【実施例1】
【0037】
本発明の低湿庫用乾燥装置は、
図1に示すように、例えば、容量1200リットルのスチール製の低湿庫キャビネット1内に配置する、縦横500mm×500mm、厚さ80mmのドライユニット23からなり、このドライユニット23は、合計約1500gの乾燥剤8を充填した、2つの乾燥剤ケース24、24と、上記ドライユニット23を上記キャビネット1内とキャビネット1外のいずれかに切り換え連通せしめる切り換え手段25と、上記乾燥剤8に埋設され、上記乾燥剤8を加熱再生する乾燥剤加熱手段26と、上記ドライユニット23に設けた温度センサー27と、上記乾燥剤加熱手段26を所定の加熱再生間隔、加熱時間、加熱電力などの所定の加熱条件により制御すると共に、後述する切り換え手段25を制御する制御手段28とよりなる。
【0038】
なお、16は、従来と同様、上記ドライユニット23内の低湿度空気をキャビネット1内に放出し、空気を上記キャビネット1内と上記ドライユニット23内を循環させる循環ファンである
【0039】
上記乾燥剤ケース24は、
図2及び
図3に示すように、例えば、縦横220mm×200mm、厚さ20mmの箱状に形成された筐体であって、その全面に、例えば、直径3mmの貫通孔29を多数設け、開口比を30%以上としたものであって、この乾燥剤ケース24内にゼオライトなどの乾燥剤8が充填され、また、この乾燥剤8内に上記乾燥剤加熱手段26を埋設している。
【0040】
また、上記切り換え手段25は、従来と同様の構成で、
図1に示すように、外側ケース4aと、内側ケース4bと、上記キャビネット1内と上記内側ケース4b内を連通するため上記外側ケース4aと上記内側ケース4bの上下に形成した庫内側開口11、12と、上記キャビネット1外と上記内側ケース4b内を連通するよう上記キャビネット1と内側ケース4bの上下に形成した庫外側開口13、14と、上記内側ケース4bの上下の開口12、14を交互に開閉できるようその一端を回動自在に枢支したシャッター15とよりなる。また、上記シャッター15を駆動する駆動手段は、
図17に示すように、上述した従来と同じ構造である。そして、上記切り換え手段25の形状記憶合金コイルの通電は、上記制御手段28により制御される。
【0041】
上記乾燥剤加熱手段26は、
図4〜
図6に示すように、左右に、例えば20mm離間して配置した、上下方向に延びる、例えば、縦横70mm×150mmの矩形状のマイカ製の板本体30、30の2枚を左右に配置し、この2枚の板本体30、30にそれぞれニクロム線などの発熱線31を下方が密になるように巻き付け、上記各板本体30、30に巻き付けられた発熱線31を直列につなぎ、そして、この板本体30、30を、マイカ製の2枚の挟持板32、32で挟持し、この2枚の挟持板32、32を四隅で連結具33により固定して形成する。なお、このように形成されたヒーターのヒーター容量は、乾燥剤の量によるが、例えば、約300W〜350Wとする。
【0042】
このヒーターの構造を上記のようにしたのは、下記の理由による。
【0043】
即ち、通常のヒーターは、縦に設置した1枚の板本体にニクロム線が巻かれたものであって、このような従来のヒーターの場合、再生により加熱された空気は熱対流が発生し、熱い空気は乾燥剤ケースの上に向かって流れ、乾燥剤ケースの下の方には、新しい空気(低い温度)が引き込まれている。よって、乾燥剤ケースは再生加熱時には上昇気流により、上部は温度が上昇しやすく、下部は温度が上昇し難い構造になる。
【0044】
また、乾燥剤ケースの中心部は、構造上、熱がこもりやすく温度が上昇しやすい傾向にある。従って、乾燥剤全体が設計到達温度である160℃程度に達する時には、例えば、中心部の温度は180℃以上となり、余分な加熱となってしまう。
【0045】
また、ニクロム線ヒーターでは、巻き付けたニクロム線付近の温度はかなりの高温になるが、ニクロム線の間のニクロム線がない箇所においては、最大で約20℃程度の温度差が生まれてくる。
【0046】
乾燥剤の加熱再生は、乾燥剤全体の温度が均一に160℃になることが理想であるため、上記3つの問題を解決すべく、本願発明においては、板本体30に巻き付けたニクロム線は、下部は上部に対して比較的密に巻き、再生加熱終了前5分程度には、乾燥剤ケースが均一な温度になるように工夫した。
【0047】
そして、2枚の板本体30、30を用い、これを左右に離間して配置し、中心部を開けることにより、中心部分の余剰加熱を無くした。
【0048】
さらに、この板本体30、30を2枚の挟持板32、32でサンドイッチ状に挟み込み、乾燥剤8に間接的に熱を伝えるようにすることで、より均一に加熱できるように工夫した。
【0049】
また、上記温度センサー27は、例えば、サーミスタよりなり、
図1〜
図3に示すように、上記乾燥剤ケース24の外表面に、上から1/4程度下部分であって、上記2枚の板本体30、30の間(発熱線がない箇所)に相当する位置に固定金具34により固定した。
【0050】
即ち、ヒーターの左右方向の中心で、上から1/4の地点が、ニクロム線がなく、再生加熱終了前5分程度には全体的に到達した温度、すなわち、代表温度として検知できる部分ができ、この部分に、温度センサー27を取り付けるようにした。
【0051】
これにより、乾燥剤の到達温度を従来よりも正確に検知できることができ、より正確に乾燥剤の再生状態を把握することが可能になる。
【0052】
また、上記制御手段28は、
図7に示すように、温度センサー27の抵抗の変化を電圧の変化値として演算記憶処理装置34に取り入れ、温度を演算し、この演算された温度値が所定値であると判断した場合には、通常運転モードとして、予め記憶設定された、低湿庫の扉の開閉頻度が一般的な使用であると想定した場合における再生間隔、加熱時間及び加熱電力などの加熱条件で上記加熱手段26により上記乾燥剤を加熱再生する。
【0053】
また、上記制御手段28は、上記演算された温度値が、所定値以外と判断した場合には、省エネ運転モード(又はその他の運転モード)として、上記加熱手段により加熱再生する再生間隔、加熱時間、又は加熱電力などの加熱条件の少なくとも一つを、対応する予め記憶設定した、低湿庫の扉の開閉頻度が一般的な使用であると想定した場合における再生間隔、加熱時間、又は加熱電力などの加熱条件を異なる値に変更し、その他の加熱条件は、上記通常運転用の加熱条件で、上記加熱手段26により上記乾燥剤を加熱再生するように制御する。
【0054】
また、上記所定の温度値とは、乾燥剤の再生加熱時に、より乾燥した乾燥剤ほど、高温になることを利用して、例えば、加熱終了時の温度が170℃以下であり、上記制御手段28は、加熱終了時の温度が170℃以下の場合には、通常運転モードであると判断し、加熱終了時の温度が170℃〜180℃の場合は、使用頻度の少ない現場である省エネ運転モード時Aと判断し、加熱終了時の温度が180℃以上の場合は、更に使用頻度が少ない現場である省エネ運転モードBと判断する。
【0055】
また、上記予め設定された、低湿庫の扉の開閉頻度が一般的な使用であると想定した場合における再生間隔は、従来と同様に、30分間に1回30秒間扉を開閉したときに、低湿庫内の湿度を所望の値を保つことができる再生間隔が設定され、例えば、この通常運転モード時の再生間隔は6時間と設定される。そして、再生加熱時間は、例えば、30分に設定し、再生加熱時の電力は、再生加熱時間30分で乾燥剤温度が160℃に達する一定の電力、例えば、350Wに設定される。
【0056】
そして、上記制御手段28による乾燥剤加熱手段26の第1の制御として、例えば、通常運転モード時の乾燥剤の加熱再生間隔と、省エネ運転モード時の乾燥剤の加熱再生間隔とを異なるように設定する。
【0057】
即ち、
図8に示すように、上記制御手段28は、乾燥剤の加熱再生終了時の温度が170℃以下であると判断した場合には、通常運転モードと判断して、次の乾燥剤の加熱再生までの再生間隔を、例えば、6時間とし、上記加熱再生終了時から6時間後に加熱再生をするようにし、そして、この次の加熱再生の加熱時間を30分、加熱電力を350Wとして、乾燥剤を加熱するが、上記制御手段28は、乾燥剤の加熱再生終了時の温度が170℃〜180℃であると判断した場合には、使用頻度の少ない省エネ運転モード時Aと判断して、次の乾燥剤の加熱再生までの再生間隔を上記通常運転モード時再生間隔よりも長い時間、例えば、12時間とし、上記加熱再生時から12時間後に加熱再生をするようする。なお、その他の加熱条件は、上記通常運転モード時と同じにし、この次の加熱再生の加熱時間を30分、加熱電力を350Wとして、乾燥剤を加熱する。
【0058】
また、上記制御手段28は、乾燥剤の加熱再生終了時の温度が180℃以上であると判断した場合には、更に使用頻度の少ない省エネ運転モード時Bと判断して、次の乾燥剤の加熱再生までの再生間隔を上記通常運転モード時再生間隔よりも更に長い時間、例えば、18時間とし、上記加熱終了時から18時間後に加熱再生するようにする。なお、その他の加熱条件は、上記通常運転モードと同じにし、この次の加熱再生の加熱時間を30分、加熱電力を350Wとして、乾燥剤を加熱する。
【0059】
なお、省エネ運動モード時Bを設定せず、乾燥剤の温度が170℃以上の場合は、全て省エネ運動モード時Aと設定してもよい。
【0060】
また、上記制御手段28は、加熱終了時の乾燥剤の温度が、例えば、160℃以下と判断した場合には、その他の運転モードとして、次の乾燥剤の加熱再生までの再生間隔を、通常運転モード時の再生間隔よりも短い再生間隔に設定するようにしてもよい。
【0061】
なお、
図9及び
図10は、上記制御手段28による乾燥剤加熱手段26の第1の制御の他の実施例であり、
図9は、加熱再生時の乾燥剤の温度を測定した、再生加熱時間と温度を示す図であり、
図10は、加熱終了時の乾燥剤の温度に基づき、次の加熱再生の再生間隔を示す図である。この
図9及び
図10に示すように、加熱終了時の乾燥剤の温度が(160−T)℃〜(160+T)℃の範囲内となる曲線1の場合は、例えば、上記制御手段28は通常運転モードと判断して、次の再生加熱のための再生間隔を6時間とする。また、加熱終了時の温度が(160+T)℃よりも高い場合の曲線2の場合は、次の再生加熱のための再生間隔を、通常運転モードよりも長い(6+α)時間とする。また、加熱終了時の温度が(160−T)℃よりも低い曲線3の場合は、次の再生加熱のための再生間隔を通常運転モードより短い(6−α)時間とする。なお、上記Tは任意に設定される温度であり、0℃以上の温度であり、Tを0℃と設定してもよい。
【0062】
上記制御手段28による第1の制御によれば、次の加熱再生のための再生間隔を長くとるので、エネルギーの節約を図ることができる。
【0063】
また、上記制御手段28による乾燥剤加熱手段26の第2の制御としては、例えば、通常運転モード時のヒーターの加熱再生時間と、省エネ運転モード時のヒーターの加熱再生時間とを異なるように設定する。
【0064】
即ち、上記制御手段28は、乾燥剤の加熱再生終了時の温度が(160+T)℃よりも低いと判断した場合には、上記制御手段28は、通常運転モードと判断して、次の乾燥剤の再生加熱における加熱時間を30分とし、上記加熱再生終了時から6時間後に、加熱電力を350Wで乾燥剤を加熱再生するが、上記制御手段28は、乾燥剤の加熱再生終了時の温度が(160+T)℃よりも高いと判断した場合には、使用頻度の少ない省エネ運転モード時と判断して、次の乾燥剤の加熱再生における加熱時間を、通常運転モード時の加熱再生時間よりも短い時間、例えば、20分とし、上記加熱再生終了時から6時間後に加熱電力を350Wで乾燥剤を加熱再生するようにする。
【0065】
なお、加熱再生終了時の温度が160℃よりも低いと判断した場合には、その他の運転モードと判断して、再生加熱時間を長くなるよう設定してもよい。
【0066】
なお、
図11は、上記制御手段28による乾燥剤加熱手段26の第1の制御と第2の制御を組み合わせた例であり、省エネ運転モード時には、通常運転モード時に比べて、次の加熱再生までの再生間隔を長くし、また、この次の加熱再生する加熱時間を短くする。
【0067】
上記制御手段28による第2の制御によれば、次の加熱再生時の加熱時間を短くするので、余分な電力を使わず、エネルギーの節約を図ることができる。
【0068】
また、上記制御手段28による加熱手段26の第3の制御としては、通常運転モード時の乾燥剤の加熱時間(又は加熱電力)と、省エネ運転モードの乾燥剤の加熱時間(又は加熱電力)とを異なるように設定する。
【0069】
即ち、
図12に示すように、上記制御手段28は、上記所望の温度を、例えば、(160+T)℃に記憶設定し、乾燥剤を加熱再生中に、上記所望の温度よりも高くなったと判断した場合に、省エネ運転モードとして判断し、上記乾燥剤の加熱を終了するように設定する。
【0070】
なお、乾燥剤の加熱終了時において、(160−T)℃よりも低い場合、その他の運動モードとして、加熱時間を延長するように設定してもよい。
【0071】
上記制御手段28による第3の制御によれば、必要以上の加熱を行わないので、余分な電力を使わず、エネルギーの節約を図ることができる。
【0072】
また、上記制御手段28による加熱手段26の第4の制御としては、例えば、加熱再生中に、乾燥剤の温度を常時測定し、通常運転モード時の乾燥剤の加熱電力と、省エネ運転モードにおける乾燥剤の加熱電力とを異なるように設定する。
【0073】
即ち、
図13に示すように、上記制御装置28は、乾燥剤を加熱再生中、測定した乾燥剤の温度が、低湿庫の扉の開閉頻度が一般的な使用であると想定した場合における乾燥剤を加熱した場合の温度よりも高い場合と判断した場合には、省エネ運転モードと判断し、加熱電力を低下させて、予め記憶設定した加熱時間、例えば、30分で、乾燥剤の温度が、例えば、160℃になるように設定する。
【0074】
なお、このような制御として、例えば、PID制御がある。
【0075】
上記制御手段28による第4の制御によれば、余分な電力を使わず、エネルギーの節約を図ることができる。
【0076】
なお、上記制御手段28による加熱手段26の第1の制御から第4の制御は、それぞれ独立に設定してもよく、また、組み合わせて設定するようにしてもよい。
【0077】
次に具体的な運転方法を説明する。
【0078】
まず、上記乾燥剤加熱手段26の制御手段28を、上記第1の制御から第4の制御手段をいずれかを、または複数組み合わせて設定し、低湿庫のドライユニット23の乾燥剤加熱手段26をONにすると共に、シャッター15を駆動する駆動手段17の形状記憶合金コイル21に通電し、ドライユニット23内のシャッター15を庫内側開口を閉、庫外側開口を開にする。これにより、ゼオライトなどの吸着剤8が加熱されて吸湿している水分をキャビネット外に放出する。
【0079】
通電30分後に上記乾燥剤加熱手段26をOFFにし、そして、ゼオライトなどの乾燥剤8から水分を放出しなくなる温度、例えば、80℃まで待ち、例えば、20分後に上記形状記憶合金コイル21の通電をOFFにし、上記ドライユニット23内のシャッター15をバイアスバネ20により庫内側開口が開、庫外側開口が閉に切り替える。これにより、ドライユニット23内のゼオライトなどの乾燥剤がキャビネット1内の水分の吸着を開始し、キャビネット1内の湿度を下げ始めると同時に、上記ドライユニット23内の循環ファン16をONにしてドライユニット23内の低湿度空気をキャビネット1内に放出すると共に、キャビネット1内の空気をドライユニット内に導入し、循環させる。
【0080】
これにより、30分〜60分後にキャビネット内の湿度は約1%RHまで低くなる。そして、扉を開放して、ICパッケージ等の電子部品を庫内の保管棚に保管する。
【0081】
電子部品の保管後、必要に応じてICパッケージ等を取り出して使用する。その際、扉の開閉を30秒、30分に1〜2回開閉するとキャビネと1内の湿度は10〜20%RHに上昇する。しかし、ゼオライトなどの乾燥剤8の吸着と循環ファン16のキャビネット1とドライユニットとの空気の循環により、約10分〜20分後に庫内湿度は約5%RHまで下がる。そして、上記乾燥剤加熱手段26の制御手段28の演算記憶処理装置35の制御により、設定された通常運転モードで、例えば、6時間毎に30分間、乾燥剤を加熱再生する。なお、循環ファン16は、キャビネット内の水分を吸着しているときのみ運転し、乾燥剤を加熱再生中は循環ファン16は停止している。
【0082】
そして、加熱再生終了時又は加熱再生時における、上記乾燥剤の温度を測定し、この温度に基づき、上記制御手段28により、次の加熱再生までの再生間隔や、乾燥剤の加熱時間、加熱電力などの加熱条件を通常運転モード或いは省エネ運転モードとして、乾燥剤を加熱再生するようにする。
【0083】
本発明の低湿庫用乾燥装置によれば、乾燥剤の加熱再生終了時の温度が、乾燥剤の吸着能力の指標になり、この乾燥剤の加熱再生終了時の温度に基づき、乾燥剤の吸着能力を判断することができるので、ゼオライトなどの乾燥剤の性能を維持しつつ、エネルギーを節約することができるようになる。
【0084】
また、乾燥剤の到達温度を従来よりも正確に検知できるようになる。