特許第5931004号(P5931004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931004
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】物理量測定センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/04 20060101AFI20160526BHJP
   G01L 19/06 20060101ALI20160526BHJP
   G01K 1/20 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   G01L19/04
   G01L19/06 A
   G01K1/20
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-116421(P2013-116421)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-235072(P2014-235072A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 歩
(72)【発明者】
【氏名】小山 英樹
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3838070(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L19/04
G01L19/06
G01K 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を取り出すための複数のリードピン及び前記リードピンが絶縁状態で取り付けられるベースを有する気密端子と、
前記ベースに設けられ前記リードピンと電気的に接続されて被測定流体の物理量変化による電気信号及び温度による電気信号を出力する検出部と、
前記検出部を囲むように配置された筒状のハウジングと、
前記ハウジングに気密接合され前記検出部と対向する隔膜と、
前記気密端子、前記検出部、前記隔膜及び前記ハウジングで囲われた領域に封入された封入液と、
前記リードピンに取り付けられる均熱板と、を備え、
前記均熱板と前記リードピンとは、リードピン接合部を介して接合され、かつ、伝熱性を有することを特徴とする物理量測定センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された物理量測定センサにおいて、
前記均熱板は前記ベースの端部とベース接合部を介して接合されていることを特徴とする物理量測定センサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された物理量測定センサにおいて、
前記ベースと前記均熱板とは密着されていることを特徴とする物理量測定センサ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された物理量測定センサにおいて、
前記ベースと前記均熱板との間に伝熱性がありかつ前記ベースと前記均熱板とにそれぞれ密着した熱伝達媒体が設けられていることを特徴とする物理量測定センサ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載された物理量測定センサにおいて、
前記リードピン接合部は、前記均熱板の前記ベースとは反対側の面のみにおいて前記リードピンが挿通する挿通孔の周縁を含む領域に形成されたパターンであることを特徴とする物理量測定センサ。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載された物理量測定センサにおいて、
前記ベース接合部は、前記均熱板の前記ベースに対向する面に形成されたパターンと、前記均熱板の前記ベースと対向する面とは反対側の面に形成されたパターンと、これらのパターンの間に形成されたスルーホールとを備えたことを特徴とする物理量測定センサ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載された物理量測定センサにおいて、
前記ベースは、前記リードピンが挿通されるピン挿通孔が形成され前記検出部が取り付けられた板状部、及びこの板状部のピン挿通孔に設けられ前記リードピンを前記板状部とは電気的に絶縁状態で支持するための絶縁部材を有するベース本体と、このベース本体の前記隔膜に対向する面に前記リードピンと前記検出部とにそれぞれ干渉しないように配置されたスペーサとを備えたことを特徴とする物理量測定センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を測定する圧力センサ、その他の被測定流体の物理量を測定する物理量測定センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧力の測定には、被検知圧力を検出して電気信号に変換する圧力センサが用いられている。この圧力センサの1つの従来例1を図7に示す。
図7において、従来例1の圧力センサは、継手101にセンサモジュール102を取り付け、センサモジュール102に、出力補正及び温度補正を行うASIC回路部103と電流又は電圧等の必要な電気出力形態を変換するための変換回路部104とをそれぞれ電気的に接続し、これらの回路部103,104に電気信号を入出力する端子部105を電気的に接続した構造である。
センサモジュール102は、筒状のハウジング106にベース107を介して検出部108を設け、この検出部108に対向して隔膜109をハウジング106に設けた構造であり、ベース107、検出部108及び隔膜109で囲まれた空間に封入液Lが封入されている。隔膜109は、検出部108に被測定流体が直接触れないようにするためのものであり、封入液Lは、隔膜109から検出部108に圧力を伝達するためにオイル等から構成されている。
【0003】
従来例1とは異なる従来例として、感熱機構を有するASICと、トランジスタからなる発熱素子とを別々に基板に配置し、これらの基板に放熱基板がリードを介して接続した圧力センサがある(従来例2:特許文献1)。
この従来例2では、通電によって発熱した発熱素子の熱は、感熱機構が配置された基板から熱伝達しても途中の放熱基板で放熱され、感熱機構が配置された基板へ伝播しないので、発熱素子の熱を感熱機構に熱伝達することを防止できる。さらに、感熱機構の検知温度が実際の圧力検知素子の温度よりも高温とならず温度差が大きくならないので、感熱機構の検知温度を用いて温度補正を行った信号は実際の圧力に対する誤差が低減し、出力精度の向上を図ることができる。さらに、時間が経過しても、発熱素子の熱が感熱機構へ熱伝導しないので、感熱機構の温度は時間の経過とともに上昇していくことはない。そのため、電源投入後に時間が経過しても、安定した出力精度を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−130747公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例1では、周囲温度や電子回路の発熱がセンサモジュール102に伝わって、熱均衡するが、熱伝導率や熱容量の違いによりセンサモジュール102の封入液Lと検出部108とに温度差が発生し、ASIC回路部103による温度補正に誤差が生じて測定精度が低下するという問題がある。さらに、電源投入後の時間経過により、回路部104からの熱が徐々に伝わるため、センサモジュール102の封入液Lと検出部108との温度が均衡するまでの間、出力が不安定となるという問題もある。
【0006】
従来例2では、発熱素子から発生する熱による温度の影響を低減するために、感熱機構と発熱素子とを別々の基板に配置し、これらの基板を、放熱基板を介して接続した構成となっているため、部品点数が増えてコスト高となるという問題がある。さらに、従来例2では、3つの基板を並べて配置する構成から、構造上大きくなってしまい、小型化するにも限界が生じる。そして、より低圧レンジを温度特性に優れ高精度な圧力計測することについても同様な問題がある。
【0007】
本発明の目的は、温度変化の影響を少なくし小型化を図ることができる物理量測定センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物理量測定センサは、電気信号を取り出すための複数のリードピン及び前記リードピンが絶縁状態で取り付けられるベースを有する気密端子と、前記ベースに設けられ前記リードピンと電気的に接続されて被測定流体の物理量変化による電気信号及び温度による電気信号を出力する検出部と、前記検出部を囲むように配置された筒状のハウジングと、前記ハウジングに気密接合され前記検出部と対向する隔膜と、前記気密端子、前記検出部、前記隔膜及び前記ハウジングで囲われた領域に封入された封入液と、前記リードピンに取り付けられる均熱板と、を備え、前記均熱板と前記リードピンとは、リードピン接合部を介して接合され、かつ、伝熱性を有することを特徴とする。
【0009】
被測定流体の温度が変化して隔膜を介して熱が伝わる封入液と検出部との温度差が大きくなり、あるいは、センサを構成する電子回路等から生じる熱がリードピンに伝わって、封入液と検出部との温度差が大きくなることがある。本発明では、複数のリードピン接合部を介してリードピンが均熱板に設けられているので、リードピンから熱が伝わる封入液と検出部との温度差が小さくなり、適正な測定を行うことができる。しかも、電源投入後に時間が経過しても、封入液と検出部との温度が均衡しているので、出力が安定する。
さらに、従来例とは異なり、放熱板が不要とされるので、ベースと均熱板とを近接配置することが可能となり、物理量測定センサの小形化を図ることができる。
【0010】
ここで、本発明では、前記均熱板は前記ベースの端部とベース接合部を介して接合されている構成が好ましい。
この構成では、均熱板の異なる位置からベースに熱が伝わることになり、封入液の温度分布をより均一にして温度変化による影響をより少なくすることができる。
【0011】
前記ベースと前記均熱板とは密着されている構成が好ましい。
この構成では、ベースと均熱板とが密着されることで、封入液の温度分布をより均一化することができる。そのため、温度変化による影響をより少なくすることができる。
【0012】
前記ベースと前記均熱板との間に伝熱性がありかつ前記ベースと前記均熱板とにそれぞれ密着した熱伝達媒体が設けられている構成が好ましい。
この構成では、ベースと均熱板との間に隙間があっても、この隙間を熱伝達媒体、例えば、アルミニウムや銅からなる板材や、シリコン液を介在させることで、ベースと均熱板との間の熱伝達を効率的に行い、温度変化による影響をより少なくすることができる。
【0013】
前記リードピン接合部は、前記均熱板の前記ベースとは反対側の面のみにおいて前記リードピンが挿通する挿通孔の周縁を含む領域に形成されたパターンである構成が好ましい。
この構成では、接合材で接合するためのパターンが挿通孔のベースと対向する面には形成されていないので、均熱板にリードピンを接合材で接合、例えば、半田付けしても、接合材(半田)が挿通孔を通ってベースに伝わることがない。そのため、ベースが金属製とされた際に、リードピンがベースと短絡することがない。
【0014】
前記ベース接合部は、前記均熱板の前記ベースに対向する面に形成されたパターンと、前記均熱板の前記ベースと対向する面とは反対側の面に形成されたパターンと、これらのパターンの間に形成されたスルーホールとを備えた構成が好ましい。
この構成では、均熱板の両面及び側面において接合材で接合されるパターンが形成されるため、均熱効果を高いものにできる。
【0015】
前記ベースは、前記リードピンが挿通されるピン挿通孔が形成され前記検出部が取り付けられた板状部、及びこの板状部のピン挿通孔に設けられ前記リードピンを前記板状部とは電気的に絶縁状態で支持するための絶縁部材を有するベース本体と、このベース本体の前記隔膜に対向する面に前記リードピンと前記検出部とにそれぞれ干渉しないように配置されたスペーサとを備えた構成が好ましい。
この構成では、ベース本体と隔膜との間にスペーサが設けられているので、封入液の量を少なくすることとができる。温度誤差の原因となる封止液の量を少なくすることで、測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかる物理量測定センサの断面図。
図2】物理量測定センサの要部断面図。
図3】(A)は均熱板の表面図、(B)は均熱板の裏面図。
図4】実施例において電源投入後経過時間とリードピン及び検出部温度出力との関係を示すグラフ。
図5】比較例において電源投入後経過時間とリードピン及び検出部温度出力との関係を示すグラフ。
図6】本発明の変形例を示す図2に相当する図。
図7】従来例にかかる圧力センサの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態にかかる物理量測定センサの断面図であり、図2は、物理量測定センサの要部断面図である。本実施形態では物理量測定センサは被測定流体の圧力を測定する圧力センサである。
図1及び図2において、物理量測定センサは、継手1と、継手1に取り付けられたセンサモジュール2と、センサモジュール2と電気的に接続されたリードピン31と、センサモジュール2の継手1とは反対側に配置されたASIC回路部4と、ASIC回路部4のセンサモジュール2とは反対側に配置された変換回路部5とを備えている。センサモジュール2、リードピン31、ASIC回路部4及び変換回路部5の周囲が筒状のケース6で覆われている。ケース6は、その一端部が継手1に気密接合され、他端部が端子部7と気密接合されている。センサモジュール2には均熱板8が設けられている。
【0018】
継手1は、図示しない配管に取り付けるためのねじが形成された一端部11と、センサモジュール2を取り付ける他端部12とを有する。これらの一端部11と他端部12との間には六角部13が設けられている。
継手1の軸芯には被測定流体を配管から導入する圧力導入孔10が貫通して形成されている。
【0019】
センサモジュール2は、継手1の他端部12に取り付けられた取付部21と、取付部21の端部に固定されたリング状のハウジング22と、ハウジング22の内周部に取り付けられたベース23と、ベース23の中央部に取り付けられた検出部24と、検出部24に対向する隔膜25とを有する。
取付部21は、その内部に圧力導入孔10から導入された被測定流体を案内する案内部21Aが形成されている。
ハウジング22は、取付部21とは反対側の面であって内周部に近接する位置に環状の係合突起22Aを有する。
【0020】
ベース23は、係合突起22Aに外周部が係合された金属製のベース本体231と、ベース本体231に設けられたセラミック製のスペーサ232とを備えている。
ベース本体231は、リードピン31が挿通されるピン挿通孔231Aが形成され中央部に検出部24が取り付けられた板状部233と、ピン挿通孔231Aに設けられリードピン31を気密状態で取り付けるための絶縁部材234とを有する。なお、本実施形態では、ベース本体231とリードピン31とを備えて気密端子3が構成されている。
スペーサ232は、ベース本体231の隔膜25に対向する面に、接着剤、ガラス、低融点ガラス等により接着固定され、リードピン31と干渉しないための孔232Aと検出部24と干渉しないための孔232Bとが形成されている。
絶縁部材234は、ガラスから構成されている。
【0021】
検出部24は、中心部が薄肉とされた板部241と角筒部242とを有する有底角筒状部材であり、角筒部242の開口端部が板状部233の隔膜25と対向する面に、接着剤、ガラス、低融点ガラス等により接着固定されている。
板部241には図示しない歪みゲージ等の検知部(図示せず)が設けられている。検知部はボンディングワイヤ240を介してリードピン31の先端と電気的に接続されている。検知部は、圧力により抵抗値が変化する圧力検知機能と、温度により抵抗値が変化する温度検出機能とを有する。
角筒部242は、板状部233に形成された連通孔233Aを介してケース6の内部に連通されている。
隔膜25の断面は波状に形成されている。隔膜25の外周縁部はハウジング22の取付部21と対向する面に気密状態で取り付けられている。ハウジング22、気密端子3、検出部24及び隔膜25で囲われた領域に封入液Lが封入されている。封入液Lは、被測定流体により隔膜25にかかる力を検出部24の板部241に伝達するものであり、オイル等から構成されている。
【0022】
ASIC回路部4は、リードピン31と電気的に接続されているASIC40と、ASIC40、その他の図示しない電子部品が載置され回路が設けられた基板41とを備えている。
ASIC40は、圧力及び温度の補正演算を行う電子部品である。
基板41は、センサモジュール2及び均熱板8から離れて配置されており、その両端部が支持部材42で支持されている。支持部材42は、その端部が継手1に固定されている。
【0023】
変換回路部5は、リードピン31と電気的に接続されている変換回路素子50と、変換回路素子50、その他の図示しない電子部品が載置され回路が設けられた第一基板51と、第一基板51に離れて配置され回路が設けられた第二基板52と、を備えている。
変換回路素子50は、電流又は電圧等の必要な電気出力形態変換するトランジスタからなる電子部品であり、圧力センサの使用時には、電子部品に通電することで発熱が生じる。つまり、本実施形態では、変換回路素子50が発熱素子となる。
第一基板51は基板41から離れて配置されており、その両端部が支持部材510で支持されている。
第二基板52は第一基板51から離れて配置されており、その両端部が図示しない支持部材で第一基板51に支持されている。第二基板52には回路が設けられており、回路はコード53を介して端子部7に電気的に接続されている。
【0024】
リードピン31は、一端部がベース本体231のピン挿通孔231Aに挿通され他端部が基板41を貫通するものである。基板41には一端部が接続された導電性の接続ピン32が設けられ、この接続ピン32の他端部は第一基板51と接続されている。第一基板51には一端部が接続された導電性の接続ピン33が設けられ、この接続ピン33の他端部が第二基板52に接続されている。
リードピン31は6本配置されている。図1及び図2では、リードピン31は2本図示されているが、これらの2本のリードピン31を挟んで紙面貫通方向にそれぞれ2本ずつ配置されている。
【0025】
端子部7は、中央部に取付孔71Aが形成された蓋部材71と、蓋部材71の取付孔71Aに嵌合された端子ホルダー72と、端子ホルダー72に設けられた端子73とを有する。
蓋部材71は、ケース6の端部に外周部が接合され板部711と、板部711の中心部に設けられた筒状部712とを有し、筒状部712の内周面が取付孔71Aとされる。
端子ホルダー72は、取付孔71Aに気密状態で取り付けられ、その中央部に端子73が貫通されている。端子73の端部はコード53の端部と接続されている。
【0026】
均熱板8は、ベース本体231の検出部24が設けられる面とは反対側の面に近接配置されている。ここで、図2では、均熱板8は、ベース本体231に微小な隙間をもって配置されているが、均熱板8とベース本体231とが密着しているものでもよい。図2では、絶縁部材234は、その端部がベース本体231の均熱板8側の面より後退した状態が図示されているが、絶縁部材234の端部がベース本体231より突出することがある。この場合、絶縁部材234により、均熱板8とベース本体231との間に隙間が生じるが、本実施形態では、後述する通り、均熱板8とベース本体231とは伝熱性接合部9を介して互いに熱が伝わる構成となっている。
【0027】
均熱板8とベース本体231との間に隙間がある場合には、この隙間に熱伝達媒体Hを設ける構成としてもよい。ここで、熱伝達媒体Hとは、伝熱性がありかつベース本体231と均熱板8とにそれぞれ密着したものをいい、その具体的な材質や形状等は限定されない。例えば、熱伝達媒体Hは、アルミニウムや銅からなる板材や、シリコン液から構成してもよい。熱伝達媒体Hを板材から構成する場合には、板材にリードピン31や、突出した絶縁部材234の端部との干渉を阻止するための孔部が形成されている。板材をアルミニウム等の軟質な材料から構成すれば、熱伝達媒体Hを均熱板8とベース本体231とに対してそれぞれ変形することになり、密着性を確保できる。また、熱伝達媒体Hをシリコン液から構成する場合には均熱板8とベース本体231との間にシリコン液の漏出を防止する図示しない堰が設けられる。
均熱板8の中央部分には6本のリードピン31が挿通される挿通孔8A(図1及び図2では2箇所のみ示す)が形成されている。
均熱板8は、絶縁部材234を構成するガラスより伝熱性の高い絶縁性材料から形成されている。ここで、絶縁性材料は、例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の熱伝導性に優れた材料を用いることが望ましい。
【0028】
均熱板8は、伝熱性接合部9を介してベース本体231に接合されている。伝熱性接合部9は、リードピン31と接合材Bで接合されるリードピン接合部91と、ベース本体231の端部と接合材Bで接合されるベース接合部92と、を備えている。接合材Bは、伝熱性の高い材料、例えば、半田や導電性接着剤から構成される。
【0029】
図3において、均熱板8は、平面形状が4つの角部が切り落とされた平面略矩形状の板材であり、かつ、1つの辺に平面半円状の切欠8Bが2つ並んで形成されている。
図3(A)に示される通り、リードピン接合部91は、均熱板8のベース本体231とは反対側の面(表面)のみにおいて、挿通孔8Aの周縁を含む領域にメッキ等から環状に形成されたパターンである。リードピン接合部91は、リードピン31の設置位置に応じて6カ所形成されているが、隣り合うリードピン31同士の短絡を防止するために、所定間隔離れている。
【0030】
ベース接合部92は、図3(B)に示される通り、均熱板8のベース本体231に対向する面(裏面)において切欠8Bの周縁を含んで略半円状に形成されたパターン921と、均熱板8のベース本体231と対向する面とは反対側の面(表面)において切欠8Bの周縁を含んで略半円状に形成されたパターン922と、これらのパターン921,922の間において均熱板8の側面に形成されたスルーホール923とを備え構成である。これらのパターン921,922,923はメッキ等から形成されており、パターン921,922の面積は等しい。
【0031】
以上の構成の圧力センサでは、継手1の圧力導入孔10から取付部21の案内部21Aに導入される被測定流体の圧力が変わると、圧力変化が隔膜25及び封入液Lを介して検出部24の板部241に伝達される。すると、板部241に設けられた検知部から圧力検知信号が出力され、この圧力検知信号は、ボンディングワイヤ240及びリードピン31を介してASIC回路部4、接続ピン32、変換回路部5、接続ピン33、第二基板52及びコード53を介して端子部7から外部に出力される。
【0032】
ここで、被測定流体の温度が変化して隔膜25を介して熱が伝わる封入液Lと検出部24との温度差が大きくなる。あるいは、変換回路素子50から発生した熱が接続ピン32、ASIC回路部5、リードピン31を介して封入液Lに伝達されて封入液Lと検出部24との温度差が部分的に大きくなることがある。封入液Lが熱膨張あるいは熱収縮し、封入液Lが収納される領域の圧力が変化する。すると、検出部24の板部241に設けられた検知部から出力信号が出力され、この信号は、ボンディングワイヤ240及びリードピン31を介してASIC回路部4のASIC40に送られる。ASIC40からは温度補正された信号が接続ピン32、変換回路部5及び接続ピン33を介して端子部7から外部に出力される。
封入液Lの温度と検出部24の温度とは常に同じになるとは限らず、周囲温度や変換回路素子50の発熱の影響により、温度差が生じてしまう。また、圧力センサの電源投入後の時間経過によって温度差が生じることもある。
しかし、本実施形態では、リードピン31から封入液Lに伝わる熱がリードピン接合部91を介して均熱板8に伝達されるので、封入液Lでの熱分布の偏在が少なくなり、封入液Lの温度が部位にかかわらず均一となるので、検出部24と封入液Lとの温度差が小さくなる。
【0033】
従って、本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)リードピン31の一端側に絶縁状態でベース23を取り付け、リードピン31と電気的に接続されて被測定流体の物理量変化による電気信号及び温度による電気信号を出力する検出部24をベース23に設け、検出部24を囲むように筒状のハウジング22を配置し、ハウジング22に隔膜25を気密接合し、リードピン31、ベース23、検出部24、隔膜25及びハウジング22で囲われた領域に封入液Lを封入し、リードピン31に均熱板8を取り付け、均熱板8とリードピン31とをリードピン接合部91を介して接合したから、リードピン31から熱が伝わる封入液Lと検出部24との温度差が小さくなり、適正な測定を行うことができる。しかも、電源投入後に時間が経過しても、封入液Lと検出部24との温度が均衡しているので、出力が安定する。その上、低い圧力レンジにおいても、精度の高い測定が可能となる。しかも、本実施形態では、均熱板8とベース23との間に放熱のためのスペースが不要となるので、均熱板8とベース23との間を近接させることができるので、圧力センサの小形化を図ることができる。
【0034】
(2)ベース23と均熱板8の端部で接合するためのベース接合部92を用いたので、均熱板8の異なる位置からベース23に熱が伝わることになり、封入液Lの温度分布をより均一にして温度変化による影響をより少なくすることができる。
【0035】
(3)リードピン接合部91は、均熱板8のベース23とは反対側の面のみにおいてリードピン31が挿通する挿通孔8Aの周縁を含む領域に形成されたパターンであるから、均熱板8にリードピン31を接合材Bで接合しても、接合材Bが挿通孔8Aを通ってベース23に伝わることがない。
【0036】
(4)ベース接合部92は、均熱板8の両面に形成されたパターン921,922と、これらのパターン921,922の間に形成されたスルーホール923とを備えた構成であるため、熱を均熱板8の両面に伝達しやすくなり、均熱効果を高いものにできる。
【0037】
(5)ベース23は、ベース本体231と、ベース本体231の隔膜25に対向する面に配置されたスペーサ232とを備えたから、ベース本体231と隔膜25との間に配置されたスペーサ232によって、封入液Lの量を少なくすることとができる。そのため、温度誤差の原因となる封止液の量が少なくなり、測定精度を向上させることができる。
【0038】
(6)均熱板8を絶縁性材料から形成したから、リードピン31と均熱板8との間の絶縁処理が不要となり、均熱板8の構造を簡易なものにできる。
(7)均熱板8とベース23とを互いに密着させることにより、均熱効果をより高いものにできる。
【0039】
(8)ベース本体231と均熱板8とを密着すると、熱伝達をより促進し、封入液Lの温度分布をより均一化し、温度変化による影響をより少なくすることができる。
(9)ベース本体231と均熱板8との間に伝熱性がありかつベース本体231と均熱板8とにそれぞれ密着した熱伝達媒体Hを設ければ、ベース23と均熱板8との間に隙間があっても、ベース23と均熱板8との間の熱伝達を効率的に行い、温度変化による影響をより少なくすることができる。
【実施例】
【0040】
本実施形態の効果を確認するための実施例を図4及び図5に基づいて説明する。
図4は、実施例において、電源投入後経過時間とリードピン及び検出部温度出力との関係を示すグラフである。
図4に示される通り、実施例は実施形態の構成を有する圧力センサであり、この実施例では、リードピンと検出部温度出力との温度差は、温度均衡後において、0.5℃以下であり、電源投入直後からのリードピンと検出部温度出力との温度差は、時間経過に伴う変化はあまりみられなかった。
【0041】
図5は、比較例において電源投入後経過時間とリードピン及び検出部温度出力との関係を示すグラフである。ここで、比較例とは、実施例の構成から均熱板を除いた圧力センサである。
図5に示される通り、比較例では、リードピンと検出部温度出力との温度差は、温度均衡後において、3.0℃もあり、電源投入直後からのリードピンと検出部温度出力との温度差は、時間経過に伴って徐々に増加したことがかわった。
以上の通り、均熱板を用いた実施例と均熱板を用いていない比較例とでは、リードピンと検出部との温度差に大きな相違が生じ、しかも、電源投入後に時間が経過しても、温度差の増減において大きな相違が生じることがわかった。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、均熱板8を絶縁性材料から形成したが、本発明では、別の材料、例えば、導電性材料から形成するものでもよい。導電性材料としては、例えば、アルミや銅等が望ましい。ただし、均熱板8を導電性材料から形成した場合、リードピン31同士が互いに短絡しないようにするため、リードピン31は均熱板8に絶縁性接着剤で固定される。
【0043】
さらに、均熱板8は、単一の材料から形成されるものに限らず、プリント基板の材料から形成されるものでもよい。例えば、図6に示される通り、均熱板8を、ガラスエポキシやポリイミドからなる複数層の板部80の間に銅箔パターン81を設け、ベース本体231とは反対側の板部80の表面に銅箔パターン82を設け、銅箔パターン82の表面にソルダレジスト83を設けた構成としてもよい。ここで、銅箔パターン81はベース接合部92と接続され、銅箔パターン82はリードピン接合部91と接続されている。銅箔パターン81,82を互いに近くに配置することで、絶縁性を確保しつつ熱の移動を促進させることができるので、高い均熱効果を得る。図6の構成の均熱板8では、一般的なプリント基板と同様の構成であるため、圧力センサの製造コストを低いものにできる。
また、リードピン31の本数は6本に限定されるものではなく、リードピン31の均熱板8への取付位置も限定されるものではない。すなわち、リードピン31はリードピン接合部91で均熱板8と接合しているものであれば、その具体的な構成は限定されるものではない。
【0044】
また、本発明では、ベース23をベース本体231とスペーサ232とに分けて構成することに限定されるものではなく、スペーサ232を省略したものとしてもよい。
さらに、ベース本体231の中央部分に突起を設け、この突起に係合する係合孔を均熱板8の中央部分に形成するものでもよい。この構成では、ベース23への均熱板8への位置決めを容易に行うことができる。
また、伝熱性接合部9をリードピン接合部91とベース接合部92とから構成したが、本発明では、リードピン接合部91のみから構成するものでもよい。ベース接合部92を設ける場合には、複数箇所設けてもよい。さらに、本発明に適用される物理量測定センサは圧力センサに限定されることはなく、例えば、差圧センサや温度センサにも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…継手、10…圧力導入孔、2…センサモジュール、3…気密端子、4…ASIC回路部、5…変換回路部、8…均熱板、9…伝熱性接合部、22…ハウジング、23…ベース、24…検出部、25…隔膜、31…リードピン、40…ASIC、50…変換回路素子(発熱素子)、91…リードピン接合部、92…ベース接合部、231…ベース本体、232…スペーサ、231A…ピン挿通孔、233…板状部、234…絶縁部、L…封入液、H…熱伝達媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7