特許第5931103号(P5931103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931103
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】回転テーブル
(51)【国際特許分類】
   B23Q 16/10 20060101AFI20160526BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B23Q16/10 Z
   B23Q11/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-46479(P2014-46479)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-168044(P2015-168044A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2015年4月21日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 卓真
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3013302(JP,B2)
【文献】 特開2007−032722(JP,A)
【文献】 実開平02−007949(JP,U)
【文献】 特開平06−008108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 16/06
16/10
11/00
F15B 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、該ケースに回転可能に支持される回転軸と、エアーで駆動され、前記回転軸をクランプするクランプ機構を備え、前記回転軸の一端部に加工物を取り付け、切削液または異物が前記ケース内に浸入する事を防ぐために前記ケース内部にエアパージ圧をかける回転テーブルにおいて、
前記クランプ機構を動作させる為の電磁弁を前記回転テーブルの前記ケース内部に設置し、
前記クランプ機構と前記ケースの外部とを前記電磁弁を介して接続し、前記クランプ機構から排気されるエアーを前記ケース外へ排気する流路を有することを特徴とする回転テーブル。
【請求項2】
ケースと、該ケースに回転可能に支持される回転軸と、エアーで駆動され、前記回転軸をクランプするクランプ機構を備え、前記回転軸の一端部に加工物を取り付け、切削液または異物が前記ケース内に浸入する事を防ぐために前記ケース内部にエアパージ圧をかける回転テーブルにおいて、
前記ケースに隣接して設けられ、エアパージ圧がかからない第2のケースを有し、前記第2のケースは外部と導通する孔を有し、前記クランプ機構と前記第2のケースとを接続し、前記クランプ機構から排気されるエアーを前記第2のケースに排気する流路を有することを特徴とする回転テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の加工テーブル上に搭載する回転テーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械において、回転テーブルが広く用いられるようになっている。特に割出し動作を目的に使用される場合が多く、割出し動作及びクランプ機構の信頼性は回転テーブルの重要な要素になっている。回転テーブルのエアパージ機構に関する特許の一例として特許文献1が挙げられる。特許文献1には、従来クランプ機構に用いるエアーからエアパージ用のエアーを一部供給し、回転テーブル機内の内圧が大気圧より高い所定の圧力になった場合、ケース下方部に取り付けられた調整弁によって該エアーをケース外部に排気し、前記回転テーブル機内が常に大気圧より高い所定の圧力に保つ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3013302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は工作機械の全体の構成を示す概略図である。回転テーブル3は、マシニングセンタ1のベッド7に配設された加工テーブル2上に搭載されて用いられる。回転テーブル3はクーラントノズル4から噴射される切削液5にさらされる場合が多い。そのため、切削液5が回転テーブル3の機内に浸入し、機内の電気部品や機械部品を損傷させる可能性がある。これを回避するために、一般的な回転テーブル3は機内を大気圧よりも高い所定の圧力(エアパージ圧)を保持するように構成されている。
【0005】
ところで回転テーブル3に搭載されるエアー駆動のクランプ機構は通常ピストン6がエアーによって駆動されている構造が主流である。簡易的な模式図を図2に示す。エアー駆動のクランプ機構は図2のようにピストン6を介してクランプ及びアンクランプ用の二つの圧力室22a,22bによって構成されており、クランプ用圧力室22aにエアーを流入させ、もう片側のアンクランプ用圧力室22bは機内に開放することによってピストン6はアンクランプ用圧力室22b側に移動する。ピストン6を逆方向へ動かす場合はアンクランプ用圧力室22bにエアーを流し、クランプ用圧力室22aは機内開放するようにエアーの流路26を電磁弁8によって切り替える。
【0006】
このように一般的な回転テーブル3においてはピストン動作における排気は機内に行われるため(電磁弁用排気口8a,8bを参照)、機内開放する側の圧力室は導通する事となる。しかし前記の理由により機内はエアパージをかけるために密封構造となっている。エアパージをかけるための構造の一例としては、図2に示されるように回転テーブル3に流路26を介して供給されるエアーを分岐し、ニードル弁9及び回転テーブル3のケース10のドレイン穴に設けられたニードル弁11が配置されており、エアパージ圧はニードル弁9及びニードル弁11によって適切に調節される。
【0007】
前記エアパージ圧は通常0.01MPa程度であるのに対し、エアー駆動のクランプ機構で扱うエアーは通常0.5MPaと高いため、一度クランプ・アンクランプ動作によって機内に排気を行うと機内圧力は上昇する。回転テーブル3内は前記の理由により密封構造であるために機内圧力はすぐには下がらない。機内圧力がエアパージ圧よりも高い状態でクランプないしアンクランプ動作を行うと、機内開放する側の圧力室が機内と導通していることからピストン6の動作が通常時に比べて遅くなる、という現象が現れる。短時間にクランプ・アンクランプ動作が頻繁に行われる場合、この問題は顕著に表れる。メカ的なクランプ・アンクランプ動作が遅れた場合、それを検知する何らかの構造が無ければクランプ機構の破損を引き起こすことになる。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、クランプ動作の頻度に関わらずクランプ動作を安定的に行う構造を備えた回転テーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、ケースと、該ケースに回転可能に支持される回転軸と、エアーで駆動され、前記回転軸をクランプするクランプ機構を備え、前記回転軸の一端部に加工物を取り付け、切削液または異物が前記ケース内に浸入する事を防ぐために前記ケース内部にエアパージ圧をかける回転テーブルにおいて、前記クランプ機構を動作させる為の電磁弁を前記回転テーブルの前記ケース内部に設置し、前記クランプ機構と前記ケースの外部とを前記電磁弁を介して接続し、前記クランプ機構から排気されるエアーを前記ケース外へ排気する流路を有することを特徴とする回転テーブルである。
請求項2に係る発明は、ケースと、該ケースに回転可能に支持される回転軸と、エアーで駆動され、前記回転軸をクランプするクランプ機構を備え、前記回転軸の一端部に加工物を取り付け、切削液または異物が前記ケース内に浸入する事を防ぐために前記ケース内部にエアパージ圧をかける回転テーブルにおいて、前記ケースに隣接して設けられ、エアパージ圧がかからない第2のケースを有し、前記第2のケースは外部と導通する孔を有し、前記クランプ機構と前記第2のケースとを接続し、前記クランプ機構から排気されるエアーを前記第2のケースに排気する流路を有することを特徴とする回転テーブルである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、クランプ動作の頻度に関わらずクランプ動作を安定的に行い、クランプ機構が損傷することを防ぐことができる回転テーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】マシニングセンタの全体の構成を示す概略図である。
図2】従来の要部の概略説明図である。
図3】回転テーブルの内部概要図である。
図4】本発明の要部の概略説明図である。
図5】本発明の要部の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る回転テーブル装置に関して以下図面に基づき説明する。なお、従来技術と同一または類似する構成については同じ符号を用いている。本実施形態は図1に示すように工作機械であるマシニングセンタ1内の加工テーブル2上に搭載され、取り付けられた加工物の割り出し動作等をNC制御で行う回転テーブル3に関するものである。
【0013】
回転テーブル3の基本的な構造について図3を用いて説明する。シャフト12はケース10に固定されたハウジング13おいて主軸受14aおよび14bを介して回転自由に支持されている。モータ15はステータ15aとロータ15bで構成されている。なお、シャフト12は特許請求の範囲に記載の回転軸に対応する。モータのステータ15aはケース10に固定されており、モータのロータ15bはシャフト12に取り付けられており、ケース10に対しては回転自由に支持されている。その他、エンコーダ16、シリンダ17、リアプレート18もケース10に固定をされている。
【0014】
ブレーキディスク19はシャフト12の一端部に結合しており、ケース10に対して回転自由に動作する。なお、シャフト12の他端部には、加工物を載置するテーブルが結合される。あるいは、シャフト12の他端部には、加工物を直接固定するための構成(固定用のボルトを締め込むボルト穴)が設けられている。請求項1の「前記回転軸の一端部に加工物を取り付け、」は、シャフト12の一端部にテーブルを固定して加工物を取り付けるとシャフト12に直接加工物を取り付けることを含む。ピストン6はシール材20a、20b、20cを介してシリンダ17内を前後に動作することが可能になっており、クランプ側へピストン6が動作する方向へ付勢される用に数本のバネ21が備え付けられている。シリンダ17内は圧縮空気によって移動が可能なようにピストン6を介してクランプ用圧力室22aとアンクランプ用圧力室22bに分かれている。
【0015】
クランプをする場合はクランプ用圧力室22aに圧縮空気が流れるように、アンクランプをする場合はアンクランプ用圧力室22bに圧縮空気が流れるように電磁弁8によって流路26が制御される。クランプ指令が入力されるとクランプ用圧力室22aに圧縮空気が流れ込むことによってピストン6がブレーキディスク19側に動作し、ブレーキディスク19をピストン6とリアプレート18によって挟持することにより、シャフト12は回転不可能な状態となる。
【0016】
アンクランプ指令が入力されると逆にアンクランプ用圧力室22bに圧縮空気が流れ込みピストン6が逆方向に動くことによりブレーキディスク19がピストン6から開放され、シャフト12が回転自由な状態となる。
【0017】
図3に示されるようにモータ15,エンコーダ16等の電気部品が回転テーブル3のケース10内に収納され、エアーで駆動するクランプ機構が備えられている。また図2に示されるように機内へクーラントや異物が侵入することを防ぐためのエアパージ圧をかけるためのエアー及びクランプ機構に用いるエアーはケース10に設けられた供給口から供給される。
【0018】
本発明における回転テーブル3内のエアー流路の簡易的な概略図を図4に示す。本発明における回転テーブル3において、機内は従来と同様に前記エアパージ圧がかかっている。エアパージ用のエアーは流路26を介して回転テーブル3の外部から供給される。供給されたエアパージ用のエアーはこのクランプ機構の駆動に使用するエアーの一部から供給されるように流路26の途中に供給口26aが設けられている。
【0019】
前記供給口26aにはエアーの機内への流入量を調整するニードル弁9等が設けられ、エアパージのために供給されたエアーが抜けるようにドレイン穴28がケース10に設けられ、前記ドレイン穴28にも供給口26aと同様にニードル弁11等が設けられ、エアーの流出量を調整することができる。機内エアパージ圧が約0.01MPa程度と大気圧より高い圧力を維持するように前記流入量と前記流出量を調整することにより、加工時に切削液や切粉が機内へ侵入することを防止する。
【0020】
従来の流路構造との違いとしてはクランプ機構から排気されるエアーが前記エアパージのかかる機内を通らない様に流路が構成されている点にある。クランプ動作の場合、ケース10に取り付けられた前記エアー供給口からのエアーは電磁弁8を通ってクランプ用圧力室22aに到達し、アンクランプ用圧力室22bからの排気エアーは電磁弁8を通り、エアパージ圧のかかる機内は通らずに回転テーブル3の外へ流路27を介して排気される(電磁弁用排気口8cを参照)。
【0021】
また、簡易的な概略図のもう1例を図5に示す。図5の場合、回転テーブル3内はエアパージ圧のかかる部屋23とエアパージ圧のかからない部屋24に分かれている。エアパージ圧のかかる部屋23におけるエアパージの構造は図4と同じである。図5においてはエアパージを調整するニードル弁11は部屋24を向いているが、これは回転テーブル機外に向けられていても問題はない。
【0022】
前記クランプ動作の場合、アンクランプ用圧力室22bからの排気エアーは回転テーブル3の外ではなく、前記回転テーブル3の機内のエアパージ圧のかからない部屋24へ流路27を介して排気される(電磁弁用排気口8cを参照)。エアパージ圧のかからない部屋24は小孔25が設けられ、この小孔を通じて部屋24は回転テーブル3の機外とほぼ同等の大気圧となっている。このエアパージ圧のかからない部屋24を設けることで直接クーラントやクーラントミストなどがエアパージ圧のかかる部屋23へ入りにくくすることができる。いずれの場合においても従来のように回転テーブル3の機内に排気される場合とは異なり、アンクランプ用圧力室22bは常に回転テーブル機外の大気圧と導通していて、かつ排気流路がエアパージ圧のかかる空間と切り離されているため、エアパージ圧によって排気を阻害されることがなく、クランプ動作の頻度に関わらずピストン6の動作も安定し、信頼性の高い回転テーブルとすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 マシニングセンタ
2 加工テーブル
3 回転テーブル
4 クーラントノズル
5 切削液
6 ピストン
7 ベッド
8 電磁弁
8a,8b,8c 電磁弁用排気口
9 ニードル弁
10 ケース
11 ニードル弁
12 シャフト
13 ハウジング
14a,14b 主軸受
15 モータ
15a ステータ
15b ロータ
16 エンコーダ
17 シリンダ
18 リアプレート
19 ブレーキディスク
20a,20b,20c シール材
21 バネ
22a クランプ用圧力室
22b アンクランプ用圧力室
23 エアパージ圧のかかる部屋
24 エアパージ圧のかからない部屋
25 小孔
26 流路
26a 供給口
27 流路
28 ドレイン穴
図2
図4
図5
図1
図3