(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930962
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】単軸スクリュープラスチック加工装置において加工可能な表面処理圧縮成形材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 9/16 20060101AFI20160526BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20160526BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20160526BHJP
C08L 3/04 20060101ALI20160526BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
B29B9/16
C08L101/00
C08L97/00
C08L3/04
C08K9/00
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-516932(P2012-516932)
(86)(22)【出願日】2010年6月22日
(65)【公表番号】特表2012-531327(P2012-531327A)
(43)【公表日】2012年12月10日
(86)【国際出願番号】IB2010052810
(87)【国際公開番号】WO2010150182
(87)【国際公開日】20101229
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】09163509.4
(32)【優先日】2009年6月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/269,882
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アマン,エルンスト
(72)【発明者】
【氏名】クネール,ミヒヤエル
(72)【発明者】
【氏名】ハルデマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘルシユ,エミール
【審査官】
相田 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−050592(JP,A)
【文献】
特開平11−035697(JP,A)
【文献】
特開平11−189699(JP,A)
【文献】
国際公開第95/017441(WO,A1)
【文献】
J.Z. LIANG,EFFECT OF EXTRUSION CONDITIONS ON DIE-SWELL BEHAVIOR OF POLYPROPYLENE/DIATOMITE COMPOSITE MELTS,POLYMER TESTING,2008年,V27,P936-940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00−11/14
B29B 13/00−15/06
B29C 31/00−31/10
B29C 37/00−37/04
B29C 71/00−71/02
C08K 9/00
C08L 3/04
C08L 97/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパウンディング段階を含まず、以下の段階、
a)少なくとも1つの一次粉末材料を準備する段階、
b)少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを準備する段階、
c)前記少なくとも1つの一次粉末材料および前記少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを、円筒型処理室の高速ミキサーユニット中に同時にまたは逐次に供給する段階、
d)前記少なくとも1つの一次粉末材料および前記少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを高速ミキサー中で混合する段階、
e)段階d)から得られた混合材料を冷却ユニットに移送する段階
を含むことを特徴とする、表面処理した圧縮成形材料の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの表面処理剤が、円筒型処理室の高速ミキサーユニット中に、少なくとも1つの一次粉末製品の供給と同時に供給される、またはその粉末製品の供給後に供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階e)の前に、段階d)から得られた混合材料が第2の混合ユニットに移送されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを、第2の混合ユニット中において段階d)の混合材料に添加し混合することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
段階c)における一次粉末材料の温度が20℃から300℃の間であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
段階c)における表面処理剤の温度が20℃から300℃の間であることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一次粉末材料が無機粉末であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
無機粉末が、天然の粉砕炭酸カルシウム(GCC);沈降炭酸カルシウム(PCC);ドロマイトなどの炭酸カルシウム含有無機物;タルクなどのマグネシウム含有無機物もしくは粘土を伴うカルシウムなどの混合炭酸塩系充填剤;雲母;およびタルク−炭酸カルシウム混合物もしくは炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然の粉砕炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母もしくは合成か天然の繊維との混合物、またはタルク−炭酸カルシウム共構造物もしくはタルク−二酸化チタン共構造物などの無機物の共構造物などのこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
無機粉末が、天然の粉砕炭酸カルシウム(GCC)、または沈降炭酸カルシウム(PCC)、またはGCCおよびPCCの混合物、またはGCCおよびPCCおよび粘土の混合物、またはGCCおよびPCCおよびタルクの混合物、またはタルクまたは雲母であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
無機粉末が、大理石、石灰岩、カルサイトおよびライムストーンを含む群から選択されるGCCと、アラゴナイトPCC、バテライトPCC、カルサイトPCC、菱面体PCC、偏三角面体PCCを含む群から選択されるPCC、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
一次粉末材料が有機粉末であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
有機粉末が、木粉および変性デンプンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶融表面処理用ポリマーが、エチレンコポリマー、メタロセン系ポリプロピレン、ポリプロピレンホモポリマーを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
エチレンコポリマーが、エチレン−1−オクテンコポリマーであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリプロピレンホモポリマーが、アモルファス性ポリプロピレンホモポリマーであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
表面処理剤が、ステアリン酸、酸化亜鉛、合成パラフィンワックス、ポリエチレンメタロセンワックスおよびポリプロピレンワックスを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
表面処理した圧縮成形材料が、単軸スクリュープラスチック加工装置において加工可能であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
5重量%から25重量%の少なくとも1つの表面処理用ポリマー、及び75重量%から95重量%の少なくとも1つの一次無機粉末を含む、表面処理した圧縮成形材料であって、
該表面処理した圧縮成形材料は、ISO 3310規格に準拠したふるい分析によって測定された10μmから10mmの平均粒子サイズを有する単一粒子の集塊から成り、
該表面処理した圧縮成形材料は、ISO 3310規格に準拠した45μmの選別において、80重量%より多い選別残留物を有し、
該表面処理した圧縮成形材料は、DIN−53492規格によって評価して易流動性である、表面処理した圧縮成形材料。
【請求項19】
コンパウンディング段階無しに、熱可塑性ポリマーマトリックス中で完全に再分散性であることを特徴とする、請求項18に記載の表面処理した圧縮成形材料。
【請求項20】
非ダスト性であることを特徴とする、請求項18または19に記載の表面処理した圧縮成形材料。
【請求項21】
熱可塑性ポリマーにおける添加剤としての、請求項18から20のいずれか一項に記載の圧縮成形材料の使用。
【請求項22】
請求項18から20のいずれか一項に記載の圧縮成形材料を、最終熱可塑性ポリマーに直接導入することによる熱可塑性ポリマーの製造方法。
【請求項23】
請求項18から20のいずれか一項に記載の圧縮成形材料を含む熱可塑性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーの加工分野に関し、具体的に本発明は、コンパウンディング段階無しに、熱可塑性ポリマーにおける使用に適した圧縮成形材料を製造する方法、および本方法によって得られた圧縮成形材料、および熱可塑性ポリマーにおけるこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパウンディングは、溶融状態においてポリマーおよび添加剤を混合または/およびブレンドすることによって、プラスチック配合物を調製することにある。異なる原材料の均一なブレンドを得るために、様々な肝要な基準がある。分散混合および分配混合、ならびに加熱は重要な因子である。コニーダーおよび二軸スクリュー(同方向および異方向)ならびにインターナルミキサーが、プラスチック産業において最も一般的に使用されるコンパウンダーである。
【0003】
数十年間、熱可塑性プラスチックの加工産業は、変性熱可塑性樹脂の組成物を調製するために添加剤を使用しており、マスターバッチ/濃縮物またはコンパウンドと呼ばれる中間製品の生成に必要なコンパウンディング技術によって、多量の添加剤がポリマー樹脂中に導入される。
【0004】
例えば、WO 95/17441は、熱可塑性樹脂とブレンドするための熱可塑性顆粒の調製を含む、熱可塑性樹脂の最終製品の調製方法を開示している。
【0005】
WO 01/58988において、多量の充填剤入り熱可塑性材料を得るために無機充填剤のマスターバッチまたは濃縮物を調製する方法が記載されている。
【0006】
しかし、これらの文献によれば、従来の単軸スクリュー押出成形機において、良好に分散した一次粉末化合物を有するポリマー性最終製品を得ることは不可能である。むしろ、マスターバッチまたは濃縮物のような中間製品を製造する必要がある、すなわち中間のコンパウンディング段階無しに、従来の単軸スクリュー機において微細な一次粉末を分散することは不可能である。
【0007】
この点において、WO 2007/066362などのさらなる文献は、混合方法および原料供給口を1つしか持たない装置を記載しており、一方、EP 1 156 918、WO 2005/108045またはWO 2005/065067のような他の文献は、押出成形機またはエレミントミキサーに関するものである。
【0008】
しかし、いかなる中間段階をも必要とせずに、熱可塑性ポリマー中に導入するのに適した添加剤を、一次粉末から製造する容易で効率的な方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第95/17441号
【特許文献2】国際公開第01/58988号
【特許文献3】国際公開第2007/066362号
【特許文献4】欧州特許第1156918号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/108045号
【特許文献6】国際公開第2005/065067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の第1の目的は、連続法または非連続法による熱可塑性ポリマーへの配合に適した材料の製造方法であって、熱可塑性ポリマー中に導入される一次粉末材料が、従来の単軸スクリュー押出成形機中において良好に分散され得る方法を提供することである。
【0011】
本目的は、本発明による方法、すなわち以下の段階、
a)少なくとも1つの一次粉末材料を準備する段階、
b)少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを準備する段階、
c)前記少なくとも1つの一次粉末材料および前記少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを、円筒型処理室(cylindrical treatment chamber)の高速ミキサーユニット中に同時にまたは逐次に供給する段階、
d)前記少なくとも1つの一次粉末材料および前記少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーを高速ミキサー中で混合する段階、
e)段階d)から得られた混合材料を冷却ユニットに移送する段階
を含むことを特徴とする、圧縮成形材料を製造する方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
いかなる理論にも拘泥しないが、2つの因子の組合せ、つまり高速ミキサーの使用と、一次粉末の単一化粒子(singularised particles)の周囲に(粒子表面を完全に覆って表面処理圧縮成形材料をもたらす)薄膜を形成できる表面処理用ポリマーの使用の組合せにより、従来の単軸スクリュー押出成形装置を使用して、圧縮成形材料が熱可塑性ポリマー中に良好に分散する、すなわち、いかなる集塊(conglomerates)も形成することなく分散することが可能であると出願者は考えている。次に、単一化被膜粒子は緩い集塊を形成し得るが、ポリマー性表面層によって依然として分離されている。これは、圧縮成形の望ましい段階である。以下により詳細に記載されるように、圧縮成形の結果はバルク密度の増加、流動性の改善およびダストの抑制である。
【0013】
良好に分散しているとは、作製された各分散物について、50倍率の双眼拡大鏡の下で圧縮フィルム上で目視検査した際、分散物が、マトリックスポリマーに相当する黒点および一次粉末に相当する白点のどちらも示さないことを意味する。
【0014】
圧縮成形材料とは、バルク材料が、Retsch社のAS 200ふるいタワーを使用してISO 3310規格に準拠したふるい分析によって測定された、10μmから10mmの範囲の平均粒子サイズを有する材料を形成する多くの単一粒子の集塊から成ると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の最初の粉末の顕微鏡写真を示す図である。
【
図2】実施例1の圧縮成形材料の顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施形態において、さらなる表面処理剤、好ましくは少なくとも1つの表面処理剤が、円筒型処理室の高速ミキサーユニットに、少なくとも1つの一次粉末製品の供給と同時に供給される、またはその粉末製品の供給後に供給される。表面処理剤は、好ましくは液状または液化しており、特に溶融状態において供給される。
【0017】
表面処理剤および表面処理用ポリマーの主な違いは、表面処理剤は一次粉末に化学的に結合していることである。好ましくは、これらは粉末の表面張力、すなわちこれらの疎水性をとりわけ変化させる働きをする。一方、以下で述べるように、ワックスも同様に表面処理剤として使用され得るが、ワックスは化学的に結合していないが、特に分散を改善する働き、特に高粘度の表面処理用ポリマーの粘度を低下する働きをする。
【0018】
これとは対照的に、表面処理用ポリマーは圧縮成形材料中において単一粒子を分離するために使用され、一次粉末粒子の表面とは化学的に結合していない。
【0019】
本発明によれば、表面処理用ポリマーは好ましくは170℃において500mPa・sを超える粘度を有する一方、170℃における表面処理剤の粘度は、好ましくは500mPa・sより小さい。
【0020】
本発明による方法は、得られた圧縮成形材料の重量に対して2重量%から10重量%の範囲の濃度などの極めて低濃度の表面処理用製品、すなわち表面処理用ポリマーおよび表面処理剤を使用することをさらに可能にし、熱可塑性ベースポリマーに対する悪影響を低減し、さらにこれらの適合性を増強する。
【0021】
さらに、段階e)の前、すなわち段階d)から得られた混合材料が冷却ユニットに移送される前に、第2の混合ユニットに移送されるのが有利となり得る。
【0022】
場合によって、さらに少なくとも1つの溶融表面処理用ポリマーが、この第2の混合ユニットにおいて段階d)の混合材料に添加されて混合される。
【0023】
本発明による方法のさらなる実施形態は、一次粉末材料の温度が20℃から300℃の間であり、好ましくは60℃から250℃の間である。
【0024】
この点において、添加され得る、場合による表面処理剤の温度は、20℃から300℃の間であり、好ましくは60℃から250℃の間であり、より好ましくは60℃から120℃の間である。
【0025】
しかし、最大温度は成分のいずれの1つの熱分解温度より低くなければならない。
【0026】
本発明による一次粉末は、一次表面処理剤、例えばステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸と共にまたは無しに、化学反応、挽砕または粉砕などの段階から得られるような任意の粉末とすることができる。
【0027】
それは、天然由来または合成のものとすることができる。
【0028】
本発明による方法の好ましい実施形態において、一次粉末材料は無機粉末である。
【0029】
次に、無機粉末は、天然の粉砕炭酸カルシウム(GCC);沈降炭酸カルシウム(PCC);ドロマイトなどの炭酸カルシウム含有無機物;タルクなどのマグネシウム含有無機物もしくは粘土を伴うカルシウムなどの混合炭酸塩系充填剤;雲母;およびタルク−炭酸カルシウム混合物もしくは炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然の粉砕炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母もしくは合成か天然の繊維との混合物、またはタルク−炭酸カルシウム共構造物(co−structures)もしくはタルク−二酸化チタン共構造物などの無機物の共構造物などのこれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0030】
好ましくは、無機粉末は、天然の粉砕炭酸カルシウム(GCC)、または沈降炭酸カルシウム(PCC)、またはGCCおよびPCCの混合物、またはGCCおよびPCCおよび粘土の混合物、またはGCCおよびPCCおよびタルクの混合物、またはタルクまたは雲母である。
【0031】
好ましい実施形態において、無機粉末は、大理石、石灰岩、カルサイトおよびライムストーンを含む群から好ましく選択されるGCC;アラゴナイトPCC、バテライトPCC、カルサイトPCC、菱面体PCC、偏三角面体PCCを含む群から好ましく選択されるPCC;およびこれらの混合物から選択される。
【0032】
別の実施形態において、一次粉末材料は有機粉末である。
【0033】
次に、有機粉末は、木粉および変性デンプンを含む群から好ましく選択される。
【0034】
溶融表面処理用ポリマーは、170℃において500から400000mPa・sの間、より好ましくは1000mPa・sから100000mPa・sの間などの粘度を有利に有するべきである。エチレンコポリマー、例えばエチレン−1−オクテンコポリマー、メタロセン系ポリプロピレン、ポリプロピレンホモポリマー、好ましくはアモルファス性ポリプロピレンホモポリマーを含む群から好ましく選択される。
【0035】
場合による表面処理剤は、ステアリン酸、酸化亜鉛、合成パラフィンワックス、ポリエチレンメタロセンワックスおよびポリプロピレンワックスを含む群から選択されるのが有利である。
【0036】
耐衝撃性改良剤、安定化剤などのような従来の機能性成分が、混合段階中または完成した表面処理した圧縮成形材料、さらに最終製品すなわちコンパウンドされた熱可塑性樹脂に含まれてよいことに留意するべきである。
【0037】
本発明による方法の利点は、製造方法が低コストであり、これにより最終製品のコストがより一層低下するという点にある。
【0038】
これはとりわけ、表面処理した圧縮成形材料が、このような表面処理した材料をコンパウンドする必要無しに、従来の単軸スクリュープラスチック加工装置において加工可能であるという点にある。
【0039】
こうして、本発明による方法の様々な変形および実施形態の範囲内において、円筒型処理室は、水平方向または垂直方向の位置において、1つの単軸スクリュー高速ミキサーを好ましく含有する。
【0040】
特に、例えば以下のパラメータ、
1000−4000rpmにおいて長さ350mm、直径90mm;400−3000rpmにおいて長さ1200mm、直径230mm、600−1300rpmにおいて長さ150mm、直径150mm、
を有する単軸スクリュー高速ミキサーを含有する従来の市販円筒型処理室が本発明において有用である。
【0041】
好ましくは、長さ:直径の比は1:1から1:6であり、より好ましくは2:1から5:1であり、特に3:1から4:1である。
【0042】
こうして、2軸ミキサーまたはFarrel連続ミキサー、コニーダー、Banbury回分ミキサーまたは他の等価な装置を使用する段階などの、従来のコンパウンディング段階をなくし得る。
【0043】
本発明の第2の態様は、本発明による方法によって得られた表面処理した圧縮成形材料に関する。
【0044】
いかなるコンパウンディング段階も無しに、熱可塑性ポリマーマトリックス中に完全な再分散性を示す点が、本発明による表面処理した圧縮成形材料の好ましい特徴である。完全な再分散性を示すとは、作製された各分散物について、50倍率の双眼拡大鏡の下で圧縮フィルム上で目視検査した際、分散物が、マトリックスポリマーに相当する黒点および一次粉末に相当する白点のどちらも示さないことと理解される。
【0045】
このように表面処理した圧縮成形材料は、有利にも非ダスト性である。ISO 3310規格に準拠してRetsch社のAS 200ふるいタワーを用いたふるい分析によって測定された45μmの選別において、こうした非ダスト性の圧縮成形材料は、80重量%より多い選別残留物(screen residue)を好ましく有し、さらに好ましくは90重量%より多い選別残留物を有する。
【0046】
表面処理した圧縮成形材料において、一次粉末材料の含量は50重量%から99重量%が有利であり、好ましくは60重量%から98重量%が有利であり、より好ましくは75重量%から95重量%が有利であり、最も好ましくは80重量%から90重量%、例えば85重量%が有利である。
【0047】
例えば、一次粉末がGCCの場合、一次粉末は表面処理した圧縮成形材料中、75重量%から98重量%の量で存在してよく、好ましくは86重量%から92重量%の量で存在してよい。一次粉末がタルクの場合、表面処理した圧縮成形材料中で、75重量%から90重量%の量で、より好ましくは76重量%から87重量%で存在していればとりわけ好ましい。
【0048】
圧縮成形材料中の表面処理用ポリマーの含量は、通常1重量%から50重量%であり、好ましくは2重量%から40重量%であり、より好ましくは5重量%から25重量%であり、特に8重量%から14重量%、例えば10重量%から13重量%である。
【0049】
表面処理剤が、本発明による圧縮成形材料において使用される場合、その含量は一次粉末の比表面積に一般に依存する。有利には、0.01重量%から10重量%の量において存在し、好ましくは0.1重量%から7重量%の量において存在し、より好ましくは0.5重量%から5重量%、例えば1重量%から3重量%の量において存在する。例えば一次粉末がGCCの場合、表面処理剤は、圧縮成形材料の総重量基準において0.01重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から3重量%の量において、通常存在する。
【0050】
本発明による圧縮成形材料の典型例は、90重量%の一次粉末、9.5重量%の表面処理用ポリマーおよび0.5重量%の表面処理剤を含む。
【0051】
本発明の第3の目的は、熱可塑性ポリマーにおいて、得られた圧縮成形材料を添加剤として使用することに関する。
【0052】
したがって、本発明により、ポリマーの最終製品製造用の濃縮物および/またはコンパウンドとも呼ばれる中間マスターバッチの調製を必要とすることなく、圧縮成形材料の0.1重量%から80重量%、好ましくは1重量%から50重量%、より好ましくは5重量%から30重量%の範囲の任意の濃度において、熱可塑性ポリマー中への圧縮成形材料の均一な分散が可能となる。
【0053】
本発明のさらなる態様は、本発明による表面処理した圧縮成形材料を熱可塑性ポリマー中に添加剤として使用すること、および表面処理した圧縮成形材料を最終の熱可塑性ポリマーに直接添加することによって、熱可塑性ポリマーを製造する方法である。
【0054】
本発明による表面処理した圧縮成形材料は、任意の従来の熱可塑性ポリマー、とりわけポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリビニル系またはポリアクリル系のポリマーおよび/またはコポリマーの製造または加工に使用され得る。例えば、本発明による表面処理した圧縮成形材料は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直線型低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンHDPE、ポリプロピレンホモポリマー、ランダムポリプロピレン、ヘテロ相ポリプロピレン、またはポリプロピレン単位を含むブロックコポリマーなどのポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HI−PS)およびポリアクリレートなどのポリマーに使用され得る。
【0055】
この点において、表面処理した圧縮成形材料は、インフレーションフィルム、シート、パイプ異形材の製造において、およびパイプ、異形材、ケーブルファイバなどの押出成形、圧縮成形、射出成形、熱成形、ブロー成形、回転成形などのような、こうした段階において添加剤として働くことができる。
【0056】
最後に、本発明のさらなる態様は、本発明による圧縮成形材料を含む熱可塑性ポリマーである。
【0057】
本発明のある種の実施形態を例示することを意図しており、非限定的である以下の実施例によって、本発明の趣旨および利益がよりよく理解される。
【実施例1】
【0059】
本実施例は、本発明による非ダスト性の表面処理した圧縮成形材料の調製に関する。
【0060】
プロセス長1200mmおよび直径230mmを有する、順に3つの供給口および1つの取出口を備えた、ヨコ型「Ring−Layer−Mixer/Pelletizer」すなわち「Amixon社、RMG 30」を使用した。円筒には、加熱/冷却2重壁が備え付けられている。表面処理および圧縮成形は、回転式円筒型のピン取付スクリューによって得られる。
成分A(一次粉末材料):
0.5重量%のステアリン酸によって処理した、平均粒子サイズ2.7μmを有する天然の炭酸カルシウム(GCC))を110℃に予備加熱して、22.6kg/hr.の速度において、第1の供給口に重量測定して供給する。
成分B:(表面処理用ポリマー)
成分Bを、表面処理される成分Aに関係する必要速度(kg/hr.)、本実施例では2.4kg/hr.で、230℃の温度において、液体状態で供給口2から注入する。
【0061】
成分Bは、
−80重量%のエチレン−1−オクテン−コポリマー(例えば、Affinity GA 1900/Dow社)、密度(ASTM D792)は0.87g/cm
3、
−20重量%のメタロセン系ポリプロピレンワックス(例えば、Licocene PP−1302/Clariant社)、密度(23℃;ISO 1183))は0.87g/cm
3、
のブレンドから成る。
混合
表面処理および圧縮成形は、180℃、回転速度800rpmにおいて、「Ring−Layer−Mixer/Pelletizer」中で実施する。
【0062】
表面処理した製品は、取出口を通してMixer/Pelletizerから出し、圧縮成形および冷却用の第2のRing−Layer−Mixer/Pelletizer内に重力移送し、温度140℃および400rpmの回転速度で操作する。本実施例において、両ユニットは同一のサイズおよび寸法である。得られた表面処理した圧縮成形材料は、取出口を通してユニットから出されるが、ダストフリーで易流動性である。
応用:
表面処理済み/圧縮成形材料は、90.5重量%濃度の炭酸カルシウム(GCC)を有する。表面処理の品質は、圧縮成形材料およびバージンポリマーのブレンドを押出成形する際の再分散の程度によって評価する。
【0063】
正確には、本実施例におけるインフレーションフィルム製造の場合、LLDPE(Dowlex NG 5056G/Dow社)を使用して、17重量%の圧縮成形材料および83重量%の前記LLDPEを添加した。
【0064】
したがって、使用された装置は従来のDr.Collin社の、直径60mmおよび厚み1.2mmのインフレーションフィルム用ダイを備えた単軸スクリュー押出成形機E−25P型であった。押出成形機の温度プロファイルは220℃、回転速度は70rpmであった。
【0065】
LLDPE樹脂および圧縮成形材料の両製品ともに、重量式計量によって供給した。得られたフィルムは40μmの厚みを有した。
【0066】
比較のために、70重量%の炭酸カルシウムを含有する標準型のLLDPE系炭酸カルシウムのマスターバッチ(Omyalene 2011A/Omya社)を、同一の条件下で、該フィルム中の炭酸カルシウムの最終濃度を同一にして加工する。
【0067】
圧縮成形材料およびOmyalene 2011Aの両製品について得られたフィルムを、50倍率の双眼拡大鏡を通して目視で管理し、いかなる非分散凝集物も無いことが認められる。さらなる評価のために、17重量%の圧縮成形材料および22重量%のマスターバッチ(Omyalene 2011A)をそれぞれ含有するインフレーションフィルムの両サンプルを、落槍試験(ASTM D 1709)およびエルメンドルフ引裂抵抗試験(ISO 6383−2)について試験した。
【0068】
圧縮成形材料によって作製したフィルムは、620gの落槍、ならびに縦方向および横方向において710cNおよび810cNの引裂抵抗を有していた。
【0069】
マスターバッチを含有するフィルムは、630gの落槍値、ならびに縦方向および横方向において670cNおよび880cNの引裂抵抗を有していた。
【0070】
これらの結果は、標準的な単軸スクリュー押出成形機において加工する際に、圧縮成形材料の炭酸カルシウム(GCC)が完全に均一分散したことを裏付ける。
【0071】
圧縮成形材料の易流動特性をDIN−53492規格によって評価する。
結果は、
−未処理の天然の炭酸カルシウム粉末:10mmの開口部:流動なし
−実施例1通りの圧縮成形材料:10mmの開口部:7秒/150g
粒子サイズ
ISO 3310に準拠した評価
結果:92重量%<500ミクロン
56重量%<250ミクロン
35重量%<160ミクロン
4重量%<45ミクロン
これらの結果は、実施例1の圧縮成形材料がダストフリーおよび易流動性であることを裏付ける。
【0072】
最初の粉末の顕微鏡写真である
図1および実施例1の圧縮成形材料の顕微鏡写真である
図2を見ても、本方法の効果が明確に示されている。
【実施例2】
【0073】
表面処理および冷却のために、実施例1のように同一の装置および加工パラメータを使用した。
成分A(一次粉末材料):
平均粒子サイズ10μmを有する天然のタルク粉末(Finntalc M30SL/Mondo Minerals社)を、20kg/hr.の速度で供給口1に重量測定して供給する。
成分B(表面処理用ポリマー):
成分Bを、5kg/hr.の速度、230℃の温度において、液体状態で供給口2に供給する。
【0074】
成分Bは、
−90重量%のメタロセン系PP(例えば、Metocene HM 1425/Lyondel−Basell社)、
−10重量%のステアリン酸Zn(例えば、Zincum 5 /Baerlocher社)
のブレンドから成る。
【0075】
得られた、表面処理した圧縮成形材料は80重量%のタルクを含有しており、ダストフリーおよび易流動性である。
応用:
分散性の程度は、20重量%の圧縮成形材料および80重量%のバージンポリマーのブレンドを押出成形することによって評価する。フラットダイ(2×20mmの開口部)を備えた、Dr.Collin社の従来の単軸スクリュー押出成形機E−25P型において、190℃の温度プロファイルおよび80rpmの回転速度において押出成形を実施する。次に、得られたストライプを、ホットプレス上において厚み0.2mmのシートに圧縮する。
【0076】
本実施例に関して、ポリプロピレンホモポリマー型のTM−6100K/Montell社およびHDPE型のHostalene GC−7200/Clariant社をバージンポリマーとして使用した。
【0077】
50倍率の双眼拡大鏡を通して圧縮シートを目視試験することによって、凝集物または非分散性粒子を検出できず、両方のポリマーにおいて分散が優れていると判断される。
【0078】
圧縮成形材料の易流動特性をDIN−53492規格によって評価する。
結果は、
−未処理の天然のタルク粉末:10mmの開口部:流動なし
−実施例2通りの圧縮成形材料:10mmの開口部:18秒/150g
【実施例3】
【0079】
2.5lの容器および3部構成の標準混合用手段を備えた、MTI−Mischtechnik Industrieanlagen GmbH社製の高速回分ミキサーLM 1.5/2.5/5型を、粉末処理に使用した。ミキサーを175℃に加熱した。実施例1のように、364gの炭酸カルシウムを容器内に充填した。容器を密閉して、ミキサーを700rpmにおいて2分間運転した。次にミキサーを開放して、0.86g/mlの固相密度および152℃の融点(DSC)を有するポリプロピレンホモポリマー32gおよび4gの酸化亜鉛型のBarlocher Zincum 5を、予備加熱した粉末に加えた。再度、ミキサーを密閉して、700rpmにおいて12分間運転した。
【0080】
得られた処理粉末の分散を試験するために、Dr.Collin社の標準スクリューおよび標準テープダイを有する実験室用押出成形機FT−E20T−ISを使用した。加熱ゾーン全体を175℃に加熱して、押出成形機を100rpmにおいて運転した。LyondellBasell社の80重量%のHDPE型Hostalen GC 7260および20重量%の得られた粉末を、重量式計量システムによって押出成形機内に連続供給した。次に、押出成形したテープ10gを190℃の2枚のクロム鋼板間に圧縮成形した。得られたフィルムを50倍率の双眼拡大鏡を通して光学的に検査しても、目視可能な凝集物を示さなかった。
【実施例4】
【0081】
90.5重量%の天然の炭酸カルシウムおよび9.5重量%の表面処理用ポリマーを含有する実施例1の圧縮成形材料を、ポリスチレンのシート押出成形への応用について評価した。
【0082】
BASF社製の汎用ポリスチレン158K(GPPS)型およびBASF社製の耐衝撃性ポリスチレン486M(HIPS)型を使用した。56重量%のポリスチレンを各々、44重量%の前記圧縮成形材料に加えた。
【0083】
加工用押出成形機の供給用ホッパーに、両成分を連続的重量計量によって供給した。GPPSの場合、総供給速度は15.6kg/hとし、またHIPSの場合、14.7kg/hとした。Collin社のフラットフィルム押出成形用ダイおよびCollin社のつや出しスタックを有する、従来のCollin社の単軸スクリュー押出成形機E25P型を使用して、250mm幅および1mm厚のシートを製造した。押出成形機の温度プロファイルは180℃、195℃、230℃、230℃および230℃とした。押出成形用ダイを230℃に維持し、またカレンダリングロールを100℃に維持した。ダイギャップを1.2mmとし、またカレンダリングロールのニップ幅を1.0mmとした。ライン速度を0.8m/分に設定した。スクリューには160rpmの速度で供給量を減らした。このような設定によって、50倍率の双眼拡大鏡を通しても、目視可能な凝集体が無いシートを製造することができた。
【0084】
次に、押出成形した各シート10gを、190℃において2枚のクロム鋼板間に圧縮成形した。得られたフィルムを50倍率の双眼拡大鏡を通して光学的に検査しても、目視可能な凝集物を示さなかった。