(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931104
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】2つの別個の面上に第1及び第2の機能要素を含む軸受
(51)【国際特許分類】
B28B 3/02 20060101AFI20160526BHJP
B28B 11/10 20060101ALI20160526BHJP
G04B 31/004 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
B28B3/02 A
B28B11/10
G04B31/004
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-47239(P2014-47239)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-172401(P2014-172401A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年3月11日
(31)【優先権主張番号】13158576.2
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ・ベスッティ
(72)【発明者】
【氏名】マリー−クレール・バラタ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ルッシ
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−020410(JP,A)
【文献】
特開2010−204103(JP,A)
【文献】
特開昭54−077606(JP,A)
【文献】
特開2007−168294(JP,A)
【文献】
特開2003−080514(JP,A)
【文献】
特開2001−047417(JP,A)
【文献】
特開昭57−127435(JP,A)
【文献】
特開2011−080510(JP,A)
【文献】
特開昭52−046845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00−19/00
B28B 3/00−5/12
G04B 31/00−31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受(1、11)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)結合剤中のセラミックベース粉末(22)からセラミック予備成形物を形成するステップ;
b)上側ダイ(23、25、35、37、38、39)及び下側ダイ(23、25、35、37、38、39)を用いて前記セラミック予備成形物(22)を圧縮することにより、第1の機能要素(28)及び第2の機能要素(30)をそれぞれ含む上面(24)及び底面(26)を有し、後に前記軸受(1、11)となるグリーンボディ(27)を形成するステップであって、前記第1及び第2の機能要素の間に、後の焼結による劣化を防止するために、材料の厚さ(i)を残してグリーンボディ(27)を形成するステップ;
c)前記グリーンボディ(27)を焼結してセラミック本体(41)を形成するステップ;並びに
d)前記本体(41)に貫通孔(43)を形成して、前記第1及び第2の機能要素を接続するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
各前記機能要素の最大断面積は、前記孔(43)の断面積の1.5〜5倍であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミックベース粉末は、少なくとも1つの酸化金属、窒化金属又は炭化金属を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セラミックベース粉末は、酸化アルミニウムを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミックベース粉末は、酸化クロムを更に含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各前記ダイ(23、25、35、37、38、39)は、別個の機能要素を形成するための少なくとも1つの突出部(31、32、33、34、36)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記少なくとも1つの突出部(31、32、33、34、36)は、球面状の表面を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの突出部(31、32、33、34、36)は、円錐状の表面を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの突出部(31、32、33、34、36)は、平行六面体状の表面を有することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップb)は、前記上側ダイ(23、25、35、37、38、39)及び前記下側ダイ(23、25、35、37、38、39)をケース(29)内で共に移動させることによって達成されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップc)は熱分解を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記軸受(1、11)の仕上げのための最終ステップを有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記最終仕上げステップは、ラップ仕上げ及び/又はブラシ仕上げ及び/又は研磨を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計用軸受に関し、特に、2つの別個の面上に第1及び第2の機能要素を備えるタイプの軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
粗ブランクの体積を低減することによって単結晶アルミナから軸受を製造することが知られている。しかしながら、第1の面を機械加工により第1の機能要素を形成してしまうと、第1の面の機械加工によって発生する脆性により、他の面に第2の機能要素を形成するのが極めて困難になる。
【0003】
従って、他の面の第2の機能要素の幾何学的寸法が制限されしまい不良品率が極めて高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、2つの別個の面上に幾何学的寸法が大きい第1及び第2の機能要素を備える軸受、並びに不良品率を大幅に低減させる製造方法を提案することにより、上記の欠点の全て又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って本発明は、以下のステップ:
a)結合剤中のセラミックベース粉末からセラミック予備成形物を形成するステップ;
b)上側ダイ及び下側ダイを用いてセラミック予備成形物を圧縮することにより、第1及び第2の機能要素を上記第1及び第2の機能要素の間に材料の厚さを残してそれぞれ含む上面及び底面を有し、後に軸受となるグリーンボディを形成するステップ;
c)グリーンボディを焼結してセラミック本体を形成するステップ;並びに
d)本体に貫通孔を形成して、上記第1及び第2の機能要素を接続するステップ
を含む、軸受を製造する方法に関する。
【0006】
本発明によると、高い不良品率を上げることなく、極めて大きな状態の、即ち各面と実質的に同一の面積を有する少なくとも1つの機能要素を各面上に有するように、軸受の各面を迅速に形成できる。
【0007】
本発明の他の有利な特徴によると:
−各上記機能要素の最大断面積は、孔の断面積の1.5〜5倍であり;
−セラミックベース粉末は少なくとも1つの酸化金属、窒化金属又は炭化金属を含み;
−セラミックベース粉末は酸化アルミニウム及び場合によっては酸化クロムを含み;
−各ダイは、別個の機能要素を形成するための少なくとも1つの突出部を含み;
−上記少なくとも1つの突出部は、球面状及び/又は円錐状及び/又は平行六面体状の表面を含み;
−ステップb)は、上側ダイ及び下側ダイをケース内で共に移動させることによって達成され;
−ステップc)は熱分解を含み;
−本方法は、ラップ仕上げ及び/又はブラシ仕上げ及び/又は研磨を含んでもよい軸受の仕上げのための最終ステップを含む。
【0008】
更に、本発明は上述の変形例のいずれかによる方法から得られる、孔が貫通した焼結セラミック本体を含む軸受に関し、この本体は上面及び底面を有し、これらはそれぞれ上記孔で連通した機能要素を含むことを特徴とする。各機能要素の最大断面積は、孔の断面積の1.5〜5倍であってよい。
【0009】
軸受は、特に時計ムーブメントの地板又は受け上に設置されるか、又はこれらの全体若しくは一部を形成してよい。
【0010】
他の特徴及び利点は、添付した図面を参照して非限定的な例として挙げる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明による双方向プレスの概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明による軸受の製造ステップを説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明による軸受の他の製造ステップを説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明による軸受の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明による軸受の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したように、本発明は、ピボットと接触してこのピボットを最小の摩擦で回転できるようにするよう設計された軸受に関する。このため、本発明は回転可能に設けられる要素のための軸受の全体又は一部を形成し得る。
【0013】
本発明によると、軸受は時計の地板又は受け上に設けられるか、又はこれらの全体若しくは一部を形成するよう形成される。しかしながら、本発明は時計学の分野に制限されるものではなく、軸受に対して移動可能に設けられるいずれの要素にも応用できる。
【0014】
本発明によると、軸受は孔が貫通した焼結セラミック本体を含み、この孔はピボットを受承するためのものであり耳軸とも呼ばれる。本発明によると、本体は上面及び底面を含み、これらはそれぞれ孔によって連通する少なくとも1つの機能要素を含む。
【0015】
図8、9は、本発明による2つの例示的な軸受1、11を示す。
図8に示す軸受1は、好ましくは中央に位置する孔3を含むほぼ環状の本体2を有し、孔3は上面4と底面6とに開口している。本発明によると、上記孔3は、第1の機能要素8を形成する上面4に球面状の凹部5と連通している。
図8に示す実施例では、第1の機能要素8は、孔3から離れるにしたがって孔3の断面積の実質的に4.5倍の最大断面積まで広がっている。更に、孔3は第2の機能要素10を形成する底面6に円錐状の凹部7とも連通している。
図8に示す実施例では、第2の機能要素10は孔3から離れるにしたがって孔3の断面積より実質的に2倍大きい最大断面積まで広がっている。また、孔3の周りの本体2の壁部は、ピボットとの接触を最小化していずれの潤滑を向上させるためのオリーブカットを有することに留意されたい。
【0016】
図9の軸受11は、好ましくは中央に位置する孔13を含むほぼ環状の本体12を有し、孔13は上面14と底面16とに開口している。本発明によると、孔13は、第1の機能要素18を形成する上面14に球面状の凹部15と連通している。更に、孔13は第2の機能要素20を形成する底面16に球面状の凹部17とも連通している。
図9に示す実施例では、第1の機能要素18及び第2の機能要素20は、孔3から離れるにしたがって、孔13の断面積より実質的に3.5倍大きい最大断面積まで対称的に広がっている。また、孔13の周りの本体12の壁部は、ピボットとの接触によって上記壁部が破損するのを防ぐための面取りを有することに留意されたい。
【0017】
これら2つの実施例を参照すると、本発明においては、各機能要素8、10、18、20は独立しており、各面4、6、14、16上に同様に広がる最大断面積を有することができることがわかる。当然、以下に説明するように、同一の面4、6、14、16上に複数の同一の又は同一ではない機能要素8、10、18、20を形成してもよい。同様に、以下に説明するように、各機能要素8、10、18、20は実質的に球面状又は実質的に円錐状の凹部5、7、15、17に限定されるものではなく、他の形状を有するか又は複数の形状の組み合わせを形成してもよい。
【0018】
本発明の軸受を製造する方法を示す
図1〜7から、軸受の様々な製造が明らかになる。本方法は、結合剤中のセラミックベース粉末からセラミック予備成形物を形成するための第1のステップa)を含む。
【0019】
本発明によると、セラミックベース粉末は少なくとも1つの酸化金属、少なくとも1つの窒化金属又は少なくとも1つの炭化金属を含んでいる。例として、セラミックベース粉末は、合成サファイアを形成するための酸化アルミニウム、又は合成ルビーを形成するための酸化アルミニウムと酸化クロムの混合物を含んでいる。更に、結合剤は様々なタイプのものであってよく、例えばポリマータイプ、又は有機物タイプ等であってもよい。
【0020】
本方法は、
図1に示すように、上側ダイ23及び下側ダイ25を用いてセラミック予備成形物22を圧縮することにより、
図6に示す第1の機能要素28及び第2の機能要素30をそれぞれ含む上面24及び底面26を有し、後に軸受1となるグリーンボディ27を形成するステップb)を含む。
【0021】
図1から分かるように、各ダイ23、25は双方向プレス21のアームに固定される。本発明によると、ダイ23、25のうちの1つ(又は両方)は、ケース29内で他方に近づくようにA方向に移動し、上面24及び底面26だけでなく外側壁部も形成する。
【0022】
当然、ステップb)において、複数の同一の又は同一でないグリーンボディ27を同時に形成することもできる。従って、この変形例では、2つのプレートを用いて、これらプレート上にはそれぞれダイ23、25が移動可能に設けられ、ここで、後に各グリーンボディ27となる部分のための上述のようなケース29を形成するために、プレートの厚さを利用できる。
【0023】
従って、ステップb)で形成される各グリーンボディ27は、後に第1の機能要素8及び第2の機能要素10となる部分のブランク28、30を既に含むことが明らかである。これらのブランク28、30を得るために、実質的に平坦な各ダイ23、25は、別個の機能要素を形成するための少なくとも1つの突出部31、32を含む。
図1は、上側ダイ23が、例えばオイルシンクを形成するための、実質的に球面状の表面を有する突出部31を含み、下側ダイ25が、例えば特にピボットを見えないように軸受内に設置しなければならない場合にピボットの設置を容易に行うための隙間形成用コーンを形成するための、円錐状の表面を有する突出部32を含むことを示す。
【0024】
したがって、上記によって後に形成される軸受の強度を低下させることなく、ダイの形状によって各軸受1、11上の様々な種類の機能要素8、10、18、20を直接形成することが明らかである。例として、他の突出部の形状も想定可能であり、複数の突出部が同一のダイ上に存在していてもよく、実際のダイはドーム状の表面を形成してもよく、又は実際の突出部は第2の突出部を備えていてもよい。本発明によって得られる様々な軸受をより良好に例示するために、本発明のダイの非限定的な変形例を
図2〜5に示す。
【0025】
図3に示すように、実質的に平坦なダイ37は、実質的に平行六面体状の表面を有する突出部36を含んでいてもよい。
図2に示す実施例では、実質的に平坦なダイ35は、球面状の表面を有する突出部31及びグリーンボディの外壁上の面取りを形成するように円錐状で環状に延在する突出部33を含んでいてもよい。
図4は、実質的に球面状の表面を有する突出部31の周りに広がるカーブ34、即ち平坦ではない部分を含むダイ38を示す。最後に、
図5に示す最後に提案する変形例では、曲面34、即ち平坦ではない部分を含むダイ39もまた、実質的に平行六面体状の表面を有する第1の突出部36、及び第1の突出部36の延長部分に実質的に円錐状の表面を有する第2の突出部32を含んでいてもよい。
【0026】
本発明において、好ましくは、第1の機能要素28及び第2の機能要素30の各ブランクの間に材料の厚さiを残すことによって、収縮を発生させるステップc)における機能要素28、30の劣化を防ぐ。グリーンボディ27の全厚さは250μm〜1mmであるため、材料の厚さiは好ましくは10〜100μmである。したがって、いずれの収縮の比率は、第1の機能要素28と第2の機能要素30との間の孔が焼結前に既に存在している場合よりも均一であることは明らかである。
【0027】
本方法は、グリーンボディ27を焼結してセラミック本体41を形成するためのステップc)を含む。本発明において、好ましくは、ステップc)は熱分解を含む。ステップc)はグリーンボディ27の体積の15〜30%の収縮を引き起こす。最後に、本方法は、本体41に貫通孔43を形成して、上記第1の機能要素28及び第2の機能要素30を接続するステップd)を含む。ステップd)は、好ましくは破壊的なレーザ照射を用いて極めて精度の高いエッチングを得ることによって達成される。しかしながら、ステップd)は、例えば機械的掘削又は高圧水エッチング等の機械的収縮といった他のタイプのプロセスを用いて得ることもできる。
【0028】
本方法は、また軸受の仕上げのための最終ステップを含んでいる。この最終仕上げステップは、ラップ仕上げ及び/又はブラシ仕上げ及び/又は研磨を含んでいる。これにより、最終寸法及び/若しくは縁部の収縮の調整、並びに/又は粗度の局所的修正を可能とする。
【0029】
本方法の実装をより困難にすることなく、又は結果としてより好ましくない不良品率を上げことなく、実質的に同一であるか(
図9)又は同一でなくてもよい(
図7、8)、一定であるか(突出部36)又は一定でなくてよい(突出部31、32)、好ましくは孔3、13の断面積の1.5〜5倍である各機能要素8、18、10、20の最大断面積を得ることができる。実際、軸受穴の傾斜面又はオリーブカットは、孔の断面積の1倍より大きい最大断面積をもたらすが、これを本発明の目的の範囲内における機能要素として解釈するべきではない。
【0030】
本発明は本明細書に例示した実施例に限定されるものではなく、当業者に明らかである様々な変形例及び代替例が可能である。特に、本発明によると有利には、他の突出部及び/又はダイの幾何学的寸法によって形成された他のタイプの機能要素を想定してよい。
【符号の説明】
【0031】
1 軸受
2 本体
3 孔
4 上面
6 底面
8 第1の機能要素
10 第2の機能要素
11 軸受
12 本体
13 孔
14 上面
16 底面
22 セラミック予備成形物
23 上側ダイ
24 上面
25 下側ダイ
26 底面
27 グリーンボディ
28 第1の機能要素
29 ケース
30 第2の機能要素
31 突出部
32 突出部
33 突出部
36 突出部
41 セラミック本体
43 貫通孔
i 厚さ