特許第5930997号(P5930997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930997
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 17/00 20060101AFI20160526BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   F24D17/00 H
   F24H1/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-71121(P2013-71121)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194317(P2014-194317A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 広通
(72)【発明者】
【氏名】高木 純一
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−060839(JP,A)
【文献】 特開平05−034002(JP,A)
【文献】 特開2007−255745(JP,A)
【文献】 特開2005−016891(JP,A)
【文献】 特開昭61−248972(JP,A)
【文献】 特開昭58−205027(JP,A)
【文献】 特開平04−184016(JP,A)
【文献】 特開2002−286293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 1/44
F24D 1/00 − 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンク内の熱媒体を加熱する加熱装置と、
複数の熱交換器と、
前記貯留タンクを前記各熱交換器の1次側に並列して接続する第1の流路と、
液体の供給源を前記各熱交換器の2次側に並列して接続し、前記各熱交換器で前記熱媒
体と前記液体との熱交換を可能とする第2の流路と、
前記熱交換器で熱交換後の前記液体が流通する配管であって、合流した後に予め定められた先に供給する第3の流路と、
前記熱交換器毎の第1の流路に設けられた電動ポンプと、
前記熱交換器毎の第2の流路に設けられ、各熱交換器への液体の供給又は停止を行うことが可能な流量調整弁と、
給湯開始時に前記複数の熱交換器のうち一の熱交換器に液体を供給するように前記流量調整弁を制御し、液体の需要に応じて他の熱交換器に対しても液体を供給するよう前記流量調整弁を制御し、液体の需要がなくなった後の次の給湯開始時には前記一の熱交換器以外の熱交換器に液体を供給するように前記流量調整弁を制御する切替部と、
を備えていることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
前記切替部は、前記熱交換器での熱交換を開始する又は終了する際には、当該熱交換器
に対応する前記流量調整弁を全閉又は全開の状態から予め定められた時間の間だけ全開と
全閉との間の中間位置にして後に全開又は全閉に切り替える、
請求項1に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2006−162166号公報(特許文献1)がある。この公報には、「水道水を貯湯タンク1の温水により間接的に加熱する給湯用熱交換器3を設け、この給湯用熱交換器3により加熱した水道水を混合栓4に供給する」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−162166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、貯湯タンク内の温水を熱媒体として熱交換により水道水を加熱し、熱媒体となる温水の流量を制御することにより、水道水の温度を目的の温度にする技術について記載されている。しかし、特許文献1に記載のように、熱交換により水道水を加熱するための熱交換器がひとつだけであると、目的の温度にまで加熱できる水道水の量には限界があり、大量の給湯を行うことができない。
そこで、大量の給湯を可能にするためには、水道水を加熱するための熱交換器を複数分用意することが考えられる。
【0005】
しかしながら、熱交換器を複数個設ければ、大量の給湯を行うことはできるものの、当該複数の熱交換器の使用経路(配管、機器のレイアウト)によっては少量の給湯を行うのには適さないという問題がある。
そこで、本発明は、熱交換器を複数個用いても、大量の給湯から少量の給湯まで適切に行うことができる給湯システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一形態は、熱媒体を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンク内の熱媒体を加熱する加熱装置と、複数の熱交換器と、前記貯留タンクを前記各熱交換器の1次側に並列して接続する第1の流路と、液体の供給源を前記各熱交換器の2次側に並列して接続し、前記各熱交換器で前記熱媒体と前記液体との熱交換を可能とする第2の流路と、前記熱交換器で熱交換後の前記液体を予め定められた先に供給する第3の流路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱交換器を複数個用いても、大量の給湯から少量の給湯まで適切に行うことができる給湯システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例である給湯システムの全体構成を示す説明図である。
図2図2は、本発明の一実施例である給湯システムの制御系の電気的な接続を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の一実施例である給湯システムの弁制御部、温度制御部が実行する処理を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例である給湯システムの弁制御部、温度制御部が実行する処理を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の一実施例である給湯システムの弁制御部、温度制御部が実行する処理を説明するフローチャートである。
図6図6は、図3図5のステップS13,S35のサブルーチンを説明するフローチャートである。
図7図7は、図3図5のステップS5,S27のサブルーチンを説明するフローチャートである。
図8図8は、図3図5のステップS6,S28のサブルーチンを説明するフローチャートである。
図9図9は、図3図5のステップS14,S36のサブルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本実施例の給湯システム1の全体構成を示す説明図である。この給湯システム1は、例えば自然冷媒ヒートポンプ給湯機であり、貯留タンクユニット2と、加熱装置となるヒートポンプ装置3とを備えている。
貯留タンクユニット2は、貯留タンク4を備えている。貯留タンク4は、その底部に図示しない給水源から液体となる水道水の供給を受けるための配管41が接続され、この配管41を介して給水源から供給される水道水を貯留することができる。貯留タンク4の頂部、並びに貯留タンク4の高さ方向の複数個所には、内部の水の温度を検出する温度センサ92が設けられている(貯留タンク4の頂部のもののみ図示)。
【0010】
また、貯留タンクユニット2は、複数系統、この例で給湯回路1系5と給湯回路2系6の2系統の給湯回路を備えている。給湯回路1系5と給湯回路2系6は、それぞれ熱交換器51,61を備えている。貯留タンク4の下部には、配管42が接続され、この配管42は、配管53と配管63に分岐して、それぞれ熱交換器51,61の1次側51a,61aの各一端側に接続されている。すなわち、これらの配管42,53,63は貯留タンク4を複数の熱交換器51,61の1次側51a,61aに並列して接続する第1の流路となる。また、配管53,63にはそれぞれ熱交換器51,61の1次側51a,61aに貯留タンク4内の温水をそれぞれ供給量可変に供給する電動ポンプ56,66が設けられている。熱交換器51,61の1次側51a,61aの各他端側には、配管52,62がそれぞれ接続され、配管52,62の先は配管43で合流し、配管43のさらに先は貯留タンク4の上部に接続されている。
【0011】
給水源から水道水を給水する配管41は、途中で配管54,64が分岐していて、それぞれ熱交換器51,61の2次側51b,61bの一端側に接続されている。すなわち、配管41,54,64は水道水の給水源を熱交換器51,61の2次側51b,61bに並列して接続し、各熱交換器51,61で、貯留タンク4内の温水(後述する)と給水源からの水道水との熱交換を可能とする第2の流路となる。また、配管41が配管54,64に分岐する手前の位置には配管中の水の温度を検出する温度センサ93が設けられている。熱交換器51,61の2次側51b,61bの他端側にはそれぞれ配管55,65が接続され、配管55,65の先は配管44に接続されて両者は合流する。そして、配管44の先は、給湯端末7に接続されている。すなわち、配管55,65,44は熱交換器51,61で熱交換後の給水源からの水道水を予め定められた水道水の供給先となる例えば給湯端末7に供給する第3の流路となる。また、配管44には、配管44を流通する温水の温度を検出する温度センサ91が設けられている。
【0012】
配管54,64には、それぞれ熱交換器51,61の2次側51b,61bに供給される水道水の流量を検出する流量センサ57,67が設けられている。また、配管54,64には、当該配管54,64から各熱交換器51,61の2次側51b,61bへの水道水の供給、その停止を、それぞれ開閉の切り替えによって可能とする電磁弁である流量調整弁58,68が設けられている。流量調整弁58,68は、その開度を可変にでき、配管54,64の水流を調整することができる。さらに、配管55,65には、各熱交換器51,61の2次側51b,61bから吐出される水道水の温度をそれぞれ検出する温度センサ59,69が設けられている。
【0013】
貯留タンク4の底部には配管31の一端が接続され、配管31の他端はヒートポンプ装置3に接続されている。また、貯留タンク4の上部には配管32の一端が接続され、配管32の他端はヒートポンプ装置3に接続されている。ヒートポンプ装置3は、例えば二酸化炭素等を冷媒として空気中から熱を吸収して、配管31を介して貯留タンク4から吸い込んだ水を加熱し、配管32側に吐出する装置である。配管32側に吐出された温水は熱媒体として貯留タンク4に戻る。具体的には、ヒートポンプ装置3は、圧縮機、液冷媒熱交換器、減圧弁、空気冷媒熱交換器を有する冷媒回路と、液体を送液する電動ポンプ(いずれも図示せず)等を備えている。
【0014】
図2は、給湯システム1の制御系71の電気的な接続を示すブロック図である。この制御系71は、本発明における切替部の一構成例となるものである。制御系71は制御装置81を備えている。制御装置81は、給湯システム1の全体を集中的に制御する制御装置であり、マイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、制御装置81には、予め定められた図示しないインターフェイスを介して、ヒートポンプ装置3、温度センサ59,69、流量センサ57,67、電動ポンプ56,66、流量調整弁58,68が接続されている。なお、図2には省略しているが、制御装置81には、図示しないインターフェイスを介して温度センサ91〜93も接続されている。
制御装置81(のCPU)は、予め用意された制御プログラムに基づいて、様々な処理を実行する。温度制御部72、弁制御部73、ヒートポンプ制御部74は、この制御装置81(のCPU)が制御プログラムに基づいて実行する機能を示す機能ブロックである。
【0015】
ヒートポンプ制御部74は、ヒートポンプ装置3を制御して、「沸き上げ運転」を行うことができる。すなわち、ヒートポンプ制御部74は、給水源から供給され、貯留タンク4内に貯留されている水道水を、配管31を介して貯留タンク4の下部から吸い込み、これを加熱し、この加熱後の温水を貯留タンク4の上部から戻す。よって、「沸き上げ運転」により、貯留タンク4の最上部から順次温水が溜まっていくことになる。
【0016】
温度制御部72は、電動ポンプ56及び/又は電動ポンプ66を駆動して、熱交換器51及び/又は熱交換器61の1次側51a又は1次側61aに、前述の「沸き上げ運転」により貯留タンク4内に貯留されている熱媒体となる温水を供給量可変で供給する。この際に温度制御部72は、全開になっている流量調整弁58又は流量調整弁68側の熱交換器51又は熱交換器61の2次側51b又は1次側61bに供給されている水道水の出口温度を、温度センサ59又は温度センサ69で検出する。そして、温度制御部72は、その温度センサ59又は温度センサ69の検出温度が予め定められた温度となるように、電動ポンプ56又は電動ポンプ66による温水の供給量を制御する。この際、温度制御部72は、全閉になっている流量調整弁58又は流量調整弁68側の電動ポンプ56及び/又は電動ポンプ66を停止して、当該流量調整弁58及び/又は流量調整弁68側の熱交換器51又は熱交換器61に対しては、温水を供給しない。また、熱媒体となる温水は配管43により貯留タンク4の上部から熱交換器51,61に供給され、熱交換器51,61で熱交換により冷却された後の水は配管42により貯留タンク4の下部に戻される。よって、この冷却後の水は貯留タンク4の最下部から順次溜まっていくことになる。つまり、貯留タンク4内の温水の割合が減り、冷却熱交換器51,61された後の水の割合が増える。
弁制御部73は、予め定められた条件に基づいて、流量調整弁58,68の開閉制御を行う。
【0017】
制御装置81は、給湯設定温度と給水温度(温度センサ93で検出)の温度差と、熱交換器51の2次側51bの流量(流量センサ57で検出)とから、二次側51bの必要な加熱量が分かるため、この必要となる加熱量と熱交換器51に供給される一次側51aの熱量とが等しくなるように、給湯開始時にポンプ56をフィードフォワード制御する。その後、温度センサ59で検出される温度が給湯設定温度と等しくなるようにポンプ56をフィードバック制御する。一次側51aの熱媒体となる温水の熱量は、熱交換器51に供給される温水の温度(貯留タンク4の頂部の温度センサ92の検出で代用)、及び、熱交換器51から流出する温水の温度(熱交換器51での熱交換効率が十分高いとの仮定の上、温度センサ93で検出される水の温度で代用)の温度差と、一次側51aの温水の流量との積で決まる。従って、ポンプ56は、一次側51aの温水熱交換前後の温度差を基に、必要な一次側51aの熱量を実現する流量となるように制御される。これらは、熱交換器61側から運転を開始する場合も同様である。
【0018】
また、制御装置81は、通常、ポンプ56,66の制御には温度センサ91は用いず、温度センサ59,69を用いて行うが、温度センサ59,69が故障した場合に備えて温度センサ91が設けられている。このようにすれば、温度センサ59,69が故障した場合であっても、給湯を継続することができ、利用者の利便性を向上させることができる。具体的には、給湯回路1系5又は給湯回路2系6による単独の給湯の場合には、温度センサ59または69の代わりに温度センサ91を用いてポンプ56又は66が制御される。また、給湯回路1系5及び給湯回路2系6の両方による給湯の場合であって、例えば温度センサ59が故障した場合には、温度センサ69で検出される温度と流量センサ57,67で検出される流量とから51の熱交換後の温水の温度を推定することによりポンプ56が制御される。給湯回路1系5及び給湯回路2系6の両方による給湯の場合であって、温度センサ69が故障した場合も同様である。
【0019】
制御系71は、このような温度制御部72による電動ポンプ56,66の制御、弁制御部73による流量調整弁58,68の制御により、貯留タンク4内の温水と、給水源からの水道水との間の熱交換に使用する熱交換器を、熱交換器51又は熱交換器61の一方とし、あるいはその両方とするように切り替えることが可能となる。その切り替えの詳細については後述する。
【0020】
ところで、本実施例の給湯システム1は、前述の「沸き上げ運転」により貯留タンク4内に貯留されている温水と、給水源からの水道水を熱交換器51,61で熱交換して温水にし、この温水となった水道水を給湯端末7に供給する水道直圧式のシステムである。貯留タンク4内の温水を給湯端末7に直接供給するのではなく、給水源からの水道水を熱交換で温水にして給湯端末7に供給することにより、給水源からの水道水の水圧をそのまま利用できるので、給湯端末7側の温水の使用量が多くなっても、給湯端末7側に供給する温水の水圧を高く維持することができる。
ここで、給湯端末7側の温水の需要が大きい場合があると想定される際には、その大需要に対応するために給湯システム1に用いる熱交換器も大規模なものにしないと、給湯端末7側への温水の供給が需要に追いつかないことになる。
【0021】
これに対応するためには、単一の大規模な熱交換器を設けることが考えられる。しかし、この場合は、貯留タンク4から熱交換器の1次側に温水を供給する配管や、熱交換器の2次側に水道水を供給する配管は大径のものにする必要がある。また、熱交換器での温水や水道水の圧力損失が大きなものとなる。さらに、貯留タンク4から熱交換器に温水を供給する電動ポンプの能力も高いものにしなければならない。これらの理由から、単一の大規模な熱交換器を設ける場合は、装置の製造コストが増大し、また、給湯システム1を駆動するための電気代等のランニングコストも増大するという問題がある。
一方、このような単一の大規模な熱交換器を用いる場合の問題点を解決し、給湯端末7側の温水の大需要にも対応できるようにするために、前記の大規模なものよりは小型の熱交換器を複数用意することも考えられる。
【0022】
この場合に、複数の熱交換器を直列に接続してみた場合について考える。すなわち、貯留タンク4からの温水が複数の熱交換器の全ての1次側を通過し、また、給水源からの水道水も全ての熱交換器の2次側を通過するように各部を接続する場合である。しかし、この場合も、温水や水道水が複数の熱交換器を通過するので、熱交換器での温水や水道水の圧力損失が大きなものとなる。また、温水や水道水が複数の熱交換器を通過することで放熱ロスも大きなものとなる問題もある。
また、前記のように単一の大規模な熱交換器を用いる場合も、これより小型の熱交換器を複数直列接続して用いる場合も、温水の需要量が大きな場合も、小さな場合も、常に全ての熱交換器が使用される。そのため、熱交換器の稼働率は高くなり、そのため、装置の故障率も高まる可能性がある。
【0023】
そこで、本実施例では、前記のとおり、給湯回路1系5と給湯回路2系6の2系統の給湯回路を設け、各給湯回路にそれぞれ熱交換器51,61を設けている。その上で、配管42,53,63により、貯留タンク4を複数の熱交換器51,61の1次側51a,61aに並列して接続し、また、配管41,54,64により、水道水の給水源を熱交換器51,61の2次側51b,61bに並列して接続している。
【0024】
このように、熱交換器51,61は、貯留タンク4や給水源に並列接続されているので、給湯端末7での温水の使用量が少ないときは、熱交換器51,61のうちの一方のみを使用するようにすれば、複数の熱交換器を直列接続する前記の例に比べて、熱交換器での温水や水道水の圧力損失を低減することができる。また、温水や水道水が熱交換器を通過するときの放熱ロスも低減できる。
また、給湯端末7で必要とされる温水の使用量が少ないときは、熱交換器51,61の一方は休止しているので、熱交換器の稼働率を低減し、よって、装置の故障率を低減することができる。
【0025】
このように給湯システム1は、貯留タンク4や給水源に並列で接続されている複数の熱交換器51,61をそれぞれ備えている2系統の給湯回路1系5と給湯回路2系6を用いている。以下では、このような構成において、給湯端末7で必要とされる温水の需要量が小さい場合から大きい場合まで適切に対応することができる給湯システム1の制御の内容について具体的に説明する。かかる制御内容は、弁制御部73、温度制御部72が実行する。
【0026】
図3図5は、弁制御部73、温度制御部72が実行する処理を説明するフローチャートである。まず、初期状態においては、流量調整弁58、流量調整弁68の一方が全開、他方が全閉の状態にある。そして、弁制御部73は、給湯端末7への給湯の流量があるか否か、すなわち、給湯回路1系5の流量センサ57、給湯回路2系6の流量センサ67のどちらかで給水源からの水道水の流れを検出したか否かを判断する(ステップS1)。給湯端末7への給湯の流量があるときは(ステップS1のYes)、給湯回路1系5の流量調整弁58が全開か否かを判断する(ステップS2)。
【0027】
給湯回路1系5の流量調整弁58が全開であるときは(ステップS2のYes)、温度制御部72が、給湯回路1系5の流量センサ57で給湯の流量を検出したか否かを判断する(ステップS3)。給湯回路1系5の流量センサ57で給湯の流量を検出したときは(ステップS3のYes)、温度制御部72が給湯回路1系5で温度制御を実施する(ステップS7)。すなわち、前述のとおり、温度制御部72は、給湯回路1系5で、その温度センサ59の検出温度が予め定められた温度となるように、電動ポンプ56による温水の供給量を制御する。以下、給湯回路1系5であっても給湯回路2系6であっても、「温度制御の実施」という場合は、給湯回路1系5(給湯回路2系6)で、その温度センサ59(温度センサ69)の検出温度が予め定められた温度となるように、電動ポンプ56(電動ポンプ66)による貯留タンク4からの温水の供給量を制御する処理をいうものとする。なお、このような「温度制御の実施」の場合以外では、電動ポンプ56又は電動ポンプ66の駆動による貯留タンク4内の温水の熱交換器51,61への供給は行われない。
【0028】
給湯回路1系5の流量センサ57で給湯の流量を検出しなかったときは(ステップS3のNo)、弁制御部73は、給湯回路2系6の流量調整弁68が全開か否かを判断する(ステップS4)。給湯回路2系6の流量調整弁68が全閉であったときは(ステップS4のNo)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全開にして(その詳細は後述する)(ステップS5)、ステップS4に戻る。給湯回路2系6の流量調整弁68が全開であったときは(ステップS4のYes)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全閉にする(その詳細は後述する)(ステップS6)。
【0029】
次に、温度制御部72が、給湯回路1系5からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)以上となるか否かを判断する(ステップS8)。ここで、“a”は予め定められた値である。給湯回路1系5からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)未満であるときは(ステップS8のNo)、ステップS7に戻る。給湯回路1系5からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)以上であるときは(ステップS8のYes)、後述のステップS21に進む。
【0030】
一方、給湯回路1系5の流量調整弁58が全閉であるときは(ステップS2のNo)、給湯回路2系6の流量調整弁68が全開である。この場合は、温度制御部72が、給湯回路2系6の流量センサ67で給湯の流量を検出したか否かを判断する(ステップS9)。給湯回路2系6の流量センサ67で給湯の流量を検出したときは(ステップS9のYes)、温度制御部72が給湯回路2系6で温度制御を実施する(ステップS10)。
【0031】
次に、温度制御部72が、給湯回路2系6からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)以上となるか否かを判断する(ステップS11)。給湯回路1系5からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)未満であるときは(ステップS11のNo)、ステップS10に戻る。給湯回路2系6からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)以上であるときは(ステップS11のYes)、後述のステップS29に進む。
【0032】
また、給湯回路2系6の流量センサ67で給湯の流量を検出しなかったときは(ステップS9のNo)、弁制御部73は、給湯回路1系5の流量調整弁58が全開か否かを判断する(ステップS12)。給湯回路1系5の流量調整弁58が全閉であったときは(ステップS12のNo)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全開にして(その詳細は後述する)(ステップS13)、ステップS12に戻る。給湯回路1系5の流量調整弁58が全開であったときは(ステップS12のYes)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全閉にする(その詳細は後述する)(ステップS14)。
【0033】
このように、以上の処理では、給湯端末7側で蛇口が開かれる等して温水の需要が発生したときは(ステップS1のYes)、給湯回路1系5の流量調整弁58と給湯回路2系6の流量調整弁68とのうちどちらが全開か判断する(ステップS2)。すなわち、流量調整弁58又は流量調整弁68の一方だけが全開になっていて、他方は全閉であるため、全開になっている流量調整弁58又は流量調整弁68の方の給湯回路1系5又は給湯回路2系6だけを用いた1系統による給湯出湯を開始する(ステップS7,S10)。
【0034】
また、この給湯出湯の状態から給湯端末7側で蛇口が閉められる等して温水の需要がなくなったときは(ステップS3のNo,S9のNo)、給湯回路1系5の流量調整弁58が全開であったときはこれを全閉にして、給湯回路2系6の流量調整弁68は全開にする。または、給湯回路2系6の流量調整弁68が全開であったときはこれを全閉にして、給湯回路1系5の流量調整弁58は全開にする。そして、今回の給湯を終了する。
【0035】
次に、前記のステップS8において、給湯回路1系5からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)以上であるときは(ステップS8のYes)、弁制御部73は、給湯回路2系6の流量調整弁68が全閉であれば(ステップS21のNo)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全開にして(その詳細は後述する)(ステップS22)、ステップS21に戻る。そして、給湯回路2系6の流量調整弁68が全開であれば(ステップS21のYes)、温度制御部72は、給湯回路1系5の流量センサ57、給湯回路2系6の流量センサ67でそれぞれ給湯の流量を検出したか否かを判断する(ステップS23)。この流量の検出があったときは(ステップS23のYes)、温度制御部72が給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方で温度制御を実施する(ステップS24)。次に、温度制御部72は、この給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方からの給湯流量(流量センサ57及び流量センサ67の検出流量を合算することで判断できる)が、b(L/min)以上であるか否かを判断する(ステップS25)。ここで、“b”は予め定められた値であり、前述の“a”より小さな値とすることが望ましい。給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方からの給湯流量がb(L/min)以上であるときは(ステップS25のNo)、ステップS23に戻る。給湯流量がb(L/min)未満であるときは(ステップS25のNo)、弁制御部73は、給湯回路1系5の流量調整弁58が全閉でなければ(ステップS41のNo)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全閉にする(その詳細は後述する)(ステップS42)。そして、ステップS41に戻る。こうして、給湯回路1系5の流量調整弁58が全閉になっていれば(ステップS41のYes)、前述のステップS9に移行する。このとき、流量調整弁68は全開である。
【0036】
また、温度制御部72は、給湯回路1系5の流量センサ57、給湯回路2系6の流量センサ67でそれぞれ給湯の流量の検出がなかったときは(ステップS23のNo)、弁制御部73は、給湯回路2系6の流量調整弁68が全開か否かを判断する(ステップS26)。給湯回路2系6の流量調整弁68が全閉であったときは(ステップS26のNo)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全開にして(その詳細は後述する)(ステップS27)、ステップS26に戻る。給湯回路2系6の流量調整弁68が全開であったときは(ステップS26のYes)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全閉にする(その詳細は後述する)(ステップS28)。
【0037】
一方、前記のステップS11において、給湯回路2系6からの給湯端末7側への給湯流量がa(L/min)以上であるときは(ステップS11のYes)、弁制御部73は、給湯回路1系5の流量調整弁58が全閉であれば(ステップS29のNo)、給湯回路1系6の流量調整弁58を全開にして(その詳細は後述する)(ステップS30)、ステップS29に戻る。そして、給湯回路1系5の流量調整弁58が全開であれば(ステップS29のYes)、温度制御部72は、給湯回路1系5の流量センサ57、給湯回路2系6の流量センサ67でそれぞれ給湯の流量を検出したか否かを判断する(ステップS31)。この流量の検出があったときは(ステップS31のYes)、温度制御部72が給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方で温度制御を実施する(ステップS32)。次に、温度制御部72は、この給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方からの給湯流量(流量センサ57及び流量センサ67の検出流量を合算することで判断できる)が、b(L/min)以上であるか否かを判断する(ステップS33)。
【0038】
給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方からの給湯流量がb(L/min)以上であるときは(ステップS33のYes)、ステップS31に戻る。給湯流量がb(L/min)未満であるときは(ステップS33のNo)、弁制御部73は、給湯回路2系6の流量調整弁68が全開であれば(ステップS43のNo)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全閉にする(その詳細は後述する)(ステップS44)。そして、ステップS43に戻る。こうして、給湯回路2系6の流量調整弁58が全閉になっていれば(ステップS41のYes)、前述のステップS3に移行する。このとき、流量調整弁68は全開である。
【0039】
また、温度制御部72は、給湯回路1系5の流量センサ57、給湯回路2系6の流量センサ67でそれぞれ給湯の流量を検出がなかったときは(ステップS31のNo)、弁制御部73は、給湯回路1系5の流量調整弁58が全開か否かを判断する(ステップS34)。給湯回路1系5の流量調整弁58が全閉であったときは(ステップS34のNo)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全開にして(その詳細は後述する)(ステップS35)、ステップS34に戻る。そして、給湯回路1系5の流量調整弁58が全開であったときは(ステップS34のYes)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全閉にする(その詳細は後述する)(ステップS36)。
【0040】
このように、給湯回路1系5又は給湯回路2系6のみの1系統の給湯回路で給湯を行っている際に、給湯流量がa(L/min)以上に多くなったときは(ステップS8のYes,S11のYes)、給湯回路1系5だけで給湯を行っている場合も、給湯回路2系6だけで給湯を行っている場合も、給湯回路1系5及び給湯回路2系6の双方で給湯を行うようにする(ステップS24,S32)。すなわち、この場合は、2系統による給湯出湯となる。
【0041】
また、この2系統による給湯出湯の状態から給湯端末7側で蛇口が閉められる等して温水の需要がなくなったときは(ステップS23のNo,S31のNo)、元々前述の1系統による給湯出湯が給湯回路1系5で行われていたときは、当該給湯回路1系5の流量調整弁58を全閉にして、給湯回路2系6の流量調整弁68を全開にして、今回の給湯を終了する(ステップS26〜S28)。また、元々前述の1系統による給湯出湯が給湯回路2系6で行われていたときは、当該給湯回路2系6の流量調整弁68を全閉にして、給湯回路1系5の流量調整弁58を全開にして、今回の給湯を終了する(ステップS34〜S36)。
【0042】
一方、このような2系統による給湯出湯を行っている際に、その給湯の流量がb(L/min)未満に下がれば(ステップS25のYes,S33のYes)、前述の1系統による給湯出湯に戻る(ステップS3のYes,S9のYes)。しかし、この場合に、元々給湯回路1系5による1系統による給湯出湯を行っていたときは、給湯回路2系6による1系統による給湯出湯に切り替わる。また、元々給湯回路2系6による1系統による給湯出湯を行っていたときは、給湯回路1系5による1系統による給湯出湯に切り替わる(ステップS7,S10)。
【0043】
図6は、前述のステップS13,S35のサブルーチンを説明するフローチャートである。この1系の流量調整弁全開処理では、給湯回路1系5の流量調整弁58を全閉の状態から全開と全閉との間の中間位置に切り替え(ステップS61)、この状態をt秒間維持する(ステップS62のNo)。そして、その後(ステップS62のYes)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全開に切り替える(ステップS63)。なお、“t”は予め定められた秒数である。
【0044】
図7は、前述のステップS5,S27のサブルーチンを説明するフローチャートである。この2系の流量調整弁全開処理では、給湯回路2系6の流量調整弁68を全閉の状態から全開と全閉との間の中間位置に切り替え(ステップS71)、この状態をt秒間維持する(ステップS72のNo)。そして、その後(ステップS72のYes)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全開に切り替える(ステップS73)。
【0045】
図8は、前述のステップS6,S28のサブルーチンを説明するフローチャートである。この1系の流量調整弁全閉処理では、給湯回路1系5の流量調整弁58を全開の状態から全開と全閉との間の中間位置に切り替え(ステップS81)、この状態をt秒間維持する(ステップS82のNo)。そして、その後(ステップS82のYes)、給湯回路1系5の流量調整弁58を全閉に切り替える(ステップS83)。
【0046】
図9は、前述のステップS14,S36のサブルーチンを説明するフローチャートである。この2系の流量調整弁全閉処理では、給湯回路2系6の流量調整弁68を全開の状態から全開と全閉との間の中間位置に切り替え(ステップS91)、この状態をt秒間維持する(ステップS92のNo)。そして、その後(ステップS92のYes)、給湯回路2系6の流量調整弁68を全閉に切り替える(ステップS93)。
【0047】
以上説明したとおり、本実施例の給湯システム1によれば、給湯開始の際には(ステップS1のYes)、給湯回路1系5又は給湯回路2系6の一方の給湯回路のみを使用して給湯を行う(ステップS7,S10)。そのため、前述の複数の熱交換器を直列接続する例に比べて、熱交換器51,61での温水や水道水の圧力損失を低減することができ、温水や水道水が熱交換器51,61を通過するときの放熱ロスも低減できる。
【0048】
また、熱交換器51,61の一方は休止しているので、熱交換器51,61、電動ポンプ56,66、これらに接続されている配管等の機器の稼働率を低減し、よって、装置の故障率を低減することができる。
一方で、給湯端末7での温水の使用量が多くなったときは(ステップS8のYes,S11のYes)、給湯回路1系5及び給湯回路2系6の2系統を稼働して温水の供給を行うので(ステップS24,S32)、温水の大需要にも適切に対応することができる。
【0049】
そして、再度、給湯端末7での温水の使用量が少なくなったときは(ステップS25のNo,S33のNo)、給湯回路1系5又は給湯回路2系6の一方の給湯回路のみを使用して給湯を行う(ステップS7,S10)。よって、熱交換器51,61での温水や水道水の圧力損失の低減、放熱ロスの低減を図り、装置の故障率を低減することができる。
【0050】
また、給湯端末7での温水の使用が停止した場合、給湯回路1系5を使用していたときには、給湯回路1系5の流量調整弁58は全閉にする一方、給湯回路2系6の流量調整弁68は全開にする。これにより、次回の給湯の際には、全開している流量調整弁68を備えた給湯回路2系6による1系統の給湯回路で給湯システム1の運転が開始される。この場合、逆に、給湯回路2系6を使用していたときには、給湯回路2系6の流量調整弁68は全閉にする一方、給湯回路1系5の流量調整弁58は全開にする。これにより、次回の給湯の際には、全開している流量調整弁58を備えた給湯回路1系5による1系統の給湯回路で給湯システム1の運転が開始される(ステップS4〜S6,S12〜S14)。
【0051】
この場合、給湯回路1系5及び給湯回路2系6の2系統を稼働して温水の供給を行なっていたときは(ステップS24,S32)、次のようにする。すなわち、給湯システム1は、給湯当初に使用していた1系統の給湯回路が給湯回路1系5であれば、流量調整弁68は全開にして次回の給湯は給湯回路2系6の1系統での運転から開始できるようにする。逆に、給湯当初に使用していた1系統の給湯回路が給湯回路2系6であれば、流量調整弁58は全開にして次回の給湯は給湯回路1系5の1系統での運転から開始できるようにする(ステップS26〜S28,S34〜S36)。
【0052】
このように、1回の給湯の度に、給湯に使用する給湯回路を変更するので、給湯回路1系5と給湯回路2系6とは使用頻度が略均一となり、一方の給湯回路のみ過剰に稼働率が高まることを防止して、装置の故障率を低減することができる。なお、電磁弁で構成される流量調整弁58,68の開度の制御は、段階的に開度を変更するようにしても、連続的に徐々に開度を変更するようにしてもよい。
【0053】
また、流量調整弁58,68を全開(全閉)から全閉(全開)に切り替える処理を行う場合は、弁制御部73は、給湯回路1系5(給湯回路2系6)の流量調整弁58(流量調整弁68)を全開(全閉)の状態から、一度全開と全閉との間の中間位置に切り替える。そして、この状態をt秒間維持してから全閉(全開)に切り替える(図6図9)。
このようにすることで、流量調整弁58,68の切り替えによる急激な給湯流量の変動を防止し、温度制御部72は、安定した給湯温度の制御が可能となる。なお、“t秒”の具体的な値は、このような趣旨から、電動ポンプ56,66が給湯端末7に供給すべき温水の温度変化に追従することが可能となる時間以上とするのが望ましい。
【0054】
また、流量調整弁58及び流量調整弁68のうち、一方を全開に他方を全閉に切り替える場合は、必ず、全開にする方の流量調整弁58又は流量調整弁68を全閉から全開に切り替えた後に、全閉にする方の流量調整弁68又は流量調整弁58を全開から全閉に切り替えるようにしている(ステップS4〜S6,S12〜S14,S26〜S28,S34〜S36)。これにより、この流量調整弁58及び流量調整弁68の切り替えに際して、給湯端末7を開いても温水も水も出てこないという不具合を防止することができる。
【0055】
さらに、前述の“a(L/min)”の値より前述の“b(L/min)”の値を小さくしている。この“a”と“b”とは等しい値としてもよい。しかし、“a(L/min)”の値より“b(L/min)”の値を小さくすれば次のようにできる。すなわち、給湯端末7への給湯量の変動が“a(L/min)”の近傍で頻繁に変動を繰り返すような場合に、給湯回路が1系統から2系統に、あるいは、2系統から1系統に頻繁に切り替えられることを防止することができる。よって、温度制御部72は、安定した給湯温度の制御が可能となる。
【0056】
以上のとおり、本実施例によれば、熱交換器を複数系統分用いても、大量の給湯から少量の給湯まで適切に行うことができる給湯システム1を提供することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0057】
具体的に例を示す。まず、前述の実施例は給湯回路1系5、給湯回路2系6の2系統の給湯回路を備えている例を説明したが、同様の給湯回路を3系統以上設けるようにしてもよい。この場合も前述の実施例に準じて各給湯回路の稼働率が略均等になるように制御するのが望ましい。例えば、A,B,Cの3系統の給湯回路を備える場合であれば、給湯端末7で必要とされる給湯量の増大に伴い、稼働する給湯回路も1系統、2系統、3系統と順次増やすようにする。また、この例で、1系統で給湯回路を稼働するときは、給湯の度に、給湯回路を例えばA→B→C→A…のように順次切り替えるように制御する。また、2系統で同時に給湯回路を稼働するときは、給湯の度に、給湯回路を例えばA及びB→B及びC→A及びC→A及びB…のように順次切り替えるように制御する。
また、前述の例では、給湯の度に、予め定められた順番で給湯回路を稼働させているが、各給湯回路の累計の稼働時間をそれぞれカウントするようにし、次回の給湯の際には、累計の稼働時間が最も短いものから順次稼働を開始するようにしてもよい。
【0058】
さらに、前述の実施例は、本発明の給湯システムを自然冷媒ヒートポンプ給湯機として実施する例を示したが、本発明の給湯システムを電気温水機等として実施するようにしてもよい。すなわち、ヒートポンプ装置3に代えて貯留タンク4内に電気ヒータ等を設けて、この電気ヒータ等により貯留タンク4内の熱媒体となる水を加熱するようにしてもよい。
【0059】
また、制御装置81等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。各機能を実現する制御プログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0060】
1 給湯システム
3 ヒートポンプ装置(加熱装置)
4 貯留タンク
41,54,64 配管(第2の流路)
42,53,63 配管(第1の流路)
44,55,65 配管(第3の流路)
51,61 熱交換器
51a,61a 1次側
51b,61b 2次側
57,67 流量センサ
58,68 流量調整弁
71 制御系(切替部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9