特許第5931177号(P5931177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931177
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/04 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   G01N5/04 A
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-503217(P2014-503217)
(86)(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公表番号】特表2014-512005(P2014-512005A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】GB2012050776
(87)【国際公開番号】WO2012137013
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】1105953.2
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513249769
【氏名又は名称】メトリックス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】METRYX LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・キエルマシュ
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/111147(WO,A1)
【文献】 米国特許第06125687(US,A)
【文献】 特開平09−015174(JP,A)
【文献】 特開2006−058283(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0199078(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0061890(US,A1)
【文献】 特開2004−294356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00 − 5/04
G01N 25/14
G01N 25/72
H01L 22/12
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハに堆積された層の中あるいはその層の下に形成され封入されたボイドに含まれる物質を放出するために半導体ウェハを加熱すること、
放出された物質をコレクターに集めること、
ボイドの性質を示す情報を抽出するため、半導体ウェハ及び/又はコレクターの質量の間接的変化を測定すること、
を備えた半導体ウェハ計測方法。
【請求項2】
上記半導体ウェハを加熱することは、層が堆積された面に対向する半導体ウェハの面に熱を加えることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記コレクターは、放出された物質を凝結する温度制御面を有する凝縮器である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
放出された物質を集めるため、層が堆積された半導体ウェハの面に対向する上記温度制御面を位置決めすることを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
凝縮器の上記温度制御面は、複数の凝縮する部分に分割される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
半導体ウェハを加熱することは、半導体ウェハの温度を徐々に増加させることを備え、半導体ウェハ及び/又はコレクターの質量の間接的変化を測定することは、半導体ウェハの温度の関数として半導体ウェハ及び/又はコレクターの質量の間接的変化を得るため、温度上昇中に複数の質量測定を実行することを備える、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
コレクターに放出物質を集めた後、各領域において集められた物質を放出するためコレクターの複数の各領域に局所的な加熱を加えること、及び、集められた物質の性質を示す情報を抽出するためにコレクターの質量の間接的変化を測定することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
コレクターに放出物質を集めた後、各領域において集められた物質を放出するためコレクターの複数の各領域に局所的な加熱を加えること、及び、放出され集められた物質を分析することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
放出され集められた物質を分析することは、質量分析計を使用して、放出され集められた物質を測定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
半導体ウェハに堆積された層の中あるいはその層の下に形成されたボイドに含まれる物質を放出するために半導体ウェハを加熱する加熱部と、
放出された物質を集めるコレクターと、
半導体ウェハ及び/又はコレクターの質量の間接的変化を測定する質量測定ユニットと、を備え
ここで上記コレクターは、複数の分離した収集部分に分割されている、
半導体ウェハ計測装置。
【請求項11】
上記加熱部は、層が堆積された面に対向する半導体ウェハの面に熱的に接触している熱源を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
上記コレクターは、放出された物質を凝結する温度制御面を有する凝縮器である、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
放出された物質を凝結する面の温度を制御するため凝縮器と熱的に連通する冷却ユニットを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
半導体ウェハに面するコレクターの面は、その面に突出したリブによって一様なグリッドパターンの収集部分に分割されている、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子計測に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電子デバイスは、例えば蒸着技術(CVD、PECVD、PVDなど)及び除去技術(例えば化学的エッチング、CMPなど)を含む様々な技術を使用して半導体ウェハ上に作製される。製造工程中、金属及び/又は誘電材料の様々な層が、例えばシリコンウェハ・ベースの半導体ウェハ・ベースに構造として形成される。
【0003】
金属又は誘電材料の所定の層が形成される表面は、その層によって覆われる必要のある多くの形状特徴(topographical features)を有するかもしれない。これらの形状特徴は、半導体ウェハの下層形状(topography)、あるいは以前の層に形成された形状特徴によるかもしれない。覆われる必要があるかもしれない形状特徴の例は、トレンチ及びビアを含んでいる。
【0004】
トレンチあるいはビアのような形状特徴を有する表面に層が形成されるとき、結果として生じる構造にボイドが形成されるかもしれない。例えば、トレンチを有する表面に材料層が堆積されるとき、堆積される材料は、トレンチの対向側面における材料がトレンチの中央線に沿って、継ぎ目つまりトレンチの対向側面における材料の領域が互いに接触するラインを形成しながら接触するまで築かれる。ボイドは、この継ぎ目の下のトレンチ内に形成されるかもしれない。多くのボイドが継ぎ目に沿って分布するかもしれない。ボイドは、トレンチの壁が均一に平坦ではないところ、例えばトレンチの1つ以上の上部エッジに沿った突出した縁があるところでより発生するかもしれない。
【0005】
図1は、半導体ウェハ・ベースに形成された構造による概略的な断面を示す。材料1の層、例えば銅は、シリコンウェハ・ベース3に堆積された。堆積された層1は、シリコンウェハ・ベース3の表面7のトレンチ5を覆う。蒸着工程中に、トレンチ5の対向側面9における材料が継ぎ目11に沿って接触するまで、材料1はトレンチ5の伸張した側面9に築かれる。ボイド13は、継ぎ目11の下のトレンチに形成される。
【0006】
図2は、半導体ウェハ・ベースに形成された構造による概略的な断面を示す。図1に示される配置と共通の特徴には同じ参照符号を付し、その記述は繰り返されない。ビア15がトレンチ5内に位置する。材料1の層がシリコンウェハ・ベース3の表面7に堆積されたとき、ボイド17は、ビア15の内側に形成される。
【0007】
図1及び図2に示されるようなボイドは、半導体の信頼性に有害になるかもしれない。そのようなボイドは、半導体素子の動作中に電気的な不具合を生じる可能性がある。ボイドがあるところに、電気的導通を可能にするには不十分な物質があるかもしれないし、それによって、半導体素子の配線においてショートを生成する。ボイドは、また、より小さな導電性領域を通る電流を生じさせるかもしれない。それは、半導体素子の加熱及び最終的な故障に結びつくかもしれない。現在、シリコンウェハ・ベースに形成された構造にどれだけのボイドがあるかを伝えること、あるいはそのようなボイドについての情報、例えば層あるいは構造内におけるそれらのサイズあるいは分布を決定することは、可能ではない。
【0008】
図1及び図2に示されるような、構造に形成されたボイドは、液体又はガスを含んでいるかもしれない。液体あるいはガスは、層が半導体ウェハに堆積されたときに存在した物質かもしれない。例えば、層がメッキ、例えば銅メッキによって堆積される場合、覆われるべき表面に液体が適用される。銅メッキの場合、この液体は硫酸を含んでいるかもしれない。したがって、銅の層が半導体ウェハにメッキされたとき、硫酸のような液体を含むボイドが、結果として生じる構造に存在するかもしれない。
【0009】
いくつかの状況では、ポア(pores)及び/又はボイドが半導体ウェハ上のコーティング層へ優先的に導入される。マイクロ電子デバイスを製造する場合、二酸化けい素の比誘電率と比べて低い比誘電率を有する物質のコーティング層、例えばSiOC(炭素ドープシリコン酸化物)の層、を適用することが知られている。これらの材料は、一般に低κ(あるいは低k)材料と呼ばれる。二酸化けい素の比誘電率は3.9である。空気は約1.00005の比誘電率を有する。したがって、コーティング層の空隙率を増加させることにより、つまりコーティング層におけるその物質の平均密度を低下させることによって、二酸化けい素の比誘電率と比べて多孔性コーティング層の比誘電率を低減することが可能である。
【0010】
マイクロ電子デバイスを製造するときに使用される多孔性誘電体物質の既知の形態は、エアロゲル及びキセロゲルを含む。キセロゲルは、収縮が妨げられていないゲルを乾かすことによってゲルから形成された固体である。キセロゲルは、25%以上の高い空隙率を有することができる。エアロゲルは、超臨界条件下で、つまり溶媒の臨界点を超える温度及び圧力で、溶媒がウェットゲルから除去されるときに形成される。超臨界乾燥により、エアロゲルは、ゲルがウェット段階で有していた高多孔性構造を保持し、非常に低い密度でかつ高い空隙率を有する構造に帰着する。
【0011】
そのような層の空隙率は、ポロゲンの使用を通じてさらに増加するかもしれない。ポロゲンは、コーティング層にボイドを置き去りにするために、例えば熱処理によって続いて除去可能なコーティング層の構造に組み込まれる物質である。このようにコーティング層へ人為的にボイドを導入することによって、コーティング層の空隙率は増加され、物質の比誘電率が低下される。
【0012】
走査型電子顕微鏡技術、ラザフォード後方散乱分光法、小角中性子散乱(SANS)、及び偏光解析多孔度測定法が、多孔性誘電体物質の平均ポアサイズを決定するために使用された。ポアにおいて適切な吸着質の吸着/凝縮に基づいて、多孔質物質のポア内容物を評価することが知られている。吸着の等温線、すなわち一定温度での吸着性の相対圧力に対する吸着/凝縮される吸着質の量をプロットしたものから、多孔質物質の空隙率及び多孔質サイズ分布の推量を計算することができる。そのような技術は、多孔質物質を真空中におきながら、多孔質物質を吸着性の蒸気にさらすことを要求する。
【0013】
多孔性誘電体層とともに、ボイドは、ボイドを覆い隠す固形物、液体材料、あるいはガス、例えば水蒸気あるいは残留ポロゲン物質を含んでもよい。
【0014】
いくつかの状況では、エアギャップは、例えば、コーティング層と半導体ウェハとの間に空気層を提供するために、半導体素子へ優先的に導入される。このようなエアギャップは、固形物、液体材料、あるいはガス、例えばエアギャップを生成するために使用される工程の副産物、を含んでもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
その最も一般的なことでは、本発明は、ボイド及び/又はポアの性質を示す情報を得るため、例えば計測学測定を支援するために、半導体素子に存在するボイド及び/又はポアの内容物を抽出する方法及び装置を提案する。この情報は、ボイド及び/又はポアの分布、及び/又は、ボイド及び/又はポアのサイズ、及び/又は、ボイド及び/又はポアの化学的内容物に関する。抽出工程は、半導体素子のポア及び/又はボイドに含まれた物質を放出するために半導体素子を加熱すること、及び放出された物質をコレクターで集めることを含んでいる。
【0016】
発明の1つの態様によれば、次のものを含む半導体ウェハ計測方法を供給することができる。即ち、半導体ウェハに堆積された層の中若しくはその下に形成されたボイドに含まれる物質を放出するために半導体ウェハを加熱すること; ボイドの性質を示す情報を抽出するため、半導体ウェハ及び/又はコレクターの質量の間接的変化を測定すること。
【0017】
半導体素子の質量の間接的変化は、放出された物質の除去によるかもしれない。コレクターの質量の間接的変化は、放出された物質の収集によるかもしれない。質量の両変化は、半導体ウェハが加熱されたときに半導体ウェハから放出される物質の量を示すものとして使用することができる。半導体ウェハが加熱されたときに半導体ウェハから放出される物質の質量は、堆積された層の中若しくはその下におけるボイドの性質を示す。例えば、放出された物質の質量は、半導体ウェハにより多くのボイドがある場合には、より大きな質量が放出されるかもしれないように、半導体ウェハの中にあるボイドの合計サイズ(すなわち体積)を示すかもしれない。
【0018】
ここに言及された質量の変化は、加熱工程前に取得した質量測定と、ボイドにおける物質の排出中若しくはその後に取得した一もしくは複数の質量測定とを比較することによって得てもよい。
【0019】
その方法は、一つ、もしくは互換性をもつ程度まで、以下の任意の特徴のいずれの組み合わせを有してもよい。
【0020】
半導体ウェハは、層が堆積された表面に対向する半導体ウェハの表面に熱を加えることにより加熱されてもよい。
【0021】
層を堆積した表面に対向する半導体ウェハの表面に熱を加えることは、コレクターが上記層と同じ温度まで加熱されることなく、上記層のすぐ近くにコレクターが位置することを可能にするかもしれない。即ち、半導体ウェハに堆積された層とコレクターとの間に温度勾配が存在してもよい。
【0022】
半導体ウェハは、上記層が堆積された表面に対向する半導体ウェハの表面と熱的接触する熱源によって加熱されてもよい。例えば、半導体素子は、例えば加熱された板である熱い表面に接触させることにより加熱されてもよい。
【0023】
方法は、例えば調整可能な熱源を使用して、半導体素子の温度を制御可能に調節し、かつ、放出された物質による半導体素子の質量変化及び/又は集められた物質によるコレクターの質量変化を半導体素子の温度の関数として測定する工程を含んでもよい。したがって、半導体素子の質量変化及び/又はコレクターの質量変化は、質量におけるその変化が生じる特定温度あるいは温度範囲にリンクするかもしれない。物質が半導体素子から排出される温度は、物質のタイプと関係するだろう、即ち、半導体素子におけるボイドから液体の水を排出するために要求されるものよりも、半導体素子におけるボイドから液体の硫酸を排出するために、より高温あるいはより低温が要求されるかもしれない。したがって、物質が半導体素子から排出される温度あるいは温度範囲を測定することによって、その物質のタイプを識別可能としてもよい。
【0024】
半導体素子の温度の関数として半導体素子の質量の変化及び/又はコレクターの質量の変化を測定することは、半導体素子の温度が徐々に増加されるとともに、半導体素子の質量及び/又はコレクターの質量を複数回測定することを含んでもよい。
【0025】
あるいはまた、半導体素子の温度は、一連の工程変化、つまり温度の急激な増加において増加するかもしれず、また、半導体素子の質量の変化及び/又はコレクターの質量の変化が温度における隣接する工程変化間で測定されるかもしれない。例えば、半導体素子の温度は、時刻t1と時刻t2との間で温度T1に、時刻t2と時刻t3との間で温度T2に維持されてもよい。半導体素子の質量の変化及び/又はコレクターの質量の変化は、時刻t1と時刻t2との間、及び再び時刻t2と時刻t3との間で測定されてもよい。
【0026】
放出された物質は、ガス又は蒸気かもしれない。コレクターは、ガスの、あるいは液体蒸気の放出物質を凝結する(すなわち、非ガスの状態へ相変化をもたらす)ための凝縮器でもよい。したがって、放出された物質は、非ガスの(例えば液体又は固体)形態で凝縮器内あるいは凝縮器上に保持されるかもしれない。凝縮器は、例えば、冷やされた面、例えば凝縮プレートでもよい。
【0027】
放出された物質を集める工程において、凝縮器は、層が堆積された半導体ウェハの表面に対向して位置してもよい。半導体素子から物質が放出されたとき、それは凝縮器に接触して凝縮され、凝縮器において放出物質の大部分あるいは全ての収集をもたらしてもよい。凝縮器が半導体素子の表面に対向して位置するとき、放出される物質は、それが放出されるボイドの反対側に凝結されるかもしれない。したがって、放出された物質は、層に垂直な半導体素子から放出されるかもしれず、よって、それが放出された層上のポイントに対向する凝縮器に接触するかもしれない。したがって、凝縮器において放出物質が凝縮した位置は、半導体素子におけるボイドの位置を反映し、つまりはっきりと描くかもしれず、即ち、凝縮された物質の位置は、ボイドの位置を代表するかもしれない。凝縮器が半導体素子に近接して配置される場合、凝縮器における凝縮物質の位置は、より正確にボイドの位置を表わすことができる。例えば、凝縮器は、半導体素子から1mm未満の間隔で配置されてもよい。いくつかの実施形態では、凝縮器は、半導体素子の表面に接しているかもしれない。
【0028】
放出された物質を集める工程では、真空は、半導体素子と凝縮器との間の隙間に設けられてもよい。即ち、半導体素子及び凝縮器は、低圧でガスによって占められた隙間によって分離されてもよい。真空は、非常に高真空、つまり10−10Pa未満のガスであってもよい。好ましくは真空は、0.1Pa以下、例えば10−9Paと0.1Paとの間の圧力である。凝縮器と半導体素子との間の隙間に真空を設けることは、より熱い半導体素子とより冷たい凝縮器との間の温度勾配によって、そうでなければ引き起こされるかもしれない対流の発生を防ぐかもしれない。半導体素子と凝縮器との間の隙間における対流は、放出された物質が凝縮器で凝結される前に、凝縮器の表面に沿ってその物質を移動させるかもしれない。これが生じる場合、凝縮器における凝縮物質の位置は、もはや半導体素子におけるボイドの位置の代表ではないかもしれない。凝縮器と半導体素子との間の隙間におけるガスの圧力は、代表的な縮合を促進するために半導体素子に関する凝縮器の位置と関係するかもしれない。例えば、半導体素子からの凝縮器の適切な分離は、放出された物質の予期されたあるいは計算された速度から、及び/又は、凝縮器と半導体素子との間の隙間におけるガス中の放出物質の予期されたあるいは計算された平均自由行程から決定されてもよい。あるいは、半導体素子からの凝縮器の分離が予め決定された場合では、適切な圧力は、この分離に基づいて決定されてもよい。
【0029】
放出された物質を集める工程は、特定温度に凝縮器の温度を維持することを含んでもよい。凝縮器が維持される温度は、放出された物質が凝縮器と接触するときに放出物質を凝結させるのに十分に低くなければならない。したがって、凝縮器が維持される特定温度は、凝縮器によって集められるべき物質の種類に基づいて予め決めることができる。あるいはまた、例えば、凝縮器によって集められる物質の種類が未知の場合、凝縮器の温度は、一連の異材質を凝結するのに適切な特定温度で維持されてもよい。
【0030】
凝縮器が維持される特定温度は、例えば周囲温度であってもよい。あるいはまた、特定温度は、周囲温度、例えば73Kの温度で、液体窒素の温度にてガスである放出物質を凝結するのに十分に低くてもよい。好ましくは、凝縮器が維持される温度は、73Kと373Kとの間である。凝縮器の温度は、特定温度に一様に維持する必要はない。即ち、凝縮器のいずれの部分においても最高温度が、いつでも放出物質の凝縮温度未満であるならば、凝縮器の温度は、凝縮器にわたり一定、あるいは時間とともに一定である必要はない。
【0031】
凝縮器の温度は、冷却ユニットを使用して凝縮器を冷やすことによって特定温度に維持してもよい。しかしながら、特定温度に凝縮器を維持する他の方法が、例えば液化ガスを使用することが、凝縮器を冷やすために使用されてもよい。
【0032】
方法は、またさらに、放出物質が凝結される初期温度から凝縮器の温度が制御可能に増加されるとともに、凝縮器の質量を測定する工程を備えてもよい。例えば凝縮器は、半導体素子から排出される全ての物質を凝結するのに十分な温度に最初に冷やされてもよい。凝縮器の温度が続いて制御可能に増加されるとともに、凝縮器における凝縮物質の質量を測定することによって、凝縮物質の組成を調査することが可能かもしれない。
【0033】
例えば、凝縮された物質は、温度Tlで蒸発する液体A及び温度T2で蒸発する液体Bを備えるかもしれない。凝縮器の温度が温度Tlを超える温度まで増加されるとき、液体Aが蒸発するので、凝縮器における凝縮液の質量に測定可能な変化があるだろう。凝縮器の温度が温度T2に達したとき、液体Bが蒸発するので、凝縮器における凝縮液の質量に別の測定可能な変化があるだろう。質量におけるこれらの変化が生じる温度を正確に決定することによって、その物質の組成を識別すること、即ち、液体が液体A及び液体Bを備えることを識別することが可能かもしれない。
【0034】
凝縮器の温度を制御可能に増加させることは、凝縮器の温度を滑らかに、かつ連続的に増加させることを含んでもよい。あるいはまた、制御可能に温度を増加させることは、温度における一連の不連続ステップ変化にて、つまり温度の一連の急増にて、凝縮器の温度を増加させることを含んでもよい。
【0035】
放出された物質を集める工程において、放出物質が凝結される凝縮器の表面は、複数の分離した凝縮する部分に分割されてもよい。分離した凝縮部分へ凝縮器を分割することは、一つの凝縮部分で凝縮する物質が隣接する凝縮部分で凝縮する物質と混合することが妨げられることを意味する。もし凝縮器がこのように分割されないならば、大量の放出物質が凝縮器で凝結されるときには、隣接領域の凝縮液が混合するかもしれないことはありえる。もしこれが生じたならば、凝縮器における凝縮物質の領域は、もはや半導体素子におけるボイドの位置の代表にならないであろう。
【0036】
凝縮部分のサイズは、凝縮器における凝縮物質の位置が半導体素子におけるボイドの位置をはっきりと描く有効な解像度を決定する。凝縮する部分のサイズが小さいほど、つまり一定の凝縮器に、より多くの凝縮部分があるほど、解像度はよりよい。好ましくは、凝縮部分のサイズは、半導体素子におけるボイドのサイズにほぼ同程度か、あるいは小さい。さらに、集めた物質をコレクターの表面から離れて移動するように、凝縮する部分が毛管現象を示すことが可能であってもよい。
【0037】
凝縮器の表面は、複数の別個の凝縮部分の一様なグリッドパターンへ分割されてもよい。一様なグリッドパターンは、凝縮器にわたり一定の解像度を提供し、したがって、半導体素子におけるボイドの位置のマッピングの均一性を増加させる。
【0038】
凝縮器の表面は、一もしくは複数の表面に突出(raised)したリブによって複数の別個の凝縮部分に分割されてもよい。表面に突出したリブは、隣接する凝縮部分における凝縮物質が混合するのを防ぐかもしれない。
【0039】
放出された物質を集める工程において、凝縮器の表面の突出したリブが半導体素子の層に接するように、コレクターは位置決めされてもよい。したがって、突出したリブが凝縮器の表面の上に制御されて一様な高さを有するとき、凝縮器及び半導体素子は、それらの間を制御された間隔にて互いに対向して正確に配列されるかもしれない。さらに、突出したリブは、凝縮器と半導体素子との間の隙間を有効に分割してもよく、それによって、隙間内で対流が生じるのを防ぐ。したがって、この場合、凝縮器と半導体素子との間の隙間に真空を設けることは不要かもしれない。
【0040】
半導体素子のボイドに含まれる物質を放出するために半導体素子を加熱する工程において、半導体素子は、半導体ウェハに堆積された層における物質をアニールするのに十分な温度まで加熱されてもよい。例えば、層が銅の層である場合、半導体素子は銅をアニールするのに十分な温度まで上昇させることができる。銅のような金属がアニールされるとき、金属の非晶質構造は、予め粒状構造に変化する。粒の形成中に、半導体素子内のボイドの中に先に閉じ込められた物質は、粒界に沿って放出されるかもしれないと信じられている。したがって、層内の物質をアニールするのに十分な温度まで半導体素子を加熱することは、半導体素子内のボイドに含まれる全ての物質が半導体素子から放出されることを保証するかもしれない。ボイドの中に最初に存在する全ての物質が半導体素子から放出されることを保証するためにアニール温度を超える温度まで半導体素子の温度を上げる必要があるかもしれない。
【0041】
しかしながら、半導体素子中のボイドから物質が放出されるように導くことができる他のメカニズムがあるかもしれないので、アニール温度まで半導体素子を加熱する必要はないかもしれない。例えば、図1に示される配置では、継ぎ目11はボイド13を周囲の空気に接続する。したがって、ボイド13内の物質の温度及び圧力が十分に上昇される場合には、ボイド13内の物質は、層1をアニールするのに十分な温度まで素子の温度を上げる必要がなく、継ぎ目11に沿ってボイド13から放出されるかもしれない。
【0042】
方法は、さらに、凝縮器の領域内のいずれの凝縮液も蒸発させるために凝縮器の領域を局所的に加熱する工程、並びに、その領域から蒸発した凝縮液の質量及び/又は蒸発した物質による凝縮器の質量変化を測定する工程を備えてもよい。凝縮器の質量変化は、局部加熱により凝縮器から蒸発した物質の質量の間接測定を提供する。したがって、凝縮器の特定領域にあるいずれかの凝縮液が存在するか否か、存在するならば、その領域にどれだけの量の凝縮液が存在するのかを決定することが可能であるかもしれない。凝縮器における凝縮液の位置が半導体素子のボイドの位置の代表であるとき、凝縮器の領域における凝縮液量の局所的な測定は、半導体素子の対応する領域のボイドの性質を示す情報を提供することができる。半導体素子と凝縮器とが互いに対向して密接した間隔に置かれる場合、半導体素子の対応する領域は、加熱されている凝縮器の領域に対向する領域であるかもしれない。
【0043】
凝縮器における放出された物質を集める工程に続いて、半導体ウェハは、凝縮器の場所から取り除かれてもよく、あるいは、半導体ウェハと凝縮器との分離が著しく増加してもよい。あるいは、凝縮器が半導体素子の場所から取り除かれてもよい。その後、凝縮器は、放出された物質が凝結される表面に対向する凝縮器表面に局所的に熱を加えることによって局所的に加熱されてもよい。放出された物質が前面で凝結される場合、凝縮器は続いて表裏で局所的に加熱されてもよい。
【0044】
多くの可能な方法が凝縮器の領域へ局所的に熱を加えることに関して予想される。熱はレーザーを使用して加えられてもよい。あるいは、熱は赤外線によって加えられてもよい。あるいはまた、熱は凝縮器の領域と熱的に接触している抵抗加熱素子によって加えられてもよい。他に知られている加熱法もまた使用されてもよい。
【0045】
凝縮器の異なる領域が連続して局所的に加熱されてもよく、また、各領域から蒸発した凝縮液の質量、及び/又は各領域からの蒸発物質による凝縮器の質量変化が測定されてもよい。このプロセスは、凝縮器の全体あるいは本質的部分が局所的に加熱されるまで継続されてもよい。したがって、凝縮液が凝縮器に形成された場所、及び各位置に形成された凝縮液の量が決定可能である。事実上、凝縮器に形成された凝縮液の位置及び質量を記録したマップを生成することができる。凝縮液が凝縮器に形成された位置が半導体素子中のボイドの位置の代表であるとき、凝縮器にわたる凝縮液の測定された分布は、半導体素子の表面にわたるボイドの分布を効果的にはっきりと描くかもしれない。凝縮器の各領域における凝縮液の質量の局所的な測定は、半導体素子の対応する領域のボイドの性質を示す情報を提供するかもしれない。この情報は、半導体素子の対応する領域のボイドの数に関係する情報、あるいは対応する領域のボイドのサイズに関係のある情報を含んでいてもよい。したがって、ボイドの分布及びボイドのサイズに関係のある情報は、同時に抽出することができる。
【0046】
凝縮器の異なる領域を連続して加熱することは、例えば、凝縮器と相対的に熱源を移動することを含んでもよい。例えば、レーザー又は赤外線源を使用して熱が加えられる場合、放射ビームは、加熱される凝縮器の領域を変更するように移動してもよい。加熱が抵抗加熱素子によって提供される場合、抵抗加熱素子は、凝縮器と相対的に移動可能であってもよい。あるいは、複数の固定抵抗加熱素子は、その各々が凝縮器の異なる領域と熱的接触しており、凝縮器の裏面に位置決めされてもよい。それらの素子の各々は、凝縮器の一つの領域が加熱されてもよいように、独立して活性化可能であってもよい。
【0047】
凝縮器が複数の凝縮する部分に分割される場合、局所的に加熱される凝縮器の領域は、異なる凝縮部分にそれぞれ対応してもよい。したがって、各凝縮部分の温度は、局所加熱によって独立して上昇されてもよく、並びに、各凝縮部分から蒸発した凝縮液の質量、及び/又は各凝縮部分からの物質の蒸発による凝縮器の質量の変化は、独立して測定されてもよい。
【0048】
方法は、局所的に加熱される領域の温度を制御可能に調節すること、及びその領域から蒸発した凝縮液の質量、及び/又は、その領域の温度の関数として、蒸発した物質による凝縮器の質量変化を制御可能に測定することを含んでもよい。凝縮液が凝縮器の領域から蒸発する温度は、その領域における物質の種類を示す。したがって、領域から蒸発した凝縮液の質量、及び/又は蒸発した物質による凝縮器の質量変化を測定することにより、凝縮物質の組成を調査することが可能である。凝縮物質の組成は、凝縮物質がもともと放出された半導体素子の対応する領域におけるボイドの内容物を示すかもしれない。
【0049】
凝縮器の領域の温度を制御可能に調節することは、その領域の温度を滑らかに連続的に増加させることを含んでもよい。あるいは、制御可能に温度を増加することは、一連の離散的なステップ変化、つまり温度の一連の急増においてその領域の温度を増加することを含んでもよい。
【0050】
局所的に加熱された所定の領域から蒸発した物質の質量は、質量分析計を使用して測定されてもよい。したがって、蒸発物質の質量は、正確に測定されることができる。
【0051】
質量分析計を使用して蒸発物質の質量が測定される場合、蒸発物質の組成は、質量分析計を使用して分析されてもよい。したがって、局所的に加熱される凝縮器の領域に存在する凝縮液の質量及び組成の両方を正確に決定することが可能かもしれない。
【0052】
発明の他の態様によれば、次のものを含む半導体ウェハ計測装置を提供することができる:半導体ウェハに堆積された層の中あるいは下に形成されたボイドに含まれる物質を放出するために半導体ウェハを加熱するための加熱部、放出された物質を集めるためのコレクター、及び、半導体ウェハ及び/又はコレクターの間接的な質量変化を測定するための質量測定ユニット。
【0053】
上述した第1態様の特徴は、第2態様に適用可能であってもよい。
【0054】
装置は、半導体素子とコレクター(例えば凝縮器)とを互いに対向して整列させるためのアラインメント機構を有してもよい。
【0055】
装置は、さらに、凝縮器の温度を制御する、例えば維持するための冷却ユニットを備えてもよい。凝縮器が維持される特定温度は、例えば周囲温度でもよい。あるいは、特定温度は、周囲温度でガスである放出された物質を凝結するのに十分に低くてもよい。冷却ユニットは、凝縮器の冷却が、上述したように制御可能に調節することができるように、調整可能であってもよい。
【0056】
装置は、その領域におけるいずれの凝縮液も蒸発させるために局所的に凝縮器の領域を加熱するための第2の加熱部を備えてもよい。局所的に加熱した領域から蒸発した凝縮液の質量は、質量測定ユニットを使用して、凝縮器の質量変化を測定することによって間接的に測定されてもよい。あるいは、装置は、局所的に加熱した領域から蒸発した凝縮液の質量を直接測定するための第2の質量測定ユニットを備えてもよい。したがって、凝縮器の特定の領域に存在する凝縮液があるか否か、及び存在する場合には、その領域にどれだけの量の凝縮液があるのかを決定することが可能かもしれない。凝縮器における凝縮液の位置が半導体素子におけるボイドの位置の代表である場合、凝縮器の領域における凝縮液量の局所的な測定は、半導体素子の対応する領域におけるボイドの性質を示す情報を提供するかもしれない。
【0057】
第2の加熱部は、放出される物質が凝結される表面に対向する凝縮器の表面に局所的に熱を加えるための第2の熱源を備えてもよい。放出された物質が前面で凝結される場合には、凝縮器は、裏面で続いて局所的に加熱されてもよい。第2熱源は、レーザーあるいは赤外線源であってもよい。あるいは、第2熱源は、凝縮器の領域との熱的に接触している抵抗加熱素子であってもよい。
【0058】
第2の加熱部は、局所的に加熱される凝縮器の領域を変更するために凝縮器に相対的に移動可能であってもよい。凝縮器と相対的に加熱部を移動させることは、凝縮器と相対的に加熱部の並進運動を含んでもよく、又は、それは、熱源の回転運動を含んでよい。例えば、熱源がレーザーである場合、レーザーは、レーザー光線が向けられる凝縮器の領域を変更するために回転してもよい。
【0059】
あるいは、第2の加熱部は、複数の固定抵抗加熱素子を含んでもよく、その各々は、凝縮器の異なる領域と熱的接触している。これらの固定抵抗加熱素子の各々は、凝縮器の一つの領域が加熱可能なように個々に活性化されてもよい。凝縮器が複数の凝縮部分に分割される場合には、これらの領域は、異なる凝縮部分に対応してもよい。したがって、それぞれの凝縮部分の温度は、局部加熱によって独立して増加させることができ、各凝縮部分から蒸発した凝縮液の質量は、独立して測定可能であるかもしれない。
【0060】
第2の質量測定ユニットは、質量分析計を備えてもよい。したがって、蒸発物質の質量は、高精度に測定することができる。質量分析計も蒸発物質の組成を分析するために使用されてもよい。したがって、局所的に加熱される凝縮器の領域に存在する凝縮液の質量及び組成の両方を正確に決定することが可能かもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、半導体ウェハ・ベースに形成された構造を通る断面を概略的に示す。
図2図2は、半導体ウェハ・ベースに形成された構造を通る断面を概略的に示す。
図3図3は、半導体ウェハ・ベースに形成された多孔質層を通る断面を概略的に示す。
図4図4は、加熱される半導体素子、及び半導体素子に対向して位置する凝縮器を概略的に示す。
図5図5は、半導体素子から放出され、凝縮器によって集められる物質を概略的に示す。
図6図6は、時間とともに、半導体素子あるいは凝縮器の例示の温度変化のグラフである。
図7図7は、加熱されたときの凝縮器における質量変化例のグラフである。
図8図8は、複数の凝縮する部分に分割された凝縮器の概略的な平面図を示す。
図9図9は、複数の突出したリブによって複数の凝縮する部分に分割された凝縮器の概略的な図を示す。
図10図10は、凝縮器からの凝縮される物質を蒸発させ、蒸発した物質の質量を測定する工程を概略的に示す。
図11図11は、発明の第2態様による装置の態様を概略的に示す。
図12図12は、発明の第2態様による装置の態様を概略的に示す。
図13図13は、発明の第2態様による装置の態様を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の実施形態は、添付の図面を参照して例示によって記述されるだろう。
発明の一つの実施形態において、半導体ウェハに堆積された層を備えた半導体素子におけるボイドの内容物が抽出される、半導体ウェハ計測方法が提供される。図1及び図2に示すように、半導体素子中のボイドは、トレンチ5あるいはビア15のような形状特徴を有する表面に層が堆積されるときに形成されたボイド13、17であるかもしれない。これらの場合、ボイドは、層が表面に堆積されたときに存在した物質、例えばメッキによって銅のような金属を堆積するときに使用された液体、あるいは蒸着技術によって層を堆積するときに使用されたガス、を含むかもしれない。
【0063】
あるいは図3に示すように、ボイドは、半導体ウェハ23に、例えばシリコンウェハに堆積された多孔質層21内、例えば多孔性誘電体層内のボイド及び/又はポア19であってもよい。多孔性誘電体層は、SiOC(炭素ドープシリコン酸化物)、あるいは半導体素子の製造において使用される別の多孔性誘電体物質であってもよい。これらのボイド及び/又はポア19は、エアロゲル又はキセロゲルの構造において自然に生じるボイド及び/又はポアかもしれない。あるいは、それらは、ポロゲンを使用して層21内へ人為的に導入されたボイド及び/又はポアかもしれない。これらの場合では、ボイドは水分あるいは残留したポロゲン物質を含んでもよい。
【0064】
あるいは、ボイドは、物質の層と半導体ウェハとの間に形成されたエアギャップでもよい。そのようなエアギャップは、固形物、液体物質あるいはガス、例えばエアギャップを生産するために使用されるプロセスの副産物、を含んでいるかもしれない。
【0065】
図1から図3に示す配置のように、層は半導体ウェハに直接堆積されてもよい。あるいは、層は半導体ウェハに形成された構造の一部として堆積されてもよい。即ち、層は、半導体ウェハの表面に直接ではなく、むしろ別の層の上に堆積されてもよい。
【0066】
この実施形態では、図4に示すように、半導体ウェハ29に形成された層27を備える半導体素子25は、層27が堆積された表面35に対向する半導体ウェハの表面33に熱31を加えることによって加熱される。他の実施形態では、半導体素子は、異なって加熱されるかもしれない。例えば、半導体素子は、一様に加熱されてもよい。コレクター37は、層27が堆積された半導体ウェハ29の表面35に対向して位置決めされる。他の実施形態では、コレクターは異なって位置決めされてもよい。
【0067】
図5に示すように、半導体素子25が加熱されるとき、半導体素子25のボイド13に含まれる物質39は、放出された物質41として、半導体素子25から放出される。例えば、物質39がもともと液体の形態である場合、半導体素子25が加熱されたとき、それは気化され、次に蒸気の形態で半導体素子25から放出されるかもしれない。放出された物質41は、コレクター37によって集められる。この実施形態では、コレクター37は凝縮器であり、また、放出された物質41は、凝縮器において放出された物質41を凝結することによって集められ、凝縮液43を形成する。他の実施形態では、放出された物質を集めるための他のタイプのコレクターが凝縮器の代わりに使用されてもよい。
【0068】
半導体素子25が加熱されるとき、放出された物質41による半導体素子25の質量の変化、及び/又は集めた物質43によるコレクター37の質量の変化は、ボイドの性質を示す情報を抽出するために測定される。例えば、その情報は、半導体素子にあるボイドの数を示すかもしれない。あるいは、その情報は、半導体素子におけるボイドのサイズを示すかもしれない。
【0069】
この実施形態では、方法は、半導体素子25の温度を制御可能に調節し、並びに、半導体素子25の温度の関数として、放出された物質41による半導体素子25の質量変化、及び/又は集めた物質43によるコレクター37の質量変化を制御可能に測定する、工程を含む。即ち、半導体素子25の質量変化及び/又はコレクター37の質量変化は、質量の変化が生じる特定の温度あるいは温度範囲にリンクしてもよい。物質39が半導体素子25から放出される温度は、物質39の種類と関係するだろう。したがって、材料39が半導体素子25から放出される温度あるいは温度範囲を測定することによって、その材料39の種類を識別することは可能であるかもしれない。
【0070】
図6に示すように、実施形態では、半導体素子25の温度45は、一連のステップ変化47、すなわち温度の急増において温度45を増加させることによって制御可能に調節される。この実施形態では、半導体素子25の温度45は、時刻tlと時刻t2との間で温度Tlに維持される。半導体素子25の温度45は、時刻t2で温度T2までステップ変化において増加され、時刻t2と時刻t3との間で温度T2に維持される。半導体素子25の質量変化及び/又はコレクター37の質量変化は、温度の各組のステップ変化47間で、即ち、時刻tlと時刻t2との間、及び再び時刻t2と時刻t3との間で、別々に測定される。したがって、質量の変化は、質量変化が生じる特定温度範囲にリンクされる。他の実施形態では、半導体素子25の温度が時間とともに滑らかに、かつ連続して、つまり温度におけるステップ変化47なしで、増加してもよい。
【0071】
この実施形態では、図4及び図5に示すように、放出された物質41を集める工程の間、凝縮器37は、半導体素子25に近接して配置される。物質が半導体素子25から放出されたとき、それは凝縮器37に接触し、凝縮器37において放出された物質41の大部分あるいは全てを収集しながら、凝縮されるだろう。凝縮器37が半導体素子25の表面に対向して位置決めされるとき、放出された物質41は、それが放出されるボイド13の反対側に凝結可能である。したがって、凝縮器37において凝縮された放出物質43の位置は、半導体素子25におけるボイド13の位置を反映あるいははっきりと描くことができる。即ち、凝縮された物質43の位置は、ボイド13の位置の代表となることができる。
【0072】
この実施形態では、放出された物質41の全てが凝縮器37によって集められることを保証するために、凝縮器37は冷却ユニットによって冷やされ、その温度は、放出された物質41の全てを凝結するために十分低温に維持される。
【0073】
いくつかの実施形態では、凝縮器37の温度は、放出物質41が凝結された初期温度から制御可能に増加されるとともに、凝縮器37の質量が測定されてもよい。凝縮器37の温度は、一連のステップ変化47、つまり図6に示したものと同様の温度プロフィルを使用して、制御可能に増加されてもよい。したがって、放出された物質41の組成を調査することが可能であるかもしれない。凝縮器37の質量は、温度が増加されるとともに連続的にモニターされてもよく、あるいは、規定期間において凝縮器37の質量の変化が測定されてもよい。例えば、放出物質41が、温度T0と温度T1との間の温度で蒸発する液体Aと、温度T2と温度T3との間の温度で蒸発する液体Bとを備え、凝縮器が図6に示されるように加熱される場合、時間による凝縮器27の質量における変化は、図7に示されるようなものであるかもしれない。半導体素子25の温度が時刻tlでTOからTlへ増加するとき、液体のAは蒸発し、凝縮器37の質量はM2からMlへ減少する。△M1の質量変化は、時刻t1と時刻t2との間で記録される。半導体素子25の温度が時刻t3でT2からT3に増加するとき、液体のBは蒸発し、凝縮器の質量は、MlからMOへ再び減少する。△M2の質量における第2の変化は、時刻t2と時刻t3との間で記録される。したがって、一連の温度内で液体A及び液体Bの蒸発温度を識別することが可能であり、よって、それらがどの物質なのかを識別することが可能かもしれない。
【0074】
図8に示すように、この実施形態では、放出物質41が凝結される凝縮器37の表面は、複数の分離(separate)した凝縮部分55の一様なグリッドパターンに分割される。他の実施形態では、一様なグリッドパターン以外の、凝縮部分55の他の配置が存在してもよい。さらに他の実施形態では、凝縮器37の表面は、全く分割されていなくてもよい。
【0075】
分離した凝縮部分55へ凝縮器37を分割することは、一つの凝縮部分55で凝縮する物質が隣接する凝縮部分55で凝縮する物質と混ざるのを防止することを意味する。凝縮器37がこのように分割されなかった場合には、大量の放出物質41が凝縮器37で凝結されるときには、凝縮液43の隣接する領域が混合するかもしれないことがありえる。これが生じたならば、凝縮器37における凝縮物質43の領域は、もはや半導体素子25のボイド13の位置の代表にならない。この実施形態では、図9に示すように、凝縮器27は、凝縮器37の表面における複数の突出したリブ57によって複数の別個の凝縮部分55に分割される。他の実施形態では、凝縮器37の表面を分割するために他の技術が使用されてもよい。
【0076】
図10に示すように、この実施形態による方法は、領域におけるいずれの凝縮液43を蒸発させるために、凝縮器37の領域61を局所的に加熱59することを含む。領域61から蒸発される凝縮液43の質量は、第2の質量測定器63によってこの実施形態で直接に測定される。他の実施形態では、領域61から蒸発する凝縮液43の質量は、凝縮器37の質量変化を測定することにより間接的に測定されてもよい。この実施形態では、凝縮器37の異なる領域は、例えば、凝縮器37と相対的に局部加熱源を移動することによって、連続して加熱され、その結果、凝縮器37の全体あるいは実質的部分を構成する複数の領域61のそれぞれから蒸発した凝縮液43の質量が測定される。したがって、凝縮器37において凝縮液43が形成された位置、及び各位置で形成された凝縮液43の量が決定可能である。効果的に、凝縮器37に形成された凝縮液43の位置及び質量を記録した
マップが生成可能である。凝縮液43が凝縮器37に形成した位置が半導体素子25のボイド13、17、19の位置の代表であるとき、凝縮器37の全域での凝縮液43の測定分布は、半導体素子25の表面の全域でのボイド13、17、19の分布を有効的にはっきりと描くことができる。凝縮器37の各領域61における凝縮液43の質量の局所的な測定は、半導体素子25の対応する領域におけるボイド13、17、19の性質を示す情報を提供するかもしれない。この情報は、半導体素子25の対応する領域におけるボイド13、17、19の数に関する情報、あるいは対応領域におけるボイド13、17、19のサイズに関する情報を含むかもしれない。
【0077】
この実施形態では、凝縮器37から局所的に蒸発した凝縮液43の質量を測定するための第2の質量測定器63は、蒸発した凝縮液43の組成を分析するためにも使用される質量分析計である。他の実施形態では、他の質量測定器が蒸発した凝縮液43の質量を測定するために使用されてもよい。
【0078】
発明の別の実施形態では、図11に示すように、半導体ウェハ29に堆積された層27を備えた半導体素子25におけるボイド13、17、19の内容物を抽出する装置64が設けられる。この装置64は、半導体素子25のボイド13、17、19に含まれる物質39を放出するために半導体素子25を熱する加熱部65を有する。この実施形態では、加熱部65は、層27が堆積する表面35に対向する半導体ウェハ29の表面33に熱的に接触させる熱源である。例えば、加熱部は加熱された表面であってもよい。他の実施形態では、加熱部65は、半導体素子25と熱的に接触していなくてもよい。即ち、例えば代わりに放射加熱によって、熱は半導体素子25に伝達されてもよい。また、他の実施形態では、半導体素子25は、異なる表面で加熱されてもよく、あるいは均一に加熱されてもよい。装置64は、さらに半導体素子におけるボイド13、17、19から放出された物質を集めるコレクター37を有する。この実施形態では、コレクター37は凝縮器であり、放出された物質41は、凝縮液43を形成するため放出された物質41を凝縮器にて凝結することによって集められる。他の実施形態では、放出物質を集めるための他のタイプのコレクターが凝縮器の代わりに使用されてもよい。
【0079】
図12に示すように、この実施形態では、半導体素子25及び凝縮器37は、マウント90を使用して、互いに向き合って配置される。半導体素子25は、マウント90のベース91に隣接して位置決めされる。凝縮器37と半導体素子25との間隔が制御可能に変更可能なように、凝縮器37はマウント90に摺動可能に装着される。半導体素子25の結晶方位を示すために、半導体素子25はノッチ、例えばそのエッジ、を有してもよい。マウント90は対応する突起を有してもよく、その結果、半導体素子25のノッチに突起が入った状態で半導体素子25はマウント90に位置決め可能である。例えば、突起は突出したリッジであってもよい。このリッジは、マウント90のベース91に垂直に延在してもよく、凝縮器37はリッジに沿って摺動可能であり、半導体素子25と凝縮器37との間の間隔が制御可能に変更される。他の実施形態では、半導体素子25と凝縮器37とを互いに対向させて配列するために、他の既知のアラインメント装置が使用されてもよい。
【0080】
この実施形態では、半導体素子25の温度を制御可能に調節することができるように、加熱部65は調節可能である。
【0081】
装置64は、13、17、19の性質を示す情報を抽出するために凝縮された物質43により凝縮器37の質量変化を測定する質量測定器67を含んでいる。例えば情報は、半導体素子25にあるボイド13、17、19の数を示すかもしれない。あるいは、その情報は、半導体素子25におけるボイド13、17、19のサイズを示すかもしれない。他の実施形態では、質量測定器67は、凝縮された物質43により凝縮器37の質量変化を測定することと同時に、あるいはそれに代えて、放出物質41により半導体素子25の質量変化を測定するように配置してもよい。
【0082】
この実施形態では、装置64は、凝縮器37の温度を制御する冷却ユニット69を有する。この実施形態では、冷却ユニットは、凝縮器37の裏面に隣接して配置されたパイプ71に冷やされた冷媒を供給する。他の実施形態では、パイプは凝縮器37の内部にあってもよい。またさらなる実施形態では、その代りに、凝縮器37を冷却する他の技術、例えば冷却された液体あるいはガスを凝縮器37に直接接触させることが凝縮器37の温度を制御するのに使用されてもよい。この実施形態では、凝縮器37の温度が変更可能であるように、冷却ユニット69は調節可能である。これは、パイプ71内の冷媒の温度あるいは量を調節することによって達成可能である。
【0083】
図8及び図9に示すように、装置の幾つかの実施形態では、放出された物質41が凝結される凝縮器37の表面は、凝縮器37の表面における複数の突出したリブ57によって複数の凝縮する部分55の一様なグリッドパターンへ分割される。他の実施形態では、凝縮器37の表面を分割する他の技術が使用されてもよく、あるいは、凝縮器37の表面は全く分割されなくてもよい。
【0084】
この実施形態では、装置64は、凝縮器37の領域におけるいずれの凝縮液43も蒸発させるために凝縮器37の領域61を局所的に加熱する第2の加熱部73を有する。この実施形態では、第2の加熱部73は、凝縮器37の領域61を局所的に加熱するために、放出物質43が凝結される表面に対向する凝縮器37の表面にレーザー光線75を指向するレーザーである。他の実施形態では、レーザーの代わりに他のタイプの既知の加熱装置が使用されてもよい。
【0085】
この実施形態では、装置64は、凝縮器37の領域61から蒸発した凝縮液43の質量を測定する質量測定器を有する。他の実施形態では、凝縮器37から蒸発した凝縮液43の質量は、蒸発物質により凝縮器37の質量変化を測定することによって間接的に測定されてもよい。
【0086】
この実施形態では、レーザー73は、局所的に加熱される凝縮器37の領域61を変更するために、レーザー77の並進運動あるいはレーザー光線75の角度を変更するレーザーの回転運動のいずれかによって凝縮器37と相対的に移動可能である。したがって、凝縮器37に凝縮液43が形成された位置、及び各位置に形成された凝縮液43の量が決定可能である。実際には、凝縮器37に形成された凝縮液43の位置及び質量を記録するマップが生成可能である。凝縮器37に凝縮液43が形成された位置が半導体素子25におけるボイド13、17、19の位置の代表であるとき、凝縮器37の全域での凝縮液43の測定分布は、半導体素子25の表面の全域でボイド13、17、19の分布を効果的にはっきりと描くことができる。凝縮器37の各領域61における凝縮液43の質量の局所的な測定は、半導体素子25の対応領域におけるボイド13、17、19の性質を示す情報を提供するかもしれない。
【0087】
この実施形態では、レーザーは調節可能である。即ち、レーザーの出力は調節可能であり、その結果、局所的に加熱される凝縮器37の領域61の温度は、制御可能に調節可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13