4に示すように、本体部5の内部において基端から先端部付近まで延びる略円柱状の凹部となっており、凹部側面には、プランジャーの先端部に形成された螺合部と螺合可能な螺合部8が設けられている。凹部の先端面は、ほぼ平坦に形成されている。なお、プランジャー取付部は、螺合部に限定されず、プランジャーの先端部と係合する係合部であってもよいし、両者の組み合わせであってもよい。また取り付け操作は螺合によって行なわれるが係合状態は別途設けられた係合部によって維持されるものであってもよい。
環状リブ7a,7bは、シリンジ用外筒11の内径より若干大きく作製されているため、外筒11内で圧縮変形するものとなっている。また、実施例において、環状リブは、2つ設けられているが、1つあるいは3つ以上設けられていてもよい。
【0011】
コア部(ガスケット本体)2の構成材料としては、弾性材料であることが好ましい。弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料(特に、加硫処理したもの)や、スチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマー、及びこれらスチレン系エラストマーにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや、流動パラフィン、プロセスオイル等のオイルやタルク、キャスト、マイカなどの粉体無機物を混合したものが挙げられる。さらに、ポリ塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーや、それら混合物等が構成材料として使用できる。構成材料としては、特に、弾性特性を有し、高圧蒸気滅菌が可能などの観点からブチルゴムが好ましく、さらにγ線滅菌、電子線滅菌も可能となるなどの観点からジエン系ゴム、スチレン系エラストマーが好ましい。
【0012】
被覆層3は、少なくとも環状リブ部分に設けられていればよい。具体的には、被覆層3は、先端側環状リブ7aと基端側環状リブ7b部分に設けられていればよい。なお、被覆層3は、コア部2の外面全体に形成されていてもよい。被覆層3の厚さは、1〜30μm、特に、3〜10μmであることが好ましい。1μm以上であれば、必要な摺動性能を発揮し、30μm以下であれば、ガスケットの弾性に影響を与えることがない。被覆層3は、固体微粒子を含まないものとなっている。
被覆層3は、コア部2を構成している前記弾性材料よりも、摩擦係数の低い材料で構成される樹脂で構成されている。被覆層3の樹脂はシリコーン系樹脂であり、シリコーン系樹脂を有機溶剤で溶解した溶剤系のコーティング液、および水に乳化、分散した水系コーティング液のいずれも適用できるが、溶剤系はガスケット材料への影響、残留溶剤の存在が懸念されるため、薬液収納容器としての適性が得られ易い水系コーティング液のものが好ましい。
【0013】
被覆層3は、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとを触媒の白金を使用して付加反応により硬化させて得られるシリコーンであり、固体微粒子を含まないものとなっている。また、熱硬化性型シリコーン、常温硬化型シリコーンのタイプであることが好ましく、特に作業性などの点より、熱硬化性型シリコーンが好ましい。
なお、本発明のガスケットに形成された被覆層3では、「固体微粒子」を含まないものとなっている。ここでいう「固体微粒子」とは、被覆層3を形成した場合にその外表面の粗度に影響を与える程度の大きさを有する粒子をいい、具体的には被覆層3の厚みに対して10%より大きい粒径を有するものをいう。
以上のように被覆層3を有することにより、本発明のガスケット1は、摺動面に潤滑剤を付与することなく安定した摺動性を有するとともに、薬剤収納空間内の密封性を維持することができる。そして、被覆層(言い換えれば、被膜層を有するガスケット)は、初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値以下であることが好ましい。このようなものであれば、良好な初期摺動が開始できかつ、過剰な初期移動を起こすこともない。
【0014】
次に、被覆層3の形成方法について説明する。被膜層の形成方法は、コーティング液を清浄なガスケット表面に対して塗布させた後、硬化させることで得られる。このとき、ガスケット表面に塗布させる方法としては、浸漬法、噴霧法等、従来公知の方法で行うことができる。特に、被覆対象物を回転(具体的には、100〜600rpm)させた状態にて、被覆液を噴霧塗布(スプレー塗布)することが好ましい。さらに、噴霧塗布を行う場合には、ガスケットの被覆対象部位を60〜120℃程度に加熱処理した後に行うことが好ましい。このようにすることにより、被覆対象表面に対して、撥水することなく、速やかに被覆液が定着する。
硬化方法としては、常温放置でもよいが、加熱硬化が好ましい。加熱硬化させる方法としては、ガスケット基材を変質、あるいは変形させない方法であれば特に限定されるものではないが、熱風乾燥、赤外線を使用した乾燥炉などが挙げられる。あるいは減圧乾燥機を用いる方法など従来公知の方法で行うこともできる。形成される被覆層の厚さは、1〜30μm程度で良く、好ましくは3〜10μmである。このような被膜層を形成するにあたっては、混合液の濃度、あるいは浸漬手法、噴霧手法を適当に制御することで、容易に形成可能である。
【0015】
コーティング液としては、上述の通り薬液収納容器としての適性が得られ易い、反応性シリコーンを水に乳化、分散した水系コーティング液のものが好ましい。但し、ガスケットを摺動させた時に、被覆層3がコア部2から剥がれてしまわないように、あるいは被覆層3自体が破壊してしまわないように、反応して被覆層3の特定のシリコーン系樹脂になる、反応性シリコーンだけでなく、コア部2との密着性を獲得するための、また被覆層の強度を高めるための特定の助剤が処方されている事が特徴である。本発明で使用する水性コーティング液の処方について説明する。コーティング液の有効成分は大きく分けて3種類の成分がある。反応性シリコーンである成分1、成分1の反応触媒である成分2、被覆層3がコア部2からの剥がれ、それ自体が破壊してしまわないための助剤である成分3である。さらに必要に応じて添加剤を配合することができる。成分1:反応性シリコーン、成分2:成分1の反応触媒及び反応抑制剤、成分3:助剤。
【0016】
以下に各成分を詳細に説明する。
成分1は2種類(成分1a、成分1b)の組み合わせである。成分1aは、被覆層3のシリコーンの主成分を含有するポリシロキサンのエマルジョンであり、そのポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンである。本エマルジョンの調製方法は大きく2つ挙げられる。一つは、環状シロキサンを使用した乳化重合により一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを調製する方法である(以下、「乳化重合法」と称す)。もう一つは、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンを水へ分散、乳化させてエマルジョンを調製する方法である(以下、「分散乳化法」と称す)。
【0017】
乳化重合法では、環状シロキサン、ビニル基を有するシロキサンあるいはシラン、酸型乳化剤、水を分散、乳化させた後に重合を行い、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンのエマルジョンを調製する。環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、トリフェニルトリメチルシクロトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等が挙げられる。ビニル基を有するシロキサンあるいはシランとしては、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シランなどが挙げられる。環状シロキサンに対するビニル基を有するシロキサンあるいはシランの仕込み比(mol/mol)は0.01〜0.3であり、より好ましくは0.05〜0.2である。酸型乳化剤は、公知のアニオン界面活性剤の酸型を使用でき、アニオン界面活性剤としては有機スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエトキシレート硫酸エステル塩などが挙げられ、中でも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。分散、乳化において用いられる乳化装置としては、粗乳化は高速回転型乳化装置、例えばホモミキサー型、櫛歯型、断続ジェット流発生型のもの、精乳化は圧力式ホモジナイザーを用いることができる。粗乳化では平均粒径1μm前後の微粒子のエマルジョンになるように、また精乳化ではさらに微粒化させて、目安として平均粒径500nmを超えない微粒子のエマルジョンになるように乳化装置、処理条件を選定するのが好ましい。精乳化後の平均粒径が数百nmより大きい微粒子は、微粒子の合一等によりクリーミング現象が起こりやすく、エマルジョンの安定性の点で好ましくない。乳化重合は、精乳化品を加熱して行う。好ましい加熱条件は60〜80℃で5〜8時間である。乳化重合により得られたエマルジョン中の微粒子は、主として一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンであり、その分子量は60,000〜400,000、ビニル基の含有量は0.5〜10wt%である。成分1aのエマルジョン濃度は30〜60%が好適である。
【0018】
次に、分散乳化法では、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサン、乳化剤、水を分散、乳化させてエマルジョンを調製する。一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンとしては、両末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン、両末端にビニル基を有するポリ(ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にビニル基を有するポリフェニルメチルシロキサン、両末端にビニルフェニルメチル基を有するポリ(ビニルフェニルシロキサン−フェニルメチルシロキサン)、両末端にビニル基を有するポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にビニル基を有するポリ(ジエチルシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端がトリメチルシリル基であるポリビニルメチルシロキサン、両末端がトリメチルシリル基であるポリ(ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)、ポリビニルメトキシシロキサン、ポリビニルエトキシシロキサン、ポリ(ビニルエトキシシロキサン−プロピルエトキシシロキサン)などが挙げられる。該ポリシロキサンの粘度は100〜10,000mPa・s、より好ましくは500〜5,000mPa・sである。粘度が10,000mPa・sを越えるものは、通常の乳化装置で水中へ分散、乳化では目的の平均粒径までの微粒化が困難である。該ポリシロキサンの分子量は5,000〜60,000、より好ましくは10,000〜50,000である。該ポリシロキサンのビニル基の含有量は0.05〜2wt%である。乳化剤は公知のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を使用できる。アニオン界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分子鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが使用できる。また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが使用できる。中でも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。分散、乳化において用いられる乳化装置としては、粗乳化は高速回転型乳化装置、例えばホモミキサー型、櫛歯型、断続ジェット流発生型のもの、精乳化は圧力式ホモジナイザーを用いることができる。粗乳化では平均粒径1μm前後の微粒子のエマルジョンになるように、また精乳化ではさらに微粒化させて、目安として平均粒径500nmを超えない微粒子のエマルジョンになるように乳化装置、処理条件を選定するのが好ましい。精乳化後の平均粒径が数百nmより大きい微粒子は、微粒子の合一等によりクリーミング現象、分離が起こりやすく、エマルジョンの安定性の点で好ましくない。
【0019】
成分1bは、被覆層3のシリコーンの副成分が含有するポリシロキサンのエマルジョンであり、主成分である成分1a中のポリシロキサンと反応して、被覆層3のシリコーン中では架橋剤としての役割である。そのポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素基を有するポリシロキサンであり、該ポリシロキサン、乳化剤、水を分散、乳化させてエマルジョンを調製する。エマルジョンの調製方法は、成分1aの分散乳化法と同様な方法にて調整できる。一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素基を有するポリシロキサンとしては、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサン、両末端にトリメチルシリル基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にトリメチルシリル基を有するポリエチルハイドロシロキサン、両末端にトリメチルシリル基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−オクチルメチルシロキサン)などが挙げられ、場合によっては連鎖増量剤としての役割も兼ねて、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリジメチルシロキサン、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリフェニル(ジメチルハイドロ)シロキサン、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−フェニルメチルシロキサン)などを添加することもできる。成分1bのポリシロキサンの粘度は2〜1,000mPa・s、より好ましくは10〜500mPa・sである。該ポリシロキサンの分子量は500〜50,000、より好ましくは1,000〜20,000である。ケイ素原子に結合した水素基の含有量は、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサンでは100mol%、両末端にトリメチルシリル基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−ジメチルシロキサン)、両末端にトリメチルシリル基を有するポリ(メチルハイドロシロキサン−オクチルメチルシロキサン)では3〜50mol%、両末端に水素基を有するポリシロキサンでは0.01〜0.5wt%である。成分1bのエマルジョン濃度は30〜60%が好適である。成分1bのコーティング液への配合量は、成分1aのビニル基量に対して成分1bの水素基量がモル比で0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5である。
【0020】
成分2は、一つは成分1aと成分1bとの反応触媒であり、反応触媒としては、具体的には成分1aのビニル基と成分1bの水素基とのヒドロシリル化を促進するための白金族金属系触媒である。白金族金属系触媒(白金族系触媒)としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられるが、中でも白金系触媒が好ましく、具体的には塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とケトン類との錯体、白金とオレフィンとの錯体やビニルシロキサンとの錯体が挙げられる。中でも成分1aと成分1bの主体がポリシロキサンであるため、それらとの相溶性の点で、白金とビニルシロキサンとの錯体が好ましく、具体的には白金とビニルシロキサンカルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の両末端ビニルポリジメチルシロキサン溶液、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体の環状メチルビニルシロキサン溶液が挙げられる。これら溶液中の白金濃度は1〜3wt%のものである。コーティング液への配合量は、成分1aのポリシロキサンに対して白金量換算で1〜1,000ppmであり、好ましくは5〜500ppm、さらには50〜200ppmの範囲とすることが最適である。また、成分2の形態は、白金とビニルシロキサンとの錯体、乳化剤、水を分散、乳化させてエマルジョンとしたものが好ましく、その調製方法は、成分1の分散乳化法と同じにしてできる。また、もう一つ、成分1aと成分1bとの反応抑制剤としては、具体的にはコーティング液の保管期間中、作業中に成分1aのビニル基と成分1bの水素基とのヒドロシリル化を適度に抑制して安定性を獲得する付加反応抑制剤である。付加反応抑制剤としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキサン-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキサン-1-ペンチン、3-メチル-3-トリメチルシロキサン-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。コーティング液への配合量は、成分1aのポリシロキサンに対して0.1〜10wt%、より好ましくは0.1〜2wt%である。
【0021】
成分3は、被覆層3がコア部2から剥がれてしまわないため、あるいは、それ自体が破壊してしまわないための助剤であり、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシラン、アルキルフェノキシシラン、アミノアルキルアルコキシシランまたはグリシドキシアルキルアルコキシシランなどが好適である。アルキルアルコキシシランとしては、炭素数が1〜20の少なくとも一個のアルキル基および炭素数が1〜4の少なくとも一個のアルコキシ基を有する。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルsec−トリオクチルオキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、n−オクチルメトキシシロキサン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリ(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、オクチルトリエトキシシラン、ラウリルトリエトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、ステアリルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリエトキシシラン、エイコシルトリメトキシシラン、エイコシルトリエトキシシランなどが好適である。アルキルフェノキシシランとしては、例えば、メチルトリフェノキシシランなどが好適である。また、フェノキシアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが好適である。コーティング液への配合量は、成分1aのポリシロキサンに対して0.01〜10wt%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5wt%である。0.1wt%より少ないと十分なコーティング液の安定性が得られにくく、10wt%を越えると被覆層3とコア部2との密着性が不十分なものになってしまうため好ましくない。
【0022】
別の好適なものとして、ウレイド基(−NH−CO−NH
2)を有するアルコキシシラン、ウレイレン基(−NH−CO−NH−)を有するアルコキシシランが挙げられる。ウレイド基(−NH−CO−NH
2)を有するアルコキシシラン、ウレイレン基(−NH−CO−NH−)を有するアルコキシシランとしては、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルジエトキシメチルシラン、メチルウレイレンプロピルジメトキシメチルシラン、3−[(2−ウレイドエチル)ウレイル]プロピルトリメトキシシラン、O=C[NHCH
2CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3]
2が挙げられる。エマルジョンへの配合では水溶性であることが分散性の点で好ましく、かつ商業流通の点で入手し易いγ−ウレイドプロピルトリエトキシシランが好適である。
【0023】
また別の好適なものとして、アミノ基を有するアルコキシシランとジカルボン酸無水物との反応生成物は、アミノ基/カルボン酸のモル比が0.5〜2、好ましくは0.8〜1.2となる配合比にて、アミノ基を有するアルコキシシランとジカルボン酸無水物とを混合し、溶媒中にて室温〜90℃の温度下で数時間〜十数時間反応させて得ることができる。使用する溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が挙げられ、溶媒の還流下で実施するのが好ましい。アミノ基を有するアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどが好適である。また、ジカルボン酸無水物としては、フタル酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などが挙げられる。コーティング液への配合量は、成分1aのポリシロキサンに対して1〜10wt%であることが好ましく、より好ましくは3〜8wt%である。1wt%より少ないと被覆層3とコア部2との密着性が不十分なものとなってしまい、10wt%を越えると被覆層3の柔軟性、伸張性が低下してコア部2との密着が不十分なものとなってしまうため好ましくない。
【0024】
さらに別の好適なものとして、グリシドキシアルキルアルコキシシランを用いてもよい。グリシドキシアルキルアルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが好適である。コーティング液への配合量は、成分1aのポリシロキサンに対して1〜10wt%であることが好ましく、より好ましくは3〜8wt%である。1wt%より少ないと被覆層3とコア部2との密着性が不十分なものとなってしまい、10wt%を越えると被覆層3の柔軟性、伸張性が低下してコア部2との密着が不十分なものとなってしまうため好ましくない。
また、上記の3種類の有効成分を配合してコーティング液を調製する段階で、コーティング液を均一に乳化、懸濁、分散させておくために、界面活性剤や、アルコール等の添加剤を用いてもよい。
【0025】
界面活性剤としては、陰イオン(アニオン)界面活性剤であることが好ましい。陰イオン(アニオン)界面活性剤としては、どのようなものでもよいが、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分子鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが使用できる。
また、非イオン(ノニオン)界面活性剤を用いてもよい。非イオン(ノニオン)界面活性剤としては、どのようなものでもよいが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが使用できる。
【0026】
また、本発明のシリンジ10は、外筒11と、外筒11内に摺動可能に収納されたガスケット1と、ガスケット1に取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャー17とを有する。
具体的には、シリンジ10は、
図5に示すように、先端部に注射針取付部15が設けられ後端部にフランジ16が対向して設けられたシリンジ用外筒11と、シリンジ用外筒11の内面12を液密かつ気密に摺動可能なシリンジ用ガスケット1と、シリンジ用ガスケット1に取り付けられもしくは取り付け可能なプランジャー17と、シリンジ用外筒11の注射針取付部15を封止する封止部材18と、封止部材18と外筒内面12とシリンジ用ガスケット1との間に形成された薬剤26を収納する薬剤収納部19からなる。なお、注射針取付部15には、封止部材18ではなく、注射針が取り付けられていてもよい。また、封止部材としては、
図5に示すように、両頭針を直接挿通可能な刺通部を有するタイプであっても良いし、封止部材を外すことではじめて薬剤の排出が可能になるタイプであっても良い。また、ガスケット1は、上述した被腹層3を備えている。そして、このシリンジ10では、外筒11内でのガスケット1の低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値が20N以下であることが好ましい。このような低動的摺動抵抗値は、ガスケット1が上述した被覆層3を有することにより得ることができる。特に、外筒11内でのガスケット1の低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値は、1N〜20Nであることが好ましい。
【0027】
特に、この医療用具は、プレフィルドシリンジ25であり、
図5に示すように、シリンジ10と薬剤26からなる。
シリンジ用外筒11は、先端部に注射針取付部15が設けられ、後端部にフランジ部16が設けられた円筒状部材である。シリンジ用外筒11は、透明もしくは半透明材料により形成されている。好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成されている。また、形成材料としては、110℃以上のガラス転移点、または融点を有する材料であることが好ましい。
外筒11の形成材料としては、汎用される各種硬質プラスチック材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリアレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、非晶性ポリエーテルイミドなどが好ましく、特に、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート、及び非晶性ポリエーテルイミドが透明性、熱滅菌耐性の点で好ましい。これらの樹脂は外筒に限らず、薬剤を収納可能な容器に共通して使用可能なものである。さらに、ガラスを形成材料として用いてもよい。
また、
図5に示すようにプランジャー17は、断面十字状の軸方向に延びる本体部20と、プランジャー取付部4と螺合するプランジャー17の先端部に設けられたプランジャー側螺合部21と、プランジャー側螺合部21と本体部20との間に設けられた円盤状のガスケット支持部と、本体部20の後端に設けられた押圧用の円盤部22と、本体部20の途中に設けられた円盤状のリブを備えている。
【0028】
そして、この実施例のシリンジ10の内部には、薬剤26が収納されている。薬剤26としては、液剤であっても粉末剤や凍結乾燥剤などの固形剤であっても良いが、特に、界面活性剤を含む薬液等の低粘稠かつ浸透力の高い薬液などの薬液を収納した場合は、シリコーンオイルを必要としないシリンジでありながら、ガスケットの摺動性と液密性を両立することが困難な薬剤でもあるにもかかわらず好適に収納することができるので好ましい。また、収納された薬剤に接する部分にも被覆層3をシリンジ用ガスケット1に設けた場合は、難水溶性の薬剤を含有した薬液等の吸着性の高い薬液であっても薬剤吸着等を防止できるので、このような薬剤を用いることが好ましい。
そして、プランジャー17および封止部材18の構成材料としては、ポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
そして、上述したシリンジは、医療用部材内面に接触して移動する医療用具の一例である。このようなタイプの医療用具は、医療用部材内を摺動可能に接触するものであれば、シリンジに限らずいかなる医療用具であってもよい。例えば、ゴム栓付きバイアル瓶、輸液バッグ、採血管、減圧採血管等であってもよい。また、本発明の医療用具は、医療用部材に摺動可能に接触するものであれば、シリンジ用ガスケットに限らずOリング等、栓体、蓋体等、いかなる医療用具であってもよい。例えば、バイアル瓶のゴム栓、輸液バッグの蓋材等であってもよい。
また、本発明の医療用具は、体腔内面に接触して移動する医療用具であってもよい。このような体腔内面に接触して移動する医療用具としては、カテーテル、ガイドワイヤー、血管拡張用器具などがある。また、本発明の医療用具は、医療用部材内面および体腔内面に接触して移動する医療用具であってもよい。このような体腔内面に接触して移動する医療用具としては、医療用部材であるカテーテル(例えば、ガイディングカテーテル)内に挿入されるとともに、先端部が体腔の目的部位に誘導されるカテーテル、ガイドワイヤー、血管拡張用器具などがある。
【0030】
次に、本発明の医療用具をガイドワイヤーに応用した実施例を図面を参照して説明する。
図6は、本発明のガイドワイヤーの一実施例の断面図である。
この実施例のガイドワイヤー50は、内芯52と、内芯52を被包する摺動性被膜53を備えている。そして、摺動性被膜53は、シリコーンゴムにより構成されているとともに、カーボンナノチューブおよびシリコーン系樹脂微粒子を含有している。
特に、
図6に示す実施例のガイドワイヤーは、剛性の高い本体部52aと、本体部52aより細径であり剛性の低い先端部52bとが一体に形成された内芯52と、内芯52の先端に設けられた高X線造影部54と、高X線造影部54を設けた内芯52の全体を被包する摺動性被膜53を備えている。また、摺動性被膜3は、微粒子を含有することにより、粗面化した表面となっている。
【0031】
ガイドワイヤ50の内芯52は、本体部52aと先端部52bとを有しており、弾性金属により一体に形成されている。そして、先端部52bは、本体部52aの先端より細径となるように形成されている。このように細径に形成されることにより、本体より剛性が低いものとされている。また、先端部52bは、本体部52aの先端より先端に向かって徐々に細径となるように形成されていてもよい。内芯の先端部を徐々に細径とすることにより、先端に力がかかると先端部が徐々に曲がるので、操作性が向上する。
内芯52としては、超弾性金属、ステンレス鋼などが好ましい。超弾性金属としては、49〜58原子%NiのTiNi合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTiNi合金である。
【0032】
そして、内芯52の本体部52aの外径は、0.10〜1.00mm、より好ましくは0.15〜0.40mmであり、長さは、1000〜4000mm、より好ましくは1500〜3000mm、座屈強度(負荷時の降伏応力)は、30〜100Kg/mm
2(22℃)、より好ましくは40〜55Kg/mm
2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、20〜80Kg/mm
2(22℃)、より好ましくは30〜35Kg/mm
2である。
また、内芯52の先端部52bの外径は、0.03〜0.15mm、より好ましくは、0.05〜0.10mmであり、長さは10〜300mm、好ましくは50〜150mmであり、曲げ負荷は、0.1〜10g、好ましくは0.3〜6.0g、復元負荷は、0.1〜10g、好ましくは0.3〜6.0gである。
【0033】
また、内芯の先端部の外径はすべて上述寸法である必要はなく一部分であってもよい。さらに、本体部および先端部の復元応力は同一値を有する必要はなくむしろ熱処理条件によりそれを変化させ適度な線径において適当な物性を得るよう工夫することも好ましい。すなわち、本体部の復元応力は大きく、また先端部は柔軟になるよう本体部と先端部の熱処理を分離することが好ましい。さらに、内芯52は単一線によって構成されるものに限らず、並行もしくは縒りによる複数の線で、上述機能すなわち物性の段階的もしくは連続的な変化を発揮するものとしてもよい。
【0034】
そして、高X線造影部54は、
図6に示す実施例では、内芯52の先端に固定された高X線造影性を有する金属の環状部材であり、具体的には、パイプ状部材により形成されている。高X線造影性を有する金属としては、金、白金、鉛、銀、ビスマス、タングステンなどが好ましく、特に好ましくは、金である。
この高X線造影部54は、内芯52の先端に機械的な圧着、または、内芯52の先端にメッキあるいは蒸着された金属とハンダ付されることにより固定されている。
そして、高X線造影部54は、外径が0.20〜0.90mm、好ましくは0.25〜0.40mm、内径が0.04〜0.16mm、好ましくは0.06〜0.11mm、長さが1.00〜10.00mm、好ましくは1.5〜4.0mmである。
また、高X線造影部54としては、例えば、上述のような高X線造影性を有する金属により形成された細線がコイル状に巻かれたものであってもよい。この細線としては、線径が0.02〜0.10mmのものが好適に使用される。また、巻き着けられる長さは、内芯の先端より1.0〜10.0mm、好ましくは1.5〜4.0mmである。
【0035】
内芯52の全体を被覆する摺動性被膜53は、
図6に示すように、先端部を含めてほぼ均一の外径を有していることが好ましい。特に、この摺動性被膜53は、内芯52の先端に設けられた高X線造影部による段差等がガイドワイヤー50の外面形状に影響しないように、ほぼ均一の外径となっている。
摺動性被膜53としては、上述した実施例のガスケットにおいて説明した摺動性被膜3と同じものが好適に使用できる。
摺動性被膜の外径は、0.25〜1.04mm、好ましくは0.30〜0.64mm、内芯52の本体部52a上での肉厚は、0.25〜1.04mm、好ましくは0.30〜0.64mmである。
【0036】
そして、ガイドワイヤー50の先端(摺動性被膜53の先端)は、血管壁の損傷の防止、さらに、ガイドワイヤー50の操作性向上のために、
図6に示すように半球状等の曲面となっていることが好ましい。
なお、この実施例のガイドワイヤー50では、内芯52の全体が摺動性被膜53により被覆されているが、このようなものに限定されるものではない。摺動性被膜53は、内芯52の一部のみを被覆するもの、例えば、内芯52の先端部のみを被覆するもの、内芯52の本体部のみを被覆するものであってもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
コーティング液は、実施例1〜8、比較例1の通りに調製した。
実施例1)
(成分1a)
オクタメチルシクロテトラシロキサン125g、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン5g、ドデシルベンゼンスルホン酸2.5g、水22.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌し、続いて回転数2,000rpmにて水100gを徐々に加えて粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm
2の条件で2回通して精乳化を行った。精乳化品を70℃で6時間反応させ、続いて15℃で12時間保持し乳化重合を行い、10%炭酸ナトリウム水溶液を使用してpH6.0に調整し重合を完了させた。重合にて得られたポリシロキサンの分子量は33万、ビニル基の含有量は4.5wt%であった。得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
両末端がトリメチルシリル基であるポリメチルハイドロジェンシロキサン(ケイ素原子に結合する水素基含有量100mol%、粘度30mPa・s、分子量2,100)75g、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5g、水73.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm
2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン溶液(粘度50mPa・s、白金含量3wt%)75g、エチニルシクロヘキサノール7.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5g、水73.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm
2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを3.4g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランを1g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0038】
実施例2)
(成分1a)
実施例1での1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン5gを、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン10gに変更した以外は実施例1と同じに行い、得られた調製品を成分1aとして使用した。なお、重合にて得られたポリシロキサンの分子量は31万、ビニル基の含有量は5.4wt%であった。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
フェニルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを6.8g、成分2を0.34g、成分3のフェニルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランを5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0039】
実施例3)
(成分1a)
実施例1での1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン5gを、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン1gに変更した以外は実施例1と同じに行い、得られた調製品を成分1aとして使用した。なお、重合にて得られたポリシロキサンの分子量は35万、ビニル基の含有量は3.8wt%であった。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
フェニルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを0.68g、成分2を0.17g、成分3のフェニルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0040】
実施例4)
(成分1a)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1aとした。
(成分1b)
実施例1での両末端がトリメチルシリル基であるポリメチルハイドロジェンシロキサン(ケイ素原子に結合する水素基含有量100mol%、粘度30mPa・s、分子量2,100)を、両末端がトリメチルシリル基である、メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子に結合する水素基含有量30mol%、粘度35mPa・s、分子量2,000)に変更した以外は実施例1と同じに行い、得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを11.2g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン1g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0041】
実施例5)
(成分1a)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
無水マレイン酸62gをエタノール200gに溶解させたものにγ-アミノプロピルトリエトキシシラン140gを室温で滴下し、続いて80℃でエタノール還流下にて15時間反応させた。得られた反応物、メチルトリエトキシシランおよびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを3.4g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、反応物を5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0042】
実施例6)
(成分1a)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例4と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
実施例5の成分3での反応物、フェニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを11.2g、成分2を0.17g、成分3のフェニルトリエトキシシランを1g、反応物を5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0043】
実施例7)
(成分1a)
両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.4wt%、粘度500mPa・s、分子量17,200)125g、ドデシルベンゼンスルホン酸2.5g、水122.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm
2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを1g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0044】
実施例8)
(成分1a)
実施例7での両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.4wt%、粘度500mPa・s、分子量17,200)を、両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.04wt%、粘度10,000mPa・s、分子量62,700)に変更した以外は実施例7と同じに行い、得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
実施例5の成分3での反応物、メチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを0.2g、成分2を0.34g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、反応物を5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0045】
比較例1)
(成分1a)
オクタメチルシクロテトラシロキサン125g、ドデシルベンゼンスルホン酸2.5g、水22.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌し、続いて回転数2,000rpmにて水100gを徐々に加えて粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm
2の条件で2回通して精乳化を行った。精乳化品を70℃で6時間反応させ、続いて15℃で12時間保持し乳化重合を行い、10%炭酸ナトリウム水溶液を使用してpH6.0に調整し重合を完了させた。両末端がシラノール基であるポリシロキサンの分子量は33万であった。得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
比較例1では成分1bは使用しなかった。
(成分2)
ジオクチルスズジラウレート75g、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルシエチレン12.5g、水162.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm
2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分2として使用した。なお、実施例で使用した反応抑制剤は使用しなかった。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分2を1g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランを1g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
【0046】
ブチルゴムを用いて、
図1および
図2に示す形状のシリンジ用ガスケットのコア部を作製した。コア部の形成は、ブチルゴムに添加剤を配合した加硫性ゴム組成物をプレス成形することにより行った。得られたコア部の形状は、長さ20mm、先端側及び後端側環状リブ部分での外径30mm、先端側環状リブ中央と後端側環状リブ中央間の長さ10mm、先端側環状リブと後端側環状リブ間の同一外径部分での外径27mm、内側に雌ねじ部を有するプランジャー取付用凹部の長さ(深さ)10mm、プランジャー取付用凹部の先端側での内径18mm、及び後端側での内径21mmであった。
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、実施例1〜8、比較例1のコーティング液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約10μmであった。
【0047】
(実験1:摺動抵抗測定試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
各シリンジの摺動抵抗値を、オートグラフ(機種名 EZ−Test、会社名 島津製作所)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを100mm/minの速度で60mm降下させたときの初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表3に示すような結果となった。
表1に示すように、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケットを用いたシリンジは、初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値ともに、同様なものであった。また、初期摺動抵抗値と最大摺動抵抗値との差が少なく、プランジャーを押し始めた際に薬液が設定量以上に飛び出すおそれがほとんどなく、薬液の吐出を安全かつ正確に行うことができる。初期摺動抵抗値と最大摺動抵抗値共に10N以下の良好な結果が得られた。
【0049】
また、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、精製水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行った後、上記同様、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により摺動抵抗値を測定した。試験速度20〜500mm/minにおける初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表2に示すような結果となった。
表2に示すとおり、実施例1〜8のガスケットを用いたシリンジは、比較例1のガスケットと同等の、100mm/minを境にして低い試験速度では摺動抵抗値が減少していることがわかり、薬剤を静脈内注射するのに適した速度における摺動性がより良好であることがわかった。
なお、各試験におけるサンプル数は10とし、表の数値はそれらの平均値である。
【0051】
また、シリンジ用外筒の形成材料として、ガラス(塩谷硝子株式会社製)を用いて、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23mm、長さは、76mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1のガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、精製水20mLを外筒内へ注入し、上記同様、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により摺動抵抗値を測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを20、50、100、500mm/minの速度で45mm降下させたときの最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表3に示すような結果となった。
【0053】
(実験2:滅菌済み注射筒基準に規定された圧力試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
滅菌済みのプラスチック製の注射筒であり、そのまま直ちに使用でき、かつ、1回限りの使用で使い捨てる滅菌済み注射筒基準(平成10年12月11日医薬発第1079号医薬安全局長通知)における圧力試験に規定されている試験を実施した。その結果を表1に示した。
なお、試験におけるサンプル数は5とし、全て適合した場合、「適合」とした。
【0054】
(実験3:高浸透性液体密封性試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、プラスチック製軟包材ヒートシール部の密封性試験に用いられるエージレス(登録商標)チェッカー(三菱瓦斯化学株式会社製)を用い、密封性試験(シリンジの先端部に封止部材を嵌めて40mLを密封)を実施した。室温で一晩放置し、ガスケット摺動部からの液漏れを目視観察した結果を表1に示した。
なお、試験におけるサンプル数は5とし、全て適合した場合、「適合」とした。
【0055】
(実験4:固着試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び7、比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、40℃、60℃、80℃恒温槽内で各々1日、さらに60℃恒温槽内で10日、20日、30日各々静置した。静置後のサンプルについて、ガスケットのシリンジ用外筒への固着度を評価するために、各シリンジの初期摺動抵抗値を、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを100mm/minの速度で60mm降下させたときの初期摺動抵抗値(N)を計測したところ、表4に示すような結果となった。
【0057】
(実験5:不溶性微粒子試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。 そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び7、比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、蒸留水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行い、プレフィルドシリンジを製造した後、該プレフィルドシリンジを10分間激しく振とう後の精製水中の不溶性微粒子を測定した。結果を表5に示した。
【0059】
(実験6:シリンジポンプを用いた流量精度評価試験)
シリンジポンプ(TE−331、テルモ株式会社製)を用い、シリンジの流量精度評価を実施した。シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び7、比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、精製水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行った後、各シリンジをシリンジポンプへセットして、5mL/hの流量で精製水を8時間吐出させ、電子天秤を用いて、その重量を30秒間隔で経時的に測定したところ、実施例1及び7、比較例1の各ガスケットは安定した吐出であることが確認された。