特許第5931059号(P5931059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5931059ナノ粒子および複数のサーフマーリガンドを含むミセル複合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931059
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】ナノ粒子および複数のサーフマーリガンドを含むミセル複合体
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20160526BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160526BHJP
   C08F 2/16 20060101ALI20160526BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20160526BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20160526BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   A61K49/00 A
   A61K9/10
   A61K47/34
   A61K47/32
   C08F2/16
   B82Y20/00
   B82Y30/00
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-517255(P2013-517255)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-536062(P2013-536062A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2011060852
(87)【国際公開番号】WO2012001012
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】1010831.4
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506370685
【氏名又は名称】ツェントラム・フューア・アンゲヴァンテ・ナノテヒノロギー(ツェーアーエン)ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーゼルト・エルマー
(72)【発明者】
【氏名】クロウスト・ハオケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラー・ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】シュミッケ・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フーアマン・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カッペン・サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】パウアー・ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ・ハンス−ウルリッヒ
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−191510(JP,A)
【文献】 特表2008−520648(JP,A)
【文献】 特開2008−120943(JP,A)
【文献】 特表2008−540722(JP,A)
【文献】 特表2008−545520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
A61K 9/10
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 49/00
B82Y 20/00
B82Y 30/00
C08F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミセル複合体(90)を製造するための方法であって、
−疎水性部分(40)および親水性部分(30)を有する界面活性剤(20)と疎水性リガンド(25)の核に包囲されている無機ナノ粒子(10)との溶液を水混和性溶媒中で調製する工程と、
−前記界面活性剤(20)と無機ナノ粒子(10)との溶液を水中に移送する工程と、
−重合性モノマー(60)を前記水相に加える工程と、
−水溶性重合開始剤(70)を加えて乳化重合反応を開始させる工程と
を含む
方法。
【請求項2】
前記無機ナノ粒子(10)は、金属酸化物、金属ナノ粒子、希土類ドープナノ粒子または量子ドットを含む半導電性ナノ粒子のうちのいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子は前記核中の異なる無機ナノ粒子(10)の混合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤(20)は、両親媒性ブロックコポリマーであり、前記両親媒性ブロックコポリマーは、前記疎水性部分に重合性単位を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子(10)と界面活性剤(20)との溶液に疎水性重合開始剤(70)が加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機ナノ粒子(10)と界面活性剤(20)との溶液に疎水性フィラーがさらに加えられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記重合性モノマー(60)のみが重合して、ポリマー殻を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記界面活性剤(20)は、前記重合性モノマー(60)と共重合して、ポリマー殻を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性核は、前記無機ナノ粒子(10)を封入する複数の疎水性リガンド(25)を含み、前記疎水性リガンド(25)は、さらに共重合して、前記ポリマー殻を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤(20)はポリソルベート−80またはb−ポリイソプレン−b−ポリエチレンオキシドである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記重合性モノマー(60)は、アクリレート、メタクリレート、酢酸ビニル、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼンまたはそのフッ素化誘導体のうち少なくとも1つである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記親水性部分(30)、前記重合性モノマー(60)、重合性モノマー(60)のポリマー鎖(65)および前記疎水性リガンド(25)のうち少なくとも1つは、官能基および/または親和性分子を含み、
前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、アンモニウム、N−オキシド、アミド、イミン、アルジミン、ケタール、アセタール、エステル、エーテル、ジスルフィド、チオール、スルホネート、サルフェート、スルホンアミド、ジチオカーバメート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフェート、ホスホネート、シリケート、シリル、ボレート、ボロネート、エポキシ、アジド、プロパルギルオキシ、ハロゲン、ニトロ、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボジイミド、ニトリル、イソニトリル、ヒドラゾン、オキシム、およびカルボニル(アルデヒド基)からなる群より選ばれ、
前記親和性分子は、ペプチド、タンパク質、抗体もしくはその断片、単糖、オリゴ糖もしくは多糖、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド配列またはアプタマーからなる群より選ばれる合成物または生物に由来するものである
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2010年6月28日に出願された英国特許出願第1010831.4号の恩典および優先権を主張するものである。
(発明の分野)
【0002】
本発明の分野は、水性分散液中のナノ粒子の安定化に関し、より詳細には、ナノ粒子をミセル複合体に封入することによるナノ粒子の安定化に関する。本発明の分野は、さらに、ナノ粒子のミセル複合体ならびに当該ミセル複合体の製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
無機ナノ粒子は、例えば、エレクトロニクス、生物学的用途および医用画像化等の幅広い用途において用いられている。無機ナノ粒子は、例えば、SPION(超常磁性酸化鉄ナノ粒子、半導電性ナノ粒子(量子ドット等)または金属ナノ粒子であり得る。
【0004】
無機ナノ粒子の可能性を最大限に利用した用途の数は、無機ナノ粒子が疎水性であるために限定されている。無機ナノ粒子の疎水性により、水性媒体における無機ナノ粒子の溶解度は本質的に低いものとなっている。水性媒体における無機ナノ粒子のこの本質的に低い溶解度を克服するための方法は、疎水性粒子表面と親水性環境との間の境界面として作用するポリマーリガンドまたは他の安定化リガンドでナノ粒子を被覆することに依存しており、例えば、Angewandte Chemie、International Edition 2008,47,6750−6750においてR.Jinらによって記載されている。これら安定化リガンドのナノ粒子表面への付着は、物理吸着、静電引力またはファンデルワールス相互作用等の異なる物理的効果を利用することにより行うことができる。例えば、安定化リガンドは、無機ナノ粒子の表面に対して高親和性を示す適切な末端アンカー基(例えば、ジヒドロリポ酸およびその誘導体)を有し得る。しかしながら、これらの方法の問題点として知られているのは、例えば、イオン強度、pH値、水性媒体のタンパク質濃度といった異なる要因に応じて、安定化リガンドがしばしば欠点を呈するということである。例えば、ナノ粒子表面から時間とともに徐々に分離することにより、例えば、制御されない凝集、析出、蛍光や磁気特性等の物理的特性の変化、または毒性等の生物学的特性の変化といった好ましくない効果が生じ得る。さらに、リガンドの分離はまた、無機ナノ粒子から表面原子を取り除くことにより無機ナノ粒子の性能に負の影響を与え得る。
【0005】
ナノ粒子表面からのリガンドの分離を最小限とするために安定化リガンドを架橋するいくつかの試みがなされている(米国特許第7754329(B2)号;国際公開第2010100108(A1)号)。しかしながら、これらの方法は、特別に設計された架橋性リガンドに限られたものでる。さらに、架橋殻の厚さひいては最終の水溶化ナノ粒子の安定性は、リガンドの選択によって決まり、架橋プロセスによって調整することはできない。
【0006】
無機ナノ粒子の特性は、シングル無機ナノ粒子を集合させて多数のナノ粒子を含む集合体とすることにより変更することができ、また、ナノ粒子のクラスタ率に応じて制御することができる。例えば、Matsumotoら(Magnetic Resonance Imaging,2008,26、994−998)によって記載されているように、例えば、MRIにおいては、クラスタ化したSPIONは、非クラスタ化SPIONよりも高いr2緩和率を示す。
【0007】
量子ドットについては、量子ドットのクラスタにおいて無放射エネルギー移動が起こり、これにより、蛍光量子収率が低下し得る。用途によっては、異なるクラスタサイズが要求され、したがって、ナノ粒子を水中に移送する技術は、クラスタのサイズをシングルナノ粒子から大型のクラスタに調整することを可能にするものであるべきである。
(従来技術)
【0008】
ミクロ乳化重合は、粒度分布の狭いナノスケールの有機ポリマー粒子を製造することができる技術である。これらの方法により、重合性モノマーは、界面活性剤を含有する水溶液に移送される。この水相においては、溶解度が限定されているために、モノマーの大部分が肉眼で見える液滴を形成しているのに対し、界面活性剤はナノスケールのミセルを形成している。可溶化モノマーの一部は、続いて、モノマー液滴から界面活性剤のミセル中に拡散してそこで重合し、これにより、均一なラテックス粒子が形成される。(G.Becker,Polystyrol,Hanser Miinchen,1996)。例えば、熱力学的安定性が無限であるミセルエマルジョンをエネルギーを印加することなく生成することができるため、これらの方法は非常に魅力的であるが、モノマーとは異なり、ミセル中への水相を介したナノ粒子の拡散は不可能であるというだけの理由で、これまでナノ粒子の封入には適用できなかった。むしろ、無機ナノ粒子は、枯渇していくモノマー液滴中に留まり、最終的に、不定構造の沈殿物へと無制御に集塊することになるであろう。
【0009】
これに対し、ミニ乳化重合技術は、ミクロ乳化重合技術とは異なり、エマルジョンを形成するためにエネルギーの印加(例えば、超音波処理、Ultra−TurraxR、高圧均一化処理)を必要とする。ミニエマルジョンは、エマルジョンの特殊な形態である。ミニエマルジョンは、2つの相互不溶性液相、1つの界面活性剤および1つの補助界面活性剤を含む混合物をせん断することにより得られる。せん断は、通常、上記混合物の超音波処理により、あるいは高圧ホモジナイザーを用いて行われ、これらは高せん断プロセスである(http://en.wikipedia.org/wiki/Miniemulsion,:Miniemulsion Polymerization,F.Joseph Schork et al,Adv Polym Sci(2005)175:129−255も参照されたい)。
【0010】
国際公開第2008/134734(A1)号文献は、ポリマー親水性ブロックと、必要に応じて、任意に架橋性であるかまたは架橋された(アミノ酸ブロック)と、別のポリ(アミノ酸)ブロックとを含むマルチブロックコポリマーを含む、内部に造影剤が封入されたミセルであって、当該ミセルが内核を有し、必要に応じて、架橋性外核または架橋外核および親水性殻を有することを特徴とするミセルを開示している。ミセルの形成は、架橋マルチブロックポリマーに基づいている。同開示は、当業者が1ミセル当たりのナノ粒子数を決定することを可能にする方法を提示していない。
【0011】
国際公開第2008/137733(A2)号には、ミセル構造、ミセル構造の製造方法、画像化(例えば、癌および疾患ならびにその関連生体系(例えば、癌または疾患に関連したタンパク質、抗体等)方法、治療薬および/または生体化合物の送達方法等が記載されている。ナノ粒子は、1つのミセル構造当たりのナノ粒子数を調整できるか否かについての情報なしに両親媒性ブロックコポリマーに封入される。
【0012】
米国特許第2004/033345(A1)号には、金属ナノ粒子または半導体ナノ粒子の内核を含む水溶性錯体が開示されており、当該ナノ粒子は、ミセルに封入された疎水性リガンドで被覆されている。水性媒体において、このミセルは、複数の親水性部分を含む親水性殻と、複数の疎水性部分を含む疎水性核とを含み、各疎水性部分は、それぞれが最低8個の原子を含む少なくとも1つの鎖を含み、各部分の全ての鎖における合計原子数が少なくとも24個である。ミセルは、約5nmの最小平均直径および約45nmの最大平均直径を有する。同開示は、ナノ粒子を包囲する架橋静的コポリマーについて言及しており、一定数のナノ粒子を封入することは不可能である。
【0013】
Landfesterらは、ミニ乳化重合技術による酸化鉄ナノ粒子の封入について記載している(J.Phys.:Condens.Matter,2003,15,1345−1361)。ここでは、超音波処理による高剪断力を使用して水中にナノ粒子を分散させる。ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート−80に並ぶ界面活性剤として、レシチンおよびコール酸のナトリウム塩が使用された。
【0014】
Paquetらは、ミニ乳化重合技術による酸化鉄ナノ粒子の封入について記載している(Langmir,2010、26(8),5388−5396)。同文献においては、超音波処理を使用してナノ粒子を水中に分散させている。
【0015】
しかしながら、高剪断力の印加は、高感受性コロイド系に対してはしばしば不利となり、適用可能性が非常に限定されたものとなる。例えば、高剪断力により、蛍光等の量子ドットといったナノ粒子の性能および量子収率が低下する。
【0016】
超音波処理もまた、例えば、エマルジョン中に存在する分子が異なる高感受性官能基、高感度三次構造または不安定な化学結合(例えば、タンパク質またはポリマーにおいて一般的であるような)を有している場合には実施が不可能である。超音波処理によるタンパク質の変性は当業者に周知である。超音波処理等によるポリマーの劣化については、例えば、BasedowらのDie Makromolekulare Chemie,1975,176,745−757において詳細に記載されている。
【0017】
もう一つの不利な点は、モノマーによって形成された疎水性相におけるナノ粒子の溶解度がしばしば限定されるということである。所与の量のナノ粒子を完全に溶解させるためには、不相応に大量のモノマーが必要となる場合がある。この問題を解消するため、プロセスの後段階で除去する必要がある補助溶剤を使用しなければならない。このため、通常、高温が必要となり(例えば、Paquetらによって90℃までの2時間の加熱が適用されており(Langmuir,2010,26(8),5388-5396)、このこともまた、エマルジョンの高感受性成分にとって有害となる。
【0018】
無機ナノ粒子の封入に適用されるミニ乳化重合技術のさらなる短所は、クラスタサイズの制御が困難であるということである。とりわけ、小型クラスタの生成、特に、シングルナノ粒子の封入が著しく制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
驚くべきことに、マイクロ乳化重合技術をナノ粒子の封入に使用可能であることが見出された。第1の態様において、本開示は、ナノ粒子の水性環境中への安定した分散を可能にするミセル複合体を教示するものである。このミセル複合体は、ミセル複合体の核中に少なくとも1つのナノ粒子を含む。複数の界面活性剤が、当該界面活性剤の親水性部分がミセル複合体の核の周囲に親水性殻を形成するように、ナノ粒子の表面で複数の疎水性リガンドと共集合している。親水性殻により、水性環境における分散性が保証される。少なくとも1種の重合性モノマーから構成され、必要に応じて共有結合的に相互接続される複数のポリマー鎖は、複数の疎水性リガンドと界面活性剤とが必要に応じて共有結合的に付着するマトリクスを含み、これにより、ミセル複合体の核中でナノ粒子を封入する制御可能な安定した疎水性殻が形成される。
【0020】
さらなる態様において、本開示はまた、本開示のミセル複合体を製造するための方法を教示するものである。
【0021】
本開示の方法の一つの利点は、例えば、せん断(Ultra−TurraxR)または超音波処理によってエマルジョンを形成するために系に対してエネルギーを印可する必要がないということである。これにより、量子ドット、不安定な化学構造を有する分子またはポリマーといった、このような処理によって損傷を受け易い成分に対して上記技術を適用することが可能となる。
【0022】
本開示の方法のさらなる利点は、モノマーの量および/または反応時間の延長もしくは短縮により、ポリマー殻の厚さを調整することができるということである。
【0023】
重合性モノマー、ならびに必要に応じて重合性界面活性剤および重合性リガンドは、高反応性の化学物質、全血、血清または血漿等の生体液、高イオン強度を有する水溶液、緩衝剤、およびミセル分解物に対して高い安定性を有する系を高希釈条件下で生成する。
【0024】
ミセル複合体に組み込まれる無機ナノ粒子の数は、ナノ粒子の界面活性剤に対する割合によって調整することができる。この技術により、シングルナノ粒子またはナノ粒子のクラスタの封入が可能となる。
【0025】
SPIONを多数のSPIONを含むクラスタにクラスタ化することは、例えば、磁気共鳴技術または磁気粒子画像化を用いた診断用画像化のための造影剤の磁気特性を変更するために有利となり得ることが文献から周知である。
【0026】
本発明は、必要に応じて重合性リガンドを表面に担持した無機ナノ粒子を封入するための方法を開示する。一種類または異なる種類であり得る当該ナノ粒子を、一種類または異なる種類であり得る界面活性剤20と水混和性有機溶媒またはその混合物に共溶解させる。当該界面活性剤20は、任意の重合性疎水性部分40と親水性部分30とから構成される。必要に応じて、無機ナノ粒子と界面活性剤とを混合することにより得られる有機溶液は、疎水性重合開始剤をさらに含み得る。当該有機溶液を、ミセル複合体が自然形成される水溶液中に移送し、複数の上記界面活性剤20が1つのミセル複合体当たり少なくとも1つの無機ナノ粒子を封入している。重合性モノマーおよび必要に応じて親水性重合開始剤を混合し、重合反応が行われ、これにより、ミセル複合体90が生成される。
【0027】
一態様において、上記方法は、ミセル複合体90の疎水性領域内部での重合反応の反応サイトへの重合性モノマーの制御された体積流れを開示するものである。
【0028】
本発明のさらなる実施形態において、上記方法は、バッチプロセスとして実行することができる。
【0029】
本発明のさらなる実施形態において、上記方法は、半バッチ処理、例えば、モノマー溶液の反応混合物中への供給として実行することができる。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、上記方法は、連続フロープロセスとして実行することができる。
【0031】
本発明はまた、例えば、放射線診断画像化、医用画像化および治療用途における造影剤としてのミセル複合体の使用を教示するものである。したがって、本開示のミセル複合体は、合成分子もしくは生体分子または膜、ペプチドもしくは他の細胞器官といった細胞構造のインビトロ、インビボおよび/またはインサイチュでの画像化あるいは染色において使用されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面および例を用いて本開示を説明するが、本開示は、記載される実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図1aは、ミセル複合体90の模式的概観を示す。
【0034】
図1bは、ミセル複合体91の模式的概観を示す。
【0035】
図1cは、ミセル複合体92の模式的概観を示す。
【0036】
図2は、界面活性剤20の疎水性部分とナノ粒子のリガンドとがミセル複合体90を形成する、本発明の一態様による反応の模式的概観を示す。
【0037】
図3は、a)クラスタサイズをサーフマーリガンド量に対するナノ粒子量の関数として示し、b)DLS測定(体積)を実施例2に係るクラスタの直径の関数として示す。
【0038】
図4は、図7に示す生成物のTEM画像を示し、実施例2に係る均一なミセル複合体90を示す。
【0039】
図5は、実施例3に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0040】
図6は、DLS測定(強度)を実施例3に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0041】
図7は、実施例4に係るa)左およびb):酸化鉄ナノ粒子、ならびにa)右:金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0042】
図8は、実施例5に係るモノマーを異なる量で加えることによる本開示に係るミセル複合体90の形成中のポリマー殻成長の模式図(DLS測定(強度および体積))を示す。
【0043】
図9は、実施例6に係る反応時間を延長することによる本開示に係るミセル複合体90の形成中のポリマー殻成長の模式図(DLS測定(強度)を示す。
【0044】
図10は、実施例6に係る反応時間を延長することによる本開示に係るミセル複合体90の形成中のポリマー殻成長の模式図を示す。図10 a:重合の5分後に取り出した試料の透過型電子顕微鏡画像。図10b:重合の90分後に取り出した試料の透過型電子顕微鏡画像。
【0045】
図11は、実施例7に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0046】
図12は、DLS測定(強度)を実施例7に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0047】
図13は、実施例8に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0048】
図14は、DLS測定(強度)を実施例8に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0049】
図15は、実施例9に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0050】
図16は、DLS測定(強度)を実施例9に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0051】
図17は、実施例10に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0052】
図18は、DLS測定(強度)を実施例10に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0053】
図19は、実施例11に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0054】
図20は、DLS測定(強度)を実施例11に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0055】
図21は、実施例12に係る酸化鉄ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0056】
図22は、DLS測定(強度)を実施例12に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0057】
図23は、実施例13に係るInPナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0058】
図24は、DLS測定(強度)を実施例13に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0059】
図25は、実施例14に係るCdSe/CdS/ZnS(核/殻/殻)量子ドットナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0060】
図26は、DLS測定(強度)を実施例14に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0061】
図27は、実施例14に係るミセル複合体90の蛍光と濃度との比例関係を示す。この比例関係は、ミセル複合体90の安定性を示している。
【0062】
図28は、実施例15に係る酸化鉄ナノ粒子および金ナノ粒子を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0063】
図29は、DLS測定(強度)を実施例15に係るミセル複合体90の直径の関数として示す。
【0064】
図30は、実施例16に係るフッ素化重合性基を含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。Fe−とF−との比は、EDXにより求めた。
【0065】
図31は、実施例17に係る、CdSe/CdS/ZnS(核/殻/殻)量子ドットナノ粒子と、フィラーとしてのスクアレンとを含むミセル複合体90の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0066】
図32は、実施例17に係るDLS測定(強度)をミセル複合体90の直径の関数として示す。
(発明の詳細な説明)
【0067】
本開示およびその利点を完全な理解のため、以下の詳細な説明を添付図面と併せて参照されたい。
【0068】
なお、本明細書に開示される本開示の様々な態様は、本発明を製造および使用するための特定の方法の例示に過ぎず、したがって、添付の請求の範囲、詳細な説明および添付図面と併せて考慮した場合に開示の範囲を限定するものではないと理解される。
【0069】
本開示の一つの態様からの特徴は、本明細書における本開示の説明または実施例を検討すれば当業者には明らかであり、そのような特徴は、本開示の他の態様からの特徴を組み合わせることができると理解される。
【0070】
本開示の文脈において、「官能基」は、例えば、特定の目的のために、予測可能な方法で相互作用する共有結合的に配置された一群の原子等の化学的実体として理解されるべきである。本発明の一態様において、この目的は、無機ナノ粒子の表面に有機分子を付着させることであり得る。
【0071】
本発明のさらなる態様において、上記目的は、ミセル複合体のポリマー殻にリンカーを付着させることであり得る。
【0072】
本発明のさらなる態様において、上記目的は、生物学的実体と相互作用可能な親和性分子を付着させることであり得る。
【0073】
本発明のさらなる態様において、上記目的は、別の官能基への変換であり得る。本明細書において明示されない場合は、ハロゲンには、フルオロ、クロロ、ブロモおよびイオドが含まれる。
【0074】
本開示の文脈において、「中心」という用語は、ミセル複合体90のいずれかの部分により封入された無機ナノ粒子10を指し、ミセル複合体90の幾何中心に必ずしも相当しない。
【0075】
ラジカル重合を開始するため、多くの異なる技術(ホモリシス、熱開始反応、誘導分解、電子伝達、光開始反応、超音波開始反応、放射開始反応等)が文献において公知である(M.Krzysztof,Handbook of radical polymerization,Wiley−Interscience,2002)。本発明において、重合の開始は、開始技術に限定されるものではないと理解される。
【0076】
バッチ、半バッチおよび連続フロープロセスという用語は、文献におけるものと同様に理解されるべきである(M.Krzysztof,Handbook of radical polymerization,Wiley−Interscience,2002,p.339ff.)。本発明の一態様において、プロセス(バッチ、半バッチ、および連続フロー)は、乳化重合についてのみ言及されるべきである。本発明のさらなる態様において、水溶液中への有機溶液の移送もプロセス全体に含めるべきである。水溶液中への有機溶液の移送が含まれる場合、「半バッチ」は、モノマーおよび/または開始剤もしくはその溶液の反応槽への供給であると定義される。
【0077】
本開示の精神における有機溶液と水溶液との混合物の作製の文脈において、「中への移送(Transfer into)」は、移送が、異なる技術的手段、例えば、手動または機械により、滴下漏斗、シリンジ、またはシリンジポンプ等のポンプ、ジェット等を用いて行われ得るものであると理解される。さらに、当該移送は、様々な供給速度、例えば、滴下または高速の供給速度で行うことができると理解される。
【0078】
図1は、ミセル複合体90の模式的概観を示す。
【0079】
本発明は、ミセル複合体90、特に、水に安定なミセル複合体90を提供するものである。図1を参照すると、ミセル複合体90は、表面に疎水性リガンド25を担持した無機ナノ粒子10と、いくつかの実施形態においてはサーフマーと呼ばれる重合性界面活性剤である界面活性剤20と、ミセル複合体90の疎水性領域内部で重合するモノマーとを含む。製造プロセス中に機能性モノマーまたは界面活性剤を添加することにより、ミセル複合体90の表面特性を調整することが可能となる。
【0080】
無機ナノ粒子10は、金属ナノ粒子(例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Ni、またはNixPty、CoxPtyFexPty、NixPdy、CoxPdy、FexPdyといった合金)、金属酸化物ナノ粒子(例えば、酸化鉄、TiO2)、半導体ナノ粒子または希土類ドープナノ粒子(例えば、YVO3:La LaPO4:Ce)のいずれかであり得る。限定目的ではない半導体量子ドット材料の例としては、CdSe、CdS、ZnSe、ZnS、CuS、CuSe(II−VI材料)、PbS、PbSe、PbTe(IV−VI材料)、InN、InP、InAs(III−V材料)およびInSe、GaSe(III−VI材料)が挙げられる。半導体ナノ粒子10は、核/殻(例えば、CdSe/CdS、CdSe/ZnS))または核/殻/殻ナノ粒子(例えば、CdSe/CdS/ZnS)であってもよい。本発明の一態様において、半導体ナノ粒子は、CuxInyGazSe(CIGS)、CuxInySe、CuxGaySe、InxGaySeとの混合セレニドからなる。
【0081】
任意には、上記ナノ粒子は、放射性同位体を含み得る。
【0082】
疎水性リガンド25は、無機ナノ粒子表面および疎水性部分に対して親和性を有する基を有する分子である。疎水性部分は、分岐(TOP)していても、あるいは直鎖(例えば、オレイルアミン)であってもよい。リガンドは、トリオクチルホスフィン(TOP)もしくはトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)またはチオール、アミン、カルボン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、シランといった末端接着性基を有する飽和および(末端)不飽和アルキル鎖であり得る。これらのうちのいくつかは、ナノ粒子の合成時にすでに存在していてもよい。本発明のいくつかの態様において、アルキル鎖は、例えば、ジエチレントリアミンといった二座配位または多座配位の親和性基、ジチオカーバメート親和性基またはジヒドロリポ酸末端を有する。本発明のいくつかの態様において、疎水性リガンド25は、例えばポリイソプレン-ジエチレントリアミン(PI−DETA)といった親和性基を有するポリマーであってもよい。当該ポリマーは、完全に飽和していてもよいし、あるいは、本開示の実施形態においては二重結合または三重結合といった重合性単位を含む。
【0083】
界面活性剤20の一般的な構造特性としては、二相系の表面張力を低下させることが可能な両親媒性分子であるということがある。ミセル複合体90の疎水性核を封入する界面活性剤20は、その親水性領域においてイオン性または非イオン性のいずれであってもよい。イオン基はまた、双性イオンあるいはカルボキシベタイン、ホスホベタイン(例えば、ホスファチジルコリン)、ホスホノベタインまたはスルホベタイン構造といったベタイン構造であってもよい。界面活性剤20が、連鎖反応において共重合可能な重合性単位をその疎水性領域において有している場合、これはサーフマーと呼ばれる。サーフマーリガンドは当該技術分野において公知である。「サーフマー」という用語は、界面活性剤モノマーという言葉から派生したものである。界面活性剤またはサーフマーは、それぞれ、所定の構造を有する低分子量分子であっても、あるいは両親媒性のジブロックコポリマーまたはマルチブロックコポリマーであってもよい。
【0084】
重合性炭素−炭素二重結合を有する非イオン性界面活性剤の一例は、市販のポリソルベート−80サーフマー(TweenR80−商標はICIに登録されている)である。ポリソルベート−80サーフマーは、ポリエトキシル化ソルビタンとオレイン酸とから得られる、非イオン性界面活性剤モノマーである。ポリソルベート−80の親水性部分30は、ポリエーテルを含む。サーフマーリガンドの疎水性部分40は、炭素−炭素二重結合を含有し、疎水性部分40は、オレイン酸のエステルである。一部の実施形態において、界面活性剤20は、二重結合または三重結合といった重合性単位をその疎水性部分に含む両親媒性のジブロックコポリマーまたはマルチブロックコポリマーであり得る。このようなポリマーの一例は、b−ポリイソプレン−b−ポリエチレンオキシドである。ミセル複合体90の疎水性核の周囲の界面活性剤20の層もまた、2つ以上の異なる界面活性剤20の混合物を含有している。
【0085】
本発明の一部の実施形態において、その疎水性部分にいかなる重合性単位も含まない乳化剤の層もまた、ミセル複合体90を封入することができる。そのような乳化剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)である。
【0086】
ミセル複合体90の表面に官能基を導入するために、洗浄剤のような挙動を示す他の機能性モノマー(例えば、Raschig GmbH製RaluRmer SPV)を導入することが可能である。例えば、水中粒子分散において単独では安定化しない機能性モノマーをSDBSとともに混合物として使用することができる。
【0087】
ミセル複合体の疎水性核の内部で重合可能なモノマーが使用される。複合体90の疎水性領域において既存の重合性単位を重合するために使用されるモノマーまたはモノマー混合物は、水に溶解しにくい。使用可能なモノマーとしては、アクリレート(例えば、アクリル酸エチル)、メタクリレート(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸アリル、アクリル酸、メタクリル酸(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、スチレン(ST)またはビニルベンゼン(VB)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)、メタクリル酸tert−ブチルアミノエチル(TBAEMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、およびメタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、メタクリル酸アセチルアセトキシエチル)オレフィン(例えば、イソプレン)またはビニルベンゼンおよびその誘導体が挙げられる。ビニルベンゼンおよび/またはジビニルベンゼンの誘導体としては、フッ素化ビニルベンゼンおよび/またはフッ素化ジビニルベンゼンが含まれ得る。ビニルベンゼンおよび/またはジビニルベンゼンの誘導体は、ビニルベンゼンおよび/またはジビニルベンゼンのオルト異性体とパラ異性体との混合物であってもよい。両親媒特性を有しないため補助界面活性剤とともに適用可能な機能性モノマーを、ミセル複合体90に統計的に組み込まれるようにモノマーと混合することができる。
【0088】
重合開始剤70は、活性種をポリマー連鎖反応を開始するモノマーに変換可能な熱刺激、光化学刺激または酸化還元刺激によって形成する分子である。本発明の文脈において、開始剤70は、ミセル複合体90の疎水性核内部でモノマーの重合を開始させるために使用される。熱的に開始される分子の一例はジベンゾイルペロキシドであり、光化学開始剤は、(例えば、DAROCURR1173)である。開始剤70は、単一の種または開始剤種の混合物として使用することができる。重合開始剤70は、水溶性重合開始剤70または疎水性重合開始剤70であってもよい。水溶性重合開始剤70は、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−044)またはペルオキソ二硫酸ナトリウム(NaPs)であってもよい。疎水性重合開始剤70は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であってもよい。重合開始剤70は、上記の反応に使用される溶媒に応じて水溶性重合開始剤70または疎水性重合開始剤70であり得る。
【0089】
いくつかの場合において、ミセル複合体90の核をより疎水性にするのが望ましいことがある。これは、疎水性フィラー分子を添加することによって達成することができる。このようなフィラー分子は、二重結合または三重結合といった重合性単位を含む長いアルキル鎖、例えば、スクアレンであってもよい。これらはまた、疎水性コモノマーとしても理解することができる。スクアレンの場合、機能が2つになり得る。その疎水性に加え、酸化防止剤としても作用することが知られている。これは、疎水性核が半導体量子ドットを含む場合に有利であり得る。なぜなら、酸化防止剤は、半導体量子ドットの蛍光強度を低下させる一重項酸素をクエンチすることができるからである。
【0090】
ミセル複合体90は、ミセル複合体90の中心に疎水性核を含む。ミセル複合体90の核は、少なくとも1つの無機ナノ粒子10を含む。
【0091】
ミセル複合体90の各無機ナノ粒子10を包囲しているのは、接着性基を介して無機ナノ粒子表面に付着した表面付着疎水性リガンド25の殻である(図1)。一部の実施形態において、疎水性リガンド25は、重合性官能性単位および/または重合性二重結合または三重結合を含み得る。典型的には、その合成後に、無機ナノ粒子はその外表面において疎水性であり、その表面にトリオクチルホスフィン(TOP)、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)およびモノアルキル界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オレイン酸)を有する。これらの最初の合成リガンドは、合成後のナノ粒子を新たなリガンドの過剰溶液中で反応させることにより交換することができる。このいわゆるリガンド交換は、ナノ粒子分散に用いられる標準的な手順である。このようなリガンド交換により、重合性単位を含む疎水性リガンド25を無機ナノ粒子10の表面に導入することができる。本発明の一態様において、合成リガンドは、重合性疎水性リガンド25によって置換されず、後合成処理を行うことなくナノ粒子10が使用される。複数の疎水性リガンド25の種が、ナノ粒子表面に同時に存在することができる。
【0092】
付着疎水性リガンド25を有する無機ナノ粒子10は、ミセル複合体90の疎水性核を形成する。核における無機ナノ粒子10の数は限定されない。本発明のいくつかの態様において、クラスタ化した無機ナノ粒子を1つのミセル複合体90の内部で調製することより、系の物理化学的性質が変わり得る。例えば、超常磁性酸化鉄ナノ粒子のクラスタが、その超常磁性を保持しながらも、はるかに大きい直径を有するSPIONについてしばしば見られる非常に高い緩和率r2を示すことは周知である。この高い緩和率により、SPIONクラスタは、磁気共鳴画像化にとって有用となっている。クラスタ内部のナノ粒子種の数は、1つに限定されない。2つ以上の異なる種類のナノ粒子の混合物も含み得る。
【0093】
親水性部分30と疎水性部分40とを含む界面活性剤20を、疎水性部分40が親水性環境から離れる方向に向いた状態で、ミセル複合体90の核の周囲に集合させる。異なる界面活性剤種を使用することにより、ミセル複合体90の親水性表面に異なる機能を導入することが可能である。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態において、自己集合層を形成することにより疎水性核を包囲するために、SDSまたはSDBSといった、重合性単位を含まない既存の界面活性剤を使用する。水性環境においてナノ粒子10を安定化させ、ミセル複合体90の疎水性領域内部で重合を可能にするにはこれで十分である。本発明の一実施形態において、その疎水性部分40に重合性単位を含み、「サーフマー」とも呼ばれる界面活性剤20が使用される。
【0095】
本開示の一実施形態において、ミセル複合体90の疎水性領域内部にポリマー殻を形成するために重合性モノマーが使用され、ポリマー殻は、ミセル複合体90の疎水性核内部で埋め込み無機ナノ粒子をポリマーマトリクス内部に封入し、これらを環境から保護する。
【0096】
いくつかの実施形態において、インサイチュ形成されたポリマー殻は、界面活性剤殻の疎水性リガンド25と疎水性部分40とを共重合させることなく、ミセル複合体の疎水性核に無機ナノ粒子10を封入する。得られるポリマーは、純粋に疎水性相互作用によってのみ、疎水性核に無機ナノ粒子10を封入する。
【0097】
本発明の一態様において、重合性モノマーは、疎水性リガンド25の重合性単位と共重合してポリマー殻を形成するが、界面活性剤リガンド20の疎水性部分40を共有結合的に重合しない。このように構成されたミセル複合体90の合成後、例えば透析により、界面活性剤20を除去することができる。このように、疎水性外表面を有する無機ポリマーのハイブリッドラテックス粒子が形成される。
【0098】
本発明のさらなる態様において、多数の重合性モノマー60が界面活性剤20の疎水性部分40の重合性単位と共重合して、無機ナノ粒子または多数の無機ナノ粒子をミセル複合体90に封入するポリマー殻を形成する。
【0099】
本発明の一実施形態において、疎水性リガンド25の重合性単位および界面活性剤20の疎水性部分40の重合性単位は、いずれもモノマー60と共重合されて、ポリマー殻におけるすべての成分を実質的に重合する。これにより、無機ナノ粒子がポリマーマトリクスに不可逆的に埋め込まれたハイブリッドラテックス粒子が生成され、これにより、当該粒子は高希釈条件に対して非感受性となる。臨界ミセル濃度未満では、ミセル凝集体は、重合されていない場合、その構成両親媒性物質へと分解される。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態において、任意には、疎水性フィラーは共重合されて、ミセル核の疎水性を高める。このフィラーは、スクアレンからなり得、スクアレンは、さらに、一重項酸素をクエンチし、これにより、酸化され易いミセル複合体の成分を安定化させる酸化防止剤として作用することが知られている。
【0101】
図2は、ミセル複合体90を製造するための方法を示す。図2(左上)の工程1において、無機ナノ粒子10を水混和性有機溶媒または有機溶媒の水混和性混合物中で界面活性剤20と混合する。例えば、有機溶媒は、テトラヒドロフランもしくはアセトニトリル、またはその混合物である。疎水性開始剤が使用される場合には、有機溶液(図示せず)にも加える。本発明のいくつかの態様において、界面活性を有する機能性モノマーも有機溶液中で界面活性剤20およびナノ粒子10と混合する。
【0102】
図2の工程2において、界面活性剤20とナノ粒子との溶液を水に移送し、界面活性剤20は、ナノ粒子10を封入する疎水性核を包囲する。特に、疎水性部分40がミセル複合体の疎水性核を包囲する。界面活性剤20は図2の工程2に示すように、無機ナノ粒子10を含む疎水性核の周囲に自己集合層を形成する。ナノ粒子10と界面活性剤20との混合比を変化させることにより、1クラスタ当たりのナノ粒子10の数を調整することができる。本発明の精神においては、少なくとも1つのナノ粒子10が1つのミセル複合体90に存在する。ミセル複合体が多数のナノ粒子を含む場合、当該ナノ粒子は、1種類であってもよく、あるいは異なる種類であってもよい。
【0103】
図2の工程3において、重合性モノマー60を水相に加える。重合性モノマーの水に対する溶解度は低いにもかかわらず、粒子を充填したミセル複合体90中への安定化したモノマーの水相からの拡散が起こり、これにより、重合反応時にポリマー殻の厚さが増加する。
【0104】
図2の工程4において、水溶性重合開始剤70(不図示)が加えられ、これにより、乳化重合反応が開始される。水性開始剤の場合、反応は、オリゴマーが成長する水中で開始される。反応の過程において、オリゴマーは、ますます疎水性の高さを増し、重合反応が続いているミセル複合体90中に移動する。溶解度が低く、モノマーエマルジョンからミセルへモノマーが流動するため、反応は、ミセル複合体中への拡散制御された質量フローによって左右される。ポリマー殻の厚さは、反応時間の調整もしくは反応混合物に添加されるモノマーの量、またはこれらの組み合わせによって制御することができる。
【0105】
本発明のさらなる実施形態において、水中への移送の前に、疎水性開始剤70を水混和性有機溶液に加える。ミセルの形成後、重合性モノマー60の重合反応がミセル複合体90内部でそのまま開始される。
【0106】
本発明の一態様において、界面活性剤20の疎水性部分40および/または疎水性リガンド25は、重合性モノマー60と共重合されてポリマー殻を形成し、それにより、無機ナノ粒子10がポリマーマトリクスに封入された重合ハイブリッドラテックス粒子を提供する重合性二重結合または三重結合を有し得る。
【0107】
本発明の一態様において、界面活性剤20は、親水性部分30において、生物学的実体と相互作用可能な親和性分子による官能基化に適した末端または非末端官能基を提供する。
【0108】
本発明のさらなる実施形態において、各成分、例えば、ミセル複合体90の重合反応に関与する複数の界面活性剤、複数の疎水性リガンド、重合性モノマーまたはその任意の組み合わせは、生物学的実体と相互作用可能なオルトゴナルな官能基または親和性分子を任意に含み得、これらは必要に応じて中間のリンカーまたはその任意の組み合わせを介して結合され、これにより、ミセル複合体91または92(図1aおよび図1b)が形成される。当該親和性分子は、組織、細胞、ウィルス、受容体、膜、抗体、イオンチャネル、ヌクレオチド配列、酵素、レクチン等といった生物学的実体とインビボ、エキソビボまたはインビトロで相互作用し得る。親和性分子は、穏やかな重合反応条件による影響を受けない、小型の薬らしい分子、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体またはその断片)、単糖、オリゴ糖もしくは多糖またはヌクレオチド配列(例えば、アプタマー)であってもよい。親和性分子は、例えば、“Protective groups in Organic Synthesis” by Peter G.M.Wuts,Theodora W.Greene,Wiley & Sons,2006において言及されているような当業者に周知の保護基によって必要に応じて保護されてもよい。当該保護基は、任意には、ミセル複合体91または92の形成後に除去されてもよい。生物学的実体と相互作用可能な親和性分子によって任意に修飾されたミセル複合体90は、バイオマーカー、プローブ、治療薬、またはインビボ、エキソビボもしくはインビトロでの診断剤として有用である。例えば、乳化重合プロセスに関与する成分は、重合条件にオルトゴナルな官能基を有してもよく、例えば、これらの官能基は、重合反応に関与せず、安定したままとなる。例えば、重合性モノマーは、当該官能基を有していてもよい。当該官能基は、任意には、重合反応条件とは異なる反応条件下で連続的に変換することができる。例えば、重合性モノマーは、2,3,4,5,6−ペンタフルオロビニルベンゼンを、単独でまたは他の重合性モノマーとの組み合わせにおいて含む。2,3,4,5,6−ペンタフルオロビニルベンゼンの4の位置にあるフルオロ原子が穏やかな条件下での、例えば、チオグリコシドといったチオール[C.Remzi Becer et al.,Macromolecules 2009,42,2387−2394]または求核性アミンなどによる求核置換の影響を受けやすいことは文献から公知である。例えば、官能基がアジド部分である場合、文献において周知である("Click"-chemistry)1,3-双極性環状付加反応に関与することができる。別の例において、重合性モノマーは、誘導体、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸等のエステルを、単独または他の重合性モノマーとの組み合わせとして含み得、当該誘導体において、ミセル複合体90の重合後、エステル官能基は連続的に変換され得る。この変換は、必要に応じて中間のリンカーを介して、生物学的実体と相互作用可能な親和性分子の付着において起こり得る。当該リンカーは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルから構成され得る。
【0109】
生物学的実体と相互作用可能な上記親和性分子は、当該技術分野で公知である一般的なカップリング手順、例えば、EDC NHSまたはSulfo−NHS試薬等を使用することによって付着させてもよい。
【0110】
本発明のさらなる実施形態は、ミセル複合体91または92を生成するためのプロセスを含み、例えば、上記界面活性剤、疎水性リガンド、および重合性モノマーといった成分が、オルトゴナルな官能基、リンカー、または生物学的実体と相互作用可能な親和性分子の組み合わせを任意に有し、それにより、広範囲の生物学的性質においてミセル複合体91または92の修飾が簡易となる。
【発明を実施するための形態】
【0111】
(実施例)
実施例1。シード乳化重合によるナノ粒子の封入。
【0112】
以下の一般的条件に従い、シード乳化重合によるナノ粒子の封入を行った。保存溶媒を含まないナノ粒子をTHF中に取り込んだ。乳化剤を加え、疎水性開始剤の場合には、ラジカル重合用の開始剤を加えた。ナノ粒子の取り込み手順を迅速化しなければならない場合は、上記THF溶液を超音波浴を用いて5分間処理することができる。いかなる場合においても、超音波浴の使用は要件とされるものではない。次いで、THF溶液を水に注入した。1−ペンタノールおよびモノマーを加えた。最後に、親水性開始剤の場合には、ラジカル重合用の開始剤を加え、溶液を、15℃〜100℃の間の温度で最大72時間加熱および撹拌した。ミセル複合体の単離は、核がSPION充填されていたとすると、磁性コラムを用いて行うことができる。
【0113】
シード乳化重合によるナノ粒子の封入(実施例1)の変形例において、乳化剤およびラジカル重合用の開始剤の添加をナノ粒子保存溶媒であるクロロホルム中で行った。次いで、ナノ粒子保存溶媒であるクロロホルムを窒素ガス流下で除去し、得られた残留物に得られたTHFを加えた。
【0114】
実施例2。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図3および図4に示す。
【0115】
実施例2a(▲)−4.6nmol(5.2mg)の酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、404mgのポリソルベート−80、2mLのTHF、50μLの1−ペンタノール、0μLのビニルベンゼン、0μLのジビニルベンゼン、20mLの水、2mgのAIBNを70℃で15時間撹拌した。実施例2b(■):0.46nmol(0.52mg)の酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、0.3mgのポリソルベート−80、0.3mLのTHF、2μLの1−ペンタノール、0μLのビニルベンゼン、0μLのジビニルベンゼン、3mLの水、1mgのAIBNを、75℃で15時間撹拌した。実施例2c(■):2.3nmol(2.6mg)の酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、0.9mgのポリソルベート−80、1.5mLのTHF、0μLの1−ペンタノール、0.42μLのビニルベンゼン、0.08μLのジビニルベンゼン、15mLの水、1mgのVA−044を、70℃で15時間撹拌した。
【0116】
実施例3。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図5および図6に示す。
【0117】
1.1nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、10mgのSDBS、3mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、15μLのビニルベンゼン、15μLのジビニルベンゼン、20mLの水、1mgのVA044を50℃で15時間撹拌した。
【0118】
実施例4。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図7に示す。
【0119】
図7:a)左:1.8nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、3.0mglのポリソルベート−80、2mLのTHF、5μLの1−ペンタノール、25μLのビニルベンゼン、10μLのジビニルベンゼン、20mLの水、2mgのVA−044を44℃で15時間撹拌した。図7:a)右:0.33nmolの金ナノ粒子(オレイルアミン被覆)、1.1mglのポリソルベート−80、2mLのTHF、5μLの1−ペンタノール、25μLのビニルベンゼン、10μLのジビニルベンゼン、20mLの水、2mgのVA−044を44℃で15時間撹拌し、次いで、65℃で2時間撹拌した。図7b)0.46nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、2.0mgのポリソルベート−80、2mLのTHF、5μLの1−ペンタノール、25μLのビニルベンゼン、10μLのジビニルベンゼン、20mLの水、2mgのVA−044を44℃で15時間撹拌し、次いで、75℃で2時間撹拌した。
【0120】
実施例5。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図8に示す。
【0121】
0.46nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、3.0mglのポリソルベート−80、0.3mLのTHF、0μLの1−ペンタノール、3mLの水、1mgのAIBNを75℃で5時間撹拌した。▲:0.17μLのビニルベンゼン、0.03μLのジビニルベンゼン。■:1.0μLのビニルベンゼン、0.20μLのジビニルベンゼン。丸で示す線●:2.5μLのビニルベンゼン、0.50μLのジビニルベンゼン。破線−:5.0μLのビニルベンゼン、1.0μLのジビニルベンゼン。
【0122】
実施例6。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図9および図10に示す。
【0123】
23nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、44mgのPI−PEO(M=3800g/mol)、2.5mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、20mLの水、169μLのビニルベンゼン、169μLのジビニルベンゼン、1mgのVA−044を50℃で90分間撹拌した。0分後に取り出した試料:小さい三角で示す線▲;5分後に取り出した試料:小さい四角で示す線■;20分後に取り出した試料:大きい三角で示す線▲;40分後に取り出した試料:破線 −;60分後に取り出した試料:大きい四角で示す線■;90分後に取り出した試料:丸で示す線●。
【0124】
実施例7。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図11および図12に示す。
【0125】
3.6nmolの酸化鉄ナノ粒子(PI−DETA被覆)、2.4mgのPI−PEO(M=13500g/mol)、0.6mLのTHF、45μLの1−ペンタノール、30mLの水、45μLのビニルベンゼン、45μLのジビニルベンゼン、1mgのVA−044を50℃で5時間撹拌した。
【0126】
実施例8。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図13および図14に示す。
【0127】
2.4nmolの酸化鉄ナノ粒子(PI−DETA被覆)、1.6mgのPI−PEO(M=13500g/mol)、1.6mgのAIBN、0.4mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、30mLの水、30μLのビニルベンゼン、30μLのジビニルベンゼンを50℃で5時間撹拌した。
【0128】
実施例9。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図15および図16に示す。
【0129】
2.5nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、68mgのN−(2−メタクリロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、4mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、30mLの水、20μLのビニルベンゼン、20μLのジビニルベンゼン、1mgのVA−044を50℃で15時間撹拌した。
【0130】
実施例10。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図17および図18に示す。
【0131】
2.5nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、68mglのポリエチレングリコールモノアクリレート(M=336g/mol)、4mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、30mLの水、20μLのビニルベンゼン、20μLのジビニルベンゼン、1mgのVA−044を50℃で15時間撹拌した。
【0132】
実施例11。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図19および図20に示す。
【0133】
1.1nmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、26mgのSDBS、3mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、15μLのビニルベンゼン、15μLのジビニルベンゼン、20mgのジメチル[3−[(2−メチル−l−オキソアリル)アミノ]プロピル]−3−スルホプロピルアンモニウムヒドロキシド、20mLの水、1mgのVA044を50℃で5時間撹拌した。
【0134】
実施例12。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図21および図22に示す。
【0135】
3.6nmolの酸化鉄ナノ粒子(PI−DETA被覆)、2.4mgのPI−PEO(M=13500g/mol)、0.6mLのTHF、45μLの1−ペンタノール、20mLの水、30μLのイソプレン、1mgのVA−044を30℃で72時間撹拌した。
【0136】
実施例13。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図23および図24に示す。
【0137】
4.2nmolのInPナノ粒子(テトラデカン酸およびオクタデカン酸被覆)、10.3mgのPI−PEO(M=3800g/mol)、3mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、20mLの水、22.5μLのビニルベンゼン、22.5μLのジビニルベンゼン、1mgのVA−044を50℃で5時間撹拌した。蛍光特性は維持された。
【0138】
実施例14。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図25図26および図27に示す。
【0139】
10nmolのCdSe/CdS/ZnS(核/殻/殻)量子ドットナノ粒子(PI−DETA被覆)、10mgのPI−PEO(M=13500g/mol)、3mLのTHF、30μLの1−ペンタノール、30mLの水、15μLのビニルベンゼン、15μLのジビニルベンゼン、1mgのVA−044を50℃で5時間撹拌した。蛍光特性は維持された。
【0140】
実施例15。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図28および図29に示す。
【0141】
0.5nmolの酸化物ナノ粒子(オレイン酸被覆)、0.5nmolの金ナノ粒子(オレイルアミン被覆)、2.5mglのポリソルベート80、0.5mLのTHF、5μLの1−ペンタノール、2mLの水、15μLのビニルベンゼン、5μLのジビニルベンゼン、0.2mgのVA−044を44℃で5時間撹拌した。
【0142】
実施例16。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図30に示す。
【0143】
156pmolの酸化鉄ナノ粒子(オレイン酸被覆)、76mglのポリソルベート−80、3mLのTHF、5μLの1−ペンタノール、2mLの水、10μLのジビニルベンゼンを加えた25μLの2,3,4,5,6−ペンタフルオロビニルベンゼン、2mgのVA−044を44℃で63時間撹拌し、その後、65℃で2時間撹拌した。
【0144】
実施例17。上記実施例1を以下の特定の条件下で行った。結果を図31および図32に示す。
【0145】
0.39mmolのCdSe/CdS/ZnS(核/殻/殻)量子ドットナノ粒子(TOP/TOPOおよびHDA被覆)、0.79mglのポリソルベート−80、25nLのスクアレン、0.3mLのTHF、0μLの1−ペンタノール、83nLのビニルベンゼン、17nLのジビニルベンゼン、3mLの水、0.5mgのAIBNを75℃で5時間撹拌した。蛍光特性は維持された。
【0146】
実施例18。シード半バッチ乳化重合による酸化鉄ナノ粒子の封入。
【0147】
以下の一般的条件に従い、シード半バッチ乳化重合による酸化鉄ナノ粒子の封入を行った。保存溶媒を含まない7.8nmol〜33nmolの酸化鉄ナノ粒子を約5mLのTHF中に取り込んだ。4.97〜6.73g(3.79〜5.14mmol)のポリソルベート−80を加えた。得られた混合物を静かに振とうすることにより数分間均質化し、THF溶液を得た。次いで、このTHF溶液を270mLの水に注入し、70℃まで加熱した。反応を開始させるため、1mLの水中の約150mg(0.63mmol)の過硫酸ナトリウム(NaPS)または1gのモノマー中の約250mg(0.67mmol)の過酸化ラウリル(LPO)を一度に加えた。反応の開始後に、10g(99.9mmol)のメタクリル酸メチル(MMA)または10g(78.0mmol)のアクリル酸ブチル(BA)をシリンジポンプを用いて1時間かけて徐々に加えた。試料を10分間隔でヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を入れたバイアルに取り出し、反応を停止させた。最後に、分散液を70℃の温度で1時間撹拌し、その後、最終試料を取り出した。
【0148】
実施例19。7.8nmolの酸化鉄ナノ粒子、10g(99.9mmol)のモノマーとしてのMMAおよび1mLの水中に溶媒和させた149mg(0.63mmol)の開始剤としてのNaPSを使用して、上記実施例18を行った。
【0149】
実施例20。8.1nmolの酸化鉄ナノ粒子、10g(99.9mmol)のモノマーとしてのMMA、1g(9.99mmol)のMMA中に溶媒和させた開始剤としての236mg(0.64mmol)のLPOを使用して、上記実施例18を行った。
【0150】
実施例21。33nmolの酸化鉄ナノ粒子、10g(78.0mmol)のモノマーとしてのBA、そして、1mLの水および1g(7.8mmol)のモノマーにぞれぞれ溶媒和させた77mgのNaPSと120mgのLPO(それぞれ、0.325mmol)との混合物を使用して、上記実施例18を行った。
【0151】
様々な分析技術を用いて生成物を分析した。
【0152】
動的光散乱(DLS)分析を用いて、生成物の流体力学的径を測定した。DLSは、ヘリウム−ネオンレーザ(λ=633nm)を備えたマルバーンのゼータセイザーナノZSシステムを用いて行った。生成物溶液を石英セル中で分析した。生成物溶液の分析は、10秒間にわたり少なくとも12回行った。DLS分析の結果は、Malvern instrument社のDispersion Technology Softwareプログラム(DTS)バージョン5.1を用いて評価した。
【0153】
Jeol社製(100keV)JEM−1011およびPhillips社製(300keV)CM−300−UTを用いて透過型電子顕微鏡検査法(TEM)分析を行った。各試料は、銅格子に被せた炭素膜上に被検溶液を供給することにより調製し、分析の前に乾燥させた。
【0154】
Philips社製のTEM−type CM−300−UT分光計を用いて、エネルギー分散型X線分光(EDX)分析を行った。試料は、TEM分析を用いた分析において調製された試料と同様に調製した。
【0155】
UV−Vis吸収分光計(Varian Cary50)を用いて、範囲300〜800nmの範囲でUV−Visを行った。蛍光発光分光計(Varian Eclipse)を用いて、範囲350〜700nmの範囲で蛍光分光法を行なった。石英セル中のおよそ3mLの試料を分析した。ローダミン6G(エタノール中)を標準として用いて、蛍光量子収率を測定した。試料溶液を調製するために使用したそれぞれの純粋溶剤を測定することにより、背景信号を測定した。
【0156】
本発明を詳細に説明したが、上記の発明の詳細な説明は、本発明の範囲を限定するものではないと理解される。当業者であれば、本発明は添付の請求の範囲内で変形して実施できることを理解するであろう。少なくとも、本発明は、発明の詳細な説明および/または発明の実施例に限定されるものではないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0157】
10 無機ナノ粒子
20 界面活性剤
21 官能基または親和性分子を有する界面活性剤
22 リンカーと官能基または親和性分子とを有する界面活性剤
25 ナノ粒子表面の疎水性リガンド
26 官能基または親和性分子を有する疎水性リガンド
27 リンカーと官能基または親和性分子とを有する疎水性リガンド
30 界面活性剤の親水性部分
40 界面活性剤の疎水性部分
45 官能基または親和性分子
46 リンカー
60 重合性モノマー
61 官能基または親和性分子を有するモノマー単位
62 リンカーと官能基または親和性分子とを有するモノマー単位
65 ポリマー鎖
66 官能基または親和性分子を有するポリマー鎖
67 リンカーと官能基または親和性分子とを有するポリマー鎖
70 重合開始剤
90 ミセル複合体
91 官能基または親和性分子を有するミセル複合体
92 リンカーと官能基または親和性分子とを有するミセル複合体
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32