特許第5930973号(P5930973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5930973-放射線検出器 図000002
  • 特許5930973-放射線検出器 図000003
  • 特許5930973-放射線検出器 図000004
  • 特許5930973-放射線検出器 図000005
  • 特許5930973-放射線検出器 図000006
  • 特許5930973-放射線検出器 図000007
  • 特許5930973-放射線検出器 図000008
  • 特許5930973-放射線検出器 図000009
  • 特許5930973-放射線検出器 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930973
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20160526BHJP
   G01T 1/161 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
   G01T1/20 B
   G01T1/20 D
   G01T1/20 G
   G01T1/20 C
   !G01T1/161 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-551798(P2012-551798)
(86)(22)【出願日】2011年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2011077236
(87)【国際公開番号】WO2012093526
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-198(P2011-198)
(32)【優先日】2011年1月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】内田 博
【審査官】 林 靖
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04415808(US,A)
【文献】 特開昭58−106482(JP,A)
【文献】 特開2006−179980(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0127178(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0032717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する放射線検出器であって、
放射線が入射する入射面と前記入射面の反対側にある裏面と前記入射面の上に二次元的に配列される複数のシンチレータセルとを有するシンチレータアレイと、
前記入射面の上に設けられる第1の光検出器アレイと、
前記裏面の上に設けられる第2の光検出器アレイと、
を備え、
前記シンチレータアレイは、前記第1の光検出器アレイと前記第2の光検出器アレイとの間に設けられ、
前記第1の光検出器アレイは、前記入射面に沿って二次元的に配列される複数の第1の光検出器を有し、
前記第2の光検出器アレイは、前記裏面に沿って二次元的に配列される複数の第2の光検出器を有し、
前記複数の第1及び第2の光検出器は、放射線を透過可能な光検出器であり、
前記複数のシンチレータセルは、入射する放射線を吸収してシンチレーション光を発生する複数の発光領域と前記シンチレーション光を反射する第1の反射領域とを含み、
前記シンチレータセルは、前記入射面と前記裏面との間に延在し、前記第1の反射領域によって前記複数の発光領域に分離され、
前記第1の反射領域は、前記入射面及び前記裏面に対して傾斜している面に沿って前記入射面の側と前記裏面の側との間に延在し、
前記複数の発光領域のそれぞれは、前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器のいずれか一方の光検出器と光学的に結合されている、
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記発光領域は、端面と、該端面の反対側にある先端と、を有し、
前記発光領域は、前記端面から前記先端に向けて先細る形状を有し、
前記端面は、前記入射面又は前記裏面に含まれ、前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器のいずれか一の光検出器が光学的に結合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載されている放射線検出器。
【請求項3】
前記シンチレータアレイは、側面と、前記シンチレーション光を反射する第2の反射領域と、を有し、
前記側面は、前記入射面及び前記裏面の間に延在し、
前記第2の反射領域は、前記側面にあって前記側面を覆う第1の部分と、前記シンチレータアレイを前記複数のシンチレータセルに分離する第2の部分と、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されている放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽電子断層撮影装置(以下「PET装置」という。)に用いられる放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜2には、シンチレーション光(scintillation light)を検出する効率を高めると共に、放射線画像の鮮鋭度を向上させる放射線検出器が開示されている。非特許文献1には、PET装置に用いられる検出器が開示されている。シンチレーション光を検出する効率とは、シンチレーション光を収集する効率を意味し、シンチレータ(scintillator)内で発生したシンチレーション光のうち光検出器で捕えることができたシンチレーション光の割合を意味する。
【0003】
特許文献1の放射線検出器は、2枚のシンチレータの間に固体光検出器を積層させた構成を有している。被写体を透過したX線は、放射線検出器に照射される。一方のシンチレータは、照射されたX線の強度に応じた強度の可視光を発光する。可視光は、画像信号に変換される。可視光に変換されなかったX線は、固体光検出器を透過し、他方のシンチレータに到達する。他方のシンチレータは、到達したX線の強度に応じた強度の可視光を発光する。可視光は、各固体光検出素子により画像信号に変換される。
【0004】
特許文献2の放射線検出器は、2枚の固体光検出器の間に平面状のシンチレータを表裏から挟んで積層させた構成を有している。被写体を透過したX線は、放射線検出器に照射される。X線は、固体光検出器を透過してシンチレータに照射される。シンチレータは、照射されたX線の強度に応じた強度の可視光を発光する。X線が入射された側に発せられる可視光は、一方の固体光検出器により画像信号に変換される。これとは反対方向に発せられる可視光は、他方の固体光検出器により画像信号に変換される。
【0005】
特許文献3には、シンチレータ内で発光するシンチレーション光に対する撮像が高解像度で行える撮像装置が開示されている。特許文献3の撮像装置は、入射したエネルギー線に応じてシンチレーション光を発光させるシンチレータ、シンチレーション光による画像を撮像する第1CCD部、及び第2CCD部を備えている。第1CCD部と第2CCD部とは、各々の撮像部が向き合うように配置され、かつ、シンチレータは、2つの撮像部の間に挟まれると共に、これら2つの撮像部に対し平面視で重なるように配置されている。
【0006】
特許文献4の放射線検出器は、X線が入射するシンチレータと、このシンチレータから発せられるシンチレーション光を検出する固体光検出器とを有している。シンチレータは、X線の強度に応じた強度の可視光を発光する。可視光は、光電変換により画像信号に変換される。
【0007】
特許文献5には、視野周辺部での位置分解能の劣化を防ぎ、視野全体にわたって一様かつ高解像度でポジトロン分布を画像化できるポジトロンCT装置が開示されている。特許文献5のポジトロンCT装置(ポジトロン:positron)は、柱状のシンチレータ要素を束ねたシンチレータ束と、該シンチレータ束の両端に結合された位置検出型光検出器とからなる検出器ユニットと、を複数個リング状に配列し、各シンチレータ要素の光検出器との接合面以外の面の一部に粗研磨部を設けている。
【0008】
特許文献6には、シンチレータの中で発生した光を効率よく光検出器に導くことができる放射線検出器が開示されている。特許文献6の放射線検出器は、シンチレータの光出力面をくさび形状(wedge shape)とすると共に、ライトガイド(light
guide)の光入力面を、くさび形状を受け入れるV字形状を含む形状としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7‐27865号公報
【特許文献2】特開平7‐27866号公報
【特許文献3】特開2006‐179980号公報
【特許文献4】特開平7‐27864号公報
【特許文献5】特開昭63‐75587号公報
【特許文献6】特開平2‐118485号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J. S. Huber et al, Characterizationof a 64 Channel PET Detector Using Photodiodes for Crystal Identification, IEEETransaction on Nuclear Science NS-44, pp.1197-1201, 1997
【非特許文献2】I. Vilardi et al, Optimization of theeffective light attenuation length of YAP:Ce andLYSO:Ce crystals for a novel geometrical PET concept, nuclear instruments andmethods in physics research A, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
2つの放射線同士での飛行時間差を利用したPET装置(Time Of Flight―PET装置:以下「TOF―PET装置」という。)に用いられる放射線検出器では、電子・陽電子の対消滅により生成された放射線対が2つの放射線検出器で検出された時、検出された時間差を測定する精度である時間分解能(時間特性)が重要な要素である。従来の放射線検出器には、位置検出特性や検出効率の観点から細長い直方体のシンチレータを有するシンチレータ検出器が用いられている。位置検出特性とは、PET装置内においてガンマ線が検出されたシンチレータの位置を検出する特性をいう。また、検出効率とは、ガンマ線を検出する効率を意味し、シンチレータに入射したガンマ線のうち、シンチレータと相互作用(光電効果、コンプトン散乱等)してシンチレータに一定のエネルギー量を付与したガンマ線の割合をいう。なお、ガンマ線が吸収されたエネルギー量と、発生したシンチレーション光との間には比例関係がある。この時間特性を向上させる方法として、シンチレータの長さを短くしたり、また、シンチレータの形状を、例えば角錐台形状や、くさび形状にする方法がある。しかし、このような方法によると、シンチレータの体積が減少する。検出効率がシンチレータの体積に依存するために、シンチレータの体積の減少は、検出効率の低下を招く。そこで、本発明は、検出効率が低下することなく、良好な時間特性が実現される放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面の放射線検出器は、放射線を検出する放射線検出器であって、放射線が入射する入射面と入射面の反対側にある裏面と、入射面の上に二次元的に配列される複数のシンチレータセル(scintillator cell)と、を有するシンチレータアレイ(scintillator array)と、入射面の上に設けられる第1の光検出器アレイと、裏面の上に設けられる第2の光検出器アレイと、を備え、シンチレータアレイは、第1の光検出器アレイと第2の光検出器アレイとの間に設けられ、第1の光検出器アレイは、入射面に沿って二次元的に配列される複数の第1の光検出器を有し、第2の光検出器アレイは、裏面に沿って二次元的に配列される複数の第2の光検出器を有し、複数の第1及び第2の光検出器は、放射線を透過可能な光検出器であり、複数のシンチレータセルは、入射する放射線を吸収してシンチレーション光を発生する複数の発光領域とシンチレーション光を反射する第1の反射領域とを含み、シンチレータセルは、入射面と裏面との間に延在し、第1の反射領域によって複数の発光領域に分離され、第1の反射領域は、入射面及び裏面に対して傾斜している面に沿って入射面の側と裏面の側との間に延在し、複数の発光領域のそれぞれは、第1の光検出器及び第2の光検出器のいずれか一つの光検出器と光学的に結合されている、ことを特徴とする。
【0013】
このように放射線検出器の第1の反射領域は、入射面及び裏面に対して傾斜している面に沿って、入射面側と裏面側との間に延在している。このため、第1の反射領域によって発光領域が入射面側又は裏面側に設けられるので、シンチレータセルに第1の反射領域を設けない構成と比較して、時間特性が向上する。さらに、シンチレータセルは、第1の反射領域によって複数の発光領域に分離されている。すなわち、シンチレータセルは、複数の発光領域を合算した実質的な体積を維持することが可能となる。従って、発光領域の体積減少による検出効率の低下が抑制される。従って、検出効率が低下することなく、良好な時間特性を有する放射線検出器が提供される。更に、シンチレータセルが(PET装置の)検出器リングの半径方向に二段階に構成されていると考えることができるので、DOI情報(DOI:Depth Of Interaction)が収集可能となる。更に、シンチレータセルが、(PET装置の)検出器リングの円周方向にずれて二つ存在しているものと考えることができるため、サンプリング密度を向上させることができる。
【0014】
本発明の一側面の放射線検出器において、発光領域は、端面と、該端面の反対側にある先端と、を有し、発光領域は、端面から先端に向けて先細る形状を有し、端面は、入射面又は裏面に含まれ、第1の光検出器及び第2の光検出器のいずれか一つの光検出器が光学的に結合されていることができる。直方体のシンチレータは、互いに平行な側面の組を複数有している。このような構成において、シンチレーション光が互いに平行な側面の間において反射するような条件となった場合には、同じ反射角度での反射が繰り返される。そのため、光検出器までの到達経路が長くなり、経路の違いにより到達時間のばらつきが大きくなる。特に、光検出器の入射面においてシンチレーション光が反射するような条件の場合には、シンチレータ内での吸収や反射ロスによってシンチレーション光が減衰するまで、この条件下におけるシンチレータ内での反射が繰り返される。一方、本発明の放射線検出器が有する発光領域は、発光領域を構成する側面の1つが光検出器側に傾いた斜面となるように構成されている。このような構成により、直方体のシンチレータにおいて生じ得る連続的な反射条件が崩される。また、光検出器の入射面における入射角度がより深くなる。すなわち、シンチレーション光の入射角度が入射面に対して垂直に近い角度にシフトする。これにより、光検出器の入射面において反射されるシンチレーション光の割合が減り、より到達経路が短くなり、到達時間のばらつきが低減されるので、本発明の放射線検出器は、良好な時間特性を有することができる。
【0015】
本発明の一側面の放射線検出器において、シンチレータアレイは、側面と、シンチレーション光を反射する第2の反射領域と、を有し、側面は、入射面及び裏面の間に延在し、第2の反射領域は、側面にあって側面を覆う第1の部分と、シンチレータアレイを複数のシンチレータセルに分離する第2の部分と、を有する、ことができる。このように、シンチレータアレイの側面には、第2の反射領域における第1の部分が設けられていることができる。これによれば、シンチレータセルにおいて発生したシンチレーション光を効率的に光検出器に集めることが可能となる。従って、本発明による放射線検出器は、良好なエネルギー検出特性(エネルギー分解能)を有することができる。さらに、シンチレータアレイは、シンチレータアレイを複数のシンチレータセルに分離する第2の反射領域における第2の部分を有することができる。これによると、シンチレーション光が発生したシンチレータセルに隣接する別のシンチレータセルへのシンチレーション光の漏れを防ぐことが可能となる。従って、本発明による放射線検出器は、良好な位置検出特性を有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面による放射線検出器によれば、検出効率が低下することなく、良好な時間特性が実現される放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るTOF−PET装置の構成を説明するための図である。
図2】実施形態に係る放射線検出器の構成を説明するための図である。
図3】実施形態に係る放射線検出器の構成の断面を説明するための図である。
図4】実施形態に係る放射線検出器の構成を説明するための図である。
図5】従来の放射線検出器の構成を示す図である。
図6】従来の放射線検出器が有する、検出効率と時間特性との相関を説明するための図である。
図7】(a)〜(e)はシンチレータの形状と時間特性との相関を説明するための図である。
図8】実施形態に係る放射線検出器の変形例を説明するための図である。
図9】実施形態に係る放射線検出器の他の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
まず、図1を参照して本実施形態における放射線検出器1が用いられるTOF―PET装置100の構成を説明する。TOF−PET装置100は、陽電子放出核種を含む物質を人体や動物及び植物などに投与し、その測定対象P中において電子・陽電子対消滅により生成される放射線対を計測することにより、測定対象P内のその投与物質の分布や動きについての情報を得るものである。TOF−PET装置100は、放射線検出器アレイ101と、複数のプリアンプ102a,102bと(プリアンプ:preamplifier)、複数のサムアンプ103A1,103A2,103B1,103B2と(サムアンプ:summing amplifier)、エネルギー弁別回路104と、タイミング取り出し回路105A,105Bと、同時計数回路106とを備えている。また、TOF−PET装置100には、放射線検出器アレイ101の略中心に測定対象Pが配置される。測定対象Pからは、ガンマ線対Gが放射される。ガンマ線対Gは、互いに反対方向に放射されるガンマ線G1,G2を含んでいる。本実施形態において放射線とは、ガンマ線G1,G2を意味する。
【0020】
放射線検出器アレイ101は、測定対象Pを略中心とする円Cの円周上に配置された複数の放射線検出器1を有する。放射線検出器アレイ101は、互いに対向し、同時計数を行う2つの放射線検出器1により構成される放射線検出器の組1aを有する。同時計数を行う放射線検出器の組1aは、1つの放射線検出器1と、該放射線検出器1の反対側にある他の一又は複数の放射線検出器1とにより構成されている。
【0021】
放射線検出器1は、シンチレータアレイ10と、光検出器アレイ20と、光検出器アレイ30とを備えている。放射線検出器1の詳細については後述する。
【0022】
放射線検出器の組1aの一方の放射線検出器1は、複数のプリアンプ102aに接続され、プリアンプ102aのそれぞれは、いずれもサムアンプ103A1及びサムアンプ103B1の両方に接続される。放射線検出器の組1aの他方の放射線検出器1は、複数のプリアンプ102bに接続され、プリアンプ102bのそれぞれは、いずれもサムアンプ103A2及びサムアンプ103B2の両方に接続される。プリアンプ102a,102bのそれぞれは、放射線検出器の組1aの放射線検出器1に含まれている複数の光検出器(後述の光検出器21,31)のそれぞれと一対一に対応して接続される。プリアンプ102a,102bは、光検出器から入力される信号を高速に増幅する。
【0023】
サムアンプ103A1は、複数のプリアンプ102aに接続される。サムアンプ103A2は、複数のプリアンプ102bに接続される。サムアンプ103B1は、複数のプリアンプ102aに接続される。サムアンプ103B2は、複数のプリアンプ102bに接続される。サムアンプ103A1,103A2,103B1,103B2は、プリアンプ102a,102bから入力される信号の論理和を出力する。
【0024】
エネルギー弁別回路104は、サムアンプ103A1,103A2に接続される。エネルギー弁別回路104は、所定の閾値(以下閾値SHという)以上の信号をガンマ線G1,G2の入射による信号として判別し、判別結果を同時計数回路106に出力する。閾値SHは、例えば電子・陽電子対消滅に伴って発生するガンマ線G1,G2の光子エネルギーである511keVの付近に設定される。これにより、電気的ノイズ信号や、散乱ガンマ線(消滅ガンマ線の一方或いは両方が散乱物質により方向を変えられたガンマ線であり、散乱のためにエネルギーが減少している)に起因するノイズ信号等が除かれる。なお、エネルギー弁別回路104は、サムアンプ103A1,103A2を介してプリアンプ102a,102bから出力される信号を積分し、振幅がエネルギーと比例関係となるように波形を成形する回路を含んでいる。
【0025】
タイミング取り出し回路105Aは、サムアンプ103B1に接続される。タイミング取り出し回路105Aは、サムアンプ103B1から出力される信号に基づき、同時計数回路106に入力するための信号(後述の第1のタイミング信号)を出力する。また他のタイミング取り出し回路105Bは、他のサムアンプ103B2に接続される。タイミング取り出し回路105Bは、サムアンプ103B2から出力される信号に基づき、同時計数回路106に入力するための信号(後述の第2のタイミング信号)を出力する。なお、タイミング取り出し方法としては、リーディング・エッジ方式(leading-edge method)やコンスタント・フラクション方式(constant-fraction method)を用いる。
【0026】
同時計数回路106は、エネルギー弁別回路104、タイミング取り出し回路105A及びタイミング取り出し回路105Bに接続される。同時計数回路106は、放射線検出器の組1aにより検出されるガンマ線対Gが、同一の電子・陽電子対消滅に伴って発生したガンマ線対Gであるか否かを判定する。この判定は、放射線検出器の組1aの一方の放射線検出器1においてガンマ線G1が検出された検出時刻の前後の一定時間の間に、放射線検出器の組1aの他方の放射線検出器1においてガンマ線G2が検出されたか否かによりなされる。
【0027】
続いて、図1に示されるTOF−PET装置100の動作について説明する。測定対象P中において電子・陽電子対消滅に伴って発生するガンマ線対Gのガンマ線G1,G2は、ガンマ線対Gの進行方向に配置されている放射線検出器の組1aにより検出される。放射線検出器の組1aのそれぞれの放射線検出器1から出力される検出信号は、放射線検出器の組1aに接続されているプリアンプ102a,102bにより増幅された後に、サムアンプ103A1,103A2により論理和演算がなされ、この演算結果が、エネルギー弁別回路104に出力される。
【0028】
放射線検出器の組1aの一方の放射線検出器1から出力される検出信号は、この放射線検出器1に接続されているプリアンプ102aによって増幅された後に、このプリアンプ102aに接続されているサムアンプ103B1によって論理和演算がなされ、この演算結果がタイミング取り出し回路105Aに出力される。放射線検出器の組1aの他方の放射線検出器1から出力される検出信号は、この放射線検出器1に接続されているプリアンプ102bによって増幅された後に、このプリアンプ102bに接続されているサムアンプ103B2によって論理和演算がなされ、この演算結果がタイミング取り出し回路105Bに出力される。
【0029】
エネルギー弁別回路104は、サムアンプ103A1,103A2から入力される信号が、閾値SH以上のエネルギーを有するガンマ線G1,G2による信号であるか否かを判定し、判定結果を同時計数回路106に出力する。
【0030】
タイミング取り出し回路105A,105Bのそれぞれは、サムアンプ103B1,103B2のそれぞれから入力される信号に基づいて、第1のタイミング信号及び第2のタイミング信号をそれぞれ生成し、この第1及び第2のタイミング信号を同時計数回路106に出力する。同時計数回路106は、検出された信号が電子・陽電子対消滅に伴って発生するガンマ線対Gによるものであるか否かを、第1のタイミング信号及び第2のタイミング信号に基づいて判定する。エネルギー弁別回路104により、閾値SH以上のエネルギーレベルを有すると判定された信号のうち、電子・陽電子対消滅に伴って発生するガンマ線対Gによるものであると同時計数回路106により判定されたものを真のデータとして採用する。
【0031】
次に、本実施形態に係る放射線検出器1について、図2図4を用いて詳細に説明する。図2図4に示されるように、本実施形態に係る放射線検出器1は、シンチレータアレイ10と、光学結合部15a,15bと、光検出器アレイ20と、光検出器アレイ30と、を有する。
【0032】
シンチレータアレイ10は、全体として直方体状の外形を有する。シンチレータアレイ10は、入射面10aと、裏面10bと、側面10cと、複数のシンチレータセル11と、反射領域13,14とを有する。反射領域13,14は、シンチレータアレイ10の反射領域の第1及び第2の部分である。入射面10aはガンマ線G1,G2が入射される面である。裏面10bは入射面10aの反対側にある面である。側面10cは入射面10a及び裏面10bの間に延在する面である。
【0033】
シンチレータセル11は、入射面10a上に二次元的に複数配列される。また、シンチレータセル11は、細長い直方体状の形状を有する。シンチレータセル11は、発光領域11a,11bと、反射領域12とを有する。
【0034】
発光領域11aは、端面11gと、端面11gの反対側にある先端部11cとを有している。発光領域11aは、端面11gから先端部11cに向けて先細る形状、例えばくさび形の形状を有している。端面11gは、光学結合部15aを介して光検出器31に光学的に結合される。
【0035】
発光領域11bは、端面11eと、端面11eの反対側にある先端部11dとを有している。発光領域11bは、端面11eから先端部11dに向けて先細る形状、例えばくさび形の形状を有している。端面11eは、光学結合部15bを介して光検出器21に光学的に結合される。
【0036】
発光領域11a,11bは、入射したガンマ線G1,G2を吸収し、シンチレーション光を発生する。この発光領域11a,11bは、例えば、BiGe12(BGO)の結晶、CeがドープされたLuSiO(LSO)の結晶、Lu2(1−X)2XSiO(LYSO)の結晶、GdSiO(GSO)の結晶、PrがドープされたLuAl12(LuAG)の結晶、CeがドープされたLaBr(LaBr)の結晶、CeがドープされたLaCl(LaCl)の結晶、CeがドープされたLu0.70.3AlO(LuYAP)の結晶のいずれかを含む。
【0037】
反射領域12(第1の反射領域)は、入射面10a及び裏面10bに対して傾斜している面SPに沿って、入射面10a側と裏面10b側との間に延在している。反射領域12は、シンチレータセル11を発光領域11aと発光領域11bとに分離している。また反射領域12は、例えば、テフロン・テープ(テフロン(Teflon)は登録商標)、硫酸バリウム(barium
sulfate)、酸化アルミ(alminum oxide)、酸化チタン(titanium oxide)、ESR(Enhanced Specular Reflector)フィルム、及びポリエステルフィルム(polyester film)のいずれかを含むことができる。
【0038】
光検出器アレイ20は、発光領域11b内で発生するシンチレーション光を検出する。光検出器アレイ20は、シンチレータアレイ10の入射面10aに光学結合部15bを介して光学的に結合されている。光学結合部15bには、例えばシリコーングリス(silicone grease)、シリコーン系RTVゴム、及び高透過接着シートのいずれかを用いることができる。光検出器アレイ20は、複数の光検出器21を有している。複数の光検出器21は、入射面10a上に二次元的に配列される。複数の光検出器21は、ガンマ線G1,G2を透過可能な固体光検出器であり、例えばMPPC(Multi Pixel Photon Counter、登録商標)といった半導体光検出器である。なお、MPPCは、複数のガイガーモードのアバランシェ・フォトダイオード(ADP)(Geiger-mode avalanche photodiodes)のピクセルを含むフォトンカウンティングデバイス(photo-counting device)である。
【0039】
光検出器アレイ30は、発光領域11a内で発生するシンチレーション光を検出する。光検出器アレイ30は、シンチレータアレイ10の裏面10bに光学結合部15aを介して光学的に結合される。光学結合部15aには、上述した光学結合部15bと同様の素材を有することができる。光検出器アレイ30は、複数の光検出器31を有している。複数の光検出器31は、裏面10b上に二次元的に配列される。複数の光検出器31は、上述した光検出器21と同様に、例えばMPPCといった半導体光検出器である。
【0040】
図3に示されるように、反射領域13,14は、シンチレータセル11内で発生したシンチレーション光を、このシンチレータセル11と光学的に結合されている光検出器21又は光検出器31に集め、且つシンチレーション光を、シンチレータセル11の外部へ漏れ出ることを防ぐ。反射領域13は、側面10cに設けられており、側面10cの略全域を覆っている。反射領域14は、入射面10a及び裏面10bの間に延在している。反射領域14は、ガンマ線G1,G2の入射方向から見て格子状に形成されており、複数のシンチレータセル11を互いに分離している。また反射領域13,14は、上述した反射領域12と同様の素材を有することができる。
【0041】
次に、図5及び図6を用いてシンチレータの形状と、時間特性及び検出効率との関係について説明する。図5は、図6に示すシンチレータの形状と検出効率及び時間特性との関係を得るために用いた放射線検出器60の構成を示す図である。放射線検出器60は、光検出器61と、角錐台形状のシンチレータ62とを備えている。シンチレータ62は、放射線G1が入射する入射面62aと、入射面62aの反対側にあり入射面62aよりも大きい面積を有する裏面とを有する。光検出器61は、シンチレータ62の裏面上に設けられている。シンチレータ62は、長さがL(放射線G1の入射方向の長さ)であり、入射面62aの一辺がSの角錐台形状を有する。
【0042】
次に、シンチレータの形状と、時間特性及び検出効率との関係を測定する方法について説明する。まず、図5に示される放射線検出器60を二つ準備する。それぞれの放射線検出器60の入射面62aが互いに対向するように、22Naポジトロン線源を挟んで配置する。この配置条件を維持しつつ、各形状のシンチレータを両方同時に、同じ形状のシンチレータに交換して、それぞれの形状のシンチレータにおける時間特性及び検出効率を測定する。
【0043】
時間特性の測定方法を詳細に説明する。一方の放射線検出器60の出力信号をスタート信号に設定し、他方の放射線検出器60の出力信号をストップ信号に設定する。スタート信号がストップ信号よりも常に先に出力されるようにするために、ストップ信号を一定時間遅らせる。このような状態においてポジトロン線源で発生する一対の消滅ガンマ線を用いて、両方の放射線検出器60から出力される出力信号の時間差を測定する。このような方法により、一方の放射線検出器を基準としたときの、一対の放射線検出器の間における時間的揺らぎが測定できる。この時間的揺らぎが時間分解能である。
【0044】
検出効率の測定方法を詳細に説明する。上述したように形状の異なるシンチレータを交換しつつ、同じ時間の間で測定したときの総カウント値を測定することで、相対的な検出効率を測定することができる。この場合、ポジトロン線源からシンチレータ62の放射線の入射面62aまでの距離は一定に設定される。
【0045】
図6は、上述した時間特性及び検出効率の測定を、異なる形状及び寸法を有するシンチレータ62ごとに実施することにより得られた検出効率と時間特性との関係を示す図である。図6の曲線C1は、直方体状の形状を有するシンチレータ(以下、直方体シンチレータという。)の場合に得られた結果であって、直方体シンチレータの長さL(放射線の入射方向の長さ)を変化させた場合の(S=20mm、L=25mmの形状のシンチレータの検出効率を100とした)相対的検出効率と時間特性との関係を示す。図6の曲線C2は、図5に示すシンチレータ62において、シンチレータ62の長さLを一定にし、入射面62aの一辺Sの長さを変化させた場合の、検出効率と時間特性との関係を示す。図6の曲線C3は、図5に示すシンチレータ62において、シンチレータ62の長さLを曲線C2とは異なる一定の長さに設定し、入射面62aの一辺Sの長さを変化させた場合の、検出効率と時間特性との関係を示す。
【0046】
さらに、曲線C1のポイントC1aは、S=20mm、L=25mmの形状を有する直方体シンチレータの特性を示し、曲線C1のポイントC1bは、S=20mm、L=20mmの形状を有する直方体シンチレータの特性を示し、曲線C1のポイントC1cは、S=20mm、L=15mmの形状を有する直方体シンチレータの特性を示す。曲線C1のポイントC1dは、S=20mm、L=10mmの形状を有する直方体シンチレータの特性を示し、曲線C1のポイントC1eは、S=20mm、L=5mmの形状を有する直方体シンチレータの特性を示す。曲線C2のポイントC2aは、S=20mm、L=25mmの形状を有するシンチレータ62の特性を示し、曲線C2のポイントC2bは、S=15mm、L=25mmの形状を有するシンチレータ62の特性を示し、曲線C2のポイントC2cは、S=10mm、L=25mmの形状を有するシンチレータ62の特性を示す。曲線C3のポイントC3aは、S=20mm、L=20mmの形状を有するシンチレータ62の特性を示し、曲線C3のポイントC3bは、S=15mm、L=20mmの形状を有するシンチレータ62の特性を示し、曲線C3のポイントC3cは、S=10mm、L=20mの形状を有するシンチレータ62の特性を示し、曲線C3のポイントC3dは、S=5mm、L=20mmの形状を有するシンチレータ62の特性を示す。
【0047】
曲線C1を確認すると、直方体シンチレータにおいて、長さLを短くした場合には、シンチレーション光の発生地点と光検出器61までの光路が短くなるために時間特性が向上することがわかる。その一方で、直方体シンチレータの体積が減少するために検出効率が低下することがわかる。一方、曲線C2及び曲線C3を確認すると、角錐台形状のシンチレータ62において、入射面62aの辺Sを短くすると、シンチレータ62の体積が減少するために検出効率が低下するが、時間特性は向上していることがわかる。
【0048】
曲線C1と曲線C2とを比較すると、時間特性を向上させた場合に、検出効率が低下する幅は、曲線C1よりも曲線C2が小さいことがわかる。曲線C1と曲線C3とを比較した場合でも、時間特性を向上させた場合に、検出効率が低下する幅は、曲線C1よりも曲線C2が小さいことがわかる。従って、時間特性を向上させる手段として、シンチレータ形状をシンチレータ62のように角錐台形状にすることは有効な手段のひとつであることがわかる。
【0049】
更に、シンチレータの形状と、シンチレータの時間特性との関係をシミュレーションによって詳細に確認した。図7の(a)〜(e)は、シンチレーション光が端面に到達した時間とその光子数を示すグラフである。図7の(a)は、例えば直方体の形状を有するシンチレータの場合の結果を示す。図7の(b)〜(e)は、例えば、シンチレータ62のように角錐台の形状を有するシンチレータの場合の結果を示す。図7の(a)〜(e)に示す「上部幅」は、シンチレータの入射面の幅W1であり、「下部幅」は、入射面の反対側にある裏面の幅W2である。幅W1が幅W2より小さい場合、入射面の面積が裏面の面積よりも小さいことを意味する。図中のシンチレータ内の星印の位置で光を全方向に発生したと仮定している。図7の(a)〜(e)を確認すると、入射面の面積が裏面の面積よりも小さいほど、多くの光子が短い時間で端面に到達していることがわかる。従って、時間特性を向上させる手段として、シンチレータ形状をシンチレータ62のように角錐台の形状にすることは有効な手段のひとつであることが、このシミュレーションの結果からもわかる。
【0050】
次に、上述した放射線検出器1の作用・効果について説明する。本実施形態に係る放射線検出器1は、例えば角錐台の形状や、くさび形の形状や、テーパ状の形状を有する複数の発光領域11a,11bを備えている。そのため図5図7を用いて説明したような効果を奏することが可能であるため、時間特性を向上させることができる。さらに、シンチレータセル11は、発光領域11a,11bの両方の体積を合算した実質的な体積を維持することが可能である。そのため、検出効率が低下することを抑制することができる。従って、本実施形態による放射線検出器1は、検出効率が低下することなく、良好な時間特性が実現できる。
【0051】
直方体のシンチレータは、互いに平行な側面の組を複数有している。このような構成において、シンチレーション光が互いに平行な側面の間において反射するような条件となった場合には、同じ反射角度での反射が繰り返される。そのため、光検出器までの到達経路が長くなり、経路の違いにより到達時間のばらつきが大きくなる。特に、光検出器の入射面においてシンチレーション光が反射するような条件の場合には、シンチレータ内での吸収や反射ロスによってシンチレーション光が減衰するまで、この条件下におけるシンチレータ内での反射が繰り返される。本実施形態による放射線検出器1が有する発光領域11a,11bは、端面11e,11gから先端11c,11dに向けて先細る形状を有している。すなわち、発光領域11a,11bを構成する側面の1つが光検出器21,31側に傾いた斜面となるように構成されている。このような構成により、直方体のシンチレータにおいて生じ得る連続的な反射条件が崩される。また、光検出器21,31の入射面における入射角度がより深くなる。すなわち、シンチレーション光の入射角度が入射面に対して垂直に近い角度にシフトする。これにより、光検出器11a,11bの入射面においてシンチレーション光が反射される割合が減って、より到達経路が短くなり、到達時間のばらつきが低減されるので、放射線検出器1は、良好な時間特性を有することができる。更に、シンチレータセル11がTOF−PET装置100の検出器リング(図1に示す円Cに対応)の半径方向に二段階に構成されていると考えることができるので、DOI情報(DOI:Depth Of Interaction)が収集可能となる。更に、シンチレータセル11がTOF−PET装置100の検出器リング(図1に示す円Cに対応)の円周方向にずれて二つ存在しているものと考えることができるため、サンプリング密度を向上させることができる。
【0052】
また、シンチレータアレイ10の側面10cには、反射領域13が設けられているので、シンチレータセル11において発生したシンチレーション光を効率的に光検出器21,31に集めることが可能となる。従って、放射線検出器1は、良好なエネルギー検出特性(エネルギー分解能)を有することができる。さらに、シンチレータアレイ10には、反射領域14が設けられているので、シンチレーション光が発生したシンチレータセル11に隣接する別のシンチレータセル11へのシンチレーション光の漏れを防ぐことが可能となる。従って、放射線検出器1は、良好な位置検出特性を有することができる。
【0053】
放射線検出器1は、上述した実施形態及び実施例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。図8の(a)、図8の(b)は、上述した実施形態の変形例を示す図である。図8の(a)及び図8の(b)に示されるように、シンチレータセル41の発光領域41aは、光学結合部15aにより光検出器31を結合した面の反対側にある先端に、端面42を形成した形状であっても良い。この端面42には、反射領域43が設けられている。同様に、発光領域41bは、光学結合部15bにより光検出器21を結合した面の反対側にある先端に、端面44を形成した形状であっても良い。この端面44には、反射領域45が設けられている。このようにすることで、発光領域41a及び発光領域41bの形状加工が容易にできる。
【0054】
また、図9の(a)及び図9の(b)は、上述した実施形態の他の変形例を示す図である。図9の(a)及び図9の(b)に示されるように、シンチレータセル51は、反射領域52と反射領域53とにより、3つの発光領域に分離されていてもよい。この場合、シンチレータセル51は、発光領域51aと、発光領域51bと、発光領域51cとに分離される。そして、発光領域51aと、発光領域51bとは、光学結合部15aにより光検出器31に光学的に結合される。また、発光領域51cは、光学結合部15bにより光検出器21に光学的に結合される。
【0055】
(実施例)
MPPCに直方体のLYSOシンチレータを結合した検出器を作製し、さらにMPPCにくさび形のLYSOシンチレータを結合した検出器を作製した。なお、反射材には、テフロン・テープ(テフロン(Teflon)は登録商標)を用いた。そして、BaF2シンチレータに光電子増倍管を結合した基準検出器を用いて、それぞれの検出器が有する時間分解能を測定した。その結果、直方体のLYSOシンチレータを備える検出器の時間分解能は、324ピコ秒であった。一方、くさび形のLYSOシンチレータを備える検出器の時間分解能は、279ピコ秒であった。従って、シンチレータをくさび形にすることにより、時間分解能を45ピコ秒改善することができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
検出効率が低下することなく、良好な時間特性が実現される放射線検出器である。
【符号の説明】
【0057】
1,60…放射線検出器、1a…組、10…シンチレータアレイ、10a…入射面、10b…裏面、10c…側面、11,41,51…シンチレータセル、11a,11b,41a,41b,51a,51b,51c…発光領域、11c,11d…先端部、11e,11g,42,44…端面、12,13,14,43,45,52,53…反射領域、15a,15b…光学結合部、20,30…光検出器アレイ、21,31,61…光検出器、62…シンチレータ、62a…入射面、100…PET装置、101…放射線検出器アレイ、102a,102b…プリアンプ、103A1,103A2,103B1,103B2…サムアンプ、104…エネルギー弁別回路、105A,105B…タイミング取り出し回路、106…同時計数回路、G…ガンマ線対、G1,G2…ガンマ線、P…測定対象、C1〜C4…曲線、SH…閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9