(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜
図9を参照して
図3に示す電気レバーシステム40について説明する。電気レバーシステム40は、アクチュエータ31(被操作体)を備える機械に設けられる。電気レバーシステム40は、例えば
図1に示す建設機械1に設けられる。
【0011】
建設機械1は、建設作業を行う機械である。建設機械1は、例えばクレーンであり、例えば移動式である。建設機械1は、下部走行体3と、上部旋回体5と、アタッチメント10と、ワイヤー類21〜25と、操作システム30(
図2参照)と、を備える。
【0012】
下部走行体3は、建設機械1を走行させる部分であり、例えばクローラ式、また例えばホイール式である。
【0013】
上部旋回体5は、下部走行体3に対して旋回可能に、下部走行体3に搭載される。上部旋回体5には、運転室5aが設けられる。
【0014】
アタッチメント10は、上部旋回体5に接続される(取り付けられる)。アタッチメント10は、例えば、ブーム11と、ストラット13と、ジブ15と、を備える。なお、アタッチメント10は、ストラット13及びジブ15を備えなくてもよい。
【0015】
ブーム11は、上部旋回体5に対して起伏(伏仰)可能に、上部旋回体5に接続される。ブーム11は、例えばラチス構造(格子状構造)であり、また例えば多段伸縮構造(図示なし)でもよい。
【0016】
ストラット13は、ブーム11先端部に取り付けられ、ブーム11先端部からブーム11背面側に突出する。
【0017】
ジブ15は、ブーム11先端部に接続され、ブーム11に対して起伏可能である。ジブ15は、例えばラチス構造である。
【0018】
ワイヤー類21〜25は、上部旋回体5等に設けられたウインチ(図示なし)により、巻込み及び繰出しされる。ワイヤー類21〜25には、ブーム起伏操作用ワイヤー21と、ジブ起伏操作用ワイヤー23と、吊荷操作用ワイヤー25と、がある。ブーム起伏操作用ワイヤー21は、上部旋回体5に対してブーム11を起伏させる。ジブ起伏操作用ワイヤー23は、ブーム11に対してジブ15を起伏させる。吊荷操作用ワイヤー25は、フック装置27の巻上げ及び巻下げを行う。吊荷操作用ワイヤー25は、ジブ15の先端部からフック装置27を吊り下げる。なお、建設機械1がジブ15を備えない場合は、吊荷操作用ワイヤー25は、ブーム11先端部からフック装置27装置を吊り下げる。
【0019】
フック装置27には、作業対象物(吊荷)が吊り下げられる。
【0020】
操作システム30(
図2参照)は、建設機械1のオペレータの操作に応じて、建設機械1を動作させるためのシステム(装置)である。
図2に示すように、操作システム30は、アクチュエータ回路31〜39と、電気レバーシステム40と、を備える。アクチュエータ回路31〜39は、例えば、アクチュエータ31と、減速機32と、油圧ポンプ35と、動力源33と、制御弁37と、電磁比例弁39と、を備える。
【0021】
アクチュエータ31(被操作体)は、建設機械1(
図1参照)を動作させる装置(機械)である。アクチュエータ31は、例えば油圧式であり、また例えば電気式(電動機)である。アクチュエータ31は、例えば回転駆動するモータであり、また例えば直線駆動する伸縮シリンダやリニアモータなどである。アクチュエータ31は、例えば、次の[例a]〜[例c]などである。[例a]
図1に示す下部走行体3の走行用のモータ。このモータは、下部走行体3の左右に1機ずつ設けられる。[例b]上部旋回体5の旋回用のモータ。[例c]ウインチを駆動して、ワイヤー類21〜25の巻込み及び繰出しを行うモータ。このモータは例えば以下の[例c1]〜[例c3]用である。[例c1]ブーム11の起伏用。具体的には、ブーム起伏操作用ワイヤー21の巻出し及び繰出し用。[例c2]ジブ15の起伏用。具体的には、ジブ起伏操作用ワイヤー23の巻出し及び繰出し用。[例c3]フック装置27の巻上げ及び巻下げ用。具体的には、吊荷操作用ワイヤー25の巻出し及び繰出し用。
【0022】
このアクチュエータ31(
図2参照)は、建設機械1に複数設けられる。複数のアクチュエータ31は、例えば単独で操作され、また例えば複合操作される(同時または連続して操作される)。なお、
図2では、1つの油圧ポンプ35に接続された1つのアクチュエータ31のみを示しているが、1つの油圧ポンプ35に他のアクチュエータ31(図示なし)が接続されてもよい。他のアクチュエータ31(図示なし)と油圧ポンプ35との接続は、アクチュエータ31(
図2に示すもの)と油圧ポンプ35との接続に対し、並列でもよく、直列でもよく、並列と直列とを組み合わせたものでもよい。以下、アクチュエータ31が上部旋回体5の旋回用の油圧モータである場合について説明する。
【0023】
減速機32は、アクチュエータ31と上部旋回体5との間に設けられる。減速機32は、アクチュエータ31の回転速度を減速して、アクチュエータ31の駆動力を上部旋回体5に伝える。
【0024】
動力源33は、アクチュエータ31の動力源であり、油圧ポンプ35の動力源である。動力源33は、例えばエンジン(例えば内燃機関)である。また例えば、動力源33は、バッテリ及び電動機を組み合わせたものでもよい。また例えば、動力源33は、ハイブリッド式(バッテリ及び電動機とエンジンとを併せ持つもの)でもよい。
【0025】
油圧ポンプ35は、アクチュエータ31に油(作動油)を供給する。油圧ポンプ35は、動力源33に駆動される。
【0026】
制御弁37は、アクチュエータ31の動作を制御する弁(アクチュエータ制御弁)である。制御弁37は、アクチュエータ31の、出力トルク、動作速度、又は動作方向などを制御する(変える)。例えば、制御弁37は、油圧モータであるアクチュエータ31の回転速度および回転方向を制御する。制御弁37は、油圧ポンプ35とアクチュエータ31との間に設けられ、油圧ポンプ35からアクチュエータ31に流れる油の流量や方向を制御する。制御弁37は、例えば切換位置を3つ備える3位置方向切換弁である。制御弁37の切換位置が切り換わることで、油圧ポンプ35とアクチュエータ31との間の油路の経路が切り換わる。
【0027】
この制御弁37は、電気レバーシステム40に接続される。制御弁37は、演算装置70(後述)が出力する操作信号70sに基づいて制御される。制御弁37は、例えばパイロット油圧により制御される(電気信号により制御されてもよい)。
【0028】
電磁比例弁39は、電気信号を油圧(パイロット油圧)に変換する。電磁比例弁39は、演算装置70と制御弁37との間に設けられる。電磁比例弁39は、電気信号である操作信号70s(後述)を、制御弁37に入力されるパイロット油圧に変換する。
【0029】
電気レバーシステム40は、
図1に示す建設機械1を操作するための手段(システム、装置)であり、
図2に示すアクチュエータ回路31〜39を(アクチュエータ31を、制御弁37を)操作するための手段である。電気レバーシステム40は、建設機械1(
図1参照)のオペレータの操作の意思をアクチュエータ31に伝達するための手段である。
図3に示すように、電気レバーシステム40は、レバー装置50と、センサ60と、演算装置70と、を備える。
【0030】
レバー装置50は、運転室5a(
図1参照)内に配置される。レバー装置50は、レバー51と、支持体53と、を備える。
【0031】
このレバー装置50は、電気式である。以下、レバー装置50が電気式である点について説明する。
図1に示す建設機械1の操作手段には高い信頼性が求められる。その理由は、建設機械1の操作手段が故障した場合、
図3に示すアクチュエータ31を用いた作業が「作業の異常」に繋がるおそれがあるからである。建設機械1がクレーンの場合、この「作業の異常」は、例えば、吊り荷の落下や振動、及び、建設機械1の転倒などの危険な状態である。従来の建設機械の多くには、高い信頼性を実現できる油圧パイロット方式の操作手段が搭載されている。しかし、油圧パイロット方式の操作手段で精密な操作を実現するには、多大なコストがかかる。多大なコストがかかる理由は、例えば、操作手段の部品の製造精度を十分高くする必要があるから、また、操作手段の個体差の調整をする必要があるからである。一方、電気方式の操作手段は、精密な操作を低コスト(油圧パイロット方式に比べて低コスト)で実現できる。しかし、電気方式の操作手段は、油圧パイロット方式の操作手段に比べ、信頼性に劣る場合がある。信頼性に劣る理由は、上述したように例えば、操作手段に接続された電線が断線するおそれや、操作手段を構成する金属製電子部品の酸化(錆)による劣化などが生じるおそれがあるからである。一方で、この電気レバーシステム40では、後述するように高い信頼性を実現できる。
【0032】
レバー51は、建設機械1(
図1参照)のオペレータに操作される操作レバーである。レバー51は、回転(傾転)可能に構成される。レバー51の操作の自由度の数は、例えば1である(レバー51の回転軸の数が1である)。レバー51の操作可能な方向は、例えば、運転室5a(
図1参照)の前後方向(又は左右方向)である。レバー51の操作の自由度の数は、2以上でもよく(レバー51の回転軸の数が2以上でもよく)、この場合、レバー51は、2以上のアクチュエータ31への指示が可能である。レバー51の回転軸の数が2の場合、レバー51の操作可能な方向は、例えば、運転室5a(
図1参照)の前後方向及び左右方向(十字型)である。以下では、レバー51の操作の自由度の数が1の場合について説明する。
【0033】
支持体53は、レバー51に固定される。支持体53は、レバー51の回転に伴って回転する(傾く)。支持体53は、バネ及びシリンダ(プッシュロッド)により(
図1に示す運転室5aに対して)支持される。
図3に示すように、レバー51の回転に伴って支持体53が回動すると、支持体53は、バネ及びシリンダを押し下げる。
【0034】
センサ60は、レバー51の中立位置Pn(後述)からのレバー操作量を検出する、検出器である。レバー操作量とは、中立位置Pnからのレバー51の移動量(回転量、傾転量、角度)である。センサ60は、例えば非接触式である。センサ60が非接触式の場合は、機械的磨耗による接点の劣化の問題を回避できる。センサ60は、検出したレバー操作量に対応する出力(電気信号)を演算装置70に出力する。レバー操作量に対応する出力とは、レバー操作量に対応する電圧や周波数などを持つ信号である。以下では、センサ60が、レバー操作量に対応する電圧信号を出力する場合について説明する。センサ60は、第1センサ61と、第1センサとは別に設けられる第2センサ62と、を備える。
【0035】
演算装置70は、信号の演算、及び信号の入出力を行う。演算装置70は、センサ60の出力Oの異常があるか否かを判断(検出)する。「センサ60の出力Oの異常」とは、演算装置70に入力される信号の異常である。「センサ60の出力Oの異常」には、センサ60の異常と、センサ60と演算装置70とを接続する信号線の異常と、が含まれる。演算装置70は、出力O1及び出力O2(後述)に基づいて操作信号70sを出力する。
図2に示すように、操作信号70sは、アクチュエータ31を操作するための信号であり、制御弁37を操作するための信号である。演算装置70は、例えば、操作信号70sを電磁比例弁39に出力する。
【0036】
(
図4及び
図5のグラフ)
以下、
図4及び
図5に示すグラフの、操作位置P等、出力O等、実際のレバー操作量Aa、検出されたレバー操作量A1、及びA2(
図5参照)について説明する。
【0037】
[操作位置P等]
図4に示すように、レバー51(
図3参照。以下、レバー51について同様)の操作位置を操作位置Pとする。操作されていない状態のレバー51の操作位置Pを中立位置Pnとする。中立位置Pnに対する一方側(
図4のグラフ横軸の右側)の操作位置Pを「プラス側」とする。中立位置Pnに対する他方側(
図4のグラフ横軸の左側)の操作位置Pを「マイナス側」とする。最もプラス側の操作位置P(レバー51が突き当たる位置)を、最大操作位置Pmaxとする。最もマイナス側の操作位置Pを、最小操作位置Pminとする。
【0038】
[出力O等]
センサ60(
図3参照。以下、センサ60、第1センサ61、及び第2センサ62について同様)の出力を出力Oとする。第1センサ61の出力を出力O1とする。第2センサの出力を出力O2とする。第1センサ61及び第2センサ62は、理想的には
図4に示すように検出結果を出力する(詳細は後述)。操作位置Pが中立位置Pnのときの(理想的な)出力Oを中立出力Onとする。操作位置Pがある操作位置Paのときの、出力O1を出力O1(Pa)とし、このときの出力O2を出力O2(Pa)とする。
【0039】
[出力O1及び出力O2の設定]出力O1及び出力O2は、次のように設定される。出力O1及び出力O2はそれぞれ、操作位置Pに対して比例する。出力O1と出力O2とは、言わば互いに逆位相である。
図4に示すグラフにおいて、出力O1の特性(直線)を、O=Onの直線を軸として反転させると、出力O2の特性(直線)と一致する。さらに詳しくは、操作位置Pに対する出力O1の傾きと、操作位置Pに対する出力O2の傾きとは、大きさが同一であるとともに正負の符号が互いに逆である。
【0040】
[最大出力Omax及び最小出力Omin]操作位置Pが最大操作位置Pmaxや最小操作位置Pminのときの、出力O1及び出力O2の最大値を最大出力Omaxとし、同最小値を最小出力Ominとする。最大出力Omaxは、センサ60の電源電圧Vsよりも小さく設定される。最小出力Ominはグランド電圧GND(基準電圧)よりも大きく設定される。
【0041】
[平均出力Oa及び許容範囲Ob]出力O1と出力O2との平均値を平均出力Oaとする。平均出力Oaの許容範囲を許容範囲Obとする。
【0042】
[実際のレバー操作量Aa]
操作位置Pがある操作位置Paのときの、実際のレバー操作量をレバー操作量Aaとする。実際のレバー操作量Aaは、操作位置Paと中立位置Pnとの差の大きさである(Aa=|Pa−Pn|)。
【0043】
[検出されたレバー操作量A1,A2]
第1センサ61が検出したレバー操作量をレバー操作量A1とする。レバー操作量A1は、出力O1(Pa)に基づいて定まる(検出される)。例えば、レバー操作量A1は、出力O1(Pa)と中立出力Onとの差の大きさに基づいて定まる。第2センサ62が検出したレバー操作量をレバー操作量A2とする。レバー操作量A2は、出力O2(Pa)に基づいて定まる。例えば、レバー操作量A2は、出力O2(Pa)と中立出力Onとの差の大きさに基づいて定まる。理想的には、実際のレバー操作量Aaと、レバー操作量A1と、レバー操作量A2と、は一致する。しかし、現実的にはこれらは必ずしも一致しない。さらに詳しくは、
図5に示すように、実際の出力O1は、理想的な出力O1iと相違する(ズレが生じる)場合がある。また、実際の出力O2は、理想的な出力O2iと相違する場合がある。その結果、実際のレバー操作量Aaと、レバー操作量A1と、レバー操作量A2と、に相違が生じる場合がある。この相違が生じる理由は、第1センサ61と第2センサ62とには、物理的(機械的、電気的)相違があるからである。
【0044】
(動作)
以下、
図3に示す電気レバーシステム40の動作(主に演算装置70の動作)を説明する。電気レバーシステム40の動作には、出力Oの異常の判断と、正常時動作と、異常時動作と、がある。なお、以下では、電気レバーシステム40の構成要素については
図3を参照して説明する。
【0045】
(出力Oの異常の有無の判断)
上述したように、演算装置70は、センサ60の出力Oの異常があるか否かを判断する。出力Oの異常には、「異常a:ズレ量範囲外」と、「異常b:過大」と、「異常c:過小」と、がある。
【0046】
[異常a:ズレ量範囲外]
図5に示すレバー操作量A1とレバー操作量A2とのズレ量が許容範囲外の場合、出力Oは異常であると判断される。この判断は演算装置70が行う(以下の判断についても同様)。上記「ズレ量が許容範囲外の場合」とは、具体的には、出力O1と出力O2との平均値(平均出力Oa)が許容範囲Obの範囲外の場合である(
図9参照)。許容範囲Obは、演算装置70に予め設定される。
【0047】
[異常b:過大]出力Oが所定電圧(過大判定用閾電圧)以上の場合(又は超える場合)、出力Oが過大(異常)であると判断される(
図7及び
図8参照)。出力Oが過大であると判断される条件は、例えば次の[a1]〜[a3]のいずれかである。[a1]出力Oが、センサ60の電源電圧Vsである。[a2]出力Oが、理想的な最大出力Omaxを超える。[a3]出力Oが、理想的な最大出力Omaxと電源電圧Vsとの間の所定電圧以上である。
【0048】
[異常c:過小]出力Oが所定電圧(過小判定用閾電圧)以下の場合(又は未満の場合)、出力Oが過小(異常)であると判断される(
図6参照)。出力Oが過小と判断される条件は、例えば次の[b1]〜[b3]のいずれかである。[b1]出力Oが、グランド電圧GNDである。[b2]出力Oが、理想的な最小出力Omin未満である。[b3]出力Oが、理想的な最小出力Ominとグランド電圧GNDとの間の所定電圧以下である。
【0049】
(出力Oの異常の具体例)
信号が異常であると判断される場合には、例えば、「異常α:地絡または断線」(
図6参照)と、「異常β:天絡」(
図7参照)と、「異常γ:オフセット異常」(
図8参照)と、「異常δ:ゲイン異常」(
図9参照)と、がある。
【0050】
[異常α:地絡または断線]第1センサ61又は第2センサ62に接続される信号線が、グランドと通電する(地絡する)場合、または、断線する場合がある。この場合、
図6に示すように、地絡または断線(以下「地絡等」)した信号線の出力O(
図6では出力O2)は、グランド電圧GNDとなり、上記[異常c:過小]であると判断される。また、演算装置70は、異常な出力Oを出力するセンサ60が、第1センサ61及び第2センサ62のうちどちらであるかを特定する(この場合は第2センサ62が特定される)。なお、異常な出力Oを出力するセンサ60がどちらであるかが特定される点は、出力Oが[異常b:過大]であると判断される場合も同様である。
【0051】
[異常β:天絡]第1センサ61又は第2センサ62に接続される信号線が、電源線と通電する(天絡する)場合がある。この場合、
図7に示すように、天絡した信号線の出力O(
図7では出力O2)は、電源電圧Vsとなり、上記[異常b:過大]であると判断される。
【0052】
[異常γ:オフセット異常]
図8に示すように、実際の出力O1又は出力O2が、理想的な出力O1i(
図5参照)及び出力O2i(
図5参照)に対して、大きい側(
図8における上側)又は小さい側(同図下側)にずれる(オフセットする)場合がある。この場合、次の[γ1]〜[γ3]となる場合がある。[γ1]ある操作位置Pまでレバー51を操作すると、出力Oが最大出力Omaxを超える等により、出力Oが[異常b:過大]と判断される。例えば、最小操作位置Pmin付近までレバー51を操作すると、出力O2が最大出力Omaxを超えることにより、出力O2が[異常b:過大]と判断される。[γ2]ある操作位置Pまでレバー51を操作すると、出力Oが最小出力Omin未満となる(図示なし)等により、出力Oが[異常c:過小]と判断される。[γ3]平均出力Oaが許容範囲Obの範囲外となり、[異常a:ズレ量範囲外]と判断される(
図8では平均出力Oaが許容範囲Obの範囲内である場合を示している)。
【0053】
[異常δ:ゲイン異常]
図9に示すように、実際のレバー操作量Aa(
図5参照)に対する、実際の出力O1又は出力O2のゲイン(変化量、グラフの傾き)が、大きすぎる又は小さすぎる場合がある。この場合、次の[δ1]や[δ2]となる場合がある。[δ1]ゲインが大きすぎる出力Oがある場合に、ある操作位置Pまでレバー51を操作する。すると、出力Oが最大出力Omaxを超える等により出力Oが[異常b:過大]と判断される(図示なし)、または、出力Oが最小出力Omin未満となる等により出力Oが[異常c:過小]と判断される(図示なし)。[δ2]ある操作位置Pまでレバー51を操作すると、平均出力Oaが許容範囲Obの範囲外となり、出力Oが[異常a:ズレ量範囲外]と判断される。
【0054】
(正常時動作)
図3に示すセンサ60の出力Oの異常が検出されない場合(正常時)の演算装置70の動作は次の通りである。演算装置70は、第1センサ61の出力O1および第2センサ62の出力O2のうち、次に述べる「低位側出力」に基づいて操作信号70sを出力する。「低位側出力」とは、第1センサ61および第2センサ62のうち、検出したレバー操作量(レバー操作量A1、レバー操作量A2(
図5参照))が小さい方のセンサ60の出力Oである。低位側出力は、
図5に示す出力O1および出力O2のうち、アクチュエータ31の動作量(例えば速度)が小さい方の出力Oであり、具体的には中立出力Onに近い方の出力Oである。なお、第1センサ61および第2センサ62のうち、検出したレバー操作量(レバー操作量A1、レバー操作量A2)が大きい方のセンサ60の出力Oを、「高位側出力」とする。
【0055】
(異常時動作)
センサ60の出力Oの異常が検出された場合(異常時)の演算装置70の動作は次の通りである。演算装置70は、異常時でもアクチュエータ31が操作可能となるように動作する。具体的には、演算装置70は、低位側出力に基づいて操作信号70sを出力すること(正常時動作)に代えて、次に述べる「正常側出力」に基づいて操作信号70sを出力する。「正常側出力」は、次のように特定(判断)される。演算装置70が、第1センサ61および第2センサ62のうち、一方のセンサ60(例えば第2センサ62)の出力O(例えば出力O2)の異常を検出したとする。この場合、演算装置70は、上記一方のセンサ60(第2センサ62)の出力O(出力O2)を「異常側出力」と判断する。また、演算装置70は、他方のセンサ60(例えば第1センサ61)の出力O(出力O1)を「正常側出力」と判断する。
【0056】
次に、異常の検出直前に異常側出力が高位側出力であった場合(異常側出力=高位側出力の場合)と、異常の検出直前に異常側出力が低位側出力であった場合と(異常側出力=低位側出力の場合)、について説明する。なお、異常の検出直前の、レバー操作量(レバー操作量A1およびレバー操作量A2)は、演算装置70に保持される。
【0057】
[異常側出力=高位側出力の場合]
異常の検出直前に異常側出力が高位側出力であった場合、演算装置70は、低位側出力を正常側出力と判断する。そして、演算装置70は、この正常側出力(=低位側出力)に基づいて操作信号70sを出力する。その結果、演算装置70が出力する操作信号70sは、異常の検出前後で同一である。
【0058】
[異常側出力=低位側出力の場合]
異常の検出直前に異常側出力が低位側出力であった場合、演算装置70は、アクチュエータ31の動作量(例えば速度)の急増を防ぐように動作する。具体的には演算装置70は次のように動作する。上述したように、異常の検出時には、演算装置70は、「正常側出力に基づく操作信号70sの出力」を開始する。この「正常側出力に基づく操作信号70sの出力」が開始される時は、正常側出力(例えば出力O1)に対応するレバー操作量(例えばレバー操作量A1)が、異常の検出直前の低位側出力(例えば出力O2)に対応するレバー操作量(例えばレバー操作量A2)以下になった時以後(例えば同時)である。
【0059】
なお、出力Oに異常があることは検出されているものの、出力O1と出力O2のうちどちらに異常があるかが特定されていない場合(場合A)がある。場合Aのときは、演算装置70は、低位側出力に基づいて操作信号70sを出力する。場合Aとなるのは、上記[異常a:ズレ量範囲外]のみ検出されている場合である。具体的には[異常γ:オフセット異常]や[異常δ:ゲイン異常]のときに、場合Aになりうる。
【0060】
(効果1)
次に、
図3に示す電気レバーシステム40による効果を説明する。電気レバーシステム40は、アクチュエータ31(被操作体)を操作するためのレバー51と、レバー51の中立位置Pn(
図4参照)からのレバー操作量Aa(
図4参照)を検出するセンサ60と、センサ60の出力Oに基づいてアクチュエータ31を操作するための操作信号70sを出力する演算装置70と、を備える。センサ60は、第1センサ61と、第1センサ61とは別に設けられる第2センサ62と、を備える。
[構成1]演算装置70は、第1センサ61および第2センサ62のうち検出したレバー操作量(レバー操作量A1およびレバー操作量A2(
図5参照))が小さい方のセンサ60の出力である低位側出力に基づいて操作信号70sを出力する。
【0061】
上記[構成1]では、演算装置70は、低位側出力に基づいて操作信号70sを出力する。その結果、アクチュエータ31は、レバー操作量A1およびレバー操作量A2のうち小さい方のレバー操作量(A1又はA2)に基づく動作量(例えば速度)で動作する。よって、2つのセンサ60によりレバー操作量を検出する構成であっても、アクチュエータ31を安全に操作できる。
【0062】
(効果2)
演算装置70は、第1センサ61および第2センサ62のうち一方のセンサ60の出力Oの異常を検出した場合、他方のセンサ60の出力Oを正常側出力と判断する。また、演算装置70は、低位側出力に基づいて操作信号70sを出力することに代えて、正常側出力に基づいて操作信号70sを出力する。
【0063】
この構成では、一方のセンサ60の出力Oに異常があっても、他方のセンサ60の出力Oに基づいてアクチュエータ31を操作できる。
【0064】
(効果3)
正常側出力に基づく操作信号70sの出力が開始される時は、正常側出力に対応するレバー操作量(例えばレバー操作量A1(
図5参照))が、異常の検出直前の低位側出力に対応するレバー操作量(例えばレバー操作量A2(
図5参照))以下になった時以後である。
【0065】
この構成では、異常が検出された瞬間に、出力O1および出力O2のうちレバー操作量が大きい方の出力Oに基づいてアクチュエータ31が動作する(例えば速度が急増する)ことを防ぐことができる。その結果、アクチュエータ31をより安全に操作できる。